小説【星間国家】「俺は星間国家の悪徳領主!10」感想・ネタバレ

小説【星間国家】「俺は星間国家の悪徳領主!10」感想・ネタバレ

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どんな本?

本作は、異世界転生をテーマにしたSFコメディライトノベルである。主人公リアムは、前世での善良さが仇となり不遇な人生を送った反省から、新たな人生では「悪徳領主」を目指すことを決意する。しかし、その行動が周囲からは善行と受け取られ、皮肉にも彼の評価は高まっていく。第10巻では、師匠の安士に背中を押され、リアムがロゼッタとの結婚式を決意するが、皇位継承権を巡る代理戦争に巻き込まれ、結婚式が中止の危機に陥る。それでもリアムは逆転の一手を打ち出し、困難に立ち向かう。

主要キャラクター
• リアム・セラ・バンフィールド:本作の主人公。前世の反省から悪徳領主を目指すが、その行動が周囲には善行と受け取られる。
• ロゼッタ:リアムの婚約者。彼との結婚を心から望んでおり、共に困難に立ち向かう。
• 安士:リアムの師匠であり、彼の成長を支える存在。リアムの結婚を後押しする。

物語の特徴

本作の魅力は、主人公リアムの「悪徳領主」を目指すという逆説的な目標と、その行動が周囲から善行と解釈されるというユニークな展開にある。また、SF要素とコメディ要素が巧みに融合されており、読者に新鮮な驚きと笑いを提供する。第10巻では、結婚と皇位継承争いという二つの大きなテーマが交錯し、物語に深みを加えている。

出版情報
• 出版社:オーバーラップ文庫 
• 発売日:2025年3月25日
• ISBN:978-4-8240-1113-8 
• 価格:858円(税込)

読んだ本のタイトル

俺は星間国家の悪徳領主!10
著者:三嶋与夢 氏
イラスト:高峰ナダレ  氏

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あらすじ・内容

2025年4月TVアニメ放送! 結婚と皇位継承争い、W決着!?
善良さ故に奪われ続けた前世の反省から「悪徳領主」を目指すリアム。師匠の安士に背中を押され、彼はついにロゼッタとの結婚式を挙げることを決めた。しかし皇位継承権を賭けた代理戦争に巻き込まれ、結婚式は中止の危機に陥ってしまう。それでも最初は決着を急ぐ気のないリアムだったけど――
「わたくしはダーリンと一緒にいるのが幸せなの」
敵の姦計も味方の裏切りも食い破る、逆転の一手を打ち出すのだった! 一方、戦争の裏ではリアムを排除するため最凶の刺客が生まれようとしていて……!?
悪徳領主が目標なのに花嫁を幸せにしちゃう(?)勘違い領地経営譚、第10幕!!

俺は星間国家の悪徳領主!10

クレオの裏切りと皇帝の計略

  • クレオは皇帝バグラーダとの面会で、バンフィールド家への依存を咎められた。
    • リアムへの嫉妬と劣等感から独立した戦力を整備していた。
    • カルヴァンとの裏での同盟を結び、案内人の期待を受けつつリアムへの謀略を進めた。
  • クローン兵とAI機動騎士の禁忌兵器開発が開始された。
    • テオドルの提案でリアムのクローンとAIを融合させた兵器が計画された。
    • クレオは自身に傷を負わせることで計画の正当性を演出した。

遺伝子奪取事件とティアたちの責任問題

  • リアムの屋敷が襲撃され、遺伝子が盗まれた。
    • テオドルの指揮下で案内人が暗部を出し抜き、奪取を成功させた。
    • ククリが責任を問われるが、リアムは処罰を見送り再起の任務を与えた。
  • クレオはバンフィールド家を遠ざけ、独自の親衛隊を用意した。
    • リアムはククリとクラウスを首都星に派遣し、事態の掌握を図った。

代理戦争の開幕とロゼッタの複雑な思い

  • クレオとカルヴァンの代理戦争として、惑星シャルローの領有権を巡る戦争が始まった。
    • リアムは戦争の総大将に指名され、結婚式を延期して出征を決意した。
    • ロゼッタはリアムとの未来に不安を抱きながらも、彼の無事を祈った。

腐敗したグリン男爵とテオドルの陰謀

  • グリン男爵領は荒廃し、男爵は支援物資を私用していた。
    • テオドルはこの状況を利用し、リアムを足止めする意図を持っていた。
  • クローン開発は難航し、3588番という少女のみが生き残った。
    • 彼女は失敗作とされながらも、案内人の手で戦力として育成されることとなった。

艦隊戦直前の緊張と裏切りの種

  • リアムの艦隊は準備不足の惑星に到着し、クラウスが簡易基地の建設を指揮した。
    • テオドルは責任を放棄し、裏で情報撹乱を進めていた。
  • リシテアはクレオの変化に不安を感じつつも、立場上口出しできなかった。
    • クレオは自身の中にある憎悪を燃やし、帝位への野望を露わにした。

3588番と案内人の育成関係

  • 3588番は案内人の導きで生きる希望を得た。
    • 教育や絆を通じて、リアムを倒すための存在として育てられていく。
  • 一方で、リアムはクルトや他貴族とともに戦力再編と戦略立案を行っていた。

敗北と反攻:芝居の反撃作戦

  • テオドルの陰謀が明るみとなり、リアムは戦場での敗北を装って反撃の準備を整えた。
    • ティアが地上戦に突入し、腐敗したグリン男爵を領民に裁かせた。
  • クルトも戦線に加わり、赤い機体ガーベラと交戦。
    • 3588番はリアムの模倣として現れたが、クルトにより制圧された。

AI兵器との決戦とアヴィドの覚醒

  • 四機の白いAI機体が戦場を蹂躙し、ネヴァンらを圧倒した。
    • リアムはアヴィドで出撃し、激戦の末に新機能を開放。
  • 敵AIを操る能力により一部機体を鹵獲するも、他の機体は破壊してしまった。
    • マリーが誤解から出撃し、リアムを援護した。

結婚と新たな誓い

  • リアムとロゼッタの結婚式が執り行われ、家臣たちからの祝福を受けた。
    • 案内人の妨害も神聖な加護により跳ね返された。
  • 式後、リアムは「質素な生活」を宣言し、悪徳領主としての信念を保とうとしたが、ロゼッタとの絆が確かなものとなった。

帝国崩壊への第一歩とリアムの決断

  • クレオが皇太子に即位し、リアムは彼と決別。
    • 帝国の腐敗と真の敵バグラーダ皇帝を打倒する決意を固めた。
  • クラウスの現実的な助言により、まずは四百万隻の維持戦力を確保する領土拡張を目指すこととなった。

贈り物とクローンの行方

  • リアムはロゼッタへの贈り物として惑星を検討したが、周囲の反対で思い直した。
    • クルトとの通信で、3588番(リリー)を引き取ることを決断。
  • 帰還後、盛大な歓迎を受け、リアムはロゼッタとの結婚の意味を再確認した。

新生活と過去の影

  • カルヴァンは開拓惑星で家族と共に慎ましく暮らしていた。
    • 元皇太子である自分が処刑されなかったことに納得し、リアムの寛容さを評価していた。
  • クルトはセシリアとともにリリーを妹のように保護し、彼女の無邪気さに癒されていた。
    • リリーは案内人への感謝からナイフの具現を送り、案内人は致命的な傷を負った。

