どんな本?
『転生したらスライムだった件』第27巻は、異世界に転生した主人公リムルが、魔王として国を治めながら、新たな脅威や挑戦に立ち向かうファンタジー作品である。本巻では、リムルの国「テンペスト」で開催された大規模な祭典「開国祭」が終わり、物語は次の段階へと進む。
リムルは魔王としての政治や経済問題に取り組み、特に商人との取引や、迷宮の管理が重要なテーマとなっている。敵対する勢力や陰謀も絡み合い、リムルとその仲間たちは新たな戦略を立てていく。また、迷宮攻略が本格化し、リムルたちが迷宮を通じて国家の発展を目指す様子が描かれる。
この巻では、リムルの成長や新たなキャラクターの活躍、そして戦略的な駆け引きが見どころである。シリーズファンにとってはもちろん、馴染みの無い人も異世界の壮大なスケールを楽しめる内容となっている。
読んだ本のタイトル
転生したらスライムだった件 27
著者:#川上泰樹 氏
原作:#伏瀬 氏
キャラクター原案:#みっつばー 氏
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
大盛況で終わりを迎えた開国祭。しかし華やかな祭りの裏では、商人達への支払い問題が残っていた。
ミョルマイルは証書での支払いを懇願するも、
商人達は国際法をたてにドワーフ金貨での支払いにこだわり、誰もテンペストを信用しようとしない。
押し問答が続く中、仲裁のためにガストン王国の貴族ミューゼが名乗りを上げた。
彼の目的が「恩を売る」ことであるのを見抜いたリムルは、反撃の一手に出る。
感想
『27巻』では、大盛況に終わった開国祭の後、テンペストの幹部達は小売商人たちへの支払い問題に直面する。
商人たちは国際法を盾にドワーフ金貨での支払いを要求し、他の支払いはテンペストへの信用が足りないと言ってきた。
そんな中、ガストン王国のミューゼ公爵が仲裁を申し出るが、その裏には恩を売ろうとする策略があった。
リムルは彼の意図を見抜きながら、再度、古代金貨や特産品での支払いを提案し、最終的には金貨での支払いを用意して事態を解決する。
ミューゼ公爵の計画は失敗に終わり、テンペストの信頼と力が改めて証明され。
テンペストを信用なかった商人達には今後取引をしないと宣言して終わる。
うん、見事な”ざまぁ”展開だな。
自身でもこの商人達みたいにならないように気を付けないといけない。
さらに、迷宮での挑戦は続き、緑乱との激しい戦いが繰り広げられる。
リムルと魔王な仲間たちは仮魔体を使って侵入者たちを迎え撃ち、迷宮の運営を楽しむ姿が描かれる。
さらに、迷宮の再編や新たな挑戦者への対応策も進行し、迷宮の改善が進められる一方で、マリアベルという新たな敵の動向も示唆されている。
物語全体には全く関与してないが、ゴブタの成長が嬉しく思った。
いや、彼にとっては地獄だったがランガとの合体技はさらに洗練されてゴブタの今後の活躍、、、、
周りの連中の強さがインフレを起こして減るんだよな。
そして、迷宮攻略の進展、商人たちとの駆け引きが印象的であった。
商人たちとの支払い問題の後、ミョルマイルのおかげでスムーズに解決され、テンペストの信用がさらに強化されたのは非常に満足感のある展開であった。
迷宮運営は着実に進んでおり、敵の動向やリムルの策がますます複雑になっていった。
特に、緑乱との対決やヒナタの迷宮攻略の戦闘は、次の大きな展開への布石と感じられる。
また、95階層の問題も時間稼ぎという形で一応解決されたが、迷宮外の魔物たちの管理や神楽坂勇樹の役割など、まだ多くの謎が残されている。次巻では、マリアベルが本格的に動き出し、物語が大きく展開していくことが期待される。
