小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー 3」感想・ネタバレ

小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー 3」感想・ネタバレ

どんな本?

『千早ちゃんの評判に深刻なエラー3』は、異世界を舞台にした痛快コメディの第3弾である。主人公・千早は新たな世界「新界」の開拓に励む中、未確認生物「万色の巨竜」の調査依頼を受ける。このドラゴンは高度な擬態能力を持ち、その映像を捉えることができれば莫大な価値があるとされる。戦闘以外の依頼に興味を示す千早は、平和にお金を稼ぐことを目指して新界へと向かう。

主要キャラクター
千早:主人公であり、最凶のボマーとして知られる。お金を稼ぐために新界の調査や開拓に取り組む。

物語の特徴

本作は、異世界での冒険とユーモラスな展開が魅力である。高度な擬態能力を持つドラゴンの調査というユニークな設定や、戦闘以外の依頼に挑む千早の姿が他の作品と差別化されている。また、平和にお金を稼ごうとする主人公の切実な思いが読者の共感を呼ぶ。

出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• レーベル:電撃文庫 
• 発売日:2025年3月7日 
• 判型:文庫判/276ページ 
• 定価:880円(本体800円+税)
• ISBN:9784049162967

読んだ本のタイトル

千早ちゃんの評判に深刻なエラー
著者:氷純 氏
イラスト:どぅーゆー  氏

gifbanner?sid=3589474&pid=889458714 小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー 3」感想・ネタバレBookliveで購入gifbanner?sid=3589474&pid=889059394 小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー 3」感想・ネタバレBOOK☆WALKERで購入gifbanner?sid=3589474&pid=890540720 小説「千早ちゃんの評判に深刻なエラー 3」感想・ネタバレ

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あらすじ・内容

最凶のボマーが往く、痛快×異世界コメディ第三弾!
 今日も新界開拓に勤しむ千早ちゃんのもとへ舞い込んだとある依頼。
 それはアクターたちの間で密かに噂になっている未確認の新界生物の調査。ターゲットは『万色の巨竜』――それは超高度な擬態能力を持つドラゴンだった!
 もし調査の手掛かりとなる映像が撮影できれば、それは莫大な価値を生む。待望の戦闘系でない依頼にもちろん千早も興味深々で……?
「お金、ほしい」
 お金が必要。欲を言えば、平和に稼いだお金がいい。そんな切実な想いとともに最凶のボマーは新界へ赴く――。

千早ちゃんの評判に深刻なエラー3

主な出来事

ペイントシミュレーターの起動

千早はアクタノイドの塗装シミュレーターを起動し、ジャグラーのデザインを考えた。この機体は手榴弾を投擲する戦闘スタイルを持ち、千早の戦い方に適していた。

塗料の入手問題
新界では塗料の輸送が厳しく制限されており、手に入れるのが難しかった。そこで、千早は天然塗料を採取する方法を模索し、実験都市での調達を計画した。

実験都市での活動
千早は実験都市に向かい、依頼をこなしながら塗料を集めた。しかし、次第に周囲から避けられるようになり、自身が孤立していることを実感する。

誤解と孤立
千早のアカウント名が初心者のままであることが原因で、お荷物アクターと誤解されていた。即席チームの依頼に参加するも、他のアクターが次々とキャンセルし、結果的に一人で作業を続けることになった。

ボマーとの誤解
実験都市周辺で続く爆破事件により、千早が「ボマー」と疑われる。自身が巻き込まれた爆破事件も、その誤解の一環である可能性があった。

実験都市襲撃
突如として実験都市が襲撃され、千早は戦闘に巻き込まれる。誤解を解くため、敵と戦うことを決意し、手榴弾を駆使して迎撃を行う。

榛畑の介入
榛畑は千早の戦闘を記録し、生配信しようとするが、政府の介入により配信は即座に切断された。この襲撃が事前に知られていた可能性が浮上した。

襲撃者の撤退
指揮官の尾中は撤退を決定するが、千早の奇襲により計画は破綻する。さらに、角原が千早への敵意を強め、新たな脅威が迫ることとなった。

戦闘後の赤字
千早は戦闘に参加したことで大きな赤字を抱える。オールラウンダーを破壊したものの、売却ができず、利益を得られなかった。

新たな依頼と万色の巨竜
大学教授からの調査依頼を受け、万色の巨竜の生態調査に乗り出す。この生物は高度な擬態能力を持ち、赤外線カメラでしか捉えられなかった。

万色の巨竜の撮影成功
千早はカメラを設置し、万色の巨竜の映像を撮影することに成功する。この映像は学術的に高い価値を持ち、大学教授と新界生配信から高評価を受けた。

企業の思惑
万色の巨竜の研究が進む中、新界の企業間で競争が激化する。角原グループはボマーを排除する計画を立て、淡鏡の海仮設ガレージを戦場にしようとする。

淡鏡の海仮設ガレージの戦闘
角原グループと海援重工がガレージを襲撃し、防衛戦が始まる。千早は戦闘に巻き込まれるも、誤解を解くために奮闘する。

ボマーの策略
ボマーは敵の指揮系統を混乱させ、角原グループの崩壊を引き起こす。結果として、淡鏡の海仮設ガレージは守られるが、戦況はさらに混迷を極める。

千早の評価
榛畑の生配信で千早の戦闘が正当化され、誤解が解かれる。さらに、新界生配信から報酬が支払われ、資金の問題が解決に向かう。

どららんとの交流
万色の巨竜と距離を縮め、信頼を得る。千早はこの生物を「どららん」と名付け、保護活動を開始する。

密猟者との戦い
密猟者がどららんを狙い、千早は襲撃を受ける。狙撃手の存在を察知し、手榴弾を駆使して迎撃を試みる。

決着と新たな脅威
千早の作戦により密猟者は撤退するが、伴場が角原を裏切り、さらなる混乱を招く。ボマーの影響力が拡大し、新界全体が戦争の渦に巻き込まれる兆しを見せる。

