小説【治癒魔法】「治癒魔法の間違った使い方 3巻」感想・ネタバレ

小説【治癒魔法】「治癒魔法の間違った使い方 3巻」感想・ネタバレ

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どんな本?

治癒魔法の間違った使い方 〜戦場を駆ける回復要員〜』は、くろかたは、くろかた 氏による異世界を舞台にしたファンタジー小説で、イラストはKeG 氏が担当。
主人公は治癒魔法の使い手でありながら、その力を戦闘や他の目的に応用することで、独自の道を切り開いていく。物語は、彼が仲間とともに冒険し、成長していく様子を描いている。
この作品は、2014年3月から「小説家になろう」で連載が始まり、2016年3月から2020年3月までMFブックス(KADOKAWA)から刊行されました。第2回ライト文芸新人賞で佳作を受賞している。

主要キャラクター

  • ウサト (兎里 健):主人公。治癒魔法の使い手であり、その力を戦闘や他の目的に応用する。
  • ローズ:リングル王国救命団の団長。治癒魔法使いでありながら戦闘能力も非常に高く、かつては騎士団の大隊長を務めていた。
  • スズネ(犬上鈴音):ウサトの学校の生徒会長で、才色兼備の人物。勇者として異世界に召喚され、王国の騎士隊に所属し、雷の魔法を操る。

物語の特徴

本作の特徴は、治癒魔法という一般的にはサポート的な能力を、戦闘や他の目的に積極的に活用する点にある。また、主人公の成長や仲間との絆、ユーモラスなやり取りなどが物語を彩り、読者を引き込む要素となっている。

このライトノベルはメディアミックスとして、九我山レキ 氏による漫画版が『月刊コンプエース』(KADOKAWA)で2017年6月号から連載されている。
2022年10月時点で、電子版を含めたコミックスの累計部数は200万部を突破。
また、スピンオフコミカライズとして『治癒魔法の間違った使い方 〜誘いの街・レストバレー〜』がカクキカイ 氏による作画で、『FWコミックスオルタ』で2023年8月から先行配信で連載が開始されている。
さらに、2021年8月15日にはアニメ化が発表され、2024年1月から3月に放送された。

2024年8月に二期制作決定の発表があった。

読んだ本のタイトル

#治癒魔法の間違った使い方 ~戦場を駆ける回復要員~ 3
著者:#くろかた 氏
イラスト:#KeG  氏

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あらすじ・内容

回復要員が勝負(バトル)で勝つには――地獄の訓練しかない!!

王からの書簡を手に、魔導都市ルクヴィスへと入ったウサトたち。
生まれ持った魔法の適性による差別や偏見がはびこるこの街で、ウサトは何者かに傷つけられた治癒魔法使いの少年と出会う。
“治癒魔法使いだから”という理由だけで壮絶なリンチを受けていた少年・ナックの話に激しい憤りを覚えるウサト。そこでスズネは主犯格である少女・ミーナに対し、ナックとの一騎打ちを提案する。
ナックを救うため、そして治癒魔法使いの矜持を守るため、ウサトは師であるローズ直伝の“救命団式訓練法”をナックに課す事を決意するのだった。
大人気シリーズの第三巻、受け継がれし救命団魂を見逃すな!!

治癒魔法の間違った使い方 ~戦場を駆ける回復要員~ 3

感想

全体的に、この作品は治癒魔法使いというテーマを軸にしながら、異世界での成長と友情、そして立ちはだかる困難との戦いを描いていた。

ウサトの内心の変化とナックの肉体的、心理的な成長、そして彼らの周囲にいる人々との関係が、物語に深みを加えていた。
このシリーズは、一風変わったギャグよりの異世界ファンタジーとして面白い。

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最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

救命団ノ掟
訓練の心構え
一、屋内は清潔に保つべし (*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
一、清掃もまた訓練、全力で取り組むべし (・∀・)ウン?
一、掃除を怠る者はボロ雑巾の刑に処す ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

第一話  遭遇!  ルクヴィスの治癒魔法使い!!  の巻

魔導都市ルクヴィスへの到着と遭遇

ウサトたちは魔王軍の脅威を伝えるため、魔導都市ルクヴィスを訪れた。活気あふれる街並みに心躍らせながら魔導学園を眺めていたウサトは、ひとりの治癒魔法使いの少年と出会う。しかし、その少年は酷く傷つき、ボロボロの状態で倒れていた。アマコが以前語っていた「ルクヴィスの治癒魔法使いの状況が簡単ではない」という言葉の意味をウサトはこの瞬間に理解することとなる。ウサトは、近くにいた野次馬に少年の状態について尋ねたところ、「面倒な人物に目をつけられ、治癒魔法が使えるという理由で何度も暴力を受けている」との答えを得る。治癒魔法使いがこのような扱いを受けることに、ウサトは怒りを覚えた。

意識を取り戻した少年と拒絶

ウサトは少年の肩を揺さぶり、意識を取り戻させた。少年は微かに呻きながら目を覚ましたが、ウサトが声をかけると即座に拒絶し、慌てた様子で逃げ出してしまった。あまりの狼狽ぶりに、ウサトは彼が何か大事な用を抱えているのではないかと推測した。拒絶されたことに戸惑いを感じつつも、ウサトはこのまま放置するわけにはいかないと考え、同行しているカズキや犬上スズネと相談することを決めた。

