どんな本?
本作は、異世界を舞台としたファンタジー作品である。主人公リーシャは、皇立学園に通う引っ込み思案な少女であり、オデッセイ家の次期当主である。ある日、実家の領地を巡る策略により悪役令嬢として仕立て上げられ、小屋に閉じ込められ火を放たれる。死を覚悟した彼女の頭に響いたのは、見知らぬ男の声――織田信長を名乗る者であった。織田信長の魂がリーシャに憑依し、彼女の人生は大きく変わっていく。信長の大胆な行動により、リーシャは実家の領地を守り、学園生活においても新たな出会いと試練に直面する。
主要キャラクター
• リーシャ:皇立学園に通う引っ込み思案な少女で、オデッセイ家の次期当主。策略により悪役令嬢として仕立て上げられるが、織田信長の魂が憑依することで運命が大きく変わる。
• 織田信長:戦国時代の武将であり、リーシャに憑依する。大胆かつ勝手な行動で、リーシャの人生を翻弄する。
• 謎の美青年剣士(スバル):学園の卒業パーティーに参加する際、リーシャの前に現れる。彼との関係が物語の鍵を握る。
• 中性的美少年弓士(ランメィル):リーシャと関わる美少年で、物語に新たな展開をもたらす。
物語の特徴
本作は、戦国武将・織田信長が異世界の悪役令嬢に憑依するという異色の設定が特徴である。信長の大胆な行動と、リーシャの内気な性格とのギャップが物語にユーモアと緊張感をもたらす。また、学園生活や恋愛要素も織り交ぜられ、読者を飽きさせない展開が続く。
出版情報
• 著者:四葉夕卜
• イラスト:春野薫久
• 出版社:実業之日本社
• 発売日:2022年12月1日
• 判型:A6(文庫)
• ページ数:324ページ
• 価格:770円(税込)
• ISBN:978-4-408-55769-4
• 公式サイト:https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-55769-4/
読んだ本のタイトル
悪役令嬢は織田信長に憑依される
著者:四葉夕卜 氏
イラスト:春野薫久 氏
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あらすじ・内容
異世界で「大うつけ令嬢」が爆誕!!
悪役令嬢は織田信長に憑依される〜大うつけが勝手に天下統一しようとして困ってます〜
大人気漫画『パリピ孔明』の原作者が贈る、異色の異世界ファンタジー!!
皇立学園に通う極度の引っ込み思案少女リーシャ―はオデッセイ家の次期当主。
ある日、実家の領地をめぐる策略によって悪役令嬢として仕立て上げられ、罰として閉じ込められた小屋に火を放たれてしまう。
死を覚悟した彼女の頭に響くのは、見知らぬオッサンの声――織田信長を名乗る者だった。
リーシャは織田信長と協力し、実家の領地を無事に守り切れるのか!?
そして、学園の卒業パーティ―に参加する際のパートナーがいないリーシャの前に現れた謎の美青年剣士や、中性的美少年弓士との関係の行方は……!?
ときどき憑依する織田信長の勝手で大胆な行動によって、コミュ障令嬢の人生は大きく変わっていく…!!
感想
パリピ孔明の原作者ってエリーゴールデンの作者さんだったんだ。
全巻読んでますよ。
パリピ孔明は3巻くらいまで読めたけど、、
あの諸葛亮孔明も好きなんだけどね、、
何故か続きが読めない。
その作者さんの新作は悪役令嬢にされそうになってた娘に、本能寺の変で死んだ織田信長が取り憑いたらしい。
↓信長さんのイメージ
だけど最初は覚醒していなかったらしかったのに、悪役令嬢のオクタヴィアが王子を唆し馬小屋に閉じ込め。
オクタヴィアの部下が馬小屋に火を付けたら本能寺の変と場面が被って織田信長が覚醒。
しかも織田信長はリーシャの身体を動かしてしまうから、馬小屋の扉を蹴り破って炎上している馬小屋から脱出して、火を付けた大柄の男性の部下を組み手で投げ飛ばしてしまう。
その後、男は殴りかかって来るが全てを回避して組み手で投げ飛ばしてしまう。
そんな凶暴な織田信長に身体を乗っ取られたと思ったら、、
1時間半くらいしか身体が動かせないと判明。
その後、頭の中で織田信長が喚きながらもアドバイスを与える立場になって行く。
そして、リーシャのピンチになると身体を入れ替わって相手を撃破する。
それは口論でもやるけど、、
本当に人格が入れ替わってるから知らないで見てる人からしたら、、
本気でホラーだろうな。
いや、霊が取り憑いてるからホラーか?