エピローグ:新たな決意
千早はどららんとの別れを意識しつつ、動画編集を進める。アクターとしての立場を改めて見直し、次なる依頼に向けて準備を始めた。

感想

異能生存体としての千早
千早は今回も過酷な状況に直面しながらも、生存し続ける。
普通なら生還できない状況でも、彼女はどんな手を使ってでも生き延びるのが特徴である。
しかし、その行動が周囲の誤解を生み、結果として政治や企業の思惑を大きく揺るがす事態を招いた。
周囲の人々が千早をコントロールできずに混乱していく様子は、本作の見どころのひとつである。

どららんとの絆と戦い
万色の巨竜である「どららん」との交流は、千早の行動に新たな意味をもたらした。
調査のために動いていたはずが、いつの間にかどららんを守る戦いへと発展していく。
彼女の行動が誤解を生み、企業や政府を敵に回す展開は、シリーズ特有の面白さを持っていた。
今回もボマー専用機が戦闘に投入されたが、結果的に破壊されることとなる。
その展開のあっさりさには驚かされたが、千早にとってはそれほど大切な存在だったのだろう。

政治の駆け引きと陰謀
本作では、千早の行動が政治的な問題へと発展していく流れが特に印象的であった。
企業や政府の人間が、ボマーの意図を勝手に推測し、彼女を危険視する展開が興味深い。
彼女の行動が誤解を招き、それを理由に抗争が激化する様子は、まさに「深刻なエラー」というタイトルにふさわしい。
メカの活躍が一冊で終わってしまうのは残念だが、今後の展開に期待したい。

新たな機体と関係の変化
コンセプト機やオーダー機の活躍が一瞬で終わるのは惜しいが、メカメカ教導隊長との関係が深まり、新たな機体が登場する可能性も示唆されている。
千早は相変わらず独特な行動をとるが、それが新たな依頼や機体獲得につながる点が面白い要素であった。
今後も彼女の行動がどのような影響を及ぼすのか、期待せずにはいられない。

総評
今回の物語も、千早の異質な存在感が際立つ展開であった。
どららんとの関係や、企業との抗争、政治の駆け引きなど、多くの要素が絡み合いながら物語が進行する。
特に、彼女をめぐる誤解が大きくなり、それが新たな戦いを生む構造は見応えがあった。
次巻では、千早の評価がさらに変化していくのか、新たな機体や敵が登場するのか、引き続き注目したい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ

ペイントシミュレーターの起動
千早は、アクタノイドの塗装用シミュレーターを起動した。このアプリは市販のアクタノイドを3Dで表示し、簡易的に塗装結果を確認できるものであった。さらに、画像を取り込むことでオーダー系アクタノイドや改造機の3Dモデルを自動生成する機能も備えていた。しかし、ジャグラーの画像を使用した自動生成には三十分ほどの時間がかかると判明したため、千早はその間に塗装のデザインを考えることにした。

ジャグラーの特徴と戦闘スタイル
ジャグラーは、新界を騒がせた未知のオーダー系アクタノイド「野武士」騒動の際、オーダーアクターの代表から謝罪の品として千早に贈られた機体である。その外見は、バケットハットをかぶったような頭部に鳥の羽を模したアンテナを備え、長い腕を持つ細身の機体であった。サルエルパンツのような装甲を持つ下半身は、膝関節の位置が分かりにくい独特な構造をしている。驚異的な脚力を持つこの機体は高速移動が可能であり、さらにパンツの内部にさまざまな物を収納する機能を備えていた。
加えて、ジャグラーは銃器の使用を前提とせず、投擲による攻撃に特化していた。AI補正により、手榴弾や石を正確に投げることができ、速度や球種の設定も可能であった。この仕様は、千早の射撃技術が低いため、手榴弾で戦うスタイルに適していた。

塗料の入手問題
塗装を進めるため、千早は塗料の入手先を調べた。しかし、新界への物資輸送には厳しい制限があり、塗料のような特殊用途のものは特に入手が難しいことが判明した。日本の大企業「海援重工」が運営する森ノ宮ガレージでは販売されていたが、高価で色数も限られていた。そのため、千早は新界で入手可能な天然塗料に目を向け、有志がまとめた情報ページを発見した。天然塗料は新界の動植物や鉱物から生成可能であり、採集すれば比較的安価に手に入ることが分かった。

実験都市での塗料調達計画
千早は、天然塗料の材料を採集するため、甘城農業総合開発グループが主導する実験都市へ向かうことを検討した。この企業は官民合同の組織であり、新界の農業や畜産の研究を主な目的としていた。実験都市周辺は比較的安全な地域であり、害獣駆除の依頼も少ないことから、千早にとって理想的な場所であった。さらに、実験都市の依頼を受けながら塗料を採集すれば、報酬を得ながら目的を達成できる可能性があった。

