どんな本?
本作は、異世界転生ファンタジー漫画である。主人公エルマは、剣聖の血筋を持ちながら、十五歳の〈加護の儀〉で「重騎士」という外れクラスを発現し、家族から追放される。しかし、この世界が自身の知るゲームの世界であり、重騎士が最強のクラスであることを知っていたエルマは、その知識を活かして無双していく。
主要キャラクター
- エルマ:剣聖の血筋を持つ主人公。重騎士のクラスを得たことで家族から追放されるが、ゲーム知識を駆使して活躍する。
- ルーチェ:エルマの仲間であり、共に冒険を繰り広げる少女。
物語の特徴
本作は、主人公が前世のゲーム知識を活用して逆境を乗り越える点が魅力である。一見「外れ」とされるクラスの真価を引き出し、成り上がっていく過程が描かれている。また、詳細なゲームシステムの設定や戦闘描写が、他の異世界転生作品との差別化を図っている。
出版情報
読んだ本のタイトル
追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する(10)
著者:武六甲理衣 氏
原作:猫子 氏
イラスト:じゃいあん 氏
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
累計100万部突破!!(紙+電子) 既刊全巻重版連発! これが「今一番来てる」異世界転生!!!
陰謀渦巻く〈大規模依頼〉を攻略せよ!! 覇権作品堂々漫画化第10巻!!
〈幻獣の塔〉攻略の功績により、国内きっての大貴族であるハウルロッド侯爵家に招かれたエルマとルーチェ。
人知れず冒険者の殺戮を続ける黒幕を探すため、侯爵家の密令を帯び、
共に死線をくぐり抜けた仲間たちと高難易度〈大規模依頼〉に出陣する!!
主な出来事
大規模依頼とハウルロッド侯爵邸訪問
ハウルロッド侯爵邸訪問準備
- エルマとルーチェはスノウの招待を受け、ハウルロッド邸を訪れる準備を進めた。
- 鳳凰呉服店にて礼服を購入し、エルマはタキシードを着こなし、ルーチェは日牡丹をモチーフとしたドレスを選んだ。
ハウルロッド侯爵邸への訪問
- スノウの案内によりハウルロッド侯爵家を訪問したエルマとルーチェは、イザベラに迎えられた。
- 館内の豪華さに圧倒されつつも、イザベラの説明によりハーデン侯爵の冷酷な性格が明らかにされた。
ハーデン侯爵との対話と疑惑
- 食事の席でハーデン侯爵と対面し、陽気な態度とは裏腹にスノウとイザベラを萎縮させる不気味な存在感を示した。
- 〈幻獣の塔〉の事件を家督争いの一環と見なすかどうかを問いかけるエルマに対し、侯爵は調査の必要性を認めつつも裏工作の可能性を示唆した。
- エルマの成長を疑うような発言をしつつも、最終的には冗談めかして話を打ち切った。
ハーデン侯爵との対話と任務の提案
- ハーデン侯爵はエルマの功績を称賛し、婿入りの提案など軽妙な言葉を交えつつも大規模依頼への参加を促した。
- 〈夢の穴〉災害を引き起こす〈夢壊〉の危険性を語り、敵を炙り出すための作戦として大規模依頼を再度実施することを告げた。
- エルマは即答せず、考える時間を求めた。
情報収集と仲間との交流
ケルトとの情報交換
- エルマとルーチェは〈幻獣の塔〉の話をケルトに語り、彼の〈第六感〉のスキルについての情報を得た。
- ケルトはスキルが単なる感知にとどまらず、広範な応用が可能であると説明した。
- エルマはゲーム時代と異なる仕様に気付き、スキルの再考を求められた。
冒険者ギルドでの情報収集
- エルマとルーチェは冒険者ギルドのギルド長ハレインを訪ね、大規模依頼の背景と内容を確認した。
- ハレインは依頼が〈哀哭するトラペゾヘドロン〉に関連する異常調査であることを明かした。
- エルマは過去のレイド参加者名簿を調査し、裏切り者を探し出す計画を立てた。
大規模依頼への準備と仲間の結束
大規模依頼の掲示と準備