そんな中でオクタヴィアの嫌がらせで、騎乗の授業で教師ですら乗りこなせない暴馬を宛てがわれるがリーシャが何とか踏ん張って乗って、限界か来たら織田信長と交代。
そしたら余計に従順になり武田信玄の黒雲と似てるので、クロと名付けてしまう。
さらに、乗りこなせなった講師をdisるのも忘れないのが織田信長クオリティーw
そんな事ばかりしてるから「うつけ令嬢」と呼ばれるようになる。
それ!大半が織田信長さんだから!!!ww
ついでに、織田信長も後々に部下になるランメィルを蘭丸と呼んだり。
リーシャの家名、オデッセイを織田と言ったりとなかなか愛嬌があって面白い。
そんな「うつけ令嬢」は戦乱が起こる直前の皇国で生き残るため、オクタヴィアの侵攻を食い止めるために色々と暗躍をする。
経済を良くするため、オクタヴィアの領地の名産品で独占している油を弱体化させるために菜種油の生産を密かに行い。
商人も懐柔済み。
鉄砲の生産、運用も密かに行い。
戦術を根底から変える仕込みもしていたりする。
恋愛でも、オクタヴィアは頭の弱いが見た目イケメンの第二皇子を籠絡しているが、、
リーシャは皇子とは知らずに廃嫡前提の第一皇子を草の友として仲良くなり。
最後には婚約までしてしまう。
ただ、、
告白は信長さんがしちゃうのがな、、、
あ、、
これ、BLか?
なんか違うよな?ww
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ 燃え盛る炎の中で
パーティーでの濡れ衣
皇立学院のパーティーにて、リーシャ・オデッセイは第二皇子ユウリ・エヴァー・ウィステリアから、オクタヴィア・トキア嬢に対する悪質ないたずらの加害者として糾弾された。普段から引っ込み思案な性格であるリーシャは、その場で言葉を返せず、無実を訴えることができなかった。さらに、オクタヴィアが悲しげな表情で現れ、腕に包帯を巻いていたことから、状況は完全にリーシャが悪者であるかのように進行した。教科書やドレスへの被害もリーシャの仕業と決めつけられ、彼女は学院の規定に従って馬小屋への謹慎を命じられた。
真実の姿と陰謀の気配
馬小屋に収容されたリーシャは、そこで冷静に状況を振り返る中、トキア家の近隣領地への拡大や、オデッセイ家の肥沃な土地への野心を思い至った。そこへ現れたオクタヴィアは包帯を外して見せ、怪我が演技であったことを明かした。さらに、彼女はリーシャを悪役令嬢として仕立て上げると宣言し、学院内での評判を操作することも辞さない様子を見せた。付き従う従士ビルとポロミもまた、敵意を隠さず、リーシャの領地を奪う野望を口にした。
悪意の炎と覚醒の兆し
ビルとポロミは、リーシャをさらに追い詰めるべく、馬小屋に放火するという凶行に出た。逃げ場を失い、命の危機にさらされたリーシャは、極限状態の中で強い怒りと恐怖に支配され、過去のような不思議な光景――本能寺の炎上を目撃した。そして、彼女の身体には異変が起き、まるで別人格が入り込んだかのように振る舞い始めた。
織田信長憑依と反撃
織田信長に憑依されたリーシャは、驚異的な身体能力と凄まじい闘志で馬小屋の扉を破壊し脱出した。襲いかかるビルを投げ飛ばし、彼の顔を地面にこすりつけるなど、これまでの彼女とはかけ離れた戦闘力を見せた。彼女の口からは、「相撲」や「かぼちゃ小僧」といった戦国武将さながらの台詞が発せられ、その異様な行動にビルとポロミは恐れをなし、ついには逃げ去った。
憑依者の正体と意識の交代
激闘の末、憑依者はリーシャの名を確認し、彼女の記憶の一部に触れた後、「つまらん」と言い残して地に倒れた。馬小屋は騎士たちにより消火されつつあったが、リーシャは燃えさかる光と共に意識を失っていった。彼女の中に宿った何者か――それが織田信長であることは、この時点ではまだ本人にも明確ではなかった。だが、この瞬間からリーシャの運命は、大きく動き始めたのであった。
第一章 天下統一
目覚めと異変の自覚
リーシャは自室のベッドで目を覚ました。前夜の火事騒動が夢であってほしいと願うも、脳内に響く謎の声がそれを否定した。声の主は「織田信長」を自称する存在であり、かつて本能寺で命を落とし、彼女の身体に憑依したと語った。信長は彼女の記憶を覗き見た上で、退屈な人生に不満をこぼし、自らが代わりに生きてやると宣言した。リーシャは信長の傍若無人な言動に困惑しつつも、彼の言葉に真実味を感じ始めていた。
ヒラリばあやとのやり取りと領主の自覚
教育係であるヒラリばあやは、謹慎と馬小屋火災の件について強い叱責を与えた。リーシャは言い訳を重ねながらも、自身が辺境伯領の次期当主であり、学院での評価が領地経営に影響を及ぼすという事実を再認識させられた。一方で、信長はリーシャに代わって領地を治めると豪語し、その姿勢はまるで軍勢を率いたかのごとき自信に満ちていた。
