小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 9巻」響と再会? 感想・ネタバレ

小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 9巻」響と再会? 感想・ネタバレ

どんなラノベ?

薄幸系男子の異世界成り上がりファンタジー! 

え?
そうだっけ?
薄幸系男子は頷けるけど、成り上がってるか?

そんな彼に惚れ込んだ人(?)達が織りなす異世界道中。

彼は穏便に事を運びたいのに、全てが大袈裟になってしまう。

そこが笑いどころ。

読んだ本のタイトル

#月が導く異世界道中  9
著者:#あずみ圭 氏
イラスト:#マツモトミツアキ  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 9巻」響と再会? 感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 9巻」響と再会? 感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入

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1巻から9巻までの流れ

普通に生活して寝たら。
いきなり両親の都合で異世界の女神に呼び出されて、顔がブサイクだから要らないと言われて見知らぬ土地にポイ捨てされた主人公。

荒野を彷徨っていたら、オーク(♀)と出会い、彼女を生贄に求めた上位竜を覚えたての魔法で倒して従者にする。

上位竜を配下にした結果、亜空と呼ばれる異空間を手に入れる。

荒野で出会ったオーク達を亜空に移住させて彼等も配下に置く。

その直後、空腹で正気を失ってる災厄の黒蜘蛛がエルダードワーフを追って襲ってきたので撃退。

その結果、黒蜘蛛が正気を取り戻して従者になる。

上位龍を巴、黒蜘蛛を澪と名付けて、亜空の住民の投票結果で主人公は【若】と呼ばれる事になる。

その後にエルダードワーフ、巴の眷属ミスティオリザード、澪の眷属アルケーが合流して街を造る。

それでも人に会いたい主人公はベースキャンプ絶野に行くが、、

巴と澪が悪乗りしてベースキャンプ絶野は壊滅する。(1巻)

遂に大きなヒューマンのツイーゲの街に着いた一行。

そこで、呪病に苦しむレンブランドの依頼を目にして、彼の妻、娘2人を癒す。

そして、暗躍していたライムを懲らしめて配下に加える。(2巻)

レンブランドの家族を癒した薬の原料アンブロシアを手に入れるため、群生地に行ったらアンブロシアを守護している森鬼が襲って来た。

それらをアッサリと捕獲して、森鬼の村に潜伏していたリッチを秒殺で押さえ込んで、主人公の魔力を蓄積した指輪13個を彼に装備させ、下駄を履かせて3人目の従者にして終わる。

イケメンの 従者、識登場!(3巻)

識と学園都市に行く転移魔法の使用中に突然戦場に拉致られた。

目の前には、大剣を振りかぶってる、王都攻略を目論むヒューマン最強のソフィア。

2人の勇者は連合軍を率いてステラ砦に進攻していたが、魔族の罠にハマってほぼ壊滅。

主人公、勇者達はそれぞれの戦場で何とか生き残る。(4巻)

突然戦争に巻き込まれ負傷してやっとたどり着いたのに、入学試験ではなく、臨時教員の試験だった。

その試験に主人公だけが合格して教職に就く。

週に1枠の授業を設けると、あまりのハイレベルな授業に上昇志向の強い数名しか残らなかった。

授業以外の日は店を開く準備をして、従業員を亜空から呼んで、、

来たのはアクエリアスコンビ。

波乱の予感しかないw(5巻)

突然上位龍が主人公達を尋ねる。

過去の勇者の嫁であり、冒険者ギルドのギルドマスター。

ルト、主人公の境遇をよく理解しておりサポートすると言ってるが、対価が、、

そして、店の名前で異世界人を保護する国。

ローレルに目を付けられる。(6巻)

大繁盛している葛の葉商会が認知され。

目玉商品の安価な薬品の秘密を知りたがる連中があの手この手で主人公に迫って来る。

そして、商人ギルド長からは輸送手段の技術を公表しろと高圧的に迫られ、金銭で解決しようとしたら売り上げの9割を寄越せと凄まれる。

そんな世間の荒波に打ちのめされた主人公は・・・(7巻)

魔族の謀略により都市に魔物が多く発生して大混乱に陥る。

それをある程度放置して、学院長から命令されて渋々と主人公達は鎮圧にかかりアッサリと鎮圧する。(8巻)

あらすじ・内容

2021年TVアニメ化決定! ロッツガルドの変異体騒ぎに乗じて、魔族の軍隊がリミア王国とグリトニア帝国の都に迫っていた。四腕の魔将イオを前に、絶体絶命の王国の勇者。そんな中、再び女神に拉致された真は、危機に瀕した勇者の助勢を約束させられる。魔族や女神にいいように振り回される真だが、彼はここで思いもよらない逆転の策を打ち出した! 混迷を極める戦場に、魔族、ヒューマン、亜空、それぞれの思惑が交錯する!

(以上、Amazonより引用)

感想

通信が回復したら急報で、帝国と王国が魔族軍の襲撃に遭っていると連絡が来た。 

ロッツガルドに居る各国の王族は主人公に帰還への協力を要請し、目の前で転移のアイテムが壊れる処を見せて王族達の警戒心を下げさせる。

老獪な上位龍達がクオリティが小憎らしい。

勇者の危機なので、また女神からの召喚があり、勇者の助太刀へと王都へ飛ばされる。

女神との交渉の結果、ヒューマン種の言葉を取得する事を条件に助太刀に入る。

ただ、正体を知られたくない主人公は嘗て廃棄した失敗作を蒸着して魔族の将軍へと戦いを挑む。

イメージ↓

その風景はまるで日曜日の朝の番組。

勇者、響も思わずツッコミを入れてしまうほどの脱力感が素晴らしい。

でも、戦いは、、

主人公達の圧勝。

ほぼ相手になっていない。

その後、ヒューマン種最強のソフィアが襲って来るが、、

主人公の新しい能力で撃退して戦いは終わる。

裏話

単行本9巻ダイジェスト① 真の言い分

単行本9巻ダイジェスト② 皇女リリ

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備忘録

1(アニメ 第二幕20話)

MBSアニメ&ドラマ

ロッツガルド学園の静寂

ロッツガルド学園の正門は、普段ならば夜遅くまで学生が行き交い、明かりが灯る場所であった。しかし、現在は人影もなく、魔術式の街路灯が静かに石畳を照らしていた。真と識の二人はそこを歩いていたが、特に目的地があるわけではなかった。ただ騒ぎを避けるために来ただけであり、何かあればすぐに駆けつけるつもりでいた。

ロッツガルドの状況は落ち着きを取り戻しつつあり、変異体の増殖も一段落していた。討伐も進んでいたが、魔族による奇襲の影響でリミア王国とグリトニア帝国の情勢は深刻であった。リミアの王やグリトニアの皇女も相当焦っており、識はその焦燥感の異常さについて言及した。

魔族の戦略と奇襲の意図

魔族はリミア王都ウルとグリトニア帝都ルイナスへ同時に攻撃を仕掛けた。二正面作戦は通常、戦力の分散を招くため悪手とされるが、魔族はこの作戦を選んでいた。識はこの奇襲がただの攻撃ではなく、敵を欺くための策略である可能性を示唆した。

魔族は以前の大侵攻を中断し、その後、軍備や技術研究に時間を費やしていた。その結果、かつての魔族とは比べものにならないほどの戦力を蓄えていた。さらに、女神の干渉を妨げる道具すら用意しており、その進歩はヒューマンを遥かに上回るものとなっていた。しかし、今回の奇襲に対するリミアやグリトニアの王族たちの反応は、あまりにも無防備であり、事前に魔族の動きを予測できていなかったように見えた。

識は、魔族が姿を隠す術式を発展させ、それを利用して部隊を分散配置し、転移マーカーを用いて集合させたのではないかと推測した。これにより、奇襲は成功し、各国の軍は混乱に陥った可能性が高い。