仲間との合流と学園訪問の誘い

ウサトが仲間との合流を決めた矢先、犬上スズネとカズキが元気に駆け寄ってきた。スズネは、ウサトがアマコの友人宅に泊まったことを知り、少し不満げな様子を見せたが、それ以上の詮索はしなかった。カズキから、学園長のグラディスが「学園見学に来ないか」と誘っていたことが伝えられ、ウサトも興味を示す。スズネはすでにやる気満々で、三人は学園へ向かうこととなった。

魔導学園の見学と授業の風景

学園に到着したウサトたちは、学園職員のハルファに案内されながら校舎内を見学した。学園では魔法の基礎から武術まで、多岐にわたる授業が行われており、冒険者や騎士を目指す者たちが学んでいることが明らかとなった。校舎内を進むうちに、ハルファは「今日は自身のクラスの実技訓練が行われるため、見学だけでなく参加も可能だ」と提案した。しかし、ウサトは治癒魔法使いとして攻撃魔法の訓練に参加する意味はないと判断し、辞退することにした。

実技訓練の開始と勇者たちの実力

ハルファのクラスでは上級生と下級生の合同訓練が行われていた。見学していたウサトたちは、獣人のキョウとキリハの姿を見つけた。キョウは脚甲を用いた風魔法を駆使し、キリハは手甲から風の刃を放つ技を披露していた。訓練の最中、下級生のひとりが「彼らの魔法を実際に見せてほしい」と発言し、スズネが最初に挑戦することとなる。

スズネは木剣を手に取り、雷魔法を纏わせた高速の突きを繰り出した。さらに、木剣を的に突き刺したまま魔力を蓄積させ、最後に雷の放電で爆発させるという技を披露し、学生たちを驚愕させた。次にカズキが登場し、光魔法の魔力弾を操りながら的を貫通させる技を実演。彼の正確な制御技術に学生たちは再び驚きを隠せなかった。

治癒魔法使いへの偏見と対立の兆し

スズネとカズキの圧倒的な実力を目の当たりにした学園生徒たちは彼らを認める一方で、ウサトのことは軽視し続けた。その中で、貴族の令嬢ミーナが「治癒魔法使いが本当に強いのか」と疑問を呈し、ウサトを挑発した。ウサトは無表情のまま対応したが、その場にいたカズキは怒りを抑えるのに苦労していた。

ミーナはさらに「自分とウサトで模擬戦をしたい」と申し出たが、ハルファはそれを却下。しかし、彼は代わりに「自分がウサトと戦う」と提案する。突然の展開に、キョウやキリハも驚きを隠せなかった。治癒魔法使いとしての実力を軽視する周囲の目を覆すべく、ウサトとハルファの対決が幕を開けようとしていた。

第二話  学園最強!  治癒魔法 VS魔眼!!  の巻

模擬戦の決定と警告

ウサトは、気がつけばハルファとの模擬戦を受けることになっていた。学生たちはざわめき、ツインテールの少女が恐る恐るハルファに理由を尋ねるも、彼は「彼の相手は自分でなければ務まらない」と冷たく言い放つ。その瞳には薄紫色の魔力が宿り、鋭い視線でウサトを見据えていた。

ウサトが模擬戦を了承し、準備運動をしていると、キョウが苛立った様子で近づき、「ハルファは手加減をしない危険な相手だ」と忠告する。さらにキリハも「彼は再起不能になるまで魔法使いを追い詰める」と警戒を示す。しかし、ウサトは「師匠であるローズに比べれば大したことはない」と楽観的に受け止め、戦いに挑む決意を固めた。

戦闘の開始と回避戦術

スズネの合図とともに戦闘が開始される。ウサトは即座に後方へ跳び、ハルファの棍棒による一撃を回避する。しかし、ハルファの動きは俊敏で、すぐに距離を詰めて棍棒の連続突きを放つ。ウサトはそれを躱しながら、次の行動を考えていたが、ハルファは彼の回避行動を読んだかのように足払いを仕掛けてくる。ウサトは転がるように受け身を取り、すぐに立ち上がるが、「想像以上にやりにくい」と呟いた。

ハルファの攻撃は止まらない。彼はウサトの顔面を狙った突きを放ち、続けて薙ぎ払うように棍棒を振るう。さらに膝蹴りを繰り出し、ウサトの急所を狙ってきた。ウサトはぎりぎりでそれを避けるも、彼の動きが完全に読まれていることに気づく。「回避しても、次の攻撃が先回りしている」と違和感を覚えながら、彼はどうにか突破口を見出そうとした。

反撃への転換と予測の突破

ウサトは防戦一方の状況を打破するため、戦術を変更することを決断する。治癒魔法を集中させた腕でハルファの棍棒を受け止め、反撃に出る。驚くハルファに上段蹴りを放つが、彼は素早く後退し回避する。しかし、ウサトは今度は自ら間合いを詰め、跳び蹴りを繰り出した。ハルファは再びかわしたものの、ウサトは確信を得た。「彼は動きを予測しているが、完全に未来を見通しているわけではない」と。

この状況を打破するため、ウサトは意図的に魔力の流れを変え、相手の予測を混乱させる。するとハルファの反応が一瞬遅れ、彼は驚いた表情を見せた。「魔視で見ているのは魔力の流れだけではない」とウサトは確信し、その特性を利用した攻撃を仕掛けた。

