- 読んだ本のタイトル
- あらすじ・内容
- 感想
- 同著者の作品
- その他フィクション
- 備忘録
- 序章 断罪第
- 1章 やり直し
1- 1 良い子になろう - 1- 2 欲しいもの
- 1- 3 孤児院
- 1- 4 施設
- 1- 5 訓練
- 第 2章 従者候補たちの日常
2- 1 犬 - 2- 2 孤児たち
- 2- 3 院長の来訪
- 2- 4 バトルロイヤル
- 2- 5 実戦
- 2- 6 料理第
- 3章 従者たちと一緒
3- 1 従者 - 3- 2 リチャード
- 3- 3 謁見
- 3- 4 ルイス
- 第 4章 討伐
4- 1 避暑 - 4- 2 イザベル
- 4- 3 サーペント
- 4- 4 エマ
- 4- 5 聖女
- 4- 6 トレキの村
- 4- 7 ドーズ領
- 4- 8 ボドガー伯第
- 5章 学院
5- 1 帰還 - 5- 2 オスカー
- 5- 3 掌握
- 5- 4 死闘
- 5- 5 婚約破棄
- 第 6章 儀式
6- 1 七曜 - 6- 2 マリウス
- 6- 3 代償
- 6- 4 最後の願い
- 終章 1 マリウス
- 終章 2 アリス
- Another Ending
終章 3 もうひとつの結末(前) - 終章 4 もうひとつの結末(現)
- エピローグ
読んだ本のタイトル
悪の令嬢と十二の瞳 ~最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録~
著者:駄犬 氏
イラスト:saino 氏
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あらすじ・内容
公爵令嬢セリーナは王太子から婚約破棄され、服毒刑にて人生を終えた――はずだったが、何故か巻き戻り二度目の人生がスタート。ちなみにあれは冤罪だ、とんだ冤罪である。だって「ちょっと聖女の頭めがけて鉢植えを落としただけ」で「殺してはいない」のだから。
前回の敗因は有能な部下がいなかったこと。であれば今度は拠り所のない孤児を引き取り暗殺者に育て上げ、自分をコケにしたやつら全員をぶちのめすのだ! こうしてセリーナの従者育成計画が始まるが、過酷な訓練を経て仕上がったのはある意味最強の従者たちと番犬で!?
「我々はセリーナ様を愛しているか?」
「生涯忠誠! 命を懸けて! 忠誠! 忠誠! 忠誠!」
「セリーナ……、“あれ”はなんだね?」
「お父様、彼らは従者としての使命を前に、ああやって気を引き締めているのです」(すまし顔)
人生二度目の倫理観ぶっ飛びヒロインが征く、ちょっぴりおかしな逆行転生×悪党×勘違い英雄譚!
悪の令嬢と十二の瞳 ~最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録~
序章:断罪
セリーナ・ローゼンバーグは王太子エドワードから婚約を破棄され、死罪を宣告された。毒による刑に処され、最期に有能な部下が足りなかったと反省した。
1章:やり直し
セリーナは赤ん坊として再生し、新たな人生で復讐を誓い、魔法や剣術を学んだ。孤児院から従者を選び、彼らを訓練して暗殺者として育てる計画を立てた。
1-2:欲しいもの
十歳の誕生日に、孤児院から従者を選びたいと父に願い出た。孤児院を訪れ、問題児を選び出し、暗殺者として育てる計画を始めた。
1-3:孤児院
セリーナは孤児院で六人の問題児を選び出し、彼らを従者候補として屋敷に連れて帰った。孤児院の院長は問題児たちがいなくなることに安堵していた。
1-4:施設
屋敷に戻ったセリーナは孤児たちを訓練し、庭に危険な障害物を設置した。孤児たちは基礎訓練から始め、次第に体力をつけていった。
1-5:訓練
孤児たちは厳しい訓練を受け、互いに助け合いながら成長していった。セリーナの訓練は陰湿な暗殺者ではなく、真っ当な人材を育てる結果となった。
