読んだ本のタイトル
アラフォー賢者の異世界生活日記 ZERO -ソード・アンド・ソーサリス・ワールド- 2
著者:寿安清 氏
イラスト:ジョンディー 氏
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
あなたのお命、頂戴いたします! まぁゲームでの話ですけど
人気VRRPG【ソード・アンド・ソーサリス】の上位プレイヤーであるアラフォーおっさん【大迫聡】。彼がいつものようにレベル1800オーバーの大賢者【ゼロス・マーリン】となって冒険を楽しんでいると、パーティー【趣味を貫き深みに嵌まる】のリーダー・ケモさんから「東の島国で大規模な犯罪クランを潰すんだけど参加する?」というメッセージが届く。特に急ぎの用事がなかったゼロスは、参加するかは行ってから考えることにして、お気楽観光気分で【キイノクナ国】へと向かうのだった――。
時代劇さながらの世界が広がる東方の国を舞台に、必殺の大捕物が描かれる第二巻。女郎屋【天華楼】を拠点に活動する個性強すぎ女忍者パーティー【影六人】が新たに参戦! ゼロス達【殲滅者】に引けを取らない濃ゆ~い活躍に注目♪
感想
『アラフォー賢者の異世界生活日記 ZERO 2』は、VRRPG「ソード・アンド・ソーサリス」の中でアラフォーのおっさん、大迫聡(ゲーム内でのキャラクターネームは、ゼロス・マーリン)の冒険(?)やらかし(?)を描いた物語であった。
本書では、ゼロスが仲間たちと共にプレイヤーがNPCを利用して組織した。
大規模な犯罪クランを討伐するミッションに挑む。
彼らは、時にユーモラスでありながらも、真剣に戦いに臨む姿が印象的であった。
物語の中で特に印象に残ったのは、アンズとその姉たちの活躍であった。
彼女たちは弱い立場の女性を守るために、命がけで敵と対峙し、時には暗殺稼業のような役割を果たしていた。
彼女たちの絆と覚悟が描かれており、そんな中で末の妹のアンズへの家族愛の深さはドン引きな領域で、それに冷静にツッコミを入れるアンズが美味しい役割をしていた。
また、ケモさんが彼女たちにちょっかいを出し、姉たち、他の神々が修羅と化すシーンでは、高次元生命体を巻き込んでのひと騒動に世界滅亡の危機を感じながらも神々がリラックスするために、このゲーム世界を利用していた裏設定を知った。
さらに、本書では現実と仮想世界が交錯する場面が多く、ゲームの世界に潜む秘密や倫理的な疑問が浮かび上がる。
プレイヤーたちが単なる遊びとしてではなく、真剣にゲームの世界に向き合い、自分たちの行動に責任を持つ姿が描かれている点が印象深い。
犯罪クランを討伐する過程でのチームワークや戦術、時には裏切りや陰謀も絡み合い、読み応えのある展開が続く。
うん、これ必殺仕事人のオマージュだな。
全体として、『アラフォー賢者の異世界生活日記 ZERO 2』は、ゲームの世界の中で展開される冒険と人間ドラマを巧みに描いた作品であった。
登場人物たちの個性的なキャラクターと、その行動によって引き起こされる物語の展開が魅力的であり、最後まで目が離せない一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
同シリーズ
アラフォー賢者の異世界生活日記シリーズ
小説
漫画
その他フィクション
備忘録
プロローグ おっさんの平穏なゲームプレイの裏側で
【ソード・アンド・ソーサリス】は、五感で体感できることで知られる唯一のMMORPGである。このゲームでは、住民やモンスターが非常に精巧に作られており、現実の人間や生物と見間違うほどのリアリティーが追求されていた。他のゲームと比較して、圧倒的な自由度を誇り、プレイヤーは武器や防具などを自由に作成することができた。ただし、現代兵器の作成には制限があり、試みるとアバターがフリーズする仕様があった。しかし、特定のNPCは銃や大砲を量産できるようで、それらは技術を持った大国に限定されていた。
ゲームの世界では、プレイヤーの行動次第で国同士の戦争が起きたり、文明の発展がNPCの生活に影響を与えるなど、リアルタイムで世界が変化する特徴があった。このような設定から、【もう一つの世界】というコンセプトが誇張ではないことが示されていた。
ある日、森の中で不機嫌そうに歩くゼロスとガンテツというプレイヤーがいた。彼らは【殲滅者】という廃プレイヤーパーティーのメンバーであった。彼らが不機嫌だった理由は、近くで大声で歌っているパーティーのリーダーの存在であった。彼の歌は酷く、周囲のプレイヤーたちは迷惑そうな顔をしていた。
その後、熱唱男が気づかぬうちに巨大なモンスターが現れ、彼を襲撃した。モンスターの名は【ナイトメア・ドラゴニュス】であり、その攻撃で熱唱男は一瞬で命を落とした。他のプレイヤーたちはパニックになったが、ゼロスとガンテツが助けに入った。ガンテツは自爆攻撃でモンスターを倒し、周囲のプレイヤーたちを救った。
救助されたプレイヤーたちは感謝の意を示し、世界樹のエリアから退却した。ゼロスとガンテツもまた旅を続け、道中で情報を共有しながら先を急いだ。後に、熱唱していたリーダーは仲間から解雇され、一人で去っていったという。この出来事は、他のプレイヤーに対する良い教訓となったであろう。
