小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー」感想・ネタバレ

小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー」感想・ネタバレ

どんな本?

「千早ちゃんの評判に深刻なエラー」は、アクターノイドと呼ばれる人型機械を操縦して任務をこなす未来的な世界を舞台にしている。この世界では、企業や個人がアクターノイドを使い、さまざまな依頼を遂行しており、戦闘や運搬、警備といった仕事が日常的に行われている。技術が発達し、アクターたちはこの機械を駆使して、現実世界においても仮想的なバトルに身を投じるような仕事環境が広がっている。

物語の主人公、千早は、平凡な生活を送りたいと願いながら、アクターとしての仕事を始めた。しかし、彼女が引き受ける依頼はいつも波乱に満ちており、次々とトラブルに巻き込まれてしまう。千早は戦闘を避けたいのに、なぜか戦闘の渦中に入り込んでしまうことが多く、周囲からは「劇場型戦争屋ボマー」として誤解され、思いもよらぬ評判が立ってしまう。

本作は、彼女がその誤解された評判と戦いながら、平穏を取り戻そうとする姿を描く。テンポの良いストーリー展開の中で、シリアスな場面とコミカルな場面が交錯したものがである。

どのキャラクターも真剣に考え、次なる一手を指すのだが、、
「ふひっ」とテンパった千早が全て御破算にしてしまう。
誰も幸せにならない素敵なストーリー!

読んだ本のタイトル

千早ちゃんの評判に深刻なエラー
著者:氷純 氏
イラスト:どぅーゆー  氏

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あらすじ・内容

根暗な彼女は”爆弾魔”!? 痛快×異世界コメディ登場!

 根暗なぼっち少女・千早ちゃん。将来の夢は若隠居。
 重度のコミュ症で就職できずにいた彼女はある日、完全リモート勤務という言葉に釣られ人型工作機械《アクタノイド》での異世界開拓に従事することに。
『新界』と呼ばれる異界へのゲートが開いたこの世界では、各国が資源開拓でしのぎを削り合っていたのだ!
 何でも一人で解決する(他人に聞けないだけ)千早ちゃんはなるべく安全な仕事をこなしていく! ……はずだった。
「――なんなんだ、あのボマーは!?」
 行く先々で天才的な操縦センスと爆発オチで数多の陰謀を退ける彼女は、知らずのうちに戦争屋としてみるみる悪評が広まってしまい――?
「真面目に働いているだけなのに……。うぇ……なんでぇ!?」

千早ちゃんの評判に深刻なエラー

感想

『千早ちゃんの評判に深刻なエラー』は、異世界でアクターと呼ばれる遠隔操縦出来るロボットでの冒険を描く痛快コメディである。
重度のコミュ症で引きこもりがちな少女・兎吹千早が主人公で。
この物語の舞台は、新たに開かれた「新界」と呼ばれる異世界。
各国が資源開拓を巡り競い合うこの世界で、千早は人型機械「アクタノイド」を遠隔操作し、安全な仕事をこなして引きこもり生活を送りたいと願っていた。

しかし、現実は彼女の思惑通りにはいかなかった。
千早はその天才的(壊滅的?)な戦術センスと不運(悪運?)によって、数々の戦闘に巻き込まれてしまう。
意図せずして彼女が引き起こす爆発の数々から、周囲では「爆弾魔」や「劇場型戦争屋」としての悪評が立ち、彼女は平穏な依頼を取り戻すために奮闘(無駄な努力)するが、やればやるほど「ボマー、アイツはヤベェ」となってしまう。

千早を襲った奴はアクターを失って経済的損害を受けて不幸。
襲われた千早は、爆破を駆使して
本作は、千早のコミカルで波乱万丈な逃げ回り返り討ちにした後に、相手のアクターを回収して売り払い金は入るが、依頼が戦闘系の物しか依頼されずに不幸。

誰も幸せにならない素敵なストーリーが面白い。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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千早ちゃんの評判に深刻なエラー 2

その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

プロローグ

獣道を駆ける影が存在していた。山は草木に覆われ、わずかな木漏れ日が差し込んでいた。兎吹千早は、なぜこの状況に陥ったのか自問していたが、追跡者たちがすぐ背後に迫っていた。追跡者たちはラプトルのような外見をしており、鋭い歯と涎を垂らしながら猛スピードで千早を追い詰めていた。