ロッツガルド襲撃の意図と戦略的価値

リミア王とグリトニアの皇女は、ロッツガルドでの騒動を「囮」と判断していた。しかし、識はこの考えこそが魔族の罠であると指摘した。王族たちが学園祭の来賓としてロッツガルドに集まった時点で、魔族の作戦はすでに成功していたのだ。

王族の救援のために軍が動けば魔族の思惑通りとなり、逆に動かなければロッツガルドは壊滅する。そのどちらに転んでも魔族にとって不利にはならない構造になっていた。事実、変異体の増殖はすぐに数百体規模になりうる状況であり、真たちの介入がなければロッツガルドは壊滅していた可能性が高かった。

また、アイオン王国のステラ攻めの援軍が足止めを食らっていることも、魔族の狙いの一つであった。これにより、魔族は時間を稼ぎながら戦局を有利に進めることができる状況を作り出していた。

真の転移能力と各国の対応

ロッツガルドの混乱が続く中、リミア王やグリトニア皇女は真に転移能力を求めた。しかし、転移能力は巴の持つ脇差の能力という設定になっており、巴は「使いすぎて限界に近い」と演技した。最終的に、転移の代償として脇差が砕け散るという芝居を打ち、各国の王族を納得させた。

この演出により、真たちが今後転移を使用できないことが確定した形となり、リミアやグリトニアの要人たちは安堵した様子を見せた。識はこれを「愚か」と評し、魔族の脅威を理解していない王族たちの危機感の欠如を指摘した。

魔族の真の狙いと王国の危機

識は魔族の本当の狙いが王国にあると結論づけた。リミア王国の勇者を討ち取ることが、今回の作戦の核心であると推測した。勇者には「傀儡を作る帝国の勇者」と「狂信者を生む王国の勇者」の二種類がおり、魔族にとってより大きな脅威となるのは後者であった。王国の勇者は人々を惹きつけ、組織を形成する能力を持つため、長期的な戦争ではより危険な存在となる。

そのため、魔族は短期決戦を仕掛け、王国の勇者を討つことで、戦局を決定づけようとしていた。リミア王国には、ツィーゲから送られた冒険者たちもいるが、彼らは攻撃に優れている一方で、大規模な防衛戦には不向きであった。

識は、魔族が防衛を強いる形で戦争を仕掛け、冒険者たちの士気を削ぐ戦術を取る可能性を指摘した。このままでは王国が大きな打撃を受ける可能性が高く、真は助けに行くべきかを考え始めた。

帝国の囮作戦と竜殺しの動向

一方、帝国に対する攻撃はあくまで囮であると識は見ていた。しかし、帝国には高機動力を持つ勇者がいるため、魔族は何らかの手段で彼を足止めする必要があった。識は、この役割を果たす可能性のある存在として、「竜殺し」ソフィアの名を挙げた。

ソフィアは上位竜を従えており、帝国の勇者を足止めできる実力を持っている。しかし、彼女が魔族についた事実はまだ広く知られておらず、今回の戦いでその存在が露見する可能性がある。このため、彼女が本当に動くのかは不明であった。

また、魔族の指揮を執るロナの動向も不明であり、彼女が帝国に現れるか王国に現れるかによって戦局は大きく変わる可能性があった。

今後の展望と決断

王国も帝国も危機に瀕していたが、特にリミア王国の状況は深刻であった。真は、同郷の勇者を放ってはおけないと考えつつも、転移が封じられている現状では即座に助けに行く手段がなかった。

識は、亜空の翼人やゴルゴンを派遣する案を提案したが、真は彼らを戦場に送り込むことに否定的であった。彼は亜空の住民を一方的に戦場へ送り出すことを良しとせず、より慎重な方法を模索する必要があった。

王国の勇者を救う方法はあるのか。帝国の勇者は本当に囮にされるのか。魔族の狙いを見極めつつ、真は決断を迫られることとなった。

ルトの観察と真の偶然

ロッツガルド学園の塔に、冒険者ギルドマスターであり上位竜でもあるルトが立っていた。彼は塔の上から門付近の真と識を見つめ、ある事実に思いを巡らせていた。真が無自覚に打った「奇跡の一手」が、魔族の計画を狂わせたのだ。勇者の殺害と時間稼ぎを目的とした魔族の作戦は完璧に機能するはずだったが、突如として念話が復旧したことで状況が変わった。

ルトは、クズノハ商会の影響力が大国に知られることとなり、結果的に彼らの脅威を誇示する形になったことを指摘した。もし真が動くタイミングを誤っていれば、クズノハ商会の立場は大きく揺らいでいたかもしれない。しかし、真の行動は偶然にも絶妙なタイミングで行われ、ロッツガルドの支持を得る結果となった。これは単なる幸運ではなく、まるで「そういう運命」であるかのように思えた。

女神の干渉と真の抵抗

ルトが思考を巡らせていたその時、突如として異変が起こった。夜空に金色の光が降り注ぎ、ロッツガルドの一角を神々しい輝きで包み込んだ。識はすぐに真へ警告を発し、それが女神の干渉であることを伝えた。

真は即座に対抗策を実行し、アンカーを下ろして強制転移を防ごうとした。光の中で引き上げられるような力を感じながらも、彼は女神の力に抵抗し続けた。識もまた、周囲を闇で覆い、視線を遮る試みを行ったが、光の影響は大きく、彼らが抗っている様子が周囲の人々の目に留まる危険性があった。

しかし、最終的に真は力を抜き、転移を受け入れる決断をした。抵抗し続けることで、これまでの行動が全て無駄になる可能性を考慮し、女神の意に従うことを選んだのだ。

再び女神の領域へ

真と識は白金の空間へと転移した。そこはかつて真がこの世界に来た際に初めて見た場所であり、女神の干渉が最も強く及ぶ領域であった。真は再びこの場に呼ばれたことに苛立ちを覚えながらも、識と共に冷静に状況を整理した。

女神は彼に対し、リミア王都へ向かい勇者を助けるよう命じた。魔族の奇襲により王都は危機に瀕しており、戦局が悪化していることを示唆した。

しかし、真は女神の命令に従うことを拒否した。彼は、女神が自ら戦場に出向かない理由を問い詰めるとともに、彼女の身勝手な態度に対して反発を示した。女神は「神には神の事情がある」と主張し、自由な干渉が許されていないことを示唆したが、真はその説明を受け入れなかった。

交渉と共通語の祝福

真は女神の命令に対抗する手段として、「もし自分が魔族側についたらどうするのか」と挑発した。女神は彼の反抗的な態度に呆れつつも、最終的に「積極的にヒューマンに敵対しない限り、今後干渉しない」との条件を提示した。

さらに、識の提案により、共通語の祝福を受けることが交渉の一部に加えられた。しかし、祝福の付与は通常とは異なり、真の体に強い負担を与えた。彼の頭に異常な圧力がかかり、鼻血や血涙が流れるほどの痛みを伴った。女神は「お前が望んだことだから責任は持たない」と冷たく告げ、彼に更なる試練を与えるような形となった。

リミア王都への転送と作戦の開始

女神との取引が成立した直後、彼女は再び干渉を開始し、真をリミア王都へと転送した。今回は単なる転移ではなく、高高度からの落下という形での送り込みであった。

落下の最中、真は巴と澪に念話を送り、亜空の戦力を動かすよう指示を出した。リミア王都への支援とは別に、ケリュネオンの占拠を目標とする作戦を決行させたのだ。巴と澪はこの命令に即座に応じ、亜空の種族と共に行動を開始した。

王都の戦場が視界に入る中、真は識に指示を出しながら、自らの着地を制御する準備を整えた。炎に包まれたリミア王都へ、真と識の姿は金色の光と闇の幕を纏いながら突入していった。