最上位管理神【ケモさん】は、モニターを見ながら呆れた表情をしていた。彼は上位プレイヤーたちの騒動に参加し、人々に迷惑をかける愉快犯であり、また「ケモミミ」の世界を築こうとする人物であった。しかし、彼の表情は真面目であり、異次元での生体調整の進行状況について尋ねていた。
この異次元では時空間の歪みが発生し、その原因を探るため、高次元生命体たちは観測を開始し、システムの誤作動を突き止めた。彼らは、世界の摂理が歪んでいるため、送り込む候補者の調整を行い、生存能力を高める必要があると判断していた。しかし、人手不足や頻繁な事象の変化により、作業は難航していた。
天使たちはこの作業に対して不満を抱えていたが、ケモさんはそれを理解し、感情を持つことの意義を説いた。彼らは、生命体のように振る舞うことで、感情を理解し、行動することができるようになっていた。また、神々や天使たちが労働環境の改善を求める中で、ケモさんは労働基準監督署への訴えを支持し、不正を行っていた管理者たちが処罰を受けることを提案した。
その後、複数の天使たちが労働基準監督署に不正を訴えたことで、抗争が発生し、ケモさんが介入して労基側が勝利した。不正を行っていた神々は、拷問の後、休みなしの重労働を命じられることとなり、これが彼らへの当然の処罰であるとされた。
第一話 テッド・デッドという男
【テッド・デッド】という名のプレイヤーは、パーティー【趣味を貫き深みに嵌まる】の一員でありながら、自己中心的で他人の幸せを憎む性格であった。彼は【ソード・アンド・ソーサリス】内でカップルを見かけると「試練」と称して邪魔をし、PK行為を行っていた。
テッドはゾンビ軍団を使い、他のプレイヤーをモンスターの元に誘導して倒すことで、自身のレベリングを行っていた。しかし、その行為が賞金稼ぎたちのターゲットになるリスクを伴うことに気づき、一度のPK行為で姿を見られたり生存されたりすると、手配書が回り、賞金額が加算されていく状況にあった。彼はPK行為の効率が悪いと感じつつも、自分の行動を振り返り始めていた。
テッドはプレイスタイルの変更を考えたが、仲間であるゼロスやガンテツ、カノンらが実験を理由に攻撃してくることを恐れていた。彼らは非常に個性的で、彼にとっては厄介な存在であった。彼はPK職に転向することで、仲間たちからの攻撃対象となることを避けたいと考えたが、パーティーからの脱退もまた危険を伴う決断であった。
最終的にテッドは、自分の置かれた状況の厳しさを再認識し、パーティーとの関係を断つことが難しいと悟った。彼は仲間たちの非常識な行動や要求に直面しながらも、自身の歪んだ性格に気づくことはなく、ただその状況に不満を抱き続けていた。
テッド・デッドとしてゲームをプレイしていた向田祥は、現実世界でヘッドマウントディスプレイを外し、散らかった自室に戻った。彼の部屋は清潔とは言い難く、散乱したゴミや埃をかぶったゲーム機が無造作に置かれていた。
祥は窓から外を覗き、登校中の幼馴染で初恋相手である唯香の姿を見つけた。小学校時代から唯香に惹かれていた祥は、彼女が自分に好意を抱いていると勘違いしていた。この思い込みは中学、高校と進むにつれエスカレートし、妄想による記憶の改竄を繰り返していた。
高校卒業後、祥は唯香のいる高校に再受験し、彼女のストーカーとなった。ある日、唯香に再び接触したが、彼女は彼を全く覚えておらず、祥の妄想は完全に打ち砕かれた。その後、唯香の異常な言動に恐怖を覚えた祥は、人目を避ける生活を送り、現実から逃避するようになった。
現在、祥は唯香と彼女の恋人である安藤俊之を窓から見送りながら、逆恨みの念を募らせていた。現実と妄想の区別がつかなくなっていた彼は、ゲーム内でテッド・デッドとして活動している時だけが最も理性的であったと言えるかもしれない。
第二話 大観音寺紗季、あるいはカノン・カノンの事情
【ソード・アンド・ソーサリス】には、【白の殲滅者】と呼ばれるプレイヤーがいた。彼女の本名は【大観音寺紗季】で、大学院を短期間で卒業し、大手製薬会社の研究職員として働いていた。紗季は研究以外には興味がなく、特に薬学に没頭していた。ゲーム内でも魔法薬の研究に熱中し、アバターのレベル上げや戦闘には関心がなかったが、レベル上げが研究に必要なため、不本意ながらもプレイしていた。
紗季の従妹である【大観音寺真紀】も同じゲームをプレイしており、紗季の代わりにゲーム内の煩雑な作業を担当していた。これにより、紗季は研究に専念できた。二人はまるで一人のプレイヤーのように役割を分担していたが、紗季は真紀の胸を揉むことが密かな楽しみであり、その行為が日常的になっていた。
ある日、紗季が真紀の部屋でゲームをしている最中、彼女の父親が部屋に入ってくるという事態が起こった。父親は二人の関係を誤解し、紗季が真紀に恋愛感情を抱いていると勘違いした。紗季と真紀は父親の誤解を解こうとしたが、その場面が奇妙であったために誤解がさらに深まった。
結局、紗季は父親の誤解を解くのに多くの時間を費やし、家族に説明をする羽目になった。彼女の変わった性格も影響して、誤解はなかなか解けなかったという。
【ソード・アンド・ソーサリス】内で「カノン」として活動する紗季は、自身の研究所であるアトリエで、魔法薬の調合に没頭していた。彼女は研究に集中したい性格であり、現実世界でも仮想世界でも他者との交流を煩わしく感じていた。しかし、ゲーム内での生活でも他人との関わりが避けられず、カノンはしぶしぶそれに応じていた。