感想

モブせかの広告用に書かれていた星間国家がアニメ化。
web版から追いかけていた自身にとっては非常喜ばしい。

代理戦争という名の陰謀劇

今巻では、リアムが属する皇太子第二候補のクレオ派と皇太子候補筆頭のカルヴァン派との代理戦争が、グリン男爵領を舞台に始まった。
だが、その戦場には最初から裏切りが仕組まれていた。
舞台となる男爵領の領主グリン男爵と督戦として派遣された中将テオドルが密かにカルヴァン側に通じていたため、リアムの作戦は常に先読みされ、連戦連敗という苦境に陥ったのであった。
部下たちとの信頼も揺らぎ、戦場の空気は険悪となっていった。

劣勢からの逆転と陰謀の終結

裏切りの証拠を掴んだリアムは、見事な策略で反撃を開始する。
部下のクラウスやティアの助言も取り入れつつ(?)、組織分解を演じて敵を男爵領におびき寄せて一網打尽にする作戦を決行した。
結果として、敵艦隊は壊滅し、裏切り者たちにも厳しい裁きが下された。
敗戦を演じたリアムは多くを失いながらも、戦局をひっくり返し、名実ともに勝者として帰還したのである。

新たなる脅威とクローン少女の登場

その最中、人工知能で動くアヴィドの後継機である白い機動騎士たちが現れ、バンフィールド家の部隊を次々と撃破して行った。
中でも赤い機体ガーベラに乗るクローン少女3588番は、リアムに酷似した存在であり、強力な戦闘力を誇っていた。
彼女は過去の実験の産物で、リアム打倒のために育てられたが、幼く体力が無くスタミナ切れで最終的にクルトとの戦闘に敗れ、捕縛された。

案内人と人工知能との激戦

リアムはアヴィドで出撃し、人工知能が操る機体4機と直接対決する。
途中、案内人が強化のために暗躍したが、リアムは覚醒したアヴィドの新たな力で敵機を支配下に置き、戦局を掌握した。
この戦いでは、神秘的な存在である「光の巨人」までもが現れ、リアムを守るように振る舞った。案内人はその力に恐れをなし、戦場から逃げ出すこととなった。

結婚式と新たなる誓い

戦争終結後、リアムとロゼッタの結婚式がついに執り行われた。
家臣たちの心温まる支援と、リアムの本心を知ったロゼッタの無垢な笑顔が印象深い場面であった。
式の裏では案内人が妨害を試みたが、神聖な加護によって撃退され、リアムとロゼッタの絆はより強固なものとなった。

帝国との決裂と未来への一歩

皇太子となったクレオの裏切りが確定し、リアムはバンフィールド家を帝国から切り離すことを部下に宣言した。
帝国打倒を決意した彼は、今後の戦いに備えて勢力の拡大と領地の発展に注力する方針を示した。
家臣たちもそれに従い、帝国との全面戦争への道が動き出したのである。

クローン少女と案内人のその後

クローン少女3588番はクルトに保護され、新たな人生を歩み始めた。
彼女の存在が何を意味するのか、まだ定かではないが、物語に大きな影響を与える存在となるであろう。
一方、案内人はまたしても敗北し、次なる策を練っている様子が描かれていた。

総括

本巻は、戦争と陰謀、裏切りと信頼、そして成長と再出発が織り交ぜられた濃密な内容であった。
特にクローン少女3588番の登場と、リアムの更なる成長が大きな見どころであった。
リアムが真の悪徳領主(名君)であることを証明するのか、それとも変わっていくのか、次巻の展開が非常に楽しみである。

ちなみにリアムのハーレムは天城を入れて2人である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ

皇帝との面会とクレオの葛藤

クレオはアルグランド帝国の首都星にある宮殿で皇帝バグラーダと面会した。壮麗な惑星を覆う金属の外殻に象徴される帝国の中枢で、父である皇帝に呼ばれたクレオは、緊張の面持ちでその質素な居室に足を踏み入れた。バグラーダは優しげな外見で接したが、その言葉の裏には深い意図があった。皇帝は、クレオがバンフィールド家の力を借りて地位を得たことに懸念を示し、その依存が帝国を危うくすると警告した。

クレオは自らの力を得るために親衛隊を組織し、独自の戦力を準備していたが、それはリアムへの嫉妬と恐れが動機となっていた。バグラーダはその感情を見抜き、リアムの支配を断ち切るためにクレオが自立すべきだと諭した。クレオは父の言葉に動揺しつつも、帝国の未来のためという大義名分のもと、リアムを超えることを決意した。

クレオの裏切りとカルヴァンとの同盟

面会を終えたクレオは姉のリシテアに体調の悪さを伝えながら、裏で皇太子カルヴァンと手を組む決意を固めていた。バンフィールド家の影響力を恐れた彼は、案内人の気配も漂う宮廷内で、カルヴァンの居城に乗り込み、バンフィールド家の護衛たちを粛清。忠臣たちを裏切ったクレオは、その覚悟を示すことでカルヴァンとの協力関係を築いた。

カルヴァンはクレオの裏切りを疑いながらも、リアムの脅威を前にその提案を無視できず、両者は共闘を決断する。案内人はこの裏切りの光景に歓喜し、人間の負の感情の強さに感動していた。

禁忌の計画と戦力準備

クレオはリアムに対抗するため、リアムのクローンと人工知能を用いた機動騎士を提案した。この禁忌技術の使用にカルヴァンは困惑するが、リアムに敗北した未来の恐怖から協力を選んだ。アヴィド級機体の調達とパイロットの準備という過酷な要求にも関わらず、クレオの不敵な笑みと決意がそれを正当化していた。

案内人もまた、リアムの遺伝子取得という計画の穴を補うべく助力を決意し、戦いの火蓋が切られた。クレオはリアムの信頼を欺くため、自らに傷を負う手段を選び、計画の本気度を示した。

テオドルの登場と陰謀の深化

クレオは親衛隊に加えたテオドルを呼び出し、禁忌計画の実行を命じた。準男爵である彼は、かねてよりリアムに敵意を抱いており、クローンと人工知能の案を献策した張本人であった。忠誠心と野心を抱くテオドルは任務に意欲を燃やし、クレオはその危うさを理解しつつも利用価値を見出していた。

かつて忠義を尽くしたリアムへの裏切りは、国家の未来という名目を盾にした冷酷な策謀であり、クレオはその歩みを止めることなく、帝位への野心を燃やしていた。

第一話  逆恨み

遺伝子奪取事件とそれに伴う動揺

テオドルの過信と案内人の憂慮

テオドルは自身の出世と地位に酔いしれ、リアムを侮る姿勢を見せていた。部下からの懸念に対しても高圧的に振る舞い、案内人を苛立たせた。案内人は本来なら失敗を楽しむ立場であったが、リアムを殺すためには手助けが不可欠と判断し、嫌々ながらも支援を決めた。

シエルとの対話と結婚への決意

リアムはシエルに婚約に関する告げ口を咎め、怒りを見せた。だが、本心ではロゼッタの爵位を目的として結婚の意思を固めていた。シエルが抗おうとする姿勢は、リアムにとって都合のよい刺激であり、むしろ好意的に受け取られていた。

屋敷への侵入と遺伝子の喪失

執務中に爆発音があり、暗部の護衛から屋敷への侵入を知らされた。クナイの報告により、賊がリアムの遺伝子を盗み逃走した事実が明らかになった。財産や命ではなく、遺伝子のみを目的とする異質な侵入にリアムは困惑した。

奪還者たちと案内人の犠牲

テオドルの指揮する部隊は、ククリの部隊と接触することなく遺伝子奪取に成功した。彼らは暗部の能力を軽視したが、裏では案内人が身を削って介入していた。案内人は肉体を失う代償を払いつつも、任務成功に導いたが、報われぬ苦労に涙を流した。

ククリへの査問と処遇

遺伝子を奪われた責任を問われたククリは、命をもって償う姿勢を見せた。ティアとマリーは厳しく非難したが、クラウスの助言によりリアムは処罰を見送った。ただし、犯人追跡の任を命じ、信頼回復の機会を与えた。