千早は手持ちの突撃銃「ブレイクスルー」を頼りに反撃を試みたが、弾丸は追跡者たちの鱗に弾かれてしまった。逃げ続けたものの、千早は山の斜面を滑り落ち、崖の下に転落した。崖の上にいた四頭の追跡者たちは二手に分かれ、千早を挟み撃ちにしようとしていた。

千早は崖の底で腐葉土に埋もれた貨物用コンテナを発見した。コンテナの中に活路を見いだそうと、千早は扉を強引に開けたが、そこには大量の掘削用爆薬が入っていた。

追跡者たちが迫る中、千早はコンテナ内に身を潜めたが、追跡者たちはコンテナの中に顔を突っ込んできた。千早は引きつった笑みを浮かべ、銃口を自らの胸に当て、引き金を引いた。飛び出した弾丸がバッテリーを撃ち抜き、掘削用爆薬に引火、コンテナは大爆発を起こした。

爆発の後、千早は「お仕事だから……ごめんなさい」とつぶやき、操作していた等身大のロボット「アクタノイド」に謝罪した。

第一話

兎吹千早は一か月前、就職活動に失敗していた。工業高校を卒業し、設計分野に特化して就職活動を続けていたが、面接でのコミュニケーション能力の不足が原因で毎回不採用となっていた。極度の内気さとコミュニケーション障害が千早の最大の課題であり、グループワークでも一人で作業を進めてしまうことが問題視されていた。

千早は就職活動の失敗に苦しみながらも、ある日郵便受けに分厚い封筒を見つけた。封筒には「新界資源庁」と記され、工業高校の卒業生を対象に、新界での資源調査を目的とする人型建設機械アクタノイドの操縦者募集の案内が含まれていた。千早はこの募集に興味を持ち、完全リモートでの作業が可能であるという点に魅力を感じた。

アクタノイドは遠隔操作による作業ができるため、人と直接関わらずに済む理想的な職業であった。初回の業務では政府が経費を負担し、修理費も含まれているという好待遇に、千早は応募することを決意した。

新界開発区は群馬県に位置し、山を切り開いて造られたこの区画は、新界資源庁や各種企業の施設、住宅区などに分かれていた。産業スパイの防止のため、身分証の提示が義務付けられていた。兎吹千早は、新界資源庁の庁舎で身分証を発行してもらい、アクターとしての説明会に参加した。

説明会では、アクターが扱うアクタノイドについて詳しく説明され、特にラウンダー系、スプリンター系、ランノイド系、メディカロイド系、オーダー系の五つの分類が紹介された。千早は説明を受けた後、実際にアクタノイドの操作訓練に参加することになった。

千早のインストラクターは岩筋猛という筋肉質の男性で、操作訓練を通じてアクタノイドの動作や通信ラグの特性について学んだ。アクタノイドは遠隔操作されるため、通信ラグが生じることがあり、千早はその違和感に気付いた。岩筋は、アクターが常に危険予測を心掛け、迅速に対応することの重要性を教えた。訓練は無事に終了し、千早は次のステップに進む準備が整った。

兎吹千早は、新界資源庁の講習を終え、専用アプリ「アクターズクエスト」への新人アカウントでのログイン情報を受け取った。初依頼は政府がすべての経費を負担するため、気楽に取り組むようにとインストラクターの岩筋猛に励まされた。千早はホテルの部屋に入り、そこに備え付けられた広々としたアクタールームに感心しつつ、初依頼を遂行する準備を整えた。

初めての依頼は物資輸送で、千早は民間チームと協力して護衛任務を行った。しかし、途中で森から出現したイェンバーと呼ばれる獰猛な生物に襲撃され、千早はその場で囮役を命じられた。彼女は追いかけてくるイェンバーを引きつけるために走り続け、最終的には崖下でコンテナを発見し、機体もろとも爆発してしまった。

虎合は報告書を完成させた後、ストレッチをして体をほぐしていた。その後輩が報告書に関する謝罪に来たが、虎合は気にせず励ました。今回の報告書は、新人アクターの研修を兼ねた物資輸送任務に関するものであった。目的地でのイェンバーの襲撃による壊滅が報告されておらず、連絡が遅れた原因は職員の交代時間と後輩の到着の遅れによるものであった。