カノンのアトリエは、地下にある薄暗い場所であり、汚れた実験器具や腐った材料が散らばっている様子はまさに魔女の家のようであった。彼女はここで、注文されたポーションを調合していた。特にゼロスからの依頼で、「おかしな魔法効果を付与したポーション」を作ることに喜びを感じていた。
カノンは、ポーションに新たな魔法効果を付与するため、最近手に入れた未完成の魔導書を使用し、その実験に期待を寄せていた。しかし、効果がどのように現れるか分からないことに一抹の不安を覚えながらも、実験を続けていた。
その後、カノンは納品のためにゼロスに連絡を取り、ユグドラシアの街で合流することを決めた。彼女は外出を嫌がっていたが、NPCとの好感度を維持し、研究資金を得るためには避けられないと考え、しぶしぶ外出することにした。カノンは研究以外には無頓着で、自分の興味に従って行動することが多かったが、今回は必要に迫られて動くこととなった。
ユグドラシアの街は、元々エルフが住んでいた小さな集落から、プレイヤーの介入により都市へと拡張された場所である。街は美しい景観と自然の調和が取れており、防御力も非常に高い。しかし、その美しさとは裏腹に、強者のみが生き残れる過酷な危険地帯であった。
カノンは、このユグドラシアの冒険者ギルドで仲間のゼロスと合流した。ゼロスはユグドラシアで観光しながら漫画肉という弾力のある料理を食べていた。カノンはゼロスとの会話を通じて、注文されていたポーションの納品を行った。ポーションには、特殊効果を付与してあり、これは悪質なプレイヤー達にお灸を据えるためのものだった。
ゼロスは、ユグドラシアに不正手段で潜入してきた中堅プレイヤー達がいることを指摘し、彼らにポーションを使って制裁を加える計画を立てていた。カノンはゼロスの計画に賛同し、彼にポーションを渡した後、商人の元にも納品を行った。最後に、カノンは冒険者ギルドからも注文があったことを思い出し、急いで戻ることにした。
第三話 榎村樹と愉快な仲間達
榎村樹(プレイヤー名: エロフスキート・ムラムラス)は、中小企業の社長である父と医療関係の会社で働く母のもとに生まれた。彼は親の意向で私立高校を受験し、強制的に進学させられたが、自動車整備士になる夢を持っていた。兄は医大に進学し、妹と弟もいる四人兄弟であった。樹は親からの期待に反発し、家を出て友人の父が経営する自動車整備工場で働きながら、整備士資格の取得を目指していた。
整備工場の仕事は、暴走族の車やバイクの整備などで、客層も独特であったが、樹たちは真面目に働いていた。工場の仕事が終わると、樹は整備士仲間の大助(プレイヤー名: サイケ・チャネラー)とたくや(プレイヤー名: 桃尻助平太夫撫介)とともに、VRRPG「ソード・アンド・ソーサリス」をプレイするのが日課であった。
三人は、それぞれ異なる職業を選び、バランスの良いパーティーを組んでゲームを楽しんでいた。彼らは、ゲームのログイン前に儀式のように気合いを入れ、現実の悩みや社会常識を捨てて、ファンタジーの世界に没頭していた。整備工場での仕事は真面目であったが、ゲームの中では自由に振る舞う彼らの姿があった。
巨大な山脈のような大樹である世界樹は、上位プレイヤーを目指す者にとっての登竜門であり、多くの挑戦者にとって厳しい試練であった。世界樹への道はモンスターが多く、さらに進むほどその強さが増していくため、レベル、スキル、装備、アイテムが揃っていないと挑戦は困難であった。そのため、多くのプレイヤーは正攻法で挑むか、別のエリアを目指すことを選んだ。
最近、プレイヤーの間で世界樹の街ユグドラシアへの非正規ルートが発見されたという噂が広まっていた。エロフスキートとその仲間たちは、その非正規ルートを使ってユグドラシアに向かうことにした。案内人に導かれながら危険な崖を登り、彼らはユグドラシアの街に到達した。
彼らの目的は、ユグドラシアの温泉宿での混浴だった。途中で命懸けの崖登りや危険なルートを進んだが、無事にたどり着いた先には温泉宿が見える場所があった。しかし、彼らが覗いた露天風呂には美少年がいて、さらにその美少年の持つ見慣れないものに驚愕した。絶望感を味わった彼らは、その後も露天風呂を見続けるが、突如現れた伝説の魔獣「プロミネンス・レイオン」に襲われる。
世界樹の過酷な環境は、油断したプレイヤーに容赦なく襲いかかる場所であり、エロフスキートたちはその厳しさを身をもって知ることとなった。ユグドラシアの街では、彼らの襲撃を受けたことで壮絶な戦闘が始まった。
ゼロスはユグドラシアの街角で行商人として身を潜めていた。ユグドラシアの街では頻繁にモンスターが出現し、それに応じて冒険者やプレイヤーたちが対応に出るため、騒がしい状況が続いていた。モンスターの討伐はプレイヤーにとって稼ぎ時である一方で、NPCにとっては生死に関わる問題であった。
中堅プレイヤーたちが、モンスター討伐から戻り、ポーションを求めていた。ゼロスは彼らに地上で仕入れたポーションを売りつけることにし、彼らの状況を利用して商売をした。中堅プレイヤーたちは資金が乏しく、ゼロスからポーションを購入するしかなかった。
そのポーションにはカノンが仕込んだ特殊な魔法がかけられており、時間差で発動するようになっていた。プレイヤーたちがポーションを使用すると、身体の一部が異常に変化し、性別を変えるような効果が現れた。この魔法はデバフ効果を持ち、プレイヤーたちは大混乱に陥った。
