どんな本?
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』は、之貫紀(し つらのり)氏による日本のライトノベル作品である。2019年6月1日より小説投稿サイト「小説家になろう」にて連載が開始され、後にKADOKAWAのエンターブレインレーベルから書籍化された。
本作は、地球上に突如として「ダンジョン」が出現してから3年後の世界を舞台にしている。主人公である芳村圭吾は、総合化学メーカーの素材研究部に勤務していたが、ある日、偶然の事故により世界ランク1位の探索者として登録され、「メイキング」という特殊なスキルを得ることとなった。彼はパートナーである三好梓と共に、ダンジョンの謎を解明しつつも、穏やかな日常を保つことを目指して活動を続けていく。
本作の特徴は、現実世界にダンジョンが現れた場合の社会的影響や科学的な考察を描くハードSF的要素と、主人公の平穏な日常生活を中心とした物語が展開される点である。また、2020年10月より平未夜氏によるコミカライズ版が『月刊コンプエース』で連載されており、メディアミックス展開も進んでいる。
2024年11月現在、書籍版は第10巻まで刊行されており、最新刊は2024年10月30日に発売された本書『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 Side Stories』である。
読んだ本のタイトル
Dジェネシス ダンジョンが出来て3年SIDE STORIES
著者:之 貫紀 氏
イラスト: ttl 氏
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あらすじ・内容
「Dジェネシス」の世界をさらに楽しく!
芳村の真夏のホラーバカンスを書いた「ashes to ashes」をはじめ、
アーシャのカレー道中「女王の戴冠」、ダンつくちゃんと共存する世界のIFストーリーに
スライムが主人公!?の「It’s gone」、6巻アフターストーリー「AB Night」や、
心優しい少女と猫を救う「Birds of a Feather」と、救われた猫を主人公した「黒猫」など。
特典だった短編作品をリライトし、各巻の執筆秘話やSSの解説を収録!
「Dジェネシス」がさらに楽しめるファン必須の1冊!
感想
構成と解説の楽しみ
『Dジェネシス』の特典短編をまとめたこの一冊は、前書きや解説が追加され、各話の背景が詳しく理解できる構成である。アーシャの「女王の戴冠」では、彼女のカレーにかける情熱が軽快に描かれているが、他の作品はどちらかと言えばホラー調である。特に、黒猫アイちゃんの登場は、ただの猫の話に留まらず、彼女が芳村やDパワーズの仲間として事務所に居着き、新しい家族の一員となるまでの過程が感動的である。リライトされたSSにより、読者にとっては、より深く『Dジェネシス』の世界を感じられる構成となっている。
ホラーとコメディの絶妙なバランス
本作は純然たるホラーではなく、コミカルな場面も多く、緊張感と和みが交互に訪れる仕組みが秀逸である。「ashes to ashes」では、芳村のバカンスに絡む恐怖体験が描かれているが、随所に緊張を和らげる要素も盛り込まれている。こうしたバランスはキャラクターの個性に基づいており、ホラーが苦手な読者にとっても楽しめる工夫が施されている。特に、ダンつくちゃんがジョーズの真似をするシーンやアルスルズ達への説教場面は、思わず笑みがこぼれる場面であった。
特典SSを網羅したファン必携の一冊
本編の早期購入特典として収録されていた短編が再び集結し、本編ファンにとって見逃せない構成である。この短編集は、本編を読んでからの方が一層楽しめる内容になっているが、初見でも理解できる解説が付いているため、新規の読者にも優しい作りである。本編を隅々まで楽しみたい読者にとって、この短編集はまさに必携の一冊である。また、商業本にはなかった水着シーンが登場し、ファンサービスも欠かさない内容となっている。
黒猫アイちゃんの成長と家族愛
「Birds of a Feather」と「黒猫」はアイちゃんの物語を中心に展開される。交通事故で足を失ったアイちゃんは、めぐみちゃんの助けを得て、超回復スキルを得たことでDパワーズの一員となり、新しい居場所を見つける。この二作品は、アイちゃんの成長と心温まる絆が描かれており、ただのホラーやコメディ以上に読者の心を揺さぶる感動作である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
Dジェネシス ダンジョンができて3年
その他フィクション
備忘録
第2章 ashes to ashes
プロローグ
夏の浜辺の様子