報告書を読んだ後輩は、新人アクターの動きが場当たり的であるが思い切りが良すぎることに疑問を抱いていた。虎合も同感で、新人アクターはイェンバーに対して効果的な射撃を行い、戦線を維持するのに貢献していた。新人が機体を全壊させるまでに至ったことは珍しいが、落ちていた爆発物を使って自機もろとも敵を排除した行動は特異であった。

新界資源庁ではアクターの個人情報が職員の目からも隠されており、過去に職員が個人情報を売ろうとした事件があったことが背景にあった。新界は事故が多発する危険な場所であり、アクター同士の戦闘も公には認められていない。しかし、経済的な利益を求めるため、こうした状況が黙認されていた。

新人アクターの登録が完了し、虎合は改めてその爆破行為を振り返った。爆破は最終手段であり、通常は自機を完全に破壊することは避けられる。しかし、この新人はためらいなく行動し、虎合は彼がこれから恨みを買う可能性が高いと感じていた。

兎吹千早は目覚ましの音で目を覚まし、ホテルの部屋であることを思い出した。アクターとしての初仕事を終えたものの、機体を全壊させてしまったことが心に引っかかっていた。千早は不安を抱きながらも、ホテルの朝食を楽しむためにレストランへ向かった。そこでインストラクターの岩筋と再会し、少し緊張しながらも会話を交わした。

朝食後、千早は休憩スペースでパンフレットを手に取ったが、そこでも再び岩筋と遭遇し、さらに新界化学産業の社長である能化ココという女性とも会った。会話を交わしつつ、千早は早々にその場を離れた。部屋に戻った千早は、新界資源庁からの合格通知を受け取り、少し気分を持ち直した。しかし、これから引っ越し手続きや業者とのやり取りが待っていることを忘れていた。

能化ココは兎吹千早を見送り、内気で未熟な彼女を即座に勧誘の対象外と判断した。その後、能化ココは岩筋と共に会議室に向かい、インストラクターとしての評価シートを確認した。評価は高く、これをもとに能化ココは岩筋を新界化学産業のクランリーダーに迎え入れる意向を示した。岩筋はこの提案を快諾し、握手を交わした。

能化ココは岩筋に、彼が率いるクランは精鋭部隊としての小規模なものであると説明した。岩筋も、事故が多発している新界の状況を考慮し、その必要性を理解した。二人は新界資源庁の対応不足に苦笑しながらも、精鋭部隊の結成に向けて話を進めた。

第二話

千早は新人アクターとして新居に引っ越し、アクタールームを完備した物件に落ち着いた。引きこもりの彼女にとっては、外出の必要が少なく、設備が整ったこの環境は理想的だった。最初の依頼を無事に終えた後、彼女はアクターズクエストに登録され、次の依頼を探していた。

戦闘依頼を避けたいと考えた千早は、気象観測機器の設置依頼に応募し、一人でその作業を行った。依頼は順調に進んだが、途中で巨大な生物モルドトラッシに遭遇。千早は機体を壊さないよう慎重に対応し、手榴弾を使ってモルドトラッシを撃退することに成功した。その後、依頼を完了し、報酬を得たものの、清掃費用やその他の費用で思った以上にお金を使ってしまい、世知辛さを感じた。

千早は戦闘の恐怖を実感しつつも、手榴弾の有用性に気付き、今後も生物との戦いに備えて武器の知識を深める必要性を感じた。そして、彼女は次の依頼として湖の水質調査に応募し、引き続きアクター業に励む決意を固めた。

第三話

千早は湖の水質調査の依頼を受けて、迷彩カラーのオールラウンダーで再び湖に向かった。前回の教訓を活かし、モルドトラッシに見つかりにくい機体を選び、作業を進めた。水質のサンプルを採取し、データを送信した後、彼女はモルドトラッシの巣を発見し、繁殖期であることに気付いた。定点カメラを設置してモルドトラッシの観察を開始し、その様子を記録した。