迷宮運営では、リムルと魔王な仲間たちが仮魔体を使って迷宮攻略を楽しむ姿は、ゲームのような感覚で描かれており、夏休みにハシャグ子供達のようで一緒に楽しめる部分であった。
また、リムルがミューゼ公爵を出し抜く場面では、彼の知略が光り、彼が魔王としての力だけでなく、知恵で勝つ姿が描かれているのが魅力であった。
全体的に、物語は順調に進んでおり、次巻が楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
同シリーズ
転生したらスライムだった件 シリーズ
漫画版
小説版
その他フィクション
備忘録
118話 祭りの後(小説9巻)
開国祭の最終夜には、盛大な夜会が開かれ、豪華な料理が提供され、参加者たちは和やかに談笑していた。迷宮内ではヴェルドラやラミリス、ミリムらが楽しみ、町では商人や冒険者、農民、住民が飲み歌い、無料で開放された店で夜を満喫していた。この時間の終わりを惜しみつつも、次の日からの仕事にやりがいを感じる不思議な気分が漂っていた。幸せな光景を見て、平和が続くことを願った。
祭りの翌日、街道は帰国する人々で混雑し、リグルが警備部隊を率いて対応していた。一方、大会議室では商人たちとの金貨の支払いに関する話し合いが行われており、リグルドとミョルマイルが説明を続けていたが、混乱している様子だった。そんな中、ガストン王国のミューゼ公爵が商人たちの代表として支払いを求めた。商人の中には、ドワーフ金貨以外の支払い方法に不信感を抱く者もいた。リムルは商人たちを宥めながら、古代金貨や特産品での支払いを提案したが、ミョルマイルは交渉を進めようと努力していたものの、商人たちは一方的な要求を続け、話し合いは解決に至らなかった。
ミューゼは時が来たと感じ、35歳の若さでガストン王国の公爵であり、偉大なロッゾ一族の一員として、西側諸国の上流階級に属していた。彼は長老から、魔王リムルに恩を売り信用を勝ち取るよう命じられ、これを達成すれば五大老への昇進が約束されていた。ミューゼは全力でこの命令を実行することを誓い、商人たちに将来を約束し、記者を巻き込んで自身の安全を確保し、リムルと直接対峙した。リムルと会うことは恐怖だったが、得られる栄光を考えれば恐怖を克服できると確信していた。
ミューゼは商人たちがリムルの提案を拒否した時点で、計画が成功したと確信していた。あとは商人たちを宥めて場を取り仕切り、リムルから感謝を得るはずだった。しかし、リムルはミューゼの協力を必要とせず、リグルドが持ち込んだ山積みの金貨を見たミューゼは、計画が失敗したことを悟った。記者たちが取引の様子を記事にすることをリムルが許可し、金貨の真贋を確認した際、本物であると確認された。リムルは商人たちとの取引はこれが最後だと宣言し、自国が独自の道を歩むことを強調した。これにより、ミューゼの計画は失敗し、リムルの政策が正当化された。
その後、リムルはミョルマイルに財務総括を任せ、取引は無事に終了した。開国祭の翌日夜に反省会が開かれ、ヴェルドラの不満が予想された。会議では、リムルの厳しい対応に驚く声が上がったが、ガゼルやエルメシアは理解を示し、リムルが西方諸国評議会との対等な関係を望んでいることを確認した。
エルメシアはリムルの戦略を評価し、商人たちへの恩を売る戦略が効果的であることが語られた。反省会の中では、映写機に関する議論もあり、西側諸国に文化的衝撃を与える技術であることから、公開前に相談が欲しかったとの意見も出された。その後、新技術の利用や交通網の発展に関する提案が進められ、ブルムンド王国を物流の中心地とする案が提案された。
ヴェルドラが迷宮攻略に不満を示した際、リムルはこれを将来の展望に結びつける提案を行い、冒険者を誘致する計画が説明された。魔物討伐で得られる素材を商材とし、自由組合との協力を強化する提案もなされ、迷宮内での経済活動が期待された。ヒナタは聖騎士団の修行に迷宮を利用したいと提案し、リムルはこれを受け入れた。
