どんな本?
『本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 』は、ハンネローレという少女を主人公にした、貴族院を舞台とした物語である。
物語は、ハンネローレが婚約者候補や求婚者たちとの騒動を経験しながら、自身の成長を遂げていく様子を描いている。
ハンネローレは、貴族院五年生としての生活を送りながら、父親が決めた婚約者候補であるケントリプスとラザンタルク、異母弟のラオフェレーグ、そして他領から求婚してきた領主候補生のオルトヴィーン、さらには彼女の本命であるヴィルフリートなど、多くの男性たちとの縁を模索していく。
物語の中で、ハンネローレは自らの決断力の遅さや周囲の状況に対する理解の浅さに悩みながらも、恋愛模様や文化的な違いに翻弄されつつも成長していく。
彼女の成長過程は、読者に親しみを感じさせ、彼女の幸せを願わずにはいられない。
本作は、ハンネローレの視点から描かれた新たな物語であり、彼女が出会う様々な試練や人間関係の変化を通じて、貴族社会における成長と恋愛の要素を楽しむことができる。
また、彼女の決断がどのように周囲に影響を与えるのかを見守ることで、物語の展開に期待感を抱かせる作品である。
読んだ本のタイトル
本好きの下剋上 ハンネローレの貴族院五年生 1
著者:香月美夜 氏
イラスト:椎名優 氏
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あらすじ・内容
ローゼマイン様にご相談するのです!
『女神の化身』の親友が婚約者を決めるために
奔走する、恋愛バトルファンタジー開幕!
ユルゲンシュミットに初の未成年領主が就任してから約半年。今年の貴族院では、第一位の領地となったダンケルフェルガーの領主候補生ーーハンネローレが頭を抱えていた。
ちょっと気弱で間の悪い彼女が、婚約者候補達から結婚相手を決めなければならない。
父親が決めた幼馴染みのケントリプスかラザンタルクにとどまらず、求婚してくる異母弟のラオフェレーグ、他領の領主候補生・オルトヴィーン、縁深いヴィルフリートなど続々と候補者達が現れる。
それは「縁結びの女神の握る糸」がもたらす波乱の幕開けだった!
「ローゼマイン様にご相談するのです!」
『女神の化身』の親友が婚約者を決めるために奔走する、時空を越えた恋愛バトルファンタジー開幕!
書き下ろし短編×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!
感想
やった!外伝とはいえ、ローゼマインの物語の続きが読めた。
ローゼマインの学業継続とフェルディナンドとの複雑な関係も、相変わらずトラブルに巻き込まれていた。
神々が加わった分、以前よりも状況は酷くなっている印象である。
この本は、貴族院五年生となったハンネローレの視点から婚約者候補と求婚者たちの騒動が語られる物語である。
ダンケルフェルガーの領主候補生である彼女は、父親に決められた婚約者候補である兄弟のケントリプスとラザンタルクをはじめ、異母弟のラオフェレーグや他領から求婚してきた領主候補生のオルトヴィーン、そして彼女の本命であるヴィルフリートといった複数の男性たちとの縁を模索する物語である。
このような乙女ゲームのような展開の中で、ハンネローレが語り手となり、彼女の成長と変化を追う物語であり、その続きが気になる展開となっている。
間の悪さと恋愛模様に翻弄される彼女の姿に親しみを感じさせ、彼女の幸せを願わずにはいられない。
ハンネローレの本命はヴィルフリートであったが、縁結びの女神リーベスクヒルフェがハンネローレとヴィルフリートの縁を良縁とはしないという示唆があり、彼らの恋愛模様に複雑な要素を加えていた。
特にヴィルフリートは大規模な嫁盗りディッターに参加しないことを選び、ハンネローレの思いとは異なる展開が続いた。
彼女は決断が遅く、周囲の状況が既に動いていることに気づかないまま、自己反省と成長を繰り返していった。
物語中、エーレンフェストとダンケルフェルガーの文化的な認識の違いや、ハンネローレとその側近たちの思い込みの強さが描かれ、これが読者を笑わせた。
特にケントリプスの分析が冷静で的確であり、彼の視点から見たハンネローレの成長過程が印象的であった。
ケントリプスが幼少期からハンネローレに対して一途な思いを抱いている様子が描かれ、その純粋な気持ちが物語の中で光っていた。
書き下ろし部分では、彼の3歳での一目惚れというエピソードが紹介され、彼の人生の大半がハンネローレへの思いで満たされていることが伝わった。
新たなツェントの登場により、複数の新しい領地とアウブが任じられ、貴族院のカリキュラムが大きく変わる中で、ハンネローレは様々な出会いと試練を経験していった。
ラザンタルクの視点からは、彼が意外と冷静で、選ばれたとしても選ばれなくても気持ちの整理ができるという姿が微笑ましかった。
ジギスヴァルドの反省のない振る舞いも、物語にスパイスを加えている。
全体として、ハンネローレの成長と彼女を取り巻く人間関係の変化を描いた本作は、深い印象を残しつつ、今後の展開に期待を抱かせるものであった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
本好きの下剋上 シリーズ
兵士の娘
神殿の巫女見習い
領主の養女
貴族院の自称図書委
女神の化身
ハンネローレの貴族院五年生
その他フィクション
備忘録
プロローグ
秋の半ばを過ぎた頃、ダンケルフェルガーでは商人達が各領地へ戻る一方、城内では貴族院と冬の社交界の準備が始まっていた。騎士たちは魔獣を狩るために北側の境界へ遠征し、文官たちは学生情報を寮監に伝えたり、帰省する中央貴族から情報を集めたり、アウブとギーベの面会予定を立てたりしていた。側仕えたちは貴族院の寮の準備を整え、城内で冬の社交界に向けた準備を進めていた。
領主候補生ハンネローレの筆頭側仕えであるコルドゥラは、ジークリンデから自室に呼び出されていた。彼女は慌ただしい空気の中を歩きながら、何があったのかを考えていた。ジークリンデは、ハンネローレの婚約者候補を決めることになったとコルドゥラに伝えた。かつて、ハンネローレはエーレンフェストへの嫁入りを考えていたが、その後の領地対抗戦でエーレンフェストは婚姻を拒否し、状況は変わっていた。
ハンネローレはエーレンフェストに対する行動を黙認されていたが、旧アーレンスバッハとエーレンフェストの戦いに参加し、エーレンフェストに勝利をもたらしたことで状況が変化した。エーレンフェストの利をもたらしたことで、貴族達の視線が和らぎ、しばらくは様子を見る方針が取られていた。しかし、ハンネローレはエーレンフェストとの関係を深めることができず、新たな婚約者候補を見つけることが求められるようになった。