移動の安全確認と依頼の受注
千早は、実験都市周辺の治安を確認するため、アクターズクエストで大破したアクタノイドの回収依頼の数を調べた。これにより、その地域の戦闘リスクを把握しようとしたのである。結果として、実験都市周辺は安全な地域であると判断し、塗装のための移動を決意した。また、実験都市へジャグラーを運ぶために、燃料搬入の依頼を受注した。依頼一覧の中には戦闘系のものが多かったが、千早は非戦闘系の依頼のみを選び、慎重に行動することを決めた。

ボマーに対する疑念と調査
一方、新界資源庁では、「ボマー」と呼ばれる戦争屋の動向に関心が集まっていた。政府系ガレージに専用機を預けたことで、ボマーの背後に強力な勢力が存在する可能性が浮上した。議員の角原は、ボマーの所属について調査を進めるため、新界資源庁を恫喝し、情報を得ようとしていた。さらに、ボマーの悪評を拡大し、孤立させた上で排除する計画が進められた。

実験都市の新たな提案
同時期、新界化学産業の代表である能化ココは、シトロサイエンスグループの代表・簾野ショコラと会談していた。この席で、甘城農業総合開発グループからの提案が持ち上がった。それは、実験都市へ出資する代わりに研究施設や工場を建設するというものであった。新界での研究が進まない要因として、実験資料の持ち出し制限が挙げられていたが、この提案により問題が解決する可能性があった。

ボマーの影響と技術供与
簾野はさらに、新たな技術を紹介した。それは、ユニゾン人機テクノロジー社が開発した繊細な動作が可能なアクタノイドであった。この技術は、ボマーが関与したとされる「野武士騒動」の直後に提案されており、ボマーの戦闘スタイルに適した仕様である可能性が示唆された。しかし、能化はこの提案が自身にとって有益であると判断し、実験都市での研究施設建設に同意した。

第一話

実験都市と千早の活動

実験都市は広大なコンクリート建造物が立ち並び、送受信用の電波塔が各所に設置されていた。千早はこの都市の依頼に参加し、天然塗料の材料を集めながら仕事をこなしていた。安全かつ高報酬な依頼が多く、千早にとって理想的な環境であった。しかし、ある日を境に施設警備のシフト表が不自然に穴だらけとなり、千早は自身が避けられていることに気づいた。

避けられる理由に心当たりは多々あったが、千早は仕事において特に問題を起こしていないと考えた。やがて、実験都市での活動が原因ではなく、アクターとしての評価に問題があるのではないかと推測し始めた。自身のアカウント名が初心者を示す初期状態のままであり、それが協調性のない「お荷物アクター」と見なされているのではないかと考えた。

誤解と孤立

即席チームの依頼に応募した千早は、次々とキャンセルする他のアクターの動きを目の当たりにし、自身が孤立していることを再認識した。結果的に、千早は一人で依頼をこなすことになり、亀のような新種の動物を調査した。観察を続ける中で貸出機のオールラウンダーが何者かに爆破される事件が発生したが、千早は依頼を完遂し、依頼主の大学教授から高評価を得た。

その後、千早は報酬が赤字であったにもかかわらず、自身の努力が認められたことに満足感を覚えた。久々に外食を決意し、慎重に選んだ個室の和食店を予約して足を運んだ。

ボマーと疑われる千早

食事中、隣の個室で交わされる会話に耳を傾けた千早は、自身が「ボマー」と呼ばれるアクターとして誤解されていることを知った。実験都市周辺で手榴弾による機体の破壊が続いており、その犯人が自分だと認識されていることに愕然とする。自身が巻き込まれた爆破事件もこの誤解の一環である可能性が高かった。

動揺しながらも状況を整理し、実験都市での活動を終了することを決断した。しかし、その直後、著名なアクターである榛畑からのインタビュー依頼が届き、誤解が広く拡散していることを改めて認識することとなった。取材を拒否し、実験都市を離れる準備を進める千早であったが、突如、実験都市で大規模な襲撃が発生した。

実験都市襲撃と千早の決断

実験都市の各所で爆発が発生し、銃撃音が響き渡る中、千早はこの状況で自身が逃げるとスパイと見なされる可能性があると考えた。結果として、千早は襲撃者を迎撃する側として戦闘に参加することを決意した。

襲撃者の目的は実験都市の重要データや資源の奪取であったが、同時にボマーと疑われる千早を排除することも含まれていた。千早は塗料を用いて自身の機体に赤い手形を描き、識別しやすくすることで、敵と誤認されることを避けつつ、積極的に戦闘へ関与した。手榴弾を駆使した大胆な戦闘スタイルで敵を翻弄し、実験都市の防衛戦力として機能したことで、周囲の誤解を払拭し始めた。

榛畑の介入と千早の戦闘

襲撃が続く中、榛畑も戦場に介入し、千早の戦闘を記録した。榛畑は当初、千早をボマーとして疑っていたが、彼女の戦闘を目の当たりにして認識を改めた。千早が襲撃者と戦っている以上、彼女が襲撃側ではないことは明白であった。