クレオ襲撃と信頼喪失

クレオの護衛任務が失敗し、バンフィールド家への信頼が揺らいだ。彼は独自の親衛隊を用意し、リアムの申し出を拒絶した。ティアとマリーはその態度に不満を示しつつも、首都星の状況把握のための派遣を提案した。

ククリの再任命とクラウスの役割

リアムは首都星への派遣にククリを選び、クラウスにその支援と編成を任せた。ティアとマリーの性格に難を感じつつ、クラウスの冷静な対応力を評価していた。

クラウスとククリのやり取り

任務終了後、ククリはクラウスに恩返しを申し出たが、クラウスは暗殺を拒否し、むしろ守護を依頼した。ククリは了承し、クラウスは暗部との関係を築くこととなった。自らの実力に自信がないクラウスであったが、リアムの信任に応えるべく振る舞いを整えていた。

第二話  代理戦争

結婚式の準備とバンフィールド家の隆盛

リアムは、貴族社会の慣習に従い、ロゼッタとの結婚式の準備に追われていた。執事ブライアンは、参加希望者の多さとバンフィールド家の繁栄に感激していた。リアムは過去を振り返り、ここまでの道のりは案外容易だったと感じていたが、成功の背景には案内人の加護があると考えていた。一方、援助目当ての貴族たちの図々しさには辟易していたが、悪党として彼らを利用することに興味を抱いていた。

クレオの決断と代理戦争の兆し

天城からの緊急連絡により、首都星で領土を巡る貴族間の紛争が起こったことが報告された。クレオはこの問題に対し、リアムを総大将として軍を派遣すると公言していた。これは表向きは貴族の争いであるが、実際にはクレオと皇太子カルヴァンの代理戦争であった。リアムは予定されていた結婚式を延期せざるを得なくなり、戦争への準備を決意した。

ロゼッタの複雑な思い

ロゼッタは試着室で豪華なウェディングドレスに身を包み、感動とともにその高価さに戸惑っていた。マリーは妥協を許さず、さらにドレスの予備や別デザインの準備を命じた。しかし、リアムからの連絡で結婚式が中止になる可能性を知らされたロゼッタは、落胆しながらもリアムの決断を受け入れた。

マリーの覚悟と過去の因縁

マリーはロゼッタを守る決意を新たにしていた。彼女はかつて親友だったクラウディア家の令嬢を守れなかった過去を抱えており、ロゼッタにその無念を託していた。帝国に対する怒りを抱えながら、彼女はヘイディとともに、敵対する皇子たちへの報復を誓った。

兵器開発の裏で進む陰謀

第七兵器工場では、技術少佐ニアスが上司からアヴィドを超える新たな機動騎士の開発を命じられた。依頼主はバンフィールド家ではなく、希少金属も勝手に流用される予定であった。武装騎士の監視のもと、ニアスと上司は逆らえば命の保証がないことを理解し、開発に着手することとなった。リアムの知らぬところで、新たな陰謀が着実に進行していた。

第三話  惑星シャルロー

惑星シャルローを巡る会議と派閥の緊張

帝国首都星の宮殿において、クレオ派の貴族たちが惑星シャルローの所有権を巡る会議に招集された。中央に立体映像として惑星が投影され、司会を任されたテオドル・セラ・ザックが議論を主導した。彼は準男爵家出身で無職だったが、クレオの親衛隊幹部という立場を得て自信に満ちていた。惑星シャルローにはレアメタルが存在し、それが争奪の原因となっていた。

シャルローを巡っては、グリン男爵とマイアット子爵の間で対立が起きていた。グリン男爵はクレオ派、マイアット子爵はカルヴァン派に属し、争いは継承権争いと直結していた。会議中、リアムはグリン男爵を白々しいと評し、レアメタルを目的とした争いに過ぎないと分析していた。

リアムの態度とクレオの指示

会議の場でリアムは、グリン男爵の救援要請に対して協力を渋ったが、クレオからの要請により支援を引き受けることとなった。立体映像を通じて、クレオはリアムに物資と人員の支援を求め、彼の過去の怪我を暗に示して譲歩を促した。リアムは渋々ながらも了承した。

クレオ陣営内の不満と軍監の派遣

会議後、テオドルはリアムの対応に不満を表明したが、リシテアがクレオ派閥の現状とリアムの貢献を指摘して諫めた。クレオはテオドルに軍監としてリアムの艦隊に同行するよう命じ、その地位と責任を与えた。テオドルはこの命令を喜んで受け入れたが、リシテアはその判断に懸念を示していた。

主力貴族との会談と艦隊の構成

リアムはクルトの父エクスナー男爵、フランシス、ジェリコと共にクレオ派閥の今後を協議した。三人はいずれも信頼できる実力者であり、親衛隊の戦力と指揮官テオドルの実戦経験不足に懸念を抱いていた。ジェリコは参加を拒否するよう提案したが、リアムは表向きは歓迎の姿勢を示したことで、彼の裏に意図があると理解された。

結婚式の延期とロゼッタの見送り

エクスナー男爵はリアムの結婚式について懸念を示したが、リアムは戦争が長引くことを理由に延期を受け入れていた。出発の際、ロゼッタが宇宙港で見送り、リアムの無事を祈った。リアムはこの戦争が長引くことで独身でいられることに内心満足していたが、ロゼッタの健気な笑顔に複雑な感情を抱いていた。

戦争の見通しとリアムの決意

戦争が数十年に及ぶ可能性を仲間たちは警告したが、リアムはその長期化を肯定的に捉えていた。だが、ロゼッタの笑顔が心に残り、彼の決意に微かな影を落としていた。彼はまずカルヴァンに勝利することに専念すべきと考え、全てを戦いの結果に委ねる姿勢を取っていた。

第四話  グリン男爵

惑星シャルローを巡る戦争準備と暗躍

リアムの出発とロゼッタの祈り


バンフィールド家の艦隊が出発する日、ロゼッタはリアムの見送りに訪れた。天城とブライアンも同行し、ロゼッタが当主代理としてふるまう姿勢を周囲に示した。リアムは平然とした態度を保ち、これまでの勝利経験から自信を見せていたが、ロゼッタはただ無事を祈り続けていた。

グリン男爵領の荒廃と貴族の腐敗

グリン男爵家の領地は環境破壊により著しく荒廃していた。シュラスト・セラ・グリン男爵は領民に関心を持たず、支援物資を横流しして私腹を肥やすことに終始していた。テオドルもこの腐敗に加担し、リアムの戦力をこの場に釘付けにすることで、自身の利益を追求していた。

バンフィールド艦隊の到着と混乱

リアム率いる艦隊は三十万隻を動員してグリン男爵家の領地へ到着した。だが、受け入れ準備は整っておらず、宇宙港や補給施設すら存在していなかった。副官マリーとティアは対応の不備に激怒し、通信でテオドルを問い詰めたが、彼は傲慢な態度で責任を押し付けた。リアムはクラウスの指揮で簡易基地の建設を進めた。

クレオの内心とリシテアの葛藤

首都星ではクレオの姉リシテアがリアムの安否を気にかけ落ち着かない様子を見せていた。クレオは内心でリシテアの善性を甘さと捉え、自身がリアムの傀儡になる未来に強い嫌悪を抱いていた。彼の中には憎しみが募り、リアムへの反発が強まっていた。

研究所でのクローン開発の失敗

テオドルは秘密の研究所でリアムのクローン開発を進めていたが、多くの個体が失敗し焼失していた。唯一生き残った個体3588番は、女性として誕生し、十分な能力を発揮できないと評価された。不完全な存在とされた彼女に対し、テオドルは保身のため機動騎士のパイロットとして利用するよう命じた。

