どんな本?
物語の概要
異世界の古都アイテーリアに突如現れた現代日本の居酒屋「のぶ」。その独特な料理と雰囲気で、訪れる異世界の人々を魅了し、彼らの日常に新たな風を吹き込む。
主要キャラクター
• 矢澤信之(のぶ):店主であり料理人。日本の居酒屋「のぶ」を経営し、異世界の客人に日本料理を振る舞う。
• 千家しのぶ:店員であり、店主の信之を支える。明るく気配り上手で、店の雰囲気を和ませる存在。
• ゲーアノート:徴税請負人組合の一員で、居酒屋「のぶ」の常連客。新たに赴任する勅任監察官への対応に頭を悩ませる。
物語の特徴
本作は、異世界と現代日本の文化が交差するグルメファンタジーである。「のぶ」の料理が異世界の人々に与える影響や、彼らの人間模様が丁寧に描かれている。特に、異世界の住人が初めて日本食を味わう際の驚きや感動が、読者に新鮮な視点を提供する。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2024年5月2日
• 定価:748円(税込)
• メディア展開:アニメ化や実写ドラマ化など、多方面でメディアミックスが行われている。
読んだ本のタイトル
異世界居酒屋のぶ 18巻
漫画 ヴァージニア二等兵 氏
原作 蝉川 夏哉 氏
キャラクター原案 転 氏
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あらすじ・内容
悩める異世界の料理人が、「のぶ」の料理に見出すものとは…?
徴税請負人・ゲーアノートは居酒屋「のぶ」で、自身と同じ徴税請負人組合の者達と遭遇する。彼らから、新しく来る請負人の監視役──”勅任監察官”に関する相談を受けて…。大人気グルメファンタジー18巻!
徴税請負人と若き監察官の交錯
古都アイテーリアで活動する徴税請負人ゲーアノートは、居酒屋「のぶ」を訪れる。冷える冬の夜、彼は店内で同業の請負人たちが沈痛な表情で集まっているのを目にする。話を聞けば、厳格な新任監察官オットー・フォン・グリンメルスハウゼンの監査が控えているという。翌日、監査が始まり、オットーの真摯な姿勢が請負人たちの心に緊張をもたらす。だが、ゲーアノートが彼を「のぶ」に招いたことで、オットーは料理を通じて考えを改め、監査方針を柔軟なものへと変えていく。
料理人リュービクの葛藤と覚醒
一方、古都で最も名高い料亭〈四翼の獅子亭〉の小リュービクは、料理人としての自信を失い苦悩していた。父であり「神の舌」と称される大リュービクの影に縛られる中、彼は居酒屋「のぶ」で料理人としての新たな道を模索する。ノヴ・タイショーの料理を味わう中で、小リュービクは「舌への信頼」と「目の前の客を喜ばせる」という大切さに気づき、自らの信念を取り戻していく。晩餐会への準備が進む中、彼は再び料理に向き合う決意を固める。
信之のやけ食いと親子丼
信之は「古都らしい料理ではない」と批評された一言に悩む中、自分自身の料理哲学を再確認するため、豪華ないくらと鮭の海鮮親子丼を作り上げる。偶然、その様子を目撃したマルコたちが乱入し、店内は思わぬ宴となる。信之の料理は仲間たちの心と舌を喜ばせ、彼自身もまた新たな一歩を踏み出すきっかけを得る。
新人衛兵と「のぶ」の誤解
新人衛兵イーゴンは、食事をただの「栄養補給」と考える価値観を持っていた。そんな彼を居酒屋「のぶ」に連れて行こうとするベルトホルト隊長は、シノブの賄いチャーハンを食べさせることに成功する。初めて味わう料理に感動したイーゴンは、やがて「のぶ」を特別な場所だと勘違いし、その守護を使命とする誤解に陥る。ベルトホルトはその誤解を解くため奮闘するが、完全に解消するには十日を要することとなった。
感想
ゲーアノートの人間味が魅力的
ゲーアノートが若き監察官オットーと交わりながら、「のぶ」の料理を通じて変化していく姿が魅力的であった。
特に、厳格な監察官が料理に触れることで柔和になる展開が温かく描かれていた。
小リュービクの挑戦と再生
