どんな本?
本書は、経済評論家・森永卓郎氏が日本の大手メディアの不祥事や情報操作、隠蔽体質に鋭く切り込んだノンフィクション作品である。フジテレビをはじめとするメディアの闇を暴露し、言論の自由が危機に瀕している現状を明らかにする。視聴者を欺く報道の裏側や、報道されない「真実」の存在に迫る。
著者プロフィール
• 森永卓郎:経済評論家として活躍し、権力に屈せず庶民の目線で語り続けた。本書の著者であり、メディアの闇を暴く。
物語の特徴
本書は、著者自身が「これを書いたら、私自身が大手メディアから完全に干されてしまうことが、ほぼ確実だ」と述べるほど、タブーに切り込んだ内容である。既存メディアの情報を鵜呑みにせず、情報を見極める目を養う重要性を訴える。
出版情報
• 出版社:実業之日本社
• 発売日:2025年2月27日
• ISBN:978-4-408-65151-4
• 価格:1,430円(税込)
本書は、メディアリテラシーを高めたい読者や、報道の裏側に興味を持つすべての人にとって必読の一冊である。
読んだ本のタイトル
発言禁止 誰も書かなかったメディアの闇
著者:森永卓郎 氏
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あらすじ・内容
2025年最大の問題作がここに。
隠蔽、圧力、欺瞞──フジテレビの闇が暴露された今、大手メディア崩壊のカウントダウンが始まった!
「真実抹消システム」と化したテレビ局の正体とは!?
「これを書いたら、私自身が大手メディアから完全に干されてしまうことが、ほぼ確実だ」(「はじめに」より)
フジテレビの不祥事に象徴されるように、日本の大手メディアは今、崩壊の瀬戸際にある。視聴者を欺き、情報を操作し、不都合な真実を隠蔽する。テレビ局、新聞社、巨大なメディア企業が守ろうとしているのは、果たして「公正な報道」なのか? それとも、自らの既得権益と腐敗した権力構造なのか?
本書は、言論の自由が危機に瀕している現実を暴き出す衝撃の書である。フジテレビをはじめとする大手メディアの不祥事、圧力による発言封殺、タブーとされる領域への忖度……そのすべてを赤裸々に記録し、「何が話され、何が封じられているのか」を徹底的に検証する。
あなたが毎日見ているニュースは、本当に事実を伝えているのか?「報道しない自由」の名の下に、どれほどの真実が切り捨てられているのか? 本書を読めば、もはや既存メディアの情報を鵜呑みにすることはできなくなるだろう。
テレビの前で「これはおかしい」と違和感を抱いたことはないだろうか? SNSでの告発が相次ぐ中、なぜ大手メディアはだんまりを決め込むのか? 政治、芸能、スポーツ、経済――あらゆる分野で、報道されない「真実」が存在する。本書は、そうした沈黙の構造に真っ向から切り込む。
「発言禁止」──それはメディアによる情報統制の最前線である。本書を手に取ることは、あなた自身の思考を取り戻す第一歩となる。今こそ、情報を見極める目を養うべき時だ。
沈黙に屈するな。言葉を奪われるな。
この本を読めば、あなたはもう「騙される側」には戻れない。
メディア業界の変遷と著者の視点
本書は、著者がメディア業界の内部で経験した出来事を基に、その変遷と問題点を明らかにしている。
著者は長年テレビのコメンテーターとして活動してきたが、次第に発言の自由が奪われていった。
その背景には、メディアが権力に忖度し、自由な言論を制限している現状があった。
特に、以下のような影響が見られる:
- 財務省や政府の影響が色濃く反映されている。
- 批判的な立場を取る者が排除される傾向が強まっている。
テレビ出演の減少と発言の自由
著者は、かつて多くのテレビ番組に出演していたが、2020年代に入ると急速にその機会を失いって行った。
その要因として、著者は以下のように考えている:
- 自らの発言が「本当のことを言いすぎる」と見なされた可能性がある。
- テレビ業界には、政府や財務省の意向に逆らう発言をすると干されるという暗黙のルールが存在する。
財務省の影響とメディアの沈黙
著者が出版した『ザイム真理教』や『書いてはいけない』は、大手メディアでほとんど報じられ無かった。
その理由は、これらの書籍が財務省の政策を批判していたためと考えられた。
