どんな本?
『月が導く異世界道中』は、あずみ圭による異世界ファンタジー作品である。
物語の概要
高校生・深澄真は、月読命と女神によって異世界に召喚されますが、女神の身勝手な理由で世界の果てに追放されてしまう。
真は商人として活動しながら、異世界での生活を切り開いていく。
主要キャラクター
• 深澄 真(みすみ まこと):主人公。異世界に召喚された高校生で、商人として活動しつつ、強大な力を持つ。
• 巴(ともえ):上位竜「蜃」であり、真の第一の従者。真の記憶から時代劇を好む。
• 澪(みお):「災厄の黒蜘蛛」と呼ばれる魔獣で、真の第二の従者。食欲旺盛で、真に忠誠を誓う。
物語の特徴
本作は、異世界召喚という定番の設定ながら、主人公が女神に見放されるというユニークな展開が特徴。また、商人としての活動や、多種多様なキャラクターとの関係性が物語に深みを与えている。
出版情報
• 出版社:アルファポリス
• 発売日:2024年06月30日
• 関連メディア:本作はライトノベル、漫画、アニメなど多岐にわたるメディア展開が行われている。
読んだ本のタイトル
月が導く異世界道中 14
著者:木野コトラ 氏
原作:あずみ圭 氏
キャラクター原案:マツモトミツアキ 氏
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あらすじ
ロッツガルド、ツィーゲ、亜空で同時多発大騒動
主人公・深澄真(みすみ・まこと)が講師を務めるロッツガルド中央学園は、もうすぐ夏休み! 胸躍らせて休暇の予定を立てていた真は、生徒たちの熱意に押し切られ、否応なく夏期講習を行うことに。一方、レシピのない異世界でカレー作りに苦心していたキーマに光明が――!?
市場に現れた亜人とクズノハ商会の影響
市場には本来ヒューマンしか出入りできないはずであったが、青い腕章をつけた亜人の少女が何の違和感もなく歩いていた。その様子を目撃した者が尾行を試みたが、逆に捕えられ、クズノハ商会へと連行されることとなる。そこでは真が彼を迎え、さらに直立する猫の姿をした亜人・ボウルとの出会いがあった。ボウルはスラムに住む者であり、亜人が商人として成功することは奇跡だと考えていた。
スラムの呪病と薬の開発
ボウルはスラムの亜人たちが呪病に苦しんでいることを真に訴えた。獣系の亜人が特に感染しやすく、放置すれば死に至る病である。クズノハ商会の従業員であるアクアとエリスは治療薬を購入し、スラムへ届けた。だが、その帰路で二人は異変を感じ、自らも呪病に感染してしまった。彼女たちは薬師アルケーに治療を依頼し、より効果的な薬の開発を進めることとなる。アルケーは独自の手法で改良を重ね、従来の治療薬よりも短期間で完治し、予防効果を持つ新薬を完成させた。この出来事を機に、クズノハ商会はスラムとの関係を強め、やがて亜人たちの生活を大きく変えていく。
キーマのカレーと料理の革命
亜空では料理の研究が進められていた。そこで偶然にもキーマが作った料理が、真の知る「カレー」の味に近いものとなる。しかし、澪が興奮しすぎたせいで完成品は失われ、レシピも不明となった。唯一わかったのは、クミンに似た種子と唐辛子の存在である。巴の判断により、食材探しをアルケーとハルナが担当することになった。再現には半年以上の時間を要したが、ついに亜空にカレーの香りが漂うこととなる。この料理の確立により、キーマは「スパイスの魔術師」と称され、新たな食文化が誕生する契機となった。
学園都市での特訓とアオトカゲ君の第二段階
ジンたちは学園祭を控え、ライドウの指導のもと特訓を続けていた。彼らは四度の全滅を経験しながらも、ついにアオトカゲ君を撃破する。しかし、識の回復能力により体力も魔力も全快し、休む間もなく次の戦闘へと移ることとなる。ジンが構えた瞬間、アオトカゲ君はまるで別人のように素早く動き出した。強化された攻撃に対応できず、ジンたちは次々と吹き飛ばされ、氷の塊に閉じ込められることとなる。