主の命令と亜空の変化

巴と澪は、亜空にて目を閉じ、主である真の言葉を噛みしめていた。彼の命令は、単なる指示ではなく、彼自身の欲求に基づいたものだった。これまでの命令には、彼の意志よりも別の意図が含まれていることが多かった。しかし今回は違った。彼は明確に「欲しい」と口にし、彼女たちに「手に入れろ」と命じたのである。

巴と澪は、その言葉に深く感動し、歓喜と士気の高揚を隠せなかった。特に巴は、「若が自分のために戦えと命じたのは初めてだ」と強く感じていた。亜空に住む者たちもまた、この喜びを共有すべきだと考え、巴はハイランドオークとミスティオリザードへ出撃の報せを伝えるべく動いた。

2(アニメ 第二幕21話)

MBSアニメ&ドラマ

亜空の軍勢の集結

巴と澪がそれぞれの居住地へ赴くと、すぐさま歓喜の咆哮が湧き起こった。彼らにとって、真の命令は戦いの理由として十分だった。戦士たちは真の意志を汲み取り、使命を果たすべく決意を固めた。

亜空に住む者たちは、ただ守護される存在ではなくなった。真は彼らを共に戦う者として認め、その機会を与えたのである。この事実は、彼らの誇りを大いに刺激し、戦意を最大限に引き上げた。

戦士たちが完全武装し、巴と澪の言葉に応じると、亜空に巨大な霧の門が開いた。誰も言葉を発することなく、ただ静かに門を通り、戦場へと向かう。彼らの中にある熱情は、爆発の瞬間まで押し殺されていた。

戦場への到達と索敵

澪はケリュネオンの戦場に到達すると、広範囲の索敵魔法を展開した。その感知範囲は約二十キロに及び、敵の配置を正確に把握することが可能となった。さらに、この情報は巴と亜空の軍勢全員に共有され、彼らはまるで戦場にレーダーを持ち込んだかのように行動できるようになった。

亜空の軍勢は百名に満たなかったが、彼らは訓練を積んだ精鋭たちであり、気配を消して戦場に潜り込む能力を備えていた。澪は夜襲を仕掛けるための準備を整え、巴もまた、別の地点への侵攻を決意する。

開戦と砦への突入

戦いの火蓋は切られた。亜空の軍勢は、正面突破という形で砦を攻めることを選んだ。砦の守備兵は二千を超える規模であり、通常であれば圧倒的な兵数差で勝負にならない。しかし、敵の迎撃をものともせず、彼らは一斉に突撃を開始した。

ハイランドオークの戦士アガレスは、門へと飛び込み、巨大なメイスを振り下ろした。その一撃は門を粉砕し、砦の入り口を開放した。砦を守る魔族たちは即座に迎撃を開始したが、亜空の戦士たちは圧倒的な力で応戦し、次々と敵をなぎ倒していった。

澪が与えた索敵情報により、亜空の軍勢は敵の位置を完全に把握していた。そのため、戦いの主導権は完全に彼らのものとなっていた。分散して行動し、各地で敵を潰していく。彼らの戦術は、通常の軍隊では考えられないほど大胆かつ効果的であった。

砦内部での遭遇

砦内に潜入した澪は、魔族の幹部である変異竜レフトと対峙した。彼は魔王に仕える兵であり、並の兵とは格が違った。澪は彼の存在に歓喜し、戦いの高揚感を隠そうともしなかった。

レフトは、澪たちの正体を問うた。しかし澪は「ここはケリュネオンであり、出て行くべきは魔族の方だ」と宣言した。彼女は、かつての小国ケリュネオンが滅びていないことを示し、彼らの支配地であることを強調した。

澪の言葉には確信が込められていた。それは単なる挑発ではなく、彼女たちの意志の表れだった。ケリュネオンを奪還し、真に捧げる。それこそが、彼女の最大の目的であった。

帝都の動きと新たな戦況

一方、帝都では魔将ロナが作戦を指揮していた。彼女は帝国の動向を探るため、各地で分散攻撃を実施していた。彼女の目的は、帝国の秘蔵部隊の実力を測り、勇者の戦闘特性を分析することにあった。

ソフィアとランサーがロナの元を訪れ、戦況について意見を交わした。ロナは帝国の勇者岩橋智樹の特性について「昼と夜で戦い方が変わる」「夜に回復能力が強化される可能性が高い」と分析した。この情報により、彼の攻略には時間帯を考慮する必要があると判断された。

その最中、ランサーが重大な情報をもたらした。リリ皇女が帝国に帰還し、指揮を執り始めたというのだ。ロナはこの事態を重く受け止め、速やかに帝都を離れる決断を下した。しかし、ソフィアはそれを聞くと、「勇者と遊んでくる」と告げ、戦場へと向かった。

ロナはソフィアの行動を危険視しながらも、これ以上関与することは避けた。彼女は速やかに帝都を離脱し、ステラ砦へ向かうために転移を発動した。

こうして、戦局は大きく動き始めていた。亜空の軍勢がケリュネオンを制圧しつつある中、帝国でも新たな勢力が動き始めていた。

帝国の勇者との対峙

ソフィアとランサーは、帝国の勇者・智樹とその仲間たちの戦いぶりを観察していた。智樹の夜間戦闘能力の高さは、事前の情報通りであった。ソフィアは彼を相手に、魔人討伐の予行演習として戦う決意を固めた。彼女は以前とは異なる細身の剣を手にしており、その目はすでに勇者を捉えていた。

ランサーの支援によって戦場に光の剣が展開され、飛竜の動きを封じた。これにより、勇者たちの機動力が一時的に低下し、ソフィアはその隙をついて飛竜の背へと降り立った。智樹は突然の侵入者に驚き、警戒を強めた。

ソフィアの挑発と戦闘の開始

ソフィアは自身が「竜殺しのソフィア」であることを名乗り、智樹に戦いを挑んだ。智樹は彼女の名を知っており、その実力を警戒しつつも、帝国の勇者としての誇りから引くつもりはなかった。

彼のロイヤルガードであるギネビアが即座に介入し、ソフィアの攻撃を防いだ。ソフィアは彼女の反応速度を評価しつつ、彼女が竜の力を持っていることを察知した。これにより、ソフィアの興味はさらに増し、智樹との戦いを本格的に楽しもうとする姿勢を見せた。

飛竜の撃墜と勇者の怒り

ソフィアは智樹に戦う意思を問うと同時に、飛竜ナギの翼を斬りつけた。これにより、飛竜は制御を失い、急降下を余儀なくされた。飛竜を傷つけられたモーラは激怒し、智樹もまた怒りを露わにした。

ソフィアは、戦いが始まることを告げ、飛竜の背から跳躍して地上に降り立った。ランサーと合流した彼女は、智樹の戦闘能力を見極めながら、どのように戦うべきかを考えていた。

勇者の魅了とソフィアの無効化

智樹は戦闘開始と同時に、彼の持つ「魅了」の能力を発動させた。これまでの戦いでは、この能力が通じなかった相手は少なかった。しかし、ソフィアには一切効果がなかった。彼女は魅了の力を無視し、逆に智樹を挑発した。

智樹は苛立ちを隠せず、彼女を屈服させるために全力を出すことを決意した。ソフィアもまた、それに応じる形で、完全に彼を敵と認識し、容赦のない戦闘を開始した。

拘束と智樹の猛攻

ソフィアが智樹に向かって攻撃を仕掛けた瞬間、ユキナツの「泥人形の拘束」によって四肢を捕えられた。彼女は身動きを封じられたまま、智樹とモーラの同時攻撃を受けることとなった。

智樹は自身の持つ五種の武器を駆使し、ソフィアに猛攻を仕掛けた。圧倒的な火力で爆発が連続し、戦場は混乱に包まれた。智樹は確実に勝利を確信し、ソフィアを倒したと考えた。しかし、彼の仲間たちは、ソフィアの危険性を理由に彼女を仲間に迎え入れることに反対した。