ダンケルフェルガーは第一位の領地となり、ハンネローレの婚姻についての打診がジギスヴァルトからあった。ジークリンデは、ハンネローレの将来を考え、婚約者候補を決める必要があると考えていた。コルドゥラはハンネローレに適した候補として、領主一族の傍系であるケントリプスとラザンタルクを挙げた。彼らは幼少期からハンネローレと親しく、彼女に好意を寄せていたため、候補として適していると考えられた。
ジークリンデは、ハンネローレが自分の意志で婚姻相手を選べるように、婚約者ではなく婚約者候補としての立場を考えた。これにより、ハンネローレが自分の意思でエーレンフェストとの交渉を進める余地を残したいと考えていた。
入寮
ハンネローレは、貴族院への移動日であったため、筆頭側仕えのコルドゥラに声をかけられ、出発の準備を整えて立ち上がった。彼女は今年の貴族院での変化を考え、少し憂鬱な気分になっていた。ダンケルフェルガーの領主候補生としての責務を果たす必要があり、特に今年は大きな変化が彼女の周囲にあったため、気を引き締めていた。
城に残る成人の側近たちの励ましを受けて出発したハンネローレは、コルドゥラや護衛騎士見習いのハイルリーゼと共に転移陣のある部屋へ向かっていた。ダンケルフェルガーでは暑さを和らげるために冬でも敷物を使用しない習慣があり、エーレンフェストのような厚いカーペットは敷かれていなかった。
彼女は今年の採集について考えながら、ケントリプスとラザンタルクという二人の婚約者候補についても思いを巡らせていた。ケントリプスは幼馴染みであり、彼女の兄の文官見習いであったが、急に婚約者候補として扱われるようになったため、ハンネローレはどのように接すればよいのかわからず戸惑っていた。
彼女はまた、領地順位が第一位になったダンケルフェルガーの領主候補生としての振る舞いを心掛けるようにと母親からも忠告されていた。ダンケルフェルガーは領地順位が大きく変動した結果、他領の領主候補生たちと対等に渡り合うことが求められていた。
彼女の父は、貴族院での情報収集や神殿改革の成果を求めていると述べ、彼女に期待を寄せていた。ハンネローレはエーレンフェストでの経験を踏まえ、貴族院での課題に取り組む覚悟を決めた。婚約者候補についてはケントリプスとラザンタルクのどちらかを選ぶことを父から求められていたが、彼女自身はこの決定について複雑な思いを抱えていた。
転移陣での移動の後、貴族院で彼女を迎えたラザンタルクは、すでに彼女のために講義の準備を整えており、訓練場の使用許可を求めてきた。ハンネローレは、婚約者候補となったことによる変化を感じられずにいたが、貴族院生活が始まることに意を決し、訓練場へと向かった。
新入生歓迎ディッター
ダンケルフェルガーでは、一の鐘が鳴ると起床の時間であり、すぐに訓練が始まった。訓練は側仕えや文官を含む全員が参加し、早朝の訓練は軽い運動で終わった。貴族院に入った翌朝であったため、ハンネローレは護衛騎士見習いと共に採集場所の見回りを行った。ラザンタルクが採集した素材の量が多く、採集場所の荒れ具合を心配したからである。
彼女は採集場所の状況を確認し、自室に戻って水浴びをし、朝食の時間となった。朝食時には、寮監や領主候補生から連絡事項が伝えられ、ハンネローレは採集場所の見回りを行ったことと、土地の癒しが必要であることを述べた。自由時間であったが、土地の癒しには多くの魔力を使うため、みんなで協力する必要があった。
訓練場を閉鎖することで騎士見習い達から不満の声が上がったが、ルーフェン先生はハンネローレの判断を支持し、全員で採集場所を癒すことになった。騎士見習い達は、新入生歓迎ディッターの準備にも力を入れていた。
ハンネローレは多目的ホールに向かい、順番待ちをしている者達からエーレンフェストの本について話を聞くことにした。新しい本の内容に興味を持ち、社交の下準備としてどの本がどの程度受け入れられているかを知ることが重要であった。
その後、ラザンタルクが新入生歓迎ディッターに参加しないかと尋ねてきたが、ハンネローレは例年通り講義の準備を行うため、参加しないことを伝えた。ラザンタルクは本物のディッターに参加した彼女と共にディッターを行いたいと望んでいたが、彼女はその望みには応えられなかった。
ハンネローレは、婚約者候補としてのラザンタルクの言葉に少し失望を感じ、ディッター観戦のお誘いにはあまり気が進まなかった。コルドゥラは、候補者と向き合って考えることの重要性を指摘したが、ハンネローレは納得のいく答えを出すために、ディッター以外で良いところを見せてほしいと感じていた。
新入生歓迎ディッターが行われている間、ハンネローレは予定通りに調合室で講義の準備をしていた。多くの学生がディッターの見学に出ていたため、調合室は空いており、彼女は集中して作業を終えることができた。作業を終えた後、彼女は仕方なくディッターの観戦に向かうことにした。
訓練場へ向かう途中、ハンネローレはケントリプスに出会った。ケントリプスは観戦に同行したいと申し出て、二人で訓練場へ向かった。彼は、ハンネローレがディッターに参加しなかったことを知っていたが、自身も情報収集に興味を持つようになり、参加しないことを選んでいた。
ケントリプスは、ハンネローレが変わったことを指摘し、彼女が他領へ嫁ぐことを考えてはどうかと提案した。ハンネローレは驚きながらも、他領へ嫁ぐことを簡単に考えられる状況ではないことを伝えた。彼女はダンケルフェルガーに留まるようにと婚約者候補が決められていた。
ディッターの観戦中、ケントリプスはハンネローレがダンケルフェルガーに留まることで生まれる火種について話したが、確証が持てない情報であるとして詳細は教えなかった。代わりに、ハンネローレが領主候補生コースで得た情報を提供することを条件に、詳細を教えると提案した。
その日の夕食の席で、新入生として入寮したラオフェレーグがハンネローレに求婚を申し出た。彼は年下で異母弟であったが、ディッターへの情熱から彼女に婚約者候補として加わりたいと願っていた。ハンネローレは驚きながらも、年齢差を理由に断ったが、コルドゥラからは手順を踏めば問題ないと判断される可能性があると注意された。彼女は、自分の断りが不十分であったことを認識し、困惑した。
進級式と親睦会
貴族院は講堂での進級式から始まった。ダンケルフェルガーは一番乗りで講堂に入ることを決めた。これは、ラオフェレーグが誰に対してもディッターを申し込もうとしているためであった。ラオフェレーグの側近たちに命じて、「ディッターの誘い」を防ぐために魔術具を使わせた。この魔術具はディッターの申し込みをさせないように強制的に声を奪うもので、ダンケルフェルガーには必需品であった。
側近たちに釘を刺した後、ハンネローレは学生たちを見回し、彼らを引き連れて講堂へ向かった。ケントリプスとラザンタルクがハンネローレをエスコートするために手を差し伸べ、二人に手を取られて歩き出すと、その姿は非常に目立った。周囲の視線が集まる中、ダンケルフェルガーは無事に講堂に一番乗りで入ることができた。