白い砂浜で、芳村と三好は傘の下で暑さにうだっていた。隣には麦わら帽子をかぶった三好が、ぐったりと横たわっている。彼らは、なぜこの暑い季節に海へ来たのかを議論し始めた。三好は、夏らしい特典が必要だからと説明した。
夏の風物に対する意見
芳村と三好は、夏の風物詩について話し合った。花火、風鈴、打ち水などが挙がったが、それぞれに対する芳村の不満が続いた。花火大会の混雑や風鈴の音のうるささ、昼の打ち水の不快さなど、どれも彼の期待に応えるものではなかった。
周囲の様子と三好の挑戦
砂浜を楽しむ他の女性たちは、オイルを塗って日焼けに勤しんでおり、芳村はそれを「注文の多い料理店か」と揶揄した。また、三好に水着要員になるかを尋ね、彼女がその挑戦を受けて立つ様子を見守った。彼女は流行のタンキニを披露したが、芳村は控えめなスタイルにやや辛口の評価を下した。
浜辺の賑わいと男女の関係
彼らの周囲には家族連れやカップルが多く、仲睦まじく過ごす姿が見られた。それを見た芳村は、「暑苦しいな」と呟き、早く結婚すべきだと軽く皮肉を交えた。三好は、この情景が「夏と言えばホラー特集」というテーマにふさわしいと提案し、この場面が夏の恐怖体験に繋がる序章であると示唆した。
DAY1
賤ヶ岳SAでの出会いと道中のやりとり
芳村と三好、斎藤、御劔は、東京から北陸自動車道を走り、賤ヶ岳SAに到着した。彼らはそれぞれの服装や日焼け対策について話し、車での移動中もユーモアと軽い口論を交えながら進んだ。三好は距離を短縮するルートを提案し、ナビに自信を見せていた。
浅井三姉妹の観光と夏の解放感
賤ヶ岳SAにある浅井三姉妹の顔抜けパネルで、斎藤は楽しげに観光を楽しんだ。斎藤と御劔は、三姉妹の並びや歴史的背景について軽く議論し、観光地の楽しみ方を堪能した様子であった。
福谷駐在所からの田舎道の風景
敦賀JCTから舞鶴若狭自動車道を経て、小浜ICで降りた後、彼らは閑散とした国道沿いの風景を楽しんだ。福谷駐在所や田園風景に驚き、地域独特の建物や風景に興味を示しながら進んだ。
宿須の不気味な雰囲気と現地の案内人
神社を訪れて道を確認しようとする中で、宿須という地名が現地の男性に強い驚きを与えた。芳村がその男性に尋ねると、宿須の存在に対する不安が露わになり、彼らは怪しげな気配に包まれながら先に進んだ。
ホテルと謎めいた南蛮の女性の伝承
やがて、海に面した美しい入り江にあるホテルに到着し、歴史ある館であることが明らかになった。そこには慶長六年に漂着した南蛮の女性にまつわる伝承が残されており、館にはその歴史が反映されている様子であった。芳村と三好は、館の歴史や地域の伝説に思いを馳せ、旅の意図を忘れかけていた。
夏の満喫と休暇の始まり
三好が「夏休みを満喫するべき」と主張し、芳村は無理やり白い砂浜へ連行されることとなった。彼らは異国情緒あふれる館と美しい風景の中で、夏の解放感を味わう準備を整えた。
階段での偶然の会話と不安の兆し
芳村は水着に着替え、ヨットパーカーを羽織ってロビーへ向かう途中、スタッフたちの話し声を耳にした。彼らは「明後日までに何かを準備する」と話しており、芳村は突然の招待が迷惑だったのかもしれないと一抹の不安を抱いた。
プライベートビーチでの夕食準備と奇妙な指示
崖沿いの急な階段を下りてプライベートビーチに到着した芳村と三好は、執事風の男から「夕食は十六時三十分から」と案内された。この時間設定に違和感を覚えた芳村は、またもや「部屋から出ない方がよろしい」と言われ、何か不穏なものを感じた。
夕食の余韻と不安な夜の始まり
テラスで地元の食材を活かした美味しい夕食を楽しんだ芳村たちは、サービスマンが「日没後は部屋に戻るように」と告げて立ち去る様子に不安を抱いた。夜が更けるにつれ、周囲には誰もいなくなり、暗闇と静けさが辺りを包み込んだ。
郷土資料室での発見と過去の記録
ロビーの郷土資料室で、芳村たちは神主が記したとされる古い記録を発見した。古書を手に取りながら、ホテルの由来や地域の歴史についての情報が明らかになる中、芳村は一抹の不気味さを感じつつも興味を持ち始めた。
夜の小宴会と雨の訪れ
三好が持ち出したワインと斎藤が見つけたチーズやシャルキュトリーを囲んで、芳村たちはささやかな宴会を始めた。夜の海を眺めるつもりで乾杯したが、あいにく雨が降り始め、彼らの夏の夜は静かに幕を閉じることとなった。
酒宴の始まりと混乱
芳村たちは、ワインとシャルキュトリーでの宴会を始め、斎藤が酔った勢いで料理に盛り上がった。三好は「ランブルスコ」を持ってきてさらに賑やかになり、宴会は大騒ぎとなった。だが、芳村はこの騒ぎの後片付けに不安を抱いた。
斎藤と御劔の部屋への移動
宴会後、芳村は酔っ払った斎藤と三好をそれぞれ部屋まで運んだ。御劔も酔っており、芳村にさりげなく誘いをかけたが、芳村は冷静に退散し、ロビーで疲れを癒した。