一方、別の戦線ではミスラ、ダエナ、シフが戦っていた。彼らはミスティオリザードと互角の戦いを繰り広げていたが、ダエナの油断により形勢が一変した。ミスラは剣を落とし、ダエナも盾の一撃で吹き飛ばされる。シフの魔法はかわされ、最終的に彼女も戦闘不能となった。全員が敗北を喫し、ライドウから戦闘の真相が明かされる。アオトカゲ君たちは本来の実力を出しておらず、さらにツヴァイは「野郎」と呼ばれたことで怒り、急激に強化されていたのだ。
移住種族の選定とエマの対応
亜空には新たな住人を迎えるため、移住希望者の面談が行われた。翼人たちは独立性を重んじる種族であり、厳しい労働や上納を覚悟していたが、亜空ではそれが不要であることを知り驚く。結果として、彼らは移住を決定した。次に訪れたのはゴルゴンの二人であった。石化の能力を持つ彼女たちは常に目隠しをしていたが、真にはその力が通じなかった。さらに真は石化解除の手段も持っており、これによりゴルゴンたちは目隠しから解放される可能性を得た。彼女たちは歓喜し、移住を決断する。
最後にやってきたのはアルエレメラという妖精種であった。自由奔放な性格を持つ彼らは、面談の態度も軽率であったため、エマの怒りを買うこととなる。彼女は彼らに試練として、現在の住処を脅かしているリズーの群れを撃退するよう求める。アルエレメラたちは不満を抱えながらも、試練を乗り越えようと決意する。
響と澪の別れと勇者の使命
リミアからの帰還命令が届き、響たちはツィーゲで最後の夜を迎えることとなる。彼女たちは最初こそ辺境の冒険者に警戒されていたが、交流を通じて信頼を得ることに成功した。その夜、送別の宴が開かれ、響は澪に感謝を伝える。かつて澪と出会わなければ、自分たちは生き延びられなかったと語る。しかし、彼女の本当の目的は澪をリミアに勧誘することであった。
響は世界の未来を守るために協力を求めたが、澪はそれを即座に拒否する。彼女にとって最優先なのはライドウのみであり、世界の存続など関係ないと断言した。響は勇者としての使命を語ろうとしたが、澪の価値観を変えることはできないと悟り、勧誘を諦める。最後に料理の話を交えながら、再会を約束し、二人は別れることとなる。
感想
本巻では、スラムの呪病問題やクズノハ商会の影響力拡大が描かれた。
特に、エリスと店主のやり取りが印象的であり、互いに曲者である点が面白かった。
アルケーのマイペースさも際立ち、病気で苦しむ者たちがいる中、夜の店でバーテンダーをするという行動が意外であった。
キーマのカレー事件も興味深い内容であり、彼女の料理がどのように再現されたのかは注目に値する。
しかし、カレーの材料の一部が毒ではないかと疑う点もあり、安全性には疑問が残る。
亜空の住民は増加したものの、優秀な種族とそうでない種族の差が明確に描かれていたのが印象的であった。
ゴルゴンたちが目隠しの呪縛から解放された点も感動的であり、彼女たちの新たな生活に期待が膨らむ。
等身大ニャンコとの出会いやキーマ・キャロ姉妹のエピソードも、小説、アニメでは省かれていた内容が多く、漫画版ならではの補足ができた。
本巻は学園編というよりも、亜人の社会的な進展や新たな文化の誕生が主題となっていた。
次巻では学園編が本格的に進展することを期待したい。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
九十一夜 等身大ニャンコ
市場での異変と亜人の存在
市場を歩く少女は、褐色の肌を持ち、エルフに似た特徴を持つ亜人であった。市場はヒューマンのための場であり、亜人が普通に出入りできる場所ではないはずだった。それにもかかわらず、彼女は周囲のヒューマンから自然に挨拶を交わされ、差別的な扱いを受ける様子もなかった。