財務省は税務調査の権限を持ち、以下のようにメディアや学者、政治家に圧力をかけていた:
- 増税や社会保障削減を推し進める財務省の方針に対し、異論を唱える者が排除される仕組みが出来上がっている。
新世代コメンテーターと権力の関係
近年、テレビには政府寄りの論客が多く登場している。
財務省の方針に沿った発言をする者が重用される傾向が強まっていった。
いくつかの例を挙げられた:
- たかまつなな氏は、社会保障審議会の委員となり、高齢者の負担増を容認する立場を取った。
- 大空幸星氏は、自民党から立候補し当選を果たし、発言内容が変化し、政府批判を控えるようになった。
こうした動きは、若手論客が政府に取り込まれる流れの一例と言えるだろう。
YouTubeの規制と言論の自由
テレビでの発言が制限される中、著者はYouTubeを通じて発言の場を確保していた。
しかし、最近では「レプリコンワクチン」に関する発言を控えるよう求められることが増えていった。
このワクチンは、日本でのみ治験が許可されており、その安全性に疑問を持つ声もあるらしい。
しかし、YouTubeではこの話題に触れることが禁止されており、違反した場合には過去の動画も削除されるという厳しい対応が取られている。
このような規制が存在すること自体が、以下のような疑念を生む要因となっている:
- 何か不都合な真実が隠されているのではないか。
メディアの役割と今後の課題
著者は、現在のメディアが権力の監視機能を失い、単なる情報の伝達機関へと変貌していることを問題視している。
本来、ジャーナリズムは権力に対するチェック機能を果たすべき。
しかし、現在のメディアは政府や財務省の意向を忖度し、批判的な報道を控えている。
このような状況が続けば、日本の言論の自由は次第に失われていく可能性がある。
感想
本書は、亡くなった森永卓郎氏が自身の体験を基に、メディアの変遷を鋭く描き出した作品である。
これまでの著作が各論的な内容だったのに対し、本書は総論の一部として財務省とメディアの関係を包括的に論じている。
財務省と国税庁の分離が必要であるという主張には共感を覚え、先の総選挙の結果に改めて希望を見出した。
基礎控除の引き上げを掲げる国民民主党や、消費税ゼロを訴えるれいわ新選組の躍進は、財務省の影響力に対する国民の反発の表れといえる。
これまで「消費税ゼロは非現実的」「このままでは日本は破綻する」といった言説が流布されてきたが、今の時代、人々は自ら調べ、情報の真偽を判断する力を持ちつつある。
そのため、こうした言説を鵜呑みにする人は減り、むしろそうした発言をする人物こそが信用を失う時代に突入しているのではないかと感じた。
本書を読んで改めて思ったのは、メディアが持つべき本来の役割である。
報道機関は、単に政府の方針を伝えるだけでなく、国民の視点から社会の問題を掘り下げるべき存在である。
しかし、現在のメディアは、財務省や政府の影響を受け、批判精神を失っているように見える。
この状況が続く限り、報道の独立性はますます危うくなるであろう。
最後に、本書を通じて強く感じたのは、個々の発言が持つ重みである。
著者がテレビ業界から排除されたのは、単に人気が落ちたからではなく、忖度のない発言を続けた結果であった。
この事実こそが、現在のメディア環境を象徴している。
言論の自由を守るためには、個々の視聴者が批判的な視点を持ち、情報を選び取る姿勢を持つことが重要であると改めて認識した。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
はじめに
テレビ出演の減少とその理由
著者は、近年テレビ出演の機会が減少したが、それは自身の意思ではなく、出演させてもらえなくなったためであると認識していた。その背景には「忖度せずに本当のことを話すようになったから」という仮説を持っていた。ある情報番組の評論家から、番組プロデューサーが「本当のことを言うコメンテーターは一切出演させない」と述べたという証言を聞いたことも、この考えを裏付けていた。
メディア業界の「常識」
テレビ業界では、「権力に忖度しなければ干される」という認識が広がっていた。前明石市長の泉房穂氏も、その限界を自覚しながら発言していた。著者もまた、これまで発言の自由を保ちつつ、一定の制限のもとで活動してきたが、徐々にその制約を緩めるようになった。