ソフィアの復活と反撃

爆煙が晴れると、そこには無傷のソフィアが立っていた。彼女は智樹の攻撃をすべて防ぎきり、その威力を評価しつつも、「湖を作るほどではなかった」と余裕の表情を見せた。彼女は戦闘が本格化することに興奮し、次の攻撃に備えた。

智樹は彼女が倒れなかったことに驚愕し、再び戦意を燃やした。しかし、ソフィアはさらに本気を出し、智樹に対して「勇者の力を見せろ」と挑発を続けた。

勇者の敗北と仲間の危機

戦闘の激しさは増し、智樹の仲間たちは次々と戦闘不能に陥った。ギネビアは重傷を負い、モーラとユキナツも瀕死の状態となった。ソフィアは智樹に対し、まだ戦う意志があるのかを問いかけた。

智樹は最後の手段として、夜間限定の回復能力を駆使し、何度も立ち上がった。しかし、ソフィアの執拗な攻撃により、彼の精神は追い詰められていった。仲間たちの命が危険に晒されていることに焦り、彼はついに奥の手を使うことを決意した。

智樹の切り札と最終決戦

智樹はソフィアに対し、「女神の加護ではない」と断言し、彼が持つ最強の能力を発動させると宣言した。彼は異世界からの転生者の中でもごく一部しか扱えない力を持っていたのである。

彼は両手を突き出し、強大な光の珠を生み出した。この力は、彼がかつていた国を焼き尽くした屈辱の光の再現であった。ソフィアはその威力を感じ取り、ついに本気で防御態勢を取った。

智樹の詠唱が完了し、光の珠が炸裂する。戦場を包む閃光の中で、決戦の幕が上がった。

智樹の奥の手と戦場の惨状

戦場には巨大なクレーターが生じ、周囲の草木もすべて焼き尽くされていた。帝都にまで被害は及ばなかったものの、智樹が放った一撃は、かつて真が湖を生み出した時よりも甚大な爪痕を残していた。

爆心地には智樹が意識を失って倒れており、その傍らには剣を腰に収め、青い光をまとったソフィアが立っていた。そこへランサーが現れ、智樹の技の威力について言及すると、ソフィアはそれが火属性の力であると説明した。さらに、その技には毒か呪いのような効果があり、被害を受けた者の生命を蝕む危険な術であることが判明した。

ランサーもその影響を受けており、ソフィアは彼を治療しながら、この力の恐ろしさを再確認した。智樹が「ニュークス」と呼んでいたこの力は、敵味方を問わず影響を与え、彼自身のみが例外であるという点が特異であった。

ソフィアとロナの念話

ソフィアはロナに念話を送り、戦況を報告した。ロナは智樹の奥の手に驚愕し、その詳細を求めた。ソフィアはそれが超広域かつ超威力の火属性魔術であり、範囲と威力の両方を兼ね備えた極めて危険な技であると伝えた。

ロナは智樹の生死を確認し、討ち取ったかどうかを問うたが、ソフィアは「逃げられた」と適当に誤魔化した。ロナはその答えに納得しつつも、すぐに部下を送り込んで戦場の状況を調査させることを決めた。

しかし、その念話の最中、ソフィアの態度が突然変わった。彼女は何かを見つけ、ランサーと共に空を見上げた。そこには金色の光の帯がリミアへと降り注ぐ光景があった。それは、二人にとって過去の苦い記憶を呼び起こすものであった。

魔人の出現と急展開

ソフィアとランサーは、この機を逃さず、魔人を討つべきだと判断した。彼らはすぐにリミア王都へ向かう決意を固めた。

一方、ロナは念話を通じて王都の戦況を確認した。イオ将軍と王国の勇者ヒビキが交戦を開始し、魔族側が優勢であるという報告が入った。しかし、その直後、王城に謎の光が突き刺さり、リッチと白い人型の存在が出現したという情報がもたらされた。

ロナはこれを重大な異変と捉え、その正体を探るべく王都へ急行することを決断した。魔人が戦場に現れた以上、王都攻略の成否がこの一戦にかかっていると判断し、ステラの守りを部下に託し、自ら戦地へ向かった。

3(アニメ 第二幕21話)

王都侵攻と響の焦燥

リミア王都は魔族の侵攻を受け、勇者・音無響は焦りながらも冷静に戦況を見極めていた。王都は常に魔族の脅威に晒されており、響は王都の機能を移転すべきと提言していたが、貴族たちの反発により実現しなかった。

戦争の厳しさを理解しているつもりの響であったが、王国の上層部には未だに魔族を軽視する風潮が残っていた。この油断が仇となり、ステラ砦攻撃の隙を突かれる形で、魔族が王都近くの星湖へと出現した。前線の部隊をすり抜けての奇襲は、王国の警戒をあざ笑うかのような見事な戦略であり、響は魔族の戦術力と技術力の高さに驚愕した。

王都脱出の決断

騎士ベルダが城門が突破されたことを報告し、宮廷魔術師ウーディは王都からの撤退を提案した。響は反発しつつも、戦力を集結させた後に王都を奪還する戦略が最善であると認識した。

王が不在である今、最も強い発言力を持つのは響たちであった。ウーディの言葉を反芻する中で、響はベルダが王族であることを既に知っていたが、それを問い詰めるつもりはなかった。彼の存在によって意思決定の自由度が増していることを理解していたためである。

一方、巫女チヤは市民を見捨てる決断に疑問を呈した。響は戦争の現実を受け入れ、勝利することで市民を救うしかないと彼女を諭した。その時、冒険者たちから退路確保の部隊と連絡が取れなくなったという報告が入る。さらに、魔族側の軍勢が統制されており、無秩序な略奪ではなく、的確に王都攻略を進めていることが判明した。

イオの奇襲と対決の決断

ウーディが城からの脱出経路を案内しようとした瞬間、突如として城内に爆音が響いた。玉座の間への退路が爆破され、そこから現れたのは魔将イオであった。

イオは退路を封じ、響たちを追い詰めた。彼は響に「ここで戦い、死ね」と告げ、もし響が逃げるならば王都の住民を皆殺しにすると脅した。響は怒りに震えながらも、イオの狡猾な戦略に苦悩した。

イオは魔族とヒューマンの戦争の本質を突きつけ、どちらかが滅びるまで終わらないと主張した。響は挑発を受けながらも、逃げるか戦うかの選択を迫られていた。

澪と魔将レフトの戦い

一方、澪は魔将レフトと対峙していた。彼女の攻撃は全て反射され、戦闘は膠着状態に陥っていた。しかし、澪は焦ることなく戦いを楽しんでいた。

レフトは澪の異常な回復力に驚きつつも、彼女が何故諦めずに攻撃を続けるのかを理解できなかった。澪は限られた攻撃手段しか持たず、それを繰り返し使うことでレフトの反射能力の限界を探っていたのである。

この戦いにおいて、実は追い詰められているのはレフトの方であった。澪は反射の特性を見極め、勝機をうかがっていた。そして、戦場の趨勢はすでに決していた。亜空勢の軍勢は圧倒的な力で魔族軍を蹂躙し、戦場の支配権を握っていた。

巴の動向と戦場の整理

丘の上から戦況を見守っていた巴は、澪が戦いを楽しんでいる様子に気づいた。自身の戦場では敵を一掃し、やるべきことがなくなったため、次の行動を考えていた。

彼女は戦後の処理を見据え、国境の整理に向かうことを決めた。こうして、王都とケリュネオン、それぞれの戦場で戦いは大きな転機を迎えようとしていた。

姿を隠すための変装

識は、リミア王都へ向かうにあたり、主人の正体を隠す手段について相談を受けた。素顔のままでは商人ライドウであることがすぐに知られてしまい、ロッツガルドでの努力が水泡に帰す恐れがあった。識自身は契約前の姿を再現できるが、主人には適切な変装手段がなかった。