少女の肩には青色の腕章が付いていた。それは商会の証であり、亜人が市場に普通に出入りし、商会で働いていることを示していた。この状況は異例であり、ありえないことであった。市場に入り込む手段を模索していた者にとって、彼女の存在は大きな意味を持つと考えられた。
少女の尾行とクズノハ商会
市場で買い物を終えた少女が立ち去ると、彼は尾行を開始した。隠密行動には自信があり、建物の影や人混みを利用しながら慎重に追跡した。少女はやがて南にある店舗へと入った。その場所は、以前潰れた店の跡地であり、新たな商売が始まったばかりのようであった。
彼は店の看板を確認しようとしたが、そこに記された文字は一般的なものではなかった。その複雑な紋様のような文字を解読できず、戸惑っていると、背後から声をかけられた。少女は尾行に気づいており、さらにもう一人の女性が同行していた。
捕縛とクズノハ商会への連行
少女と共にいたのは、同じく褐色の肌を持つ長身の女性であった。二人は尾行者を見逃さず、すぐに捕えた。彼は不意を突かれ、反撃の余地すらなかった。二人のやり取りの中で、クズノハ商会の関係者であることが判明し、そのまま商会へと連れて行かれることになった。
その道中、少女は軽口を叩きつつも、主である「若」や「識」の名前を口にしながら、店舗での立場について語った。店の規則や雇用の安定についても言及し、自身の立場を強調していた。
クズノハ商会の主と亜人の奇跡
クズノハ商会の主である真は、捕えられた男を見て驚いた。これまで様々な亜人と出会ってきたが、目の前に現れたのは直立した猫の姿をした者であった。彼の名はボウル。スラムに住む亜人であり、猫に近い特徴を持つ種族であった。
ボウルは、真の姿を見て驚きながらも、すぐにある問いを投げかけた。ロッツガルドにおいて、どうやって亜人である彼が商人として成功したのか。これは亜人にとって奇跡に等しい出来事であり、その方法を知りたかったのである。
しかし、真はそれに対し、自身がヒューマンであると答えた。その事実を聞いたボウルは混乱し、予想とは異なる答えに戸惑いを見せた。
スラムの危機と呪病の問題
ボウルは、スラムに住む亜人たちが呪病に苦しんでいることを訴えた。その病は亜人、特に獣系の種族に感染しやすく、適切な治療薬がなければ死に至る可能性があった。
彼は市場で治療薬を探していたが、十分な量を確保できなかった。そのため、クズノハ商会に助けを求めることになった。真は、呪病が自身の商会を設立するきっかけの一つであったことから、すぐに支援を決断した。
森鬼の支援と感染の悲劇
商会の従業員であるアクアとエリスは、ボウルを助けるために市場で薬を購入し、スラムへと向かった。病に苦しむ亜人たちに薬を届けることができ、症状の改善が見られた。しかし、その帰路で二人は異変に気づいた。
自身が呪病に感染してしまったのだ。獣系亜人ではない彼女たちがなぜ感染したのかは不明であったが、すでに体調は悪化していた。
薬の改良と治療の開始
森鬼の二人は、薬の調合を依頼するためにアルケーのもとへ向かった。アルケーは薬術に精通しており、すぐに薬の改良を開始した。その結果、従来の治療薬よりも効果的で、短期間で完治し、さらに予防効果も持つ新たな薬が完成した。
これにより、スラムの住人たちは呪病の脅威から解放されることとなった。ボウルを含む亜人たちは、感謝の意を示すため、クズノハ商会を訪れた。
クズノハ商会とスラムの関係
この一件をきっかけに、クズノハ商会はスラムとの繋がりを深めることとなった。森鬼たちはスラムを支援し、その影響力を強めていった。やがて、スラムは正式な居住区として認められ、学園都市における亜人の立場改善の象徴となっていく。
クズノハ商会の名は、こうしてロッツガルドに広まり、亜人社会においても特別な存在となっていった。
九十二夜 ヘルズキッチン
亜空での騒動と奇跡の料理
亜空の一角で、一人の少女が絶望の叫びを上げた。それに対し、歓喜の声をあげたのは澪であった。彼女の手には真っ白な皿があり、周囲には様々な種族が集まっていた。その少女、キーマは、亜空に関わるようになったヒューマンであり、巴や澪と縁が深い。