2章:従者候補たちの日常
セリーナは孤児たちに犬の飼育を課し、心の教育を行った。彼女自身は犬が苦手であったが、計画を進めた。
2-2:孤児たち
孤児たちは厳しい訓練と犬の飼育を通じて成長し、セリーナの教育に感謝していたが、彼女の本当の意図に対する疑念は消えなかった。
2-3:院長の来訪
院長が訪れ、孤児たちの成長ぶりに感激し、今後も孤児院の子供たちを教育してほしいと頼んだが、セリーナは暗殺者がこれ以上必要ないと考えていた。
2-4:バトルロイヤル
セリーナは孤児たちにお互いに戦わせ、誰が一番強いかを見極めた。戦いの結果、全員が火傷を負い、治療を受けることとなった。
2-5:実戦
セリーナは孤児たちにブラックドッグの討伐を命じ、実戦経験を積ませた。最終的に全てのブラックドッグをセリーナが倒し、孤児たちは特別訓練を受けることとなった。
2-6:料理第
セリーナは孤児たちに料理の訓練を命じたが、彼らの集めた高級食材を調理し失敗した。孤児たちは苦しみながらも料理を食べ、体力と魔力が向上した。
3章:従者たちと一緒
孤児たちは三年間犬を飼い、家族のように思うようになった。セリーナは犬を殺す計画を諦め、彼らを正式な従者として迎えた。
3-2:リチャード
リチャードは孤児院で育ち、セリーナに選ばれて公爵家で訓練を受けた。彼はセリーナに従者として誓い、国王に拝謁する準備を進めた。
3-3:謁見
セリーナと六人の従者は国王に拝謁し、彼女の従者育成に感心された。セリーナはエドワードとの婚約を提案され、それを受け入れた。
3-4:ルイス
ルイスは孤児院で育ち、セリーナに必要とされて救われた。彼は犬を拾い、育てながら成長し、セリーナの提案で犬と遊ぶ時間を設けた。
4章:討伐
セリーナとエドワードの婚約は成立し、彼女はエルフェン湖の蛇の魔物を討伐する計画を立てた。彼女は従者たちと共にサーペントを倒した。
4-2:イザベル
イザベルは娼館で育ち、孤児院を経てセリーナに選ばれた。彼女はセリーナに忠誠を誓い、サーペント討伐に参加した。
4-3:サーペント
エルフェン湖でサーペントを討伐し、セリーナはその功績で聖女としての立場を強化した。討伐の様子は貴族たちに目撃され、評判が高まった。
4-4:エマ
エマは孤児院で育ち、セリーナに選ばれた。彼女はサーペント討伐で活躍し、セリーナに仕えることを誇りに思った。
4-5:聖女
サーペント討伐の成功でセリーナの評判は高まり、聖女としての立場を強化した。彼女は各地の魔物退治を引き受け、名声を得た。
4-6:トレキの村
セリーナはトレキの村でレッサーデーモンを倒し、村を救った。彼女の行動は村人たちに称賛された。
4-7:ドーズ領
セリーナはドラゴンを討伐し、住民たちに感謝された。彼女の勇気と団結力は称賛された。
4-8:ボドガー伯第
セリーナはオーク討伐に成功し、ボドガー伯の不正を暴いた。彼女は魔物討伐を続け、英雄として名声を高めた。
5章:学院
セリーナはローズウッド学院に入学し、生徒や教師から恐れられた。従者たちは学院の生徒をセリーナの傘下に収めた。
5-2:オスカー
オスカーは貴族の父親を誇りに思っていたが、セリーナに選ばれたことでその意識は打ち砕かれた。彼は学院でセリーナの影響力を広めた。
5-3:掌握
セリーナの従者たちは学院で勢力を拡大し、反対勢力を排除した。彼女の支配は強固なものとなった。
5-4:死闘
セリーナは犬との戦いを続けた。学院では彼女の影響力が増し、エドワードは次第に目立たなくなった。
5-5:婚約破棄
セリーナはエドワードとの婚約を破棄し、代わりに領地を要求した。彼女はエレノアに聖女の役割を譲る意向を示した。
6章:儀式
セリーナは七曜に推薦されたアリスからレコードの存在を知り、レイヴンウッド子爵家でその本を手に入れた。
6-2:マリウス
マリウスは世界を改変し、セリーナが再び人生をやり直せるようにした。彼の存在はセリーナにとって重要であった。
