どんな本?
本作は、異世界を舞台にしたダークファンタジーである。主人公カイは、悪神(ディアボ)を討伐し、故郷のラグ村へと帰還する。季節は移り変わり、極寒の冬を迎える中、カイはヴェジン、オルハ、ジョゼと共に、バルター辺土伯が統治する州都へ向かう旅に出る。
主要キャラクター
- カイ:物語の主人公。前世の記憶を持ち、戦乱の世を生き抜く少年。
- ヴェジン:カイと行動を共にする仲間の一人。
- オルハ:カイの旅の同行者であり、信頼できる仲間。
- ジョゼ:カイと共に州都へ向かう仲間の一人。
物語の特徴
本作の魅力は、緻密に描かれた異世界の設定と、主人公カイの成長過程にある。前世の記憶を持つカイが、過酷な運命に立ち向かいながら仲間たちと絆を深めていく姿が描かれている。また、亜人種との戦闘や権力争いなど、人間関係の複雑さも物語に深みを与えている。図っている。
出版情報
- 出版社:主婦と生活社
- 発売日:2021年12月3日
- ISBN:978-4-391-15596-9
- メディア展開:2025年4月よりテレビアニメが放送予定
読んだ本のタイトル
神統記(テオゴニア) 7
漫画:青山俊介 氏
原作:谷舞司 氏
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あらすじ・内容
悪神(ディアボ)を討伐し、ラグ村へと帰還したカイ。
季節は移り、極寒の冬ーーカイはヴェジンやオルハ、
ジョゼに同行してバルター辺土伯の統治する州都へ向かう。
その目的は辺土の領主たちが一堂に会する“冬至の宴”と
ジョゼとバルター辺土伯の子息・アーシェナによる“婚約の儀”。
ジョゼの婚約の真意を知ったカイの胸にある感情が去来する。
一方、“冬至の宴”の裏では強大な力を巡る陰謀が進んでいて……。
「前世の記憶」に覚醒した少年が、亜人族との
戦乱の世を駆け抜ける異端ダークファンタジー第7弾!!”
感想
陰謀渦巻く“冬至の宴”の舞台
本作では、カイたちがラグ村を離れ、州都バルタヴィアへと旅立つところから物語が大きく展開していく。
これまで地方に限られていた舞台が一気に中央へと広がり、政治と宗教、貴族と領主、そして神々の関与までもが複雑に絡み合い始めた点が印象的である。
とくに、婚約の儀の裏に隠された「人身御供」の真相には衝撃を受けた。
贄としての“白姫”と“フローリス”の存在
表紙に描かれたジョゼとフローリスは、華やかな婚礼の象徴ではなく、神に捧げられる贄という悲惨な役割を担わされていた。
ジョゼの婚約は、ただの政略結婚ですらなく、古代の祭祀に根ざした生贄制度であり、それを画策していたのが辺境伯バルターと守護者ネヴィンという、辺土の支配層だったという展開は背筋が凍る展開であった。
陰謀に踊らされる領主たちと子供たち
この儀式を巡って、バルターの子息アーシェナやアドル、さらにモロク家を含む辺境領主たちが皆、知らぬ間に陰謀に巻き込まれていた。
彼らは誰一人として全容を知らず、ネヴィンと中央の僧会、さらには“外なる神々”の計画の中でただの駒に過ぎなかった。
この構図が、背後に常に不穏な緊張感を生み出していた。
広がる世界と深まる神話的構造
神の加護や霊力、そして土地神の墓所など、神話的な要素が政治と宗教に深く食い込み、物語の厚みがさらに増した。
カイの立ち位置も、ただの従者から「谷の守護者」としての意味合いを強めていく。
加護持ち同士の草試合や霊廟での潜入調査など、スリリングな場面が続く中で、物語の根幹を成す“神々”の在り方も次第に明らかになっていった。
緻密な陰謀劇と人間模様
本作の魅力は、単なる戦いや冒険にとどまらず、思惑の交錯による陰謀劇にある。
登場人物の誰もが自らの信念や欲望を抱えて動き、それが他者の思惑と交差することで物語がどんどん加速していく。
ジョゼの葛藤、ヴェジンの覚悟、カイの警戒心、そしてネヴィンの狡猾な導きすべてが、作品の奥深さを際立たせていた。
読後の印象と期待
「テオゴニア」第7巻は、世界観の広がりと陰謀の深まりが交差する濃密な一冊であった。
贄とされた花嫁たち、霊力を喰らう神々、そして“谷”の存在がどのように結びついていくのか。
次巻で描かれるであろう“儀式”の結末に期待が高まる。
予想を裏切り続けるこの作品から、まだまだ目が離せない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