発言の自由度を高めた第一段階
2005年、著者の長男が成人したことで、経済的責任を果たしたと考え、それまで勤めていたシンクタンクを辞職し、大学教員に軸足を移した。これにより、発言の自由度は高まったが、依然として「常識」の範囲内にとどまるよう意識していた。
第二段階:年金受給年齢の到達
2020年代に入り、著者は年金受給年齢に達した。厚生年金や基礎年金の受給資格を得たことで、仕事を失うことへの不安が軽減された。実際には、在職老齢年金制度の影響で厚生年金は全額支給停止となっていたが、必要があればいつでも受給できる状況にあった。そのため、テレビなどの仕事がなくなっても影響が少ないと判断し、発言の抑制をさらに解いた。
第三段階:余命宣告と完全な自由な発言
2023年末、著者は医師からステージ4のガンで余命4か月と診断された。この事実を受け、「どうせ死ぬなら、最後に本当のことを言おう」と決意し、完全に忖度のない発言を繰り返すようになった。この段階に至り、発言の制約は一切なくなった。
テレビ出演の減少とその要因
振り返ると、著者のテレビ出演が最も大きく減少したのは、2020年代に入ってからの第二段階だった。その時点で、テレビ局からの出演依頼が急減した。しかし、これが本当に「忖度しないから干された」のか、それとも単に人気が落ちたためなのか、確証を得ることは難しかった。
本書の目的と意義
本書では、著者の周囲で起きた出来事をもとに、テレビ業界、さらにはメディア全体の現状を明らかにすることを目的としている。新しい経済理論や分析枠組みを示すものではなく、これまで誰も書かなかったメディアの実態に切り込む内容となっている。著者自身、大手メディアから完全に干されることは確実だと考えていたが、それを受け入れる覚悟があった。余命が限られている今、残された時間で真実を伝えることこそが最優先だった。
第一章 テレビ出演で私に起きたこと
メディアの寵児としての時代
著者は2005年から15年間、メディアの寵児として活躍し、テレビやラジオのレギュラー番組を17本持っていた。ニュースステーションのコメンテーターに就任したことが、その転機となった。同番組は久米宏の軽快なトークと鋭い報道姿勢で高い人気を誇り、著者もその一員として活動した。
テレビ出演のきっかけと肩書きの誕生
著者が初めてテレビに出演したのは1996年、三和総合研究所に勤務していたときである。テレビ神奈川の番組でコメンテーターを務めることになったが、それは他のエコノミストが辞退した結果、推薦されたことによる偶然の産物であった。当初、経済に関する解説をすべて男女関係に置き換えて伝えるという独自の手法を取った。これが話題を呼び、後にバラエティ番組にも起用されることになった。その際、番組のディレクターが「経済アナリスト」という肩書きを考案し、それが定着した。
ニュースステーションへの抜擢とスキャンダル
1999年、テレビ神奈川での活動がきっかけで、ニュースステーションのディレクターから突然、食事に誘われた。ディレクターは、あるコメンテーターの不倫スキャンダルを受け、新たな後任を探していた。著者は、出演の条件として久米宏と渡辺真理のサイン入り名刺を要求し、それを受け取ると、本番は適当にこなした。しかし、テレビ朝日の幹部はその放送を観察し、「どんな質問にも動じない」と評価し、著者を新コメンテーターとして迎えることに決定した。
久米宏のプロ意識と影響
番組に参加したことで、著者は久米宏の努力家としての一面を知った。彼は出演者の著書や資料をすべて読み込み、どんな事態にも対応できるよう準備していた。生放送前には手が震えるほどの緊張感を持って臨んでいたが、それこそが彼の成長の秘訣であった。
政府批判と書籍の成功
ニュースステーションの論調は「反権力」であり、著者のスタンスと一致していた。特に小泉構造改革が始まると、政府批判を繰り返した。その延長として2003年、『年収300万円時代を生き抜く経済学』を出版し、大きな反響を呼んだ。弱肉強食の構造改革がサラリーマンの年収を300万円に引き下げると警鐘を鳴らしたこの書籍は、大ヒットとなった。この成功を受け、著者はテレビやラジオのレギュラー番組を次々と獲得した。
