どんな本?
物語の概要
本作は、異世界の古都アイテーリアに突如現れた日本の居酒屋「のぶ」を舞台にしたグルメファンタジーである。第19巻では、古都の一流料理人である小リュービクが、自身の店の伝統メニュー「獅子の四十七皿」に新たな一皿を加えようと試みる。そのために「のぶ」で働くハンスに協力を求め、伝統を超える新たな料理の創作に挑戦する。
主要キャラクター
• 小リュービク:古都アイテーリアの一流料理人。自身の店の伝統メニューに新たな一皿を加えようと奮闘する。
• ハンス:「のぶ」の従業員で、元衛兵。料理人として成長中であり、小リュービクの新メニュー開発に協力する。
物語の特徴
本作は、日本の居酒屋文化と異世界の風習が交錯する独特の世界観が魅力である。第19巻では、伝統と革新の融合をテーマに、料理人たちの情熱と挑戦が描かれる。また、異世界の住人たちが日本の料理に触れることで生まれる新たな発見や交流も見どころである。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2024年12月4日
• 判型:B6判
• ページ数:164ページ
• ISBN:9784041154892
本作は電子書籍版も提供されており、また、アニメ化や実写ドラマ化などのメディア展開も行われている。
読んだ本のタイトル
異世界居酒屋のぶ 19巻
漫画 ヴァージニア二等兵 氏
原作 蝉川 夏哉 氏
キャラクター原案 転 氏
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あらすじ・内容
眠れる獅子、覚醒!? 大人気グルメファンタジー第19巻!
古都の一流料理人・小リュービクは、自身の店の伝統メニューである<獅子の四十七皿>に新たな一皿を加えようと考える。その為に「のぶ」で働くハンスに協力を仰ぐが、果たして伝統を超えられるのか…?
感想
晩餐会の準備と伝統を超える挑戦
古都アイテーリアを代表する料亭〈四翼の獅子〉亭で、小リュービクは伝統メニュー「獅子の四十七皿」に新たな一皿を加えることを決意した。
小リュービクが協力を仰いだのは居酒屋「のぶ」のハンスであり、東方の調味料であるショーユ(醤油)を使った革新的な一品が試作された。
リュービクは厨房で過去の記憶を語りつつ、料理哲学を再確認し、新たな四十八皿目を完成させた。
この皿は晩餐会で披露され、賓客たちの注目を集めることとなった。
感想として、リュービクの挑戦には料理人としての強い覚悟が感じられた。
特に、ショーユ(醤油)という異国の要素を取り入れることで、伝統と革新を融合させる姿勢が印象的であった。
実際に合うのかな?
晩餐会での成功は、リュービクとハンスの努力の結晶であり、前巻から続く物語のクライマックスとしてふさわしい展開であった。
ロンバウトと古都再興の覚悟
晩餐会の主催者とされたロンバウト・ビッセリンクは、自身が計画に関与していない(ヲイw)のに勝手に名前を使われていた事を知り驚愕するも、父ウィレムの意図を察して賓客たちを迎え入れる。晩餐会の中心には四十八皿目の料理があり、その革新性が賓客たちを魅了した。
ロンバウトは、この晩餐会が古都を交易の中心地へと再興する布石であることを理解し、大商人としての覚悟を示した。
このエピソードでは、父子間の絆と商業のダイナミックさが巧みに描かれていた。
ロンバウトの成長と、ウィレムの影響力が物語の軸を支え引き込む展開であった。
晩餐会がもたらす未来への希望が印象的であった。
ハンスの巣立ちとしのぶの葛藤
居酒屋「のぶ」で働くハンスの「すだち」という発言に動揺したしのぶは、彼が独立を考えているのではないかと不安を抱いた。