決着と戦いの終結

ウサトは治癒魔法の魔力を強く発光させ、その光をハルファの視界に焼き付けることで彼の注意を逸らす。この隙をつき、棍棒を弾き飛ばし、拳を寸前で止めた。ハルファはこれを見て降参を宣言し、戦いは終結する。

ウサトは、自分の手が血まみれになっていることに気づきながらも、「以前ほど深い傷ではない」と自己の成長を実感した。周囲は静まり返り、学生たちは驚きの表情を浮かべていた。スズネは満足げにウサトを見つめ、カズキも彼の戦いぶりを讃えていた。

治癒魔法使いの戦闘能力と影響

ハルファは、ウサトが戦いで見せた「系統強化」の技術について学生たちに説明した。この技術は魔力の濃度を高めるものであり、非常に高度な技能を要するものであると語る。彼は学生たちに「自分たちが見下していた治癒魔法使いが、どれほどの力を持っているのかを理解したか?」と問いかけた。学生たちはハルファの言葉に返答できず、静まり返る。

そんな中、ウサトは校舎の入り口に立つ少年の視線を感じた。煤けたローブを纏った小柄な少年──彼もまた治癒魔法使いであった。その少年は、まるで信じられないものを見たかのような表情でウサトを見つめていた。ウサトは、この模擬戦が彼にどのような影響を与えたのかを考え、不安を覚えた。

第三話  ウサト!  弟子を持つ!!  の巻

魔導学園での模擬戦後の葛藤

ウサトは、魔導学園での授業見学を終え、食堂で落ち込んでいた。模擬戦での軽率な行動を悔い、魔法使いらしくない戦い方をした自分への評価を気にしていた。カズキと犬上先輩もまた、自らの行動の影響を考えていた。ウサトは、同じ治癒魔法使いである少年への影響を懸念し、路地で出会ったルクヴィスの治癒魔法使いについて話す決意をする。

ルクヴィスの治癒魔法使いの現状

ウサトは、カズキと犬上先輩に路地で出会った治癒魔法使いの少年について説明した。カズキは真剣に話を聞いていたが、犬上先輩は「ウサトはその少年を助けたいのか、それとも苛めを受けないようにさせたいのか」と問いかけた。ウサトは自分でも答えを出せずにいたが、見て見ぬふりはしたくないと強く思っていた。

グラディス学園長の計画

食堂でグラディス学園長とウェルシーが現れ、学園での模擬戦が教師たちを説得するためのものだったと明かした。教師の中には勇者や魔王軍の存在に懐疑的な者もおり、ウサトたちの戦いを見せることで彼らの実力を理解させる意図があった。グラディスは謝罪したが、結果的に教師たちはウサトの戦いを見て納得せざるを得なかった。

ナックの危機とウサトの決意

ウサトは、先輩と共に街を歩く途中、治癒魔法使いの少年ナックが再び苛められている場面に遭遇する。魔力切れを起こしたナックは、ツインテールの少女ミーナとその取り巻きに虐げられていた。ウサトは彼を庇い、魔法を防ぐと、治癒魔法を使ってナックの傷を癒した。少女たちを威圧し、魔法の乱用に憤るウサトだったが、感情に任せて手を出すことは避けた。

実技大会への挑戦

犬上先輩は、ミーナに対し「一週間後の実技大会でナックが彼女に勝つ」と宣言した。ウサトは驚きつつも、ナックを鍛えることを決意する。ナックは自分が「欠陥品」だと悲観していたが、ウサトは「治癒魔法を正しく使おうとしすぎている」と指摘し、戦うための訓練を施すことを提案する。ナックは迷いながらも、ミーナを倒すためにウサトの訓練を受ける決意を固めた。

ナックの訓練の開始

ウサトはナックをキリハたちの家へ連れて行き、彼の状態を確認する。ナックはまともに食事も取っておらず、極端に痩せ細っていた。訓練を開始する前に、まず体力を回復させる必要があった。キョウはウサトに対し、アマコのことを頼むと伝え、彼の実力を認めた。一方、アマコはナックの過去を予知で見ており、彼が誰にも信じてもらえず孤立していたことを明かした。

ウサトの指導とナックの決意

ウサトは、ナックが「治癒魔法が自分しか治せない」と悩んでいることを知る。しかし、ウサトはそれを問題とは考えず、「自分を治せるならば十分だ」と断言する。そして、ナックを実技大会に向けて鍛え上げる決意を示した。ナックは恐怖と不安を抱えながらも、ウサトの言葉に励まされ、戦う意思を固めた。

新たな挑戦への第一歩

翌日から始まる訓練に備え、ウサトはナックに十分な食事と休息をとるように指示する。しかし、その矢先に犬上先輩が騒ぎながら部屋に乱入し、ナックは獣人たちの家にいることを知る。突然の状況に混乱するナックだったが、ウサトは落ち着いて説明するのだった。こうして、ナックを鍛えるための五日間の過酷な訓練が始まろうとしていた。

第四話  ナック、修行開始!!  の巻

ウサトが連れてきた少年

ナックの宿泊と戸惑い
ウサトが治癒魔法使いの少年ナックを連れてきた。獣人の姿に怯えながらも衰弱していたため、その夜は宿泊を許可した。しかし、キリハとキョウはナックとどう接してよいか分からず、距離を置いた。ナックの気弱な様子に、彼がミーナに勝てるのか不安を覚える。ミーナは強力な炸裂魔法を操る魔法使いであり、一方のナックは貧弱な治癒魔法使いにすぎなかった。ウサトが彼をどう鍛えるのか、キリハは興味を持った。