再び忍び寄る陰謀の影
謹慎処分の件を曖昧に説明しながら朝食をとった後、リーシャは学院の図書館を訪れる。ノブナガの存在が実在するのか確かめるためであった。信長はオクタヴィアがリーシャを悪役に仕立てた理由として、単なる嫉妬ではなく、「戦の大義名分」として彼女を悪に仕立てたのだと推察した。これにより、トキア家による辺境伯領への侵略計画の輪郭が浮かび上がった。
図書館での相談と憑依の可能性
図書館では、元領主で現司書のアガサ・サザンビーク伯爵が彼女を迎えた。アガサはリーシャの話を真剣に受け止め、千年前の「魂の同化」という魔術について記された古文書を提示した。それは、精神が別の肉体に宿るという現象の記録であり、現在ではオカルト扱いされていた。アガサは他人には軽々しく話さないよう忠告しつつも、今後も協力を申し出た。
信頼の芽と戦いの幕開け
アガサの言葉により、信長がただの悪霊ではない可能性が示され、リーシャは少しだけ安堵を覚えた。また、トキア家の野望がリーシャ一人だけに向けられたものではなく、近隣領のサザンビーク家にも及ぶ可能性があると確認された。リーシャは静かに司書室を後にし、今後の学院生活と領地の未来に対する不安を胸に抱えながら、新たな一歩を踏み出したのである。
広がる誤解と登校初日
リーシャは、自身が悪役令嬢として貶められる未来を回避すべく、次の授業で潔白を証明する方法を模索していた。しかし、登校途中ですれ違う学院生たちは、すでにパーティーでの噂を広めており、彼女の立場は悪化していた。教室でも視線を集める中、リーシャは自分に注目が集まることへの苦手意識と不安に苛まれていた。
教室での公開糾弾
授業前、オクタヴィア嬢一行が現れ、ビルやポロミがリーシャに対して馬小屋放火の罪を追及した。ポロミは燃えカスを証拠として提出し、ビルは威圧的な態度で非難した。ユウリ殿下も加勢し、リーシャに謝罪を強要するが、真犯人であるポロミが目撃者を装っていた。リーシャは言い返すことができず、ますます孤立を深めていった。
授業中の発言機会とノブナガの強制交代
歴史の講義で教授が発言を求める中、リーシャは勇気を振り絞って手を挙げようとするが、緊張のため挙手できずにいた。そこへノブナガが脳内から大声を発し、半ば強制的にリーシャの身体を支配し、教壇に立たせた。彼は堂々と講義に参加し、寡兵を称賛するオクタヴィアの発言を真っ向から否定し、「領主の準備不足」と断じたことで、教室の空気を一変させた。
一転攻勢と告発劇の始まり
ノブナガはオクタヴィアを「性悪女」と呼び、彼女がリーシャを陥れ、自らの正当性を偽装し領地侵略の大義名分を作ろうとしていると告発した。さらに、馬小屋事件の無実を訴え、アリバイとして植物園にいたことを明かした。この突飛な発言に教室は騒然となり、オクタヴィアやユウリ殿下の怒りを買い、リーシャの立場は一層危うくなった。
ノブナガの独走と学院脱出
騒動の最中、ノブナガは「天下統一」を声高に宣言し、教室を後にして学院の城下町へ向かう。リーシャの身体を完全に乗っ取ったノブナガは、そのまま厩舎から馬を無断で借用し、意気揚々と駆け出した。学院内では前代未聞の出来事に周囲が唖然とし、リーシャはこのままでは自らの将来が危ぶまれると痛感した。
自己の再発見と決意の萌芽
ノブナガの言動に振り回されながらも、リーシャは鏡に映る自分の姿から、普段の自分にはない強さと誇りを見出した。それは、理想としていた「堂々と生きる自分」の一面でもあった。ノブナガは現体制の脆弱性と戦乱の予兆を語り、次第にリーシャに「前を向く」ことの必要性を示していった。
平穏な日々への渇望と危機意識
学院生活の残り半年を平穏に過ごすことが難しくなった現状に、リーシャは危機感を募らせる。ノブナガとの共生が続く限り、波乱は避けられないと確信し、彼との交代方法を見つけることが最重要課題であると認識するに至った。
第二章 うつけ令嬢の噂
学院内での孤立と皇国制度の揺らぎ
信長の「天下統一」発言から一週間、リーシャは学院内で変人扱いされるようになっていた。学院制度自体も形骸化しており、皇国と貴族の権力バランスは崩壊の兆しを見せていた。貴族の子弟を人質のように学院へ通わせる制度は財政負担が大きく、存続に疑問が生じていた。リーシャはその中で、静かな生活を送ろうと草花の世話に打ち込み、植物園での日常に安らぎを見出していた。
ナタネから始まる新たな発見