澪はキーマが作った料理の味に驚き、強く問いただした。しかし、キーマ自身は何が起きたのか理解できず、困惑の末に気絶した。亜空の住人たちは騒ぎを聞きつけ、収拾を試みたが、澪の興奮は収まらなかった。そこへ巴が現れ、状況を確認することとなった。
クズノハ商会と三人の協力者
クズノハ商会には、ライム、キャロ、キーマという三人のヒューマンが協力していた。ライムは元冒険者であり、かつて真や巴と敵対した過去を持つ。しかし、敗北後に運命を変え、現在ではツィーゲの密偵として働いていた。
キャロとキーマは姉妹であり、孤児院出身であった。幼少期に裏社会に身を置いていたが、キャロは細工師の道を選び、クズノハ商会と関わるようになった。一方、キーマは料理の才能を見込まれ、巴に引き取られる形で商会に取り込まれた。彼女はライドウの記憶にある「カレーライス」の再現を命じられ、料理人としての道を歩むことになった。
カレーライスの再現と失敗
この日、亜空では様々な食材を試し、新たな料理の開発が進められていた。その過程で、偶然にも「カレー」の味が再現された。しかし、澪の乱入によって騒ぎが起こり、完成品はすべて消えてしまった。
巴は状況を整理し、再現の可能性を探ったが、レシピの記録は残されておらず、どの食材を使ったのかも明確ではなかった。唯一特定できたのは、クミンシードに似た種子と唐辛子の存在であった。
新たな食材探しとアルケーの役割
澪は食材探しに協力すると申し出たが、亜空の管理を考慮し、代わりにアルケーを派遣することが決まった。さらに、護衛役としてハルナが同行することになった。これにより、キーマは必要な食材を探しつつ、料理の研究を続けることとなった。
カレーライスの完成と新たな物語の始まり
澪はすぐにカレーを再現できると期待していたが、巴は「半年から一年はかかる」と釘を刺した。再現には多くの試行錯誤が必要であり、ライスの確保も課題として残っていた。
最終的に、約半年後に再びカレーの香りが亜空に広がった。そして、さらに一年をかけてツィーゲにおける「カレーライス」という料理が確立された。
キーマはこの功績により、「スパイスの魔術師」と称されるようになり、彼女を中心にした新たな物語が生まれていった。クズノハ商会は、この料理を通じてさらなる影響力を持つことになり、ツィーゲでの食文化にも大きな変化をもたらしたのであった。
その後、キャロの作った桂の漆器の催眠効果の暴走。
ライムが巴の眷属になった件の尋問をしていたら、ルトによる冒険者カードの騒音騒動が起こり、真はルトにクレームを言いに冒険者ギルドへと赴いた。
残された巴とライムは、緊張のせいかその場に崩れ真の恐ろしさを畏怖を込めて語る。
九十三夜 マッチポンプ・シスターズ
ルトとの対話
ルトは、真が魔力の出力を増やしたいと考えていることに驚きを見せた。一般的に魔術師はレベルを上げたり、装備を整えることで術の威力を高めるが、真にはどちらも当てはまらなかった。ルトは魔術の基礎理論を説明し、真が使用する術が常識を逸脱していることを指摘した。さらに、魔力の最大値や出力は生まれつきの才能であり、一生をかけても変化は微々たるものだと語った。しかし、真の魔力は増大しており、ルト自身もその理由を知りたがった。
亜空の気候変化
巴の推測に基づき、亜空の気候変化を調査していたため、最近は亜空で過ごす時間が増えていた。調査の結果、亜空の気候変動には、真が開けた最後の門が影響していることが判明した。これは、巴と澪にも使用可能な印を残した門であり、識も近いうちに使用できるようになる見込みであった。
門を適切に管理することで、亜空の気候は初夏のような穏やかなものに安定した。
その後、霧の門への検証を行い真が門の権限が高いと判る。
九十四夜 惜別、あるいは高純度サワー
響と澪の別れ
ツィーゲでの最後の夜