雨音と怪しい気配
芳村がロビーで休んでいると、二階から御劔の悲鳴が聞こえた。急いで彼女の部屋へ駆けつけたが、部屋の窓から外には人影がなく、不穏な気配が漂った。芳村は、森の奥に見える赤い影を追って走り、神社にたどり着いたが、何も見つけられなかった。
ロビーでの協議と謎の神社の資料
芳村と三好は、ホテルの郷土資料室で土地や神社に関する資料を調べ、神主の日記や「椿様」という不死の女性「カムリア」にまつわる話を発見した。彼女が村に疫病をもたらしたことや、村人たちが「津婆鬼」として彼女を討伐したという伝説が記されていた。
突然の停電と不穏なメッセージ
突然の停電でホテルが暗闇に包まれ、非常灯だけが点灯する中、芳村たちは御劔の携帯から送られた謎めいたメッセージを受け取った。内容は誤字混じりで「明後日までは安全」とあったが、具体的な位置は不明だった。
神社の謎とカムリアの正体
芳村は、カムリアという女性が「不死」の存在であることに気づき、三好と共に、彼女が吸血鬼であった可能性を議論した。椿の花や赤いドレスに包まれたカムリアの描写が、レ・ファニュの吸血鬼小説『カーミラ』に酷似していることに気づいた。
DAY2
警察やスタッフの不在と仮説
芳村たちは夜明けを迎えたが、警察もスタッフも現れなかった。このことから、スタッフの犯行が疑われ始めた。芳村と仲間たちは、御劔の行方を捜すため、Wi-Fiが届く範囲を中心に再度探索することに決定した。また、村には秘密の拠点がある可能性も考え、支配人室を調査することにした。
支配人室での発見
芳村は支配人室の引き出しから「六文船永代目録」という古い取引記録を発見した。12年ごとの取引記録が記されており、36年前から内容が変わっていた。これにより、村が古くから貿易で栄えていた可能性が浮上し、何か特殊な品物を扱っていたのではないかと推測された。
村での探索と古い教会の発見
芳村は村を訪れ、奇妙な歌が聞こえる古い教会にたどり着いた。その教会には「ESOTERICA ORDE DE DAGON」の文字と三角形の目のシンボルが刻まれていた。芳村は、これはラブクラフトのホラー小説に登場する秘密結社を連想させるものであると気づき、疑念を抱いた。
教会での目撃と教団の不気味な行動
芳村と三好は教会の屋根から、黒い合羽を着た奇妙な歩き方をする信者たちを目撃した。信者たちの動作が、ラブクラフトの「深きもの」に似ていることに気付き、芳村はこの信者たちが神秘学やホラー小説の影響を受けたコスプレ集団か、あるいは本物の危険な教団ではないかと考えた。
村人との出会いと「椿の末」の伝説
斎藤は帰路の途中で村人から「椿の末」という不死の一族の話を聞いた。その一族は不死だと噂されており、村人たちから畏れられていたが、24年前に村から追放されていた。この伝説が御劔の失踪と関係している可能性が浮上し、芳村たちはさらなる調査を決意した。
廃社への調査と警戒
芳村は、「椿の末」に関する手がかりを求めて、斎藤の聞いた廃社へ向かうことにした。三好と斎藤には村内で行動する際の注意を促し、危険があればすぐに逃げるように指示した。
夏の田舎での考察と疑惑
芳村は、夏の田舎の道を歩きながら、御劔と斎藤が行方不明になった事件について考察を続けた。オーナーであるマーシュ氏が彼女たちをホテルへ招待した後、ダゴンの生贄にしようとしているのではないかと推測した。しかし、現実味に欠ける話に思え、陰謀の存在を疑いながらも、赤いドレスの女など、事件に関係のない謎も多く含まれていると感じた。
神社での探索と不気味な発見
芳村が訪れた神社は荒れ果てていたが、建物自体は朽ちておらず、生命探知スキルで地下に何かがいることを察知した。床下を調べると隠し扉が見つかり、芳村は地下に降りて探索を開始した。地下の部屋には奇妙な器具や拘束具、英文の記録などがあり、これらが何らかの実験や監禁に使われていた可能性を思わせた。
英文の手記に記された過去の事件
地下で発見した英文の記録には、航海中の船で遭難したカムリアの生々しい体験が記されていた。彼女が遭遇した異形の生物や、不死の妙薬としての「肉」の存在が語られ、やがてカムリアは日本に流れ着くことになる。船の祭壇には奇怪な白い肉があり、それを口にした者が異常な変化を遂げるという恐ろしい記述があった。
謎の肉と取引の歴史
カムリアはその後もその「肉」を少量ずつ提供し、村に富をもたらす見返りとして財宝を得ていたことが示されていた。しかし、24年前にその肉の供給が途絶えたことで、村が襲撃される事件が発生した可能性が考えられた。カムリアが渡した肉が、若狭の人魚伝説や不老不死の起源であることが暗示された。
戻り際の決意と戦いの予感