61話
灰猿人の王子の出現
『悪神』の消滅とともに現れたのは、長い毛を濡らした灰猿人の若いオス、ツェンドルであった。『賢姫』が彼の名を叫び、周囲の黒衣たちが守るように進み出たが、神狼がその動きを封じた。神狼の怒りは激しく、『賢姫』の命令がなければ襲いかかる勢いであった。しかし、彼女が「我が神よ」と一喝すると、神狼は渋々退いた。この支配の異様さにカイは舌打ちし、祭祀の力を盗んだことで神狼を従えている事実に納得した。
神狼の拘束とツェンドルの正体
『賢姫』は神狼の口を無理やり開かせ、薬液を飲ませて鎮静させた。側近たちがツェンドルを保護しようとしたが、カイは彼を足で押さえつけ、その身をいたわる意思がないことを示した。側近らは「王の子」と口にし、『賢姫』と同じ王族であることが明かされた。彼が祭祀の力を奪い、暴虐を尽くしたのは明白であった。『賢姫』は冷淡に彼を見下ろし、「好きにしろ」と言い残し、奥へと去った。ツェンドルは暴れたが、カイが一撃で昏倒させた。
新王の即位と混乱
『賢姫』は王神を手に入れ、新たな王となった。カイが彼女を追おうとしたが、トルードはすぐに撃退された。灰猿人族の王城には、王神の墓所があると考えられたが、カイは王位争いに興味を持たなかった。ツェンドルも役に立たないと見なされ、誰からも顧みられることなく、その場を去った。
勝利の宣言と混乱
カイの手によって『悪神』は討たれたが、灰猿人族の間では混乱が続いていた。小人族のポレックが「討ち取ったのは守護者様ぞ!」と叫び、それに続くように歓声が上がった。灰猿人たちは勝利を実感し、祭り騒ぎとなった。カイは彼らに囲まれ、嫌がる間もなく胴上げされた。
新王との会見と交渉
灰猿人族の新王となった『賢姫』がカイと対面し、「何か望むものはないか」と尋ねた。カイは神狼の解放を求めたが、ゼイエナは「すでに解き放たれた」と告げた。彼女は北の地で奪った加護を捨て、王神の加護を手に入れたため、神狼の制御ができなくなったのであった。
それならとカイは神狼の仔狼を求めて終わる。
谷への帰還と騒動
カイたちは灰猿人族の領域を出発し、谷へ帰還した。
62話
旅立ちと試練
ラグ村から州都バルタヴィアへ向かう旅が始まった。領主ヴェジン、その長子オルハ、一の姫ジョゼ、そして従者であるカイの四人が旅に出た。カイは大量の荷物を背負わされ、雪に足を取られながらも黙々と進んだ。途中、領主たちは《加護持ち》の力を解放し、猛烈な速度で移動したが、カイは重荷に苦しみながら後を追った。
州都バルタヴィアへの到着
旅の終盤、周囲の村々が次第に大きくなり、州都が近いことが実感された。ようやく州都バルタヴィアに到着した一行は、他の領主たちに取り囲まれる形で注目を集めた。
従者としての証明
カイは小柄な彼が背負う大量の荷物を見た群衆は半信半疑だったが、その驚異的な怪力を目の当たりにした見物人たちは騒然となり、モロク家の従者であることを知ると、一層の注目を集めた。こうして、モロク家の一行はついに州都バルタヴィアの中心へと足を踏み入れたのだった。
宿舎へ到着直後、ジョゼ長旅の疲れも重なってすぐに眠りに落ち、カイはオルハを気にしながら部屋の隅で気配を消していた。
そこに、ガンド村の領主ガンド・ヨンナがヴェジンへ草試合を申し込んで来たが、ヴェジンは辺境伯への挨拶に行っており不在だった。
オルハが試合を受けようとしたが、呪いのせいで弱体化しておりガンド・ヨンナから相手にされず、それに逆上したオルハと乱闘になりそうになったのでカイがガンド・ヨンナを部屋から押し出したら。
カイの力を感じたガンド・ヨンナはカイに試合を申し込んで来た。
63話
草試合
冬至の宴を目前に控え、辺土全域から加護持ちたちが集結し、『本奉納』と呼ばれる格式ある奉納試合が準備されていた。辺土の冬は厳しく、到着が遅れる者もいたため、早く来た者たちは待機期間に『草試合』と呼ばれる非公式の手合わせを行い、見物人を沸かせていた。
草試合の広場に来たカイは、既に集まっていた多くの観衆に注目されてしまう。
共に来たヨンナがカイへの挑戦を宣言したことで、場の空気は一気に高まっていった。
加護持ちの大男ガンド・ヨンナが隈取を発現して襲いかかった。カイは自身の霊力を脚部に集中させて跳躍しようとしたが、周囲の視線が自分に集中していることに困惑した。