- 〈水没した理想都〉の大規模依頼が掲示され、エルマとルーチェは参加を決意した。
- カロスとの再会を果たし、彼の助言によりヒルデが〈魂狩りの大鎌〉を手放すこととなった。
- エルマたちはケルトとメアベルを仲間に加え、四人のチームを結成した。
戦力強化と信頼の構築
- エルマはスキル〈騎士の信念〉と〈マジックガード〉を獲得し、戦闘の安定性を向上させた。
- 仲間たちへのステータス開示を行い、信頼関係を深めた。
- メアベルへの指示を通じて、〈夢の主〉に備えた戦略を構築した。
〈水没した理想都〉の戦闘と新たなスキルの獲得
魔物の出現と戦闘の開始
- エルマたちは〈水没した理想都〉の入り口に到着し、大量の魔物「ウミオニ」と遭遇した。
- エルマはウミオニの速度の遅さを利用し、近距離戦での攻略を提案した。
戦闘とルーチェの活躍
- ケルトが遠距離からの支援を行い、エルマは巧みに立ち回りながら攻撃を避けた。
- ルーチェは〈竜殺突き〉を用いてウミオニを討伐し、その成長が明らかになった。
- パーティーとしての協力が成功を生み出し、信頼と成長を深める結果となった。
感想
エルマとルーチェがハウルロッド侯爵家に招かれた。
特にスノウへの手柄譲渡によって、エルマが彼女の後継者争いを後押しする形となった点が興味深い。
物語は、単なる冒険者としての戦いにとどまらず、貴族間の陰謀や政治的な駆け引きが物語に新たな厚みを加えていった。
ハウルロッド侯爵はヴァンパイアのような姿であり非常に印象的であった。
エルマの父親であるハーデン侯爵が彼を苦手としている点もまた、今後の展開を予感させる要素であった。
侯爵との会話を通じて、今回の黒幕を罠にかける作戦が提案され、それが大規模依頼への参加へと繋がった。
特にハーデン侯爵の影響力の大きさと、カロスの胡散臭さが物語の緊張感を高めていた。
エルマがこれまで築いてきた信頼関係を試される場面が増えることを予想させる。
今回の大規模依頼に参加することとなったエルマたち四人のパーティーには、メアベルとケルトが引き続き加わっている。
彼らとの再びの共闘が示されたことに安心感を覚えると同時に、それぞれの役割がさらに明確になることへの期待が高まる。
エルマの戦術や知識を活かすことで、パーティー全体の成長を引き出す描写がこれまで以上に魅力的であった。
この巻では、単なる戦闘シーンだけでなく、人物関係や貴族社会の描写にも力が入れられていた。
スノウの貴族の後継者としての葛藤や、それを支援するエルマの姿勢が特に印象的である。
また、スノウの父親であるハーデン侯爵が厄介な相手であると同時に、カロスの不穏な存在感も物語に深みを与えている。
単純な善悪の対立ではなく、陰謀や思惑が絡み合う展開が引き込む要因となっている。
次巻では、大規模依頼の本格的な開始が予想されるが、今後の展開においてもエルマと仲間たちの協力がどのように試されるかが楽しみである。
特にメアベルとケルトとの連携がどのように進化するか、また暗躍する陰謀にどのように立ち向かうかが焦点となるだろう。
物語の世界観が広がり続ける中で、エルマたちがどのように成長し続けるかを見守りたい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
備忘録
82話
ハウルロッド侯爵邸訪問準備
スノウからハウルロッド邸に招かれる事となったエルマとルーチェは貴族に無礼にならないようにと、礼服を買いに鳳凰呉服店へと赴く。
そして、店主(?)の指導の下エルマはあっさりとタキシードを着こなす。
そしてルーチェは色々な服が似合うせいで店主も迷ってしまう。
最終的に日牡丹をモチーフとしたドレスに決めてハウルロッド侯爵邸からの招待の準備を終える。
83話
ハウルロッド侯爵邸への訪問
侯爵邸への案内