ウサトの訓練と街の異変
翌日、キリハとキョウはウサトの訓練を見に街へ向かう。学園では授業の選択が自由であり、二人はほぼ同じスケジュールを組んでいた。朝食後、二人で街へ出ると、街の様子が騒がしくなっていることに気づく。人々は道の先を見て何かを噂しており、キョウは不快そうにハルファの姿を見つけた。ハルファは強者にのみ友好的な戦闘狂であり、二人は彼が苦手だった。

学園長の要請
ハルファは学園長からの指示でウサトを探していた。街の人々からの苦情が学園長に届き、彼を呼ぶよう頼まれたという。聞けば、ウサトは早朝から街を駆け回っていたらしい。ウサトが何をしているのか気になり、キリハとキョウは騒ぎの中心へ向かう。すると、ナックが涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら走ってきた。彼の後ろには、大きな熊の魔物を軽々と背負ったウサトの姿があった。

鬼の訓練とナックの苦悩
ウサトはナックの訓練の一環として、彼を半日間走らせていた。さらに、自らも負荷をかけるためにブルーグリズリーを背負っていた。ハルファが学園長の要請を伝えると、ウサトはすぐに向かうことを承諾。しかし、ナックは疲労困憊で意識を失ってしまう。キリハはウサトのやり方に呆れながらも、その訓練の厳しさに驚いた。ウサトはナックを回復させつつ、さらに鍛えようとする姿勢を崩さなかった。

学園長との対話
学園長グラディスはウサトの訓練方法に頭を抱えていた。特に、街中でブルーグリズリーを背負いながら走る行為が問題視されていた。ウサトは、ナックを鍛えるための適切な場所として学園の訓練場を提案される。さらに、ミーナの横暴を黙認してきた学園側の事情も説明された。貴族の支援を受ける学園は、ミーナの家との関係を壊すわけにはいかず、彼女への指導が難しかったのだ。ウサトはその話を理解しつつも、ナックの鍛錬を続けることを決意する。

ナックの変化と決意
訓練が進むにつれ、ナックは走りながら治癒魔法を使うことの難しさを痛感していた。だが、ウサトの厳しい指導のもとで少しずつ成長していく。しかし、ナック自身の中には未だにミーナへの恐怖が残っており、彼女の姿を見るたびに萎縮してしまう。ミーナはナックを幼馴染として知っていたが、彼を見下し、嘲笑する態度を取る。ナックは、かつてのミーナがこんな人間ではなかったことを思い出しつつも、過去の関係に縋ることができなかった。

逃避と再起
訓練三日目、ナックはついに逃げ出してしまう。彼は狭い路地裏でひとり泣き、自らの弱さを嘆いた。親に捨てられ、学園でも虐げられ、ミーナに勝てる見込みもない。それならば、戦わずに全てを諦めた方がいいと考えた。しかし、そんな彼をウサトが見つけ出す。ウサトはナックに対し、リングル王国の救命団への道を示した。そこならば彼の治癒魔法の力を生かせるし、居場所も得られる。しかし、ナックはそれを拒否し、ミーナと戦うことを決意する。

最後の訓練と覚悟
ナックの決意を受け、ウサトはさらに厳しい訓練を課すことを決めた。今度こそ甘さを捨て、徹底的に鍛え上げる。ナックは逃げずに最後まで戦い抜くことを誓い、ウサトの訓練に再び挑む。ウサトもまた、鬼のような指導を続ける覚悟を決めたのだった。

第五話  本領発揮!!  地獄の訓練!!  の巻

ウサトの異変と訓練場の混乱

キョウがウサトの異変について話し始めた。普段の彼とは違い、怒っているという情報に驚きを覚えたものの、訓練場で確認することにした。道中、学生たちの表情が険しく、異様な雰囲気が漂っていた。訓練場に到着すると、多くの学生がウサトを注視しており、その中央には信じられない光景が広がっていた。ウサトは倒れ伏すナックの背を踏みつけ、不敵な笑みを浮かべていたのである。

苛烈な訓練とウサトの変貌

ウサトはナックに対し、治癒魔法を使いながら徹底的に追い込んでいた。走るナックの背を蹴り、倒れた彼の頭を掴んで罵倒する様子は、昨日までの彼とはまるで別人のようだった。ナックは涙ながらに立ち上がり、ウサトの言葉に従って走り続けた。彼の訓練方法は徹底しており、努力よりも結果を重視する姿勢を貫いていた。その異常ともいえる姿勢に、周囲の学生たちも言葉を失っていた。

ウサトの本気とナックの決意

ウサトの言葉は冷徹でありながらも、ナックを本気で鍛えようとする強い意志が込められていた。ナック自身もまた、その厳しさに耐えながら前進しようとしていた。彼の訓練は過酷でありながらも、ナックの中に確かな変化を生んでいた。涙を浮かべながらも、彼はウサトに応えようと全力を尽くし続けた。最終的にナックは魔力を纏いながら走ることに成功し、ウサトも満足げな表情を浮かべていた。

スズネとカズキの見解

ウサトの異常な変貌に戸惑う者が多い中、彼と同行してきたスズネとカズキは冷静だった。彼らにとって、ウサトの本質は「助けると決めたら必ず助ける」ことにあり、そのためにどんな手段でも取ることを知っていた。ナックがウサトに助けを求めた以上、彼が手を抜くことはないと二人は確信していた。スズネとカズキはウサトの行動に驚きはしなかったが、彼がここまで変貌したことには多少の違和感を覚えていた。