ゼロスはこの魔法の奇妙さとその潜在的な用途に興味を持ち、後にカノンに報告書を送った。カノンからは簡単な返事があったが、それ以上の詳細は明かされなかった。この事件を通じて、ユグドラシアの街での無計画な行動がもたらす危険性と、魔法の未知なる可能性が浮き彫りとなった。
カノンは地下の第八アトリエで、ゼロスからの報告書を読んでいた。報告書には各種付与魔法の効果についての客観的な分析が記されており、魔法にあまり興味がないカノンでも興味深い内容であった。魔法薬の研究に生かせる可能性があり、カノンの研究意欲を刺激した。
カノンはテーブルの上にある古い魔導書にも目を移した。この魔導書は、カノンが特効薬を作った際にある国の王妃から許可を得て閲覧し、その後こっそりと持ち出した禁書であった。その内容は夫と姑に対する恨みや悪意に満ちたもので、中盤からは複雑な魔法陣が描かれていた。
魔導書の著者であるモテナイ・メメスキンは、アルハモン国で異端の魔導士として処刑された女性であった。彼女は政略結婚で夫となった男性から虐待を受け、精神的に追い詰められていった。夫は他の女性と情事にふけり、彼女に対しては冷たく当たった。彼女は美を追求するために人体実験を繰り返し、その結果、多くの犠牲者を出したことから告発され、斬首刑に処された。
モテナイの肖像画は、清楚で可憐な少女を描いており、カノンはその容姿にコンプレックスを持っていたため、彼女に同情し、少しばかり羨ましく思った。カノンは魔導書を閉じ、不遇な彼女の運命に思いを馳せた。
第四話 忍者姉妹のゲーム生活日記
「影六人」と呼ばれる女性パーティーは、東方の島国キイノクナを拠点とし、忍者(クノイチ)6人で構成される少し変わったグループであった。彼女たちは通常のプレイヤーとは異なり、遊郭を拠点にして情報収集を行い、またその経営もしていた。リーダーのハナビと副リーダーのキキョウは、大人の歓楽街での活動を通じて情報を集めており、他のメンバーも各自の特性を活かし、異なる役割を持っていた。
彼女たちの拠点である遊郭「天華楼」では、多くの情報が集まっていたが、最近は押し込み強盗によって多くの少女が遊郭に送られてきていることに不自然さを感じていた。キキョウは新人の増加に疑問を抱き、調査を始めた。彼女たちはこの異常事態の背後に大規模なクライムクランが関与している可能性を疑い、情報収集のために別のプレイヤー、ケモさんに協力を依頼することにした。
交渉の中で、アンズは自身の写真やアイテムを報酬としてケモさんに提示し、情報収集を依頼することに成功した。姉であるハナビとキキョウはこれに反発し、妹の行動に動揺したが、最終的にはアンズの計画に従わざるを得なかった。彼女たちは内部の対立を抱えながらも、引き続き情報収集と調査を進めることを決意した。
「趣味を貫き深みに嵌まる」のリーダーであり「赤の殲滅者」として知られるケモさんは、アンズとの音声チャットを終えた後、犯罪者クランに関する調査依頼を受けたことについて考えていた。ハナビからの依頼は、発展途上の国々で犯罪者クランが暗躍しているというもので、その裏に何があるのかを調べることだった。
ケモさんは、三つの小国がキイノクナ国に戦争を仕掛けるように仕向けている可能性があると推測した。経済的に苦しい三国にクライムクランを動かす資金があるとは考えにくく、むしろキイノクナ国内部の勢力が小国間の不和を煽り、短期間で平定しようとしているのではないかと考えた。ケモさんは、サグサ・ゲンザブロウ・ヒデミツという若い大老が関与している可能性に目をつけた。彼は国内の古株の家老や老中を排除しようとしており、そのためにクライムクランを利用しているのではないかという疑念を抱いた。
ケモさんは、情報を集めるためにロキという裏社会に精通する情報屋に接触し、四つのクライムクランが関わっていることを突き止めた。さらに、サグサがクーデターを企んでいることも判明し、ケモさんはこれを利用することで更なる混乱を引き起こすことができると考えた。
その後、ケモさんは自らの喫茶店「けものの尻尾」で働く獣人ウェイトレスたちに対し、不適切な発言をしたことで誤解を招き、店内での立場が危うくなった。日頃の行いが原因で彼女たちからの信用を失い、困難な状況に陥ったのであった。
第五話 影六人のクライムクラン殲滅下準備
ケモさんからの情報収集依頼の報告書が【天華楼】に届き、ハナビはその内容を確認した後、ケモさんと音声チャットで情報の確認を行った。ケモさんは、クライムクランの主要メンバーやその拠点の情報を提供し、冒険者ギルドにこの情報を共有すれば他のプレイヤーたちが動くだろうと提案した。しかし、ハナビは忍者プレイをしている彼女たちで自力での処理を希望していたため、他のプレイヤーの手を借りることに少し抵抗があった。
サグサという人物についても議論があり、彼は極度の潔癖症で正義感が強く、そのために暴走しているが悪党ではないとケモさんは説明した。サグサの行動は、彼の理想に基づくものであり、他の家臣たちを始末する計画もあったが、単なる悪党ではないため、対応に悩む部分があった。
ケモさんはクライムクランの討伐には参加しないと表明し、彼のメンバーに任せることにした。その後、ケモさんがアンズからスクリーンショットを受け取ったことを知ったハナビは激怒し、彼女の行動を止めるために他のメンバーが介入することとなった。最終的に、ハナビは怒りのあまり暴れ回り、メンバー全員で落ち着かせるまで大変な騒ぎとなった。