6-3:代償
セリーナはマリウスを取り戻すための儀式を行い、従者たちが彼女を止めようとしたが、犬たちが代わりに犠牲となった。
6-4:最後の願い
儀式によりマリウスが戻り、セリーナは彼との再会に涙を流した。従者たちは奇跡を喜び、彼女も感謝した。
終章1:マリウス
マリウスが戻り、セリーナの世界は再構築された。彼は七曜の座についており、セリーナとの関係を深めた。
終章2:アリス
アリスはセリーナのために身代わりの儀式を準備し、犬たちが犠牲となった。彼女はセリーナとの絆を深く感じた。
終章3:もうひとつの結末(前)
彼女は従兄弟との婚約を破棄し、公爵家へ嫁いだ。夫は彼女に冷たく接し、最終的に彼女の娘を死罪にした。
終章4:もうひとつの結末(現)
セリーナは幼少期から優秀であり、従者や犬たちを育てた。最終的に夫の血を絶やす計画を進め、復讐を果たした。
エピローグ
彼女は日課として外を眺め、訓練施設で曽孫たちが挑戦する姿を見守った。彼女は過去を振り返り、長い人生を感謝した。
感想
十二の瞳。
犬達も合わせたら二十四の瞳。
瀬戸内海のアレの話と比べると、、
孤児達を地獄のような特訓を科す酷い話だった(誉め言葉)。
だが、最後まで飽きさせない、面白い話ではあった。
本書は、婚約破棄されて冤罪で命を落としたセリーナが、二度目の人生をやり直す物語である。
ただ、他の物語と違い一度死んだセリーナの本質は悪役令嬢のままだった。
彼女は自身は変わらずに、自身を裏切らない従者を求めた。
そうして、セリーナは孤児院で問題の多い孤児たちを引き取り、厳しい訓練を通じて最強の従者を育て上げた。
この過程で描かれるセリーナの行動は過激でありながらも、従者たちとの絆や成長が見どころであった。
従者達を立派な暗殺者にするために用意した犬達もこの時に登場した。
彼女の復讐心と従者たちへの愛情が交錯する中、最終的に彼女が何故に人生をやり直せたのか判明し、彼女が選ぶ道が物語のクライマックスとなった。
その物語は感動的でありながらも、皮肉な結末が深い余韻を残す一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同著者の作品
誰が勇者を殺したか
モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件
死霊魔術の容疑者
悪の令嬢と十二の瞳
その他フィクション
備忘録
序章 断罪第
セリーナ・ローゼンバーグは、ローズウッド学院の卒業パーティーで王太子エドワードから婚約破棄を宣告された。エドワードは彼女がエレノアに対して非道な行為を行っていたことを非難し、証拠も十分に揃っていると告げた。セリーナは自分が正当な行為をしたと思い、周囲の支持を求めたが、誰も彼女を支持しなかった。エドワードは衛兵に指示し、セリーナは会場から連れ出された。
その後、セリーナは王の裁きで死罪を宣告された。彼女の行為は過度に誇張され、エレノアに対する数々の未遂事件が取り上げられた。毒による死刑を宣告され、抵抗するも無理矢理毒を飲まされ、意識が遠のいていった。彼女は最期に、有能な部下が足りなかったと反省した。
1章 やり直し
1- 1 良い子になろう
セリーナ・ローゼンバーグは目覚めた時、牢獄塔ではなく柔らかいベッドの上にいた。彼女は赤ん坊として再び生まれ変わり、同じ屋敷に住んでいることに気づいた。彼女の母親も同じ人物であった。セリーナは新たな人生で、自身が有能な部下を持たなかったことが前世の失敗の原因だと悟った。
彼女は慈悲深い子供を装いながら、赤ん坊の間に計画を練り、成長した後もその計画を実行に移した。礼儀作法、馬術、剣術、護身術、そして魔法の訓練に励んだ。特に魔法の訓練には幼少期から熱心に取り組み、八歳で中級魔法を習得した。
彼女の目的は、自身を裏切った者たちに復讐することであり、そのために魔力を向上させ続けた。セリーナは新しい人生で、自分の力で成功を収める決意を固めていた。