芳村は、12年前の最後の取引以降、何者かが再び不死の肉を求めてこの村に訪れる可能性があると推測した。彼は不死の存在や教団の謎と対峙する覚悟を固め、御劔たちを救うため、再度調査を続ける決意を胸に、神社を後にした。
ホテルでの謎の状況と不在の仲間たち
芳村がホテルに戻ると、夕暮れの静けさの中、エントランスのドアが破壊され、誰の姿もなかった。彼は焦りながらホテル内を捜索し、彼の部屋で一本の椿の枝と三好の書置きを発見した。書置きには「海石榴の枝」が何かの効果を持つとの暗示があり、彼はその枝を手に仲間たちを探す決意を新たにした。
入港してきた謎のヨット「Y’ HA-NTHLEI」
芳村がホテルの窓から外を眺めると、霧の中から「Y’ HA-NTHLEI」という名のメガヨットが入港してくるのを発見した。彼はこの船が今回の事件に関係していると確信し、船内へと乗り込んで捜索を開始した。海石榴の枝を手にした彼に対して、クルーたちは驚き、次々と逃げ去っていった。
船内での捜索と御劔の発見
船内を進む芳村は、部屋で傷ついた御劔を発見し、彼女を回復させようと〈超回復〉のオーブを使用した。しかし、オーブの効果は現れず、傷はそのままだった。焦る芳村に対し、斎藤も無事な様子で指示を出し、三好の安否が気にかかる展開となった。
驚きの結末と誕生日サプライズ
芳村が最奥の部屋へ突入すると、そこには三好と仲間たちが揃い、誕生日サプライズとして用意された「真夏のホラーショー」であったことが判明した。驚愕する芳村に、仲間たちは祝賀を贈り、事の次第を明かした。彼は演出のやり過ぎに呆れつつも、仲間の無事に安堵した。
残された謎と伝説の真相
その後、芳村は三好に地下で発見した奇妙な物質の鑑定を依頼したが、三好はそれに関して多くを語らなかった。芳村は神社に赤いドレスを供えることで伝説と向き合い、静かに物語の余韻を楽しんだ。
DAY3
船から遠ざかる宿須の光景
芳村と三好は、船のオープンデッキに立ち、遠ざかっていく宿須の村を見つめていた。村を見渡すと、海岸の奇岩とその上に立つ館が、異形の巨人が倒れた姿のような、異様な光景を呈していた。
森の端に見えた赤い影
二人が眺める中、森の端にかすかに揺れる赤い椿の花のようなものが見えた。それはまるで赤いドレスを纏い、金髪の女性が手を振っているかのように映り、村からの別れを象徴するかのようであった。
エピローグ
小説のファイル送信と担当編集・黛との会話
先生は、小説の最新原稿を完成させ、編集担当の黛にメッセージソフトを通じてデータを送信した。黛から食事の誘いがあり、彼女と新宿の居酒屋「のんじゃか」で待ち合わせることとなった。
居酒屋での会話と愛の持続に関する疑問
黛と居酒屋で再会し、軽い乾杯を交わした後、雑談を楽しんでいた。黛がふと、作品のテーマに関して「愛は何百年も維持できるものなのか」と問いかけ、永遠の愛についての思索が始まった。先生は「もし二人だけの閉ざされた世界であれば、永遠の愛も成り立つかもしれない」と応え、彼女と愛について語り合った。
海石榴神社縁起の作品と変わりゆく心情への洞察
黛の質問をきっかけに、先生はかつて執筆した「海石榴神社縁起」について回想し、登場人物たちの愛や情念が長い年月を経てどのように変化するのかに思いを巡らせた。彼女を愛する存在が現れた時、その愛は永続するか、あるいは別の形に変わるのか、深い内省にふけった。
別れの予感と不変の若さ
食事を終えて店を出た後、黛が「先生は本当に若いままですね」と言うと、先生は「永遠の二十一歳ですから」と冗談めかして応じた。しかし、黛との別れの日が近づいていることを先生は密かに感じ、二人は笑顔で別れを告げた。
第3章 女王の戴冠
秋葉原観光とアキバ一周カレー行脚計画
三好の提案で、芳村と三好、アーシャの三人は総武線を利用して秋葉原へ向かった。アーシャは初めて訪れる秋葉原の雰囲気に驚きつつ、期待していたディープな街の様子と少し異なることに戸惑いを感じていた。三好の指示で「アキバ一周カレー行脚」を敢行することとなり、三人は「アキバ一周カレー行脚」のプリントが入ったパーカーを羽織り注目を集めながら秋葉原を歩き始めた。
カレー屋巡りと食材の選定
カレー行脚を開始した三人は、三好が事前に調べていたルートを頼りに、アキバの各地にあるカレー屋を訪れた。メニュー選定では、アーシャの宗教的な理由から特定の食材が避けられ、鶏肉や羊肉を使ったカレーを中心に食べ進めていくことに決定した。辛さを最大にするアーシャの挑戦的な態度により、三人は激辛カレーとの格闘を余儀なくされ、次第に食事の過酷さが増していった。
カレーの種類と地域性に関する考察
カレー行脚の中で、三人はインドの地域によって異なるカレーの特徴について語り合った。アーシャが教えるところによると、インド北部ではこってりとしたカレーが主流で、南部ではさらさらとしたカレーが多いという話が展開された。また、辛さの調整やスパイスの効果についても詳細に議論が行われ、辛み成分が冷水では効果がないことが指摘された。