しかも観衆の中には「加護持ち」と思われる者が多数おり、その視線の一部に霊力を用いた監視の気配が混じっていた。特に裏手に控える高僧らしき存在が、霊力を通じてカイを注視していた。
霊光の識別と正体の露呈
霊力視で周囲を確認したカイは、自身の霊光がほかの加護持ちと比較して際立って強いことに気づいた。そのため、周囲から魔法使いと誤認されてしまう危険性も孕んでいた。神石の恩寵による霊力の潤沢さが、常に魔法使用可能な状態を維持しているという特殊な性質を与えていたのである。
だが、それは監視者の眼にも明らかであり、危険を察知したカイは霊光を抑えたが、ガンド・ヨンナの攻撃を受けてしまい吹き飛ばされしまったが、カイは衝撃を最小限に抑えるために霊力を防御に転用しており。
すぐに起き上がって草試合に復帰した。
64話
偽装と反撃の決意
坊さんの視線を避けつつ、カイはガンド・ヨンナの身体の影に身を潜める形で位置を変え、ガンド・ヨンナの神石の場所を狙って拳を当て彼を気絶させた。
それを見ていた加護持ちたちにとって、その強さは挑戦すべき存在として捉えられ、襲いかかって来た。
カイは騒動を避けるため一時撤退を決意する。しかし、捕まって乱闘に巻き込まれてしまった。
その中、オルハは草試合に参加しようとしていたが、カイの試合を見ておりカイの正体に不安を感じていた。
祝賀の贈り物と貴族たちの思惑
一方、宿舎では祝いの品を携えた来客たちが列を成していた。ヴェジンとオルハは侍女たちと共に客の応対に追われていた。白姫の婚約は決まっていたが、辺土伯家との結びつきを求める者たちは少なくなかった。
贈られる品々は、中央の貴族からは豪華な反物や工芸品が、辺土の領主からは実用的な毛織物や青い『碧礫』など、白姫の嗜好に合うものが目立った。
公子アドルの介入と縁談の破棄
廊下の奥から、一人の男が進み出た。赤い貴族法衣を纏い、堂々とした態度でヴェジンに向かう男は、辺土伯家の第一子アドルであった。彼の登場により、場は一瞬にして緊張した。
アドルはヴェジンに対し、この縁談を破棄し、モロク家が領地に帰ることはできないかと提案した。
65話
アドルは辺土伯家が中央との関係を断ち、自領の統治に重きを置こうとしていることを憂慮していた。この縁談は辺土回帰の象徴であり、中央の貴族たちの反発を招く恐れがあるため、阻止せねばならないと語った。
ヴェジンは慎重に言葉を選びながらも、縁談の辞退は不可能であると答えた。アドルはさらに、白姫を自らの妾として迎えるという案を提示したが、それが真意か冗談かは計り知れなかった。そして最後に、白姫が命を狙われていると告げ、場を去った。
家族会議と決意
アドルが去った後、モロク家の者たちは、アドルの言葉が事実かどうかを議論した。中央の貴族が異なる姫を婚約者として送り込む計画があり、モロク家と辺土伯家の信頼関係を揺るがそうとしているのではないかと考えられた。
ヴェジンは白姫に「堪忍しろ」と告げ、状況に対処するため動き出した。白姫の護衛をオルハに任せ、自身は辺土伯のもとへ向かうことを決めた。カイも警護の一環として部屋の入口に立ち、侍女たちは静かに身支度を整えていた。
カイとガンド・ヨンナの対峙
カイはオルハに命じられ、盥に湯を汲みに厨房へ向かった。準備が整うまでの間、パンをかじっていたが、そこで声をかけられた。声の主は、辺土西端のガンド村の若き領主、ガンド・ヨンナであった。
彼はカイを兄弟と呼びフレンドリーにカイに接して来た。
ヴェジンは伯爵にアドルの言葉が事実かどうかを確認した。
伯爵はアドルの独断だと言うが、彼の側には白い亜人が姿を消して控えていた。
66話
バアルリトリガの墓所にて進む調査と対立の芽
僧会の調査と禁忌の予兆
権僧都セルーガ率いる僧侶たちは、冬至の宴にかこつけて辺土伯家の霊廟を訪れ、神々の墓所を調査していた。本尊バアルリトリガを中心とした神像群は、北方の聖冠に連なる存在であり、初代王の信仰の跡が色濃く残る場であった。僧たちはその神文に異常を見つけ、何らかの禁忌が犯された痕跡を察知した。
セルーガは国王の名のもとに調査の正統性を得つつ、真の目的として禁忌の発見と糾弾を担っていた。《大僧院》が蓄積した知恵と力は、時の為政者にも無視できない存在となっており、禁忌への警戒は教団の中核理念とされていた。