リーシャが育てていたナタネの花から油が取れる可能性に信長が気付き、油の抽出という新たな実験に乗り出すよう促した。信長はエゴマ油を独占するトキア家に対抗する手段としてナタネ油の商業化を見据えており、リーシャも実験に魅力を感じ始めた。彼女はナタネを調理に使って満足し、信長の計画に半ば乗る形で協力を始めた。
風評被害と乗馬実技への不安
学院内ではリーシャの評判がますます悪化し、「うつけ令嬢」とまで呼ばれるようになっていた。実技授業での乗馬に対しても不安を抱く中、彼女は性悪な従士ビルとポロミによって荒馬をあてがわれ、試練に立たされる。加えてユウリ殿下とオクタヴィア嬢は公然と彼女を侮辱し、謝罪を要求してきた。
荒馬との対峙と覚醒
リーシャは仕組まれた状況の中で意を決して荒馬に挑み、恐怖を押し殺して手綱を握った。馬の激しい抵抗に苦しめられるも、信長の指示と自身の覚悟により、ついに乗りこなすことに成功した。振り落とされる寸前の根比べの末、馬はついにリーシャを認め、走り出した。その姿に学院の関係者たちは驚愕し、リーシャは一躍注目の的となった。
信頼と成長の実感
乗馬を通じてリーシャは自らの成長を実感し、これまで逃げていた現実と向き合う意志を芽生えさせた。信長との交代による経験の蓄積が彼女に自信を与え、彼女は今後、当主としての責務に対する姿勢を改めていく決意を固めた。
次期当主としての第一歩
乗馬という実技を乗り越えたリーシャは、信長と共に歩む未来に対し、一抹の不安と共に希望も見出し始めた。戦を避けつつも、自らの領地と人々を守る覚悟を持ち、少しずつ現実に立ち向かう姿勢を確立していった。
第三章 謎の黒き剣士
荒馬騎乗の成功と評価の変化
リーシャが皇都一の荒馬「クロちゃん」を乗りこなした一件は学院内で話題となり、「うつけ令嬢」と呼ばれつつも「荒馬乗り」としての評価を得るようになった。信長の交渉によりクロちゃんは正式にリーシャの所有となり、ヒラリばあやもそれを誇らしく思っていた。一方でリーシャはナタネの種子から油が抽出できるのではないかと考え、実験を進めていた。
ナタネ油の抽出と次期当主としての手腕
炒ったナタネの種から油分が確認され、リーシャはすでに領地に量産の指示を出していた。ヒラリばあやはこれを機転ある行動と称賛し、リーシャの変化に安堵の表情を見せた。また、信長の影響もあって短銃を所持するようになったリーシャに対して、ばあやは婿取りの重要性を説きつつ、淑女らしいふるまいを求めた。
舞踏授業への不安と母からの圧力
ダンス授業に備え、ヒラリばあやの勧めで明るめの衣装に着替えたリーシャは、社交的な場に対する強い苦手意識を抱いていた。さらに、実家の母から「皇都で相手を見つけなければ自ら上京する」との手紙が届き、プレッシャーが増した。ばあやは必死にリーシャを鼓舞し、授業で相手を見つけるよう促した。
社交ダンス授業とオクタヴィアの婚約発表
社交の場であるダンス授業が始まると、オクタヴィア嬢とユウリ殿下の華麗な登場が注目を集めた。そしてユウリ殿下は突然、オクタヴィアとの婚約を発表し、会場を驚かせた。この発言により、会場は告白の雰囲気に包まれ、他の子息たちも次々と令嬢へアプローチを始めた。一方、リーシャには誰も声をかけず、壁際で孤独に立ち尽くしていた。
ビルとポロミの嘲笑と無力感
ビルとポロミはリーシャに対してあからさまな嘲笑を向け、結婚相手が見つからないと断言した。リーシャは反論できず、ノブナガの叱咤を受けても言葉が出なかった。やがて授業が終了し、誰からも誘われなかったリーシャは孤独と焦燥を抱えて会場を後にした。
気晴らしの乗馬と運命的な出会い
落ち込むリーシャに代わって信長が表に出ると、乗馬を楽しむためクロちゃんを駆って学院裏の広大な林へと向かった。そこで、青い瞳と黒髪を持つ美形の剣士ウェバルと遭遇する。ウェバルは荒馬乗りの噂を聞きつけており、信長と意気投合した彼は即座に乗馬勝負を受け入れた。
乗馬勝負と謎多き剣士との交流
乗馬勝負ではノブナガが勝利し、二人は馬を降りて語らいを交わした。信長の豪胆な態度にもウェバルは動じず、自然体で応じた。馬術や戦への姿勢などを語り合う中で、二人の間には奇妙な友情のようなものが芽生えた。信長はウェバルの人物像に興味を抱き、彼の隠し事に気づきながらも深入りせず別れを告げた。
変化の兆しと未来への布石
クロちゃんとともに厩へ戻る道すがら、ノブナガはウェバルとの出会いが自分たちの運命を大きく左右するものになるだろうと直感した。リーシャにとってこの出会いが何をもたらすのか、まだ知る由もなかったが、確かに彼女の日常は、少しずつ、だが確実に変わり始めていたのである。
第四章 草の友
文通という形で育まれる交流