2022年に集中した番組降板
著者のレギュラー出演は長期にわたったが、2022年以降に次々と終了した。たとえば、TBSの『Nスタ』は12年間続いたが、2022年12月に降板した。読売テレビの『情報ライブミヤネ屋』も2022年3月に終了し、その際、プロデューサーから「番組リニューアルのため降板してほしい」と伝えられた。しかし、実際にはリニューアル後もコメンテーターはほとんど変わらず、降板したのは著者だけであった。
言論のタガを緩めた影響
2022年以降の降板は偶然ではなく、この時期に著者が発言の自由を拡大したことが関係していたと考えられる。特に大きな要因は、2022年に出版した『ザイム真理教』であった。この書籍は、財務省が主張する「日本の財政は危機的状況であり、増税しなければ財政破綻する」という見解を完全な虚偽であると断じたものである。しかし、この本は大手メディアから完全に黙殺された。
『ザイム真理教』の出版とメディアの沈黙
著者は、原稿を完成させた後、複数の大手出版社に出版を打診したが、すべて断られた。財務省に批判的な内容が問題視されたためと推測される。最終的に、三五館シンシャが出版を引き受け、2023年5月に発売された。本書は20万部を超えるヒットとなったが、それでも大手メディアでは一切報じられなかった。
『書いてはいけない』の成功とさらなる抑圧
2024年3月、著者は『書いてはいけない』を出版した。この書籍では、財務省の問題に加え、ジャニー喜多川の性加害問題、日本航空123便事件にも言及した。アマゾン総合ランキングでトップを獲得し、累計27万部を突破したが、それでも大手メディアは沈黙を続けた。新聞や雑誌での書評はほとんどなく、テレビ番組への出演依頼も一切なかった。
メディアの忖度と財務省の影響
著者の書籍が売れたにもかかわらず、メディアが一切取り上げなかった背景には、大手メディアが財務省に忖度しているという構造があると考えられる。書籍の内容に間違いがあれば批判が出るはずだが、そのような指摘は一度もなかった。それにもかかわらず報道が行われなかったのは、財務省を批判すること自体がタブー視されているからである。こうした状況から、著者は日本のメディアの独立性が失われている現実を強く認識した。
第二章 財務省の圧力
財務省批判と大手出版社の拒否
著者は、大ヒットを記録した書籍の出版を断った大手出版社の編集者に、その判断を後悔しているかと尋ねた。編集者は、本来は出版の内諾を得ていたものの、最終段階で社長が「財務省批判の本を出すと税務調査が入る」と判断し、出版を見送ったと明かした。財務省は徴税権を持つ国税庁を統括しており、その強大な権限を背景に企業やメディアに圧力をかけることが可能であった。
税務調査の裁量と恣意性
税務調査では、税務署や国税庁が納税者の申告が正しいかを確認する。申告納税制度が導入されているため、納税者の裁量がある一方で、税務当局は任意調査を通じて詳細な調査を行うことができた。調査は納税者の同意のもとで行われるとされるが、実際には拒否が難しく、国税庁の判断によって追徴課税が課されることがあった。特に、経費の認定は調査官の裁量に左右され、事業と私的利用の境界が曖昧な支出は、すべて否認される可能性があった。
著名人に対する税務調査の実例
財務省批判を行った人物に対する税務調査は過去にも頻発していた。たとえば、2012年には名古屋国税局がタレントの板東英二の事務所に調査を行い、7年間で約5000万円の所得隠しを指摘した。経費の認定基準が曖昧なことを利用し、国税庁が特定の人物に対し厳しい追及を行う事例は少なくなかった。また、財務省批判を続けた大学教授のもとに税務調査が入り、数千万円の追徴課税が発生したケースも報告されている。
メディアへの圧力と税務調査
財務省によるメディアへの圧力の代表的な例として、東京新聞が挙げられる。同紙は民主党政権下で消費増税に反対する論調を展開していたが、2011年から2012年にかけて税務調査を受け、約2億8600万円の申告漏れを指摘された。その後も2016年に再び調査が入り、取材源の秘匿を理由とした領収書の経費計上が否認されるなど、厳しい追及を受けた。同様の事例は他のメディアにも見られ、産経新聞の記者が財務官僚と議論した直後に同社に税務調査が入るなど、財務省への批判が報道に影響を与えていることが示唆された。