反省会の後、リムルは関係者を集め、東の商人たちに関する議論を行った。各国で彼らがどのように扱われているか確認がされ、ドワルゴンではアンリエッタが監視を行っており、ブルムンド王国では数が少なく管理が容易であった。魔導王朝サリオンは鎖国状態にあり、東の商人が立ち入る余地はなかったが、ファルメナスではディアブロが対処に当たっていた。自由組合では各自の判断に委ねられているが、ユウキは指導が行われることを約束していた。
さらに、ヒナタは東の商人ダムラダとの取引を全面的に停止し、彼らとの関連を疑っていた。この会合を通じ、東の商人に対する警戒網が構築され、今後の動きを注視する方針が確認された。その結果、リムルたちはクレイマンが言及していた「あの方」が神楽坂ユウキであると結論づけ、ユウキが背後で中庸道化連や東の商人たちと繋がっている可能性を示唆した。
ミューゼ公爵は魔王リムルとの交渉が失敗に終わり、自らの計画が無謀であったことを痛感した。リムルに完全に出し抜かれ、彼が計画通りに進めていると思い込んでいた事柄が、実際にはリムルの手のひらの上で進んでいたことを悟った。商人たちも同様に、魔王リムルの影響下にあり、彼らの出身国や商品までもリムルが把握していることに恐怖を覚えた。
ミューゼは、魔王領との関係を断たないようにしなければならないと強く感じ、新たな経済圏から排除されることの重大さを理解していた。失敗によって自身の出世の道は閉ざされ、財産を失う可能性があったが、彼ができる唯一のことは真実を報告することであった。失敗を受け入れたグランベル・ロッゾは、孫のマリアベルにリムルとの交渉を任せるべきだったと反省し、彼女に行動を促す決意を固めた。
その結果、魔国連邦に対して西方諸国評議会からの手紙が届くこととなり、物語はさらに複雑な展開へと進んでいった。
119話 順調な迷宮運営(小説10巻)
神楽坂ユウキは、仲間たちとともに計画の見直しについて話し合っていた。あるイベントで魔王リムルの力を目の当たりにし、自信を失っていた。リムルに対してはできる限り敵対せず、親密な関係を維持する方針で計画を進めることを決定した。ユウキの考えでは、リムルは確固たる証拠を掴むまでは表立って敵対することはないだろうというものであった。ユウキは、リムルを怒らせると手がつけられなくなると警告し、仲間たちもその意見に同意した。
ユウキと仲間たちは、特定機密商品の扱いや、魔王レオンとの商談を進めることを決定した。これが戦力増強のためか、別の目的があるのかを探ることにした。特に、不完全召喚によって呼び出された異世界の子供たち──特定機密商品の存在が重要な要素であった。魔王レオンがこれらの子供たちを集めている理由が焦点となり、ユウキは仲間たちに慎重な行動を求めた。仲間たちは、ユウキの指示に従うことを約束し、特にラプラスたちは過去の失敗から学び、今回は慎重に行動することを誓った。ユウキは彼らの忠実さを頼もしく感じ、計画の成功を確信していた。
ラプラスたちに指示を出した後、ユウキはカガリに対して、古代遺跡アムリタの防衛機構を利用してリムルを罠にはめる提案を否定した。アムリタはカガリが過去に魔王カザリームとして建設した都であり、高度な防衛システムを持っていた。カガリはリムルとの約束で遺跡調査を利用しようと考えていたが、ユウキはその提案には慎重さを求めた。さらに、リムルの実戦能力に関する情報を収集するよう指示し、その際に身元が露見しないよう注意を促した。
ユウキは、東側での活動拠点の拡張を計画しており、必要に応じてそこに逃れる準備を進めていた。西側での覇権をまだ諦めていないと強調し、闇の中で魔人たちは行動を開始した。