リアムと副官たちの判断

リアムは補給基地の建設を進める中、惑星の荒廃ぶりに呆れていた。副官ティアとマリーは不満を抱きつつも忠実に任務をこなした。リアムはグリン男爵領の価値を疑問視しつつも、皇帝継承戦という大義のために戦いに臨む覚悟を見せていた。

クローン少女の運命とテオドルの打算

クローン少女3588番は唯一生き残った実験体として、テオドルの都合で「成功例」として機動騎士のパイロットに指定された。本来破棄されるはずの存在であったが、証拠隠滅ではなく名目上の成果として利用されることが決定された。彼女の存在は、リアムへの歪んだ模倣であり、同時にテオドルの自己保身の象徴でもあった。

第五話  子育て

リアムと3588番の育成計画と戦争前夜の交錯

閉ざされた部屋と少女の絶望


3588番は研究施設の何もない部屋で、毛布にくるまりながら自らを失敗作と嘆いていた。科学者たちに否定され、処分される恐怖に怯え、涙を流しながら孤独な日々を過ごしていた。

案内人との出会い

そんな3588番の前に、帽子の姿をした案内人が現れた。案内人は3588番を「リアムを殺す可能性を持つ奇跡の体現者」と称賛し、教育とサポートを申し出た。その言葉に励まされた3588番は、生きる希望を見出し、案内人と共に成長する決意を固めた。

育成と絆の形成

案内人は研究所から物資を調達し、3588番に絵本や玩具を与えて日々の楽しみを提供した。3588番は素直に案内人を慕い、リアムの抹殺という使命を疑うことなく受け入れていた。案内人はこの関係性を利用し、将来的な戦力として3588番を仕立てようと動いていた。

大艦隊の集結と貴族たちの宴

一方、クレオ派の大艦隊がグリン男爵家の本星近傍に集結し、旗艦アルゴスでは大規模な立食パーティーが開催された。戦争直前でありながらも、貴族たちは会議より社交の場を優先し、豪華な宴で士気を高めていた。

クルトとリアムの再会

リアムは旧友クルトと再会し、彼の忠誠と真面目さを再確認した。リアムは自身が譲った戦艦とヴァナディースをクルトが旗艦として使っていない理由を問うが、クルトは高価すぎることと、セシリア皇女を乗せるためと説明した。

戦略的配備と人質管理

リアムはクルトを後方部隊に配属し、他貴族の跡取りたちと共に安全を確保する計画を示した。貴族同士の争いに不慣れなクルトにとって、後方での役割は学びの場であり、リアムはそれを全面的に支援する姿勢を見せた。

裏切り者マリオンとの対話

クルトはかつてリアムを裏切ったマリオンと再会し、彼女が女装させられて罰を受けている状況を知った。マリオンはリアムの命令でこき使われていると語りつつも、裏で何かを探るような行動を取っていた。クルトは彼女に強い嫌悪感を抱きつつも対応を続けた。

シュラストとテオドルの陰謀

グリン男爵シュラストは料理と酒に舌鼓を打ちながらも、リアムを欺く工作を進めていた。テオドルは彼の浅はかさを内心で嘲笑しつつ、自らが軍監として情報操作を進めていく計画を明かした。両者はリアム陣営に内通しつつも己の野望のために動いていた。

リアムとユリーシアの私室騒動

パーティー解散後、リアムの部屋には秘書官ユリーシアがメイド服姿で待っていた。リアムは彼女の行動に困惑と怒りを示したが、ユリーシアは自分の立場と感情を訴えた。リアムは即座に拒絶したが、彼女は泣き崩れながらも離れようとしなかった。その最中、ククリからの通信が届き、場面は次なる展開へと進んだ。

第六話  背水の陣

第七兵器工場とカルヴァンの焦燥

レアメタルの接収と後継機の建造


アルゴスの艦内で、リアムはククリからの通信により、第七兵器工場がレアメタルを使ってアヴィドの後継機を建造している事実を知った。これは皇太子カルヴァン派の関与によるものであり、リアムにとっては裏切り同然であったが、状況を考慮し、救出よりも放置を選択した。むしろ後継機を完成させた後で奪取し、妹弟子たちのために利用する構想を抱いた。

カルヴァンの苦境と皇帝の命令

一方、宮殿ではカルヴァンが疲労困憊の状態で部屋を出てきた。皇帝との面会の結果、代理戦争で敗れれば皇太子の地位を剥奪され、身柄をリアムに委ねられるとの宣告を受けた。これにより、カルヴァンの命運はリアムの裁量次第となった。第七兵器工場を強制的に押さえたことで評価を落とした彼は、家族を守るためにも勝利を目指すしかなかった。

戦場での敗北とマリーの苛立ち

艦隊の敗北と指揮系統の混乱


マリーは、クレオ派の艦隊が壊滅したとの報告に激昂し、椅子を破壊するなど感情を爆発させた。指揮を担うティアの失敗に不満を募らせ、戦争が長引けばリアムとロゼッタの結婚がさらに遠のくことを憂いていた。ティアの敗北が続く状況に、マリーはアルゴス内部に裏切り者が潜んでいる可能性を疑い、クラウスへの情報共有を決断した。

リアムの前での対立とクラウスの沈黙

ティアの謝罪とテオドルの責任追及


ティアは敗戦の責任を感じてリアムの前で頭を垂れ、テオドルはその隙を突いて彼女を非難した。だがリアムはテオドルの越権を制し、ティアを擁護した。クラウスは傍らで控え、表面上は謙遜していたが、鋭い視線でテオドルの動きを監視していた。テオドルはその視線に恐れを抱き、会議を中断して退出した。

裏切り者テオドルとグリン男爵の陰謀

スパイ工作と情報撹乱の策略


客室に戻ったテオドルは、グリン男爵シュラストと秘匿通信を行い、裏切りの痕跡を隠すための情報撹乱工作を計画した。クラウスを裏切り者に見せかける偽情報を流すことで、自らの関与を隠蔽しようとした。また、シュラストは戦争のさなかに首都星に屋敷を建設するための援助を要求しており、その無責任な態度にテオドルですら呆れていた。

領民の不満とさらなる搾取

さらに、グリン男爵の領地では領民たちが不満を訴え屋敷に押し寄せていたが、彼は煩わしいと感じるのみであった。テオドルは騒動がリアムに知られることを恐れ、僅かな物資の配給を提案することで黙らせようとした。二人はなおもバンフィールド家からの搾取を続けようと画策していた。

クラウスの悩みと個人的な葛藤

胃薬と鼻毛への葛藤


会議を終えたクラウスは自室で雑務を片付けながら、テオドルの言動に疲弊して胃薬を服用していた。艦隊の統率を乱すテオドルの存在に頭を悩ませていたが、それ以上に彼の鼻毛が気になって仕方がなかった。注意すべきか葛藤しつつ、リアムの近くにいる立場上、こうしたことに気付いてしまう自分の運命にため息をついていた。

リアムからの呼び出し

胃薬で落ち着いた矢先、クラウスはリアムからの呼び出しを受けた。彼の定位置がいつの間にかリアムの側になっていることを自覚しつつ、再び胃に負担がかかる事態に備えた。

第七話  バンフィールド家の日常

シエルの旅立ちとバンフィールド家の日常

幼年学校への進学を迎えたシエルは、バンフィールド家の屋敷での修行期間を終え、ロゼッタに感謝を述べながら別れの挨拶を行った。ブライアンとセリーナは感慨深げな反応を見せたが、セリーナは将来的にシエルが再び戻ってくる予定であることを指摘した。シエルの過去の問題により、彼女は軍役を免除されており、バンフィールド家への帰還が予定されていた。シエルはリアムの監視という使命感も抱き、早期の帰還を誓っていた。