リーシャは、美形の剣士ウェバルと出会ってから文通を始めており、すでに六通のやり取りを重ねていた。ウェバルからの手紙が届くたびに、ヒラリばあやは恋文と誤解して歓喜していた。彼女は母親への報告も兼ねて、ウェバルの手紙を証拠として送付し、母の来訪を一時回避することに成功していた。リーシャ自身は、文通が対面よりも気楽であり、植物に関する共通の話題でのやり取りを楽しんでいた。
ナタネ油の研究と噂の悪化
ナタネ油の抽出実験は順調に進んでいたが、煙を伴う作業が周囲から奇異の目で見られ、リーシャは学院内でますます「うつけ令嬢」として知られるようになっていた。ヒラリばあやの調査により、これらの風評の多くがトキア家によって流布されていることが判明し、意図的な評判操作の存在が明らかとなった。
学院での孤立と卒業パーティーへの不安
学院では卒業パーティーの話題が活発になり、貴族の子息たちは伴侶選びに躍起となっていた。リーシャは話題に加わることもできず、一人教室の隅で過ごしていた。ユウリ殿下とオクタヴィア嬢の関係が明白となる中、リーシャは社会的な立場を脅かされていたが、ノブナガの励ましにもかかわらず、自分には釣り合わないとウェバルとの関係を諦めかけていた。
草むしりと心の癒し
学院の講義が終わると、リーシャは自身が管理する植物園で作業に没頭した。土に触れ、植物を育てることが彼女にとって心の支えとなっていた。ノブナガは次期当主としての自覚を促し続けたが、リーシャは日々の農作業に小さな喜びを感じていた。
再会と仮面の対話
作業中、突然ウェバルが現れた。彼はヒラリばあやに聞いてリーシャのもとを訪れたという。リーシャは緊張しながらも、少しずつ言葉を交わし、二人は一緒に草むしりを始めた。ウェバルは、リーシャが人前でとる振る舞いについて「仮面を使い分けているのではないか」と語り、自身も同じように仮面をかぶって生きていると明かした。
誤解された志と称賛
ウェバルは、リーシャが掲げた「天下統一」の言葉に民を思う高潔な意志を読み取り、深く感動していた。さらに、馬術や農業知識においても自分より優れていると感じ、初めて敗北を味わったと語った。リーシャは誤解であることを説明しようとするも、緊張のあまりうまく言葉にできなかった。
共通の趣味と小さな自信
ウェバルが植物への関心を示したことで、リーシャは自然と口を開き、肥料について専門的な話を始めた。彼女は、肥料に糞尿を使用している事実を躊躇なく伝え、ウェバルはそれに嫌悪を示さず、むしろ興味深く受け入れた。このやり取りにより、リーシャは初めて自分の知識が誰かの役に立つかもしれないという手応えを得た。
束の間の別れと余韻
ウェバルは再び文通を希望し、礼儀正しく別れを告げて去っていった。彼が手伝った畑には整然とした跡が残り、リーシャはその光景を眺めながら、彼との出会いが今後の自身の在り方に何らかの影響を及ぼすのではないかと、心の奥底で感じていた。
第五章 ウェバルの秘密
スバルの正体とリーシャへの関心
学院の植物園を後にしたウェバル――本名スバル・エヴァー・ウィステリア――は、鮮やかな草花に彩られたリーシャの手入れした区画を見て、彼女への関心を深めていた。執事モーゼスと合流し、彼は「とらえどころのない女性」とリーシャを評した。過去に女性から数々の危険な目に遭ってきたスバルにとって、リーシャの率直で飾らない態度は衝撃的であり、彼女への興味が芽生えた初めての経験であった。
過去と正体の明かされざる事情
スバルは皇国の第一皇子であるが、後継争いを避けるため表向きにはその存在を隠していた。彼の母は神聖王国から来た正室であったが、早逝し、代わりに側室であったキャサリンが正室となった。キャサリンは実子ユウリを皇帝にするためにスバルを疎ましく思い、数々の嫌がらせを重ねた。そのため、スバルは留学という名目で国外へ追放される形となった。
学院での偶然の再会と緊張
学院の敷地内で、スバルは偶然ユウリとオクタヴィアに出会った。ユウリはスバルの存在に驚愕し、動揺を隠せず、継承権の問題が再燃することを警戒した。スバルはあくまで学院を卒業するという母の遺志を果たすために戻ってきたと語り、卒業後は皇国を離れると断言した。ユウリは兄を警戒し、「皇国に兄の居場所はない」と断じて立ち去った。
母との思い出と進むべき道への逡巡
モーゼスはスバルに対して、亡き母ブリジットの思い出を語り、彼女がスバルの卒業パーティーを楽しみにしていたことを伝えた。また、リーシャをパートナーに誘ってはどうかと提案し、スバルはその可能性を考え始めた。ただし、彼女に迷惑をかけたくないという思いが強く、行動には慎重であった。
リーシャへの信頼とオクタヴィアへの疑念