榛畑は千早の戦闘を記録し、生配信しようと試みたが、政府の介入によって配信は即座に切断された。この襲撃が事前に知られていた可能性が浮上し、戦場の状況はさらに混迷を極めた。

襲撃者の撤退と新たな脅威

襲撃者の指揮を執っていた尾中は、戦況の不利を察知し撤退を決定した。彼はボマーとして誤解されていた千早を孤立させることを目的としていたが、千早が実験都市側として戦闘に参加し、成果を上げたことで計画が破綻した。

撤退を進める中で、尾中たちは軽トラックで迫る追撃部隊に警戒を強めた。追撃部隊の正体が千早であることを知ると、さらに混乱が広がった。千早は軽トラックを利用し、粉塵手榴弾を駆使して尾中たちの撤退経路を封鎖しようと試みた。その大胆な戦術は敵陣に恐怖を与え、結果として尾中たちは計画を完全に放棄することになった。

撤退に成功した尾中であったが、彼の背後には新たな脅威が迫っていた。角原グループの代表である角原為之が、ボマーとして活動する千早に対して強い敵意を抱き始めていたのである。

第二話

千早の赤字と戦闘の影響

千早は疲れ切った様子でアクタールームを後にし、階段を上がった。苦手な戦闘に参加し、多くの機体を大破させたことで、大幅な赤字を抱えることになった。これまでは敵機を売却して黒字を維持していたが、今回は都市防衛チームが倒した機体も含まれており、売却の許可を得るまで収益化できない状況であった。敵機はすべてオールラウンダーであり、爆破によって損傷が激しいため、利益を見込むのは難しい。千早はソファに倒れ込み、カピバラのぬいぐるみを抱えながら、スマホを眺めた。自らの戦闘が都市の防衛に貢献したことを確認したいと思いながらも、実験都市の襲撃に関する情報は検閲により削除されており、彼女の努力は表に出ることがなかった。

配信者榛畑の発言

ネットを漁っていた千早は、新界生配信の代表である榛畑の生配信に目を留めた。彼は真っ赤な髪にピアスをつけた派手な人物で、俳優のような整った容姿を持つ。彼の配信背景には、赤い手形がついたオールラウンダーが映っていた。榛畑は、実験都市で戦った「赤い手形」のアクターが襲撃犯ではなく、むしろ助けてくれたと説明し、ボマーの一味ではないと発言した。その言葉に千早は思わずぬいぐるみにスマホを載せ、手を合わせて感謝した。誤解を解いてくれる人物がいたことに安堵し、涙を拭った。新界生配信の影響力を考えれば、都市の防衛に貢献した事実も認識されるはずだと千早は期待した。

依頼と新たな発見の機会

千早は赤字の埋め合わせのため、アクターズクエストの依頼を探し始めた。しかし、戦闘依頼の割合が増えつつあり、次回の仕事も戦闘になりかねないと気付く。そんな中、彼女のアカウントに大学教授からのメッセージが届いた。依頼の斡旋が想定より早く、新たな調査依頼が持ちかけられた。その内容は、万色の巨竜と呼ばれる未確認生物の調査であった。万色の巨竜は、高度な擬態能力を持つドラゴンのような生物であり、赤外線カメラにしか映らない。新界生配信が以前にその姿を捉えたことで話題になり、多くの研究者の関心を集めていた。

千早の推測と調査準備

万色の巨竜の目撃情報を分析した千早は、従来の説とは異なる可能性に気付く。夜行性とされているが、実際には昼間に活動しているのではないかと推測した。さらに、既存の生息地である灰塩大湿地には十分な餌がないことから、彼女は別の場所に餌場があるのではないかと考えた。そして、候補地として淡鏡の海の北に位置する海樹林海岸に目を付けた。そこは海水に根を張る海樹が生い茂り、多くの魚が生息する海洋生物の楽園であった。千早は、万色の巨竜がこの地域を餌場として利用している可能性が高いと考えた。

ジャグラーでの現地調査

千早は調査のため、高性能アクタノイドであるジャグラーを操縦し、海樹林海岸へと向かった。現地に到着すると、海樹の根が作る独特な地形に注意しながら、赤外線カメラを設置した。海水だまりには多くの魚が生息しており、万色の巨竜の捕食環境として理想的な条件が揃っていた。さらに、沖合には孤立した小島があり、そこが万色の巨竜の住処である可能性が高いと推測した。しかし、現時点では上陸が困難であるため、調査の範囲を餌場に絞ることにした。

貴重な映像の撮影

設置したカメラが稼働し始めて二日後、万色の巨竜が映像に捉えられた。海水だまりを覗き込み、獲物を見つけると素早く飛び込み、魚を捕らえて飛び去った。その瞬間、通常のカメラにも一瞬だけ輪郭が映り込んだ。千早はこの映像の価値に興奮し、即座に大学教授と新界生配信へ報告した。撮影されたデータは学術的にも極めて重要であり、擬態能力の解明につながる可能性があった。

新たな展開と報酬

大学教授と新界生配信の代表である榛畑は、千早の調査結果を高く評価した。報酬として五十万円が追加されるだけでなく、動画の広告収益の一部を千早に還元するという提案がなされた。さらに、今後の調査協力を求められ、千早は非戦闘系の依頼に集中できる環境を手に入れることになった。彼女は、この結果に満足し、安堵の笑みを浮かべた。