そこで識は、以前主人が投げ捨てた変身アイテムを取り出した。これは、澪が渡した特撮ヒーロー風のスーツに変身できる装置であった。以前、誤って変身してしまった際には羞恥心からすぐに捨てられたが、識が密かに拾って保管していた。

主人は逡巡したものの、正体が露見するよりはマシだと考え、変身装置を作動させた。スーツのデザインは以前と同じだったが、青から白に変わっていた。防御力が下がる代わりに攻撃力が上がるという仕様には不満を覚えつつも、状況を考慮し受け入れた。

王都の戦場へ

黒い壁が崩れ落ちると、主人と識は戦場に立った。そこは屋外ではなく、壁に囲まれた広間であり、破壊された玉座の残骸があったことから謁見の間であると推測された。

部屋の奥では、魔族の部隊がヒューマンを追い詰めていた。明らかに戦闘中であったが、突如現れた主人と識を見て、場の空気が凍りついた。特に、四本の腕を持つ巨人の魔将が最も警戒していた。

周囲にはミノタウロスやケンタウロスといった亜人の兵士が混在しており、魔族軍の多様性を物語っていた。ヒューマンの軍とは異なり、亜人も重要な役割を担っていることが一目で分かる配置であった。主人は、魔族の社会の在り方に感銘を受けつつ、女神との約束を果たすためにはヒューマン側につかざるを得ないことを再認識した。

勇者との再会

戦場の中で勇者を探した主人は、その姿を確認すると驚愕した。勇者は、かつての高校の先輩・音無響に酷似していた。露出の多い毛皮の装束を身に纏い、剣を構えていた彼女の姿は、以前の知的な生徒会長とはまるで異なっていた。

主人は、月読が言っていた「もう一人の勇者は近くにいる」という言葉を思い出し、彼女が本当に自分の知る音無響である可能性を強く感じた。しかし、戦場という状況では安易に声をかけることもできず、内心の動揺を抑えながら勇者の保護へと動いた。

魔将イオとの交渉

主人は、勇者を保護しつつ、魔族に対しステラ砦の放棄と撤退を要求した。彼らの念話技術ならこの距離でも連絡が取れるはずであり、戦略的損害を最小限に抑えるための合理的な提案であった。しかし、魔将イオはそれを拒絶し、勇者の抹殺こそが彼らの使命であると断言した。

イオは、規律の行き届いた魔族の軍隊を誇りに思い、ヒューマンの軍よりも優れた統率が取れていると自負していた。それゆえ、戦略的目標の放棄は彼にとって到底受け入れられるものではなかった。主人は魔族の軍の在り方に敬意を示しながらも、女神との約束を果たすために戦う覚悟を固めた。

戦闘開始

イオは、主人をただの異質な存在とみなすのではなく、敵として慎重に見極めようとしていた。主人が戦闘を回避する様子を見せなかったことで、イオはついに攻撃を仕掛けた。

しかし、イオの巨体に似合わぬ素早い攻撃を、主人は左手一本で止めた。この異常な光景に、勇者・響も驚きを隠せなかった。イオは四本の腕を活かして連続攻撃を仕掛けたが、主人はその全てを受け流し、逆にカウンターを狙う余裕さえ見せた。

イオの力は並外れていたが、主人はスーツの能力を活かし、体格差をものともせずに互角に渡り合った。勇者の保護という使命を果たすため、主人の戦いが本格的に始まった。

4(アニメ 第二幕22話)

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王都防衛の敗北と勇者の葛藤

響は、ツィーゲで得た経験と装備によって自信を深め、王都の防衛と改革に尽力していた。しかし、イオ率いる魔族の奇襲を受け、王都内へ侵入を許してしまった。逃走を選択肢とするも、謁見の間に追い詰められ、戦うしかない状況に陥った。

仲間たちの支援や強化された装備を駆使し、イオと互角に戦えると確信していたが、現実は甘くなかった。イオの四本の腕に装着されたガントレットが四大属性を操り、響の攻撃を封じてしまった。さらに、イオは戦闘中に適応し、響の戦法を学習しながら戦う強敵であった。結果として、響は劣勢に追い込まれ、窮地に陥った。

謎の戦士の乱入

響が敗北を覚悟した瞬間、戦場に突如として白い装甲の戦士と骸骨の魔術師が現れた。特撮ヒーローのような外見のその戦士は、イオの攻撃を受け止めつつ反撃し、互角以上の戦いを繰り広げた。

響は、自身の戦い方や装備の改良によって強くなったと信じていたが、目の前の戦闘はそれを覆すものであった。白い戦士は、イオよりも明らかに優れた身体能力を持ち、圧倒的な力でイオを押していた。響は、自分の戦い方や経験が通用しない次元の戦闘を目の当たりにし、驚愕した。

ラルヴァと名乗る骸骨の意図

響と仲間たちは、一時的に戦闘から離れ、骸骨の魔術師――ラルヴァと接触した。彼は、王都を襲う魔族とは無関係でありながら、響たちを保護する立場を取った。しかし、その目的は響の安全のみであり、彼女の仲間の生死には無関心であることを明言した。

響はラルヴァの冷徹な態度に憤りを覚えつつも、状況を理解し、今は従うしかないと判断した。ラルヴァは、響がツィーゲで手に入れた剣の素材について言及し、それがかつて自身が作り出した魔物の残骸であると語った。

ケンタウロスとミノタウロスとの戦闘

ラルヴァは、響たちの安全を確保するため、襲いかかるケンタウロスとミノタウロスの二体と対峙した。彼は「元」リッチであり、従者として仕える身でありながら、尋常ならざる力を秘めていた。

戦闘が始まると、ラルヴァは指にはめた四つの指輪を発動させ、魔力を増幅させた。ケンタウロスの矢を灰に変え、ミノタウロスの戦斧を素手で受け止めるほどの力を示し、敵を圧倒した。

敵の攻撃を完封し、ラルヴァは静かに詠唱を始めた。彼の言葉には一切の情けがなく、ケンタウロスとミノタウロスを滅するための魔術を完成させた。戦局は完全に彼の掌握下にあり、響たちはその圧倒的な力をただ見守るしかなかった。

イオとの激戦と識の戦闘

白い戦士とイオの戦いは続いていた。イオは卓越した格闘技術を駆使し、四本の腕を活かした多彩な攻撃を繰り出した。一方、白い戦士はそれを受け流しながら戦況を見極めていた。識は、ミノタウロスとケンタウロスを指輪の能力を用いて塵へと変えた。イオは部下の死を悼むことなく、覚悟を決めた戦士として戦い続けた。

白い戦士はイオの武具が四大属性を帯びたものであることを見抜き、その力を評価した。イオは彼の防御を突破するために炎の拳を放ち、白い戦士の腹部に直撃させたが、大したダメージにはならなかった。互いに実力を測り合う中で、白い戦士は戦いの長期化を選択し、効率的に戦うことを決断した。

識の術による戦場の制圧

白い戦士は識に指示を出し、識はさらなる能力を解放した。指輪の「第七階梯」を半解放し、リミア王都全体を覆う衰弱の霧を展開した。これにより、王都の魔族の動きは鈍り、戦況が変化し始めた。識は余裕を持って戦場を見渡しつつ、勇者・響の服装について皮肉を交えながら話した。

響は識の圧倒的な魔術の力に驚愕し、彼の影響力が戦略レベルに及ぶことを悟った。ラルヴァと名乗る識は、街の外壁まで術を及ぼしたことで、戦場を完全に支配下に置いていた。

イオの猛攻と白い戦士の応戦

戦況が白い戦士に有利に傾く中、イオは本能的な戦闘感覚を活かし、圧倒的な連撃を白い戦士に浴びせた。属性の相乗効果を利用した攻撃により、イオは白い戦士を床に叩きつけ、響との戦いで見せた以上の猛攻を加えた。しかし、白い戦士は驚異的な耐久力で立ち上がり、再び戦闘を続行した。