掲示板での注目と行脚の進行
三人のカレー行脚は、掲示板により多くの秋葉原の観光客から注目を集め始めた。ネット上で「アキバ一周カレー行脚」として話題になり、スネークと呼ばれる観光者たちが三人の様子を逐次報告し、彼らの行動を応援しながら追跡した。行脚の進行とともに、三人は徐々に満腹感に悩まされつつも、秋葉原中を巡り続けた。
カレー女王の戴冠式とゴール達成
最終的に三人は秋葉原のゴール地点であるカレー屋「トップ・クオリティ・カリー」に到着し、アーシャがそのカレーを食べ終えたことにより「カレーの女王」として認定された。三好から手渡された「カレー女王」と書かれたTシャツをアーシャが身に着けることで、行脚の成功を象徴する戴冠式が行われ、周囲から歓声と拍手で祝福された。
エピローグ
カレー行脚から事務所への帰還
芳村、三好、アーシャの三人は、秋葉原でのカレー行脚を終え、満腹感に苦しみつつ事務所へと戻ってきた。事務所で三人がソファに落ち着いたところで、アーシャが「面白かった」と満足げに感想を述べ、秋葉原での一日を楽しんだことを振り返った。
カレーの味を覚えていないアーシャの困惑
芳村がどのカレーが気に入ったかと尋ねると、アーシャは突如青ざめ、全く味を覚えていないことに気づいた。カレー行脚の多忙さゆえに、どの味も印象に残っていないことに驚き、再びカレー巡りをしたいと意欲を示した。
三好と芳村の冷静な反応と提案
アーシャの再度の行脚提案に対し、芳村と三好は苦笑しながら彼女の意気込みをなだめた。芳村が「太る」と指摘すると、アーシャは仮面のような笑顔を浮かべ、行脚は「四年に一度で十分」と納得した様子を見せた。その後、三好が持ってきた水と胃薬を受け取りつつ、芳村も同意を示した。
第4章 IF-A little midsummer memories
物語の背景:Dファクターと日本の不思議な現象
この物語は、Dファクターが原因で感染症が日本で無毒化するというIFストーリーである。2019年から世界的に感染症が猛威を振るう中、日本では謎の現象が起こり、感染症が広がらなかった。2020年、クルーズ船の寄港後、日本では感染者のウイルスが急速に無毒化されることが確認され、研究者たちはこの現象に頭を抱えた。日本が無毒化現象を利用して各国の感染者を受け入れる実験を行い、成功を収めた。
実験場としての下地島と世界的な影響
日本政府は、下地島を実験場に選び、各国の感染者を移送。ウイルスの無毒化が確認されたが原因は不明のままであった。この現象は「ダンジョンの加護」と呼ばれ、新興宗教の勢力が伸びた。JDAの一部や特定のパーティーのメンバーは、集合的無意識が作用した結果と知っていたが、事実は一般には伏せられた。
Dファクターと日常への依存
感染症対策に成功した日本社会は、Dファクターとの共存を選択。人々はDファクターに深く依存しながらも、突如失われる可能性に不安を抱きつつ生活を続けていた。主人公と三好は、日常の中でその影響について考えを巡らせながら、事務所での仕事をこなしていた。
アンブローズ博士からのメールとウケモチ・システムの活用
主人公は、三好からFAOのアンブローズ博士がウケモチ・システムを世界の貧困地域へ広める活動をしていると知らされる。このシステムは飢餓地域の支援に有用であったが、大規模な設置は既存の生産者の生活を破壊する可能性もあり、慎重に進める必要があった。さらに、システムのバリエーション開発の要望もあり、小麦以外の作物の生産方法についても検討が求められていた。
海外旅行とDファクターの制約
主人公はバカンス先としてコート・ダジュールを提案したが、Dファクターによる制約で海外旅行は難しい状況であった。Dファクターの利用は段階的に拡大していたものの、完全な自由利用には至っておらず、代替案として代々木のダンジョンでリゾート環境を再現することを考えたが失敗に終わった。
海のサメへの恐怖とバカンスの行き先
三好とのやりとりの中で、サメへの恐怖からコート・ダジュールでのバカンスに疑問を抱いた主人公は、国内リゾートでのバカンスを考え直す。しかし、混雑する江の島でのバカンスも避け、代々木ダンジョンでの再現を提案するも冗談交じりに話を終えた。
夏の特訓とファッションウィークへの心配
• 遥と涼子は、夏休みの特訓としてダンジョン内にいた。涼子は、ファッションウィークに向け怪我を心配したが、遥はその心配を受け流した。二人は、サマーバカンスに向けた準備を行っていた。
スライム消失と南国の海の再現
• 遥がDファクターを使って南国の海をイメージしたが、最初は何も起こらなかった。しかし突然、周囲のスライムが消え去り、白い砂浜と碧い海が現れた。三好はその海水を確認し、本物のような環境が生成されたことに驚いた。