チノとの別れとロゼッタの同行

宇宙港へ向かう直前、シエルは泣きながら駆け寄ってきたチノに抱きつかれ、別れを惜しまれた。チノの寿命に対する感覚は短く、二十年を「永遠」に近いと捉えていた。ロゼッタは二人の別れに付き添う形で、宇宙港まで同行を申し出た。

移動中の会話とロゼッタの想い

移動中のリムジンでは、チノがシエルに膝枕を受けて眠り、戦争の実感が薄いことが語られた。ロゼッタはリアムとの結婚式が実現しない可能性に寂しさを覚えていたが、リアムの無事な帰還こそが最も望ましいことだと語った。シエルがリアムの無責任さに疑問を抱く中、ロゼッタは自身の過去の辛い経験と、現状の幸福を語り、本当に大切なものを見失わないよう諭した。

ロゼッタの教育と祈り

ロゼッタは自らの不遇な過去を振り返りながら、幸福を当然と思う危険性と、それを支える人々の存在を重視すべきであるとシエルに教えた。結婚式は叶わなくとも、リアムと共に生きられることに満足しており、彼の無事を心から願っていた。

リアムの反応と過去の痛み

遠征先で天城との通信を通じて、リアムはシエルの旅立ちを知り、寂しさを覚えた。ロゼッタが自分の無事を祈っていると聞いても、彼はそれを真に受けず、むしろ事務的に婚姻手続きを済ませようと考えていた。しかし、天城がロゼッタとシエルの会話を記録した映像を見せたことで、リアムは自分の過去の苦しみに重なるロゼッタの言葉に心を打たれた。

リアムの決意と再評価

ロゼッタの語った「夢を思い描くほど現実の残酷さに直面する」という言葉が、リアムの古傷を深く抉った。過去の自分を思い出し、胸を押さえながら苦悶する中で、リアムはロゼッタを侮っていたことを認めた。彼女の強さと本質を再評価し、新たな行動を起こすためにウォーレスの召喚を命じた。

第八話  勝利条件

カルヴァン戦線と裏切者の発覚

ティアとマリーの失態により、リアムの艦隊は劣勢に立たされていた。リアムはクラウス、ティア、マリーを呼び出し、敗因の説明を求めた。ティアとマリーは互いに責任をなすりつけながらも、戦争終結の目標期間を十年と主張した。しかしリアムは二年以内の勝利を命令し、部下たちに大きな負担を課した。

裏切者の正体と戦争の構図

ティアとマリーは、艦内に裏切者がいることに薄々気付いていた。クラウスは日々届く怪しい情報の数々から、特定の人物が意図的に混乱を引き起こしていることを把握していた。リアムは独自の調査で確証を得ており、諜報活動を行っていたマリオンにグリン男爵と軍監テオドルの不正を暴かせた。これにより、戦争そのものが仕組まれたものである可能性が浮上した。

リアムの決断と部下たちの葛藤

リアムは、裏切者を排除し、二年以内に戦争を終わらせるよう命じた。クラウスはテオドルがクレオ皇子派の親衛隊であり、グリン男爵がその支援対象であるため、この命令は極めて無謀だと進言した。しかしリアムは命令を撤回せず、策を求めた。ティアは敵主力への一点突破、マリーは敵本拠地への奇襲を提案するも、いずれも犠牲や評判低下の懸念が大きく却下された。

クラウスの苦肉の策と採用

クラウスは消極的な策として、戦争を一時放棄して敵を惑星に誘導し、敵を一網打尽にする案を提案した。これはリアムの名声を損なう作戦であり、ティアとマリーは強く反対した。だがリアムは目的達成を最優先とし、クラウスの案を即断で採用した。マリオンは話を聞いたため拘束されたが、リアムに従う姿勢を見せた。

リアムの意図とマリーの決意

リアムは、二年以内に戦争を終結させたい理由を明かさなかったが、マリーはその本心を察した。ロゼッタとの結婚式を予定通りに挙げるため、リアムは名声を捨てても早期勝利にこだわっていた。感銘を受けたマリーは、ティアに代わって全軍の指揮を任されることとなり、リアムのために全力を尽くす覚悟を固めた。

第九話  釣り

リアムの反撃と裏切りの報い

リアムの孤立と部下の離反

リアムが率いる派閥は崩壊しつつあった。開戦から半年が過ぎ、クレオ派の貴族たちはリアムに失望を示し、彼を責め立てた。カルヴァン派が勢力を拡大する中で、支配地域を失い、多くの艦隊が戦線を離脱した。リアムは怒気を放ち、撤退や交渉を進言するティアやマリー、さらにはクラウスまでも排除し、自ら孤立を深めた。テオドルはその状況に満足し、裏で進めていた計画の最終段階へと移った。

裏切り者たちの通信と降伏計画

テオドルは同調者シュラストと通信を取り、グリン男爵への降伏準備を指示した。事前に決めていた台詞を用い、敵に聞かれても違和感のないように偽装した。リアムから借りた艦隊を引き渡す算段まで整えられていた。テオドルはカルヴァンとクレオ両方に恩を売り、大貴族への道を妄想して満足げに笑みを浮かべた。

カルヴァンの勝利と不安

カルヴァンはバンフィールド家の敗北とグリン男爵領の制圧報告を受け、勝利を確信したが、リアムが簡単に敗れたことに不信を抱いた。クレオとの協力にも不安を感じ、罠ではないかと疑いを深めた。リアムの存在がカルヴァンにとって最も恐るべきものであったからである。

戦場での逆襲の開始

グリン男爵の本星上空ではカルヴァン派の司令官たちが勝利を喜んでいた。だが突如として味方の艦艇が爆発し始め、エクスナー男爵家の紋章を持つ機動騎士が出現した。ヴァナディース・フレイを操るクルトが突入し、敵機動騎士を次々に撃破していく。彼の背後からは母艦が続き、エクスナー家の騎士たちも出撃して戦線を展開した。

地上戦とティアの突入

アコロジーではティアが陸戦隊を率いて侵入した。敵を圧倒しながら進撃し、隠れていたシュラストを発見。ティアは彼を容赦なく殴りつけ、領民の前で公開処刑にかけることを決断した。自らの罪を自覚せず逃げ延びようとするシュラストに対して、ティアは冷酷な裁きを下す意志を固めていた。

領民による制裁とティアの苛立ち

シュラストはアコロジーの広場に引き出され、怒れる領民たちによって刃を突き立てられた。彼らの怒りは凄まじく、次々に攻撃を加えられたシュラストは苦しみながら命を削られていった。ティアはその様子を見守りながらも、戦場で活躍できなかったことに苛立ちを感じていた。

ティアの心残りと復讐への未練

ティアは自分が艦隊を指揮できなかったことを悔やみ、テオドルを自らの手で裁けなかったことに不満を抱いていた。副官クローディアはリアムの配慮と理解しつつ、復讐の機会をクラウスに託すよう諭した。ティアの怒りは未だ収まらず、復讐心を抱きながら新たな戦いの幕を予感させていた。

第十話  ユリとガーベラ

裏切りと殲滅戦の幕開け

グリン男爵の星系において、リアムは自軍の戦況を超弩級戦艦アルゴスのブリッジから見守っていた。降下したクレオ派艦隊が敵を圧倒する中、クルトも機動騎士で戦果を上げていた。目を覚ました特務中将テオドルは状況に混乱し、リアムに抗議したが、グリン男爵が民衆によって処刑されていたことを知ると衝撃を受けた。リアムは、反攻作戦が芝居だったと明かし、テオドルの裏切りを告発した。テオドルは否定したが、クラウスも裏切りの事実を認め、リアムは彼を処罰すべくアキレス腱を切り、宇宙に放逐する命令を下した。