ラルヴァは白い戦士の様子を気にすることなく、響の服装に関する話を続け、適当な羽織るものを探しに行こうとしていた。白い戦士はその態度に意に介さず、戦闘に集中した。

戦闘スタイルの違いと白い戦士の冷徹さ

白い戦士はイオの技術と戦術を評価しつつも、効率的な戦闘を優先した。互いに本気を出す必要はないと考え、最小限の能力で戦い続けた。その姿勢にイオは苛立ちを見せ、白い戦士が戦闘を通じて変質していく様子に違和感を抱いた。

イオは白い戦士が単なるゴーレムではないことを察し、正体を探ろうとしたが、白い戦士は淡々と事実を認め、戦闘を続けた。彼の戦い方には一切の情熱がなく、冷静な判断のもとに最適な行動を選び続けていた。

特撮風の技術を駆使した攻撃

白い戦士は飛び道具を用いた攻撃を開始し、クレイモアのような武器を放つことでイオの防御を突破しようとした。イオはこれを回避するが、追尾機能を持つ爆発物によって不意を突かれる。さらに、白い戦士はシザーハンズナックルを用いた近接攻撃を仕掛け、イオの防御を突き破った。

イオは激昂し、白い戦士を強烈な打撃で吹き飛ばすも、彼はすぐに立ち上がり、さらなる攻撃を繰り出した。空中に静止し、高速の蹴りを放つことで、イオの脇腹に深い傷を負わせた。イオは再生能力を発揮しながらも、白い戦士の戦術に翻弄され始めていた。

響の疑念と白い戦士の正体

響は、白い戦士が自らの名前を明かさず、無言で戦いに戻る様子を見て、不信感を抱いた。彼の正体が一切不明であること、戦闘スタイルが異質であることから、彼が単なる味方ではない可能性を考え始めた。

響は、この戦場で最も不気味な存在はイオではなく、目の前の白い戦士であると直感した。彼の目的は勇者の保護であるはずだが、その行動には計算が透けて見え、彼の背後にある真の意図は分からなかった。

戦闘は続き、白い戦士とイオの戦いが王都の運命を左右しようとしていた。

謁見の間の静寂と真の対峙

戦場と化した謁見の間に、一時的な静寂が訪れていた。四腕の魔将イオと対峙するのは、白いスーツに身を包んだ真。その後方には、識が展開した結界があり、勇者たちはその内部に留められていた。識はリッチの姿を保ち、左手の五本指すべてに指輪を嵌めていた。

響は、識が調達してきた大きめのマントを身に纏い、イオとの戦いで受けた傷の回復を終えていた。しかし、識が彼女を睨みつけていたため、結界内から出ることができなかった。本音を言えば、彼女は城や街で暴れる魔族軍の撃退に向かいたかったが、この戦いの長期化は望ましい状況ではなかった。

イオの決断と戦場への命令

イオは真を見つめ、彼の存在に疑念を抱いた。戦闘中に変貌した彼の姿に違和感を覚えたが、それが本性なのかは断定できなかった。彼は静かに戦況を見極めた後、大きく息を吸い込み、咆哮を放った。城中に響き渡るその雄叫びは、味方の魔族たちに指示を伝える合図だった。

その直後、イオは真に向かって、自身の部下に「ある物」を渡していたことを明かした。それは、魔将の仲間が集めた「薔薇の欠片」と呼ばれる強化アイテムであり、使用者の魂を喰らい尽くす代わりに絶大な力を与える危険な代物であった。識はすぐにその正体を見抜き、真に警告を発した。しかし、イオは動じることなく、自らもそれを使用する決断を下した。

ローズサインの使用と王都への影響

イオは、部下たちが既に薔薇の欠片を使用している可能性を示唆し、戦場全体で兵士たちが死兵と化していることを告げた。彼は、それが彼らの覚悟の証であり、戦いを続ける意志を持った者たちの選択であると語った。

その発言に対し、真は静かに応じながらも、部下たちの運命について問いかけた。イオは、魔族軍が王都の住民を虐殺することを示唆し、もしそれを止めたいのなら、今すぐこの場を離れるようにと挑発した。王都の静寂は、次第に騒乱へと変わりつつあった。

勇者の決意と識の阻止

響は、イオの言葉に激しく反応した。彼女は、王都の住民が虐殺の対象となることを許せなかった。真がイオを抑えている間に、自分たちが街を制圧することを決意し、仲間たちに準備を促した。しかし、結界が解けておらず、彼女たちは外に出ることができなかった。

識は、勇者の保護が目的であり、保護に自由の保証は含まれていないと告げた。響は、それでも街を救う必要があると説得を試みたが、識は冷静にそれを退けた。彼は、結界を破れるなら考えると述べ、響に試練を与えた。

響の限界と異空間への転移

響は結界を破るべく全力で攻撃を放ったが、それでも破壊には至らなかった。疲労が蓄積し、次第に意識が遠のいていった。彼女は限界を迎え、膝をつき、最後に「もっと力を……」と呟きながら意識を失った。

気がつくと、彼女は星空に浮かんでいた。そこでは、女神とは異なる何者かが語りかけてきた。その声は、響が転移者として特典を受け取る資格を得たことを告げた。そして、響に問いを投げかけ、その選択によって新たな能力が決まるのだと説明した。

響の選択と「黒」の特典

響は、数多くの問いかけに答えた。その内容は道徳や倫理、選択の難しさを問うものであった。そして、彼女が得た結果は「黒」。それは最上位の色であり、人間のみが得られるものだった。

その力は「アラユルイロ」と呼ばれ、攻撃、防御、支援、回復、召喚など、ほぼすべての領域を網羅する力であった。しかし、響はその詳細をまだ理解できずにいた。

力の選択と時間干渉の可能性

響は、新たな力として「時間遡行」の可能性を探った。声は、それが可能であることを示唆しながらも、大きな代償を伴うことを告げた。同一世界の過去へ遡行すれば寿命が三十歳で尽きる。平行世界の過去へ移動するなら、一回につき寿命が一年削られるという。さらに、種族を変えることでその代償を回避できる裏技もあると示唆した。

しかし、響はその選択に慎重であった。次に、彼女はディスペルマジックのような能力を求めたが、声はそれがすでに「白い戦士」の持つ力の一つであると明かした。響は驚き、白い戦士がこれほど多くの能力を秘めていたことに愕然とした。

声の正体と最終決断

響は、声が白い戦士を知っていることに気付き、その正体を探ろうとした。しかし、声は知っているだけであり、関与するつもりはないと告げた。響は苛立ちを覚えながらも、最終的にどの力を選ぶべきか考え続けた。そして、彼女は一つの決断を下そうとしていた。

響の覚醒と識の驚愕

識は驚きの声を漏らした。先ほどまでとは桁違いの威力を持つ一撃が、結界を内側から打ち砕いたのである。原因不明の力の増大を感じ取り、識は思わず振り返った。響の目には強い意思が宿っており、その雰囲気はまるで別人のようであった。

響は識に対し、自分たちを止めるつもりかと問いかけた。しかし、識はマスターの命令を優先すると答えたものの、次の瞬間には言葉を切り、天井の一点を凝視した。その隙を突いて、響と仲間たちは謁見の間を飛び出した。

新たな脅威の接近と真の対応

識は舌打ちしながら警告を発した。何かが近づいている、と。真も即座に反応し、イオとの間合いを取ろうとしたが、簡単には逃がしてもらえなかった。次の瞬間、イオの繰り出す拳と蹴りの連撃が、真を包み込んだ。

その中でなお、真は冷静に識に指示を出した。響を追い、彼女たちを守るようにと。真は、新たに接近してくる存在を知っていた。それは、彼がこれまでに戦った中で最も強く、敵意と悪意を剥き出しにしてきた相手だった。

