小説「アラフォー賢者の異世界生活日記 20」感想・ネタバレ

小説「アラフォー賢者の異世界生活日記 20」感想・ネタバレ

どんな本?

『アラフォー賢者の異世界生活日記 20』は、寿安清による異世界ファンタジー小説シリーズの第20巻である。主人公の大迫聡は、オンラインゲーム「Sword and Sorcery」をプレイ中に、ゲーム内の邪神を倒した際の呪いで命を落とす。目覚めると、彼はゲームと酷似した異世界の森の中におり、ゲーム内の能力をそのまま使用できる状態である。40歳の彼が、この新たな世界で平穏な生活を送る物語が展開される。

主要キャラクター
• 大迫 聡(ゼロス):主人公。40歳の元ゲーマーで、異世界では強力な賢者として活躍する。

物語の特徴

本作は、主人公がゲームの知識と能力を活かして異世界で自由気ままな生活を送る様子が描かれている。特に、異世界での教師としての活動や、日常生活の中でのユーモラスな出来事が魅力である。他の異世界転生作品と比較して、年齢を重ねた主人公の視点や、落ち着いた物語の進行が特徴的である。

出版情報
• 出版社:MF文庫J
• 発売日:2023年12月25日
• ISBN:978-4-04-683162-0

本シリーズは、ウェブ小説投稿サイト「小説家になろう」での連載から始まり、書籍化された。また、コミカライズもされており、KADOKAWAの「ComicWalker」やスクウェア・エニックスの「マンガUP!」で連載中である。

読んだ本のタイトル

アラフォー賢者の異世界生活日記 20
著者:寿安清 氏
イラスト:ジョンディー  氏

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あらすじ・内容

ダンジョン出たら、いきなり別世界! 和の雰囲気全開の東大陸編~
アドを連れてアーハンの廃坑ダンジョンへと素材収集にやってきたゼロス。構造変化によって以前と様変わりした内部を探索するもよさげな素材はゲットできず、大した成果もないままダンジョンから撤収することに。だが、二人が外に出ると見たことのない光景が広がっており、どうやら自身でもまったく知らぬ間に北大陸から東大陸へと転移していたことが判明。ゼロス達は【ソード・アンド・ソーサリス】の知識を頼りに帰る方法を模索するが、魔物に襲われていた少年剣士・タカマルを偶然助けたことで、奇妙な事件に首を突っ込むことになり……。
和の雰囲気漂う東大陸を舞台に、アラフォーおっさんのチートすぎる人助け無双が炸裂♪ 左腕を失った少女・ミヤビやその弟・タカマルといった新たなキャラクターも登場し、怪事件の謎に迫る!

アラフォー賢者の異世界生活日記20

ゼロスは今回、ダンジョン探索中に異形のアンデッドと遭遇する。
これは、かつて滅魔龍ジャバウォックに敗れた【シャランラ】の魂が変質し、彷徨い続けた末に悪霊化した存在であった。
彼女はダンジョン内の魔力を吸収し続け、巨大な屍の巨人へと変貌していた。
ゼロスとアドはこの強敵と激闘を繰り広げ、最終的に【獄炎焦滅陣】を駆使して殲滅する。

戦いの後、ゼロスはダンジョン内で偶然、悪魔の封印を解いてしまう。
四本腕を持つ異形の悪魔【ボルグガン】は、過去に封印された存在であり、復活直後にゼロスたちと対峙する。最初こそ余裕を見せていたボルグガンだが、ゼロスとアドの実力を前に圧倒され、やがて精神的に追い詰められ暴走。最後はゼロスの強力な魔法によって消滅する。

その後、ゼロスとアドはダンジョンを抜けたが、気づけば見知らぬ土地に転移していた。
そこは東大陸であり、帰還する手段を模索しながら新たな冒険が始まる。
道中、彼らは奇祭を行う村に立ち寄り、地元の風習に驚かされる。
さらに、剣士【ミヤビ】と出会い、彼女の父である剣豪【グレン・ゲンザ】が妖刀に取り憑かれたことを知る。
彼を止めるため、ゼロスたちはギズモの街で情報を集め、ついに討伐へと向かう。

感想

本作は、壮大な戦闘シーンと個性的なキャラクターたちが魅力的である。
特に、シャランラとの戦いは圧巻であり、異形の屍の巨人との激闘は緊迫感に満ちていた。彼女の過去が語られることで、ただの敵ではなく、悲劇的な存在として描かれている点が印象深い。だが、ゼロスたちとの戦闘の末に理性を失い、自らの執念によって消滅するという展開には、ある種の哀愁が漂っていた。

ボルグガンとの戦闘では、悪魔という存在の脆さが描かれており、単なる強敵としてではなく、時代の流れに取り残された哀れな存在としての一面が垣間見えた。力を持ちながらも精神的に弱く、ゼロスたちの冷静な態度によって自ら崩れていく様は、皮肉に満ちていた。

一方、ゼロスたちが東大陸に転移した後の展開は、戦闘とは異なる方向へと移行し、異文化との出会いが描かれる。奇祭の描写や、村人たちとの交流は独特の雰囲気があり、読者を異世界に引き込む力があった。特に、ミヤビとのやり取りは面白く、義手のギミックに興奮する彼女の姿には親しみやすさが感じられた。

物語の後半では、妖刀に取り憑かれたゲンザの狂気が際立ち、ただの戦闘ではなく、家族の悲劇としての要素も加わる。ミヤビの決意と覚悟が描かれ、単なる剣士としてではなく、一人の人間としての強さが示されていた。この展開は物語に深みを与え、戦いに至るまでの過程がしっかりと描かれていた点が良かった。

総じて、戦闘の迫力とキャラクターの魅力、そして異世界の文化描写がバランスよく融合された作品であった。戦いの中にある悲哀や、異文化との交流による新たな発見など、多くの要素が楽しめる一冊である。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ  おっさん、再会していたのに気付いていなかった

大惨事 第三次シャランラ戦

シャランラの彷徨と悪霊化

シャランラ、すなわち【大迫麗美】はかつて【滅魔龍ジャバウォック】によって滅ぼされる寸前で逃げ出し、悪霊となった存在である。元の人間としての生を失った彼女は、盗賊たちの魂と融合しながら彷徨い続け、メーティス聖法神国からソリステア魔法王国へと流れ着いた。しかし、魂だけでは存在を維持できず、時が経つごとに魔力を消耗し、ついには自我すら崩壊しつつあった。それでも魂の回収を拒み、異世界にしがみついた彼女は、生存本能だけを頼りに憑依と吸収を繰り返す亡者となった。

アーハンの廃坑ダンジョンへの漂着

無意識のうちに最も魔力の高い場所を求めたシャランラは、魔力が満ちるアーハンの廃坑ダンジョンへと引き寄せられた。ダンジョンの活性化によって世界樹の魔力が地脈を巡り、そこに漂う魔力を吸収することで彼女は再び力を取り戻し始めた。しかし、その過程で人間としての理性はさらに失われ、もはや「生きる」という執着のみが残る状態となっていた。

ダンジョン第四階層の港町

一方、ゼロスとアドはアーハンの廃坑ダンジョンに潜入し、二日目の探索を続けていた。第四階層に広がる港町は廃墟と化し、ゾンビや魔物が徘徊していた。かつて文明の拠点であったこの地には、疫病医のような魔物が存在し、異様な光景を作り出していた。ゼロスたちは戦利品を期待できないと判断し、効率的な殲滅手段として【ファイアー・トルネード】を発動し、町全体を炎で包み込んだ。

焼き尽くされた町と新たな脅威

燃え盛る港町を後にし、ゼロスとアドはさらに奥へと進んだ。しかし、森林地帯へ足を踏み入れた瞬間、大地が揺れ始め、放射状に亀裂が広がった。地面が崩落し、そこから巨大な異形のアンデッドが姿を現した。それは無数の屍が融合した巨大な亡者であり、シャランラが変貌した最悪の姿の一端であった。

再び交差する運命

その存在は明確な敵意を持ち、ゼロスたちに向けて咆哮を上げた。アンデッドの眼球のような光の玉が彼らを捉え、膨大な魔力を持つ標的として認識していた。長きにわたり生への執念に取り憑かれたシャランラは、ついに弟との対峙の時を迎えようとしていた。

第一話  おっさん、やっぱり姉だと気付かない

屍の巨人との対峙

屍の巨人は一撃で地面を抉り飛ばし、周囲に土煙を立ち上らせた。巨大なその目は魔力の光を宿し、ゼロス達の生存を確実に捉えていた。しかし、ゼロス達は巨人の攻撃が振り下ろされる直前に跳躍し、難なく回避した。

近くで見ると、巨人の体は痩せ細り、骨と皮だけのように見えた。しかし、それは単なる外見に過ぎず、多数の死体が絡み合い、ヤドリギのような植物によって束ねられていた。その植物はまるで血管のように脈打ち、巨人の形を維持していたが、損傷した部分は新たな死体によって補修されていた。

ゼロスは巨人の修復能力を見極めながらも、その脆さを指摘した。強力な攻撃を受けた左腕はすでに損傷し、皮一枚で繋がっていたが、修復には限界があることを予感させた。巨人の動きは遅く、力任せの攻撃しかないように見えたが、執念を宿した双眸だけは強烈な存在感を放っていた。

修復を続ける屍の巨人

屍の巨人は怨嗟の声を上げながらゼロス達に向かい、腕の破損箇所から無数のゾンビを生み出し始めた。腐汁を撒き散らしながらゾンビたちは巨人の体に結合し、修復が進む。だが、その過程は異様な光景だった。