朝日新聞の変節と財務省の影響
朝日新聞は2000年代以降、たびたび税務調査を受け、所得隠しや申告漏れを指摘された。特に2009年には約3億9700万円の所得隠しが発覚し、追徴課税を受けた。その翌日、同紙は消費増税を支持する社説を発表し、従来の反対姿勢を翻した。これ以降、朝日新聞は財務省の方針に沿った論調を展開するようになり、同様の転向は他の大手新聞社にも見られた。
ニュースステーションの終了と財務省の関与
ニュースステーションは1985年から2004年まで続いた人気報道番組であった。制作陣は政府批判を前面に押し出し、利権や腐敗の追及を行っていた。しかし、2004年に番組は終了し、その理由は表向きには久米宏の降板意向とされたが、著者は財務省の圧力があったと考えている。番組終了後に開始された報道ステーションでは、政府批判のトーンが明らかに抑えられ、財政危機を煽る内容が増えた。
増税論とメディアの誘導
大手新聞は、財務省の政策を支持する論調を強め、増税や社会保障の削減を正当化する記事を掲載するようになった。たとえば、消費税の軽減税率が新聞に適用されたことも、財務省が大手メディアをコントロールする手段の一つとみなされている。特に、財務省に従順なメディアにはスクープの提供などの恩恵が与えられる一方、反発するメディアには税務調査という「ムチ」が使われていた。
政界への影響と国民の反応
2024年の解散総選挙では、減税を主張する国民民主党が支持を拡大し、与党の議席を大幅に減少させた。特に「103万円の壁」の引き上げが焦点となり、財務省は地方自治体やメディアを通じて反対の声を広めた。また、国民民主党の玉木代表に対する不倫スキャンダルの報道も、財務省による圧力の可能性が指摘された。しかし、世論はこれを過度な攻撃とみなし、玉木代表の支持率はむしろ上昇した。
今後の展望と言論の自由
財務省とメディアの関係は依然として密接であり、増税政策を批判する言論は抑えられている。しかし、近年、財務省の意向に従わない政治勢力やメディアへの支持が高まりつつある。国民生活の厳しさが増す中で、増税政策に対する疑問が広がり、財務省の影響力に対する批判が強まっている。言論の自由が脅かされる状況が続く中で、今後の報道や政治動向が注目される。
第三章 首相官邸の圧力
首相官邸によるメディア監視の実態
2020年10月22日、「しんぶん赤旗電子版」は、首相官邸がテレビニュースや情報番組の発言内容を詳細に監視し、記録していたことを報じた。内閣広報室は番組の放送時間、ニュースの見出し、出演者の発言を分刻みで記録し、政府に批判的な報道に対する対策を検討していた。記録対象は、平日は7番組、土日は4番組に及び、特に政権方針に関連するテーマについては詳細な書き起こしが行われていた。
安倍政権はメディア対策を徹底し、影響力のあるキャスターを降板させるなどの圧力を加えていた。その後、菅義偉政権の発足により、この動きがさらに強化されることが懸念された。
メディア監視の始まりと小泉政権時代の圧力
官邸によるメディア監視が本格化したのは、安倍政権からではなく、小泉政権時代にさかのぼる。著者は、小泉政権発足直後から構造改革に批判的な立場を取り、その影響で内閣情報調査室から頻繁に問い合わせを受けるようになった。当初は週に1回程度だったが、次第にエスカレートし、一日中電話が鳴り続ける状況に陥った。
電話の内容は、論文の根拠となるデータの再送要求など、明らかに業務を妨害する意図があった。その結果、著者は内閣府職員との面会を余儀なくされ、会議室では自身の発言や執筆記事がすべて記録された分厚いファイルが提示された。特に、ニュース番組での発言は詳細に文字起こしされていたが、バラエティ番組やラジオ番組は監視対象外とされていた。
監視対象の特徴と言論の自由の現状
政府の監視は、報道番組を中心に行われていたが、ラジオ番組やバラエティ番組には及んでいなかった。著者が出演していた「報道ステーション」「ミヤネ屋」「羽鳥慎一モーニングショー」などの番組では発言が記録されていたが、「スッキリ」を除いたバラエティ番組では監視されていなかった。