モーゼスが、リーシャがオクタヴィアに嫌がらせをしているという噂について疑問を呈すると、スバルは即座に否定した。聡明なリーシャが無益な行動に出るとは考えられず、何者かの陰謀に巻き込まれていると推測した。スバルは真実を知るため、オクタヴィア・トキアについて調査することを決意した。
リーシャと向き合う未来への一歩
夕暮れの乗馬場で、スバルはリーシャの「天下統一」という言葉を思い返しながら、彼女の強さと魅力を再認識した。血筋や政治的立場に翻弄され続けた彼にとって、等身大で接してくれるリーシャの存在は、己の過去と未来を見つめ直す契機となりつつあった。
第六章 うつけ令嬢の商談
卒業パーティーを巡る学院の緊張感
学院では卒業パーティーのパートナー選びが解禁され、子女たちの間に緊張と焦燥が広がっていた。貴族社会では、パートナーがいないことが将来の結婚市場での評価に直結し、笑い者にされる危険性があるため、特に女性たちは真剣であった。リーシャは「うつけ令嬢」としての風評が広まり、誰からも誘われず孤立していた。
母からの圧力とばあやの懸念
ヒラリばあやは、卒業パーティーへの出席に関してウェバルを誘うべきだと再三促した。さらに、辺境にいるリーシャの母から催促の手紙が届き、卒業パーティーにパートナーがいなければ不名誉であるとの強い圧力が加わった。母は皇都には来られない状況にあったが、ばあやは娘を心配し、積極的に背中を押そうとしていた。
ノブナガとの交代と城下町への出発
リーシャは悩んだ末、ウェバルと会う予定の城下町への外出をノブナガに任せることにした。ノブナガは相変わらず自由奔放で、ばあやの忠告を無視して男装のような服に着替え、武器や薬草を携えて出かけた。ばあやは大げさな儀式で見送り、リーシャの恋路を応援する姿勢を見せた。
城下町での再会と商会訪問
ノブナガはクロちゃんに乗って城下町へ向かい、待ち合わせしていたウェバルと再会した。二人は新興の商会「ポルーガ商会」へと向かい、ノブナガは火縄銃を二百丁注文した。火縄銃はまだ戦場では主流ではなく、貴族からは粗野な武器と見なされていたが、ノブナガは将来的な軍事改革を視野に入れての大量購入を決行した。
オデッセイ領の関税戦略と取引の誘導
ノブナガはポルーガ商会に対し、三年間のオデッセイ領を経由した関税免除を提案し、トキア領の高関税体制からの脱却を促した。さらに、オデッセイ領では教会主導の商工会からの利権を排除し、自由経済の導入――いわゆる楽市楽座の実現を目指すと語った。ポルーガ商会はその提案に魅力を感じ、最終的に取引に応じる決断を下した。
ウェバルの誤解と信頼の深化
ノブナガの大胆な経済改革と火縄銃導入の意図に触れたウェバルは、リーシャが真に民を思い天下統一を志す存在であると誤解し、彼女への尊敬と信頼を深めた。リーシャ本人は草木に囲まれた平穏な暮らしを望んでいただけであったが、ノブナガの行動により、彼女の周囲からの評価は高まり続けていた。
領主の自覚と苦悩の兆し
商会を出た後、ノブナガは次の目的地である孤児院へ向かった。リーシャは、自分の貯金を使われたことや火縄銃購入という一大事をどう母に説明するか頭を抱えていた。ノブナガの型破りな行動が次第に「領主」としての責任と向き合わせていく中で、彼女の内心には覚悟と不安が交錯していた。
第七章 ランメィル・フォーレスト
孤児院の現状と皇都の荒廃
ノブナガとウェバルはポルーガ商会を後にし、皇都の孤児院を訪れた。そこでは子どもだけでなく大人までもが職を求めて身を寄せており、皇族の権威低下と地方の戦乱による混乱が浮き彫りとなっていた。ノブナガとウェバルは、民の困窮の原因の一端がトキア家にあることを確認し、その影響力の大きさを実感していた。
弓士ランメィルとの再会と勧誘
孤児院で再び出会った美形弓士ランメィルに対し、ノブナガは彼の射撃技術を評価し、オデッセイ領への仕官を持ちかけた。ランメィルは固辞しながらも、戦時には助力する意思を示した。彼は故郷をトキア家に奪われたフォーレスト一族の生き残りであり、今は孤児たちと暮らしながら再興を誓っていた。
ポロミの出現と二重の勧誘
突如現れたポロミは、ランメィルに対してトキア家への忠誠を条件に旧領の一部を返還すると提案した。彼女の態度は高圧的であり、ランメィルの少年たちの安全を保証すると口にするが、ノブナガはその提案を真っ向から否定し、ランメィルの忠義と信念を試す形でオデッセイ領の安全と報酬を提示した。
誇りを賭けた喧嘩の勃発
ポロミの挑発を受け、ノブナガは喧嘩勝負を申し出た。条件は、ポロミの従士12名とフォーレスト一族の少年兵6名との対戦で、大将戦も含む形式であった。ノブナガは少年たちに即席で「オデッセイ兵」としての使命を与え、金銭と信義を報酬として士気を高めた。さらに、戦意高揚のため「一度死んだと思え」という独自の精神論を説いた。