世界樹の上層にある街【ユグドラシア】の近くで、ガンテツは危険地帯に隠れ工房を作り、自爆武器を製作していた。この工房は魔導具による防衛対策が施され、上位プレイヤーでも見つけにくい場所であった。ゼロスもこの工房を利用しており、二人は採掘作業をしながら雑談していた。
ケモさんからの依頼で、東方の島で大規模な犯罪クランとNPC盗賊団を討伐する話が持ち上がっていたが、ガンテツは参加するかどうかを迷っていた。討伐の報酬は通貨やNPCの信頼度アップ程度で、ガンテツにとっては魅力がなかった。しかし、犯罪クランのアジトに自爆攻撃を仕掛けることには興味を示していた。
二人は、倫理観のないプレイヤーたちをゲーム内で排除することに賛同しており、ゲーム内での暴力行為や犯罪的なプレイスタイルに対して嫌悪感を抱いていた。ガンテツは、プレイヤーたちの暴力性が現実世界でも問題視されていることを指摘し、ゲーム内での倫理観の重要性を語った。
最終的に、ガンテツは犯罪クランの拠点に突撃することを決意し、ゼロスも行動を共にすることにした。彼らは、現地に行ってから状況に応じて行動を決めるつもりであった。
テッド・デッドは、薄暗い部屋でクライムクランの討伐について考えつつ、共同墓地で過去の偉人の遺体を求めていた。彼の目の前には、魔導士であり犯罪者であった人物の遺体があり、その人物をアンデッドとして蘇らせることに興味を持っていた。テッドは、ゾンビ化したマリー・ビスメイヤーと共に、強力な魔導士である【モテナイ・メメスキン】を復活させた。
モテナイは蘇生直後に自身の過去の夫と愛人たちへの強い憎しみを露わにし、テッドに対しても警戒心を示した。彼女は自分の復讐を完遂するため、かつての夫ルチャードも蘇らせてくれとテッドに要求した。ルチャードもアンデッドとして蘇生されたが、自分が死んでいることに気づかず、モテナイと口論になった。モテナイは特殊な魔法を使ってルチャードに拷問を加え、最終的に彼を焼き尽くした。
テッドは、モテナイの恐ろしい復讐心と彼女の使う危険な魔法に恐怖を感じ、後悔の念に駆られた。モテナイの義母も既に彼女の復讐の対象となっていたことが判明し、テッドは彼女の強烈な執念を改めて理解した。モテナイは今後、テッドのアンデッド軍団の一員として活動することになったが、彼女の危険な存在が常に彼の頭を悩ませることとなった。
紗季と真紀は、犯罪ギルドの撲滅に参加するかどうかについて話していた。紗季は仕事で忙しく、結婚した同僚の代わりに化粧品の研究をすることになったため、参加しないことにした。紗季は医療関係の研究を希望していたため、化粧品の研究に不満を抱いていた。
また、彼女たちは紗季が開発した魔法薬についても話していた。これらの魔法薬は、体力回復と同時に身体の一部を変化させる効果を持っており、一部は自主規制の対象になっていた。真紀は、紗季の開発する魔法薬の奇妙な効果に対して批判的だったが、紗季はそれを楽しんでいるようであった。
さらに、二人は上位エリアに進入しようとする中堅プレイヤーを追い返すために販売される奇妙なアイテムについても議論していた。紗季はこれを、上位エリアで適応できないプレイヤーに対する思いやりだと主張していたが、そのやり方には真紀も困惑していた。
紗季の行動は自己中心的であり、真紀はその後始末を任されることが多かった。真紀は紗季の行動に不満を抱いていたが、紗季はそのことを気にすることなく、無邪気に振る舞っていた。結果として、真紀は紗季の行動の後始末を担当する役割を担い続けることになった。
第六話 クライムクラン殲滅が開始されました
運営からの通知により、【ナダ国】【クダナ国】【アシテナガ国】に出没する盗賊団とそれを支援する犯罪クランの撲滅イベントが開始された。このイベントでは、一般プレイヤーが取り締まる側となり、クライムクランのメンバーが防衛側として行動する形で、大規模な鬼ごっこが行われることになった。
このイベントの発表後、三国に滞在するプレイヤーたちは冒険者ギルドに押しかけ、情報収集に努めた。クライムクランは裏社会や権力者と繋がっていることが多く、簡単には捕えられないため、プレイヤーたちは証拠を集めて家宅捜索を実行しなければならなかった。確たる証拠が見つかれば、イベントとしてプレイヤーに告知され、一斉に取り締まりが可能となる。
イベントに参加するには、各プレイヤーが冒険者ギルドで手続きを行う必要があった。ギルド内では、盗賊団の情報やクライムクランの潜伏先についての情報が交換され、プレイヤーたちはアジトの場所を特定するために知恵を絞っていた。特に、岡っ引きなどのNPCも参加し、情報提供や犯罪者の捕縛に協力することが求められていた。
この取り締まりイベントは、【影六人】の情報提供により開始されたが、【キイノクナ国】ではまだ告知がされていなかった。時間差を利用して三国の奉行所が一斉に動き出し、NPCの同心たちと共に取り締まりが開始されたのである。
キイノクナ国の【天華楼】に拠点を置く【影六人】とその配下の忍者クラン【餓狼衆】は、クライムクランや若き大老サグサ・ゲンザブロウ・ヒデミツの動きを監視していた。サグサは謀反を計画しているとされ、彼の組織した【懐天党】と【天燃党】の動向が注目されていた。これらの組織は浪人や旗本の次男坊、三男坊などを集めており、規律に欠ける集団であった。