著者は、「ザイム真理教」を出版して以降、監視対象のニュース番組からは完全に排除されたが、バラエティ番組の「がっちりマンデー!」には引き続き出演していた。また、現在6本のラジオ番組のレギュラーを持つが、これらはすべて存続している。
この状況から、現在の放送メディアの中で言論の自由が比較的守られているのは、ラジオのみであると結論付けている。著者の言論活動がラジオに移行したのは、政府の監視がテレビに集中していることと無関係ではなかった。
第四章 小市民化した大手メディア社員
新聞社の変化とジャーナリズムの衰退
かつて新聞社は、権力を監視し、不正を暴く役割を果たしていた。記者たちは昼夜を問わず働き、社内には緊張感が満ちていた。しかし、近年の新聞社は大きく変わり、土休日には正面玄関が閉じられ、社員の数も減少した。かつての活気や熱意は失われ、企業のオフィスのような雰囲気になっていた。この変化はテレビ局にも見られ、報道機関としての使命よりも、経済的な安定を優先する風潮が広がっていた。
ジャーナリストの「小市民化」とメディアの高収入
新聞記者やテレビ局員の待遇は、一般の労働者と比べて非常に恵まれていた。特にテレビ業界は広告収入が莫大であり、15秒のCM放映で100万円以上の収益を得ることも珍しくなかった。その結果、テレビ局員の給与は高騰し、バブル期には「フジテレビの内定=生涯年収8億円」とまで言われた。高収入を維持するため、記者やディレクターたちは権力やスポンサーに対する批判を避け、自己保身に走るようになった。この傾向は、テレビ業界全体に広がり、批判精神を持つジャーナリストは次第に排除されていった。
報道の形骸化と事なかれ主義
メディアは、問題の本質を追求するよりも、形式的な対応を優先するようになった。例えば、自殺に関する報道では、必ず相談窓口の連絡先を表示することで責任を果たしたかのように見せていた。また、差別問題などの繊細なテーマは避けられ、コメンテーターも無難な発言に終始する傾向が強まった。視聴者の関心を引くための報道よりも、スポンサーや政府に配慮した内容が優先されるようになり、その結果、番組は単調で退屈なものとなっていった。
ラジオとテレビの違いと言論の自由
テレビと異なり、ラジオは政府やスポンサーの影響を受けにくいメディアであった。その理由の一つとして、大手企業がラジオ広告を重視していない点が挙げられる。ラジオのスポンサーは、中小企業や生活密着型のビジネスが中心であり、そのため政治的な影響を受けにくかった。さらに、政府のメディア監視の対象にラジオが含まれていなかったため、相対的に自由な発言が可能であった。
NHKの言論統制と財務省の影響
NHKにおいても、言論統制が強化されていた。かつてNHKラジオに出演していた筆者は、ディレクターの交代を機に、発言内容の事前審査が厳格化されたことを経験した。特に、政権批判や財務省に関する発言は徹底的に削除され、最終的には番組から降板させられた。この事例からも、財務省や政府の圧力が言論の自由を制限する要因となっていることが明らかであった。
芸能界におけるコンプライアンスの厳格化
2005年以降、メディア業界では「コンプライアンス強化」が進み、芸能界でも厳しい規制が導入された。その象徴的な出来事が、2006年に発生した極楽とんぼ・山本圭壱氏の契約解除であった。吉本興業は、詳細な調査を行わず、速やかに彼を解雇した。その後、山本氏は不起訴となったが、復帰には10年を要した。このような厳格な処分は、その後も多くの芸能人に適用され、結果として芸能界全体が萎縮する要因となった。
吉本興業と政府の関係強化
吉本興業は、政府との関係を深めることで経営基盤を強化していった。政府系ファンド「クールジャパン機構」からの多額の投資を受け、政府の各種プロジェクトにも積極的に関与した。地方創生やインバウンド促進の事業を通じて政府と連携し、結果的に影響力を拡大していった。さらに、2022年には「BSよしもと」を開局し、ついに自社の放送メディアを獲得するに至った。
メディアの「風刺文化」の喪失