1- 2 欲しいもの
セリーナ・ローゼンバーグは十歳の誕生日を迎え、盛大な誕生日会が開かれたが、母親は依然として冷淡であった。セリーナは母親に期待せず、父親に「自分と同じ年頃の従者が欲しい」とお願いした。父親は困惑したが、セリーナは孤児院の子供たちから選びたいと説得した。父親は最終的に了承し、孤児院に連れて行くことを約束した。セリーナは将来の戦力として孤児たちを育て、暗殺者やスパイとして使う計画を立てた。召使いたちはセリーナの言葉に感動し、慈悲深いと称賛した。
1- 3 孤児院
数日後、セリーナは父親と共に孤児院を訪れた。孤児院は予想外に立派な施設で、子供たちは楽しそうに過ごしていた。
セリーナは従者を選ぶため、院長が紹介した子供たちを見たが、彼女が求めていたのはもっと暗い過去を持つ問題児であった。彼女はリチャード、オスカー、ルイス、イザベル、エマ、アリスの六人を従者候補に選び、彼らを屋敷に連れ帰った。院長は問題児たちがいなくなることに安堵していた。
1- 4 施設
屋敷に戻ったセリーナは孤児たちを庭に整列させ、自分が彼らの主であり厳しい教育をすることを宣言した。孤児たちは驚き、声を上げて返事をしたが、セリーナはさらに厳しい態度を取り続けた。
セリーナは従者たちを暗殺者として訓練する計画を立て、厳しい訓練施設を庭に設置した。父親に了承を得た後、職人たちに危険な障害物を作らせた。施設には高いハシゴ、泥沼、岩山などがあり、どれも危険なものであった。
孤児たちはセリーナの指示でこの訓練施設に挑戦させられたが、多くが途中で脱落し、怪我をした。セリーナは彼らの基礎体力が不足していると考え、走る訓練から始めることにした。従者候補たちは心から安堵したが、セリーナの厳しさをまだ理解していなかった。
一方、公爵家の使用人たちはこの訓練施設に興味を持ち、挑戦してみたが、洒落にならない怪我を負い、孤児たちに同情することとなった。
1- 5 訓練
セリーナは連れて帰った孤児たちを庭に整列させ、自分が彼らの主であり、厳しく教育することを宣言した。孤児たちは驚きつつも、返事をし、基礎訓練として広大な庭を走らされた。
リチャードは倒れたルイスに声をかけ、励ました。リチャードはルイスを背負って走る提案をし、セリーナはそれを承諾した。仲間たちも助け合い、リチャードとルイスを支えながら走った。
召使いたちは孤児たちの行動に感動し、セリーナの訓練に意味を見出していたが、セリーナ自身はやり過ぎていることに気づいていなかった。孤児たちは理不尽な訓練を一致団結して乗り越え、精神的にも肉体的にも成長していった。
結果として、セリーナの厳しい訓練は陰湿な暗殺者を育てるのではなく、努力・友情・根性が備わった真っ当な人材を育てることになった。
第 2章 従者候補たちの日常
2- 1 犬
セリーナは孤児たちに犬の飼育を課し、心の教育を行うことにした。ルイスが街から集めた六匹の子犬をそれぞれに任せ、寝食を共にさせる計画であった。最終的には愛着を持った犬を自らの手で殺すことで、心理的な障壁を取り除き、冷酷な暗殺者を育成するというものである。
しかし、子犬たちはセリーナに懐き、彼女の元へと集まった。セリーナは犬が苦手であったため、内心では恐怖に震えながらも孤児たちに強がりを見せた。孤児たちは犬の飼育を通じて心の成長を期待されたが、セリーナは犬との関わりに苦労しながらも計画を進めた。
2- 2 孤児たち
孤児たちが公爵家に来てから一年が経過し、彼らは厳しい訓練と共に犬の飼育を課せられた。オスカーはこの新しい課題に不満を持ち、リチャードやイザベルもセリーナの意図に疑念を抱いていた。一方、ルイスはセリーナが本当に善意で教育していると信じていた。
アリスは与えられた大量の本を読むことでセリーナを尊敬しており、エマは活発な生活を楽しんでいた。彼らは厳しい訓練を通じて結束を強め、成長していった。リチャードは戦闘技能に優れ、ルイスは回復魔法の才能を見せた。