死体同士がミチミチと音を立てて結合し、苦しげな呻き声を響かせる。破損した腕が修復されるたびに指の数が増え、不完全な形ながらも動き続ける。その姿はまるで地獄の罰を受け続ける亡者のようであり、ゼロスですら口を押さえた。

ゼロスは、修復を阻害するために火を使うことを提案した。燃やせば修復が難しくなるかもしれないが、逆に燃えたまま襲いかかってくる可能性もあった。下水道が存在するならば、体内に多くの水分を含んでいる可能性があり、完全燃焼は困難であるかもしれなかった。

火の試みと新たな脅威

ゼロスは試しに【ファイアー・ストーム】を放ち、巨人の足元を歩くゾンビを燃やした。しかし、ゾンビは燃えながらも動きを止めず、確実にゼロス達へと向かってきた。魔力を持つ存在に群がる習性のせいか、炭化するまで活動を続けるようだった。

その間に巨人は再び右腕を振り上げ、ゼロス達を叩き潰そうとした。ゼロスとアドは余裕を持って回避し、間髪入れずにショートソードとショーテルで攻撃を仕掛けた。その結果、右腕は切断され、巨人の体勢は崩れた。しかし、その切断された腕の断面から、新たなゾンビが次々と生え出してきた。

ゼロスはこれが単なる修復ではなく、増殖能力を伴うものだと理解した。つまり、切断するごとに新たな敵が生まれる危険性があった。ヒュドラの首のように、対処を誤れば逆に敵の数を増やすことになりかねなかった。

屍の巨人の脅威とその突破口

ゼロスは、屍の巨人が自身の魔力で体を維持していると考えた。魔力が尽きれば活動を停止する可能性があるが、巨体ゆえに消費する魔力の量が読めない。普通の人間ならば勝ち目がないほどの耐久力だったが、ゼロス達にとっては戦略次第で対処できる相手だった。

広範囲の魔法を用い、焼却することが最善の手段と判断し、ゼロスは【獄炎焦滅陣】を発動した。すると、屍の巨人の足元から猛烈な炎が広がり、地面は溶岩へと変化していった。

巨人は炎に包まれながらも、怨嗟の叫びを上げ続けた。しかし、燃え尽きることは避けられず、巨体は崩れ落ち、溶岩の中へと沈んでいった。ゼロスとアドは勝利を確信し、次の行動へと移ろうとした。

蘇るマグマゴーレム

だが、その瞬間、煮え滾る溶岩が盛り上がり、新たな脅威が姿を現した。それは、屍の巨人の残骸が溶岩と融合して形成された【マグマゴーレム】であった。

この変化にゼロス達は驚きを隠せなかった。アンデッドからゴーレムへと変化する魔物など、今まで見たことがなかった。ゼロス達はすぐさま防御態勢を取り、次の戦闘に備えた。

マグマゴーレムは巨大な腕を振り上げ、溶岩をまき散らしながらゼロス達に向けて攻撃を開始した。ゼロスはその動きを観察し、通常のマグマゴーレムとは異なる特徴を持つことに気づいた。

範囲領域化と対策

マグマゴーレムは溶岩を操り、周囲の地面を徐々に溶岩へと変えていった。これは【範囲領域化】と呼ばれる能力であり、特定のモンスターが環境を変化させて戦闘を有利に進めるために使用する特殊な力であった。しかし、ゼロスは疑問を抱いた。

通常、範囲領域化は膨大な魔力を消費するため、長時間の維持は難しい。だが、このマグマゴーレムは明らかに魔力を失うことなく活動を続けていた。ゼロスは、その魔力供給源がダンジョン自体にあるのではないかと推測した。

この推測が正しければ、ゴーレムは外部の魔力供給を受けることで、実質的に無尽蔵のエネルギーを得ていることになる。そのため、単純に魔力を削り取る戦法は通用しない。

冷却作戦と最終決戦

ゼロス達はこの事態に対処するため、【コキュートス】を使用し、マグマを冷却することを試みた。氷の魔法が展開されると、周囲の溶岩は一瞬で硬化し、マグマゴーレムの動きが止まったかに見えた。

しかし、それも一時的なものであった。ゴーレムは内部から魔力を送り続け、再び熱を生み出し始めた。ゼロス達は、このゴーレムを倒すには単なる冷却では不十分であると判断した。

最終的に、ゼロスは別の戦略を考え始めた。このゴーレムの核となる魔力を完全に消滅させる方法を模索し、戦いの決着をつけるために動き出した。

第二話  おっさん、最後まで気付かず引導を渡す

退路を断たれた戦局

ゼロス達は、燃え盛る廃墟の中で逃げ道を失っていた。背後の退路は溶岩とマグマゴーレムによって塞がれ、正面突破も難しい状況であった。短期決戦を目指すには相手の行動を封じる必要があったが、それを試みた氷結魔法はすでに無効化されていた。結果として、長期戦を余儀なくされる可能性が高まっていた。

ゼロスはこの状況を打破する手段を持っていたが、それは未完成の魔法であり、使用にはリスクが伴った。広範囲殲滅魔法であるがゆえに、その影響範囲がどこまで及ぶか予測がつかず、最悪の事態を招く可能性もあった。アドはその危険性を理解しつつも、このままでは不利が拡大する一方であることを指摘した。

海岸への誘導作戦

ゼロスは戦闘を有利に進めるため、海岸までマグマゴーレムを誘導することを提案した。溶岩の流れを利用し、低地である海に向かって敵を追い込めば、戦局を大きく変えられる可能性があった。溶岩が海水と接触すれば急激に冷却され、相手の行動範囲を制限できるかもしれない。

アドはこの作戦に同意し、全速力で海岸へ向かった。ゼロスもそれに続き、足場を見極めながら移動を続けた。マグマゴーレムは巨大な質量を伴いながらも、確実に彼らを追跡してきた。

決戦への布石

ゼロス達は海岸に到達すると、スライム製のゴムボートを海に浮かべ、急ぎ沖へと逃れた。その直後、マグマゴーレムが海へと流れ込んだ。熱と水の激しい衝突により、大量の水蒸気が発生し、視界を覆い尽くした。

ゼロスはついに決断し、未完成の魔法【極零崩滅華】を発動した。手にした漆黒のキューブが放たれた瞬間、周囲の温度は急激に低下し、海水ごとマグマゴーレムを凍結させた。ゴーレムは抵抗しようとしたが、熱を完全に奪われ、溶岩石と化して崩壊していった。

魔法の完成度と残された課題

ゼロスは魔法の結果を見届けながら、その完成度に不満を覚えた。本来ならば巨大な氷の薔薇が形成されるはずだったが、単なる氷結現象に留まったためである。アドはその威力に驚愕しつつも、ゼロスの美学に対するこだわりに呆れていた。

マグマゴーレムの撃破により、ダンジョンの一角は極寒の地へと変貌した。ゼロス達はその場で素材を回収しようとしたが、得られたのは鉄や銅などの平凡な鉱石のみであり、期待していた魔石の類は一切なかった。この結果に不満を覚えつつも、彼らは新たな探索へと目を向けた。

レバルト領の急成長

メーティス聖法神国は四神の喪失によって混乱の渦に巻き込まれていた。国教であった四神教の影響力は急激に衰え、貴族たちは復興どころか内乱を引き起こしていた。その中で、レバルト領の伯爵【フューリー・レ・レバルト】は、周囲の貴族をまとめ上げ、勢力を急拡大していた。

彼は婚約者の実家である侯爵家や辺境伯家との関係を強化し、いち早く交易ルートを確保した。さらに、領内の治安維持と復興に力を入れ、領民の支持を獲得した。しかし、その基盤は脆弱であり、一つの失策がすべてを崩壊させる可能性を秘めていた。

戦の幕開け

レバルト領の台頭を脅威と感じた貴族たちは、フューリーに対して軍事的な圧力を強めていた。だが、彼の配下には元聖天十二将の精鋭が揃っており、侵攻してきた敵軍を一瞬で殲滅した。フューリーはこの勝利を冷静に受け止めながらも、彼自身の英雄願望を実現するための布石として利用した。

彼の一族は歴代の勇者を匿い、異世界の知識を収集してきた背景を持つ。その影響を受け、フューリー自身もまた英雄となることを目指しており、彼の行動理念はすべてその目的に向けられていた。

アーレン・セクマの独裁統治

一方、モルケー公爵領では【アーレン・セクマ】将軍が軍事クーデターを起こし、無能な公爵を王として擁立しようとしていた。モルケー公爵は統治能力を持たない典型的な無能貴族であり、王になることを激しく拒絶したが、アーレンの強権により選択肢を奪われた。

アーレンは周辺の貴族領を武力で制圧し、優秀な文官を無理やり徴用して体制を整えた。しかし、財政難という重大な問題に直面しており、貧困にあえぐ領地をどのように経済的に立て直すかが課題となっていた。

経済改革と意外な成功

アーレンは領地の貧困を打開するため、領内の魔導士や錬金術師を優遇し、魔法薬やスクロールの取引を活発化させる政策を打ち出した。これにより、領内には多くの魔導士が流入し、商人たちが往来するようになった。

さらに、【試練の迷宮】を活用し、傭兵や冒険者を呼び込むことで、経済を活性化させることに成功した。この結果、モルケー公爵領は短期間で繁栄し、アーレンの統治は予想外の形で軌道に乗った。しかし、モルケー公爵本人はこの状況を望んでおらず、領主の座を降りることすら許されない状態に陥っていた。