策略と士気の勝利
戦闘では、少年たちが弓矢による奇襲で敵の出鼻をくじき、木刀による接近戦でも優位を保った。ノブナガは唐辛子を使ってポロミの護衛兵を無力化し、最後は自らポロミと対決して投げ飛ばし、勝利を収めた。観戦していた群衆からは拍手と歓声が送られ、オデッセイ家の名声は確実に広がった。
予期せぬ襲撃と見事な護衛
戦後、ポロミの従士による不意打ちが発生したが、ウェバルが瞬時に対処して阻止し、ランメィルも建物上に隠れていた弓兵を狙撃して沈黙させた。彼らの実力と忠誠が改めて証明された場面であった。
誤解と忠誠の成立
ランメィルはリーシャが少年兵を「家族」と称して手当てをする姿に心を打たれ、彼女を利用主義者ではなく真の信義を重んじる人物と誤認した。彼はオデッセイ家への仕官を申し出て、少年兵たちもこれに続いた。リーシャは緊張と困惑の中でその誤解を解けず、結果的にランメィルとフォーレストの少年兵を配下とすることに成功した。
静かな承認と信頼の芽生え
リーシャは上手く言葉を返すことができず、治療や服の手入れといった行動をもって誠意を伝えた。ランメィルとウェバルは彼女の真摯な態度を認め、特にランメィルは深い信頼を寄せるに至った。ノブナガは眠りについたまま口を出さず、リーシャは一人でこの予想外の成果と向き合うこととなった。
第八章 忍び寄る戦火
ランメィルとの共同生活とナタネ油の進展
ランメィルが従士となってから一ヶ月が過ぎ、リーシャは彼とフォーレストの少年たちと学院での共同生活を続けていた。彼女はナタネの選別や搾油装置の改良に取り組み、実験の成果も上がりつつあった。ランメィルの協力とノブナガの知識によって、ナタネ油はエゴマ油に代わる新たな商品としての実用性を得つつあり、トキア家への経済的対抗手段として期待が高まっていた。
卒業パーティーのパートナー問題と候補者選びの葛藤
ヒラリばあやから卒業パーティーのパートナーを早く決めるよう再三迫られたリーシャは、ランメィルを候補に挙げられるも、家臣である彼に負担をかけたくないという理由で躊躇していた。ウェバルもまた、平民かもしれないという懸念から誘うことができず、思いあぐねた末に、学院司書のアガサに打診する決意を固めた。
アガサとの別れと戦乱の兆し
アガサのもとを訪れたリーシャは、卒業パーティーへの同伴を依頼するも、アガサはその夜に領地へ戻ることを理由に断った。サザンビーク家とトキア家の間で戦争の火種がくすぶっており、実際にゲーレ砦に兵が集まりつつあるという報告を受けての帰還であった。アガサは古文書を餞別として贈り、リーシャに別れを告げた。
喪失の悲しみと立ち直りへの一歩
その一週間後、アガサが戦死したという報が学院に届き、リーシャは深く悲しみに沈んだ。三日間食事が喉を通らなかったが、ヒラリばあやとランメィルの心配、そしてノブナガの叱咤によって少しずつ回復し、食事を摂り再び歩み始めた。
スバルの正体とオクタヴィアの策略
クロちゃんでの乗馬中、ノブナガは偶然スバルとオクタヴィアの密会を目撃した。そこで明らかになったのは、ウェバルの正体が皇国第一皇子スバル・エヴァー・ウィステリアであるという事実であった。オクタヴィアは、キャサリン王妃がスバルの国外追放を企てており、卒業パーティーに彼を参加させることで既成事実を作るよう提案していた。
スバルとの対話と真意の確認
ノブナガの後押しでリーシャはスバルと直接対話し、彼の正体を改めて確認した。スバルはリーシャが自分の身分を知ったうえで対等に接していたことに感銘を受け、彼女への信頼を深めた。リーシャもスバルに対する想いを自覚し、卒業パーティーのパートナーとして誘う決意を固めた。
卒業パーティーへの誘いと決意の共有
ついにリーシャはスバルを卒業パーティーに誘い、緊張しながらも言葉を伝えることに成功した。スバルは彼女の誠意と勇気を受け止め、オクタヴィアとの出席を断り、リーシャのパートナーとなることを快諾した。互いに信頼を深め合った二人は、パーティーとそれぞれの未来へ向けて、共に歩む決意を新たにした。
第九章 決闘
卒業パーティーの準備と家族との絆
卒業パーティー当日、リーシャは講義と卒業論文を終え、華やかな群青色のドレスに身を包んで準備を進めていた。ヒラリばあやは第一皇子スバルをパートナーに選んだことに感激し、かつての心配が喜びに変わったことを語った。リーシャとスバルの交流を知った執事モーゼスもまた涙ながらに語り、二人の老人は孫の話で意気投合していた。
従士ランメィルとの心の交流と支度
ランメィルはフォーレスト一族の文化に則り、リーシャのヘアメイクと化粧を担当した。彼は従士であり家族でもあるという立場から、彼女を呼び捨てで呼ぶよう促し、絆を深めた。慎重で心配性な一面を見せつつも、卒業パーティーという舞台に向けて彼女の美しさを引き出すべく全力を尽くした。
