漫画感想(ネタバレ)「神統記(テオゴニア) 6巻(50話~60話)」

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どんな本?

本作は、異世界ダークファンタジーの第6巻である。​人族と亜人種が対立する世界で、主人公カイは前世の記憶を持つ少年として、戦乱の中を生き抜いている。 ​今巻では、冬支度で忙しいラグ村を離れ、谷で穏やかな時間を過ごすカイのもとに、灰猿人(マカク)族の残党が現れる。​彼らは土地を腐らせる悪神(ディアボ)退治をカイに懇願し、カイは谷の守護者として悪神の住処を目指すこととなる。

主要キャラクター

  • カイ:ラグ村の少年兵。前世の記憶を持ち、谷の神の加護を受けている。
  • ジョゼ:ラグ村領主の娘で、加護持ち。アルビノで白髪赤目の美少女。
  • 灰猿人(マカク)族の賢姫:​灰猿人族の王族で、悪神討伐に関わる重要人物。

物語の特徴

本作は、異世界転生と前世の記憶をテーマに、主人公カイの成長と戦いを描くダークファンタジーである。人類、亜人、神々が交錯する独特の世界観と、過酷な運命に立ち向かう少年の姿が読者の興味を引きつける。また、前世の知識を活かした戦術や魔法の描写が他の作品との差別化を図っている。

出版情報

  • 出版社:主婦と生活社
  • 発売日:2021年5月7日
  • ISBN:978-4-391-15595-2
  • メディア展開:2025年4月よりテレビアニメが放送予定

読んだ本のタイトル

神統記(テオゴニア) 6
漫画:青山俊介 氏
原作:谷舞司 氏

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あらすじ・内容

冬支度で慌ただしくなるラグ村を抜けだし、
谷で穏やかな時間を過ごすカイ。そんな彼のもとに、
ラグ村を襲撃した灰猿人(マカク)族の残党が現れる。

一触即発の空気の中、
灰猿人族はカイが谷の守護者だと知ると態度を急変。
灰猿人族の土地を腐らす悪神(ディアボ)退治を懇願する。

谷の守護者として世界を守るため、カイは悪神の住処を目指す! 
だが、灰猿人族の王族である賢姫の一派に行く手を阻まれて……!? 

「前世の記憶」に覚醒した少年が、
亜人族との戦乱の世を駆け抜ける異端ダークファンタジー第6弾!

神統記(テオゴニア) 6

感想

ラグ村を襲撃した灰猿人族の残党が登場し、彼らが土地を腐らせる悪神(ディアボ)によって追い詰められ、新たな土地を求めていたことが明かされた点が興味深いであった。
カイを小人族と勘違いした彼らが告白したことで、敵対するだけではなく協力を求める場面が展開される。こうした展開は、人間と異種族との関係性を描く点で興味を引かれた。

灰猿人族の内部でも権力争いが激しく、特に賢姫と大首領派の対立が印象的であった。
猿人らしく、勢力争いや派閥の分裂が物語を一層複雑にし、緊張感を与えた。
また、彼らが土地神の奪取や悪神の影響で崩壊寸前に追い込まれている描写は、絶望的な状況を強調しつつも、彼らが必死に抗おうとする姿に共感を覚えた。

カイが灰猿人族の郷へ向かい、彼らの困窮を目の当たりにする過程も印象深い。
ソマ湖の霧と悪臭に覆われた主邑の光景は、不気味さと悲壮感が漂っていた。
また、難民と化した灰猿人たちが必死に生き延びようとする様子は、その土地がどれほど過酷であるかを如実に物語っていた。

特に強く印象に残ったのは、賢姫ゼイエナの存在であった。
彼女は過去に残虐な行為を行いながらも、自らの選択を受け入れて前へ進もうとする姿が描かれた。
その信念と行動力は確かに魅力的であり、物語に奥行きを持たせる要素となっていた。
さらに、神狼を操り、戦力として利用する彼女の策略は緻密であり、敵でありながらも強い存在感を放っていた。