サグサの意図を探る中で、ハナビはサグサの目的が腐敗した為政者たちの排除であり、謀反の混乱を利用して家老衆を排除しようとしているのではないかと推測した。彼は、懐天党と天燃党を駒として利用し、彼らに罪をかぶせて無能な為政者を一掃する計画である可能性があると考えた。武器の密輸も、町奉行を昇進させるための策略と見られ、事が済んだらサグサが彼を推挙することになるだろうという見解であった。
ハナビの予想通り、その日の深夜に家老の邸宅と大老サグサの別邸が懐天党と天燃党の襲撃を受けることとなった。サグサの計画がどのように進行するかは依然として不明であったが、事態は急速に展開していった。
アンズは夜の見回り中、武家町から火の手が上がるのを見つけた。火事が謀反に関係しているか、ただのクエストか分からず、半鐘を鳴らして周囲に知らせることにした。しかし、火消たちが現れないことに不審を抱き、火の手の上がっている大名屋敷へ向かった。そこでは定火消たちが懐天党と天燃党の混成部隊に襲われており、消火活動が妨害されていた。
アンズは懐天党と天燃党の非道な行為に憤り、彼らを攻撃することを決意した。素早く動き、次々と敵を倒していった。逃げ出す賊たちに対しても、毒の塗られた苦無を投げつけ、容赦なく全滅させた。その後、アンズは生き残った定火消たちをポーションで回復させ、さらに他の場所で同様の事件が発生していないか確認するために見回りを続けた。
スミレとレンゲは情報収集中に、偶然大名屋敷を襲撃する夜盗の一団を発見し、その様子を見ていた。暴徒たちは家人や奉公人を無差別に襲い、蔵をこじ開けて財宝を奪っていた。双子はこの状況を見て、彼らを「使い捨ての駒」と判断し、討伐することにした。
双子は屋敷に飛び込み、敵を一掃するために忍術を駆使した。周囲に岩の棘を生やし、火球を放つ忍術で混乱させ、賊たちを追い詰めた。さらに、風の忍術を使って敵の武器を反転させ、賊たち自身の武器で自滅させた。屋敷の中にも敵が潜んでいると察し、迅速に侵入して武装した敵を排除し、最終的に家老職の当主を救出した。その後、双子は別の襲撃を受けている屋敷へ向かった。
シンタロウとオサキは追手から逃れるため、水路を走っていたが、追手に見つかってしまった。シンタロウはオサキを逃がすために追手を引き受け、オサキは町人街を目指して逃げた。しかし、彼女も先回りしていた追手に捕まりそうになった。
その時、異国風の商人ゼロスが現れ、彼女を救った。ゼロスは敵を倒し、オサキを助けた後、彼女の頼みに応じてシンタロウを助けに行く。しかし、彼らが到着したときには、シンタロウは既に息絶えていた。そこには狐の面をつけた忍び、ヒイラギが立っていた。
ヒイラギはシンタロウの遺体を奉行所に知らせるとし、オサキを一時的に預かることを決めた。ゼロスはオサキを【天華楼】に連れて行くことにし、二人は別れて行動することとなった。
第七話 おっさんと影六人、必殺な裏稼業を引き受ける
ゼロスが連れてきた女性オサキが目覚め、ハナビは事情聴取を開始した。オサキは、彼女とシンタロウがサグサ家の家臣であり、シンタロウが謀反に関わる裏の計画を知ったために追われる身となったことを語った。サグサ家の家臣シンタロウは、サグサの謀反計画と、それに続く自身の暗殺計画を知り、オサキとともに逃げることを決意したが、逃げ切ることができずシンタロウは殺された。
オサキの話により、計画には町奉行や海運奉行、やくざ組織の頭などが関わっていることが判明した。クライムクラン【アビスの手招き】の末端組織も関与していることが分かり、キキョウとハナビはこのクライムクランが戦争を引き起こして利益を得ようとしていると推測した。
オサキはシンタロウの仇を討つため、裏社会の仕置人に依頼するようハナビたちに頼み、彼らはそれを引き受けることにした。その結果、新たなクエスト「天誅殺!悪滅裏稼業」が開始された。影六人のメンバーは、オサキのために裏の仕事をすることを決意し、新たな挑戦に挑むこととなった。
ゼロスと影六人が暗殺の依頼を受けていた一方で、キイノクナ国の周辺国では盗賊やクライムクランのメンバーが次々と討伐されていた。特にクライムクランに所属するプレイヤー達は、討伐イベント開始と同時に賞金首となり、プレイヤーやNPCから狙われていた。クライムクランの拠点は隠されていたが、敵対するクランからの情報提供により、その場所が次々と暴かれていった。
クライムクランの一つ【愛ある犯罪者の集い】の拠点は、ガンテツというプレイヤーにより発見され、彼は大規模な爆発を用いてその拠点を破壊した。ガンテツは爆発を芸術と見なしており、クライムクランの拠点を次々と爆破していった。彼の行動により、クライムクランのメンバーは次々と全滅し、犯罪者撲滅イベントは佳境に入ったのである。
【アシテナガ国】の廃寺の地下には、裏社会の組織【時代の導き手】が拠点を築いていた。彼らは反社会運動を支援し、三国間での商家襲撃などの活動を行っていたが、国と冒険者ギルドの手配により、多くのメンバーが捕縛されていた。彼らの目的は、平穏な国に火種を撒き、革命を起こさせることであった。