整列している間、隣には二位であるブルーメフェルトの学生たちが並び、ラオフェレーグの動きを監視していた。彼らは、新しい領地のマントを見て驚く声が聞こえてきた。特にローゼマインの姿に対する驚きは大きかった。ラオフェレーグはアレキサンドリアのローゼマインに紹介してほしいとハンネローレに頼んだが、彼女は親睦会での紹介まで静かに待つように諭した。
進級式では、貴族院の先生がツェントのグルトリスハイト取得により魔力に余裕が生まれたことや、シュタープの取得年齢を成人に戻す案があることを説明した。ラオフェレーグは魔術具の武器について文句を言いかけたが、ケントリプスとハンネローレが彼を諭し、在学中の不利は大した問題ではないとした。進級式が終了した後、彼らは小広間に移動し、アレキサンドリアの学生たちが新しいマントを着て整列している姿を見て、ローゼマインが領地の学生たちの心をしっかりと掴んでいることを確認し、安堵した。
貴族院の親睦会で、ハンネローレとラオフェレーグは中央の文官の案内で小広間に入った。正面にはツェント夫妻と共に、特別にローゼマインが席に着いていた。アレキサンドリアの席は別に用意されていたが、ローゼマインはツェント夫妻と並んでいたため、第六位の席には座っていなかった。ローゼマインが第六位の席にいると挨拶の際に複雑な状況が生じるため、現在の配置が適切であるとハンネローレは感じた。
各領地の貴族が席に着く中、ハンネローレはラオフェレーグを連れて壇上に挨拶に向かった。エグランティーヌとアナスタージウス、そしてローゼマインが座っており、ローゼマインは新しい紺色のマントをまとっていた。ハンネローレはローゼマインの変化に驚きつつも、彼女がつけている魔術具がフェルディナンドの手によるものではないかと感じた。
挨拶の際、エグランティーヌはラオフェレーグに微笑み、ローゼマインは図書館でのお茶会の話を持ちかけた。ローゼマインは無邪気な笑みを浮かべながらも大人びた雰囲気を醸し出しており、ハンネローレはそれに魅了された。ローゼマインの髪飾りは以前とは違うデザインになっており、フェルディナンドからの贈り物だと推測された。
その後、ヒルデブラントが挨拶に来たが、彼はシュタープを封じる魔術具をつけており、ハンネローレは彼に図書委員としての働きを期待した。コリンツダウムの上級貴族が挨拶に来ると、彼らはブルーメフェルトより余裕があるように見えた。クラッセンブルクのジャンシアーヌが続き、彼女の雰囲気にラオフェレーグが興味を示した。
さらに、ドレヴァンヒェルのオルトヴィーンが領主候補生を連れてきて、魔力の多い者を養子にしてギーベに任じる方針を示した。アレキサンドリアのレティーツィアも挨拶に来て、ローゼマインが彼女を可愛がっている様子がうかがえた。ハウフレッツェやエーレンフェストのヴィルフリートとシャルロッテも挨拶に来て、ハンネローレはエーレンフェストとの関係を考えた。
ラオフェレーグはエーレンフェストに対して批判的な言葉を漏らしたが、ハンネローレは彼を諭した。ハンネローレはダンケルフェルガーとエーレンフェストの違いを認識しつつ、親睦会での挨拶を続けた。
講義中の情報交換
親睦会が終わった後、ダンケルフェルガーの寮では情報交換が行われた。最終学年の六年生や領主候補生、領主一族の側近が集まり、それぞれが得た情報を交換し合った。ハンネローレは領主候補生たちが落ち着いて話していたことや、リンデンタールやベルシュマンといった下位領地が中央領地が再編されたことに不満を持っていることを報告した。中央領地の再編により、貴族院が唯一の中央と定められたことが、他領にどのように影響するかを見守る必要があるとルイポルトは付け加えた。
ケントリプスはローゼマインについての情報を求めた。ローゼマインは未成年のアウブとして注目されており、彼女の動向は重要であった。ハンネローレは親睦会でのローゼマインの様子を説明し、彼女が多くの護符を身に着けていたことや、レティーツィアを可愛がっている様子を伝えた。また、エーレンフェストとの関係についても問われ、シャルロッテがレティーツィアを紹介していたことから、以前と変わらないように感じたと述べた。
会話の中で、ヴィルフリートが領地内で立場を失ったという噂があることが分かった。ラザンタルクはエーレンフェストに関する情報を優先して入手することを提案し、ハンネローレは噂について冷静になるよう促された。親睦会が終わると、翌日から講義が始まるため、ハンネローレは情報収集のために努めることを決意した。
講義前に、ハンネローレはケントリプスとラザンタルクに情報収集のための注意を受け、彼らに秘密にするよう頼んだ。その後、ローゼマインが現れ、講義が終わると図書館での活動を楽しみにしている様子を見せた。ローゼマインは図書館での司書達との話し合いや、図書委員としての活動を行う予定であった。ハンネローレはローゼマインの護衛について尋ね、フェルディナンドが作った心強い側近達がいると聞かされた。
また、ローゼマインがハンネローレのために髪飾りを用意しており、寮に届けるかお茶会で渡すかを相談した。ハンネローレは髪飾りを早く見たいと望み、寮に届けてもらうことにした。ローゼマインは講義が終わり次第、髪飾りを届けることを約束し、翌日はお揃いにすることを提案した。
領主候補生たちは二日間の午前中で共通の座学の試験を終えた。領主候補生は皆、予習をしているため、座学の成績に問題がない。ローゼマインは全ての実技で卒業分まで合格しており、その規格外の才能に誰も驚かなくなっていた。彼女の装飾品について、皆は求愛や求婚の魔術具かと思ったが、ローゼマインはそれらがすべて護符だと説明した。
午前の講義を終えたヴィルフリートは、ローゼマインに話しかけ、物語の収集について確認した。二人の関係が噂になっていたが、会話を聞いた限りでは、彼らの関係に変化は見られなかった。午後からは領主候補生コースの実技が始まり、アナスタージウスが教師として参加した。彼は教材の箱庭を前年の終わりの状態に戻すよう課題を出した。
実技中、ハンネローレは会話を求めていたが、回復薬を使用するほど魔力が減っていなかったため、会話に参加できずにいた。しかし、ついに休憩を取ることができ、ヴィルフリートとオルトヴィーンと共に休憩を取った。そこでオルトヴィーンは次期アウブの話題を持ち出し、新しいシュタープを持つ世代を次期アウブに考えている領地があることを示唆した。ハンネローレはダンケルフェルガーではレスティラウトが次期アウブであることを明言し、変更の予定がないことを伝えた。
オルトヴィーンは、ダンケルフェルガーの方針について理解を示しつつ、自分の領地でも同様の考えを受け入れることを考えていたようである。その後、彼は突然ハンネローレに求婚を申し込んだ。ハンネローレは驚きのあまり、すぐに返答することができなかった。オルトヴィーンの意図が明かされたことで、ハンネローレは彼の言葉の真意を見極めようとしていた。
求婚者の言い分