企業間の駆け引き

一方、新界化学産業の能化ココは、シトロサイエンスグループの簾野ショコラ、ユニゾン人機テクノロジーの厚穂澪、スタイル電工の松留紘深と会談を行っていた。彼らは、万色の巨竜のステルス能力が戦略的に重要であると考え、その研究を進めるための資金提供を検討していた。特に、ボマーの存在が彼らの関心を引いており、その影響力を警戒しながらも利用しようとしていた。

対ボマーの戦略

角原は、万色の巨竜の研究が戦争の火種になることを察し、ボマーへの対抗策を模索していた。彼は、淡鏡の海仮設ガレージへの襲撃を正当化するため、万色の巨竜の密猟事件を演出する計画を立てた。狙撃による密猟の実績を作り、新界生配信を利用して世論を動かすことで、攻撃の大義名分を得ようとした。こうして、万色の巨竜を巡る争いは、新界全体を巻き込む戦いへと発展していく兆しを見せた。

第三話

千早の苦境と戦いの代償

千早は疲れ切った表情でアクタールームを後にし、階段を上がった。戦闘が苦手なことは自覚していたが、一晩でオールラウンダーを何機も大破させた損失は想像以上だった。これまで撃破した敵機を売却し黒字を維持してきたが、今回は都市防衛チームが破壊した機体も混ざっており、実験都市の記録分析を待たねばならなかった。しかも、敵機はすべてオールラウンダーで、爆破による損傷が激しく、黒字化の見込みは薄い。ソファに倒れ込んだ千早は、カピバラのぬいぐるみを抱え、スマホで戦闘の成果を確認しようとした。

誤解とその払拭

千早は今回の戦いで、自分がボマーの一味ではないことを証明したと信じたかった。ネットニュースでは実験都市の襲撃が新界資源庁の検閲で削除され、千早の奮闘は公にはならない。悔しさを滲ませながらネットを漁ると、榛畑が配信している動画が目に入った。画面には、赤い手形のついたオールラウンダーが映っており、榛畑は「赤い手形は襲撃犯ではなく、むしろ助けてくれた」と主張していた。その言葉に千早は感動し、カピバラぬいぐるみにスマホを載せて榛畑に手を合わせた。少なくとも、彼には理解してもらえていたのだ。

次なる依頼と金策の必要性

誤解が解け、心の負担は軽くなったが、現実の問題は依然として残っていた。大破した機体の修理費は膨大で、戦闘依頼を受け続ければ破産しかねない。そこで千早は非戦闘系の仕事を探し始めた。すると、大学教授からの依頼が届いた。内容は「未確認生物の調査」、対象は「万色の巨竜」。このドラゴンのような生物は赤外線カメラでしか姿を捉えられず、その擬態能力の研究には多くの企業や政府が注目していた。千早は報酬は低いものの、非戦闘依頼の実績を作るために引き受けることを決めた。

万色の巨竜の調査と仮説の検証

千早は過去の目撃情報を整理し、万色の巨竜の生息地が灰塩大湿地ではなく、海樹林海岸にある可能性を導き出した。特に、光学迷彩のような擬態能力を持つ生物が「夜行性」とされていることに疑問を抱き、昼間の観察が有効であると考えた。資金不足のため、貸出機を避け、手持ちのジャグラーを使用して調査を開始した。

海樹林海岸での探索とカメラ設置

千早はジャグラーを操り、海樹林海岸に向かった。そこには未測量の地形が広がり、海樹の根が形成する独特な生態系が存在した。慎重に足場を確保しながら、千早は赤外線カメラを設置し、万色の巨竜が現れるのを待った。そして二日後、ついにカメラが反応を捉えた。巨竜が海水だまりに首を突っ込み、魚を捕らえて飛び立つ姿が映っていた。通常のカメラでも水滴の影響で一瞬だけ姿が見えたことから、擬態の仕組みを解明する手掛かりとなる映像だった。

成果の報告と予想外の評価

千早はこの貴重な映像を大学教授と新界生配信へ報告した。特に、万色の巨竜の行動範囲を示すデータは研究価値が高く、評価は予想以上に高かった。依頼の報酬とは別に、追加報酬五十万円が支払われることが決まり、さらに動画の広告収益の四割が千早に分配されるという破格の条件が提示された。大学教授と榛畑は、さらなる調査資金を確保し、追加依頼を発注する予定だった。千早はこれに歓喜し、安全かつ安定した収益を得られる未来を期待した。

企業間の思惑と万色の巨竜を巡る陰謀

一方、新界の企業間では万色の巨竜の研究を巡る動きが加速していた。シトロサイエンスグループの代表である簾野ショコラは、ボマーに関心を示し、手元に引き入れようと考えていた。しかし、新界の主要企業はボマーの脅威を認識し、万色の巨竜の研究がボマーの手に渡ることを警戒していた。特に、ユニゾン人機テクノロジーの厚穂澪は、ボマーの情報収集能力を警戒し、淡鏡の海仮設ガレージでの研究を進める計画を立てた。

万色の巨竜を巡る戦争の兆し

一方、角原はボマーに対抗するための戦略を模索していた。彼は新界での影響力を維持するため、万色の巨竜の研究を奪うことを決意し、密猟という口実を作るために狙撃を計画した。これにより、万色の巨竜の死骸が映像に残れば、新界生配信を利用して世論を動かすことができると考えた。彼の狙いは、淡鏡の海仮設ガレージを戦場とし、ボマーを討つ大義名分を確立することだった。