悪神との戦闘においても緊張感が絶えず、特に神狼とカイとの共闘は見どころであった。
カイが神狼を救出する場面や、神狼が悪神に挑む姿は迫力に満ちており。
特に神狼が神石の影響を受けずに悪神へ攻撃を加える描写は、彼の特異な存在感を際立たせていた。
また、再生能力を持つ悪神との戦いは、単なる力押しではなく、工夫と連携が必要であることを強調していた。

総じて、本作は灰猿人族とカイの交流、そして悪神討伐という壮大なスケールで描かれており、戦いと人間関係が巧妙に絡み合っている点が魅力的であった。
灰猿人族の内部抗争や、賢姫ゼイエナの策略などが物語に深みを加え、読み応えのある一冊であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

51話

ラグ村への帰還

村に戻ったカイは、領主家から破格のもてなしを受け、ご当主様との会話で自身の可能性と期待を感じ取った。

村人たちはこの予期せぬ勝利に歓喜し、領主モロク・ヴェジンと防衛に貢献したカイを称えた。

領主家の兄妹とカイへの評価

病み上がりのジョゼとオルハは、村人たちの賛辞の的となったカイを見て複雑な感情を抱いた。特にオルハは自尊心を傷つけられ、父の期待をカイに奪われたように感じた。一方でジョゼは、カイに笑みを向け、モロク家の一員として彼を認める姿勢を示した。

勝利の影響と周囲の反応

ラグ村の勝利は近隣の領地に広まり、モロク家は領民と領主としての名声を得た。祝いの品や支援が送られ、戦勝の噂は辺土全体に広がった。こうしてラグ村は復興の道を歩み始め、本格的な冬の到来を迎えた。血なまぐさい争いを覆い隠すように、純白の雪が大地を包み込んだ。

52話

隊商の来訪と村の賑わい

ラグ村に隊商が訪れ、村人たちは熱心に広場の除雪を行い、歓迎の準備を整えた。商人たちは雪にもかかわらず、亜人との戦いを勝ち抜いた村との関係を強化するために訪れた。村の広場では、馬車に並んだ商品が販売され、祭りのような活気に包まれていた。カイは粒銀貨を手に慎重に品定めを行い、エルサやリリサ、谷で待つ少女たちへの贈り物を購入した。

灰猿人への接触と小人族の変装

谷で待つ少女たちへの贈り物を贈っていたら、灰猿人族が谷に訪問し、カイは小人族に変装し。灰猿人と接触した。

本陣での対峙と族長との接触

灰猿人と接触したカイは、『加護持ち』であることを示し。灰猿人は彼の顕した《象形紋》を見て驚愕し、「鼎の大神」と呼び崇める態度を見せた。
その場の緊張は解け、灰猿人はカイにすがりつきながら感謝を述べたが、カイ自身はその意図を理解できず困惑した。

灰猿人族の反応と神への信仰

灰猿人は「守護者が遣わされた」と歓喜し、自族の存続と救済を求めるようにカイに懇願した。しかし、谷の神の「見極めよ」という言葉の真意は、依然としてカイの中で曖昧なままであった。

灰猿人族との交渉と「地腐れ」の発端

カイは灰猿人から、土地が腐り木々が枯れ始める「地腐れ」という現象が起きているとの説明を受けた。
この現象は北限の土地神が奪われた影響が灰猿人族の領域にまで及んだものであった。さらに族長は、「悪神」による侵略が起こり、彼らの主邑が奪われたと語った。この話にカイの内に宿る谷の神が激しく反応し、深い因縁を示唆した。

そしてカイは灰猿人に「お前らの村へ連れてけ」と言った。

53話

谷での準備と別れ

カイは谷に戻り、眷属たちとともに旅の準備を進めた。準備を終えたカイは眷属たちとの別れを惜しみながら谷を後にした。

霧深き道の進軍

カイとポレック率いる小人族兵士たちは、冬の森を進み『竜の背骨』と呼ばれる道を通った。この道は雪を避けるために使われる亜人の主要ルートであった。

灰猿人族の衰退と主邑の到着

二日間の道のりを経て、カイたちは灰猿人族の主邑を支えるソマ湖に到着した。そこは濃い霧と悪臭に覆われ、土地神の恩寵が薄れていることが明らかであった。湖岸には難民があふれ、飢えと疲弊で理性を失いかけた灰猿人たちが集まっていた。