識はこの戦場に留まるか迷ったが、最終的に勇者たちを追って転移した。

イオとの激闘と決断

イオは従者を送り出す真に拳を叩き込んだ。激しい攻防の中、真は冷静に戦況を見極めていた。イオの攻撃は驚異的な威力を誇っていたが、真はそれを受け止めつつ、反撃の機会を伺っていた。

しかし、戦況が悪化するにつれ、彼はある決断を下した。スーツを脱ぎ、魔術を解放するかどうか。識が示唆した通り、スーツを脱げばより広い安全域を確保できる。それでも、真は戦闘に没入しすぎることなく、冷静に対応を続けた。

新たなる脅威の到来

やがて、真は確信した。ソフィアは間違いなく自分を狙ってくる、と。彼は忌々しげに上空を見上げた。

次の瞬間、無数の光の剣と色とりどりの光条が王都に降り注いだ。爆発と光が街を包み込み、リミア王国の都はまさに崩壊の時を迎えていた。

5(アニメ 第二幕22話23話)

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イオとの激戦と強制解除

破壊の嵐が過ぎ去り、謁見の間は瓦礫に覆われていた。イオはなおも四つの拳で真を攻め立てたが、彼の防御は揺るがなかった。真はスーツの機能を確認し、敵の強化を解除する「強制変身解除」の存在を見つけた。接触が必要な条件付きの技だったが、イオの攻撃的な戦闘スタイルを考えれば、それは容易に実行可能であった。

イオは、勇者の行方が不明になったことから、戦いの焦点を真へと完全に移した。一方、真はイオが纏う光の粒子を分析し、術式の核を見極めることに成功した。彼はイオの右肩付け根に狙いを定め、「スペルブレイク」を発動。イオの最大の武器であるローズサインの力を断ち切った。

ローズサインを破壊されたイオは信じられないといった表情を浮かべたが、真は冷静に事実を伝えた。イオの身には再生能力があったものの、ローズサインの力は完全に消失し、戦況は真にとって有利に傾いた。

王都の崩壊とソフィアの参戦

イオとの戦いが続く中、突如として王都上空から無数の光の剣と爆発が降り注いだ。リミア王国の都は破壊され、都市としての機能を完全に喪失した。真はその攻撃の主を察し、忌々しげに上空を見上げた。そこには、かつて戦ったソフィアの姿があった。

ソフィアは圧倒的な敵意を持って真を襲い、その一撃によって彼のスーツは完全に破壊された。スーツが消滅したことで、真の素顔が露わとなり、その場にいたロナに正体を知られることとなった。ロナは混乱しながらも、真に対して魔族との交渉の余地を探るが、彼はそれを拒否した。

ロナとのやり取りの最中、ソフィアは着実に自身の戦闘力を高めていった。彼女は四匹の上位竜の力を吸収しており、その影響で体に鱗が浮かび、竜人のような姿へと変貌していた。彼女はさらに戦闘力を増幅させ、真との決着をつける覚悟を固めた。

魔力の物質化と決戦の開始

真はソフィアの攻撃を受け止めると、新たな力を解放した。それは、魔力を物質化し、巨大な人型の防壁を構築する技術であった。ロナとイオはその異質な力に驚愕し、魔族ですら見限った技術であることを指摘した。しかし、真にとっては、あらゆる攻撃を防ぎ、反撃に転じるための切り札であった。

ソフィアはその力を打ち砕くために、次々と攻撃を繰り出した。しかし、真の魔力体は彼女の猛攻を防ぎ続けた。彼女は上位竜の力を駆使し、紅い剣を振るってレーザーのような攻撃を放ったが、それも真の防御を突破するには至らなかった。

真は魔力体を利用し、ソフィアに追尾する魔力弾を放ち、彼女を攻め立てた。さらに、イオが不意打ちを仕掛けようとしたが、真は三本目の腕を生やし、彼を拘束。そのまま夜空へと投げ飛ばし、戦場から排除した。

竜殺しとの決着

ソフィアは怒りを露わにし、さらなる力を解放した。彼女の体には四色の竜の力が巡り、より竜に近い姿へと変貌を遂げた。彼女は真を討つべく最後の猛攻を仕掛けたが、真は魔力体を瞬時に再構築し、ソフィアの攻撃を防いだ。

その一瞬の隙を突き、真は魔力体の拳をソフィアに叩きつけた。拳は熱と光を帯び、ソフィアの体に直撃した。彼女は初めて苦痛の叫びを上げ、戦闘の均衡が大きく崩れた。真はこの一撃で、ソフィアとの決着をつけようとしたのである。

ロナの恐怖と撤退

ロナは目の前で繰り広げられる戦いに恐れを抱いていた。魔族最強の将であるイオが、真によって一瞬で戦場から排除されたからである。真の魔力体は膨大な魔力量を誇り、容易に再構成が可能であった。この事実だけで、彼の力が国家規模に匹敵することを示していた。

ロナは、自身の奥義を用いれば真に対抗できる可能性を見出していたが、詠唱の準備を進めた瞬間、彼からの鋭い警告を受けた。こちらを振り向くことなく、彼は詠唱を察知し、それ以上の術構成を許さないと告げた。この瞬間、ロナは真の異質さを痛感し、もはや戦場で彼を利用することが不可能であると悟った。

恐怖に押しつぶされそうになりながらも、彼女は冷静を装い、勇者とステラ砦を放棄することを決断した。真に条件を問われるも、彼とリミア王の会談が実現するならば十分であるとし、ソフィアを戦場に残して撤退することを決めた。

戦場を後にする間際、ロナは確信した。真こそが魔人であり、彼の存在は魔族にとって最大の脅威となると。

ソフィアの覚醒と決意

ソフィアは依然として戦意を失っていなかった。彼女の剣は御剣の力の結晶であり、竜の力を解放するたびに融合していく特性を持っていた。彼女は真に対し、帝国の勇者の話を持ち出し、その実力を高く評価した。

しかし、真は彼女の言葉にある違和感を指摘した。ソフィアは帝国の勇者に対して明らかな執着を見せていたが、それは彼の魅了の影響ではないかと疑問を呈したのである。彼の言葉にソフィアは動揺し、彼女自身が魅了を受けていた事実に気づいた。

真は彼女の魅了を解除することを提案したが、ソフィアはそれを拒絶した。感情が乱れた彼女は、戦いに集中することで自身を立て直そうとしたが、その焦りは真に見透かされていた。

最終決戦の幕開け

ソフィアは最後の切り札を解放した。彼女の背に炎の翼が生まれ、その姿は完全に竜の力を取り込んだ戦士へと変貌した。彼女は目にも止まらぬ速度で戦場を駆け、斬撃を繰り出した。その軌跡は紅い線となって宙を走り、真の魔力体に次々と傷を刻んでいった。

しかし、真は動じなかった。彼はソフィアの動きを見極めながら、冷静に彼女の攻撃を受け止めていた。そして、確信を持って告げた。

ランサーは戻らない。なぜなら、自身の従者である識が、それ以上の強さを持つからだ。

その言葉と同時に、識からの念話が届いた。彼は真に戦闘の許可を求めていた。真はそれに対し、短く答えた。

「好きにやれ」と。

EXTRAエピソード  一方その頃

アーンスランド姉妹の失踪

ロッツガルドにおける変異体騒動が続く中、学園都市からエヴァ=アーンスランドとルリア=アーンスランドの姿が消えた。エヴァは学園の司書、ルリアはゴテツという飲食店で働いていた。二人はかつて亡国ケリュネオンの貴族であり、祖国の滅亡後も生き延びたが、そのために蔑みと憎しみを浴び続けた。