エルマとルーチェはスノウの招待を受け、ハウルロッド侯爵家の館を訪れた。イザベラの案内で廊下を進む中、ルーチェは豪華な建物に圧倒され、不安を隠せない様子であった。イザベラは二人を安心させようと、父ハーデン侯爵が今回の歓待に関与していないことや、娘であるスノウに対しても冷淡な人物であることを語った。
ハーデン侯爵との遭遇
客間に入ると、そこには事前に不在と聞いていたハーデン侯爵が座していた。ルーチェが怯えた様子を見せる中、侯爵は自らの妻似で美しい娘スノウを称えつつ、陽気に語りかけた。スノウによれば、父がエルマと直接話をしたいと考え、急遽この場に出席したとのことであった。
84話
不気味な侯爵の態度
ハーデン侯爵は飄々とした態度でエルマたちを迎え入れ、食事を共にする場を設けた。その陽気で明るい様子は事前に聞いていた冷酷な印象とは大きく異なり、不気味さを感じさせるものであった。一方、スノウとイザベラは明らかに萎縮しており、侯爵の底知れなさをエルマに強く印象付けた。
緊張感漂う食事
席に着いた後、豪華な料理が運ばれた。ルーチェは緊張しながらマナーに気を配り、エルマに確認を求めた。侯爵はリラックスするよう促したが、その雰囲気の中でスノウやイザベラが硬い表情を崩さない様子が、エルマの警戒心を一層高めることとなった。エルマは侯爵の陽気な態度の裏に潜む意図を探りつつ、食事の場に臨んだ。
侯爵との対話と疑惑
ハーデン侯爵の立場と考え
ハーデン侯爵はエルマたちを前に、スノウへの感謝を述べつつも、次期当主候補としての厳しい姿勢を示した。彼は結果のみを重視し、生き残った者が跡継ぎにふさわしいと語った。その冷徹な考え方は、スノウが生き残ったことさえ運だと揶揄するものであった。
エルマの指摘と侯爵の反応
エルマが〈幻獣の塔〉の事件を家督争いの一環と見なすのかと問いかけると、侯爵は笑みを浮かべつつも調査の必要性を認めた。ただし、裏工作が発覚すれば即座に処罰するとも述べ、犯人が侯爵家の内部である可能性を否定するような含みを持たせた。
ラコリナの事件への認識
エルマが一連の事件の犯人像を問われた際、〈夢の穴〉の情報を持つ者が実験的に災害を起こしている可能性を挙げた。侯爵はこの見解を興味深く受け取りつつ、逆にエルマ自身がその情報を有しているのではないかと示唆した。この発言は場を緊張させ、ルーチェやスノウを不安にさせた。
侯爵の暗示と謎めいた態度
侯爵はエルマの急速な成長を例に挙げ、類似する現象として特定の冒険者が何かに導かれているように見えることを指摘した。彼の言葉にはエルマへの疑いも含まれていたが、最終的には冗談めかして話を切り上げた。その態度が本気なのか戯れなのか、エルマには判別がつかなかった。
冷えた空気と不気味な笑顔
侯爵は緊張が漂う中でも終始楽しげに食事を続け、スノウやイザベラを萎縮させた。その不可解な態度は、彼が本心を見せない狡猾な人物であることを物語っていた。エルマはハーデン侯爵の真意を掴めぬまま、不安を胸に抱え続けた。
85話
ハーデン侯爵との対話と任務の提案
侯爵の評価と提案
ハーデン侯爵はエルマの功績を称えつつ、〈王の彷徨〉から生還し討伐まで成し遂げたその稀有さを指摘した。その一方で、スノウへの婿入りを持ち掛けるなど、冗談とも取れる提案を続けた。エルマはその軽妙な態度に困惑しつつも、冷静に対応した。
〈夢の穴〉災害の分析
ハーデン侯爵は、〈哀哭するトラペゾヘドロン〉を用いた〈夢の穴〉災害が意図的に引き起こされているとし、その目的が〈夢壊〉であると推測していることを明かした。〈夢壊〉は〈夢の主〉の二度目の存在進化による大規模災害であり、甚大な被害をもたらす危険があると述べた。
侯爵の計画と依頼
侯爵は敵を炙り出すため、敢えて大規模依頼を再度実施し、敵の行動を誘発させる作戦を計画していることを語った。エルマとルーチェには、この依頼に一般冒険者として参加し、裏切り者を排除し敵の企てを阻止する任務を提案した。