しかし、それが調味料の酢橘(すだち)を指すと知り、誤解だったと笑って誤魔化す。
この出来事を通じて、しのぶはハンスの成長を改めて認識し、いつか彼が巣立つ日を受け入れる日が来ると思いを馳せた。
このエピソードでは、日常的なやり取りに潜む心の動きが丁寧に描かれていた。
料理人ハンスの成長と、しのぶの人間味(天然?)あふれる反応が心に温かさを与える一篇であった。
火山噴火と名前の由来
過去の回想で、火山噴火で全てを失ったウィレム・ビッセリンクが、新たな商人として再出発を決意する姿が描かれた。リュービクの〈神の舌〉という異名の由来も明かされ、それぞれが過酷な状況を乗り越える物語が展開された。
この回想は、登場人物たちの過去と現在を結びつける重要な役割を果たしていた。
困難を乗り越える姿が力強く、物語全体に深みを与えていた。
時の流れは…
全員目元が若い頃と変わってないのが印象的だった。
日常の中の贅沢と料理の力
たらこを炙った香りが店内に漂う中、信之としのぶは土鍋で炊いたご飯とたらこ茶漬けを楽しむ。シンプルながら贅沢なこの料理が、料理の持つ力と日常の喜びを改めて感じさせた。
このエピソードでは、料理が人々に与える幸福感が強調されていた。
日常的な一皿を通じて、居酒屋「のぶ」の魅力が伝わってきた。
食いてぇ…
19巻では、リュービクの挑戦と成長、ロンバウトの覚悟、日常の中にあるドラマがバランスよく描かれていた。
それぞれのエピソードが連携し、古都全体を舞台にした大きな物語として展開されていた。
特に、伝統を越える挑戦と新たな時代への期待が印象的で、次巻への期待が高まる内容であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
備忘録
晩餐会前夜
厨房への帰還
深夜、リュービクはハンスと共に〈四翼の獅子〉亭の厨房に立っていた。久しぶりに自らの居場所へ戻るその瞬間、彼は驚くほど懐かしさを覚えていた。秋の寒さではなく緊張から膝が震え、料理人としての挑戦が再び始まることを心から楽しんでいた。厨房に招いたハンスの存在が、その特別な夜に新たな風を吹き込んでいた。
厨房の威容と準備
〈四翼の獅子〉亭の厨房は古都最大規模であり、皇帝や王をもてなす準備が可能なほどの設備を誇っていた。数多くの調味料と貯蔵された食材は、一族の努力と伝統を象徴していた。リュービクはハンスに厨房の仕組みを教え、部下たちには晩餐会の準備を指示した。緻密に計画された統率と作業手順が、この厨房の圧倒的な力を支えていた。
四十八皿目の創作
リュービクは伝統の「獅子の四十七皿」に加える新たな一皿の創作を開始した。ハンスが持ち込んだショーユが新しい可能性を示し、リュービクはその味を試しながら料理を組み立てていった。玉葱を飴色になるまで炒め、緻密に取られた出汁と共に調理を進める中、彼は過去の思い出を語りつつ、自身の料理哲学を形にしていった。
完成と称賛
何度も試作を重ねた結果、ついに四十八皿目が完成した。その味を確かめたリュービクは満足げに宣言し、厨房全体に拍手が広がった。リュービクとハンスの協力による創作は、伝統を越えた新たな一歩を示し、古都の味覚の中心たる〈四翼の獅子〉亭に新たな輝きをもたらした。
〈晩餐会〉
晩餐会の発端とロンバウトの苦悩
ロンバウト・ビッセリンクは、知らぬ間に自分の名前で晩餐会が計画されていた事実に驚愕した。準備は完璧に整えられ、彼が何も手を加える余地がないほどであった。その規模と精度から、この企みを仕組んだのが父ウィレムであると悟ったロンバウトは、困惑しつつも賓客たちを迎える役目を果たすことに徹した。
賓客たちとの出会い