作り出した空間と未来の影響
• 三好は、個人が空間を作り出せることが普及すれば、不動産や貨幣経済に大きな影響があると考察した。二人はこの空間でバカンスを楽しむことに決め、備品を用意して過ごすことにした。
吉田探検隊と新たな発見
• 吉田探検隊はダンジョンでネタを探していたが、一層で異変を発見。スライムが突然消えたことを受け、吉田は「さまよえる館」が出現した可能性を考えた。斎藤涼子と合流した後、彼らはダンジョン内で不可思議なドアを発見する。
不思議なドアの向こうの新たな景色
• 吉田がドアを開けると、碧い海と真っ白な砂浜が広がっていた。ドアは海の上の空中に浮かんでおり、その先にはビーチチェアとパラソルが見えた。吉田探検隊は興奮し、これを番組で取り上げることにした。
遥と涼子の飛び込みとサメの接近
• 涼子と遥は、吉田たちが発見した海に飛び込み、砂浜に向かって泳ぎ出した。しかし、巨大なヒレが彼女たちの後ろに現れ、サメが近づいていることを示唆した。遥と涼子はサメに追い詰められながらも海岸を目指して必死に進んだ。
芳村の救援とサメの正体
• 芳村が水上を走り、遥と涼子を救出するためにサメと対峙。彼の行動によってサメの正体が判明し、それがダンつくちゃんであることが明らかになった。芳村はこの場面を真剣に対処し、仲間たちと共に無事に事態を収拾した。
吉田探検隊の番組復活の兆し
• 吉田探検隊は、この一連の出来事を映像に収め、視聴率の向上と番組の存続を期待した。斎藤涼子や芳村との合流が番組の価値を高め、探検隊の将来に希望をもたらした。
巨大モンスターの出現
• 吉田隊長と城が海に向かっていると、突然海面が盛り上がり、巨大なタコの足が現れ、さらに中央から巨大なサメの頭が姿を現した。吉田隊長はカメラを死守しながらも翻弄され、二人は恐怖に包まれた。
ダンつくちゃんと三好の無関心
• 一方、芳村たちはこの出来事を遠くから眺め、ダンつくちゃんや三好は特に緊張感もなく状況を見守っていた。三好は、怪物のデザインがB級映画から来ているのではと推測した。
探検隊の苦戦と助け
• 斎藤涼子と御劔はタコサメに対して弓を使用し、モンスターの目を見事に射抜くと、タコサメは突進を止めて倒れ、黒い光に変わって消滅した。二人は戦闘に成功し、初めてモンスターからドロップアイテムを得た。
人魚の謎とセイレーンの正体
• その後、岩場に現れた歌う人魚の姿を見た吉田と城は魅了され、海へと引き寄せられ始めた。だが、御劔と斎藤が遠距離から射た矢によりセイレーンを討ち、二人を助け出した。
探検隊の映像紛失と絶望
• 吉田と城はカメラや携帯を水中に落としてしまい、貴重な映像が消失してしまったことを嘆いた。これにより、二人の間でカメラの弁償を巡る言い争いが勃発した。
御劔が捉えた「お宝映像」
• しかし、御劔は芳村がサメに掌底を叩きこむ瞬間の映像を密かに撮影していた。彼女はこれを「お宝映像」として秘匿し、吉田たちには見せずに内密に保存した。
ダンジョン空間の崩壊と新たな知見
• 最後に、芳村がダンジョン空間を出たことで、空間が自動的に崩壊することが発覚した。この経験を通じて、作り出した空間を維持するためには、最後まで残る必要があることが判明した。
鳴瀬の慌ただしい出迎え
• ダンジョンゲートから出た芳村たちは、慌てた様子の鳴瀬に迎えられた。鳴瀬は数時間前に「ダンジョン震」が観測されたことを報告し、その場所が芳村たちが滞在していた代々木に近い可能性があることを示唆した。
ダンジョン震と消滅震
• 鳴瀬はダンジョン震の影響を受けて、さらに「消滅震」が記録されていると電話で確認した。芳村と三好は、状況から先ほど自分たちが体験した現象がダンジョン扱いであることを理解し、報告の義務について言及しつつも、互いに責任を押し付け合った。
鳴瀬の厳しい追及
• 鳴瀬は芳村が何か知っていると察し、冷たい目で問い詰めた。三好はその場を早々に逃げ出し、芳村は一人鳴瀬の厳しい追及に応じることとなり、夏の一幕を鳴瀬の説教で締めくくることになった。
第5章 It’ s gone
プロローグ
小麦の集中と石の観察
日曜日の午後、小麦は仕事も忘れて石に没頭していた。スタッフの波多見に声をかけられて終業時間に気付き、五時間も集中していたことが判明する。小麦が見ていた石はフェルドスパーに似た構造だが、通常見られないイリデッセンスがあり、波多見もその異様な輝きに驚いた。彼女はその石を「私物」と説明し、波多見は内心で小麦の執念に感心していた。
小麦の石に対する執念と職場での様子