リュービク親子の葛藤が物語の核となっており、小リュービクが「舌」を信じることで自信を取り戻す姿は感動的であった。
晩餐会に向けた準備が進む中での彼の成長が今後の鍵を握ると感じさせた。
信之のストレス発散と海鮮親子丼
信之が「のぶ」の料理人として自らの哲学を確立する姿が印象深かった。
いくらと鮭をふんだんに使った海鮮親子丼の描写は、食欲を掻き立てるものであり、信之の信念が料理を通じて昇華されていく様子に引き込まれて行った。
飯テロだ、、
イーゴンのウッカリと成長
食事に無頓着だった新人衛兵のイーゴンが、チャーハンをきっかけにその価値を見出す展開が微笑ましかった。
居酒屋「のぶ」を「秘密の拠点」と勘違いする様子もユーモラスで、緊張感を和らげるアクセントとなっていた。
晩餐会への期待感
物語全体を通じて、晩餐会という大きな舞台が背景に描かれており、登場人物たちの成長がその準備を通して感じられた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
ゲーアノートのお仕事
冷える夜の古都とゲーアノートの訪問
冬の夜、冷え込む古都の路地をゲーアノートは急いでいた。彼の向かう先はお気に入りの居酒屋ノブであった。仕事で知られる徴税請負人としての厳しい日々の中、この店は彼にとって欠かせない安らぎの場となっていた。引き戸を開けた瞬間、心地よい温かさと挨拶が迎えた。
居酒屋ノブの魅力と料理の手際
ゲーアノートはいつものナポリタンとトリアエズナマを注文した。ノブの店内は多くの客で賑わい、厨房の手際よい仕事ぶりは見る者の心を洗うようであった。居酒屋ノブの料理と空気は、彼にとって特別なものであり、仕事の厳しさを忘れさせる力があった。
徴税請負人たちの沈痛な様子
店内の一角には、普段見かけない徴税請負人組合の面々が集まっていた。彼らは食事や酒に手をつけず、憂いを帯びた表情を浮かべていた。これに気付いたゲーアノートは、彼らが何か問題を抱えていることを察したが、関わりたくないと決意していた。
勅任監察官の監査への準備
徴税請負人組合の幹事ヤープがゲーアノートに話しかけ、監査の準備を手伝ってほしいと懇願した。監査を担当するのは厳格で知られるフォン・グリンメルスハウゼン家の新任監察官オットーであった。彼の厳しい態度と規律に、徴税請負人たちは大いに不安を抱いていた。
監査開始とオットーの真摯な姿勢
翌日、市参事会の豪奢な会議室で監査が開始された。オットーは集まった徴税請負人たちに対し、賄賂や過剰な接待を厳禁と明言し、その言葉通りの厳格な姿勢を示した。先代監察官とは異なるその態度は、徴税請負人たちに新たな緊張感をもたらした。
真面目な監査への期待と課題
オットーの真摯な仕事ぶりは、ゲーアノートにも好印象を与えた。彼は仕事に精励する姿勢を評価しつつも、若い監察官がどのようにして古都の複雑な財政状況に対処するのかを見守ることにした。この監査が徴税請負人たちにとってどのような影響を及ぼすのか、今後の展開が期待されていた。
若き監察官の監査開始
オットー・フォン・グリンメルスハウゼンは、古都アイテーリアの徴税請負人たちの帳簿監査に集中していた。幼い頃から祖父に教えられた算盤術を駆使し、帳簿を次々に確認していた。彼にとって、祖父の跡を継ぐこの仕事は民のためであり、不正を許さぬ使命感に燃えていた。帳簿の内容は整然としているものの、徴税請負人の二つ名が物騒で、彼を少し戸惑わせた。
ゲーアノートの誘い
監査の合間、接待役として同行していた徴税請負人〈片眼鏡〉のゲーアノートが「夕餉に行こう」と提案した。これまで訪れた都市での過剰な接待を警戒していたオットーであったが、ゲーアノートの言葉に従い、街を歩き始めた。道中、ゲーアノートは有名店を避け、オットーをある異国風の居酒屋に案内した。
居酒屋ノブの驚きと料理
居酒屋ノブに到着したオットーは、その独特な雰囲気に驚いた。清潔な硝子製のジョッキや温かいおしぼりが提供されるなど、場末の居酒屋とは思えぬもてなしに警戒を強めたが、提供された牛筋の煮込みを口にした瞬間、その柔らかさと深い味わいに感動した。三日間煮込まれた料理の手間に感銘を受け、ゲーアノートの「時間を掛けることの大切さ」という言葉が心に響いた。