晩餐会には帝国内外の大商人や貴族、聖職者が集結した。南部の豪商ゼーゼマンや大公国のバクーニン商会の会頭ら、多様な顔触れがロンバウトと会話を交わした。彼らとの挨拶を交わす中で、ロンバウトは商人としての成長を改めて実感し、父の仕掛けた舞台の意図を探り続けた。
宴席での驚きと四十八皿目の登場
晩餐会の料理は〈四翼の獅子〉亭の名物「獅子の四十七皿」を基盤としていたが、突如として「四十八皿目」が登場した。仔牛のフォンとショーユを使ったこの料理は、東方の異国の味を取り入れた革新であった。賓客たちはその深い味わいに感動し、特にショーユの風味が注目を集めた。
父ウィレムの策略とロンバウトの覚悟
四十八皿目の成功とともに、ロンバウトは父ウィレムの真意を理解した。この晩餐会は単なる宴ではなく、古都を交易の中心地として再興するための布石であった。ロンバウトは賓客たちの前で海上交易路の復活を宣言し、大商人としての覚悟を示した。彼の言葉は会場全体に波紋を広げ、集まった商人たちを新たな商機へと導いた。
新たな時代への一歩
父の影響と自身の決断が交錯する中で、ロンバウトは大きな責任を背負いつつも、その先に待つ未来への期待に胸を躍らせた。ウィレムとリュービクの笑顔が見守る中、彼は古都の新時代を切り拓く第一歩を踏み出したのであった。
【閑話】火噴き山と〈神の舌〉
山の噴火と村の避難
火山が突如として噴火し、ビッセ村は灼熱の溶岩と噴石に飲まれた。粉塵が空を覆う中、僧侶エトヴィンの指示により村人全員が迅速に避難し、丘の上に集まった。村は壊滅したが、一人の死者も出さず避難が完了したのは奇跡と言える出来事であった。
ウィレムの決意と新たな名前
商人ウィレム・ウィンクルは、噴火で商品や家系図を失ったものの従業員を守り切ったことに満足し、新たな出発を決意した。彼は悪評を断ち切るために「ウィンクル」の姓を捨て、村の名前を取り入れた「ウィレム・ビッセリンク」を名乗ることを宣言した。その名は僧侶エトヴィンや料理人リュービクとの会話の中から生まれたものである。
リュービクの転機と〈神の舌〉の誕生
リュービクは、火山の噴火を予測した僧侶エトヴィンの話に基づき、ウィレムの提案で〈神の舌〉という異名を得た。これにより、彼は料理人として新たな自覚と決意を抱き、自身の能力を活かすことを決めた。その姿には名が人を変える力を感じさせた。
それぞれの未来への道
避難後、エトヴィンは教導聖省への報告と新たな任地への移動を考えていた。一方、リュービクは大公国の料理を学ぶため東方への旅を計画し、ウィレムは帝国西部の毛織物取引で新たな商機を模索していた。3人はそれぞれの道を見据え、噴火を乗り越えた新たな未来へと歩み始めた。
焚火の団欒と村の再建への希望
焚火を囲む村人たちは、リュービクの調理したソーセージや手持ちのパンを分け合いながら鋭気を養った。食べることの喜びが生きる力へと変わり、彼らの間には希望が芽生えていた。双月が輝く夜空の下、エトヴィンは再びウィレムと酒を酌み交わす日を心待ちにしていた。
大市
運河沿いの物件購入とマルコの悩み
マルコは運河沿いの物件を購入するために資金を使い果たし、不安に苛まれていた。ところが例の晩餐会の後、多くの商会や貴族から物件購入を求める手紙が届き始めた。その価格の高さに驚いたマルコであったが、物件売却が帝国の勅令により一年間禁止されていることを知り、打ちひしがれた。
居酒屋ノブでの助言と新たな視点
居酒屋ノブで老商人ウィレム・ビッセリンクに出会ったマルコは、彼の言葉から「売る」のではなく「貸す」方法に活路を見出した。ウィレムの助言は、マルコに物件の価値を生かす道を示し、彼の迷いを一掃した。居酒屋で供された〈四十八皿目〉の料理を味わい、マルコは気力を取り戻した。