ウサトの帰還と日常への回帰

夕食の時間、訓練を終えたウサトとナックが戻ってきた。ナックは涙を流しながら食事を頬張り、ウサトの厳しい指導を振り返っていた。ウサト自身は「師匠を真似しただけ」と笑っていたが、その訓練の過酷さは尋常ではなかった。そんな彼の態度に、キリハたちは呆れつつも、ウサトが本気でナックを育てようとしていることを改めて理解した。

夜の魔法訓練とウサトの秘密

夜、外から聞こえた破裂音に警戒したキリハは、外で魔法の練習をしているウサトを発見した。彼は治癒魔法を遠距離攻撃として使う方法を編み出しており、独自の鍛錬を積んでいた。その話の中で、ウサトが異世界から召喚された存在であることが明かされた。彼はこの世界の価値観を持たず、獣人に対する差別の概念もなかった。その言葉に、長年人間を警戒していたキリハは驚きを隠せなかった。

ウサトの価値観とキリハの変化

ウサトはキリハに対し、「獣人も人間も変わらない」と語った。それは彼が異世界の出身だからこそ持つ考え方であり、この世界の差別的な常識とは無縁だった。その言葉に触れたキリハは、自分の中にあった不安や疑念が少しずつ和らいでいくのを感じた。ウサトの存在は、彼女にとって長年抱えてきた不信感を拭い去るきっかけとなったのである。

新たな関係の始まり

ウサトの考え方を知り、キリハはこれまでの固定観念を見直すことを決意した。彼の行動は異常ではあるが、その根底には確かな優しさがあった。キリハは、自分がずっと求めていた「人間の友達」を、目の前のウサトの中に見出し始めていた。ウサトの奇抜な行動に呆れながらも、彼の存在が自身の人生に影響を与えていることを実感し、彼との関係を築こうと決意したのである。

第六話  死闘!!  ナック VSミーナ!!  の巻

訓練日記の始まり

ナックはウサトの勧めで訓練日記を書き始めた。彼にとって、この日は生まれ変わった日だったが、それは決して美しい意味ではなかった。ミーナに怯え逃げ続けた結果、ウサトに救われ、ようやく自分の成長が始まったにすぎなかった。ウサトの所属する救命団に入るべきか迷いながらも、彼の師匠が恐ろしい人物だと聞き、その厳しさを想像することしかできなかった。

過酷な訓練とウサトの二面性

訓練は想像以上に苛烈だった。ミーナの嫌がらせよりも厳しく、ウサトは容赦なく罵倒し、転ばせ、踏みつけ、治癒魔法で再生させながら追い込んだ。彼は「演技」と言っていたが、ナックにはそうは思えなかった。訓練中は怪物のような存在でありながら、それ以外の時間は温厚な人間。その二面性に恐怖を抱きながらも、ナックは逃げずに訓練を続けた。

魔力弾の訓練と新たな苦行

四日目の訓練では、ナックの耐久力があまりに低いと指摘され、新たな訓練が課された。それは「魔力弾を回避する」ことだった。攻撃を避け続けることで、治癒魔法使いとしての生存能力を高める狙いだった。しかし、ウサトの魔力弾は異常な速度で飛んできた。ミーナの魔法以上の速さで迫り、当たれば吹き飛ばされるほどの威力を持っていた。しかも、治癒魔法を込めた弾のため、当たるたびに体力は回復し、延々と訓練を続けられる状況にあった。ウサトの魔力が尽きるまでの間、ナックはひたすら避け続けるしかなかった。

精神の摩耗と成長の実感

訓練が進むにつれ、ナックは肉体的な疲労よりも精神的な摩耗を感じるようになった。翌日の訓練をどう生き残るか、そればかり考えるようになり、他のことに興味を示せなくなっていった。魔力弾を回避する技術は向上したが、ウサトの放つ弾を完全に避けられるわけではなく、訓練は常に厳しさを増していった。五日目を迎えた頃には、彼の意識は完全に訓練のみに向かっていた。

訓練の最終日とナックの決意

最終日、ナックはただ無心に訓練をこなした。野次馬の視線も、かつて自分を苛めていた者たちの存在も、もはや気にすることはなかった。ウサトの魔力弾を避け、怒鳴られながら走り、吹き飛ばされ、倒れても立ち上がる。その繰り返しの中で、彼は確実に変わっていった。そして訓練が終わると、ウサトはリングル王国の勇者であるカズキとスズネをナックに引き合わせた。

カズキとスズネの助言

カズキは「戦うことの怖さ」と「立ち向かうことの大切さ」について語った。恐れることは悪いことではなく、時には逃げてもいい。しかし、それを乗り越えて戦うことが大事だと諭した。一方、スズネは貴族である自分の立場を例に挙げ、「しがらみに囚われず自由に生きること」の重要性を伝えた。二人の話はナックにとって大きな支えとなり、彼は改めて決意を固めた。

戦いへの覚悟

ナックはウサトに心からの感謝を抱きながら、ミーナとの決着をつけることを誓った。それは私怨でも復讐でもなく、過去の自分を断ち切り、新しい人生を歩むための戦いだった。そして、この戦いの先には、彼が求める未来があると信じていた。