しかし、状況が悪化する中で彼らは、自分たちが他のクライムクランに利用されていた可能性を疑い始めた。特に、【蔵矢彌組】が背後にいる【アビスの手招き】の一部であると気づき、策略に嵌められたことに気づいた。クライムクランとして活動していたが、本質は歴史の観察者であった彼らは、自分たちが仲間ではなく敵対する存在と見なされていたと考えるようになった。
彼らは状況を理解し、今は生き延びることを最優先に考え、団結して対処することを決意した。
夕方、【白の殲滅者】こと真紀カノンは、危険な魔法薬の回収と処分のため、廃寺に赴いていた。彼女の従姉である紗季カノンが作った戦闘力を増強する魔法薬【バーサークポーション】が、この場所に流れていたためである。この魔法薬は、使用者を狂戦士化し無差別に暴れる危険なものであった。
真紀カノンは、井戸の中に試作魔法薬を投げ入れ、地下にいる敵を一掃した。しかし、その効果は想像以上で、敵は異形の肉塊に変わり、絶命していなかった。生き残ったプレイヤーから「外道」と罵られる中、彼女は追い詰められた敵を容赦なく攻撃し、廃寺ごと地下の拠点を破壊した。
その結果、運営からクライムクランの拠点が全て壊滅したというアナウンスが流れ、真紀カノンは意図せずイベントを攻略してしまった。彼女は、従姉の紗季カノンの行動に振り回されながらも、予期せぬ形で悪名を広めることになった。二人で一人のカノン・カノンは、今日もまた伝説を作り続けることになった。
第八話 おっさんと影六人、暗殺稼業を開始する
逢魔ヶ刻の頃、【天華楼】の地下にある部屋で【影六人】のメンバーが集まり、暗殺の計画を立てていた。リーダーのハナビ、副リーダーのキキョウ、メンバーのヒイラギとアンズ、そして【黒の殲滅者】ゼロスの5人がその場にいた。暗い部屋にはハナビが用意した笛の音のBGMが流れており、仕事の準備が進められた。
彼らの標的は、大老の【サグサ・ゲンザブロウ・ヒデミツ】、海産物問屋の店主【セドリヤ・セイベイ】、町奉行【コオカ・シモーサカミ・イナスケ】、海運奉行【カワライ・カワナカ・ゲンジロウ】、そして【蔵矢彌組】の【渥垂 傲三】であった。それぞれの標的は、密輸や人攫いなどの悪事を働いており、彼らの暗殺対象とされた。
メンバーはそれぞれ標的を選び、暗殺の計画を立てた。ハナビは大老のサグサ、ゼロスは【渥垂 傲三】、ヒイラギは【セドリヤ・セイベイ】、キキョウは海運奉行のカワライ、アンズは町奉行のコオカを担当することとなった。彼らは標的の居場所を把握し、的確なタイミングで確実に仕留めることを目指していた。
最後に、ハナビは部屋を照らす蝋燭の火を吹き消し、仕置きの始まりを告げた。部屋は静寂に包まれ、まるで誰もいなかったかのように、人の気配が消え去った。
海産物問屋【施鳥屋】の店主、【セドリヤ・セイベイ】は、商人仲間との会合を終え、自分の店へと帰る途中であった。護衛の用心棒たちは信頼できる者たちではなく、セイベイもその選択を後悔していた。裏で密輸を行っている彼は、質の高い護衛を雇う余裕がなく、結果として信用できない者たちに囲まれていた。彼は海運奉行からの依頼で武器の密輸を引き受けてしまい、そのことで深く後悔していた。
セイベイは、商売が苦しくなり、やむを得ず裏の仕事に手を染めることになった。密輸に加えて、人身売買にも関与するようになり、悪事の道へと進んでいった。やがて海運奉行のカワライと大老のサグサから圧力を受け、彼らに従うしかなくなった。しかし、セイベイはいつでも切り捨てられる立場であり、不安を抱えていた。
ある夜、彼が帰宅する途中で用心棒たちが彼を脅し始める。その時、突然現れた黒い忍び装束に身を包んだ少女、ヒイラギが用心棒たちを瞬く間に倒し、セイベイを殺害した。彼女はセイベイに恨みを持つ者たちの依頼を受けていた。ヒイラギは任務を終えた後、宵闇の中に姿を消した。
海運奉行【カワライ・カワナカ・ゲンジロウ】は日々の職務に追われていた。彼は稀人(プレイヤー)の優れた製品が国内の職人の自信と誇りを奪っていることに危機感を持ち、国産品の保護を訴え続けていたが、老中や家老たちには受け入れられなかった。
ある日、カワライは大老のサグサからの誘いを受け、腐敗した体制を一掃し、国を立て直すための改革に加わる決断をした。彼は国の未来のために、犠牲を出してでも改革を行う覚悟を決めた。
しかし、その計画は異邦人(プレイヤー)によって阻止されることとなる。カワライのもとに現れた暗殺者キキョウは、彼に改革の方法が不適切であったことを伝えた。キキョウはカワライの信念に敬意を示しつつも、彼の行いがもたらした犠牲者の恨みを晴らすために彼を討った。
最終的に、カワライは信念を貫いたが、その命はキキョウの手で終わりを迎えた。カワライの死後、彼の信念と覚悟は無言のまま残された。
町奉行【コオカ・シモーサカミ・イナスケ】は、自分の屋敷で同心たちと酒盛りをしていた。彼は平凡な外見の中年男性でありながら、内心には出世欲と野心を秘めていた。彼は国を正すというよりも、世襲制の打破を望み、上の役職に就くことだけを考えていた。懐天党と天燃党の襲撃で城勤めの役人たちが殺され、その結果として役職の空きが生まれることを期待していた。
コオカは、異邦人(プレイヤー)を利用して計画を進めることを考えていたが、異邦人に対する不信感も持っていた。特に【蔵矢彌組】の【渥垂 傲三】に対しては警戒心を抱いており、彼の背後関係が不明瞭であることを不安に感じていた。コオカは、自分の計画が成功し、異邦人を利用して自らの立場を強化しようと画策していた。