リミアからの帰還命令が届き、響たちはツィーゲで最後の夜を迎えた。当初、クズノハ商会に優遇されたことを快く思われなかった響たちであったが、トアたちとの交流や荒野での協力を通じて、次第に辺境の冒険者たちに受け入れられるようになった。
彼女たちのために送別の宴が催され、多くの冒険者が集まり賑やかに別れを惜しんだ。中にはリミアへ同行し、共に戦うと申し出る者もいた。ベルダとウーディは泥酔し、どこかへ姿を消し、チヤはトアの妹であるリノンと意気投合し、共に眠りについた。
澪への感謝と別れ
響は宴の喧騒を離れ、城壁の上で澪と向き合った。彼女は澪に感謝を伝え、コランでの出会いがなければ自分たちは生き延びることができなかったことを語った。澪は事務的に応じつつも、響の言葉を否定しなかった。
響はエルダードワーフのベレンに鍛えられた剣を手に入れたことも感謝した。当初、彼女は刀に惹かれたが、ベレンに適性がないと判断され、新たな武器を授けられた。その剣はバスタードソードよりも大きいが軽量であり、響の戦闘スタイルに適したものだった。しかし、彼女はまだその性能を十分に引き出せていないことを悔やんでいた。
澪への勧誘と拒絶
響は澪にリミアへの同行を依頼した。クズノハ商会の代表であるライドウに会えなかったが、彼に対して失礼がないように対応すると約束し、説得を試みた。しかし、澪は即座に拒否した。彼女にとって最優先すべき存在はライドウだけであり、他の者に仕える気はなかった。
響は世界の未来が関わる問題だとしても、澪の考えが変わらないかを問いかけた。しかし、澪は世界などどうでもよいと断言し、ライドウが関与しない限り、自分も動かないと主張した。響は勇者としての使命を明かすことも考えたが、澪の価値観を変えることは不可能だと悟り、その考えを捨てた。
それぞれの道へ
響は澪の揺るがぬ信念を前に、彼女を説得することは不可能だと理解した。そして、最後にリミアへの訪問を促し、また料理の話をすることを約束した。澪はその提案だけは興味を示し、響の言葉を覚えておくと返した。
響は深く一礼し、その場を去った。こうして、響と澪の奇妙な関係は、一つの区切りを迎えた。
九十五夜 敏腕秘書は叱られたい
亜空移住最終面談
亜空には、荒野から移住した種族が住み始めており、中心都市も建築中であった。しかし、広大な空間に対し住民は千人にも満たず、慢性的な人手不足が続いていた。移住者が少ない理由は、真が定めた基準を満たさない者が多かったことや、誘った種族自身が移住を望まなかったためである。
真は亜空の住人を増やすことに問題はないと判断し、勧誘を行ったが、移住に至る事例は稀であった。そのため、第一号移住種族であるハイランドオークのエマが、一定の基準を満たした者のみ最終面談へ進ませるよう管理していた。今回、真が時間を取れる機会が訪れ、エマは三件の移住希望を報告し、面談の場を設けた。
翼人との面談
翼人は背に鳥または蝙蝠の翼を持ち、三百人規模のコミュニティを形成していた。身分社会を持つ種族であり、今回の代表者は最上位に位置する白い蝙蝠の翼を持つ者であった。
真は彼らの組織体制や生活環境を確認し、亜空での生活について質問を重ねた。翼人たちは独立性を尊重され、厳しい労働や上納の義務もないことに驚いた。彼らは移住の対価として一定の負担を覚悟していたが、それを求められないことに拍子抜けした様子だった。
エマの指示により、彼らの戦闘能力を確認する機会が設けられることとなったが、真自身は不要だと考えていた。それでも、翼人の代表は用心深く、亜空の環境を確認するために案内を受けることにした。結果として、翼人三百名の移住が決定し、五日後に亜空へ移ることが決まった。
ゴルゴンとの面談
次に面談したのは、視線に石化の力を持つゴルゴンの二人であった。彼女たちは常に特殊な目隠しをして能力を制御していた。ゴルゴンは女性のみの種族であり、繁殖には異種族の男性が必要だった。