動乱の先に見える未来

レバルト領とモルケー公爵領、それぞれが異なる手段で力をつけていく中、旧メーティス聖法神国の混乱は収束する気配を見せなかった。フューリーは英雄としての理想を追い、アーレンは己の戦争を求め、両者はそれぞれの思惑で動いていた。

この先、彼らの進む道が交錯し、新たな戦乱を生み出すことになるのは必然であった。

第三話  おっさん、ダンジョン内で古代遺跡を発見する

鍛冶工房の訪問

クロイサスとマカロフは、学院都市の外れにある職人街を訪れていた。彼らの所属するサンジェルマン派では、魔導式蒸気機関の研究が進められていたが、タンクの破裂という重大な問題に直面していた。その解決策を求め、鍛冶工房の職人の知見を借りることにしたのである。

クロイサスは研究の進展のためならば、専門家に相談することに躊躇はなかった。しかし、マカロフは乗り気ではなく、明らかに気が進まない表情を浮かべていた。それもそのはず、訪れる鍛冶工房はドワーフのものだった。ドワーフの職人気質を考えれば、軽い相談程度では済まない可能性があった。

工房での相談

鍛冶工房に足を踏み入れると、整然と並んだ武器や防具の美しさに圧倒された。どの品も研ぎ澄まされ、芸術品と呼べるほどの完成度を誇っていた。しかし、クロイサスにとっては、魔導具でなければ興味の対象にはならなかった。

そこへ現れたのは、鍛冶工房の親方であるドワーフの男だった。クロイサスは丁寧に自己紹介し、蒸気機関に関する相談を持ちかけた。親方は設計図を手に取り、じっくりと目を通した後、金属の耐久性や熱による劣化の問題点を指摘した。クロイサスは、すでに試作機が爆発するなどの問題を抱えていることを認め、より適した合金の開発が必要であると考えていた。

職人の参加

親方は設計図を見ながら、金属の特性や耐久性の問題について深く考察した。その上で、部品の作成を引き受けると申し出た。クロイサスとマカロフは、思いもよらぬ展開に驚いた。彼らはあくまでも学院主導の研究として進めていたため、職人に依頼することは想定していなかった。

しかし、親方は技術の探求に並々ならぬ情熱を持つドワーフであり、新たな機械技術に強い興味を示していた。彼は学院側と直接交渉すると言い出し、蒸気機関の研究に本格的に関与する姿勢を見せた。この展開により、魔導式蒸気機関の開発は新たな局面を迎えることになった。

マグマゴーレムとの戦闘

ゼロスとアドは、ダンジョン内でマグマゴーレムとの戦闘を繰り広げていた。周囲は溶岩に囲まれ、退路は完全に塞がれていた。短期決戦を試みるも、敵の防御は堅く、長期戦が避けられない状況に陥った。

ゼロスは、未完成の広範囲殲滅魔法を持っていたが、使用すれば未知の影響を及ぼす可能性があった。そのため、できる限り有利な条件を整えるために、マグマゴーレムを海岸へ誘導する作戦を立てた。

海岸での決戦

ゼロスとアドは、限られた足場を利用して海岸へと向かった。マグマゴーレムも後を追ってきたが、その巨大な質量が災いし、移動速度は遅かった。ゼロス達は、スライム製のゴムボートを使用し、沖へと逃れた。

海へと流れ込んだマグマゴーレムは、海水によって熱を奪われ、大量の水蒸気を発生させた。ゼロスはこの機を逃さず、未完成の魔法【極零崩滅華】を発動。凍結の術式が発動し、マグマゴーレムを絶対零度に近い低温で瞬時に凍らせた。敵は抵抗したものの、最終的には氷塊となり、粉々に砕け散った。

討伐後の収穫と新たな発見

ゼロス達はマグマゴーレムの残骸から素材を回収しようとしたが、得られたのは鉄や銅のみで、期待していた魔石は手に入らなかった。討伐の労力を考えれば、あまりにも割に合わない報酬であった。

その後、彼らはダンジョン内で新たな探索を続けることにした。道中で、歴史的な遺跡と思しき建造物を発見した。遺跡の中央には石の祭壇があり、そこには錆びついたナイフが突き立てられていた。このナイフが何を意味するのか、そしてそれを引き抜いたときに何が起こるのか、ゼロスとアドは慎重に検討することになった。

第四話  おっさん、悪魔を解き放つ

悪魔の封印が解かれる

祭壇から黒い霧が溢れ出し、周囲に瘴気が広がった。触れるだけで生理的な嫌悪感を覚えるほどの負の魔力が漂い、その中心に不気味な人型が現れた。それは、猿のような頭部を持ち、全身が獣毛に覆われ、鳥のような鋭い爪の足を持つ四本腕の悪魔であった。

ゼロスとアドは、ダンジョンに悪魔がいることに驚きを隠せなかった。悪魔は通常、戦場のような無念の死が積み重なった場所や、澱んだ魔力溜まりから生まれる存在であり、浄化された魔力の満ちるダンジョンで誕生することはありえなかった。しかし、現実に悪魔はそこに存在し、封印が解かれたことで自由になったと高らかに宣言した。

悪魔の誕生と歴史

この悪魔は、文明が発達する以前の原始時代に誕生し、各地で猛威を振るっていた。人々は自然を畏れ、精霊信仰を強く持っていたが、次第にその信仰は生贄を捧げる形へと変わっていった。最初は動物だった供物も、やがて赤子や戦士、さらには罪人へと変わり、罪人たちは罪を償うために進んで生贄となることすらあった。しかし、実態は残酷で、重罪人は生きたまま心臓を抜き取られるなど、凄惨な儀式が行われていた。

やがて、その苦しみや怨嗟が積み重なり、澱んだ魔力の中から悪魔が生まれた。悪魔は信仰を利用し、精霊の王を自称して魔力を蓄え、集落を襲わせることで力を増していった。そして、戦争を誘発し、自ら敵国を滅ぼすほどの力を得た。

悪魔の衰退と封印

しかし、人類は時代の進化とともに悪魔に対抗する術を得た。武器の改良、魔法技術の発展、回復魔法の強化、さらには退魔特化の結界魔法が生み出され、悪魔を崇拝する国は次第に劣勢となっていった。さらに内部の反乱や裏切りによって信仰は衰え、悪魔の力は徐々に弱体化していった。

最終的に悪魔は追い詰められ、逃走の末に迷宮へと身を潜めた。しかし、そこで封印され、長い年月を閉じ込められることとなった。悪魔は封印の間に思考を停止し、ただ存在し続けるだけの存在となっていた。

ダンジョンの意志と再現

ゼロスとアドは、なぜ悪魔がダンジョン内に封印されていたのか疑問を抱いた。考えられるのは、ダンジョンコアが悪魔の記憶を読み取り、封印された場所を再現した可能性である。ダンジョンには知的生命体の魂を鍛える目的があり、意図的に悪魔をエリアボスや隠しボスとして配置したのかもしれない。

悪魔は、自身が長きにわたり封印され、誰も救いの手を差し伸べなかったことに憤りを覚えていた。しかし、封印が解かれた今、力を回復し、かつての栄光を取り戻すために目の前の者たちを喰らおうと動き出した。

戦闘の開始

封印が解かれた悪魔は、飢えた獣のようにゼロスとアドに襲いかかった。言葉を交わせたとしても、所詮は人間と悪魔である。相容れぬ存在である以上、戦闘は避けられない運命であった。

神々の管理領域

神域では、神々と天使たちが下位世界の管理を行っていた。本来、彼らは感情を持たない存在であり、機械的に役割を遂行するものだったが、一部の神々や天使は感情を持ち、積極的に知的生命体の世界へと干渉していた。

その中には最上位天使ルシフェルの姿もあった。彼はバグ取り作業に追われ、疲弊していたが、元の職場の上司であるケモさんから突然の通信を受けた。ケモさんは、異世界の監理者として、惑星管理システムの修復について話を持ちかけてきた。

惑星管理システムの修復

ケモさんは、異世界の惑星管理システムのデータを流用すれば、現在のシステムを迅速に修復できると提案した。しかし、それを聞いた使徒たちは絶望した。彼らは長い間、膨大な手間をかけて修復作業を続けていたが、最初からその方法があれば苦労する必要はなかったのだ。

ルシフェルを含めた使徒たちは、怒りと絶望のあまり精神的に崩壊寸前であった。ケモさんは善意で提案したつもりだったが、その無神経さが使徒たちの努力を完全に無駄にしたことを理解していなかった。

システム変更の決定

結局、アルフィアはケモさんの提案を受け入れ、惑星管理システムの全体的な変更を行うことを決めた。しかし、問題が一つ発生した。それは、システムの変更に伴い【転移ゲート】が世界中に出現することであった。

元々、転移ゲートは特定の遺跡内に存在していたが、一部の場所はすでに消滅しており、クレーターになっていた。そのため、転移ゲートの数が予定よりも少なくなっていた。アルフィアは、埋没していないゲートを優先的に機能させ、残りのゲートは発掘された際に起動する仕組みにすることを決めた。

新たな時代の幕開け

この変更により、転移ゲートを介した文化交流が活発になり、世界の社会構造にも影響を及ぼすことが予想された。神々の干渉により、新たな時代の流れが生まれ、惑星の歴史は新たな局面を迎えることとなった。