大首領との対面

カイは案内役に従い、大首領が待つ巣に入った。病に伏す大首領は、土地を荒らす『悪神』の影響で力を失い、苦しんでいた。彼は灰猿人族を救うために『悪神』討伐を懇願し、カイはその願いを静かに引き受けた。灰猿人たちはその姿に心を打たれ、希望を託した。

54話

主邑への進軍と黒衣の軍勢

カイたちは主邑『大営巣』に向かう途中、黒衣の灰猿人軍勢に行く手を阻まれた。彼らは王族に仕える親衛隊であり、『悪神』討伐の主導権を巡り、大首領派と対立していた。カイはその場で指揮官を制し、力の差を示して進軍を許可させた。

賢姫の存在

進軍中、黒衣の軍勢の指揮者が「賢姫様」という名を叫び、『悪神』討伐を成し遂げると宣言した。その声を背に、カイたちは『悪神』との対峙に向けて進み続けた。

大営巣への進入

カイたちが進んだ『大営巣』の正面入口は、高い吹き抜けの廊下へと続いていた。廊下は焼け焦げた亡骸で埋め尽くされており、腐臭が充満していた。壁面には灰猿人たちの穴居が続き、内部では抗戦が続いている様子が見られた。トルードは『悪神』の起源とここ一月の出来事を語った。北限で発生した『神変』が原因で『悪神』が誕生し、主邑に連れ帰られた経緯が明らかにされた。

王城区画の発見

トルードの先導でカイたちは『王城区画』に到達した。その場所は強烈な腐臭とともに、かつて灰猿人たちが築いた居住地の跡が広がっていた。

55話

北の賢姫の登場

そのとき、王城区画に賢姫の声が響いた。彼女は防具に身を包み、『悪神』に向けて檻の中の獣を差し出した。賢姫の挑発に応じるように、『悪神』が姿を現し、凄まじい威圧感を放った。さらに『神狼』も現れ、緊張感が一気に高まった。カイは賢姫の目的を理解し、彼女の意図に注目した。

神狼の出現と圧倒的な存在感

白い巨体を持つ神狼は、見る者を圧倒するほどの威厳を放っていた。その毛並みは美しくしなやかであったが、よく見ると無数の傷を負い、左後ろ脚を引きずっていた。さらに、黒衣の集団によって追い立てられ、何らかの手段で従わされている様子が伺えた。彼らは神狼に対し武器を振るい、痛みに吠えた神狼は反撃しながらも、彼らの命令に従わざるを得ない状況にあった。

悪神の脅威と神狼の反応

王の座所に潜む『悪神』が、賢姫の声に反応して動き出した。賢姫は仔狼を盾にしながら後退し、黒衣たちは神狼を従わせるために攻撃を仕掛けた。痛みに耐えかねた神狼は、周囲の黒衣たちを蹴散らし、戦況を一変させた。賢姫は檻の仔狼にナイフを突きつけ、神狼をさらに刺激した。その瞬間、神狼は猛烈な勢いで駆け出し、岩の段差を跳び越えながら黒衣たちを蹴散らしていった。

トルードの苦悩と神狼の背景

灰猿人族のネネム氏族長トルードは、神狼の扱いに強い動揺を見せた。カイが問い詰めると、彼は神狼が「北の守り神」として古くから存在していたことを語った。北限平原は人が生存できない極寒の地であり、そこを超えて侵攻してくる異形の存在《這いよるもの》と戦うために神狼たちは生まれたという。神狼は長年にわたり土地を守ってきたが、賢姫の手により仔がさらわれ、その存在が戦力として利用されることになった。

賢姫の策略と神狼の利用

賢姫は神狼を戦いの先鋒として使役し、その圧倒的な戦力によって多くの戦果を挙げた。彼女は獲得した土地神を下賜することで勢力を築き、現在では『狼使いの姫』や『北の賢姫』と呼ばれるようになっていた。黒衣の軍勢の中には、賢姫の与えた土地神に忠誠を誓う者たちも多く含まれていた。