しかし、計画は異邦人に阻まれ、コオカ自身も暗殺者アンズに命を狙われることとなった。最終的に、彼は背後からの攻撃により致命傷を負い、静かに命を落とした。コオカの野心と計画は実現することなく、彼の人生は幕を閉じた。
クライムクラン【アビスの手招き】の末端組織である【蔵矢彌組】は、街外れの廃村に拠点を構えるやくざ者の集団であった。組の頭である【渥垂 傲三】は、プレイヤーであり、【アビスの手招き】から送られる指令を伝え、裏工作や情報収集を行っていた。彼の主な役割は、国を乗っ取るための裏工作であり、内乱を引き起こすための支援を行うことであった。
傲三は、キイノクナ国の無能な上層部や世襲制への不満を利用し、内乱の火種を作ろうとしていた。彼は、大老【サグサ・ゲンザブロウ・ヒデミツ】が暗躍していることに気づき、接触を図った。サグサは国の改革を進めるために内乱を起こそうとしていたが、傲三はそのやり方に不信感を抱きつつも協力を続けていた。
ある日、傲三の賭場に黒ずくめの男が現れ、傲三を殺すためのクエストが発生していることを伝えた。二人は賭場の外で戦闘を開始し、激しい剣戟の応酬が繰り広げられた。最終的に、傲三は自爆刀で攻撃するも、黒ずくめの男は無傷で生き延び、傲三は敗北し命を落とした。
この戦いの後、廃村の賭場は壊滅的な被害を受け、かつての廃墟群は完全に消滅した。
【キイノクナ国】の大老である【サグサ・ゲンザブロウ・ヒデミツ】は、三十代という若さで国のトップに立つ人物であった。彼は若くして大老となったが、そのために古株の家老達から圧力を受け、政治的な対立に悩まされていた。家老達はサグサの若さを理由に彼を軽んじ、汚職の罪を彼の友人に擦り付けて追放するなどの陰湿な手段を用いて、彼を孤立させようとした。
長い孤独の末に、サグサはこの国の体制の欠陥に気付き、才能ある者が国を動かすべきだという考えに至った。彼は同じ志を持つ海運奉行【カワライ・カワナカ・ゲンジロウ】と町奉行【コオカ・シモーサカミ・イナスケ】と協力し、改革を進めようとした。しかし、改革には武力と資金が必要であり、その手段を模索している中で、家老達に反感を持つ次男や三男の武家の者達が集まる噂を聞きつけた。
サグサはこれを利用して次男や三男を焚きつけ、武装勢力として立ち上がらせ、彼らを使って老中達を襲撃させる計画を立てた。彼はまた、国の改革を進めるために異邦人の力も利用することを決意し、【渥垂 傲三】というならず者集団の頭と協力して、武器や防具を密輸し武装勢力を支援した。
しかし、計画の途中でサグサは彼の忠臣である【マサカ・シンタロウ・ナオミチ】を捨て駒にする決断をし、その結果として彼を死なせてしまったことに後悔と苦しみを抱えていた。サグサは彼を殺しに来た刺客の女【ハナビ】に対し、自分の過ちと内心の葛藤を打ち明け、最終的には自らの死を選んだ。
彼の死後、ハナビはサグサの苦しみを理解しつつも、彼の選択に哀れみを感じ、去り際に一輪の花を手向けた。
クエスト「天誅殺! 悪滅裏稼業」が完了し、参加者たちは天華楼に戻って報告と意見交換を行った。しかし、彼らは国の未来のために覚悟を決めた者たちを暗殺することに対して疑問を感じていた。プレイヤーたちは、自分たちが果たした役割が正しいのかどうか、そしてNPCと呼ばれる存在が本当に作られたものであるのかという疑念を抱えていた。
ゲーム「ソード・アンド・ソーサリス」の世界に違和感を感じつつも、クエスト報酬が発表され、各プレイヤーに配られた報酬に不満が募った。キキョウは尿瓶、他のプレイヤーもそれぞれ納得できない報酬を受け取った一方で、アンズとヒイラギは強力な武器を得ていたことに驚きが広がった。
一方、クエストに参加していなかったスミレとレンゲは、懐天党と天燃党の拠点を炎上させ、その場で無法者たちを討ち取っていた。彼女たちは悪党に対して容赦がなく、任務を終えると無邪気に帰還していった。クエストを通じて浮かび上がった倫理的な疑問と不条理な報酬の結果により、プレイヤーたちはゲームの世界に対する考えをさらに深めていった。
短編 【影六人】寄ればかしましい日常
キイノクナ国の遊郭、天華楼の二階で【影六人】のメンバーは、遊女たちの様子を窓から眺めながら雑談をしていた。スミレとレンゲは、遊郭の実情を見て妄想を膨らませていたが、これには年長者のハナビが教育的に問題があると後悔の念を抱いていた。
そのとき、アンズが猫耳と尻尾のついた衣装を着て現れた。この姿を見たハナビとキキョウは驚きのあまり気絶してしまった。二人はアンズに対して過剰な保護感情を抱いており、彼女の大胆な姿に衝撃を受けたのである。
アンズは、自分を守るために証拠写真を兄に送りつけることを考えていた。彼女の兄は引きこもりで問題を抱えており、アンズは兄を更生させようとしていた。彼女のこの行動に、仲間たちは驚きつつも、彼女の強い意志を感じ取っていた。
一方で、ハナビはアンズの写真を取り戻すために、ケモさんという人物の元へ向かうことを決意し、仲間たちにその覚悟を示した。仲間たちは彼女の行動に困惑しつつも、彼女の強い決意を見守っていた。
アンズはその間に着替えを終え、何事もなかったかのように戻ってきたが、仲間たちはその無邪気な様子に驚き、彼女が計画していることに少し心配を覚えていた。
Share this content:
コメントを残す