しかし、システム変更によって異界から召喚された魂の回収作業が容易になったものの、新たな問題として、返還する魂の選別作業が発生した。その結果、使徒たちは引き続き過労に苦しむことになり、彼らの苦難は終わることがなかったのである。

第五話  おっさん、悪魔のメンタルの弱さを不憫に思ふ

悪魔との戦闘

翼を持たずに飛翔し、霊体でありながら強力な物理攻撃を繰り出す悪魔が、ゼロスたちに襲いかかった。しかし、二人はその攻撃を容易く避け、広場には巨大なクレーターが生じた。悪魔は激昂し、屈辱に震えたが、ゼロスとアドはその実力に失望を感じていた。

悪魔は瘴気を凝縮して核とし、周囲の魔力や物質を取り込みながら誕生するエネルギー生命体である。分身を作り出す能力を持ち、いずれかが生き残れば復活可能という特性を持つが、封印によって長年の弱体化が進行していた。

悪魔の怒りと屈辱

ゼロスたちは悪魔の攻撃をすべて回避し、余裕すら見せていた。その態度は悪魔の神経を逆撫でし、屈辱を感じさせた。悪魔はかつての威光を誇示しようとするが、ゼロスは「勇者クラスやルーフェイル族でなければ倒せないレベル」と評価しつつも、それが特別脅威になるとは考えていなかった。

アドは、自身が常人の基準から外れた存在になっていることを自覚し、半ば諦めの境地に至っていた。一方で、悪魔は彼らが自分を侮る態度に激怒し、人間がここまで強くなったことに困惑していた。

悪魔の名前と過去

ゼロスが悪魔の名を尋ねると、悪魔は長大な名前を名乗った。しかし、それはあまりにも長く、ゼロスたちは最初の部分だけを省略して「ボルグガン」と呼ぶことに決めた。悪魔は妥協したが、それでも長年にわたる呼称を大切にしていたことがうかがえた。

さらに、ゼロスは悪魔の外見が「古臭い」と評し、現代の価値観では力強さよりも知性や美しさが重要視されると指摘した。ボルグガンはそれを聞いて気落ちし、封印された間に時代が変化していたことを痛感した。

使徒との因縁

ボルグガンは、かつての自分がルーフェイル族と人間によって封印された経緯を語った。彼は強大な力を誇っていたが、数で圧倒され、最終的には封印されるに至った。しかも、それを指揮したのは使徒であったという。

ゼロスたちが「使徒」であることを知ると、ボルグガンの顔は青ざめた。彼の封印には、使徒の介入が決定的な役割を果たしていたため、彼にとって使徒は天敵のような存在であった。彼は自らの敗北を回想し、ルーフェイル族の戦術に嵌められたことを認めざるを得なかった。

ダンジョンによる複製の可能性

ゼロスたちは、ボルグガンが本当に封印されていたのか、それともダンジョンが彼の記憶を基に作り出した複製なのかを議論した。ダンジョンコアは過去の存在や記憶を再現することが可能であり、ボルグガンもまたその一例ではないかと推測された。

さらに、ボルグガンがなぜ現代の言語を理解できるのかも疑問視された。ダンジョンの力によって言語知識が付与された可能性が高く、もしそうなら、彼の存在自体がダンジョンの演出の一部である可能性が強まった。

自己の存在に対する疑念

ゼロスたちの推測を聞いたボルグガンは動揺し、自らの存在が複製であるかもしれないという疑念に苛まれた。彼は自らの記憶を振り返り、それが本当に自分のものなのか、あるいは植え付けられたものなのかを確かめようとしたが、確信を持つことができなかった。

この自己否定の感情が引き金となり、ボルグガンは精神的に不安定になり、錯乱状態に陥った。そして、それに伴い魔力が暴走し、姿をおぞましい異形へと変貌させた。

暴走する悪魔の消滅

理性を失い、巨大な肉塊のような異形へと変わったボルグガンは、辺りを無差別に破壊し始めた。このまま放置すれば、自己崩壊による大爆発が発生する可能性が高かったため、ゼロスたちは即座に対処することを決意した。

二人は高出力の魔法【フォース・レイ】を放ち、ボルグガンの魔力を削り続けた。膨れ上がる魔力を押さえ込みながら、最後の一撃を叩き込んだ結果、ボルグガンは完全に消滅した。

瘴気の影響を受けるアド

ボルグガンの消滅後も、瘴気はダンジョン内に漂い続けていた。そして、それがアドの身体に急速に吸収されていった。突然の出来事にゼロスが驚く中、アドは意識を失いかけ、うつむいたまま動きを止めた。

次の瞬間、彼は自らの不満を大声で叫び始めた。瘴気の影響によって抑圧されていた本音が一気に溢れ出し、結婚生活や異世界での苦労について愚痴をこぼし続けた。ゼロスはその様子を見守りつつ、飲み会で上司が愚痴をこぼす姿と重ね合わせていた。

ダンジョンコアの会議

ゼロスたちが撤退するころ、ダンジョンコアたちはデータリンクを通じて、迷宮構築についての議論を交わしていた。現在のダンジョン構造のバランスや、魔力の分配について調整が行われており、一部のエリアの交換が検討されていた。

また、ファーフラン大深緑地帯における魔晶石の増加と、それに伴う異常生物の繁殖が問題視されていた。ダンジョンコアたちは、東大陸の環境を調整するため、魔晶石の一部をそちらへ転送することを決定し、即座に計画を実行へ移した。

未知の場所へ転移

ようやく正気を取り戻したアドは、ゼロスとともにダンジョンの出口へ向かった。しかし、外に出た瞬間、彼らは違和感を覚えた。

目の前に広がるのは、鬱蒼と茂る森と海。そこには、かつてアーハン廃坑ダンジョンの眼下にあった村の姿はなかった。二人は呆然としながら、異変に気づいた。「ここはどこだ?」と互いに問いかけたが、その答えはまだ見つかっていなかった。

第六話  おっさんとアド、ダンジョンを抜けたら別大陸でした

未知の土地への転移

ゼロスとアドはダンジョンを抜けたものの、そこに広がるのは見覚えのない景色であった。日が傾き始めた赤く染まる空の下、二人は自分たちの状況を確認するが、どこにいるのか全く分からなかった。ゼロスは冷静に状況を分析し、ダンジョン内でエリアの交換が行われ、自分たちが知らぬ間に転移した可能性を示唆する。一方でアドは、突如として異なる場所へ放り出されたことに動揺していた。

周囲の環境を観察すると、植生や気候から南方の地域であることが推測された。特にベニヤマツの存在から、東方の島国か東大陸北部のどちらかである可能性が浮かび上がった。島国であれば船を利用して帰還できるが、戦国時代に突入したばかりの国であり、外国人に対する警戒が強いことが懸念材料であった。そのため、ゼロスは東大陸であることを願っていた。

東大陸の地理と帰路の問題

ゼロスの知識によれば、東大陸はかつて邪神による攻撃を受け、地形が大きく変化していた。彼は目の前の光景から、かつての地図と照らし合わせながら現在地を推測する。しかし、東大陸であった場合、北大陸へ帰るには海を渡り、危険なファーフラン大深緑地帯を抜ける必要があるという問題が浮上した。

また、ゼロスは【ソード・アンド・ソーサリス】の知識を頼りに地形を確認しようとするが、現実の世界との違いに戸惑いを感じた。大陸の地形は概ね一致しているものの、都市や人の生活圏は異なっていた。そのため、ゲームの知識だけに頼るのは危険だと改めて認識する。

アドはこの事態にますます焦りを募らせるが、ゼロスは冷静に交易船を利用する手段を提示した。とはいえ、現時点では東大陸の通貨を持っていないため、資金調達の必要があると考えられた。

転移ゲートの可能性と冒険の開始

アドは転移ゲートの存在を期待するが、ゼロスはこの世界で転移ゲートを実用化できる技術は失われていると推測した。かつて魔導文明期の遺跡で転移装置を見たものの、それが現存するとは限らず、仮に使えたとしても安全に移動できる保証はなかった。むしろ転移事故に巻き込まれるリスクを考えると、現実的な選択肢ではなかった。

そのため、二人は歩いて街を探すことを決断し、道中で魔物を狩ることで資金を稼ぐことにした。しかし、東大陸の魔力濃度が低いためか、出現する魔物は北大陸に比べて非常に弱かった。特にカピバラのような魔物がこの地域では「強い部類」に入ることに驚愕する。これにより、高価な魔物素材を狙う計画は白紙となった。

サントールの街の女子会

一方、サントールの街ではゼロスとアドの行方不明を気にする者たちが集まっていた。ユイは夫であるアドの居場所を何となく感じ取っており、彼が東の果てにいると断言する。しかし、他の女性陣はその発言を簡単には信じられず、半ば冗談交じりに受け止めていた。特にユイの執着心が強すぎることに、転生者のイリスは彼女が呪術師の素質を持っているのではないかと懸念するほどであった。

話題は次第に女性陣の恋愛観へと移り、理想の男性像について語られた。ユイはゼロスをイリスに勧めるなど、話の方向が予想外の展開を見せる。しかし、その背後には彼女なりの策略が隠されており、夫であるアドの周囲から他の女性の影を排除しようとする意図が見え隠れしていた。

フオウ国の情勢と異変

東大陸北部にあるフオウ国では、近年移民が増加していた。この国は二百年前に戦火を逃れた人々が築いたものであり、天然の要害に守られ、他国の侵攻を受けることなく発展を遂げていた。しかし、近年は気候変動による水不足や砂漠化の進行が問題となっていた。