作業が順調に進み黒字が見えた矢先、千早は突然、森の中で銃撃を受けた。右腕が損傷し、黒字が消えたどころか修理費用がかさむ状況に追い込まれた。千早は必死に逃げようとしたが、森を出た先で多数のアクタノイドが待ち構え、彼女の機体を攻撃し始めた。前後を挟まれた絶望的な状況に陥った千早は、逃げることも戦うこともできないと悟り、最後にいやがらせをしようと決意した。

岩筋が率いるクランは行軍訓練中に突発的な銃声を聞いた。彼らは迷彩柄のオールラウンダーが攻撃を受けたことを確認し、そのオールラウンダーがソーラーパネル群へ向かって弾幕で追い払われたことを知った。新界での戦乱が背景にあり、発電施設を守る守備隊とその攻防が始まったが、オールラウンダーは煙幕を張り、巧妙な手段で発電施設に損害を与えた。

オールラウンダーの一連の行動は異常であり、特に手榴弾を使った攻撃で守備隊に大きな混乱を引き起こした。発電施設は大破し、守備隊は撤退を余儀なくされた。岩筋は、このボマーアクターの異常な戦術に驚きつつも、今後の仮想敵としてクランの訓練対象にすることを決意した。

彼は、新界にいる新人アクターを守るためにも、このような危険な盗賊アクターとの戦いを覚悟し、クランを率いていく決意を新たにした。

千早は、右腕と左脚に深刻な損傷を負ったオールラウンダーを操作し、森の中をふらふらと進んでいた。先ほどの戦闘で敵の発電施設に大きな損害を与えたが、その過程でオールラウンダーも激しい損傷を受けた。千早は煙幕と定点カメラを巧妙に利用し、狙撃手の位置を推測して攻撃を避けつつ、手榴弾を発電施設のバッテリー群に命中させた。

幸運にも千早のオールラウンダーはまだ自力で移動できたが、修理費は高くつくことが予想された。それでも、千早は黒字化の希望を抱きながら、破損したアクタノイドの部品を収集し始めた。しかし、燃え上がるバッテリーによってアクタノイドが燃え始め、その黒字化の見込みも危うくなった。

第四話

千早は、迷彩柄のオールラウンダーの修理費を差し引いても大幅な黒字となり、通帳に百万円もの残高があることに驚愕していた。新界で破損したアクタノイドが高額で売却され、千早は「明日は我が身」と危機感を覚えながらも、今回の大勝により少し贅沢しようと決意した。

外出しようとしたところ、アパート前には消防車が停まっており、騒ぎに巻き込まれたくない千早はオンラインで参拝を済ませ、落ち着きを取り戻した。続いて、モルドトラッシの生態報告書を作成し、新界資源庁に送信する一方、今後の依頼を確認していた。

千早の報告書が注目され、甘城農業総合開発グループからモルドトラッシの営巣地まで案内するという直接依頼が舞い込んだ。千早は案内だけならばと承諾し、これにより戦闘評価を避けられるため、平和な依頼に繋がると期待していた。

その後、千早は神社へ参拝し、外食を試みたが、目当ての喫茶店が長期休業中であることを知り、スーパーで買い物をして帰宅することにした。

翌日、千早は早朝に起き、軽食を準備してオールラウンダーを起動させた。今回の依頼はモルドトラッシの営巣地への案内であり、千早はその任務に備えた。装備を確認し、迷彩塗装のオールラウンダーを使い、案内の準備を整えた。チームとの合流場所で、三機のアクタノイドと合流したが、初対面のアクター達との会話や自己紹介には苦手意識を持っていた。

千早はボイスチェンジャーを使いながら、最低限の挨拶をしたが、詳細な説明や自己紹介を避け、戸惑いを隠し切れなかった。しかし、事前に準備していた地図や緊急時の合流場所などの情報をチャットに貼り付け、ルート案内の手順を示したことで、チームメンバーは納得し、隊列を整えて行動を開始した。

その後、他のアクターが自己紹介を始め、千早は少し安心したが、自分の役割に不安を感じながらも、任務を進めることにした。

八儀テクノロジーの代表である八儀は、ソーラーパネルが全滅したという報告を受け、驚きつつも事態を理解した。迷彩柄のオールラウンダーを操るアクターが、自機の破損を恐れず自爆覚悟で発電施設を襲撃し、火災を引き起こしたのである。部下の現場判断は正しかったが、相手の異常な行動に対応しきれなかったことが敗因であった。