親衛隊への攻撃命令とマリーの出撃

リアムはクラウスに命じて、クレオ親衛隊への攻撃を指示した。クラウスは戸惑いながらも命令を受諾し、マリー率いる艦隊に命を伝達した。マリーは激怒し、裏切りを許さない姿勢で親衛隊の艦隊に殲滅命令を下した。マリーの艦隊は敵を包囲殲滅し、指揮官との交信も一蹴して攻撃を継続した。戦力を巧みに運用して敵を圧倒し、自らも機動騎士で出撃する決意を固めた。

案内人の焦燥とネオの出撃

一方、案内人は格納庫の瓦礫から傷を負った3588番を救出した。彼女を赤い機動騎士ガーベラへと案内し、リアム討伐の命を授けた。しかし、臨時司令官が戦況を誤認し、ネオ4機を本隊へ、ガーベラを地上戦へ振り分けてしまったことで計画が崩壊した。案内人は絶望しつつ、3588番が赤い機体で出撃する様子を見送った。

赤い機体との交戦とガーベラの実力

地上戦ではクルトが赤い機体ガーベラの登場に驚愕した。その姿はアヴィドに酷似し、高度な空間魔法を操りながら味方部隊を圧倒した。クルトは機体性能と技術の類似に戦慄しつつ、接近戦で戦った。会話の中で、敵がリアムの一閃を模倣していることが明らかになり、3588番の無邪気な性格と戦闘技術の落差に困惑を深めた。

ガーベラの暴走とクルトの苦戦

味方の援護射撃に背を向けたガーベラに対し、クルトは斬撃を浴びせるが、装甲に阻まれて決定打を与えられなかった。激昂した3588番は、ヴァナディース・フレイを猛攻し、クルトの機体をズタズタに切り裂いた。周囲の部下たちが悲鳴を上げる中、戦場は新たな脅威の登場により激しさを増していった。

第十一話  偽物


白い機動騎士による艦隊襲撃

バンフィールド家の艦隊が戦闘を繰り広げる中、惑星から出撃した四機の白い未確認機動騎士が、圧倒的な力で地上部隊および宇宙艦隊に甚大な被害を与えた。単機でも地上部隊を壊滅に追いやる実力を誇り、その行動はまるで無感情の殺戮機械のようであった。白い機体は敵艦を次々と破壊し、周囲の騎士団を切り裂きながら進撃した。

バンフィールド家の反撃とネヴァンの敗北

バンフィールド家の次世代機であるネヴァンたちが迎撃に出撃するも、白い機動騎士たちは合流して包囲に備える。ネヴァンの攻撃は悉くかわされ、ついには四肢を切断されて敗北した。その攻撃は人類の操縦では耐えきれない動きであり、敵が人工知能によって制御されている可能性が浮上した。

人工知能の脅威とリアムの出撃決断

司令部では敵機の動きから、人間ではなくAIによる操作と推定された。リアムはアヴィドの後継機が人工知能に制御されていることに気付き、自らの搭乗機アヴィドで出撃を決断した。味方部隊に撤退を命じたのも、さらなる無駄な犠牲を避けるためである。

マリーの激昂と戦場への出撃

リアムの出撃に対し、マリーは激怒し自らも出撃しようとする。ヘイディとのやり取りから敵機にAIが搭載されていると知った彼女は、命令を無視してリアムの救援に向かった。テウメッサを操り旗艦を爆破し、仲間たちと共に戦場へと進撃した。

アヴィドと人工知能騎士たちの交戦

リアムはアヴィドに搭乗し、四機の人工知能機動騎士と激戦を繰り広げた。アヴィドの性能と操縦技術で応戦するも、敵の連携と物量に押される場面も見られた。敵はリアムの戦法を模倣しており、戦場の動きも洗練されていた。リアムは機動で回避しつつ、相手の技量を見極めようとした。

クルトと3588番の戦闘

惑星グリンでは、クルトが搭乗するヴァナディースと、人工知能に導かれた赤い機体ガーベラの3588番が交戦した。3588番はリアムを倒すために作られた存在であったが、クルトはリアムを深く理解していたため戦闘を優位に進めた。最終的にガーベラは過負荷により機体性能が限界に達し、クルトに敗北した。

3588番の投降と正体の推測

ガーベラの機能停止後、クルトは3588番の少女を説得して投降させた。彼女の姿がリアムに酷似していることから、クローンの可能性をクルトは感じ取っていた。その姿に怒りと悲しみを覚えつつ、クルトは優しく彼女を保護した。

案内人の思惑と黒い力の介入

一方、戦場を遠くから見守っていた案内人は、人工知能機動騎士たちに黒い靄のような力を送り込んで強化を図った。彼はアヴィドに乗るリアムが、最終的に機体の限界により自滅することを狙っていた。

アヴィドの覚醒と光の巨人

アヴィドが攻撃に晒される中、リアムの精神力が具現化したかのように、光の巨人が現れた。その巨人はアヴィドに力を与え、黄金の光を纏わせて四機の人工知能機を迎え撃つ準備を整えた。

案内人の敗北と逃亡

案内人は現実世界に干渉する光の巨人の存在に恐れを抱き、戦場から撤退した。彼の予測は外れ、リアムは更なる力で敵を圧倒しようとしていた。案内人はリアムに対する呪詛を吐きながら、その場を後にした。

リアムの反撃開始

アヴィドは再起動し、四機の白い機動騎士に反撃を開始した。リアムは人工知能という敵に敬意を示しつつも、数の差を覆す意志を見せ、圧倒的な力で勝負に挑んでいった。

第十二話  結婚祝い

アヴィドと機動騎士たちの戦闘と新機能の覚醒

新機能の発現と敵機の制圧


リアムはアヴィドのコックピットで高揚感に包まれていた。新たに目覚めた機能により、アヴィドは敵機の人工知能を支配下に置く力を得た。リアムはこの力で後継機のうち二機を支配し、味方として反撃に利用した。二機は即座に再起動し、敵に向けて攻撃を開始。リアムはこの新機能を活かし、さらに二機の鹵獲を試みた。

一閃による敵機の撃破と代償

リアムは残る二機を原形のまま手に入れることを望み、手加減を前提とした一閃を放った。しかし、その威力は想定以上であり、敵機は完全に破壊され、利用不可能な状態となった。同時にアヴィドも限界を迎え、自壊寸前の状態に陥った。リアムはその結果に落胆しつつも、かろうじて制御を保った。

マリーの介入と混乱

マリーはリアムが捕らえられたと誤解し、アヴィドを救出するべく乱入。制御下にあった機動騎士を攻撃してしまった。リアムは彼女に攻撃中止を命じ、鹵獲した二機は結婚祝いとして妹弟子たちに贈る予定だと伝えた。マリーはその意図に困惑し、祝福の対象がロゼッタでないことにも疑問を抱いた。

戦況の収束と戦果の確認

戦況を確認すると、地上ではクリスティアナが制圧を完了しており、全体の戦闘も掃討戦へ移行していた。リアムは戦況を鑑みてアルゴスへの帰還を決断。テウメッサがアヴィドを回収し、リアムはマリーの援護を受けて帰還した。マリーはリアムの無理な戦術を指摘し、首都星での波紋を予見していた。

アヴィドの損傷と整備班の混乱

アルゴスの格納区画では、破損したアヴィドの修復に整備兵たちが奔走していた。フレームまで複雑に損壊していたため、内部再生すら年単位の時間がかかると診断された。整備班はリアムの操縦が原因だと分析し、第七兵器工場に修理を依頼する方針を固めた。