テンペスト開国祭が終了し、来賓たちが帰国して日常が戻りつつある中、エルメシアは転移魔法陣を設置した旅館を購入し、ガゼルは技術研究班の準備を約束していた。エルメシアは人造人間に意識を移し、遊びに来る計画を立てていた。一方で、ヒナタは子供たちの教師として活動を始め、魔法や戦闘訓練を行っていた。リムルはユウキへの疑いを持ちながらも子供たちを保護し、イングラシア王国ではなくテンペストで学ばせることに決定した。
地下迷宮の試験開放では、冒険者たちが稚拙な攻略法を使ったために問題が発生した。多くの者が一階層さえもクリアできず、リムルは冒険者たちへの対応や迷宮の構造を再考する必要があると感じた。このため、緊急会議が開かれ、迷宮運営の現状と課題が話し合われた。冒険者たちの攻略が進まない状況を踏まえ、訓練場の設置や攻略方法の指導が提案された。特に、マサユキの提案により、一階層に訓練場を設置し、各階層に休憩室を設けることが決定された。また、使い捨ての記録地点やトイレ、飲食施設の設置も進められ、これにより冒険者たちの迷宮攻略へのモチベーションと利便性が向上することが期待された。
一階層は体験用の訓練場に変更され、ミッション形式で最低限の知識を冒険者に提供する仕組みが整備された。さらに、上級者向けの戦闘訓練室も設置され、新兵たちの訓練場としても活用されることになった。四階層までの難易度は低めに設定され、五階層以下からは高価なアイテムが手に入るように調整が行われた。また、五十階層を突破した者には月ごとに先着順で褒賞が与えられるという新しい制度も導入され、同じ者が何度も褒賞を得ることはできない仕組みとなっていた。
ミョルマイルは最下層突破者に星金貨百枚を贈ることを提案し、これは周辺国の貴族を動かし、冒険者たちが迷宮攻略に挑むよう促す狙いがあった。この破格の褒賞金は最下層を突破することが条件であったが、その難易度の高さから、実際に支払われる可能性は非常に低かった。さらに、迷宮攻略に関する宣伝戦略も進められ、迷宮の存在感を強める計画が進行していた。マサユキは計画に懸念を示しながらも、リムルの支援に感謝していた。
緊急会議では、迷宮の再調整計画が立てられ、冒険者たちの関心を高めるための宣伝戦略も議論された。迷宮の難易度は改善されたものの依然として高く、多くの挑戦者たちが名誉と誇りをかけて攻略を試みていた。バッソン一行が手に入れた希少級の剣の噂が広がり、これを目指して一攫千金を狙う冒険者たちが迷宮に押し寄せた。迷宮での武器の稀少性が挑戦者たちの動機となり、挑戦者が増加していた。
改装後の迷宮では、真剣にミッションに取り組む者が増え、訓練を経て挑戦する者が目立つようになった。迷宮内部の地図売買を抑制しつつ、挑戦者たちに真摯な攻略を促す仕組みが機能していた。特に、自由組合所属の冒険者たちが示したプロフェッショナルな攻略法や、精霊使役者が『精霊交信』を用いて迷路を解明する新しい方法も登場し、迷宮挑戦はさらに活発化していた。
会議では、迷宮の現状と挑戦者たちへの支援策が再度話し合われた。特にマサユキの提案による、魔物がアイテムを落とすシステムの導入が検討された。これにより、挑戦者たちは魔物を倒すことで回復薬などの有用なアイテムを手に入れられるようになり、さらに挑戦への意欲が高まると見込まれていた。未鑑定アイテムの導入も検討され、これによって挑戦者たちは迷宮内外での行動がより楽しめるようになると期待されていた。これに伴い、迷宮の出入りが増え、入場料による収益も見込まれるようになった。
夜、リムルは日課である執務室での報告を受けていた。ミョルマイルは前日の会議で提案された施策に基づき、酒場の売上が向上し、低ランクの挑戦者にも金が回るようになっていると報告していた。その一方で、ディアブロがリムルにお茶を淹れたが、味が違うことに気づいた。これはシオンが手を加えたもので、ディアブロもその準備に協力していたという。