信頼と疑念
ハーデン侯爵はエルマの実力と過去の実績を信頼していると述べつつ、その信頼の根拠を娘スノウへの恩義に帰結させた。しかし、彼の真意がどこまで本物なのか、エルマには掴み切れなかった。
最終的な決断の猶予
エルマは侯爵の提案を即答せず、危険性を理由に考える時間を求めた。侯爵もその決断を急がせることなく、大規模依頼が公表された際に参加することで答えを示すように促した。最後に、今回の計画内容を他言無用と強く念を押した。
86話
酒場での情報交換と〈第六感〉の話題
ケルトの反応と弁明
エルマとルーチェが〈幻獣の塔〉での〈王の彷徨〉の話をすると、ケルトは驚きと共に自分が行かなかった理由を語った。彼のスキル〈第六感〉が危険を感じさせたが、それが確実でないことから行動を控えたと説明した。彼は情報の誤伝や信頼問題への警戒から、慎重な判断を求められる斥候の苦労を語った。
スキルの仕様の違い
ケルトの〈第六感〉が単なる感知スキルに留まらず、状況に応じて広く応用されることを知ったエルマは、この世界がゲーム時代と異なる仕様を持つことを改めて実感した。この設定が、過去のフレーバーテキストを拾っている可能性がある点に気付いたエルマは、スキルの影響範囲を再考する必要を感じた。
ハウルロッド侯爵家での出来事の報告
エルマがスノウを助けた功績で侯爵家から歓待を受けた話をすると、ケルトはその幸運に羨望を示した。一方、スノウに対する冷酷で無表情という噂について触れるが、エルマは一部は当たっていると内心思いつつも、その助力に感謝していた。
大規模依頼の噂
ケルトは次の大規模依頼について語り、〈哀哭するトラペゾヘドロン〉が関連する調査であることを示唆した。彼は依頼の危険性を強調し、自身は参加しない意向を示した。この話はハーデン侯爵が言及した計画に関係するものであり、エルマはそれに気付きながらも表情を引き締めた。
ケルトの態度とエルマの決意
ケルトは依頼への関与を避けるのが最善と語ったが、エルマはそれに明確な同意を示さなかった。危険を承知しながらも、ハーデン侯爵の計画と大規模依頼の関係を重視していたためである。エルマは、自身の行動が今後の展開に影響することを強く意識していた。
87話
冒険者ギルドでの面会と情報収集
ハレインへの面会の試み
エルマとルーチェは冒険者ギルドの執務室を訪れ、例の大規模依頼についてギルド長ハレインに確認を求めた。受付嬢のマルチダは突然の訪問に戸惑いながらも案内したが、ハレインは多忙を理由に断ろうとした。しかし、エルマ達の名前を聞いた途端、態度を一変させ、快く迎え入れることとなった。
〈夢の穴〉攻略計画と依頼の背景
ハレインは、〈水没した理想都〉を舞台にした大規模依頼の準備が進められていることを明かした。この依頼は、〈哀哭するトラペゾヘドロン〉が関連する異常発生を調査しつつ、暗躍する勢力を突き止める目的があるとされた。高レベルの〈夢の穴〉である理想都の攻略は厳しい戦いになると予測された。
〈王の彷徨〉の調査と報告書の要請
エルマは、以前の〈嘆きの墓所〉で発生した〈王の彷徨〉についてのギルド調査報告書を閲覧したいと申し出た。ハレインは特に不審な点が見つからなかったと説明したが、エルマは記憶違いや無意識の証言の中に手がかりがある可能性を示唆した。ハレインは前回のレイド参加者名簿を提供することで協力した。
前回と今回のレイド参加者の確認
エルマは、連続してレイドに参加している冒険者を重点的に調査することを提案した。この情報を基に、裏切り者や暗躍する者を特定する足掛かりを得る方針を立てた。ハレインは、情報が漏洩しないよう厳重な注意を促しつつ、エルマの推測に一定の理解を示した。
調査の重要性と慎重な対応
エルマは、今回の依頼が大規模な陰謀に関わる可能性を念頭に置きつつも、冷静に調査を進める意向を示した。ハレインもまた、彼らの意欲と判断力に信頼を寄せ、協力を惜しまなかった。