悪神との戦闘と神狼の苦戦

神狼は『悪神』に果敢に挑み、その首に喰らいついた。しかし、悪神の圧倒的な力により吹き飛ばされ、岩の上から転落した。神狼の動きを観察していた小人族の兵士たちは、彼が慎重に隙を探っていたことに気づいたが、結果的に悪神の一撃で倒されてしまった。

悪神の異質な力と黒衣たちの混乱

悪神の体からは異様な煙が立ち上り、その皮膚が炭火のように燃えていた。これは単なる肉体的な強さではなく、世界そのものから拒絶された「化外の神」としての性質によるものであった。悪神の異常な存在感に恐れを抱いた黒衣たちは、神狼を救おうとするも混乱に陥った。

56話

ゼイエナの過去と決意

ゼイエナは王族の血を引く者としての誇りを持っていたが、過去に北限で権力を築くために数々の残虐な行為を行ってきた。彼女は己の選択を受け入れるしかないと悟り、悪神討伐を成功させるために動き出した。

神狼の治療とカイの決断

神狼は戦闘によるダメージだけでなく、悪神の呪いによって動けなくなっていた。さらに、彼の口には沈静作用のある薬草が詰め込まれ、毒によって弱らされていた。カイはすぐにこの薬を取り除き、小人族の気付け薬を用いて神狼を覚醒させようと試みた。しかし、毒と呪いの影響は深刻で、神狼は依然として動くことができなかった。

神石の異変と覚醒の試み

カイは霊視を用いて神狼の内部を確認し、その胸部の霊気が著しく弱まっていることに気づいた。神狼が本来持つべき『神石』が正常に機能しておらず、悪神の影響で不活性化していると推測した。これを解決するため、カイは神石に強い霊力を送り込み、疑似的な電気ショックを与えることで神狼を覚醒させようとした。

神狼の復活と戦場への帰還

カイの試みが成功し、神狼は激しく咳き込みながら目を覚ました。立ち上がると、彼は周囲を見渡し、すぐに戦場へと向かった。その姿を見た黒衣たちは歓喜し、神狼の復活により戦況が一変した。

神狼の逆襲と悪神への猛攻

神狼は慎重に悪神の動きを観察しながら間合いを詰め、突如として急旋回し、敵の背後を取った。そして、賢姫の「焼き尽くせ」という命令と同時に、神狼は口から巨大な火柱を放ち、悪神に向けて熱線のような業火を叩きつけた。戦場は炎に包まれ、神狼の咆哮が洞窟内に響き渡った。

爆発音の正体と神狼の『ブレス』

大営巣の外で響いていた爆発音の原因は、神狼が吐いた強烈な炎であった。まるで『ドラゴン』のように口から放たれたその炎は、多くの灰猿人たちを焼き尽くした。カイはそれを『火魔法』の応用と理解したが、口内が熱に耐えられるのか疑問を抱いた。

悪神への攻撃と効果の欠如

猛火に包まれた悪神は、黒衣の者たちを食い荒らしていた動きを止め、神狼に向けて首をもたげた。しかし、その黒々とした巨体は炎の中でも動じず、まるで湿った炭のように燃え広がることがなかった。カイはこれを見て、通常の『魔法』では悪神に有効なダメージを与えられないことを確信した。

神狼の覚醒と新たな戦法

炎が通じないと悟った神狼は、素早く後退し、低い体勢を取った。その身体からは莫大な精気が放たれ、まるで『加護持ち』の力を宿したように見えた。次の瞬間、神狼は躊躇なく悪神に噛み付き、その鋭い牙で敵の喉元を深々とえぐった。さらに、驚異的な顎の力を用いて肉を引き裂き、触れるのも汚らわしいとばかりに吐き捨てた。

呪いを受けない神狼の謎

神狼が悪神に直接触れても呪いの影響を受けていないことに、カイは困惑した。これまで悪神に触れた者は即座に動けなくなっていたにも関わらず、神狼は躊躇なく攻撃を続けていた。トルードやポレックもこの異常な現象の理由を説明できず、ただ目の前の戦いを見守るしかなかった。