監察官の変化
翌日から、オットーの監査方針は大きく変わった。それまで帳簿だけで判断していた彼は、一人一人の請負人と面談を行い、それぞれの事情に耳を傾けるようになった。これにより、厳重注意や警告の数が減り、徴税請負人たちも次第に協力的になった。彼の対応は大いに評価され、監査は円滑に進むこととなった。
ナポリタンへの期待
ゲーアノートは、居酒屋ノブのナポリタンを食べ損ねたことを心残りに感じつつ、オットーの変化を見守った。彼の心には、若き監察官がより良い監査を行えるようになったという満足感があった。そして次の機会には、念願のナポリタンを味わうことを楽しみにしていた。
無味の味
味覚と料理の対話:居酒屋のぶの挑戦
謎の来訪者と試練の始まり
秋の夜、冷たい雨が降る中、居酒屋のぶに現れた一人の老人は「古都らしい料理」を求めた。豊かな白髪と黒づくめの姿の彼は、一見普通の客のようでありながら、どこか不思議な雰囲気を漂わせていた。信之が提供したポテトサラダやヒレカツに対し、老人は食感や彩りを評価しつつも、味覚については一切触れなかった。しのぶはその様子から、彼が味を感じられないのではないかと察した。
料理人としての矜持
老人が求めた「古都らしさ」に応えるべく、信之は一皿一皿を丁寧に作り、古都の四季を感じさせる料理を提供した。その中で、最後に出したのは玉子豆腐であった。これは味覚を失った相手でも楽しめる柔らかな食感の一品であった。老人はそれを口に運び、静かに満足を示したが、「古都らしいかどうかは別」と一言残して去っていった。
リュービク総料理長の秘密
去り際の老人が、古都でも名高い〈四翼の獅子〉亭の総料理長、大リュービクであると知ったしのぶは驚きを隠せなかった。リュービクが味覚を失っている事実は、料理人として致命的でありながら、彼がその困難を乗り越えようとしている姿が浮き彫りとなった。
決断の余波
その後、〈四翼の獅子〉亭でリュービクは老公ウィレムと助祭エトヴィンと共に、のぶの料理を振り返りながら、後継ぎについて話し合っていた。リュービクは息子に大役を託す決断を下し、ウィレムもその案に賛同した。話題に上ったのは、のぶで提供された玉子豆腐であり、それが一種の新鮮な驚きとなっていた。
料理を通じた交流の可能性
雨音に包まれた静かな夜、のぶでの出来事がリュービクの心に影響を与え、のぶの挑戦がまた一つ、古都の人々の間で語り継がれる話となった。信之としのぶもまた、この経験を通じて新たな目標を胸に秘めていた。
秋の海鮮親子丼
賭けた運命と休業日の秘密
新たな挑戦に悩むマルコ
遍歴商人だったマルコは、大きな決断をして古都に店舗兼住居を購入した。しかし、それに伴う出費の大きさと不安が彼の心を重くしていた。新しい店舗を基盤に商売を始めようとするも、その判断が正しかったのか確信を持てず、やるせない気持ちで居酒屋ノブを訪れることにした。
偶然の再会と落胆
道中で顔見知りのイグナーツとカミルに出会い、共に飲みに行くことを決めた。しかし、訪れたノブには「本日休業」の張り紙が貼られており、三人は失望した。その時、マルコは店内に人の気配を感じ、硝子戸を少し開けて中を覗き込んだ。
信之のやけ食いと秘密の宴
マルコが目撃したのは、信之が自分の精神を整えるための「やけ食い」の最中であった。信之は、豪華ないくらと鮭の海鮮親子丼を作り、自身の葛藤を解消していた。先日「古都らしい料理ではない」と評されたことが、彼の心に深く刺さり、その思いを振り切るために自分の料理哲学を再確認する時間を過ごしていた。
思わぬ乱入者たち
マルコ、イグナーツ、カミルの三人が店内へ飛び込んだことで、休業日の静かな時間は賑やかさに変わった。信之は彼らの要望に応じて、追加の海鮮親子丼を作ることにした。みんなが美味しそうに丼を食べる姿を見て、信之の悩みも次第に和らいでいった。
古都の宴と新たな因縁