小麦は石への執着心が強く、デスク周りには彼女のコレクションが並んでいた。波多見は、彼女がその石を本部の高価なEDSにかける可能性を懸念し、許可なしでの使用を禁じるように念を押した。小麦はその石の神秘性を感じつつも、詳細な分析には気乗りしていない様子を見せていた。
石の詳細な特徴と波多見の疑問
小麦が見ていた石は、加工されずに自然な球体として産出されており、その精密さに波多見は驚嘆した。ダンジョンで産出された宝石には、天然にはない特徴がある可能性を彼は考えつつも、その正体については理解を超えていた。
終業後の小麦と石の保管
波多見が退室を促すと、小麦は名残惜しそうに石を引き出しにしまい、鍵をかけた。その石は何かに渇望しているようで、微かに漂う力を集めようとしている様子であった。
序
石の紛失と小麦の疑念
小麦は、自分のデスク周りに置いてあったダンジョン産の石が減っていることに気付き、誰かが研究用に持ち出したのかと軽く考えた。しかし翌朝も石がごっそりと減っているのを確認し、同僚の波多見に相談。波多見も同様の異変に気づいており、支所長に報告することを助言した。
支所長との相談と内部犯の可能性
小麦は支所長に状況を説明したが、支所長はセキュリティが整っているため外部からの侵入はないと指摘した。そして内部犯の可能性を考えつつも、入退室記録を確認するように提案。支所長との会話で小麦は自分が疑われる可能性についても考え、独自に犯人を突き止める決意を固めた。
入退室記録の確認と自分への疑惑
小麦が入退室記録を調べたところ、石が減った時間帯に第二鑑定室に一人でいたのは自分だけであった。これにより彼女は疑われる立場に立たされるも、支所長に頼み込み、独自に解決を図ることを決意した。
夜間の隠れ待機と奇妙な音の発生
小麦は自分で犯人を突き止めるために夜間の隠れ待機を決行。しかしビルが節電モードに切り替わり、室内が薄暗くなり恐怖を感じ始めた。その中で不気味な音が机から聞こえ、机の引き出しから液体が滴っているのを発見した。恐怖心から逃げ場を求め、部屋の隅に設けた毛布の中に飛び込んだ。
破
深夜の緊急連絡と小麦のSOS
深夜、芳村は小麦から突然の電話を受け、助けを求める声に驚いた。小麦はGIJオフィスで謎の現象に直面しており、机から血が滴っていると話す。芳村が警備に連絡を指示するも、電話は悲鳴と共に途切れ、リダイアルも繫がらなかった。
芳村と三好の出動
三好が芳村を説得し、二人はGIJ支所に向かうことを決意。到着後、守衛に怪しまれつつも、WDAライセンスカードを提示して八階に入る許可を得た。エレベーターで八階に着くと、そこは真っ暗で非常灯すら点いていなかった。
暗闇の探索と生命探知
八階フロアで携帯の懐中電灯を頼りに、小麦の所在を探るため〈生命探知〉を試みたが、反応は微弱だった。三好と共に反応がある場所を特定し、二人は慎重に進んだ。
第二鑑定室での発見
二人は〈生命探知〉が示す第二鑑定室に到達し、カードキーで扉を開けた。中に入ると、毛布の中で気絶している小麦の足を発見し、芳村は小麦の無事を確認した。三好が用意したアンモニアで小麦を蘇生させる準備を整えた。
急
六条の遭遇と血の謎
六条がオフィスで血のような液体を目撃し、恐怖から倒れたが無事であった。三好と芳村は状況を確認し、血痕の場所を調査。しかし、実際の血痕は見当たらず、六条の机の引き出しに複数の穴があることが判明した。
ポーション漏れと床下の謎の痕跡
三好が机を調査すると、芳村のポーションケースが壊れ、液体が漏れた痕跡があった。この赤い液体が血に見えたらしい。漏れたポーションが床下まで浸透し、何かがその液体を追いかけている可能性が浮上する。床下にはケーブルが溶解し、焦げた跡があり、電力の異常がその原因と考えられた。
スライムの存在の発覚
芳村たちは、六条が保管していたスライムのコアが原因と推測。スライムがポーションを求め、机や床を通り抜け、再生・成長していたと考えられる。三好が生命探知でスライムの反応を察知し、部屋中を逃げ回るスライムに再度遭遇する。
スライム駆除作戦
三好と芳村は、スライムをベンゼトスプラッシュで駆除する計画を実行。部屋の中央にポーションを設置してスライムを誘導し、スプラッシュで攻撃する。スライムは次第に小さくなるも、最後にコアが床の穴へ逃れそうになる。芳村がコアを捕らえ、スライムを完全に駆除した。
事件の終焉と警察の到着
六条の涙ながらの別れの儀式を終え、芳村たちは無事スライムを退治。夜が明け、警察が現場に到着する。芳村は事件を説明する必要があると覚悟しつつ、この不安な夜が終わったことに安堵する。
第6章 AB Night
事務所での帰宅と疲労感
芳村と三好が代々木から歩いて事務所に戻り、疲労困憊でソファに倒れ込んだ。冗談を交えながら休息をとり、空腹に気づく。冷蔵庫には、三好が「つい」四ダース購入した駿河湾産のアカザエビがあり、芳村は調理を始めた。
アカザエビの調理と食事の会話