政府との結びつきが強まるにつれ、吉本興業の芸人たちは批判的な発言を控えるようになった。伝統的に芸能界では社会風刺が一つの表現手段とされてきたが、その文化が失われつつあった。例えば、ウーマンラッシュアワーの漫才は社会問題を鋭く風刺する内容であったが、こうしたスタイルの芸は次第にメディアから排除されていった。
堀江貴文氏の変化と政府の影響
堀江貴文氏は、かつて既存のメディアや政治に批判的な立場を取っていたが、近年は政府寄りの発言が目立つようになった。彼は消費税の逆進性を否定し、「金持ちの方が消費税を多く払っている」と主張するなど、財務省の政策を擁護する立場を取った。その背景には、政府からの支援が関係していると考えられる。実際、彼が創業に関与したインターステラテクノロジズは、文部科学省から100億円を超える補助金を受けることが決定された。このように、財務省や政府の意向に沿った発言をすることで、ビジネス上の利益を得ている可能性が示唆される。
メディアの変容と今後の課題
メディア業界は、政府や財務省の影響を受け、かつての批判精神を失いつつあった。テレビや新聞はスポンサーや権力への配慮から自由な報道を避け、形式的な内容に終始するようになった。一方で、ラジオは相対的に独立性を維持しており、言論の自由が守られている数少ないメディアとなっていた。しかし、今後もこの状況が続くかは不透明であり、メディアの独立性をいかに維持するかが課題として残されていた。
第五章 池上彰化とその先
池上彰の台頭と解説者としての役割
池上彰氏は、選挙や災害時にテレビの中心的な解説者として登場し、その明快な解説で視聴者の信頼を集めた。彼は従来のジャーナリストとは異なり、政権批判や論評を避け、事実を解説することに徹した。このスタイルは、テレビ局の意向に沿い、視聴者にとっても理解しやすい形式であった。その結果、池上氏はテレビ業界で不可欠な存在となり、「池上無双」と称されるまでになった。
池上彰の解説スタイルとメディアの迎合
池上氏の解説は、番組スタッフが綿密にリサーチし、彼の前に用意したカンペ(カンニングペーパー)に基づいて進められた。番組は、視聴者が「そうだったのか」と納得する意外な事実を提供するため、専門家の意見を集め、それを池上氏の言葉として伝える形を取った。しかし、こうした手法は「知的成果物の横取り」に近いものであり、オリジナルな見解ではなかった。それでも池上氏の巧みな話術により、視聴者は彼を知識人として崇拝するようになった。
異論を許さない番組制作の実態
池上氏の番組では、彼の解説を批判する意見は一切排除された。出演者には事前に質問が決められ、予定外の質問は却下された。池上氏が経済に関する知識を問われると、容易に論破される場面もあったが、テレビではそうした状況が作られないように配慮された。池上氏自身、「知らない」と発言することを許されず、どんなテーマに対しても博識を装う必要があった。
財務省とメディアの関係
池上氏が政権や財務省に批判的な発言をしないのは、テレビ局の存続のためであった。メディアが権力に迎合することで、高報酬を受けるテレビ局員の待遇が守られた。そのため、財務省や政権にとって不都合なテーマには踏み込まず、視聴者の関心をそらすような番組作りが行われた。こうした状況が、テレビを「最も信頼できる情報メディア」とする池上氏の発言にも表れていた。
新世代のコメンテーターと政府との結びつき
近年、テレビ業界には、政府の方針に自然と従う新世代の論客が台頭している。たかまつなな氏は、NHKディレクターを経てフリーの芸人となり、テレビやラジオで活躍していた。しかし、彼女は厚生労働省の社会保障審議会年金部会の委員として、高齢者の負担増に賛成する立場を取った。これは、政府の政策を支持する論客を育成するための戦略と考えられる。
社会保障改革と若手論客の影響
安部敏樹氏は、「朝まで生テレビ!」で社会保険料の引き下げを提案し、若者の負担軽減を主張した。しかし、その背景には高齢者の年金削減が含まれており、結果的に世代間対立を煽る内容となっていた。彼の考えは財務省の意向に沿ったものであり、政府の財政運営に都合の良い論理が広められている可能性があった。
若手論客の政界進出とその影響