ウサトの視点とナックの変化

ウサトは、訓練を終えたナックの部屋の前で日記を発見した。その内容を読んだ彼は、治癒魔法の訓練が人を変えてしまうことを実感する。数日前まで気弱だったナックが、今や鋭い眼光を持ち、強い意志を秘めた戦士へと変貌していた。その変化に驚きつつも、ウサトは彼の戦いを静かに見守ることを決意した。

試合開始前の準備

決戦当日、ウサトはカズキとスズネと共に試合会場へ向かった。ナックの状態は万全であり、精神的にも落ち着いていた。彼の覚悟を信じながら、ウサトたちは試合の行方を見守ることにした。

戦いの舞台とミーナの油断

訓練場には多くの学生が集まり、試合を見守っていた。ナックとミーナが対峙する中、ミーナは自信満々な様子で白銀の盾を構えていた。しかし、ナックが受けた訓練は、単なる防御を無力化するほどの実力を身につけさせるものだった。治癒魔法使いとしての本来の在り方を超えた戦い方を習得したナックは、相手の予想を超える戦いを見せることになる。

勝負の行方

ウサトはナックの成長を信じ、ただ静かに見守っていた。この五日間の過酷な訓練の成果を、ナックがどのように示すのか──それは、今まさに試されようとしていた。

ナックとミーナの対峙

訓練場の中央で、ナックとミーナは向かい合った。ミーナは冷笑を浮かべながら、彼が貴族の身分を捨てても何も変わらないと告げた。彼女は、ナックが最愛の妹と引き離されたことも、両親に見捨てられたことも、彼の魔法がミーナのそれとは比べ物にならないほど劣っていることも変わらないと主張した。

ナックには、かつて妹がいた。家族として唯一心を通わせた存在だったが、両親の決定により引き離されてしまった。妹がどう思っているかも分からず、彼の存在は意図的に隠され続けているようだった。それでも、今となってはどうでもよかった。

ナックは貴族に戻る気も、ミーナに復讐する気もないと告げた。しかし、彼女は信じなかった。彼がこの場に立っているのは、結局ミーナと戦うためだろうと指摘した。そして、今までの苛めはすべて手加減していたことを強調し、ナックに自分の力を思い知らせようとした。

新たな道への決意

ナックは、ミーナと戦う必要はなかったと認めた。しかし、ウサトと出会い、彼の大きな背中に憧れてしまった以上、自分を変える必要があると考えた。彼は、ウサトのような治癒魔法使いになり、彼の隣に立てるほど強くなりたいと願った。

ミーナは、ウサトのような「怪物」と肩を並べたいというナックの考えを嘲笑した。しかし、ナックは、強さそのものに価値はなく、それをどう使うかが重要だと反論した。ミーナの炸裂魔法が破壊をもたらすだけの力であるのと同じように、強さを持つ者がどう振る舞うかが決定的な違いを生むのだと。

ナックは、この戦いに勝ち、過去の自分と決別し、ルクヴィスを離れるつもりだった。ここにはもう未練はない。キリハたちと別れるのは辛いが、それ以上にウサトと共に歩む道を選びたかった。

ミーナは、ナックの決意に動揺しながらも、冷酷に宣言した。彼女はおじたちから「自由にしていい」と言われており、ナックが泣いて許しを請うまで痛めつけ、一生奴隷にすると言い放った。ナックは彼女の勝手な考えに呆れながらも、すでに覚悟を決めていた。もはや恐れるものはなかった。

試合の開始

ミーナが炸裂魔法を放つと同時に、ナックは全力で地を蹴った。彼女の魔法は空気を爆発させることで、対象を焼き、吹き飛ばす。体術のみで戦うナックにとって、相性の悪い魔法だった。しかし、それよりも厄介なのはミーナの持つ盾だった。炸裂魔法の爆風から自分を守るために用意したものであり、弱点を補う役割を果たしていた。

ナックは、炸裂魔法の爆発を避けながらミーナに接近した。彼女の魔力弾は、ウサトのものと比べると格段に遅かった。五日間の訓練を経たナックにとっては、十分に回避できる速度だった。ウサトとの過酷な特訓の成果が、確実に表れていた。

ミーナは驚きつつも、次々に魔力弾を放った。しかし、ナックはそれらを避けながら、さらに距離を詰めた。ミーナの目には、これまでとは違うナックの姿が映っていた。

ミーナの焦りとナックの成長

戦いが進むにつれ、ナックは自分の成長を実感した。彼は、炸裂魔法を回避しながら戦う術を身につけていた。砂煙を利用し、ミーナの視界を奪いながら攻撃の機会をうかがった。

ミーナは苛立ち、見境なく魔力弾を放った。しかし、それは逆にナックにとって好機となった。敵の位置を正確に把握できる状況を作り出し、一気に距離を詰めた。そして、跳躍しながら飛び蹴りを放ち、ミーナを吹き飛ばした。

彼女は盾で防御を試みたが、ナックの攻撃の勢いを完全には抑えきれなかった。盾の中央には亀裂が入り、彼女は地面に叩きつけられた。しかし、ミーナはすぐに立ち上がり、今までにない好戦的な笑みを浮かべた。

ミーナの反撃とナックの苦境

ミーナは本気になった。彼女は盾を突き立て、さらに魔力弾を生成した。今度は、五つの小さな炸裂魔力弾を同時に操り、ナックを包囲するように放った。爆風の範囲を広げ、回避の選択肢を奪う戦術だった。