88話
大規模依頼の掲示と準備
大規模依頼の発表
翌日、冒険者ギルドの掲示板に〈水没した理想都〉を舞台とする大規模依頼の募集が掲示された。推奨レベル【80】という高難易度の依頼に、冒険者たちは不安を隠せず、噂話が広がっていた。エルマは前夜、ギルド長ハレインから受け取った冒険者資料を読み込んでおり、寝不足の状態で依頼内容を確認していた。
ルーチェの意気込み
ルーチェはこの依頼への参加を決意し、冒険者として街や国を守る使命感を示した。彼女は過去の冒険で培った仲間意識を強調し、エルマと共に危険な任務に挑む覚悟を固めていた。
ヒルデとの再会
魔剣士ヒルデが登場し、エルマに対して挑発的な態度を見せながらも、どこか気遣う様子を見せた。ヒルデは、過去の決闘での因縁を引きずりつつも、今回の依頼の危険性を強調し、自身の決意を述べた。一方、エルマはヒルデが持つ〈魂狩りの大鎌〉に気付き、それが〈幻獣の塔〉で得たアイテムであることに内心驚いていた。
カロスの登場と忠告
A級冒険者であるカロスが現れ、今回のレイドの危険性について警告を発した。彼はハウルロッド侯爵家との複雑な関係や暗殺未遂事件についても言及し、任務の背後に潜む不穏な気配を示唆した。さらに、カロスはヒルデの装備について問題を指摘し、〈魂狩りの大鎌〉が魔剣士には不向きであることを説明した。
ヒルデの決意とカロスの指導
ヒルデはカロスの助言を受け入れ、大鎌を手放して剣を借りることを了承した。カロスの指導に対してヒルデは尊敬の念を抱きつつも、自身の未熟さを実感していた。エルマとルーチェはカロスとヒルデのやり取りを見守りつつ、今回の依頼への緊張感を新たにしていた。
危険な依頼への準備
ケルトとメアベルの招集
夕方、エルマとルーチェは冒険者ギルドの酒場でケルトとメアベルを呼び出した。エルマは〈水没した理想都〉の大規模依頼への参加を提案し、その危険性と目的を説明した。これに対し、ケルトは嫌悪感を示し、依頼への参加を拒む姿勢を見せた。
ケルトの抵抗とメアベルの意外な決意
ケルトは貴族や高難易度の依頼に対して不信感を抱き、特に裏切り者が潜んでいる可能性を聞いて一層参加を渋った。一方で、メアベルは意外にも参加を快諾し、エルマに信頼を寄せる言葉を述べた。その様子にケルトは驚きを隠せなかった。
エルマの計画と説得
エルマは、〈夢の穴〉に関する詳細な調査と戦術を説明し、この四人でなら安全に攻略できると力説した。過去の経験やメアベルとケルトのスキルを評価し、最適なメンバーであることを論理的に示した。これにより、二人の信頼を得ることに成功した。
ケルトの観念とチーム結成
メアベルの説得や過去の恩を考慮したケルトは、最終的に参加を決断した。彼は斥候としての自負を見せつつ、チームに加わる意志を表明した。メアベルはケルトの態度をからかいながらも、内心では彼の決断を喜んでいた。エルマは二人の協力に感謝し、四人のチームが結成された。
89話
大規模依頼の準備と状況確認
エルマ、ルーチェ、ケルト、メアベルの四人は、ギルドが手配した馬車で移動していた。他のレイド参加者たちも同様に移動しており、侯爵家の兵も二十人程動員されていたが、その半数は〈水没した理想都〉に突入せず、外で待機する手筈であった。これには、魔物が溢れ出た場合の対策と、裏切り者を逃がさないための目的が含まれていた。冒険者ギルドも今回のレイドを重要視し、募集規模を拡大していたが、それでも必要な戦力は十分に集まり切らず、侯爵家の私兵で補った状況であった。
エルマのスキル強化と新スキルの獲得