黒衣たちの反撃と悪神の呪いの証明

神狼の攻勢を見て勢いづいた黒衣たちは、斧を手にして悪神へと襲いかかった。しかし、その攻撃はわずかに肉を削る程度であり、悪神の圧倒的な耐久力の前では効果が薄かった。やがて悪神の触手による反撃が始まり、黒衣の戦士たちは呪いの影響を受け、次々に倒れていった。これにより、呪いが消えていないことが明らかとなった。

悪神の肉の再生と神狼の苦戦

神狼が噛み千切った悪神の肉片は、地面に落ちてもなお蠢き、本体へと戻ろうとしていた。これは悪神が驚異的な再生能力を持っていることを意味していた。カイはこの状況を見て、神狼がどれほど奮戦しても決定的な勝利を得るのは難しいと判断した。

カイの参戦と悪神への攻撃

カイは鉄製の手斧を手に取り、悪神へと攻撃を仕掛けた。驚異的な怪力を乗せた一撃であったが、悪神の体は異常に硬く、斧の刃が欠けてしまった。それでもカイは怯まず、悪神の触手を斬り払いつつ、次なる手を探った。

賢姫ゼイエナの視線と小人族への攻撃命令

戦いを見守っていた賢姫ゼイエナは、侵入者である小人族の存在に気づいた。王族としての誇りを傷つけられた彼女は、黒衣の戦士たちに命じて小人族を排除させようとした。しかし、カイが持つ異質な力を感じ取り、次第に不安を抱くようになった。

小人族と黒衣の戦士たちの対峙

黒衣の戦士セオドは、小人族たちを蹴散らそうとしたが、最後に残ったカイの攻撃を受け、逆に地面へと転落した。これを見た他の黒衣たちは、カイが『加護持ち』であることを悟り、恐怖に駆られて逃げ出した。ゼイエナはこの光景に舌打ちしながらも、カイの存在を無視できなくなった。

57話

悪神との戦いの続行とカイの戦術

カイは小人族の兵士たちと共に戦いを続け、悪神に接近する機会を狙っていた。彼は鉄の斧が通用しないことを理解し、急所への攻撃に集中することを決意した。神狼の助けを借りながら、悪神に致命傷を与える策を模索し始めた。

カイの力とゼイエナの困惑

カイが悪神と互角に戦い、黒衣の戦士たちを圧倒する姿を見て、ゼイエナは言い知れぬ違和感を覚えた。彼女はカイを単なる小人族ではないと認識し、彼の存在が戦況を大きく左右することを悟った。こうして、カイと悪神、そしてゼイエナの思惑が交錯する戦場は、新たな局面へと突入した。

賢姫の視線と黒衣たちの動き

賢姫の眼差しには明確な悪意はなかったが、直後に黒衣たちが小人族を排除しようと動いたことで、それが決して友好的なものではないことが明らかとなった。カイは本来ならば賢姫の勢力と連携を望んでいたが、そうもいかない以上、彼らの動きを観察し、それを利用することに考えを改めた。

木盾の有用性と悪神への反撃

カイは灰猿人族の持つ無骨な木盾を手に入れた。これは人族にとって貴重なコーク材を使用したもので、頑丈さと重量を兼ね備えていた。カイはこの木盾を用いて悪神に体当たりし、その巨体を押しのけることに成功した。さらに『不可視の剣』によって悪神の触手の一本を切断し、神狼との挟撃体制を確立したことで、戦況を優位に運ぶきっかけを掴んだ。

神狼の変化と悪神の呪いへの耐性

神狼は悪神の呪いを一度受けた直後に変化を遂げた。精気を溢れさせ、まるで『加護持ち』としての守りを強化するかのように身を奮い立たせた。この現象を見たカイは、神狼が悪神の呪いに適応し、何らかの耐性を得たのではないかと推測した。過去の戦闘経験から、加護持ちの神は外部の脅威に応じて耐性を付与することがあると知っていたためである。

谷の神との交信と悪神の弱点

カイは谷の神に呼びかけ、悪神の討伐方法を問いかけた。しかし神は憎悪に満ちた呪詛を吐くだけで、明確な答えを示さなかった。カイは辛抱強く会話を続け、ついに『悪神の神石を破壊せよ』という決定的な情報を引き出した。悪神もまた元は加護持ちであり、その神石が存在する限り、この世界に定着し続けるのだと理解した。