迫る決戦と新たな戦局

ボマーの動きにより、新界の企業間対立は激化し、淡鏡の海仮設ガレージを巡る戦争の火種が生まれた。企業間の思惑が絡み合う中、角原はボマーを潰すための戦略を練り、行動を開始した。一方で、千早は自身の調査が引き起こした大きな波紋に気づかぬまま、次の依頼に向けて準備を進めていた。

第三話

動画の成功と収益の増加

千早が撮影した万色の巨竜の映像が国内外で注目を集め、再生数が急増した。特に、赤外線カメラとは異なる鮮明な映像が評価され、研究者からも注目された。これにより広告収入や支援金が入り、千早は久々にまとまった収入を得た。懐が温かくなった千早は、良い食材を買おうと考えるが、道中で万色の巨竜のぬいぐるみを見つけ、ゲームセンターへと足を運ぶ。

クレーンゲームとぬいぐるみの獲得

クレーンゲームを甘く見ていた千早は、確率機の存在を知らずに大金を費やす。意地になった末にようやくぬいぐるみを獲得したが、その大きさに驚く。持ち帰るのに苦労しながらも、記念として部屋に飾ることを決める。その後、偶然ゲームセンターで迷惑な酔っ払い女に遭遇し、関わりを避けるためにその場を立ち去った。

新たな調査依頼と機体の貸与

帰宅後、千早は新界生配信からの調査依頼を受ける。追加調査のために、企業や大学教授から資金が集められ、高性能のバックパッカーという機体が無償貸与された。調査を進めるために千早は早速バックパッカーを操作し、その精密な動作に感心する。機体は小型ながらも高い機動力を持ち、調査向きの性能を備えていた。

撮影準備と万色の巨竜の発見

千早はバックパッカーを操り、万色の巨竜の撮影に適した位置へとカメラを設置していく。作業を進める中で、万色の巨竜の鱗を発見。色を変化させる特殊な性質を持つその鱗は、研究者にとって貴重な資料となる可能性があった。さらに、血痕の痕跡を辿るうちに負傷した万色の巨竜の姿を捉え、警戒されつつも対話の糸口を探る。

餌付けと信頼の獲得

万色の巨竜の警戒を解くため、千早は手榴弾を使って魚を捕獲し、餌として提供する。最初は警戒していた巨竜も、次第に食べ物を受け入れるようになり、千早のバックパッカーを敵視しなくなった。その後、万色の巨竜は千早に懐き、姿を隠しながらも後をついてくるようになる。

保護活動の開始と密猟の発覚

千早は負傷した万色の巨竜をキャンプ地へと連れ帰るが、その行動に対して研究者や新界生配信の代表から叱責を受ける。しかし、万色の巨竜が千早に懐いたことで、至近距離での観察が可能となり、研究に大きな進展をもたらした。やがて、負傷が銃創であることが判明し、密猟者の存在が明らかとなる。千早は自らの行動が密猟の引き金になった可能性を考え、責任を感じる。

密猟者の捜索と巨竜の保護

密猟者がどこから狙撃したのかを特定するため、千早は周辺地形を分析し、弧黒連峰が狙撃地点である可能性を示唆する。新界生配信のメンバーも警戒を強めるが、敵の姿は確認できなかった。千早は引き続き万色の巨竜の世話をしながら、調査を続ける。

知能の高さと交流の深化

万色の巨竜は高い知能を持ち、千早の指示を理解し始める。コミュニケーションの手段として、体の色を変えて意思表示する能力が確認され、研究者たちの関心をさらに引く。また、千早自身も情が移り、巨竜に「どららん」と名付け、親しみを持って接するようになる。

新たな発見と資金の流入

千早が発見した鱗は科学的に極めて価値が高く、シトロサイエンスグループが高額で買い取ることを決定する。その結果、千早のもとには四千万円もの大金が振り込まれた。想定外の収益に戸惑いながらも、千早はこの資金を万色の巨竜の保護活動に役立てる決意を固める。

弧黒連峰の購入と波紋

密猟を防ぐため、千早は弧黒連峰の購入を決意し、申請を行う。しかし、この動きは新界の各勢力に大きな影響を与えた。弧黒連峰は資源価値が高く、所有者がいないまま放置されていた土地であったが、千早の購入申請が発端となり、政治・企業・軍事関係者が動き出す。

新たな戦争の幕開け

千早の動きに対し、角原グループ、海援重工、がっつり狩猟部が共同戦線を組み、淡鏡の海仮設ガレージの接収を画策する。彼らは万色の巨竜保護を名目に、千早の行動を妨害しようとする。特に角原グループは政治的な影響力を使い、世論を操作して千早を不利な立場に追い込もうとする。

決戦への準備

千早の購入申請が新界全体を巻き込む事態となり、淡鏡の海仮設ガレージの関係者は窮地に立たされる。千早は万色の巨竜のために行動したつもりだったが、その結果、新界の勢力争いを激化させてしまった。各陣営が動きを見せる中、次なる戦いの火蓋が切られようとしていた。