その後、八儀は迷彩柄のオールラウンダーのアカウントを特定し、そのアクターがモルドトラッシの食性に関する報告書を公開していたことを知った。この報告書が襲撃への挑発と捉えられると感じた八儀は、角原グループのメンツを守るために報復を決意した。

八儀は、部下にこのアカウントに関連する集団を襲撃し、迷彩柄のオールラウンダーを優先して撃破するよう命じた。さらに、角原グループの指導者である角原為之との面会の準備も進め、次なる戦いに備えた。

千早たちは予定通り午前十時過ぎにモルドトラッシの営巣地に到着し、千早の道案内の依頼は完了した。報酬は支払われたが、千早は作業に夢中でそれを確認できなかった。アクターたちが巣の調査を進める中、突如敵の襲撃が発生し、フサリアが大破。千早たちは敵に追われることになった。

千早はドライアイスとモルドトラッシの死骸を使い、湖で敵をおびき寄せ、爆発を引き起こすことで敵機を撃破した。その後、千早たちは大破した機体を回収し、安全な場所へ撤退するために急いだ。

千早は甘城農業総合開発グループへの報告書を提出し、今回の襲撃が自分の逆恨みによるものであると感じつつも、確証がないためそれを報告書に記載しなかった。他のメンバーは依頼が失敗に終わり、機体も破壊される結果となったが、千早は依頼を完遂したことで報酬を得た。五百万円の報酬に喜ぶ一方で、またも狙われるのではないかと不安に駆られた。

千早は戦闘系の依頼が増えていることに不安を覚え、戦闘を避けるため平和な輸送依頼を受けることに決めた。新界化学産業の依頼で、動植物の調査が進んでいる平和な地域での輸送作業を選び、戦闘から離れた活動に安心感を見出した。

第五話

八儀は部下を退室させた後、報復部隊が全滅したことを確認し、戦況の異常さに驚愕した。オールラウンダー一機による奇襲で現行機が全滅する事態は常識外れであり、特にモルドトラッシを呼び集めて戦局を操るこのボマーの行動は不可解であった。さらに、ボマーが自分たちの報復を予期して準備していたと八儀は推測し、報復を諦めるべきだと結論づけた。

士気の低下を回復させるためには勝利が必要であると八儀は考え、角原為之に協力を求めるべく連絡を入れた。角原は八儀に対し、新界化学産業の仮設ガレージを襲撃して発電設備を奪うように暗示した。この略奪が成功すれば戦力の補充が可能となる一方で、失敗しても八儀テクノロジーに責任を押し付けることができ、角原には損がない状況であった。

八儀は襲撃を決断し、最大戦力である野衾を出撃させる準備を進めた。勝利を見越し、士気の回復と戦力の増強を目指して行動を開始することにしたのである。

千早は、新たな物資輸送の依頼に備えて風船式ダミー手榴弾を購入した。今まで何度も襲撃に遭ってきた彼女は、念のために追加の手榴弾を準備していた。依頼は安全な内容だったが、千早は自分の運を信じられず、慎重に装備を整えた。そしてオールラウンダーに荷物を積み、依頼先である新界化学産業の仮設ガレージに向けて出発した。

道中、千早は「赤鐘の森」と呼ばれる広大な森を通過したが、途中で手榴弾による煙を目にし、警戒した。その後、仮設ガレージが所属不明のアクタノイド部隊に襲撃されているという知らせを受け、千早は救援要請を拒否し、撤退を決断した。

しかし、撤退する途中で大型ドローンに追跡され、さらにアクタノイド部隊に遭遇してしまう。千早は粉塵手榴弾で敵の視界を遮ろうとしたが、敵は高度な連携で動き、千早のオールラウンダーを追い詰めた。

千早は絶望的な状況に陥ったが、捨てようとした鉄箱と壊れたオールラウンダーの左腕を見つめ、不気味に笑いながらある計画を思いついた。彼女は最後の手段として、このアイデアを実行する決意を固めた。