ハンネローレは講義中にオルトヴィーンからの求婚を受けた。彼は盗聴防止の魔術具を用意し、ヴィルフリートも二人の潔白を証明する立場になると申し出た。オルトヴィーンは求婚の意図を明かし、コリンツダウムからの求婚について警戒していることを伝えた。彼は自分の立場や家族を守りたいという理由で次期アウブを目指していたが、ハンネローレに求婚することでダンケルフェルガーとの関係を強化したいと考えていた。ハンネローレは、父親が定めた婚約者候補がいることを示しつつも、オルトヴィーンの言葉に動揺していた。
オルトヴィーンは、ハンネローレの気持ちを確認するための提案であり、返事を急いでいないと説明した。彼はドレヴァンヒェルの利点を挙げつつ、ハンネローレの個人的な望みについても考慮していた。ハンネローレはその場で求婚を断ることができず、後でコルドゥラに相談することにした。彼女はリーベスクヒルフェに感謝の祈りを捧げることを決意し、これ以上の選択肢は不要であると神に伝えた。
その後、ローゼマインからのオルドナンツが届き、髪飾りを届ける旨が伝えられた。ハンネローレは側仕えたちとともにお茶会室でローゼマインを迎える準備をすることになった。
髪飾りが起こす波紋
ハンネローレは、ローゼマインからの贈り物である髪飾りを受け取った。リーゼレータが届けたその髪飾りは、美しいリューツィの花を模しており、ハンネローレの髪色にぴったりと合うように作られていた。彼女はその髪飾りをつけて、夕食の席に臨むことに決めた。
夕食の席では、ケントリプスとラザンタルクが彼女に話したいことがあると申し出てきた。側仕えのコルドゥラは、ドレヴァンヒェルからの求婚について話すべきだと示唆した。ハンネローレは食事中もそのことを考えつつ、彼らとの会話の準備をしていた。
ラオフェレーグは食堂にはいなかった。コルドゥラは、彼がアウブによって正式に定められた婚約者候補ではなく、オルトヴィーンの求婚の発端になったと述べ、配慮する対象ではないと断じた。ハンネローレは、この状況に対するコルドゥラの厳しい視線に少し恐れを感じていた。
ハンネローレは夕食後に会議室に向かい、ケントリプスとラザンタルクと話をした。彼らは彼女の髪飾りがエーレンフェストから贈られたものかどうかを尋ねた。髪飾りはローゼマインから贈られたもので、エスコート相手からの贈り物ではないことをハンネローレは説明した。しかし、ダンケルフェルガーでは髪飾りはエスコート相手や婚約者から贈られるものと認識されており、誤解を招く可能性があった。
ラザンタルクは、ハンネローレに対して思いを寄せていることを明かし、彼女に髪飾りを贈ることを考えていたと話した。ハンネローレは彼の気持ちに気づいていなかったことを謝罪した。
その後、オルトヴィーンからの求婚の件についても話題に上り、ケントリプスはその状況を利用して求婚を防ぐべきだと提案した。ハンネローレは、ローゼマインに協力を求めることにした。
ケントリプスは、ハンネローレに対して自分の望みを尋ねるよう促したが、彼女は彼の望みを理解できなかった。ケントリプスは微笑みながら、その場を去った。
音楽と疑問
ハンネローレは、ケントリプスの望みがわからないまま、ヴィルフリート様との噂が広がり続けていた。オルトヴィーン様の誤解も解けぬまま音楽の実技の時間になり、ローゼマインに相談すべく音楽の実技の教室へ向かった。ローゼマインも同じ髪飾りをしており、ハンネローレはそれを見て嬉しさを感じた。
ローゼマインとの会話で、髪飾りの誤解について話題になり、ハンネローレのエスコート相手が決まったらその方からの注文を特別に受けることを提案された。これによりラザンタルクの不満も和らぐかもしれないと考えた。
その時、オルトヴィーンが現れ、誤解が解けたことにハンネローレは安心したが、重い気持ちにもなった。さらに、コリンツダウムの上級貴族が無礼な発言をしたため、ラザンタルクが反論しようとする場面もあったが、ハンネローレはそれを制止した。
ハンネローレは、ローゼマインから婚約者候補が大事にされていると言われ、ラザンタルクが彼女を守ろうとする姿勢に気づいた。今まで二人の気持ちをあまり考えていなかったことを反省し、二人と向き合う必要があると感じた。
最後にラザンタルクがローゼマインに髪飾りの注文をしようとするが、ハンネローレに制される場面で話は終わった。
ローゼマインの音楽の実技の授業で、さまざまな楽器を持った学生たちがいた。彼女は卒業式の奉納音楽のために楽器を選んでいるのだと説明した。ローゼマインがアウブに就任したこともあり、卒業式では音楽で参加することを決めたと述べた。彼女の参加が奉納舞ではなく音楽になったのは、神々の関与を避けるためだった。
ローゼマインの演奏は美しく、参加者たちの注目を集めた。彼女の演奏中に溢れる祝福の光や、立ち上る光の柱は多くの人を驚かせた。ヴィルフリートもその演奏に驚き、ローゼマインの状況について心配していた。
パウリーネ先生が発表した課題曲に対し、ローゼマインは今まで発表されていない曲であればすでに作ったものでもいいかと質問し、了承を得た。ローゼマインはこれまでにフェルディナンドと共に多くの曲を作ってきたことを話した。
ハンネローレはローゼマインの音楽活動に感銘を受ける一方で、ヴィルフリートが置かれた状況を心配していた。彼女はローゼマインとフェルディナンドの婚約が進んでいく中で、ヴィルフリートがこれ以上の不利益を被らないよう協力したいと考えていた。
ローゼマインの演奏を見て、ハンネローレは自分の考えを整理し、ローゼマインとのお茶会を企画した。彼女は直接ローゼマインに相談し、エーレンフェストの現状を把握することでヴィルフリートへの支援を考えることに決めた。ローゼマインは彼女の申し出を快く受け入れた。
お茶会での相談
ハンネローレがローゼマインを土の日のお茶会に招いた。ローゼマインはフェルディナンドが作ったシュミルの動く魔術具である新しい側近達を連れてきた。お茶会ではダンケルフェルガーとアレキサンドリアの料理について話し、特にロウレのクッキーとリコーゼのタルトを楽しんだ。ローゼマインは旧アーレンスバッハの特産を活かした料理を目指しており、砂糖の生産をダンケルフェルガーに提案した。
お茶会の後半、ハンネローレはローゼマインにヴィルフリートへの配慮について相談した。ローゼマインはヴィルフリートと婚約していた頃からフェルディナンドと作曲していたことを説明し、ヴィルフリートがフェシュピールを嫌っていたため、作曲には関わっていなかったと語った。さらに、ヴィルフリートが婚約解消を望んでいたこと、次期アウブの立場から外れることを望んでいたことを明かした。
ローゼマインはヴィルフリートの現状に配慮しつつも、彼の希望が叶った状況であるため、今のままで問題ないと述べた。ローゼマインは、ハンネローレに婚約者候補であるケントリプスとラザンタルクについて話し、彼らを大切にするように勧めた。
お茶会の終わりに、訓練場でラザンタルクとケントリプスが喧嘩しているという報告が入り、ハンネローレは急いで対応することになった。ローゼマインは状況を察して退席し、ハンネローレはお茶会を中断し、二人を止めに向かった。
後押し