そんな中、山岳地帯に草木が生い茂り、降雪が確認されるという異変が発生した。この変化により、国の開拓計画を見直す必要が生じたが、同時に南部の戦乱地域からの移民や侵略者が流入する可能性が懸念されるようになった。水源が復活すれば生活圏が広がるが、それは同時に戦争の火種にもなりかねない。過去の調査では南部の勢力が極めて好戦的であり、話し合いが通じない相手であることが判明していたため、今後の対応が求められる状況であった。

転移ゲートの復活と神々の観測

一方、高次元の神域では、惑星管理システムの影響で複数の転移ゲートが発生していた。南大陸では既に稼働を始め、東大陸では不完全ながらも作動の兆しを見せていた。神々はこれを「イレギュラーな現象」と捉え、人類が転移ゲートを戦争の道具として利用することを警戒していた。転移ゲートを無制限に使用されれば、大陸間の勢力バランスが崩れ、戦争の原因となる可能性が高かった。そのため、転移地点をランダムにすることで意図的に信頼性を低下させ、人類が安易に利用できない仕組みを作ることが検討された。

しかし、南大陸やファーフラン大深緑地帯には異常進化した魔物が多数生息しており、転移ゲートを介してこれらの生物が他の大陸に流出する危険性も指摘された。そのため、神々は魔物の転移を防ぐ結界を追加することを検討しつつ、転移ゲートの影響を慎重に観測することとなった。

謎の村と異様な祭り

ゼロスとアドは探索を続け、ようやく村らしき場所を発見する。しかし、住民の姿がなく、家々の玄関に灯された蝋燭の明かりだけが残っていた。不審に思いながらも奥へ進むと、太鼓や笛の音が聞こえてきた。二人は祭りが行われていると推測し、情報を得るために音のする方へ向かうことにする。

しかし、祭りの様子を確認したゼロスとアドは、その光景に違和感を覚えた。そこには単なる祭りではなく、何か異様な儀式が行われている気配が漂っていたのである。

第七話  おっさん、東大陸の辺境で現地の村人達に出会ったぁ ~

奇祭の光景奇祭の光景

村の中央では、半裸で褌一丁の男が柱に括りつけられ、白装束の神官たちが四方に焚かれた護摩壇の火を蝋燭に移し、その蝋を男に垂らしていた。男は身悶えながらも決して叫ぶことなく耐え、村人たちは笛と太鼓の音に合わせて楽しげに踊っていた。

ゼロスとアドは茂みからその光景を眺め、あまりの異様さに疑問を抱く。男はどこか恍惚としており、まるでこの責め苦を堪能しているように見えた。彼は単なる生贄ではなく、喜びを感じる真性の変態に思えた。二人が呆気に取られる中、踊り疲れた老人が近くに座り込むのを見つけ、ゼロスは情報を得るために話しかけた。

祭りの由来と奇妙な変化

ゼロスが祭りについて尋ねると、老人は「豊穣祈願祭」だと答えた。本来、この儀式では生贄が火に飛び込むことで穢れを祓う習わしだったが、焼死者が続出したため、安全策として蝋燭の熱に耐える形へと変更されたという。

しかし、毎年この役を担うゴンジロウという男は、明らかに苦しんでいるのではなく楽しんでいるようだった。老人は「彼は真面目に試練を受けており、誰よりも早く険しい山を登る努力をしている」と言うが、ゼロスは「それは快楽のためではないか」と指摘した。最終的に、ゴンジロウを役職から外すことを提案し、老人も長老たちと相談すると約束した。

祭りの最高潮と異様な結末

祭りが進むにつれ、ゴンジロウの歓喜の声はますます大きくなり、ついには絶頂の叫びが畑の中央に響き渡った。村人たちは表面上は何事もなかったかのように振る舞っていたが、誰もが心の中では彼の正体を完全に理解した。こうして、村人全員がゴンジロウの変態性を知ることとなった。

宴会への招待と村のもてなし

祭りの後、ゼロスとアドは村の打ち上げに招かれ、地酒や漬物、新鮮な野菜の鍋を振る舞われた。村人たちは旅人に対して非常に親切で、ゼロスもカニやエビを提供し、宴会の料理をより豪華にした。

村人たちとの会話の中で、この地では塩が役人によって独占されており、自給できないために高価な代物となっていることが判明した。また、近年は野菜の成長が速くなっているが、人口が少なく労働力が不足しているため、収穫作業に苦労しているという問題も浮かび上がった。

フオウ国の歴史と社会構造

ゼロスは村人たちからフオウ国の成り立ちを聞いた。この国は戦乱を逃れた人々が移住し、新天地として築いた歴史を持つ。国の統治は皇家を中心に公家や武家が担っており、身分制度が固定化されている。名のある武家以外の侍は素浪人のような扱いで、一般的な斬り捨て御免のような風習はないという。

また、神職の立場は一般市民に近く、彼らは魔物退治や医療活動、教育にも従事している。神宮は学問の場としての役割も果たしており、民との共存が図られていることが分かった。

アドの酒の失敗と村人の酒文化

村人たちは陽気で、次々と酒を勧めてくる。ゼロスは慎重に飲んでいたが、アドはついに酔い潰れてしまった。村の酒はアルコール度数が高く、【状態異常無効】スキルすら無効化するほどの強烈なものであった。

ゼロスは、魔導技術を用いてより美味い酒を作ることも考えたが、錬成技術による酒は風情がなく、自然熟成には敵わないと結論付けた。また、村人たちは塩不足だけでなく、街までの移動が困難であること、さらには海沿いには魔物が多く危険であることを話してくれた。

村の社会構造と侍の役割

村では、侍とは万屋組合に属する者を指すらしく、彼らは傭兵のような存在であった。しかし、村にはその侍を雇う資金がなく、自力で魔物の対策をするしかなかった。ゼロスは【ソード・アンド・ソーサリス】に存在する【キイノクナ国】と似た社会構造を思い浮かべたが、フオウ国は異なる文化を持つようであった。

村人たちは、侍と武家の違いを明確に説明できなかったが、権力を持つのは皇家や名のある武家であり、神職は互助組織のような立場であることが分かった。ゼロスは、この情報を元に今後の立ち回りを考えることにした。

呪われた刀の目覚め

一方、ある男が森の中を彷徨っていた。彼の体は異様なほどの筋肉に覆われ、その動きは自らの意思ではなく、右手に癒着した刀によって操られていた。刀には意志が宿り、男をひたすら導いていた。

その刀は異常な存在であり、生物の本能が拒絶するほどの呪いを宿していた。男の肉体と刀は魔力の間欠泉に到達し、そこから魔力を吸収し始めた。すると、刀から呪詛が放たれ、異形の存在が次々と生まれ出た。

異形は異様な形態を持ち、次々と増殖しながら結界の突破を試みた。そして、小さな個体がついに結界を抜け出し、外の世界へと拡散し始めた。

占星術師たちの危機感

フオウ国の【星読衆】と呼ばれる占術師たちは、星の動きから未来を予測していた。しかし、その結果は凶事を示しており、西天の空には騒乱の兆しが現れていた。占星術の精度が乱れ始め、龍脈の異常な活性化が原因ではないかと考えられた。

この現象は単なる異常ではなく、むしろ「世界が本来の状態に戻ろうとしている」のではないかという仮説が浮かんだ。もしそれが正しければ、過去の記録の全てが誤りであったことになり、占術の基盤が崩れることを意味する。

占術師たちは新たな記録をつけ直す必要に迫られたが、その作業量の膨大さに絶望し、一斉に転職を願う声を上げた。しかし、彼らの立場では転職すら許されず、絶望の中で再び星を読み続けるしかなかった。

村の中央では、半裸で褌一丁の男が柱に括りつけられ、白装束の神官たちが四方に焚かれた護摩壇の火を蝋燭に移し、その蝋を男に垂らしていた。男は身悶えながらも決して叫ぶことなく耐え、村人たちは笛と太鼓の音に合わせて楽しげに踊っていた。

ゼロスとアドは茂みからその光景を眺め、あまりの異様さに疑問を抱く。男はどこか恍惚としており、まるでこの責め苦を堪能しているように見えた。彼は単なる生贄ではなく、喜びを感じる真性の変態に思えた。二人が呆気に取られる中、踊り疲れた老人が近くに座り込むのを見つけ、ゼロスは情報を得るために話しかけた。

祭りの由来と奇妙な変化

ゼロスが祭りについて尋ねると、老人は「豊穣祈願祭」だと答えた。本来、この儀式では生贄が火に飛び込むことで穢れを祓う習わしだったが、焼死者が続出したため、安全策として蝋燭の熱に耐える形へと変更されたという。

しかし、毎年この役を担うゴンジロウという男は、明らかに苦しんでいるのではなく楽しんでいるようだった。老人は「彼は真面目に試練を受けており、誰よりも早く険しい山を登る努力をしている」と言うが、ゼロスは「それは快楽のためではないか」と指摘した。最終的に、ゴンジロウを役職から外すことを提案し、老人も長老たちと相談すると約束した。

祭りの最高潮と異様な結末

祭りが進むにつれ、ゴンジロウの歓喜の声はますます大きくなり、ついには絶頂の叫びが畑の中央に響き渡った。村人たちは表面上は何事もなかったかのように振る舞っていたが、誰もが心の中では彼の正体を完全に理解した。こうして、村人全員がゴンジロウの変態性を知ることとなった。