学院への出発と警戒態勢
ランメィルの護衛を伴い、リーシャは学院のダンスホールへと向かった。パートナーがスバルであることは公表されておらず、場には多くの視線が集まった。万が一に備え、ランメィルはホール外で待機することとなり、従士として命に代えても守る覚悟を口にした。
学院での視線と揶揄の応酬
ダンスホールに到着したリーシャは、周囲の注目と揶揄に晒された。ポロミの挑発やユウリ殿下の冷たい言葉にさらされるも、リーシャは動じなかった。スバルとの信頼関係により精神的に強くなった彼女は、静かにその場をやり過ごした。
スバルの登場と第一皇子の身分の開示
パーティーが始まる直前、スバルが現れ、リーシャを迎えに来た。ダンスホールへともに入場した二人の姿に場は騒然となり、ユウリ殿下の兄である第一皇子スバルがパーティーに参加している事実が公になった。スバルは初代皇帝の精神に触れながら、すべての学院生に卒業を祝す言葉を贈った。
ダンスと恋の時間、そして決闘の始まり
スバルと踊り、パーティーは盛況を極めたが、伝統の告白の時間でユウリ殿下がオクタヴィアにプロポーズした直後、オクタヴィアは突然リーシャに決闘を申し込んだ。動揺するリーシャに代わってノブナガが表に出て、木刀一本の勝負を受けて立った。
ノブナガの策と決闘の勝利
決闘が始まると、ノブナガは仕込んでいた小型火縄銃でオクタヴィアの木刀を破壊し、続けて見事な投げ技で勝利を収めた。その圧倒的な展開に観衆は静まり返り、オクタヴィアは敗北を認め、これまでの悪事を白状させられた。
決定的な一手と場の制圧
その後、スバルとノブナガの関係を疑う者たちに対し、ノブナガはスバルのタキシードを引き寄せ、唇を奪うという大胆な行動に出た。観客が唖然とする中、スバルはその行為に応じ、さらに「結婚せよ」というノブナガの言葉に「望むところだ」と答えた。場内は歓声と拍手に包まれ、スバルとリーシャの関係が公然と認められる形となった。
勝者としての証明と新たな未来の一歩
騒動を経て、リーシャの無実とスバルとの信頼が周囲に認められた。ノブナガの奇抜な手段と圧倒的な説得力により、かつての「うつけ令嬢」は堂々とした存在へと成長した。卒業という節目において、彼女は新たな未来への一歩を確かに踏み出したのである。
エピローグ そして前を向く
王妃の反応とスバルの立場の変化
卒業パーティー後、スバルと王妃キャサリンの間で一悶着があったものの、スバルが辺境伯令嬢リーシャとの婚約を発表すると、意外にも祝福された。スバルが皇都を離れ、辺境伯領へ移り住むことで、王妃にとっては皇位継承争いから彼を遠ざける「自主的追放」となったからである。皇都の権力闘争への関与が難しくなるため、結果的に次期皇帝はユウリになる見込みが強まった。
ノブナガの構想と光聖都の存在
ノブナガは当初からスバルが皇族であることを見抜いており、彼との婚約を通じて壮大な構想を抱いていた。その計画とは、スバルが光聖都に上洛し、戴冠式を挙げて正式な皇帝となることであった。光聖都は、五十年前に神聖王国に占領されたままであるが、本来皇帝が戴冠するための正統な地であった。現在の皇帝は、そこにおける戴冠を経ていない「仮の皇帝」に過ぎず、もしスバルがその地で正式な戴冠を果たせば、皇国中の正当な君主として認められる可能性が高いとノブナガは見ていた。
恋愛と噂の拡散、そして動揺
リーシャは、スバルとの関係が「壮大な恋愛歌」として吟遊詩人により広まり、民間で人気となっていることに困惑していた。ノブナガはその様子をからかいながらも、リーシャの内心に喜びがあることを見抜いていた。リーシャは、突然のキスを許可なくされたことを本気で恨みつつも、スバルへの想いが揺れていることを自覚し始めていた。
学院生活の終わりと帰郷の旅立ち
ヒラリばあやの案内で馬車に乗る準備を整えたリーシャは、学院生活を終えて領地への帰路に就いた。馬クロちゃんにまたがり、スバルやランメィルとともに新たな生活への一歩を踏み出した。スバルは青い瞳で空を見上げ、辺境伯領での未来に思いを馳せた。
次期当主としての決意と覚悟
リーシャは、別れ際にオクタヴィアから「あなたの領地を潰す」と宣言されながらも、決して屈せず、自らの領地を守る決意を固めた。天下統一の意思はなくとも、次期当主としての責任を果たす覚悟を新たにし、ノブナガの心強い激励を胸に、手綱を握ってクロちゃんとともに走り出した。
その他フィクション

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