ハンネローレが訓練場に到着すると、ラザンタルクとケントリプスが許可なく私闘を行っており、見物人が多数いた。ハイルリーゼ達が見物人を退場させた後、ハンネローレは二人を止めようとしたが、ラザンタルクが攻撃を続けたため、ハンネローレはシュタープを使って注意を引き、戦いを中断させた。
ラザンタルクはケントリプスに対して感情的に問い詰め、ケントリプスは冷静に応答した。ラザンタルクはケントリプスが手放すような態度を取ったことに対し、激しく反発していた。ルーフェン先生が到着し、ラザンタルクを制止し、ケントリプスと話すように指示した。
ケントリプスはラザンタルクとの争いが自分の望みに基づくものだったと説明した。ハンネローレは事情を聞くため、ケントリプスを部屋に移動させた。ケントリプスは回復薬を飲んで傷を癒し、ハンネローレと話を続ける準備をした。
ハンネローレは、会議室でケントリプスと向かい合って座り、私闘の事情を聞くこととなった。盗聴防止の魔術具を使い、ケントリプスはお茶会の様子を尋ねた。彼はラザンタルクと自分の意見の違いが原因で喧嘩になったことを明かし、ハンネローレにヴィルフリート様との間を取り持ってもらうためにローゼマイン様に協力を求めたのではないかと考えていた。
ケントリプスはハンネローレに、ヴィルフリート様との婚姻を推す理由を説明し、ダンケルフェルガーの政治的安定のために彼女がヴィルフリート様と結婚するべきだと主張した。しかし、ハンネローレはそのような計画に同意できず、ケントリプスが自分の感情に踏み込んでくることに対して不快感を示した。ケントリプスはハンネローレに、気持ちを固めるために行動を起こすべきだと促した。
ハンネローレはケントリプスの意見に反発しつつも、自分の気持ちを伝えるべきか考え始めた。彼女は自分の決断を先延ばしにしていることを指摘され、何もしないうちに全てが終わることを恐れるようになった。最終的に、ハンネローレはケントリプスとの会話を終え、盗聴防止の魔術具を手にして会議室を後にした。
迷いと決意
ハンネローレは自室に戻り、コルドゥラと対話をした。コルドゥラは、ハンネローレがケントリプスとの話し合いの後、清々しい表情をしていたことについて尋ねた。ハンネローレは、ケントリプスから自分の現状やヴィルフリートへの気持ちを伝えるよう促されたことを伝えたが、決断に至っていないと明かした。
ハンネローレは、自分の将来について悩み、ヴィルフリートとの婚姻を本当に望んでいるのか疑問を持った。彼女は、領地の利益を考慮せずに自分の感情だけで決断することの難しさに直面し、自分の感情が恋物語に見られるような激しいものではないと気づいた。
最終的にハンネローレは、自分の想いがそこまで強いものではないと結論づけ、ヴィルフリートへの想いを秘め、周囲に迷惑をかけないようにすることを決意した。
ハンネローレは夕食の時間になり、ラザンタルクから二人で話をする時間を求められたが、自身の考え事に集中していたため後日に延期した。ラザンタルクとケントリプスの口論をコルドゥラが仲裁し、ハンネローレは彼らとの対話を避けた。夕食中、側近のアンドレアがローゼマイン様やフェルディナンド様の側近との縁組を希望していることを話し、ルイポルトもまたエーレンフェストとの縁を結びたいという希望を示した。
ハンネローレは父親がエーレンフェストとの関係を重視していることに驚き、ヴィルフリートとの婚姻の可能性を再び考えるようになった。彼女はヴィルフリートから求婚の条件を得るために自ら行動を起こす決意を固めたが、それが困難な道であることを理解した。彼女は過去の例を参考にし、特にマグダレーナ様がトラオクヴァール様から条件を得た方法を知りたいと考えた。
最後に、ハンネローレは自身の側近達が協力的でない状況に気づき、自分自身の力でヴィルフリート様との関係を築く必要があると自覚した。彼女は、自分の意志を貫くために行動を起こす決意を新たにした。
求婚(ダンケルフェルガー流(笑))
ハンネローレは朝食後、講義へ向かう途中でケントリプスとラザンタルクに出会った。彼らとともに講義に向かう中で、ラザンタルクは彼女を東屋に誘った。東屋は領主候補生が親密な会話をするのに適した場所であり、ハンネローレはヴィルフリート様をそこに誘うことができれば求婚の成功率が上がると考えた。しかし、東屋に誘うこと自体が恋愛関係を周囲に示すことになるため、どう誘うか悩んでいた。
講義の時間中に、ハンネローレはヴィルフリート様に領地の婚姻方針について尋ねる機会を得た。ヴィルフリート様は講義後に詳しく話すことを提案し、ハンネローレはその申し出を受け入れた。彼女は、ヴィルフリート様が領地間の婚姻についての情報を共有することを楽しみにしている様子を見て、少し心が軽くなった。
講義が始まる直前、オルトヴィーン様も教室に入り、彼らと挨拶を交わした。ハンネローレはオルトヴィーン様の想いを受け入れるつもりがなかったため、挨拶を済ませてすぐに自席へ戻った。講義中、ハンネローレはヴィルフリート様との会話を通じて、領地の婚姻方針に関する情報を得ることができるかもしれないという期待を抱いていた。
ハンネローレは、ヴィルフリートとオルトヴィーンとともに東屋で話をすることになった。ケントリプスが婚約者候補として同席を申し出たため、彼らは側近たちを連れて東屋へ向かった。シュルーメの花が咲く東屋で、ハンネローレはヴィルフリートに求婚の条件を求めるために彼を押さえ込んだ。
ヴィルフリートはこの状況に困惑し、ケントリプスとオルトヴィーンは冷静に説明を求めた。ハンネローレの行動はダンケルフェルガーの女性が父親の意向に背いて意中の相手に縁を求める求婚の方法であり、ヴィルフリートはこれを知らなかった。彼は求婚の条件について理解が浅く、困惑したままであったが、ハンネローレは機会を逃さずに求婚の意思を伝えた。
オルトヴィーンはヴィルフリートに対し、ハンネローレの求婚にどう対応するのかを問うた。ヴィルフリートは求婚を受けるかどうかを決めかねていたが、ハンネローレは求婚を確実なものにするために全力を尽くすことを決意していた。
ヴィルフリートの返答
ヴィルフリートに求婚の条件を求めたハンネローレであったが、ヴィルフリートは困惑し、彼女を娶ることができないと告げた。ヴィルフリートは、自分が次期領主になることを誰も望んでおらず、成人後はゲルラッハのギーベになることが決まっていると説明した。彼は、ハンネローレを領主候補生として迎えることはできないが、彼女の気持ちに感謝していると述べた。
ハンネローレは、ヴィルフリートが次期アウブを望むのであれば全力で支援したいと考えていたが、彼の現実を受け入れた決意を前に、自分の力ではどうにもできないことを理解した。エーレンフェストに嫁ぐことができない状況に、彼女は心に大きな穴が開いたような感覚を覚えた。
その時、彼女の手首にあるお守りが光を放ち、東屋の天井に魔法陣を描き始めた。護衛騎士たちが駆け込んできたとき、魔法陣が輝き、次の瞬間、ハンネローレは何もない白い世界に立っていた。
ドレッファングーアの紡ぐ糸