宴会への招待と村のもてなし

祭りの後、ゼロスとアドは村の打ち上げに招かれ、地酒や漬物、新鮮な野菜の鍋を振る舞われた。村人たちは旅人に対して非常に親切で、ゼロスもカニやエビを提供し、宴会の料理をより豪華にした。

村人たちとの会話の中で、この地では塩が役人によって独占されており、自給できないために高価な代物となっていることが判明した。また、近年は野菜の成長が速くなっているが、人口が少なく労働力が不足しているため、収穫作業に苦労しているという問題も浮かび上がった。

フオウ国の歴史と社会構造

ゼロスは村人たちからフオウ国の成り立ちを聞いた。この国は戦乱を逃れた人々が移住し、新天地として築いた歴史を持つ。国の統治は皇家を中心に公家や武家が担っており、身分制度が固定化されている。名のある武家以外の侍は素浪人のような扱いで、一般的な斬り捨て御免のような風習はないという。

また、神職の立場は一般市民に近く、彼らは魔物退治や医療活動、教育にも従事している。神宮は学問の場としての役割も果たしており、民との共存が図られていることが分かった。

アドの酒の失敗と村人の酒文化

村人たちは陽気で、次々と酒を勧めてくる。ゼロスは慎重に飲んでいたが、アドはついに酔い潰れてしまった。村の酒はアルコール度数が高く、【状態異常無効】スキルすら無効化するほどの強烈なものであった。

ゼロスは、魔導技術を用いてより美味い酒を作ることも考えたが、錬成技術による酒は風情がなく、自然熟成には敵わないと結論付けた。また、村人たちは塩不足だけでなく、街までの移動が困難であること、さらには海沿いには魔物が多く危険であることを話してくれた。

村の社会構造と侍の役割

村では、侍とは万屋組合に属する者を指すらしく、彼らは傭兵のような存在であった。しかし、村にはその侍を雇う資金がなく、自力で魔物の対策をするしかなかった。ゼロスは【ソード・アンド・ソーサリス】に存在する【キイノクナ国】と似た社会構造を思い浮かべたが、フオウ国は異なる文化を持つようであった。

村人たちは、侍と武家の違いを明確に説明できなかったが、権力を持つのは皇家や名のある武家であり、神職は互助組織のような立場であることが分かった。ゼロスは、この情報を元に今後の立ち回りを考えることにした。

呪われた刀の目覚め

一方、ある男が森の中を彷徨っていた。彼の体は異様なほどの筋肉に覆われ、その動きは自らの意思ではなく、右手に癒着した刀によって操られていた。刀には意志が宿り、男をひたすら導いていた。

その刀は異常な存在であり、生物の本能が拒絶するほどの呪いを宿していた。男の肉体と刀は魔力の間欠泉に到達し、そこから魔力を吸収し始めた。すると、刀から呪詛が放たれ、異形の存在が次々と生まれ出た。

異形は異様な形態を持ち、次々と増殖しながら結界の突破を試みた。そして、小さな個体がついに結界を抜け出し、外の世界へと拡散し始めた。

占星術師たちの危機感

フオウ国の【星読衆】と呼ばれる占術師たちは、星の動きから未来を予測していた。しかし、その結果は凶事を示しており、西天の空には騒乱の兆しが現れていた。占星術の精度が乱れ始め、龍脈の異常な活性化が原因ではないかと考えられた。

この現象は単なる異常ではなく、むしろ「世界が本来の状態に戻ろうとしている」のではないかという仮説が浮かんだ。もしそれが正しければ、過去の記録の全てが誤りであったことになり、占術の基盤が崩れることを意味する。

占術師たちは新たな記録をつけ直す必要に迫られたが、その作業量の膨大さに絶望し、一斉に転職を願う声を上げた。しかし、彼らの立場では転職すら許されず、絶望の中で再び星を読み続けるしかなかった。

第八話  おっさん、街を目指して山道を行く

旅立ちと山越え

ゼロスとアドは、宿を借りた村を出発し、北大陸へ戻るために【ギズモの街】を目指した。前夜の宴会で飲み過ぎたため、二日酔いのまま村を後にしようとしていたが、村人たちは親切に見送ってくれた。二人は感謝の意を示しながらも、旅を急ぐため山道へと踏み出した。

しかし、ゼロスの突然の疾走によって、山越えマラソンが開始された。険しい道をひたすら駆け抜け、五つの山を越えた後も、道は続いていた。途中で魔物の断末魔が響くこともあり、旅の過酷さが窺えた。

陰陽師たちの追跡

その頃、【フオウ国】の陰陽寮に属する陰陽師たちが、異質な気配のする森の中を駆けていた。彼らの目的は、妖刀の分身体を封印し、災厄を食い止めることであった。呪符を準備し、慎重に進む中、瘴気の濃度が増していき、彼らは結界を張る準備を整えた。

妖刀の影響を受けた者は、理性を失い、異形の【妖鬼】へと変貌していた。彼らは結界内でその妖鬼を捕縛し、強力な呪術で討滅した。しかし、問題は妖刀そのものであった。刀は砕かれたが、完全に封じることはできず、分身を生み出し続けていた。陰陽師たちは人手不足に悩まされながらも、この災厄の根本である本体の捜索を続けていた。

妖刀の出自と問題点

この妖刀は、二百年前に旧皇都の宝物殿から発見されたものであった。記録によれば、百五十年前に【アキノワダツシマ国】の小藩から贈答品として持ち込まれたが、詳しい経緯は不明だった。その後、偶然発見され、皇都へ極秘裏に運ばれるはずだったが、盗賊に奪われたことで各地に分身が拡散し、甚大な被害を引き起こした。

陰陽師たちは、妖刀の分身が本体に戻る性質を利用しようと考えたが、その間に民間人の犠牲が増えるリスクがあったため、確実に一本ずつ処理する方針を取っていた。しかし、その数は三桁を超え、事態は収束の気配を見せなかった。

山道での異変と魔導文明の影響

ゼロスとアドは、ひたすら山道を進んでいた。道中、小石が宙に浮いている現象に気付き、それが【浮遊岩】の影響であることを悟る。これは自然界の魔力が復活しつつある兆候であり、かつての魔導文明の影響が再び表れる可能性を示唆していた。

しかし、浮遊岩の影響で過去の遺物が浮上し、飛空船や浮遊大陸の残骸が地上に落下する危険性もあった。ゼロスは、これらの処理を邪神に任せられないかと考えたが、対価の問題があり、簡単には頼めないことを理解した。

過去の秘密と攻撃衛星の存在

ゼロスは、かつて【メーティス聖法神国】の勇者召喚魔法陣を破壊したのが衛星軌道上の攻撃兵器であったことを示唆した。アドは、その意図が偶然ではなく意図的なものであった可能性を指摘し、ゼロスが国家レベルの大惨事を引き起こしたことを疑った。

さらに、攻撃衛星は未だに稼働しており、その情報が外部に漏れれば狙われるリスクがあるため、アドは否応なく共犯者として扱われることになった。ゼロスはこの秘密を墓場まで持っていくように釘を刺し、アドは絶望するのだった。

巨大アメフクラガエルとの遭遇

旅を続ける二人は、森の中で【アメフクラガエル】に似た巨大生物を発見した。その愛らしい外見とは裏腹に、全長六メートルもあり、ホーンラビットを丸呑みする捕食者であった。その驚異的なサイズと捕食行動に、二人は生物の常識が通用しないことを再認識する。

さらに、この巨大カエルは魔物としての特性を持ち、高速回転しながら迫ってきた。その圧倒的な威圧感と防御能力により、ゼロスとアドは逃げるしかなかった。しかし、山道の悪路が逃走を妨げ、二人は迎撃の策を考えざるを得なくなった。

迎撃と想定外の展開

ゼロスは、障壁魔法【白銀の神壁】を使い、カエルの突進を防ぐ作戦を立てた。しかし、相手の力が想定を超えていたため、二人は反動で大きく弾き飛ばされる結果となった。こうして、巨大アメフクラガエルとの戦いは思わぬ形で決着を迎えたが、彼らの旅はまだ続いていた。

第九話  おっさんとアド、少年と出会う

ゴブリン討伐と少年の異常な執念

原生林の中、一人の少年がゴブリンの小集団を次々と斬り伏せていた。その剣筋は長年の修練を積んだ者に匹敵し、彼の瞳には強い殺意が宿っていた。ゴブリンの血が飛び散る中、少年はさらなる強敵を求めていた。

しかし、彼の執念は視野を狭める結果となり、周囲への警戒を怠っていた。その隙をつき、音もなく接近していたのは【黒大狼】──巨大な魔狼であった。その存在に気づいたときには、すでに逃げられる状況ではなかった。

黒大狼との遭遇と窮地

黒大狼は、他の魔物が仕留めた獲物を食うことをしない気高い獣であり、自らの手で狩ることを信条としていた。そのため、目の前の少年を自らの獲物と認識し、襲いかかる態勢をとった。

少年は、唯一の勝機として魔狼の懐へ飛び込み、喉元を狙う決死の作戦を決めた。しかし、踏み込みすぎたために刃が届かず、黒大狼の勢いに押されてしまった。焦った彼はとっさに黒大狼の首元へしがみつくが、そのまま獣の激しい動きに翻弄され、振り落とされないよう必死にしがみつき続けることになった。