ナックは必死に回避したが、完全には避けきれず、爆風を受けて吹き飛ばされた。ミーナは勝ち誇った表情を浮かべ、彼に言い放った。魔法使いは、自らの系統を理解し、相性を考慮して戦わなければならない。ナックのような肉体派の戦い方では、自分には勝てないのだと。

ナックは一度膝をついた。しかし、彼はここで負けを認めるわけにはいかなかった。ミーナの言葉には、甘美な誘惑があった。ここで降伏すれば、彼女の苛めも終わり、以前よりも良い環境になるかもしれない。しかし、それでは自分を変えることはできない。彼は、ウサトとの五日間の訓練を無駄にすることは絶対にしたくなかった。

ナックはゆっくりと立ち上がった。彼の額から血が流れていたが、治癒魔法を使い傷を塞いだ。そして、ミーナに向かって再び立ち向かう姿勢を見せた。

ミーナは彼の行動を認めながらも、さらに強力な攻撃に出る準備をしていた。彼女の手には、十発の魔力弾が浮かび上がっていた。先ほどとは違い、連鎖的に炸裂する魔力弾であり、回避の余地を完全に奪うものだった。

ミーナは不敵な笑みを浮かべながら、その場を飛び退いた。そして、腕を広げると同時に、十発の炸裂魔法を一斉に放った。ナックの周囲には、重なるように爆風が吹き荒れ、彼を完全に包み込んだ。

炸裂魔法の猛攻とナックの窮地

ミーナの炸裂魔法が広範囲に放たれ、ナックは逃げ場を失った。観戦していたカズキや先輩たちは、彼の状況を危惧しながらウサトに問いかけた。ハルファも、ミーナの魔力弾を複数生成してばら撒く戦法に、ナックの不利は明白だと判断していた。しかし、ウサトは異なる考えを持っていた。救命団の戦場には安全な場所など存在しない。この程度の戦いを乗り越えられなければ、彼の未来はないと考え、ナックに奮起を促した。

ナックは炸裂魔法の爆発を避けながら走り続けたが、次第に足を止めることが難しくなった。ミーナの言葉が響く中、彼の意識は散漫になり、魔法の余波にさらされ続けた。体に受ける傷を最小限に治癒しながら、ただ耐え抜くことだけを考えていたが、攻撃の勢いは衰えなかった。ミーナは彼を徹底的に痛めつけるつもりだった。

ウサトの叱咤とナックの覚醒

そんな状況の中、ウサトの怒声が戦場に響いた。「逃げるな、戦え!」という単純な一言だったが、それはナックの心を揺さぶるのに十分だった。自分はミーナに勝つためにここにいるはずだったのに、いつの間にかただ逃げることに終始していたことを自覚した。

彼は震える両頬を叩き、視界を晴らした。もう逃げないと決意し、再び立ち上がった。目の前のミーナも、なおも彼を倒そうと魔力を構えたが、ナックの目には恐れの色はなかった。治癒魔法を全身に纏い、今度こそ戦うために前へと踏み出した。

炸裂魔法の爆風が彼を襲ったが、ナックは進み続けた。痛みを耐え、ミーナとの距離を縮めた。最後に放たれた魔力弾に対し、彼は右拳を叩きつけ、魔法の爆炎を力で消し去った。傷だらけになりながらも、ナックはなおも進み、ミーナの盾へ渾身の体当たりを叩き込んだ。

ナックとミーナの因縁

ミーナは地面に倒れ込んだ。勝利を確信しかけたナックだったが、ミーナはなおも執着し、魔力を練り上げていた。彼をここから出すわけにはいかないという、強い執念がこもっていた。

ナックにはその理由が分からなかった。なぜミーナはそこまで彼に執着するのか。そんな疑問が浮かぶ中、ハルファが「それは系統強化だ!」と叫び、ウサトが彼を止めに動いた。

系統強化――熟練した魔法使いしか扱えない技術を、ミーナは暴走しながら発動しようとしていた。ナックは逃げるべき状況だったが、彼の選択は違った。周囲の人々を助けるため、そしてミーナを止めるため、彼は前へと進んだ。

ミーナの魔力が暴走し、血が溢れる中、それでも彼女はナックを倒そうとしていた。ナックは迷わず彼女の手を掴み、炸裂魔法をその身で受け止めた。彼女の暴走を止めるために、全身でそれを受ける覚悟を決めていた。

戦いの終焉と新たな道

だが、爆発は起こらなかった。ミーナ自身が魔法を止めたのだ。彼女の手には涙が流れ、震えていた。ウサトは「彼女は自分で止めた」と説明し、不器用なだけなのかもしれないと呟いた。

ミーナは泣いていた。今までナックを苦しめた張本人であるはずなのに、彼女の涙を見たナックは、思わず「ごめん」と口にしていた。

体力の限界が訪れたナックは、その場に倒れそうになったが、ウサトがしっかりと支えた。そして彼の体を治癒魔法で包み込みながら、あることを指摘した。ナックの治癒魔法が本来の形を取り戻したのだ。