ハンネローレは白い世界で時の女神ドレッファングーアに出会った。彼女はローゼマインを呼び出すためにハンネローレの体を借りたいと申し出た。ハンネローレはそれを了承し、ドレッファングーアはローゼマインを呼び出した。ローゼマインは武装して現れ、彼女の命の一部を代償にフェルディナンドの運命の糸を繋ぐことを提案された。
ドレッファングーアが言うには、フェルディナンドの運命の糸が切れており、それが繋がらないと二十年以上の歴史が消えてしまうという。ローゼマインはその提案を受け入れ、神々による星結びの儀式が始まった。儀式が終わり、糸を繋ぐためにローゼマインは過去へ向かうこととなった。
その後、ドレッファングーアはハンネローレに一つ願いを叶えると言い、ハンネローレは過去に戻りたいと願った。彼女の願いは縁結びの女神リーベスクヒルフェによって後押しされ、ハンネローレは過去の自分に意識を飛ばすことを許された。ハンネローレは過去に戻ることを期待し、歴史の布に吸い込まれていった。
一年前の貴族院
ハンネローレは、時の女神ドレッファングーアによって過去に戻される中、神々の注意事項を聞いた。彼女は未来の情報を開示してはならず、不審に思われると回収されるとのことだった。ハンネローレはヴィルフリートに想いを伝えたいだけだと決意し、一年前の貴族院に目覚めた。
彼女は、騎士見習いの態度から一年前の状況を思い出した。嫁盗りディッターでの敗北と、自ら手を引いたことで、ダンケルフェルガーでは不遇な立場だったことを再確認した。彼女は早くヴィルフリートに想いを告げて元の時代に戻ることを決意した。
講義の後、ヴィルフリートに話をしたいと告げたハンネローレは、彼の了承を得た。彼女はヴィルフリートの無邪気な表情を見て、彼に告白する決意を固めた。彼女は講義後の時間を利用してヴィルフリートに接触し、想いを伝えることを考えていた。
エグランティーヌ先生の授業が始まり、生徒たちはそれぞれ自分の箱庭を整備した。ハンネローレは、ローゼマインの特別さに思いを巡らせながら、講義後にヴィルフリートに想いを伝えることを決意した。
講義終了後、ハンネローレはヴィルフリートに話をしたいとエグランティーヌ先生に願い出た。エグランティーヌ先生は同席することを求めたが、ハンネローレはそれを受け入れた。彼女はヴィルフリートに求婚の条件を求めるダンケルフェルガーの求婚法を実行したが、ヴィルフリートは困惑した。エグランティーヌ先生は他領では女性が求婚しないことを説明し、ハンネローレに求婚法をやめさせた。
ハンネローレは改めて想いを伝えたが、ヴィルフリートはそれを受け入れず、彼女の申し出を拒否した。ヴィルフリートはダンケルフェルガーの力を使って次期アウブになるつもりはないと述べ、話を打ち切った。ハンネローレは時期を誤ったことに気づき、後悔の念を抱いたが、彼女には今しか機会がなかったと考え、教室を後にした。
ハンネローレは、ヴィルフリートに告白してから自室の隠し部屋に籠もり、自分の行動を振り返っていた。ヴィルフリートの反応が予想外に冷たかったことに驚き、彼が以前に言った「一年前ならば」という言葉が単なる社交辞令だったのかと疑った。ローゼマインからヴィルフリートの心境が変わった可能性を指摘されていたことを思い出し、ヴィルフリートが次期アウブの立場から外れたいと思っていることに気づいた。
午後の講義ではヴィルフリートに避けられ、ハンネローレは落ち込んでいたが、彼に対する思いを振り切って無難に過ごそうと決意した。オルトヴィーンからの質問にも答えず、周囲の好奇の目を避けた。
翌日の講義でもヴィルフリートの態度は変わらず、エグランティーヌ先生が二人を呼び止め、ヴィルフリートの態度を諌めた。エグランティーヌ先生は、ヴィルフリートがダンケルフェルガーに対して不適切な態度をとったことを指摘し、謝罪を求めた。ヴィルフリートは渋々謝罪したが、その態度は白々しく、ハンネローレは距離を感じた。
教室を出たハンネローレは、エグランティーヌ先生からの助言を頼りに周囲には奉納式について話していただけだと説明し、ヴィルフリートとの友情が壊れたことを痛感しながらその場を去った。
ハンネローレは、自室に戻りながら、自分の行動に反省していた。側近のコルドゥラは彼女がエグランティーヌ先生との会話で何を聞いたのかを尋ねた。ハンネローレはエグランティーヌ先生の幸せを羨ましいと感じたことを話した。
コルドゥラは、ハンネローレがヴィルフリートに対して中途半端な態度をとっていることを指摘した。彼女は、ハンネローレがヴィルフリートを本気で想うのであれば、もっと積極的に行動すべきだと述べた。ハンネローレは、側近たちの意見を聞き、これまでヴィルフリートを無理に擁護してきた自分に気づいた。
コルドゥラと側近たちは、ヴィルフリートがエーレンフェストの次期アウブとして責任を果たすべきだったと主張し、彼の態度を非難した。ハンネローレは、これまでの自分の行動や思い込みを反省し、エーレンフェストとの関係を再評価した。
最終的にハンネローレは、ヴィルフリートとの友情が自分にとって何よりも大切であると考え、側近たちにその価値を理解してもらうことを望んだ。コルドゥラと側近たちは、彼女を支え、共に大切なものを守ることを誓った。
ハンネローレは、無理に婚約を進めるよりも、ローゼマインやヴィルフリートとの友好な関係を大切にしたいと考え始めた。彼女は側近たちと意見を交わし、彼らとの関係を改善しようと決意した。過去の失敗を振り返り、元の時代に戻りたいという思いが彼女の中で強くなっていった。
ハンネローレは、未来の情報を漏らすことが禁じられていることを思い出し、禁忌を犯せば元の時代に戻れるかもしれないと考えた。ちょうどその時、護衛騎士のハイルリーゼが報告に来た。中級貴族から、薬草が上級貴族によって採り尽くされたという訴えがあったのだ。彼女は採集場所の回復を行うため、寮内の三年生以上の学生に協力を要請したが、講義前に魔力を使いたくないという反対意見が多かった。
そこでハンネローレは、全員で採集場所を回復しようと提案し、騎士見習いたちを説得した。彼女は全身に魔力を行き渡らせ、強い態度で命令を下し、最終的に全員を動かすことに成功した。採集場所での作業が終わった後、ハンネローレは魔獣に備えるための準備を進め、過去の経験を活かして対処することにした。
ケントリプスが作成した範囲攻撃用の魔術具を使用し、ヘルヴォルの群れを撃退することに成功した。彼女の行動に感銘を受けたケントリプスは、ハンネローレの成長を感じ取った。その瞬間、彼女は突然、女神様たちのもとへと引き戻される感覚に襲われた。
リーベスクヒルフェの握る糸
ハンネローレは倒れた状態で目を覚まし、神々が彼女を覗き込んでいることに気付いた。特に縁結びの女神リーベスクヒルフェは不満そうで、ハンネローレが過去に戻ったのに何もできなかったことに対して悔しがっていた。しかし、ハンネローレは過去の経験から多くの気付きを得たと感謝した。
ハンネローレは禁忌を犯したため、過去での出来事がすべて消え去り、元の時間に戻ったと神々から告げられた。彼女はその経験を忘れたくないと願い、時の女神ドレッファングーアに記憶を残すように頼んだ。ドレッファングーアはその願いを聞き入れた。