ディアブロには褒美として、彼が部下にしたい者たちに新たな肉体を用意することが約束された。ディアブロは数百体、多くても千体の悪魔族を従える計画を持っていると明かし、リムルはそれに賛成した。ディアブロは感謝の意を示し、準備を進めるために旅立っていった。これにより、秘書がシオンだけとなるが、リムルは問題なくやっていけるだろうと楽観的に考えていた。
数日後、三十階層を突破したのはマサユキ一行であった。迷宮内のアナウンスで大鬼の狂王とその配下五人衆の討伐が発表され、町全体が歓喜に包まれた。マサユキの名声はさらに高まり、商人たちは記念セールを開催し、町の活気は一層増していた。迷宮の会議室では、この宣伝効果について議論され、特にオーガシリーズの希少級装備が注目を集めていることが報告された。このシリーズは、集めることで特殊効果が発動するという射幸心を煽る設定であり、その存在が公になったことで迷宮に挑戦する者が増えることが期待されていた。
また、迷宮内で魔物がアイテムをドロップする仕組みが導入され、挑戦者たちにとって大きな楽しみとなっていた。これにより、迷宮攻略への意欲が高まり、市場は活況を呈していた。特定の部屋では大量の魔物が発生し、それらにアイテムを持たせて解き放つという方式が採られていた。魔物部屋は罠として機能していたが、現在は魔物の管理部屋としての役割も大きく、この新しい取り組みは成功を収めていた。鑑定屋も利益を上げ、迷宮で得たアイテムを活用する者が増加していた。
迷宮内では宿屋が提供され、利用者は食糧や寝具を持ち運ぶ必要がなくなり、身軽に行動できるようになった。この宿屋は安全な休憩場所としてだけでなく、食事も提供し、多くの利用者に喜ばれていた。また、迷宮内のトイレ事情も改善され、これが挑戦者たちにとって大きな魅力となっていた。これらの取り組みによって迷宮運営は順調に進み、町は賑やかさを増していた。迷宮の利益率は十%に達し、労働者への給与支払いが発生していないため、さらなる投資も可能であった。
国全体で住民に仕事を与え、満足して働ける環境を整えることが、王としての重要な役割であった。ヴェルドラやラミリスといった貢献者への報酬支払いも欠かせない。ミョルマイルは、活況を呈する町の状況を肯定的に報告していた。町は貿易の中継地として機能し、多くの商人や投資者が訪れていた。迷宮を通じて得た信用と利益を活かし、国の商品消費を促進し、国内外の商人たちとの関係を強化していくことが主な目標であった。
ラミリスとヴェルドラに給料を支払い、迷宮の百階層には新たな研究施設が設置された。迷宮運営は順調であり、次なるプロジェクトにも着手されていた。町の発展も進み、工業区画では技術の共有と切磋琢磨が行われていた。
一方、三十階層突破者が現れた後も階層の攻略は迅速に進み、四十階層手前まで到達したことが報告された。攻略者たちは迷宮規定ギリギリの戦術を駆使しており、そのリーダーは「緑の使徒」という傭兵団に所属していた。イングラシア王国が資金源である可能性が示唆され、ミョルマイルは迷宮が早期に攻略されることを懸念していたが、主要な開発プロジェクトはまだ進行中であり、現時点での違反行為は確認されていなかった。リーダーが実力を詐称している可能性もあり、さらなる対策が必要であると判断された。
迷宮の会議室で、チーム「緑乱」の迷宮攻略の進展が議論された。チームは既に三十八階層まで突破しており、そのリーダーがAランク以上の実力を持っていることが判明した。彼らは高い連携と策略を駆使し、迷宮内の罠を巧みに回避していた。ラミリスは「迷宮創造」に干渉する提案を行い、それが実行されると、チームのリーダーと主要メンバーがAランクであることが確認された。この予想外の事態に、リムルも深刻な対応が必要だと感じた。