八儀は、オーダー系アクタノイド「野衾」を駆使し、戦場を俯瞰しながらドローンを操って援護していた。彼は救援部隊に追われるオールラウンダーを見つけ、その動きを警戒した。だが、オールラウンダーは予想外の行動を繰り返し、救援部隊を混乱させた。さらに、粉塵手榴弾を使って部隊を翻弄しながら突撃してきたオールラウンダーが仮設ガレージに突入し、さらなる混乱を巻き起こした。

八儀はこのオールラウンダーがかつての迷彩ボマーであることに気付き、その無謀な行動に驚愕した。粉塵手榴弾を大量に投げ込み、風船式ダミー手榴弾と本物の手榴弾を混ぜて地上部隊を混乱させたオールラウンダーは、最終的に仮設ガレージ内へと逃げ込んだ。

八儀は部隊を指揮していたが、状況は悪化し、野衾が攻撃を受けて墜落してしまった。通信が途絶し、八儀は自らの敗北を悟った。彼は、脱力感から夜逃げを考えるほどに絶望していた。

新界化学産業の代表である能化ココは、仮設ガレージへの襲撃を受けたが、防衛部隊がその襲撃者を一掃したとの報告を受けていた。しかし、能化ココは今回の防衛戦に大きな問題があったと感じていた。仮設ガレージへの救援要請を拒否したにもかかわらず、野良アクターであるオールラウンダーが大量の手榴弾と粉塵手榴弾を使い、単機で包囲網に穴を開け、さらに敵のオーダー系アクタノイドを撃破する結果を生んだのだ。

このアクターがもたらした戦果は大きく、新界化学産業側が圧倒的不利だった状況を逆転させた。しかし、その功労者であるオールラウンダーは最終的に仮設ガレージ内で排除され、正当な報酬も与えられなかった。これにより、新界化学産業は非常に悪い立場に立たされていた。

能化ココは、オールラウンダーが「ボマー」という戦争屋であり、意図的に戦場を操り利益を得ようとしていることに気づき、その行動の危険性を強く感じていた。彼女はボマーを要注意人物とし、対策を急ぐよう部下に命じた。

角原グループの代表、角原為之は、八儀テクノロジーが夜逃げしたという報告を受け、予想通りの結果として鼻で笑った。八儀テクノロジーは、全アクタノイドを喪失し、事業を続ける戦力を失ったため、角原グループのメンツを守るために逃げたのだ。追跡や口封じを提案した護衛の伴場に対し、角原は八儀テクノロジーが角原の不法行為を証明する証拠を持っていないため、追う価値がないと判断した。

角原の関心は、夜逃げの原因となった新界化学産業との戦闘記録に向けられていた。その中で、オールラウンダーを操る謎の「ボマー」が登場し、大量の爆発物や風船式ダミー手榴弾を使用していた。角原は、このボマーを劇場型の戦争屋として評価し、演者として自己を切り離して行動していると考えた。彼は、ボマーが派手で目立つ行動を取るため、利用価値があると判断し、目くらましとして活用する計画を立てた。

伴場が八儀テクノロジーの喪失について示しをつけるべきだと提案したが、角原はボマーを潰すのではなく、むしろ彼を利用して目立たせることで、自分たちの目的を果たそうと考えていた。

エピローグ

千早は、大量の資産を得たことに対して恐怖を感じていた。仮設ガレージ襲撃犯のアクタノイドを売却した結果、非常に高額な金額が預金に振り込まれたため、喜ぶどころか神経を磨り減らしていた。「け、桁が違う……」と呟き、カピバラのぬいぐるみを抱きしめて震えていた。

アクター業を始めた理由は、平穏な生活を求めたからであったが、結果として戦闘ばかりの依頼が続き、大金を手にする事態に陥った。しかも、その資産のほとんどが、倒したアクタノイドの売却金であるため、誰かに恨まれている可能性を恐れていた。実際、千早は企業を倒産に追い込んだ劇場型戦争屋ボマーと称されるような存在になっているが、そのことは本人は知らず、ただ怖がっていた。

千早は、新界化学産業が感謝しているだろうと期待していたものの、現実は厳しかった。預金残高を見て神経がすり減り続ける中、アクターズクエストを開いて依頼を確認したが、平和な依頼は見つからず、戦闘系の依頼が並んでいた。千早は涙目で「……なんでぇ?」と天井を見上げ、平穏な生活が遠のいていく現実に絶望していた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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