第四話

新界生配信の打ち上げ

榛畑が新界生配信の打ち上げ配信を行い、万色の巨竜企画の成功を祝っていた。宴会場には企画に関わった大学教授やスタッフが集まり、大勢で盛り上がっていた。一方、千早は参加を断り、モニター越しに配信を眺めながら、万色の巨竜ぬいぐるみを抱えて満足そうにしていた。榛畑の巧みな話術により、各関係者の貢献が紹介される中、視聴者から「うさぴゅー」についての質問が寄せられた。榛畑は千早が打ち上げに不参加であることを説明し、その希少性を冗談めかして語った。千早は人前に出ることを避け、どららんと共に過ごすことを選んでいた。

どららんの独立計画

どららんはバックパッカーのそばで眠っていた。普段は迷彩を解いたまま寝ることがないが、バックパッカーを信用している証拠であった。しかし、どららんにとって信頼の対象はバックパッカーであり、千早自身ではなかった。大学教授たちはこの関係性に注目し、どららんを野生に戻すための計画を提案していた。それはバックパッカーを解体し、どららんと「死に別れ」させることであった。すでにどららんは飛行能力も回復し、独立に向けた準備は整っていた。千早はこの提案を理解しつつも、具体的な別れが迫ると寂しさを感じていた。計画の実行は時間の問題であり、千早には限られた時間をどららんと過ごす選択肢しか残されていなかった。

突然の襲撃

千早がどららんの餌を取るために外へ出た矢先、突如として銃声が響いた。バックパッカーが狙撃され、左肩のカメラが破壊された。発砲音が聞こえないことから、高度な狙撃技術が使われていることが分かった。千早は狙撃地点を推測しながら、粉塵手榴弾を使って敵の視界を遮った。海樹林海岸での狙撃は通常ありえず、弧黒連峰に狙撃手が潜んでいる可能性が高かった。この地は千早の私有地であるにもかかわらず、密猟者が侵入し、どららんを狙っているのは明らかであった。

新界生配信への救援要請

千早は即座に新界生配信へ救援を求めた。ちょうどその頃、淡鏡の海仮設ガレージも襲撃を受けており、戦況は極めて悪化していた。新界資源庁の干渉により、生配信で状況を伝えることができなくなっていたが、榛畑たちは機体と武器を整え、千早のもとへ向かう準備を進めていた。一方、千早はどららんの元へ急ぎ、身を隠すよう指示した。狙撃手の存在を考慮し、慎重に行動する必要があった。

密猟者との戦い

密猟者の狙撃手は、高性能なアクタノイド「EGHO」を操っていた。さらに随伴機として五機の軽ラウンダー系機体が護衛についていた。千早のバックパッカーはそもそも戦闘用ではなく、武装は手榴弾のみであった。しかし、どららんが暴れ出したことで、千早は戦闘を長引かせることができなくなった。狙撃手のAIは学習し、時間が経つほど千早の動きを予測する精度が上がる。そこで、千早は思い切った策を講じることにした。

爆破による決着

千早は最後の手段として、どららんを利用することを決断した。バックパッカーの荷物をすべて捨て、身軽になった千早は山頂へ突撃。どららんに手榴弾を託し、爆発を起こさせる作戦に出た。密猟者たちはまさか万色の巨竜自らが攻撃に加わるとは考えていなかった。どららんの奇襲により、EGHOは爆発に巻き込まれ、粉々に吹き飛んだ。密猟者たちは完全に意表を突かれ、戦況は逆転した。

伴場の覚醒と裏切り

EGHOを操っていた伴場は、自らが狩る側であることに強い優越感を抱いていた。しかし、千早の予想外の作戦により、自分が逆に狩られる側となった。その瞬間、彼は今までの価値観が崩れ、自分もまた安全圏にいると錯覚していた獲物であったことに気づいた。伴場はこの新たな快感に目覚め、密猟者の指揮官である角原を裏切る決意を固めた。

伴場は角原の部屋に向かい、ナイフを突き立てた。驚愕する角原を見下ろしながら、伴場は笑い続けた。彼にとって、最も楽しい「狩り」は、狩る側にいると信じて疑わなかった相手を獲物にすることだった。オペレーターたちは悲鳴を上げ、指揮所は混乱に包まれた。伴場は角原の顔を踏みつけ、支配者が狩られる瞬間を楽しんでいた。

戦いの終焉と新たな脅威

密猟者の指揮系統は崩壊し、戦況は千早たちの勝利に傾いた。しかし、伴場が抱いた新たな嗜虐心は、今後の戦いに不穏な影を落としていた。千早はどららんとの別れを意識しながらも、次なる戦いに備え、再び前を向くのだった。

第五話

淡鏡の海仮設ガレージの攻防戦

戦況の推移と攻防の展開

深夜から始まった淡鏡の海仮設ガレージを巡る戦闘は、第二ステージへと移行していた。攻撃側は角原グループと海援重工が主導したが、がっつり狩猟部の不参加により統制が乱れていた。防御側の淡鏡の海仮設ガレージは奮戦し、新界化学産業の企業クランが特に善戦していたものの、攻撃側の圧倒的な物量に対抗するには限界があった。海援重工の海援隊を率いる海援吉俊は、戦局を見極めながらも、この戦争が侵略戦争であることに葛藤していた。