芳村がアカザエビを調理し、二人はカジュアルな食事をしながら雑談に興じた。三好はワインを選び、食事の相性やインディペンデント映画などについて会話が弾んだ。次第に、タイラー博士との一件やダンジョン観測の問題に話題が移った。
観測と消失の仮説についての考察
二人は、ダンジョン内での観測が人工物の消失にどう関与しているかについて議論した。三好は横浜での実験結果を説明し、観測がスライムの行動に影響を与える可能性について言及した。観測行為の具体的な条件を探り、観測と抑制の関係性に関する仮説を立てるも、検証の難しさに直面する。
基地建設の可能性と課題
ダンジョン内での基地建設の可能性について議論。観測の技術を用いることで、安全な拠点を確保する方法や防御のための技術的な課題が浮上。三好が提案するダンジョン内基地「イグルー一号」に期待を寄せつつ、その設置や維持の困難さを改めて認識した。
自衛隊との関係とダンジョン開発の行方
JDA(ダンジョン管理局)や自衛隊との関係性に話が及ぶ。民間と軍の連携により、ダンジョン装備の研究や資金調達が進んでいる現状についても意見を交わした。特に、民間企業との協力の可能性について触れつつ、今後の発展を見据えた。
横浜事件の振り返りとクリーナーの確認
横浜のダンジョンでの出来事を振り返り、クリーナーの管理状況を再確認。鳴瀬に連絡を取り、事件の経緯やダンジョン外への影響を確認した。芳村たちは情報の開示に関する悩みを抱えつつ、次の行動について慎重に考慮する。
日常の終焉と未来への不安
食事を終え、鳴瀬との会話が一段落した後、二人は今後の展開に不安を抱えたまま、それぞれの役割を果たす決意を新たにした。
第7章 Birds of a Feather
エントランスでの出会い
代々木ダンジョンのエントランスで、芳村は小さな女の子、めぐみちゃんと遭遇した。めぐみちゃんは探索者たちに助けを求めていたが、誰も取り合わず困っていた。彼女が握りしめていたのは、母親のために薬を買おうと集めた70円だった。芳村は状況を理解し、彼女を助けることに決め、三好に連絡をとって合流した。
めぐみちゃんの「おかあさん」への道案内
めぐみちゃんに案内され、芳村と三好はダンジョンではなく、古びたアパートの物置へとたどり着いた。そこには、「おかあさん」と呼ばれる黒猫が重傷を負い、子猫とともに横たわっていた。めぐみちゃんは母猫を救うために薬が必要だと芳村に伝え、彼を困惑させた。
母猫への治療の決意
芳村と三好は、母猫に治療を施すことを決意。通常のポーションだけでは限界があるため、〈超回復〉を利用する手段を検討。ダンジョン小麦の効果で動物にもスキルを与えることができる可能性に気づき、これを使って母猫に〈超回復〉のスキルを付与することを計画した。
ダンジョン小麦を用いたDカード取得
芳村たちは、ダンジョン小麦を母猫に与え、無事にDカードを取得させることに成功した。母猫には「おかあさん」という名前が付けられ、芳村は彼女の状態をダンジョン内で確認し、スキル〈超回復〉が適用されて後ろ脚が再生された。この奇跡により、母猫は元気を取り戻した。
第8章 黒猫
おかあさんの自己認識と日常生活
アイちゃんと呼ばれる「おかあさん」は、野良猫から救われて新しい家に住むようになった。めぐみちゃんと大人たちに保護された後、この家で暮らし始め、快適な生活を送るようになった。アイちゃんは、犬たちがいる環境に多少の不満を感じつつも、自らをこの家の守護者と見なしていた。
パトロール中に感じた異変
アイちゃんは、家周辺をパトロールしている際に、不穏な視線を感じ取り、背後に何か悪意ある存在がいるように思えた。警戒しながらも、自身が家を守るため、巡回を続けていた。
イギリスの諜報機関による監視計画
イギリスの諜報機関のチームが、アイちゃんを監視対象に設定し、盗聴器を埋め込む作戦を立てた。彼らは、アイちゃんが家周辺を巡回するタイミングを見計らい、麻酔銃で狙う計画を進めていたが、作戦実行中に異常な恐怖感に襲われた。
作戦の失敗と得体の知れない存在の登場
アイちゃんが塀を歩くと、チームのメンバーが次々と恐怖に取り憑かれ、不気味な光景に巻き込まれていった。デンバーやカーターは、アイちゃんが見せた異様な姿に混乱し、銃を構えたものの、撃った弾丸が虚空に消えてしまった。恐怖の余韻が残る中、作戦は失敗に終わり、メンバーたちは放心状態で立ち尽くした。
アイちゃんと家族の日常の再開
アイちゃんは家に戻り、再びめぐみちゃんや家族と過ごす平穏な日常を送るようになった。家族の一員として認識され、アイちゃんは食事も好みに合わせてもらい、家の平和を守る存在として暮らし続けていた。
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