ウサトの言葉を聞き、ナックは自分の手を見る。そこには微かな治癒魔法の光が宿っていた。彼はそれをしっかりと握りしめ、二度と手放さないと誓った。

ウサトは微笑みながら、彼を抱えたまま立ち上がった。戦いの決着を見届けた人々が、ナックのもとへと駆け寄ってくる。彼はようやく、自分の進むべき道を見つけたのだった。

第七話  別れ、そして新たな旅路へ!!  の巻

ナックとミーナの戦いの終結

ナックとミーナの戦いは、ナックの勝利で幕を閉じた。ミーナが無理に系統強化を行使しようとした騒動もあったが、結果としてナックの治癒魔法は本来の形を取り戻し、彼自身の問題も解決へと繋がった。ウサトはナックの成長を見届けてから旅立ちたいと考えていたが、その翌日、彼らは学園長であるグラディスに呼び出された。

学園長との会談とルクヴィスの変化

学園長室に呼び出されたウサトたちは、突然グラディスから感謝の意を示された。彼女はルクヴィスの学生たちの意識改革を望んでおり、ナックの奮闘がその契機となったと語る。近年、魔法の素養を生まれつきの才能に依存する風潮が強まり、努力を軽視する学生が増えていた。ナックが才能の壁に正面から立ち向かい、勝利を掴んだ姿を見たことで、多くの学生が意識を改めたのだという。

また、ウサトたちの実力が明らかになったことで、魔王軍の脅威を軽視する者はいなくなった。そして、学園側の協議の結果、ルクヴィスはリングル王国と協力関係を結ぶことを正式に決定した。ウサトはその報せを喜びながらも、ルクヴィスで築いた絆を思い、少しの寂しさを覚えていた。

仲間たちとの別れ

学園を後にしたウサトは、キリハたちの家を訪れ、別れの挨拶を交わした。キリハは別れを惜しみながらも、ウサトの旅立ちを理解し、ウェルシーから託された礼の品を受け取った。キョウもまた、当初は人間を信用できなかったものの、ウサトとの出会いを通じて考えを変えたことを明かした。

最後にナックと向き合ったウサトは、彼が涙ながらに感謝の言葉を述べる姿を見た。訓練は辛く、時に心が折れそうになったが、そのすべてがミーナとの戦いで必要だったとナックは語った。そして、ナックは決意を固め、救命団に入ることを宣言した。ウサトは彼に紹介状を手渡し、リングル王国で再会することを約束した。

ミーナとの再会

その後、ナックはミーナと対峙した。彼女は学園を去ることを認めるとしながらも、諦めるつもりはないと告げた。学園を卒業し、より強くなってからナックを連れ戻すつもりだという。驚きつつも、ナックはその言葉を受け止め、リングル王国で待つことを宣言した。ミーナは挑戦的な笑みを浮かべ、その場を去っていった。

旅立ちと新たな誓い

旅立ちの日、ウサトは犬上先輩とカズキとともに門前に集まった。それぞれの道を進むことを決意し、ウェルシーからの激励を受けた。先輩からは手作りのお守りを渡され、ウサトは深い感動を覚えた。別れの際には、三人が必ず再会することを誓い合い、それぞれの道へと歩み出した。

ルクヴィスでの経験を胸に、ウサトは新たな冒険へと向かう。その旅路には困難が待ち受けているだろうが、彼は前を向いて進み続けることを決めていた。

閑話  魔王様が見ている

勇者たちの動向と魔王の観察

勇者たちは二手に分かれ、それを察知した魔王は静かに瞼を開いた。遠くの城の玉座に腰掛け、戦況を見つめながら思案を巡らせる。傍らに立つ侍女が恭しく声をかけたが、魔王は軽い口調で会話の重要性を説いた。侍女は礼儀正しく返答しつつも、魔王の言葉に対する態度は崩さない。

魔王は、勇者たちの目的が他国との協力を求めるものであると推察した。しかし、自らの軍がすでに大陸全土を相手取る前提で動いている以上、多少の戦力の増減は問題ではないと語る。現在、魔王軍は二度の敗北を経て戦力の増強に努めており、今すぐの侵攻は得策ではないと判断していた。

魔族の忠誠と魔王の嘆息

侍女は魔王の計画に対し、隙を突いた奇襲を提案するが、魔王はそれを即座に否定した。過去の戦いで勇者がいないにもかかわらず撃退されたことを指摘し、無策の侵攻は無意味であると一蹴する。侍女は深く反省し、処罰を求めたが、魔王は呆れながらもそれを拒否した。魔族の徹底した忠誠心に、魔王は息苦しさを覚え、より気軽に話せる存在を求めた。しかし、侍女たちは皆、同じように厳格な教育を受けているため、望むような相手は見つからないと告げられた。

それでも、近いうちに新たな侍女が配属されるという報せを受け、魔王はささやかな期待を抱きつつ、再び勇者の話題へと戻った。

勇者と治癒魔法使いへの興味

リングル王国の勇者たちは、国に大切に扱われながらも、自らの意思で命を懸けて戦っている。その姿勢は、かつての戦いと比べても興味深いものだった。さらに、魔王の関心を引いたのは勇者と共に行動する「治癒魔法使い」の存在であった。

人間のみが使える治癒魔法は、かつて戦場で重宝されたが、現在は冷遇されている。しかし、その治癒魔法使いは戦場を駆け、勇者と共に戦っているという異例の存在だった。さらに、彼の周囲には人間だけでなく、魔物や獣人の気配もあった。それは、かつて魔王が対峙したある人間の姿と重なっていた。

異種族と手を結び、孤独を抱えながらも道を歩んだかつての人間。そして、今また同じ道を行こうとする治癒魔法使い。その存在に、魔王は深い興味を抱いたのだった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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