戦況の異変と角原グループの崩壊

戦闘が続く中、突如として角原グループの部隊が総崩れを起こした。敵の猛攻によるものではなく、指揮系統の混乱が原因と見られた。アクタノイド戦において、指揮官の死が即座に部隊の壊滅を招くことは考えにくく、異常な事態であった。海援は角原為之や伴場に何かが起きたのではないかと推測し、ボマーの関与を疑った。

ボマーの参戦と策略

ボマーが角原グループを崩壊させた可能性が高まる中、海援は海援隊にボマーの襲来に備えるよう指示を出した。同時に、新界生配信の榛畑率いる部隊が北から突撃してきた。海援隊は二方面からの攻撃を警戒しつつも、淡鏡の海仮設ガレージへの攻勢を強めた。そんな中、ボマーらしき存在が静原大川沿いで停止。海援は、それが罠である可能性を指摘し、慎重な対応を命じた。

ジャグラーとの激戦と海援隊の被害

ボマーの駆るオーダー系ジャグラーが戦場に現れ、海援隊はこれを撃破するために動いた。ジャグラーは投擲補正AIを搭載し、異常な精度で手榴弾を投げる能力を持っていた。海援はその技術に驚嘆しつつも、ジャグラーを撃破すべく部隊を指揮。だが、ジャグラーは逃走しながら自爆ドローンを使用し、海援隊の部隊を壊滅させていった。最終的に、海援はジャグラーを追い詰めたが、ボマーは燃料を利用した自爆戦術を敢行。ジャグラーは爆発し、海援隊は甚大な被害を受ける結果となった。

戦争の結末と千早の想い

ボマーの自爆により海援隊は大損害を被り、戦局は大きく変わった。海援はボマーのやり方に怒りを覚え、機体への愛を忘れたのかと叫んだ。一方、千早はどららんとの別れを悔やみながら、淡鏡の海仮設ガレージ防衛戦が終了したことを確認した。ボマーの策略により海援重工は撤退し、淡鏡の海仮設ガレージは守られたが、その代償は大きかった。

千早はジャグラーを失ったことを報告し、戦闘の買い取り査定額に驚愕した。彼女の行動は新界の戦場に大きな影響を与えたが、それでも彼女の心はどららんへの想いで満たされていた。彼女は戦いの余韻を胸に、どららんの無事を願いながら、新たな依頼を探し始めた。

戦後処理と新たな火種

新界化学産業の能化ココをはじめとする関係者たちは、戦後処理に追われていた。淡鏡の海仮設ガレージは防衛に成功したが、被害は甚大であり、ボマーは戦争を利用して多額の利益を得ていた。さらに、角原為之が病院で死亡し、護衛の伴場が逃走したことが明らかになり、新界資源庁は混乱に陥った。

新界資源庁の虎合は、ボマーに関する情報を求める自衛官に接触される。角原の死により、新界の勢力図は大きく変わる可能性があった。そして、ボマーという新たな火種が、再び新界を揺るがすことは間違いなかった。

エピローグ

どららんとの動画編集

千早はアクタールームで動画の編集作業に没頭していた。新界生配信の解説動画を参考にしながら、どららんとの思い出をまとめたホームビデオを制作していた。どららんとの別れをきっかけに、新界生配信との動画制作も終了しており、誘われた淡鏡の海仮設ガレージ防衛戦の打ち上げも断っていた。かつては涙なしに編集できなかったが、今は落ち着いて作業を進められるようになっていた。

動画編集の工夫と休憩

長時間の動画編集にはトラブルがつきものであり、千早は音声のズレを調整しながら試行錯誤していた。編集技術は野生動物の生態調査などにも応用できるが、視覚効果を加える作業は専門的な分野であった。作業の合間にストレッチをしながら、万色の巨竜ぬいぐるみを掲げて体をほぐす。どららんとの交流を思い出すと、自然と体を動かしたくなるのだった。

新たな依頼の確認

動画編集を終えた千早は、スマホを手に取り、大学教授からの新規依頼が届いていないか確認した。しかし、アクターズクエストには新しいメッセージはなく、依頼一覧には戦闘系の仕事ばかりが並んでいた。淡鏡の海仮設ガレージの戦闘で一晩で一千万円分のアクタノイドを破壊した影響で、AIに戦闘特化型と認識されてしまったらしい。平和な依頼を探すため、企業アカウント経由で確認するも、個人で受けられる仕事は見当たらなかった。

新人の枠からの脱却

千早は自身のアカウント情報を眺めながら、自分が新人を名乗るべきか考えた。アクター歴は一年未満だが、依頼の数や預金額を考えれば、新人とは言い難い。しかし、銃の扱いにはまだ不慣れで、爆弾に頼る場面が多いことも自覚していた。さらに、新人ではないと名乗ることで重要な役割を任されるのを避けたかった。

ドジを踏んでの自己評価

考え事をしている最中、千早は手を滑らせてスマホを額に落とし、悶絶した。こんなドジをする自分が一人前を名乗るのはおこがましいと反省し、改めて慎重に行動することを決意した。オーダー系アクタノイドを初戦でスクラップにしてしまった経験もあり、まだまだ未熟であると自覚したのである。「仕事に慣れた頃が一番危ない」との言葉を思い出し、調子に乗らず慎重に進めようと誓った。「よし、やるぞ……明日から」と呟き、千早はアクタールームを後にした。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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