暴走する魔狼と絶望的な状況

黒大狼は少年を振り落とすために暴れ回り、全速力で森林を駆け抜けた。木々の間を跳躍し、加速を続ける黒大狼の動きは、少年にとって耐え難いものであった。しがみつく力が次第に衰え、体力の限界が近づく中、彼は何とか頭の上に乗ることに成功する。しかし、刀の一撃は浅く、決定打にはならなかった。

激昂した黒大狼はさらに速度を上げ、アクロバティックな動きを繰り返しながら森を疾走した。その暴れっぷりに少年はもはや悲鳴すら上げられず、振り回されるまま、ついに体力が尽きて振り落とされる。

ゼロスとアドとの遭遇

偶然にも、少年が吹き飛ばされた先にはゼロスとアドがいた。巨大アメフクラガエルとの戦いを終え、広大な森を抜けて休息をとっていた彼らの前に、空から少年が降ってきたのである。ゼロスが間一髪で彼を受け止めると、黒大狼もまた敵意を向け、今度は二人に狙いを定めた。

ゼロスは戦闘をアドに任せ、少年には食事を勧めるという悠長な対応を見せた。少年は戸惑いながらも、強引に口に押し込まれたカニの味に感動していた。その間にも、黒大狼とアドの戦闘が始まろうとしていた。

黒大狼との決着

黒大狼は、本能的にアドの圧倒的な実力を察し、次第に後退していった。しかし、背を向けて逃げることは即死を意味する。追い詰められた魔狼は、最後の賭けに出るべく突進を開始した。

アドはその動きを冷静に見極め、一閃のもとに黒大狼の首を斬り落とした。鋭い太刀筋により、魔狼は即死し、地面に沈んだ。少年はその技の鮮やかさに驚愕し、ゼロスは平然と食事を続けながら解説をしていた。

静かに更ける夜

アドは黒大狼の解体を押し付けられ、ゼロスと少年は引き続き食事を楽しんでいた。ゼロスは食材の保存や調理について語り、カニ料理の話題で盛り上がる中、アドは苦々しい表情を浮かべながら黙々と作業を進めた。

こうして、不意の遭遇を経て、奇妙な三人の夜が更けていくのだった。

第十話  おっさん、ギズモの街に辿り着くも、事件の匂いを嗅ぎとる

黒大狼の解体とタカマルの律儀さ

ゼロスとアドは、黒大狼との戦闘に巻き込まれた原因であるタカマルと共に、焚き火を囲みながら食事を取っていた。タカマルは自身の戦いの経緯を語り、運悪く魔狼に遭遇し、必死に生き延びるためにしがみつくしかなかったことを明かした。

黒大狼の素材は希少であり、売却すれば高値がつくものであった。しかし、タカマルは戦闘の決着をつけたのがアドであることを理由に、所有権を譲るべきだと固辞した。彼の律儀さは東方の文化によるものであり、義理を通す姿勢が際立っていた。

黒大狼の素材と魔力減衰病の治療薬

黒大狼の素材には防具や薬の材料としての価値があり、とりわけ心臓や胆のうは高価な薬の原料になるとされていた。ゼロスはこの魔狼が進化しかけのダイアウルフであった可能性を指摘し、素材の価値がさらに上がる可能性を示唆した。

また、黒大狼の素材が「魔力減衰病」の治療に役立つかもしれないという話題が持ち上がった。この病はNPCの子供が一定の年齢から突然魔力を失い、生活が困難になるものだった。通常、治療には高魔力を持つ魔物やドラゴンの素材が必要とされるが、黒大狼の素材が代用できるかどうかは試してみる必要があった。

奇妙な魔物「モッチリヤカングチ」

会話の中で、草原に点在する謎の魔物についての話題が上がった。タカマルはそれを「モッチリヤカングチ」と呼び、湯気を出し続ける不気味な存在であると説明した。見た目こそ柔らかいが、味は極めて不快であり、口に入れただけで死ぬほどの毒性を持っていた。

さらに、この魔物は産卵期になると体が縦に割れ、中から無数の卵が現れるという生態を持っていた。そのため、春先には大量に処分する必要があり、侍たちが駆り出されることが恒例となっていた。処分方法として焼却が用いられるが、悪臭が酷く、周囲に被害を及ぼすこともあるという。

ギズモの街への出発と防衛の問題

翌朝、ゼロスとアドはギズモの街を目指すこととなった。タカマルは自宅があるため、到着後に泊まるよう申し出たが、二人は礼を言われるほどのことではないと断った。しかし、タカマルは頑なに恩を返そうとし、押し問答の末、最終的にゼロスたちは彼の家に泊まることを受け入れることになった。

ギズモの街は巨大な正方形の城塞都市であり、平安京を思わせる整然とした造りだった。しかし、防衛面では問題が多く、特に空からの襲撃に対する備えが不十分であった。ゼロスとアドは、街を守るために長弓を用いた対空攻撃が行われることを聞き、スキルの影響で通常の弓でも高威力を発揮することを理解した。

タカマルの道場と不自然な状況

タカマルの自宅に到着すると、そこは広大な敷地を持つ立派な道場であった。しかし、門下生が一人もおらず、道場として機能していない様子が見受けられた。さらに、床には拭い切れない血痕が残っており、ゼロスはその異様な状況に疑問を抱いた。

タカマルの年齢や修行の厳しさを考慮すると、彼が黒大狼との戦いに身を投じたのには何か理由があると推測された。ゼロスは遠慮なく質問を投げかけ、タカマルの家族に関する問題を探ろうとした。

姉・グレン・ミヤビの登場と暴力的な再会

タカマルが事情を語ろうとした矢先、道場の玄関から一人の少女が現れた。彼女は大正時代の女学生のような装いをしており、日本人形のような美しい髪を持っていた。しかし、左腕を失っており、包帯で全身を巻かれた痛々しい姿だった。

ミヤビはタカマルが家を三日間空けたことに激怒し、彼の顎に強烈なアッパーカットを叩き込んだ。さらに、容赦なくマウントポジションを取り、拳を振り下ろし続けた。ゼロスとアドが必死に止める中、彼女は介護を放棄したタカマルへの不満をぶちまけ、弟の無責任さを責め立てた。

エリクサーの効果とミヤビの異様な発言

ゼロスはミヤビの傷が開いていることに気づき、自作のエリクサーを差し出した。彼女は半信半疑で薬を飲んだが、即座に痛みが消え、驚愕の表情を浮かべた。アドはエリクサーの価値を知っていたため、ゼロスが惜しげもなく使用したことに感嘆した。

しかし、ミヤビは突如として「お礼として身体で支払う」と言い出し、ゼロスとアドを困惑させた。彼女は冗談ではなく本気である様子を見せ、二人は必死に否定した。さらに、アドの背後に妻の生き霊が見えているという不吉な発言まで飛び出し、二人は戦慄した。

道場で起きた事件と妖刀の影響

ゼロスはミヤビの左腕が失われた経緯を問い、彼女はついに真相を語り始めた。道場で大量の血が流れた原因は、彼女の父・グレン・ゲンザが「妖刀」に魅入られ、娘に斬りかかったことによるものだった。

妖刀とは、怨念や呪いによって変質した刀のことであり、持ち主を操ることがある。ゼロスとアドは過去に妖刀による災厄を目の当たりにしており、その危険性を熟知していた。場合によっては国を滅ぼすほどの脅威となることもあり、今回の事態が単なる家庭の問題では済まない可能性があった。

ミヤビの語る過去は、道場だけでなく街全体に影響を及ぼす事件へと繋がっていく気配を見せていた。

第十一話  ミヤビさんの災難

剣豪グレン・ゲンザと妖刀の入手

グレン・ゲンザは、【アキノワダツシマ国】に代々伝わる剣術流派【紅蓮新刀流】の免許皆伝であり、【ギズモの街】の領主から剣術指南役を任されるほどの剣豪であった。性格は豪放磊落で、剣術に対しては真摯であり、多くの門下生からも信頼されていた。彼は街の守備隊や警邏を担う同心、与力とも広く交流を持ち、住民からも親しまれていた。

しかし、そんなゲンザが二十日ほど前、釣りに出かけた帰りに妖刀を持ち帰った。襲ってきた盗賊を返り討ちにした際、あまりにも見事な刀だったため、興味を惹かれて拾ったのだという。その刀は異様なまでに美しく、透明度の高い湖面のような刀身を持ち、一見すると御神刀のように見えたが、銘が刻まれておらず出所は不明だった。

妖刀の影響とゲンザの異変

妖刀を手に入れて以降、ゲンザの様子は次第に変化していった。日が経つごとに刀を眺める時間が長くなり、ミヤビはその魅力に潜む危険を感じるようになった。さらに、彼は刀を片時も手放さなくなり、風呂や厠にまで持ち込むほどの執着を見せた。

次第に彼の言動は奇怪なものとなり、夜中に独り言を叫びながら苦悶の表情を浮かべることが増えていった。「俺に入り込んでくるな……貴様の思い通りになど絶対に……」といった言葉を口にするようになり、精神的な異変が顕著になったのである。

妖刀に支配された父との戦い

ある夜、ミヤビは道場で一人、父から妖刀を奪う方法を模索していた。しかし、彼の執着は異常であり、奪う隙すら見つからなかった。そんなとき、背後に異様な気配を感じ、咄嗟に木刀を掴んで振り返った。