真は彼女たちに目隠しを外すよう求めた。ゴルゴンたちは恐れていたが、以前に巴にも効果がなかったため、真にも影響がないと判断した。結果として、真には石化の影響はなかったため、ゴルゴンたちは驚愕した。
さらに、真は石化の解除も可能であることを示し、目隠しの代わりとなる道具を用意できると提案した。これにより、ゴルゴンたちは長年の不便から解放される可能性に歓喜し、移住を決意した。結果として、ゴルゴン二百名弱の移住が決まり、十日後に亜空へ移ることが決定した。
アルエレメラとの面談
最後に面談したのは、小型の妖精種であるアルエレメラであった。彼らは活発で幼い性格を持ち、自由奔放な振る舞いをしていた。彼らは蜜を集めることや仲間同士で連絡を取り合う能力を持っており、探索にも協力できると主張した。
しかし、面談の途中でエマが激怒し、彼らの移住に強く反対した。理由は、彼らの態度があまりにも稚拙であり、面談に臨む姿勢として相応しくなかったためである。エマは彼らに試練として、現在の住処を脅かしているリズーの群れを撃退するよう求め、彼らを追い返した。
アルエレメラたちは怒り、エマに認めさせるためにリズーを追い返す決意を固めた。彼らの移住は保留となり、状況次第で再び交渉の場が設けられることとなった。
面談の結果と今後
今回の面談では、翼人三百名とゴルゴン二百名の移住が決まり、アルエレメラは保留となった。亜空の人口は増加し、新たな変化を迎えることとなった。エマは、真の態度について改めて注意しようと考えつつ、移住に向けた準備を進めることにした。
九十六夜 なんでここにクズノハが?
アオトカゲ君との戦闘訓練
勝利の代償
ジンたちは、学園祭を控えた夏休みの特訓の一環として、臨時講師ライドウの指導のもと戦闘訓練を行っていた。彼らは四度の全滅を経て、ついに宿敵アオトカゲ君を撃破した。二名が戦闘不能となる厳しい戦いだったが、勝利は紛れもない成果であった。しかし、識の回復によってすぐに全員の体力と魔力が完全回復し、彼らは次の戦闘へと駆り出されることになった。
アオトカゲ君の第二段階
ジンが警戒する間もなく、アオトカゲ君は圧倒的な速度で攻撃を開始した。先ほどまでの戦闘とは一線を画す強さで、ジンはその一撃に対応できず吹き飛ばされた。さらに、アベリアが魔法の兆候を察知したが、その攻撃は予想を超える範囲魔法だった。四人は氷の塊に閉じ込められ、なすすべなく戦闘不能となった。アオトカゲ君はそのまま動かず、戦闘の終結を理解していた。
別の戦線での敗北
一方、ミスラ、ダエナ、シフの三名もミスティオリザードと戦闘を繰り広げていた。彼らは相性の良さを活かし、ツヴァイを追い詰めていた。しかし、ダエナの油断によって敵の攻撃が急変し、ミスラが強烈な一撃を受けて剣を落とした。ダエナも盾による反撃で吹き飛ばされ、シフの魔法は回避されてしまった。彼女は抵抗を試みたが、最後には戦闘不能に追い込まれ、パーティは全滅した。
ライドウの説明と謝罪
戦闘後、ライドウはジンたち四名に撃破を称賛しつつ、ミスラたちには謝罪を述べた。彼は、アオトカゲ君たちは本来の実力を隠しており、実力の一割程度しか発揮していなかったことを明かした。また、ツヴァイが戦闘中に急激に強くなったのは、ダエナが「野郎」と呼んだことで怒ったからだと説明した。ツヴァイは女性であり、その言葉に強い反応を示したのだった。
再戦への意志
ミスラたちはこの説明を受け、驚きと悔しさを感じた。シフはライドウに再戦を直訴し、ミスツヴァイとの決着をつける機会を求めた。彼女の意気込みに触発され、ダエナとミスラも同意した。ライドウは予定を変更し、三人に再戦の機会を与えることを決めた。夕暮れの空の下、彼らは再び戦いへと挑むこととなった。
同シリーズ
漫画版 月が導く異世界道中 シリーズ





小説版 月が導く異世界道中 シリーズ





















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