犬の観察とリアムの変化

半透明の犬がアヴィドの頭部付近に現れ、戦いを終えた彼の機体を労わる仕草を見せた。リアムが結婚祝いと称して機動騎士を贈る行動に困惑しつつも、犬は尻尾を振って喜びを表した。リアムがまた一つ過去を乗り越えたことを、彼なりに認識していたからである。

第十三話  皇帝

クレオの即位と皇帝バグラーダの真意

勝者マイアットと戦後処理の混乱


戦闘後、アルゴスはグリン男爵の惑星に降下し、マイアット子爵を戦勝者として称えた。だが、マイアットは後ろ盾を失っており、勝者としての立場に怯えていた。リアムは敗者の領地と借金の引き継ぎについて発言し、マイアットに領地の継承を強要した。マイアットは困惑しながらも、シャルローを差し出すことで条件を飲み、借金の肩代わりをリアムに委ねた。

継承権争いの決着とカルヴァンの敗北

首都では代理戦争の結果が伝わり、クレオが実質的な勝者と見なされた。敗北を認めたカルヴァンはクレオと対面し、今後の皇帝即位に対する懸念を語った。クレオはリアムへの敵意を露わにし、カルヴァンはリアムを敵としなかったことを後悔した。カルヴァンはクレオの器の限界を見定め、皇太子への就任を祝福して退いた。

クレオと皇帝バグラーダの謁見

皇太子となったクレオはバグラーダとの謁見に臨み、自らの性別に関する願いを申し出ようとしたが、先回りされて拒否された。クレオは実は女性であり、その事実を隠して生きてきた。バグラーダはその状況を玩具のように楽しんでおり、クレオの願いをあえて踏みにじった。さらにリアムとの確執を察したバグラーダは、嫉妬や敵意を持つクレオを肯定し、後押しする姿勢を見せた。

クレオの変化と決意

謁見を終えたクレオは後宮へ戻り、自分が女性であることを改めて受け入れた。リアムを倒すという決意を固め、自らの醜さと向き合うことに意味を見出した。クレオは、リアムを皇太子に選んだことが誤りであると断じ、自身が帝位を得ることで彼を打ち負かす覚悟を固めた。

バグラーダとの謁見とリアムの疑念

一方、リアムも皇帝バグラーダと謁見した。表向きは称賛を受け、爵位昇進の話が進んだが、リアムはバグラーダの異様な気配に不快感を覚えていた。彼はバグラーダの発言と雰囲気から、案内人が語った「真の敵」が誰であるかを確信した。バグラーダが常人とは異なる邪悪な気配を放っていたことが決め手となり、リアムは彼こそが真の敵であると判断した。

第十四話  白紙

帝国との決裂とリアムの新たなる決意

首都星での決別と対立の宣言


クレオが皇太子に即位したことで、首都星では彼の話題が中心となっていた。リアムはそのクレオに呼び出され、宮殿での面会に臨んだ。会話は形式的なものであったが、クレオは自軍を滅ぼされたことへの怒りをにじませていた。リアムは平静を装いながらも、クレオに裏切られた事実を確信していた。クレオはバンフィールド家を自派閥から排除すると通告し、リアムもそれを了承した。互いに冷静を装いながらも、内心では完全に敵対関係となっていた。

秘密会議での方針発表

首都星を離れたリアムは艦内でクラウスら側近たちを集め、クレオと敵対した事実を公表した。クレオの裏切りを告発したのはククリであり、彼女は暗殺も辞さない姿勢を示した。マリーも同様に激昂し、ティアとクラウスは穏便な方法を模索する立場であった。だが、リアムはクレオに皇帝の座を譲る意志を示し、彼を帝国最後の皇帝にすると宣言した。

帝国転覆計画と家臣たちの反応

リアムは、帝国そのものを滅ぼす構想を語り出した。帝位には興味がなく、目的は帝国そのものの崩壊であった。この宣言に対し、ティアやククリ、マリーらは歓喜し、リアムに全面的な忠誠を誓った。一方、クラウスは戦力差と現実的な見通しから反対意見を述べたが、ティアとマリーにより命の危機に晒された。ククリとチェンシーの介入により命を救われたものの、重い空気が場を支配していた。

クラウスの戦力分析と説得

クラウスは説得を続け、帝国と戦うには百万の戦力、四百万の維持戦力が必要であると論じた。これはあくまで戦後の安定を視野に入れた試算であり、無理をすればすぐに国家は崩壊すると訴えた。だが、ティアは自身の手腕で半分の戦力でも成し遂げられると反論し、話題は戦力の確保に移行した。

リアムの決断と目標の再設定

クラウスの提言を受けてリアムは四百万の艦隊を維持できる領地を築くことを目標に据えた。帝国との戦争はそれを達成してからであると明言し、全員に準備を命じた。クラウスの異名「常勝不敗の騎士」が彼の主張を強化する材料として用いられたが、クラウス自身はその評価に戸惑いを隠せなかった。

帝国との対決を視野に入れた動員方針

リアムは帝国との対決に向けて領内開発に集中することを宣言し、家臣たちはそれに従う姿勢を見せた。クラウスは本来、暴走を止めるつもりで忠告したが、結果としてリアムの覚悟をさらに強固なものにしてしまった。帝国との全面戦争が避けられない未来となり、クラウスはその責任の一端を感じながら頭を抱えていた。

第十五話  悪徳領主のプレゼント

ロゼッタへの贈り物と周囲の反応

リアムは帝国との戦いを決意し、その準備を進める中で、もう一つの悩みとしてロゼッタへの贈り物について相談を持ちかけた。惑星シャルローをプレゼントにしようとしたが、周囲からは常識外れとの反応を受けた。ティアやマリーは戸惑いながらも肯定的な態度を取ったが、ククリは管理責任の問題を指摘し、クラウスに至っては返答に窮していた。リアムは皆の意見を受け入れ、別の贈り物を検討することとなった。

クルトとの通信とクローンの譲渡

クラウスの通信により、リアムはクルトから緊急連絡を受けた。クルトはセシリア皇女との婚約が破談にできないことを謝罪しつつ、リアムのクローンの処遇について相談を持ちかけた。リアムは初め拒絶したが、クルトの真摯な願いに応じ、クローンの引き取りを認めた。ただし、搭乗機体についてはバンフィールド家で管理することを条件とした。クルトとの関係を維持するため、リアムはこの判断を下した。

バンフィールド星での帰還と歓迎

旗艦アルゴスでバンフィールド本星へ帰還したリアムは、領民たちの盛大な歓迎を受けた。透明な通路から姿を晒しながら進む彼のもとへ、ロゼッタが感情を抑えきれずに抱きついてきた。マリーやティアは制止に入ったが、ロゼッタは涙ながらに安堵の気持ちを伝えた。

式の準備と家臣たちの反応

式の準備が整っていたことを天城が報告し、ウォーレスが姿を現した。ウォーレスは一度中止された結婚式の再開に苦労したことを述べつつ、リアムのために式を整えたことを誇らしげに語った。続いてブライアンが涙ながらにリアムの心遣いを明かし、戦争を二年で終わらせた理由がロゼッタのためであったことが明らかになった。

家臣たちの温かな反応とリアムの抵抗

周囲はリアムの本心に微笑ましい反応を示したが、リアムはそれを否定し、自分のために行動したと主張した。怒りながらも式の準備を命じたリアムに対し、家臣たちは息の合った敬礼で応じた。リアムはその温かな空気に戸惑いと怒りを覚えつつ、悪徳領主としての自分の姿が崩れていくことを懸念した。