エヴァは次第に狂気に囚われ、ルリアはすべてを諦め抜け殻と化していた。しかし、エヴァの狂気はやがてある契約へとつながった。過去を改変し、滅んだはずの祖国を再び蘇らせるという無謀な計画。その引き換えに、姉妹はこれまでの人生のすべてを差し出した。彼女たちはクズノハ商会代表ライドウの前に跪き、彼の手に縋った。

こうして、二人はロッツガルドから姿を消した。

謎の街への到着

エヴァとルリアが目を覚ましたのは、青々とした草原が広がる場所だった。二人をここに連れてきたのは、クズノハ商会の従業員であり、エルダードワーフのイシュという男だった。彼は「ここで待て」とだけ告げ、少し先に見える街へと向かった。

姉妹は街を見て、何か違和感を覚えた。その規模にしては外壁が低く、防御には適さない構造だった。また、堀も浅く、防衛都市としての機能を果たしていなかった。さらに、街の中が外から容易に見渡せるという不自然な設計がされていた。

そこへイシュが戻ってきた。彼は二人を案内するため、街へと誘った。そして、彼の言葉が姉妹を驚愕させた。

「ここはライドウ様の街だ」

ヒューマンが存在しない街

イシュの言葉を受け、エヴァとルリアはさらに驚きを深めた。商人であるはずのライドウが、これほどの規模の街を所有しているという事実。通常、個人がこのような都市を支配するには、貴族か、それに匹敵する権力を持たねばならない。

街に入ると、二人はさらに驚くことになる。この街にはヒューマンが一人もいなかった。すれ違う者は皆、オークやリザードマン、さらにはゴルゴンという魔物の種族だった。街の住民たちは二人に敵意を向けることなく、穏やかに受け入れているようだった。しかし、ヒューマンがライドウを除いて自分たちだけという事実は、二人に強い不安を抱かせた。

イシュは笑みを浮かべながら言った。「ここは亜人の街ではなく、ライドウ様の世界。ライドウ様の民であれば、誰でも住める」

契約の真実

二人はライドウの住む大きな建物に案内された。そこではオークのケイトをはじめ、さまざまな種族が集まり、姉妹を迎えた。エヴァは改めて契約の内容を口にした。「ライドウ様がケリュネオンを取り戻してくださる。その代わりに、私たちのすべてを捧げる」

しかし、ケイトはその言葉を冷静に聞き流し、「では、具体的にどうするつもりか?」と問いかけた。

エヴァは、ライドウが直接ケリュネオンを治めると考えていたが、それは否定された。ライドウは姉妹に別の役割を求めていたのだ。

「貴女たちは、ケリュネオンを取り戻した英雄となるのです」

ケイトは、姉妹が魔族を追い出し、亜人や魔物と手を組み、国を救った英雄としての物語を描いていた。それはあまりにも現実離れした話であり、エヴァとルリアは反論しようとしたが、ケイトはそれを許さなかった。「これはライドウ様の計画なのです」と断言した。

さらに、ケイトは続けた。「戦闘能力は期待していません。だが、国を運営するための政務能力を身につけてもらいます。貴女たちは生まれ変わるのです」

姉妹はこの言葉に震えた。彼女たちの考えていた契約の内容は、ライドウが描く未来とは大きく異なっていた。

エルダードワーフの技術と街造り

イシュは姉妹を連れて、エルダードワーフの集落へと移動した。そこでは鍛冶職人たちが大量の武具を製造しており、その技術力の高さにエヴァとルリアは圧倒された。イシュは「これは最低限のもの」と言い、さらに高品質な装備も用意できると語った。

次に、二人は建築や土木の現場へと案内された。そこでは家が次々と建てられ、道が短時間で舗装されていた。魔術を駆使した驚異的な技術によって、街造りが進められていたのである。

エヴァはその光景に目を奪われながらも、「この技術があれば、ロッツガルドの復興も容易だ」と呟いた。しかし、イシュは「まずはケリュネオンで使うべき技術だ」と指摘した。

この街の建設には順序があり、一つ一つ着実に進める必要があった。イシュは、エヴァとルリアにその考え方を学ばせるつもりだった。

新たな運命の始まり

エヴァとルリアは、ライドウの計画の全貌をまだ完全には理解していなかった。しかし、ケリュネオンが確実に復活することは分かっていた。

ルリアは思った。これはライドウとの約束であり、彼は必ずそれを実行する人物だと。もはや二人にとって、後戻りはできない。

「私たちはもう、落ちていくしかない」

ルリアの顔には、すべてを受け入れた笑みが浮かんでいた。イシュはその表情を見て、満足げに頷いた。そして次の学びの場へと二人を導いていった。

こうして、アーンスランド姉妹の数奇な運命が、本格的に動き出したのである。

陶芸との出会いと初日の終わり

夜の闇が村を包む頃、エヴァとルリアはイシュとともに霧の柱まで戻った。イシュは二人に、若様の屋敷に部屋が用意されており、食事と睡眠はそこで取るようにと伝えた。ケイトが案内役を務めるとも付け加えた。

ルリアは、最後に見せてもらった陶芸に強い興味を示し、「もっと勉強したい」と意気込んでいた。一方、エヴァは「泥をこねる感触に慣れなかった」と苦笑しながらも、ここに来た時よりも生気を取り戻していた。

イシュは「陶芸も若様が教えてくれたものだ」と語り、ケリュネオンに持ち帰ることも可能だと伝えた。ルリアはこの技術を学ぶことに積極的だったため、イシュは「ルリアが陶芸の発展を担うだろう」と期待を寄せた。そして、「ルリアの適性が高い部分が多いなら、エヴァが別の部分を負担することになる」と告げた。

エヴァが「他とは何か?」と尋ねるも、イシュは笑うだけで答えず、「すぐに分かる」とだけ言い残した。そして、二人に「ケイトが待っている」と促し、霧の柱へ送り出した。

二人の背中を見送りながら、イシュの表情にはわずかな同情が浮かんでいた。しかし、その感情は静かに消え、彼は工場へと戻った。

二時間目の開始

転移を終え、二人が真の家に戻ると、そこにはハイランドオークのケイトが待ち構えていた。彼女は冷たい目を光らせながら微笑み、「二時間目はハイランドオークが担当する」と告げた。

ルリアは「ご飯を食べたら休めるのでは?」と期待していたが、ケイトはそれを笑いながら否定した。「講義の後で食事を取る」と説明し、「農作業や狩猟は生きるために不可欠だから」と付け加えた。さらに、「寝る時間は数日後になる」とあっさりと述べた。

エヴァとルリアは、寝られないという事実に驚愕しながらも、ケイトの説明を受け入れるしかなかった。

エマという脅威

ケイトは、「最初の指導役が自分であることを幸運に思うべきだ」と語り、二人が戸惑う中、「いきなりエマが指導していたら、何回壊されるか分からない」と続けた。

エヴァは「エマとは誰か?」と問いかけたが、ケイトは「若様に仕えてから無茶をするようになった娘」とだけ答えた。さらに、「異種族の言語を一日で覚えさせるくらいの勢いで指導するだろう」と予測し、エヴァとルリアの顔は恐怖に引きつった。

ケイトは「エマに指導されれば、終わる頃には“エマ様”と呼んでいるだろう」と冗談めかして笑ったが、その笑顔にはまったく温かみがなかった。

終わりの見えない授業

ケイトは「私はまだ優しい方」と告げ、「エマの出番はしばらく先だ」と説明した。そして、「ケリュネオンの英雄姉妹になるのだから、怯えてはいられない」と二人に厳しい現実を突きつけた。

こうして、アーンスランド姉妹の過酷な訓練の日々が幕を開けた。外の世界の動向を知ることもなく、彼女たちは“人生で最も苛烈な時間”を過ごすことになるのだった。

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image-58 小説【ツキミチ】「月が導く異世界道中 9巻」響と再会? 感想・ネタバレ
月が導く異世界道中
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漫画版 月が導く異世界道中 シリーズ

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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