ラミリスは、リムルが部屋に籠もっていた三日間で発生した未知の問題について説明した。聖騎士団の訓練が五十一階層から開始され、六十階層まで進行していたが、ラミリスが準備した罠や障害を次々と突破され、特に階層守護者アダルマンも倒されていた。その後、ヴェルドラの罠も効果を発揮せず、聖騎士団は進行を続けたが、ラミリスの聖霊守護巨像が彼らを全滅させた。しかし、その後ヒナタによって巨像は破壊され、再生不能となっていた。
この結果、五十一階層から九十階層までのボスが機能しておらず、ラミリスとヴェルドラは困惑していた。さらに、ヒナタは一日で九十五階層に到達し、ヴェルドラと戦ったが、彼には敵わなかった。
現在、ヴェルドラはアピトの戦闘訓練をヒナタに依頼しており、迷宮の問題点を早期に洗い出せたことは不幸中の幸いであった。
四十九階層には、挑戦者を捕らえる罠として巨大スライムが配置され、物理攻撃に耐え、魔法の使用を制限するなど、厄介な設定が施されていた。さらに、スライム関連の罠が進行を妨げるため、これらの罠を使って時間を稼ぎつつ、アダルマンの強化や聖霊守護巨像の再製作が進められた。
また、ヒナタから迷宮攻略の褒賞金に関する問い合わせがあり、
ミョルマイルが対応したが、リムルはこの件に関わりたくない意向を示していた。迷宮運営には多くの課題が残されていたが、これを契機に迷宮のさらなる強化と改良が進められることとなった。
120話 スライムの脅威(小説10巻)
ヴェルドラとラミリスに翌日の準備を伝えた後、リムルはシオンを伴いシュナの元を訪れた。シュナは調理場を取り仕切っていたが、リムルの急な用事にすぐ応じた。リムルはアダルマンに対して改善案を提示し、神聖魔法の行使を可能にする「信仰と恩寵の秘奥」を伝授した。アダルマンはこの新たな力を喜び、さらにリムルが作成した無属性の「神聖魔法:霊子閃光波」も習得した。また、アルベルトを前衛に加える計画と特別な装備の提供も行われ、アダルマンのさらなる強化と戦術の多様化が進められた。リムルは、アダルマンに迷宮の六十階層を守護させるための準備を整えさせ、全てを彼らに委ねることを決めた。
翌日、リムルたちは約束の時間に集まり、ラミリスがアダルマンの階層が完成したことを報告した。そこにミリムがゴブタを連れて登場し、ゴブタのヘルモードクリアを自慢し始めた。ヴェルドラとミリムの間でゴブタを巡る言い合いが始まったが、リムルはゴブタの意思を尊重し、彼に休息を取らせた。ゴブタとランガは厳しい実戦訓練を経て大きく成長し、ランガとの「同一化」を通じてゴブタは新たな力を手に入れた。彼は、戦闘感覚の向上と思考加速が可能になるエクストラスキル「賢者」を獲得し、その成長が周囲に語られた。
ミリムが合流し、リムルは準備していた特殊なアイテムを三人に配布した。このアイテムは「擬似魂」と呼ばれる魂の器で、迷宮での問題解決に役立つと説明された。また、黒い玉「魔精核」を使用し、各自が望む魔物を想像して生み出せるようになった。魔物に憑依することで、新たな身体での動きを楽しむことが可能となり、リムルはこの仮想体験を利用して迷宮の侵入者を撃退しつつ、楽しみながら迷宮攻略の問題点を発見することを明かした。
彼らは準備が整えば迷宮攻略を楽しむつもりであったが、現時点では侵入者の撃退に集中することにした。仮魔体に慣れた後、彼らは装備を整えるために「復活の腕輪」を装着し、無限に復活可能な状態でクロベエの工房を訪れた。仮魔体は弱かったが、適切な装備があれば戦闘で有利になると考えた。ミリムは当初、装備が不要だと主張したが、最終的には装備を求めた。工房に到着すると、クロベエに迎えられ、武器と防具を作ってもらうことになった。工房は弟子たちで賑わい、リムルの訪問に緊張する様子もあったが、リムルはそれを和らげるよう努めた。