第十六話  バンフィールド公爵誕生

結婚式と誓い

緊張感漂う結婚式の舞台裏


結婚式当日、リアムとロゼッタは豪華な衣装に身を包み、式への登場を控えていた。貴族の儀式として、形式が重視される中、リアムは前世の経験を思い出しつつ緊張していた。ロゼッタも同様に落ち着かず、互いに気を遣い合う様子が周囲の注目を集めた。天城が機転を利かせ、ロゼッタの美しさを代弁したことで場の空気が和らぎ、リアムは居たたまれずにその場を離れた。

天城との感謝と未来への決意

控室を出たリアムは、天城に対して自身の成功が彼の支えによるものであると感謝を述べた。天城は変わらず従順に振る舞いながらも、リアムにはもはや自分の助けは不要だと告げた。リアムはそれを否定し、天城の代わりはいないと伝え、今後も側にいるよう求めた。天城はその申し出に応じたが、「可能な限り」という言葉がリアムの胸に引っかかった。

案内人の妨害と聖なる加護

宇宙からリアムを見つめていた案内人は、彼の結婚に憤り、負の感情で呪いをかけようとした。しかし、リアムとロゼッタの衣装に使われた聖なる植物ジェミナイが邪悪な力をはね除け、逆に神聖な槍を生み出した。この槍は光速で案内人を貫き、彼を打ち倒した。案内人は無様に退散しながらも、リアムへの復讐を誓った。

式後の家臣たちとのやり取り

結婚式が終わると、家臣たちはリアムに祝辞を述べた。リアムは一応それを受け入れつつも、今後は質素倹約を重視する意向を示した。ティアとマリーは自らの待遇も見直す提案をするが、リアムはそれを拒否し、雇用とは報酬と成果の等価交換だと強調した。理想論を嫌う彼の姿勢が明確に示された場面であった。

初夜への不安と家臣たちの悪ノリ

ロゼッタの部屋へ向かうよう促されたリアムは、逡巡する姿を家臣たちにからかわれる。ティアとマリーは練習相手を名乗り出るなど、悪ノリが加速した。最終的にクラウスがロゼッタの不安を和らげるよう助言し、リアムはようやく立ち上がった。

夫婦の会話とリアムの現実

寝室に入ったリアムとロゼッタは緊張したまま対面した。リアムは質素な生活になると告げ、ロゼッタもそれを受け入れた。だが、その場にふさわしくない会話に笑いが生まれ、ロゼッタの無邪気な言動にリアムも困惑した。自らの過去を省みたリアムは、ハーレムを築くという目標が未達成であることに気付き、落ち込んだ。

新たな決意と夫婦の絆

リアムは涙を流しながらも、改めて悪徳領主としての道を進む決意を固めた。そしてロゼッタを抱くと宣言し、彼女もそれに応じた。恥じらいながらも笑顔を見せるロゼッタの姿に、リアムは彼女の魅力を再認識した。

第十七話  その後の人々

元皇太子の新生活と忠義の行方

開拓惑星での労働と家族との生活


カルヴァンはリアムに身柄を預けられ、バンフィールド家が管理する開拓惑星に送られていた。かつての皇太子であった彼は、現在では自由を奪われ肉体労働に従事していた。彼の外見も変わり、髪は短く日焼けもして、以前の面影は薄れていた。家族と慎ましくも温かな日常を過ごし、特に妻と子供たちとの時間を大切にしていた。贅沢はないが、首都星での不安に満ちた生活に比べて遥かに穏やかで心休まる日々を享受していた。

妻との会話とリアムへの評価

カルヴァンはバンフィールド家の意外な寛容さに驚きつつも納得していた。敵対関係にあったリアムには清廉さが感じられ、自身が処刑されることはないと内心で信じていた。実際に一般領民と同等の生活を許されており、それを罰とする方針に理解を示していた。彼は過去の犠牲と向き合いながらも、現在の平穏に感謝しつつ祈りを捧げていた。

クルトとリリーの保護

一方、エクスナー男爵家ではクルトが婚約者セシリアと共に、少女リリーを保護していた。リリーはかつてクレオが生み出したクローンであり、その出自をセシリアには明かしていなかった。クルトは彼女を助けたいという思いから引き取り、妹のような存在として大切にしていた。セシリアは当初不安を抱いたが、クルトの誠実さに安心し、心から彼を慕うようになっていた。

婚約への不安と信頼の証

セシリアはクレオによる裏切りに動揺していたが、クルトからリアムが婚約に反対していないことを聞き、安堵していた。二人は政略結婚のはずであったが、互いに信頼と愛情を育んでいた。クルトは、たとえセシリアの弟であろうと、リアムの命令であれば剣を向ける覚悟を固めていた。

リリーの笑顔と過去の影

リリーは天真爛漫に過ごしていたが、育った施設の話になると「帽子さん」という人物を語り出した。クルトとセシリアは彼女の語る不思議な存在に戸惑いながらも、彼女の願いを尊重した。リリーは再会を祈ると同時に、見えない「ワンワン」に導かれて何かが起きるのを感じ取っていた。

案内人への反撃と感謝の刃

宇宙のどこかでは、案内人が力を失ったことに苦しみ、リアムへの恨みを口にしていた。だがそこに現れた犬がナイフを放ち、帽子に突き刺さった。ナイフはリリーの純粋な感謝の具現であり、案内人を深く傷つけた。彼は絶叫しながらその刃を抜こうとしたが、結局、リリーに裏切られたと叫びながら姿を消していった。

特別編  量産型メイド・伊吹

メイドロボ伊吹の暴走

挙式後の余韻と混乱の始まり


リアムとロゼッタの挙式が無事に終了し、式後の行事と貴族たちの交流が続いた。バンフィールド家の領地全体が祝いの雰囲気に包まれたが、数ヶ月後にはようやく平常を取り戻した。その静けさの中で、一体のメイドロボ【伊吹】による突飛な言動が問題となった。

伊吹の問題発言とリアムの困惑

伊吹は屋敷内でリアムに接触し、ロゼッタとの情事について質問した。リアムは驚きつつも強く拒めず、最終的に責任を天城に押し付けた。

メンテナンス室での糾弾会

メイドロボたちのメンテナンス室では、天城を中心に塩見、白根、荒島が伊吹を囲み、発言の問題点を問いただした。チャットを使用せず、アナログな手段で対応したのは情報の拡散を避けるためであった。

姉妹間の皮肉と衝突

糾弾の最中に姉妹たちの間で皮肉の応酬が始まり、塩見と荒島が言い争う状況に発展した。天城はその雑談を一蹴し、伊吹の発言の意図を厳しく追及した。

生命への興味と伊吹の主張

伊吹は自分が人間ではないがゆえに生命の神秘に興味があると主張し、リアムの情事を「神聖な行為」と位置づけて情報の提供を求めた。この発言に天城は一時沈黙し、他の姉妹たちも皮肉を交えて反応した。

情報独占の疑惑と反発

天城が情報提供を拒否すると、白根たちは日頃から天城がリアムの個人的なデータを独占していると非難した。さらに、天城の指導力に疑問を呈する声も上がり、場の空気が天城にとって不利に傾いた。

誤爆発言と伊吹の孤立

伊吹が「統括には興味がない」と失言したことで、一時味方のように振る舞っていた他の姉妹たちは離反した。天城は作り笑いを浮かべながら、伊吹にメーカー修理を命じ、事態の収束を図った。

結末と伊吹の反応

天城は伊吹の振る舞いを問題視し、詳細なメンテナンスを受けるよう指示を出した。伊吹は落胆を示したが、それ以上の反抗は見せなかった。バンフィールド家の屋敷には、再び静けさが戻りつつあった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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