エルマは自身の〈ステータス〉を確認し、スキルポイントを〈重鎧の誓い〉に投下することで特性スキル〈騎士の信念〉を取得した。このスキルは狂乱と睡魔という二種の状態異常に耐性を持つものであったが、どちらもマイナーであり、実用性は低かった。それでもエルマは次のスキル取得を目指してスキルポイントを追加で投入し、〈マジックガード〉を獲得した。このスキルは盾を魔力で覆うことで防御力を高めるものであり、戦闘中の安定性を大きく向上させる効果があった。エルマは〈死線の暴竜〉発動時の防御強化としても有用であると判断し、レイドに備えることとした。
仲間へのステータス開示と信頼の構築
エルマはケルトとメアベルにも自分の〈ステータス〉を公開し、連携を取りやすくするための情報共有を行った。特にメアベルに対しては、レベルアップの機会を作り出し、スキルポイントを〈信仰の杖〉に振り分けるよう提案した。エルマは〈夢の主〉に対する備えとして、このスキルツリーの進行を重要視していたが、詳細な意図は明かさなかった。メアベルとケルトはエルマの提案に驚きつつも協力を約束し、チームとしての結束を固めていった。
エルマの記憶力と意図
エルマはメアベルとケルトの〈ステータス〉を詳細に覚えており、特にメアベルのスキルツリーの進行状況を正確に把握していた。これにより、仲間たちに自分の意図を伝えながらも信頼を得ることができた。しかし、その正確さゆえに驚かれたり呆れられたりもしていた。
メアベルへの指示と今後の展開への不安
エルマはメアベルに対し、レベルアップ後に〈信仰の杖〉へスキルポイントを振り分けるよう提案した。〈夢の主〉との戦いに備えたものであり、万が一の状況に備えるための準備であった。エルマは、ゲーム時代に培った知識を活かしながらも、現実世界での予測不能な事態に対応するため、あらゆる可能性を考慮して行動していた。
この場面ではエルマの冷静な判断と先を見据えた計画性が強調されていた。スキルの取得や仲間との連携を意識する姿勢が、彼の成長と冒険者としての適応力を示していた。
90話
〈水没した理想都〉への到着と魔物の出現
エルマたちは馬車に乗り、〈水没した理想都〉の入り口に到着した。虹色の渦が川の上に広がり、周囲にはウミウシに似た魔物「ウミオニ」が大量にうろついていた。〈水没した理想都〉で発生した魔物溜まりから溢れ出たものであり、攻撃力・防御力共に高く、触手による多彩な攻撃を繰り出す存在であった。エルマはウミオニの弱点が速度の遅さであることを見抜き、近距離戦で対処する方針を示した。
ケルトとルーチェの反応と戦術の調整
ケルトはウミオニの異様な姿に不快感を示しつつも、エルマの冷静な判断に感心していた。ルーチェはその姿を「可愛い」と評するなど独特な感覚を見せたが、戦いに対する意欲は高かった。エルマはウミオニに近距離で挑むことを決意し、ケルトには隙を作ること、ルーチェにはその隙を突いて攻撃するよう指示した。
戦闘開始とエルマの立ち回り
エルマはウミオニ三体を相手にしながら〈パリィ〉と〈マジックガード〉を駆使し、巧みに攻撃を受け流した。動きの遅いウミオニたちを細かく立ち回りで翻弄し、互いに干渉し合うように仕向けて有利な状況を作り出した。ケルトは遠距離から正確にウミオニの眼球を狙い、致命的なダメージを与えることでエルマのサポートを行った。
ルーチェの活躍と新たなスキルの発動
ルーチェはウミオニの背後に回り込み、スキル〈竜殺突き〉を発動させた。このスキル〈奈落の凶刃〉による効果で、クリティカル攻撃時に威力を二倍に引き上げる特性が発揮された。ウミオニの体は激しく吹き飛び、地面に叩きつけられて潰れた。周囲の冒険者たちはルーチェの強烈な攻撃に驚愕していた。
ウミオニ討伐の成功とパーティーの成長
ルーチェの攻撃によってウミオニの一体が討伐され、経験値が加算された。ケルトはルーチェの攻撃力に驚き、エルマから彼女のアタッカーとしての役割を知らされることで納得した。エルマたちは互いの能力を確認し合いながら、ウミオニの群れに対する攻略を続けることとなった。
同シリーズ











その他フィクション

Share this content:
コメントを残す