その後、リーベスクヒルフェはハンネローレが自らの祈りでヴィルフリートとの縁を切ったことを指摘した。ハンネローレは求婚を拒否するために「これ以上の選択肢はいらない」と強く願ったことを思い出し、その結果が今の状況を招いたことに驚いた。
再び元の世界に戻ったハンネローレは、ユレーヴェに浸かって回復していたところをコルドゥラに助けられた。目覚めた彼女は、コルドゥラから過去の出来事について聞かされ、状況の変化に戸惑った。コリンツダウムやオルトヴィーンからの求婚、ラオフェレーグの参戦など、彼女の周りで大規模な嫁盗りディッターが計画されていることを知った。
ハンネローレは、事態の収拾を求めて祈るべきかどうか悩みつつ、縁結びの女神への感謝と不安を抱えながら、事態の進展を見守ることとなった。
エピローグ
ダンケルフェルガーの寮内は、時の女神ドレッファングーアがハンネローレに降臨したことを受けて騒然としていた。嫁盗りディッターの申し込みが相次ぎ、その喧騒は収まる気配がなかった。学生たちは次々と他領からの手紙を預かり、ダンケルフェルガーに届ける役割を果たしていた。
ケントリプスは、手紙を預かったアンドレアから「またか」とうんざりしながらも、文箱に手紙を整理し続けた。リンデンタールのような下位の小領地からも嫁盗りディッターの申し込みが来る異常事態に、彼は背後に誰かが糸を引いているのではないかと疑った。
その時、ラザンタルクが訓練に向かう途中で部屋に現れた。彼はレスティラウトの護衛騎士であり、ハンネローレの婚約者候補でもある。彼は「片っ端から全部潰せばよい」と豪語し、力で押し通す自信を見せたが、それが騎士らしい性分でもあるため、ケントリプスは心配でもあった。
ハンネローレは、時の女神降臨以来、まだ目覚めていない。彼女の側近も何も言わず、ケントリプスとラザンタルクは彼女の部屋のある上階を見上げた。時が経ち、ハンネローレの目覚めが待たれていた。
ハンネローレは、ヴィルフリートに告白したが拒絶された。悲しそうに微笑んで自分の手首を握る彼女の姿を見て、ケントリプスは彼女の感情を抑えるための仕草であることを知っていた。人前で拒絶された彼女の心は荒れているはずだが、ケントリプスは彼女が自らの想いに決着をつけることが必要だと考え、後押ししていた。
その時、ハンネローレの手首のお守りが光り始め、東屋の天井に魔法陣が描かれた。彼女の体が光に導かれ空中に浮かび、彼女の目は赤から濃い黄色に変わり、威厳のある表情と気配を放った。その姿は時の女神ドレッファングーアの降臨を意味していた。彼女は火急の用があると述べ、神と人を仲介する者を呼ぶよう命じた。
ヴィルフリートがローゼマインを召喚するのではないかと推測し、彼女がその通りであると認めた。彼女は「アレの片割れが大変なことになっている」と述べ、グルトリスハイトが消滅し、約二十年の歴史が崩壊する可能性を警告した。彼女の言葉にその場の全員が驚愕し、混乱が広がった。
ケントリプスはローゼマインを探すためにオルドナンツを飛ばすよう指示を出した。結果、ローゼマインはアレキサンドリアでの異常事態のために領地に戻っていることが判明した。ケントリプスは、東屋から暖かい場所に移動することを提案したが、女神はそれを拒否した。彼女の降臨に伴い、教師たちや他領の領主候補生たちが集まり始め、ハンネローレを守るためにダンケルフェルガーの上級騎士見習い達が集まった。
ローゼマインの到着が待たれる中、ケントリプスは不安と恐れに苛まれながらも、事態の収束を願っていた。
誰もが緊張して待つ中、ローゼマインが到着し、その様子に周囲はざわめいた。彼女は多くの魔術具を携え、普段とは異なる厳しい表情を見せていた。ローゼマインはその場にいるオルトヴィーンの指摘に対し「これでも足りないくらい」と答え、時の女神ドレッファングーアからの情報が伝わっていた。
ヴィルフリートはローゼマインに対し、ハンネローレの異変を早く解決するよう促した。ローゼマインはケントリプスに、ハンネローレの今後について助言するよう側仕えに申しつけていると告げた。そして彼女は、アウブ・ダンケルフェルガーと協力し、ハンネローレを守るよう依頼しながら東屋に入った。
ローゼマインは時の女神ドレッファングーアに挨拶し、神力が放たれる中、彼女は光に溶けるように消えていった。ケントリプスはハンネローレの体が落ちるのを心配して東屋に駆け込み、彼女を確保した。ハンネローレの体は仮死状態であり、護衛騎士に引き渡された。
リーゼレータはハンネローレの今後についての助言をコルドゥラに伝え、意識が戻らない場合の対応策を説明した。ヴィルフリートとオルトヴィーンの会話が続く中、ヴィルフリートはハンネローレへの求婚をしない意向を示し、オルトヴィーンはそれに対し、自分が求婚する意志を表明した。
この状況をケントリプスは危惧しており、他の領地がハンネローレを求めて動き出す可能性を考え、ドレヴァンヒェルとコリンツダウムが競争することを懸念していた。彼はハンネローレの婚約者候補として自分とラザンタルクの名を挙げ、ダンケルフェルガーの上級貴族としての責任を果たす意志を示した。ヴィルフリートは、領地の宝であるハンネローレが守られるべきであると述べ、会話は続いていった。
ケントリプスはヴィルフリートの言葉に腹立たしさを感じつつ、現在のダンケルフェルガーの状況を憂慮していた。ハンネローレへの嫁盗りディッターの申し込みが相次ぎ、寮内は混乱していた。さらに、婚約者候補のラザンタルクとラオフェレーグの対立で内部が分裂しており、ハンネローレが目覚めない限り、状況を統制することが困難であった。神力に晒されていたハンネローレの体調も心配であったが、アレキサンドリアの側仕えは、戻る期間は不定であり、接し方のみを教えてくれるという回答に留まっていた。
ケントリプスはこの間にできる限りのことをしようと、ディッター用の新しい魔術具の開発を決意した。彼が会議室を出て自室に向かう途中、コルドゥラに呼び止められた。コルドゥラは彼にハンネローレが目覚めたことを伝え、詳細を知りたがっていると告げた。ハンネローレとコルドゥラはまだ他の者には目覚めを知らせたくない様子であり、ケントリプスは早急に彼女のもとに向かうことにした。
コルドゥラに案内され、ケントリプスは下働きが使う通路を通ってハンネローレの部屋に向かった。貴族院の女性の部屋に男子が立ち入ることは禁じられているが、彼はハンネローレの目覚めに安堵し、その道を進むことにした。ケントリプスはコルドゥラと共に狭くて複雑な通路を進み、軋む階段を上がっていった。ハンネローレが無事に目覚めたことを喜びながら、ケントリプスは彼女のもとへと向かった。
閑話
アウブの定時報告
アウブ・アレキサンドリアとなったローゼマインは、貴族院での初めての報告を水色のシュミル型魔術具「ディナン」を通じてフェルディナンドに行った。フェルディナンドはローゼマインに、毎日七の鐘に一日の報告をするよう指示していたが、彼女の報告書には誤魔化しや簡略化が多いため、口頭での報告を求めた。