そこにいたのは、変わり果てた父・ゲンザだった。彼の右半身は異形と化し、まるで鬼のように変容していた。右腕は異様に肥大し、まるで丸太のような太さになっており、その姿は人間とは思えぬ異様さだった。手に持つ妖刀の鍔あたりからは半透明の触手が伸び、ゲンザの肉体へと侵入していた。

ゲンザは意識を失う寸前のような状態で、「逃げろ……ミヤビ……」と訴えたが、次の瞬間、妖刀の支配力が上回り、彼は凶刃を振り下ろした。ミヤビは避けることができず、木刀で受け流そうとしたが間に合わず、左腕を斬り落とされてしまった。

ゲンザの失踪とミヤビの負傷

激痛の中で意識が遠のくミヤビを前に、ゲンザは最後の理性を振り絞り、妖刀の支配に抗うようにして道場から姿を消した。タカマルが異変に気づき、道場へ駆けつけると、姉が血溜まりの中で倒れていた。彼は混乱しながらもミヤビを背負い、街中を駆け回った。

しかし、その過程で何度も転倒し、壁や街路樹にぶつかり、防火用の水桶を倒すなど散々な目に遭いながら、診療所へ辿り着いた。その間、ミヤビは完全に意識を失っており、結果として新たな打撲や骨のヒビまで負うこととなった。

妖刀の分身体と新たな脅威

ミヤビは父・ゲンザを止める決意を固めていた。しかし、ゼロスとアドが指摘したのは、妖刀がただの呪物ではなく、より危険な存在へと変異している可能性であった。すでに各地で辻斬りや押し込み強盗が増えており、妖刀が「分け御霊」を生み出している可能性が高まっていた。

もし本体が【禍霊型】の妖刀に変質しているならば、単なる討伐では解決しない問題となる。妖刀は倒しても新たな依り代に移り続けるため、本体を見つけて完全に破壊する必要があった。

剣士の覚悟と修羅道の道

ミヤビは妖刀を斬ることに迷いはなく、「父を助けるよりも潔く斬るべきでは?」とさえ口にした。タカマルは困惑し、姉の冷徹な決意に衝撃を受けたが、ゼロスとアドは「それも一つの選択だ」と認めた。

ミヤビにとって剣とは、単なる武器ではなく、生と死の狭間で生きるための術であった。彼女は迷いなく修羅道を進む決意を固めており、その精神性はゼロスの知るハイ・エルフの剣士たちとも共通するものがあった。

タカマルの鍛錬とゼロスの料理

翌日、アドはタカマルに剣術の指導を行うこととなった。タカマルの剣技は基礎が整っていたが、実戦では甘さが目立ち、特に攻撃が素直すぎることが問題であった。アドは「虚実を交えた攻撃を仕掛けろ」と指摘し、タカマルは必死に修正を試みた。

その間、ゼロスは中庭で朝食を作っていた。彼が作ったのはエビとカニを使ったチャーハンと濃厚なスープであった。ミヤビは最初こそ戸惑ったが、一口食べるとその美味さに圧倒され、無心で食べ続けた。

義手の製作と危険な発想

食事を終えたゼロスは、ミヤビに義手の製作を提案した。彼はゴーレム技術を応用して魔力駆動式の義手を作ることを考えており、「仕込み刀や衝撃波を放てる仕様にする」と提案した。

ミヤビは即座に賛同し、「ぜひお願いします」と目を輝かせた。タカマルとアドはそのやり取りに戦慄し、彼女の戦闘狂的な性格を改めて実感した。

こうして、ゼロスとミヤビの危険な技術開発が始まることとなった。

第十二話  アド、情報収集の手本を見せる

ゴーレム技術の分類

ゴーレムの組成技術は、いくつかのタイプに分類されていた。
まず、簡易タイプは、石や岩塊を魔石の魔力ラインで繋ぎ、単調な動きしかできないが、安価で量産しやすい。しかし、鈍足かつ不器用で、力作業以外には使い道がなく、魔力が枯渇するとすぐに機能停止する。

次に、リビングアーマータイプは、騎士鎧に術式を転写し、一定の命令系統で稼働する。簡易タイプより器用であるが、命令に忠実すぎるため融通が利かず、場合によっては製作者にも襲いかかる危険があった。学習型ではあるが、達人レベルの強さには至らず、稼働時間も短いため、主に王城の宝物庫の警備に用いられていた。

さらに、ドールタイプは球体関節を用いた構造で、動力の魔石に加えて、頭部には主人の命令を判断する術式が込められた簡易型思考クリスタルが埋め込まれている。これにより六歳児程度の知能を持ち、経験を積みながら学習する。しかし、希少な金属や魔物素材を多用するため、コストが高すぎて量産には向かなかった。

最後に、ホムンクルスタイプはゴーレム技術から派生したものの、生物学に基づく人工生命体や魔法生物に分類される。そのため、国によっては命の創造として禁忌とされ、公にはできない技術であった。

ゼロスの義手開発計画

ゼロスが今回求めていたのは義手であった。
左腕を欠損したミヤビのために製作するものだが、彼が選択したのはドールタイプである。しかし、ゼロスが普通の義手を作るはずもなく、彼は武器としての機能を持たせる方向へと発想を広げていった。

彼は振動衝撃波の威力に魅力を感じたが、魔石の消耗が激しく、義手自体へのダメージが懸念された。内蔵武器として匕首を仕込むことは決まっていたが、そこから発想が脱線し、遠距離武器の搭載を考えるようになった。しかし、銃器は技術的にまだ早すぎ、装置を組み込むスペースにも限界があったため、別のアプローチを模索することになった。

また、ミヤビの剣技を観察した結果、彼女が両手利きである可能性が高いことに気づいた。訓練による矯正かもしれないが、左手でも自然に剣を扱うことができるなら、義手の機能を最大限に活かせる可能性があった。そのため、ゼロスは剣士にとって扱いやすい仕様にする方向で設計を進めることにした。

義手単体では武器の搭載が難しく、外部装備と連動させる必要があると判断し、ゼロスは鍛冶場に火を入れ、本格的な製作に取り掛かった。

ギズモの街での情報収集

一方、タカマルとミヤビ、アドの三人は、妖刀に取り憑かれたグレン・ゲンザの行方を追って、ギズモの街で情報収集を行っていた。父を止めるため、そして妖刀を破壊するために、彼らは街の商人たちに声をかけていた。しかし、ミヤビとタカマルの尋ね方は問題があった。

「全裸で刀を持った不審者を見なかったか?」という質問を繰り返していたため、まともな情報が得られるはずもなかった。むしろ、変態の目撃情報を集めているような状態になり、街の人々は困惑していた。

これを見かねたアドが聞き込みを代わると、すぐに有力な情報を得た。商人によると、東の廃村周辺で「鬼」が目撃されており、その鬼は全裸だったという。全裸という共通点から、彼らはゲンザの可能性が高いと考え、さらに情報を集めた。

しかし、詳細を調べるうちに、目撃された「鬼」は奇妙な行動を取っていることが分かった。旅人を追いかけながら謎の踊りを踊り、さらには「俺ヲ見ロォ!」と叫びながら徘徊していたのだ。妖刀の影響とは思えぬ異様な行動であり、情報を整理するほどに「妖刀がゲンザを乗っ取ったのではなく、ゲンザが妖刀を乗っ取った可能性」が浮上した。

陰陽寮の対応と妖刀の変質

その頃、帝国の【陰陽寮】では、百五十年前に封印された妖刀の騒動が再び発生したことにより、祓魔師たちが対応に追われていた。この妖刀は、かつて多くの命を吸い、戦乱を引き起こした強力な呪具であった。

封印を施した陰陽師の記録には、「この刀は人を憎み、善悪を問わず滅ぼそうとする呪いが込められている」と記されていた。封印のために多くの陰陽師が犠牲となり、やっとの思いで封印した厄介な代物であったが、何者かによって封印が解かれた。

妖刀は分身体を生み出し、各地で暴れていたが、本体の行方は掴めていなかった。しかし、呪術的な視点から見ると、妖刀はすでに「別の存在へと変質しつつある」と判断されていた。もはや単なる刀ではなく、強力な妖魔へと変貌を遂げる可能性が高まっていた。

ゼロスの義手完成と新たな武器

街での情報収集を終えたアドたちが道場に戻ると、ゼロスは三日間の徹夜作業を終え、義手を完成させていた。彼の手に握られていたのは、まるで本物の腕と見間違うほど精巧な義手であった。

ミヤビが装着すると、その義手はまるで元の腕と変わらぬ感覚で動かすことができた。さらに、ゼロスは「外部装甲腕」という追加装備を用意していた。

その外部装甲は、蛇腹関節を備え、異様なまでに可動域が広く、先端には鋭い爪が備えられていた。その爪はオリハルコンをベースに、ヒヒイロガネとミスリルを合金化したものであり、岩をも容易く切断する強度を誇っていた。

ミヤビは試しに庭石を斬ったが、抵抗なく切断され、さらに拳で砕いてみせた。その威力を実感し、彼女は「これなら父を討てる」と満足げに笑った。

全裸武士ゲンザ討伐の決意

集まった情報を整理すると、妖刀に支配されたはずのゲンザは、むしろ妖刀を支配し、「裸道」という独自の思想を広めようとしていることが分かった。彼は人々に全裸の開放感を説き、旅人すら裸にしようとしていた。

ミヤビは「一族の恥」として、もはや父を助けるつもりはなく、討つ決意を固めた。タカマルも困惑しながらも、姉の意志を止めることはできなかった。

こうして、ゲンザを討つための戦いが始まることとなった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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