悪神の神石の探索

カイは神石のありかを探るため、悪神の巨体を押し込み、その内部構造を観察しようと試みた。しかし、悪神の強力な霊気と腐臭により、精査が困難を極めた。通常、神石は心臓付近にあることが多いため、その周辺を狙ったが、確証を得るには至らなかった。

悪神への攻撃と神狼の助勢

神狼は執拗に悪神の喉を狙い続け、ついにその首を半ば千切ることに成功した。カイはこれに助勢し、全霊力を注ぎ込んだ『不可視の剣』で残る首を断ち切った。悪神の巨体から噴き出した体液を避けつつ、間一髪のところで着地に成功した。

悪神の首の再生と戦況の変化

首を落としたことで、戦いは終わったかに見えた。しかし、悪神の肉体は依然として蠢き、切断された首が再び胴体へと回帰し始めた。これにより、神狼の勝算は潰えた。カイはこの状況を冷静に見極め、次なる戦術を模索し始めた。

悪神の呪いとカイの失神

カイは悪神の肉体を攻撃し続ける中で、その体液を浴びてしまった。その瞬間、異常な冷感が襲いかかり、呪いが体を侵し始めた。カイは体内の霊力を総動員し、『神石』を守るための防御を展開したが、それでも意識を保つことはできなかった。

58話

意識の混濁と過去の記憶

失神の中で、カイは過去の記憶を夢のように追体験した。彼は幼い頃に飢えに苦しみ、亜人の神石を食べることで生き延びるしかなかった。そして目の前に現れた『神石』の髄をむさぼるように食べたが、それが実は猛毒であることに気付き、絶望の中で目を覚ました。

59話

戦線復帰と悪神への反撃

意識を取り戻したカイは、仲間たちの声を聞き、迫りくる悪神の足裏を視認した。彼は反射的に仲間たちを押しのけ、自らも身を翻して回避した。そして木盾を構え、それを叩きつけるようにして体当たりした。頑丈な木盾は砕け散ったが、その衝撃で悪神の巨体を大きく撥ね上げることに成功した。

呪いからの生還

カイは『悪神』の死の呪いに囚われることなく生還した。なぜ生き延びたのかは明確ではなかったが、霊力による防御が奏功した可能性や、谷の神が呪いを打ち消した可能性が考えられた。いずれにせよ、彼が生きているという事実だけが確かなものであった。

呪いの仕組みの考察

カイは、自らの霊力が急激に失われた経験から、呪いの仕組みを推測した。『悪神』の呪いは単なる霊力の喪失ではなく、接触した部位に対し強制的に霊力を消費させる作用を持つものであった。霊力の総量に比例してその影響が決まるのならば、神石を守るための霊力の集中は無駄ではなかったと確信した。

神狼との共闘と戦術の転換

カイは、自身が呪いに対する耐性を得たことを確かめつつ、戦術を再考した。『悪神』の身体を切り裂いても完全には滅ぼせないと理解し、再統合を阻止することに着目した。神狼との連携により、『悪神』の肉塊を分離し、それを別々に処理する方法を試みた。

『骨』の加護の獲得

カイは谷の神に呼びかけ、自らの身体を『骨』の加護で覆うことを求めた。すると、体表が硬化し、呪いの影響を受けずに触手を掴めるようになった。さらに、神狼との戦闘で連携を強化し、協力して『悪神』の胴体を引き裂くことに成功した。

60話

『神石』の探索と戦略の決定

カイは『悪神』の神石のありかを探るため、肉塊の動きを観察した。再統合しようとする肉塊の習性を利用し、それを阻止することで、神石の位置を特定する手がかりを得た。そして、半身に分断された『悪神』を徹底的に押し込み、その行動を封じた。

最終決戦と『神石』の破壊

カイは神狼とともに『悪神』をさらに追い詰め、ついに神石を露出させることに成功した。その瞬間、彼は『不可視の剣』を用い、神石に穴を開けた。しかし、神石の内部には『目』があり、それがこちらを見つめていた。驚きながらも、カイはためらわずに神石を破壊した。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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