夜半、ジョゼの部屋の前で護衛していたカイだったがジョゼが部屋から出て来てカイを伴って外へ出る。
そこで自身の人生が自由にならない事を嘆く。
それをカイが逃げろよと言うと、自身を連れて逃がしてくれと言う。
それはただの村人のカイには無理だった。
結局、領主の娘に自由は無いと言ってジョゼが去った後。
落ち込んでいたカイに白い亜人が声をかけて来た。
67話
ネヴィンの存在
白い亜人は自身をネヴィンと名乗り、カイを谷の守護者と呼んだ。
そして何しに此処に来たと聞いて来た。
カイは正直に領主さまのお供だと言うと、ネヴィンはカイの実力と地位のアンバランスさに爆笑。
そしてコレから起こる事を静観しろと言って去って行った。
花嫁たちの対峙
ジョゼは控室で婚礼の衣装に着替えた。彼女の衣装は村の女たちが丹精込めて仕立てた空色の晴れ着であったが、対するヴァルマ伯の娘フローリスは、華やかな中央貴族の装いをまとっていた。フローリスはジョゼの衣装を嘲るような態度を見せたが、ジョゼは毅然とした姿勢を保った。
68話
第六公子アーシェナの登場
そこへ、第六公子アーシェナが現れた。彼は無遠慮にジョゼとフローリスを値踏みし、特にジョゼに対して下卑た視線を送った。その様子を見たカイは、内心で強い不快感を抱いた。白姫を守るべきだと改めて決意し、独自に動くことを決めた。
酒宴と周囲の視線
辺土領の主だった者たちが集う豪奢な酒宴において、モロク家は主賓として迎えられていた。カイは従者としてその場に同席していたが、誰からも注目されることはなかった。会場では中央の貴族たちが鮮やかな礼装をまとい、互いに牽制し合うような空気が漂っていた。モロク家に向けられる視線は好意的なものと冷ややかなものに二分されており、特に中央寄りの領主たちは皮肉や不満の言葉を控えめに投げかけていた。
霊廟内での潜入行動
カイは人々が集う霊廟で儀式に参加し、霊力を抜かれそれが天井に向かった事を不思議に思い。
それを探るため天井を目指した。
鎖をよじ登り、霊廟の天井に仕掛けられた通気口へ到達した。
異様な天井の文字と霊力の謎
通気口へと這い上がったカイは、霊廟の天井一面にびっしりと刻まれた細かい文字を発見し。
その文字は土地神の墓碑に刻まれていたものと酷似しており、霊廟自体が魔術的装置として設計されていたことを示唆していた。
天井に溜まり続ける霊力の霧は、これらの文字によって導かれ、意図的に蓄積されていた。
通気口の先と不気味な気配
通気口の内側にも同様の文字が施されており、霊力を奥へと吸い寄せる構造となっていた。
69話
カイの登攀と天空の神々の出現
カイは加護持ちの力を用いて、州城の尖塔に至った。そこでは守護者ネヴィンと再会し、天空の驚異的な光景を目にする。領主たちの祈りから発せられた霊気が空へ昇り、そこに現れた巨大な存在がそれを「喰らって」いた。その姿は巨大な魚にも蛇にも見え、ネヴィンはそれを「外の神々」と説明した。
70話
献月の宴と忘れられた祭祀
ネヴィンは、冬至宴、別名”献月の宴”が本当に神に対する供物であると語り、人族が形式だけを残して本質を忘れてしまったと述べた。神々を味方に引き入れるための霊的な儀式としての祭祀が、本来の意味を失っていた。ネヴィンはその祭祀の「守り手」として霊力を高め、地神のために行動する意思を示した。
祭祀による外なる神の召喚
ネヴィンが行った「祭祀」は、この世界に存在しない外なる神々を呼び寄せる儀式であり、異界の力を引き込む手段であった。祈りに呼応して神々が現れ、州城を震わせるほどの力を落としたが、ネヴィン自身もその衝撃波に吹き飛ばされた。神々はやがて『バアルリトリガ』の神像とその墓石へと封じられた。
辺土伯の異常と神の力の顕現
辺土伯の身体には異様な青い光が宿り始め、彼は苦悶しながらも宴の継続を命じた。神の力に蝕まれながらも彼が儀式を止めようとしなかったことで、その命を賭していたことが明らかとなった。
人身御供の準備と白姫の登壇
公子アーシェナの指示により、晴れ着を着た白姫とフローリスが祭壇へと導かれた。人族に伝わる人身御供の儀式として「未通女」が選ばれたことが示唆され、ネヴィンはそれを当然のように受け入れていた。
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