また、魔国連邦で行われた人気投票でリムルが三大アイドルの一人に選ばれていたことも明らかになった。仮魔体に慣れるために装備の必要性を感じた彼らは、クロベエとガルムの工房で仮魔体専用の装備を作ってもらうことにした。装備が完成するまでの間、彼らは連携を高める訓練を行い、困難を乗り越えながら実力を向上させた。
最終的にはクロベエから装備が完成したとの連絡を受け、彼らは新たな装備で決戦の準備を整えた。その装備は特質級であり、それぞれが異なる役割と特化した職業を持つようになった。彼らはこの新しい装備を手にし、チーム「緑乱」との戦いに挑む準備を進めた。準備が整うと、彼らはチーム「緑乱」を打倒する意気込みで出陣した。
意外にも、彼らは簡単に勝利を収め、仮魔体の力がAランクに匹敵することが明らかになった。この力は装備の影響もあったが、本体の技量も反映されており、特に魔法の発動速度が極めて速いという利点があった。彼らは連携を駆使し、罠や特技を活用してチーム「緑乱」を全滅させた。この戦いで彼らはチームとしての強さを示し、さらにチーム「緑乱」の背後に大きな勢力があることを示唆する会話を耳にした。これにより、地下迷宮に訪れる者たちの素性に対して警戒を強める必要があると認識した。
彼らは勝利を喜びつつも、今後の警戒を怠らないことが重要であると感じていた。
マリアベルは「転生者」であり、かつて欧州を支配した記憶を持つ人物であった。前世では金融を操り、戦争を利用して自身の栄華を築いていたが、その生涯を終え、今世ではシルトロッゾ国の姫として生まれ変わっていた。この世界では魔物が蔓延し、国家間の争いも激化していたが、西方諸国評議会がそれらをまとめる役割を担っていた。評議会の実権を握る五大老の最長老、グランベル・ロッゾはロッゾ一族の首領であり、通常は彼に面会することは許されなかった。しかし、マリアベルの前世からの記憶と意思は、グランベルにとって無視できないほど重要なものであった。
貨幣の発展は文明に欠かせず、貨幣経済の移行により文明は大きく飛躍した。金貨や銀貨といった金属製通貨から、受領書や証書が代用される紙幣経済が始まり、銀行という仕組みが生まれた。銀行は預かった金を流用し、受領書を貸し付けて利子を得るビジネスモデルを確立したが、このモデルには回収不能な差額が生じ、一部の者が損をするという問題があった。
紙幣に貨幣が置き換わると、貨幣の発行枚数を計算に含めた取引が可能となり、マリアベルは市場をコントロールした。前世で金融を駆使していたマリアベルは、今世ではシルトロッゾの姫としてユニークスキル「強欲者」を持ち、他人の欲望を支配する力を得ていた。この世界でも支配者として君臨しようとしたマリアベルは、周囲を観察し、経済圏の統一通貨や言語の壁のなさなど、前世とは異なる環境を利用する準備を進めていた。
三歳のとき、マリアベルはロッゾ一族の首領グランベルと邂逅した。彼女は普段の演技を止め、直感に従い全てを正直に語ることを選んだ。彼女には人の欲望が見え、それを操る能力があり、他人を意のままに操ることができたが、グランベルはそのような力が通じない特別な存在であった。マリアベルは、彼にユニークスキル「強欲者」と前世の知識を明かし、グランベルの野望に協力することを誓った。
こうして、祖と孫の間には他には入り込めない特別な絆が生まれ、グランベルはマリアベルに多くを教え、彼女をロッゾ一族の未来の支配者として育て上げた。そして現在、十歳のマリアベルはグランベルに次ぐ地位を得て、リムルとの対立へと動き出していた。
Share this content:
コメントを残す