ローゼマインは、友人であるハンネローレからの相談を受けて急な茶会を開くことになったが、フェルディナンドはこれが領地間の関係に問題を引き起こす可能性を指摘した。彼は、アウブ・アレキサンドリアとして行動する範囲を守るようローゼマインに忠告し、茶会の内容を録音することを条件に許可を与えた。
フェルディナンドは、ローゼマインの行動を把握することで後始末が楽になると考えていた。ローゼマインは、フェルディナンドの忠告に従い、領地間の問題を避けるための準備を進めた。彼女はフェルディナンドとの毎日の報告を通じて、彼の健康を最優先に考えるよう自分に言い聞かせた。
ローゼマインは、フェルディナンドの信頼を得るために努力を続け、フェルディナンドとの親しい関係を築くことに喜びを感じていた。彼女はフェルディナンドに対する感謝の気持ちを持ちつつ、彼に負担をかけないように心掛けていた。
休憩中の対立
貴族院の側近訓練日で、領主一族の側近は全員参加が義務づけられていた。訓練では、武寄りでない者も含めて主を守るための訓練が行われた。最上級生の護衛騎士見習いフェシュテルトは、魔力の多いラザンタルクと慎重すぎるコードネストにそれぞれ指導を行った。訓練の反省をしながら、側近たちはハンネローレとローゼマインが急遽お茶会を開くことに不安を抱いた。
領主会議でダンケルフェルガーが重用され、新ツェントの影響もあり、貴族院では例年とは違う要望が多く、ハンネローレとローゼマインの会話が注目されていた。ハンネローレの側近が訓練を欠席した理由については様々な憶測が飛び交い、領地間の政治的な動向に対する関心が高まっていた。
フェシュテルトは、ケントリプスとラザンタルクの婚約者候補としての立場を激励したが、ラザンタルクは情報収集が得意なケントリプスに劣るとされ、自分の婚約者としての期待が薄いことに悔しさを感じた。ケントリプスとラザンタルクは、幼少期の交流会でハンネローレに初めて会っており、ケントリプスがその際にハンネローレに関心を抱いたことが示唆された。訓練の最中、側近たちはハンネローレの婚約者選びについても思案し、彼女の想いがどこにあるのかを探ろうとしていた。
ケントリプスは幼少期に初めてハンネローレに会ったとき、彼女のことを「泣き虫姫」として可愛らしいと思っていた。幼い頃、ラザンタルクはケントリプスがハンネローレと交流する様子を見て複雑な感情を抱き、城に行きたいと父親に訴えたが、冷たく却下された。その後、挨拶の練習を重ねて四歳の時に城への参加が許可された。
ラザンタルクは、ケントリプスがハンネローレを可愛いと思っていることを理解できず、彼女を普通の女の子としか見ていなかった。しかし、訓練に参加するハンネローレが最後まで諦めずに努力する姿を見て、彼女の本当の美しさに気づいた。彼はその瞬間から彼女を特別に思うようになったが、その感情を直接伝えることはできなかった。
ケントリプスは自分の望みを諦める癖があり、今回もハンネローレへの思いを押し殺していた。それに対し、ラザンタルクはケントリプスの逃げ腰な態度に苛立ちを覚え、ハンネローレへの思いを正面からぶつけるべきだと考えていた。ケントリプスに対して「逃げるな」と叫び、二人の間で口論が始まった。フェシュテルトに制止されるも、ラザンタルクは自分の思いを真っ直ぐに伝えようと奮闘し、訓練場でケントリプスを追いかけ続けた。
コリンツダウムの執務室にて
ジギスヴァルトは北方のギーベたちとの懇親会から退出し、妻のナーエラッヒェとともに領主執務室に移動した。彼はアウブ・コリンツダウムに就任してから初めての冬の社交界を迎えており、領主としての新たな役割に戸惑いつつも職務を果たしていた。
彼はアドルフィーネとの離婚後、ナーエラッヒェを第一夫人としていたが、上位領地の領主一族から新たな妻を迎える必要があると考えていた。特に、ダンケルフェルガーのハンネローレを第一夫人として迎えることを考えていたが、領主会議でドレヴァンヒェルに妨害され、婚約の打診ができなかった。
ナーエラッヒェは、ジャンシアーヌやドレヴァンヒェルの領主候補生を他の選択肢として提案したが、ジャンシアーヌは幼すぎ、アドルフィーネの異母妹は彼女の妨害が予想された。そこで、先に第三夫人を迎え入れるという案が浮上した。
ジギスヴァルトは、ドレヴァンヒェルと将来的な協力関係を築くため、アドルフィーネの異母兄妹との婚姻を考慮し、アドルフィーネ個人の問題を強調することで世間の同情を得る戦略を練った。ナーエラッヒェの助言により、彼は新たな婚姻計画を進めることを決意した。
ジギスヴァルトは、文官から貴族院で起こった出来事についての報告を受け取った。その内容は、時の女神ドレッファングーアがハンネローレに降臨し、ローゼマインを呼び出して連れ去ったというものだった。彼は、ハンネローレが第二の女神の化身となったことを喜ばしく思い、彼女が将来的に英知の女神を降臨させる可能性があると考えた。そのため、ハンネローレを次期王である自分の妻にすることがふさわしいと感じ、貴族院でハンネローレの婚約に関する噂を流すように学生たちに指示した。
ジギスヴァルトは、ハンネローレとの婚約を進めるためにアナスタージウスと父であるトラオクヴァールにも協力を求めたが、彼らからの支援は得られなかった。アナスタージウスからは、過去のアドルフィーネとの対応を理由にダンケルフェルガーがハンネローレをコリンツダウムへ嫁がせるとは思えないと言われ、父からは自身の行動の結果であると非難された。
さらに、ナーエラッヒェからの指摘で、ブルーメフェルトが第二の女神の化身を望んでいる可能性にも気づいた。ブルーメフェルトは、ヒルデブラントの婚姻を通じてハンネローレを娶ろうとするかもしれないという懸念があった。このため、ジギスヴァルトはダンケルフェルガーへの正式な求婚を急ぐことを決めた。
ジギスヴァルトは、ハンネローレを他領に奪われないよう早々に求婚したが、ダンケルフェルガーからの返答は遅れていた。理由は、ハンネローレが目覚めた後に返答したいというものだった。この遅れに不満を抱くジギスヴァルトは、噂を広めることによってダンケルフェルガーが現在の婚約者候補を押し通すことが難しい状況を作り出そうとしていた。
やがてダンケルフェルガーから、ドレヴァンヒェルがハンネローレを求めて嫁盗りディッターを申し込んできたため、求婚を受け付けられなくなったという返答が届いた。この野蛮な行為に驚いたジギスヴァルトは、嫁盗りディッターを申し込むことを決意し、そのための根回しを始めた。彼は、他の領地にもディッターに参加させることでダンケルフェルガーの防御を突破することを考え、噂を広める計画を立てた。ジギスヴァルトは文官に、貴族院での噂を流すよう指示し、さらに一年生の領主候補生を利用してダンケルフェルガーの内部で不和を煽ることを考えた。そして、コリンツダウムからも嫁盗りディッターを申し込む準備を進めるよう命じた。
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