大空幸星氏は、政府やメディアを批判する立場を取っていたが、2024年の総選挙で自民党から立候補し、当選を果たした。彼は「批判だけでは社会は変えられない」と述べ、政治の場での改革を目指した。しかし、与党の立場に立つことで発言の自由は制限され、選択的夫婦別姓などの問題に対しても明確な態度を示さなくなった。この変化は、公明党が自民党と連立を組む中で理念を変えていった経緯と類似していた。
財務省の戦略と高齢者政策の転換
財務省は、高齢者を「社会保障費を圧迫する存在」として位置づけ、社会保障の削減を正当化しようとしていた。若手論客たちは、その戦略に乗る形で「高齢者優遇の見直し」を提案し、高齢者の負担を増やす議論を進めた。しかし、実際には多くの高齢者が厳しい生活を送っており、財務省の政策は世代間対立を引き起こす要因となっていた。
成田悠輔氏の過激な発言とメディアの対応
成田悠輔氏は、「高齢者は老害化する前に集団自決すべき」と発言し、世界中から非難を浴びた。通常、差別的発言をするコメンテーターはメディアから排除されるが、成田氏は例外的に出演を続けていた。これは、メディアが財務省の意向に従い、高齢者への攻撃を許容しているためと考えられる。
メディアの堕落とその影響
メディアは、本来ならば権力を監視し、社会の問題を指摘する役割を果たすべきであった。しかし、最近のメディアは自らの利益を優先し、政府に迎合する番組作りを続けていた。その結果、テレビでは「お得な買い物情報」や「話題の飲食店紹介」といった内容が増え、視聴者の関心を引きつけるだけの番組が量産されていた。
ジャーナリズムの責任と未来への課題
メディアが完全に権力に屈してしまえば、社会の健全な発展は難しくなる。記者やジャーナリストは、単なる情報提供者ではなく、権力を批判し、国民の利益を守る役割を果たすべきであった。しかし、現代のメディアはその使命を放棄し、政府の方針に沿った報道を続けている。日本の経済が30年間成長せず、文化が衰退した背景には、こうしたメディアの責任も大きく関わっていた。
あとがき
YouTubeでの発言規制とメディアの対応
YouTubeの自由と規制の変化
著者は、『ザイム真理教』や『書いてはいけない』が大ヒットした一方で、テレビの報道・情報番組から排除されていた。しかし、YouTubeでは自由に発言できる場があり、さまざまなチャンネルに出演していた。そこでは、従来のメディアでタブーとされるような話題についても、規制なく語ることができた。しかし、最近になって「レプリコンワクチン」についての発言を控えるよう求められるケースが増えた。
レプリコンワクチンをめぐる懸念
レプリコンワクチンとは、Meiji Seikaファルマが製造・販売する次世代型のコロナウイルス向けワクチンで、2024年10月1日から接種が開始された。このワクチンは、接種後にmRNAが自己増殖することで効果の持続時間が長いとされる一方で、長期間の健康への影響が懸念されている。特に、日本だけがこのワクチンの治験を許可している点が問題視されており、2024年9月28日には東京で3万人規模の抗議デモが行われた。
YouTubeの強硬な対応
著者自身は、専門知識のない分野について論評しない方針を持っており、レプリコンワクチンに関してもこれまで一切コメントを控えていた。しかし、YouTubeがこのワクチンについて触れることを禁止し、違反した場合には過去の動画も含めて削除するという厳しい対応を取っていることに疑問を抱いた。ザイム真理教や日航機123便の撃墜事件についてすら規制がなかったYouTubeが、レプリコンワクチンに関しては厳格な姿勢を示していることは、何か公にできない「不都合な真実」が存在する可能性を示唆していると考えた。
メディアの責任とジャーナリズムの役割
YouTubeの規制が強化される今こそ、既存メディアの役割が重要であると著者は主張する。徹底した調査報道によって、レプリコンワクチンの実態を明らかにすることが必要であると考えていた。しかし、現在のメディアはこの問題をほとんど取り上げず、結果として日本が情報統制下に置かれる可能性があると警鐘を鳴らした。中国やロシア、北朝鮮のような統制国家へと変貌する危機感を抱き、メディアがジャーナリズムの精神を取り戻すことを切に願っていた。
その他の同著者の著書
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