食事を終えた後の会話で、マルコは〈四翼の獅子〉亭で開かれる晩餐会の話題を耳にした。そのテーマは「古都らしい料理」であり、信之は何か因縁めいたものを感じた。だが、自身には直接関係のないことだと考え、茶を淹れながら仲間たちの笑顔に目を向けた。
結び
信之の葛藤や悩みは、彼が提供する料理を通じて少しずつ昇華されていった。彼の料理が古都の人々の舌の記憶に刻まれていることが、何よりの励みとなっていた。
信じるべきもの
料理人リュービクの覚醒と晩餐会の準備
歴史を刻んだ初代リュービク
百年以上前、東王国の知王ルイ七世と帝国の陰険公ルドルフが長期の戦争の末に和睦し、その会談を支えたのが〈四翼の獅子〉亭の初代総料理長リュービクであった。彼は「獅子の四十七皿」を考案し、両者の和解を料理で促した。彼の功績により、「シェフ」という称号が生まれ、料理界の歴史に名を刻んだ。
古都を揺るがす晩餐会の計画
現代の古都で開催予定の〈晩餐会〉は、帝国全土や近隣諸国から商人たちを招く一大イベントである。しかし、計画の旗振り役は不明で、商会や参事会の間には混乱と警戒が広がっていた。この晩餐会の料理を任されることになったのが、小リュービクであった。
小リュービクの葛藤と居酒屋ノヴ
小リュービクは父である大リュービクから否定された過去を抱え、自身の舌への自信を失っていた。そんな彼が足繁く通ったのが居酒屋ノヴである。ノヴの料理は古都らしくないものの、素材の味を活かした繊細な一皿が提供され、小リュービクはその料理に心を奪われていた。特に、料理人の舌への絶対的な信頼に基づく味付けに感銘を受けた。
料理人としての再生
ノヴの料理を味わう中で、小リュービクは「目の前の客を喜ばせる」という純粋な想いを取り戻した。それにより、自身の舌を信じて料理する覚悟が芽生えた。彼は店内で次々と料理を注文し、他の客たちと共に美食を楽しみ、歓声に包まれながら自信を取り戻していった。
晩餐会への新たな決意
居酒屋ノヴでの体験を通じて、小リュービクは晩餐会に向けた献立を組み立て始めた。料理を通じて客を喜ばせることで、父に否定された過去を乗り越え、料理人としての新たな道を切り開こうとしていた。店内の喧騒と共に、小リュービクの決意は静かに燃え上がっていた。
新人衛兵とまかないチャーハン
衛兵イーゴンと居酒屋ノブの誤解
訓練中の反論と美食の価値観
秋空の下、ベルトホルト隊長と新人衛兵イーゴンの間で食事の価値観についての議論が生じた。ベルトホルトが「美味い食事は人生の財産」と語る一方で、イーゴンは「食事は腹を満たす手段」としてその考えに反論した。イーゴンの食生活はシンプルで、主に芋を食べる生活であり、味わうという行為に興味を持っていなかった。
居酒屋ノブへの招待
イーゴンの食事観を変えようと決意したベルトホルトは、居酒屋ノブへ連れて行くことを計画した。抵抗するイーゴンを説得し、職務を口実に連れて行くことで店に足を運ばせることに成功した。しかし到着すると店主であるタイショーは不在で、代わりに賄い料理を作るシノブが二人にチャーハンを提供した。
イーゴンの予想外の反応
賄い料理であるチャーハンを食べたイーゴンは、一瞬悲しげな表情を浮かべた後、追加を求めた。しかし冷ご飯が足りないとの理由で断られ、リオンティーヌから「また来ればよい」と勧められた。これを機にイーゴンは居酒屋ノブを特別な場所と認識し始めた。
居酒屋ノブの誤解
翌日、イーゴンは再びノブを訪れ、そこで古都の有力者たちが店を利用している光景を目にした。この経験から、ノブは単なる居酒屋ではなく「秘密の拠点」であるとの誤解を深めた。イーゴンはノブを守るべき重要拠点と捉え、隊長にその計画を提案した。
誤解を解くまでの道のり
イーゴンの熱意に圧され、ベルトホルトは居酒屋ノブが普通の店であることを説明する必要に迫られた。しかし、イーゴンの誤解を解消するまでに十日を費やす結果となった。
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