物件の賃貸戦略と成果
マルコは物件を賃貸することで継続的な利益を得る戦略に転じた。このアイデアは好評を博し、多くの問い合わせが殺到した。古都の成長を期待する商会や貴族にとって、マルコの提案は魅力的であり、運河沿いの立地条件も大きな要因であった。
商人としての決意
「金の卵を産む雌鶏」となった物件により、マルコは短期的な利益に目を奪われることなく、持続可能な商売の重要性を悟った。運河の浚渫作業を眺めながら、マルコは自らも「種を撒いて耕す商人」でありたいと決意し、新たな一歩を踏み出した。
ハンスとすだち
ハンスの巣立ちへの予感
居酒屋のぶの仕込み時間、ハンスが「すだちかな」と呟いたことで、しのぶは動揺した。彼が独立を考えているのではないかと思い悩んだのである。昼営業と仕込みを支える彼がいなくなることへの不安を感じながらも、しのぶは自分の役目としてハンスの未来を第一に考えるべきだと決意していた。
晩餐会での経験と成長
かつて、ハンスは〈四翼の獅子〉亭の晩餐会に参加し、大きな刺激を受けた。この経験を通じて、彼は使われる側だけでなく、使う側の料理人としての視点を得た。天才料理人リュービクとの接点もまた、彼に新たな技術と視野を広げるきっかけとなったのである。
「すだち」の意味を巡る誤解
ハンスの「すだち」が実は調味料の酢橘を指していると気づいたしのぶは、自らの早とちりに赤面した。これによりハンスの独立話は杞憂に終わったが、しのぶは彼の成長を改めて実感し、いずれ訪れるその時に備える覚悟を新たにした。
太刀魚の炙りと居酒屋の喜び
信之とハンスは仕入れた太刀魚を炙り、酢橘と醤油で提供した。食したパトリツィアとシモンの幸せそうな表情に、居酒屋の真髄を感じ取ったしのぶは、料理を通じて幸福を届けるという自分たちの使命を再認識した。
未来への思いと技の継承
信之の料理技術を吸収するハンスの姿を見ながら、しのぶは彼が信之の弟子として胸を張れる存在になることを願った。彼が独り立ちするその時が来たら、それを自然と受け入れる心構えを持つことを決意したのである。
たらこ茶漬け
焼きたらこと信之のこだわり
居酒屋のぶの休業日、信之はたらこを炙っていた。これまでに仕入れた中でも上物のたらこを味見するためである。師匠塔原の教えを守り、料理人として自分の舌を鍛えるために必要な作業だった。たらこを焼く香りとともに、しのぶは信之の料理に対する真摯な姿勢を再確認していた。
ハンス不在の理由と常連客たちの活躍
ハンスが休業日に居酒屋のぶに来られなかった理由は、ロンバウト・ビッセリンクの女性用眼鏡の出荷を手伝っているからであった。貴族社会での成功に向けた繊細な仕事が求められており、ハンスもその一環を担っていた。一方、他の常連客たちもそれぞれの活動に勤しんでおり、店を離れても関係が深く結びついている様子が窺えた。
たらこと土鍋炊きご飯の贅沢な昼食
焼きたらこの濃厚な旨みが口いっぱいに広がり、信之としのぶは幸せそうに笑顔を浮かべていた。さらに、土鍋で炊き上げたご飯が炊き上がり、たらこ茶漬けというシンプルながら贅沢な料理を楽しんだ。この料理がいかに簡単でありながら満足感をもたらすかを再認識し、二人は次に提供する料理のアイデアを膨らませていった。
季節ごとの料理への想い
秋から冬へ移ろう季節に合わせ、どのような食材を用い、どのようにお客を喜ばせるか。しのぶの提案したすだちと明太子を使ったパスタをはじめ、季節の美味しい料理を考える相談は日暮れまで続き、居酒屋のぶの未来の可能性を感じさせた。
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