孤児たちはセリーナの訓練方法に苦しみながらも、それが彼らの将来に役立つと理解し始めていた。しかし、セリーナの本当の意図に対する疑念は消えなかった。
2- 3 院長の来訪
孤児たちが公爵家に来てから一年が経過し、セリーナはお父様からホーリーヘイヴン孤児院の院長が屋敷を訪れることを聞かされた。院長は孤児たちがどれほど成長したかを確認したいとのことであった。
セリーナは彼らがまだ訓練中であると答えたが、お父様は孤児たちが立派に成長していることを認めた。セリーナは厳しい罰を課すことで孤児たちを鍛え上げていたが、院長が連れ戻すことを防ぐために釘を刺すことを決意した。
その日の朝、セリーナは孤児たちに院長が来ることを告げ、彼らに「はい」と「いいえ」だけで答えるよう命じた。院長が公爵家を訪れた際、孤児たちの成長ぶりに感激し、彼らが礼儀正しく振る舞う姿に驚いた。
院長は特にイザベルとオスカーの変化に驚き、彼らの立派な姿に称賛の言葉を送った。リチャード、ルイス、エマ、アリスも大きく成長しており、院長は彼らがここまで変わったことに感動していた。
院長はセリーナに対して、今後も孤児院の子たちを教育してほしいと頼んだが、セリーナは心の中で暗殺者がこれ以上必要ないと考えていた。
2- 4 バトルロイヤル
院長の来訪から数週間後、セリーナは孤児たちの成長を褒めたが、孤児たちは彼女の言葉を信用しなかった。セリーナが機嫌が良いときは、彼らにとって悪い予感がしたからである。
セリーナは孤児たちにお互いに戦うよう命じ、誰が一番強いかを見極めると言った。孤児たちは一対一ではなく、全員で戦うことになり、セリーナは彼らに手を抜くことを許さなかった。
庭での戦いが始まり、リチャードやエマが有利と見られたが、オスカーがエマに質問を投げかけ、状況を動かそうとした。エマとリチャードが戦い始め、他の孤児たちは様子を見ながら戦いに備えていた。オスカーとイザベルはリチャードを盾にしてエマを攻撃し、リチャードを倒すことを優先した。
セリーナは孤児たちの戦いに飽き、魔法で周囲を炎で囲んだ。炎に追い詰められた孤児たちは戦いを急ぎ、リチャードとエマが倒れ、オスカーとイザベルの一騎打ちとなった。オスカーとイザベルは演技でセリーナを誤魔化し、イザベルが勝利したと見せかけたが、セリーナは炎を消さず、二人に脱出を命じた。
その結果、六人全員が火傷を負い、治癒師による治療を受ける羽目になった。
2- 5 実戦
セリーナは孤児たちを武器庫に連れて行き、実戦経験が足りないと述べ、王都近辺で出現しているブラックドッグの討伐を命じた。彼女は好きな武器を選ばせ、最も少ない討伐数の者には特別な訓練を課すと言い放った。
孤児たちは武器と防具を選び、セリーナに率いられて森に入った。彼らは恐怖心を抱きながらも、ブラックドッグと戦うことを決意した。ブラックドッグが現れたとき、孤児たちはその出現に喜び、積極的に攻撃を仕掛けた。
戦いの中でブラックドッグたちはセリーナを人質に取ろうとしたが、彼女は強力な魔法で瞬時に敵を焼き尽くした。最終的に、全てのブラックドッグをセリーナが倒したことで、孤児たちは特別訓練を受けることとなった。
その訓練は、セリーナが孤児たちにひたすら魔法を放ち続け、彼らがどれだけ耐えられるかを試すものであった。
2- 6 料理第
セリーナは孤児たちに料理の訓練を命じたが、材料集めから始めるよう指示した。孤児たちは各自、アゴナスの肉やバジリスクの尻尾など、危険な魔物の素材を集めるためにそれぞれの場所に向かった。彼らは困難な状況にもかかわらず、全員が指定された材料を無事に持ち帰った。
しかし、セリーナは自ら料理をすると言い出し、彼らの努力の結晶である高級食材を調理し始めた。その結果、料理は見るも無残な「悪魔の臓物」のような姿に変貌した。孤児たちは恐る恐るその料理を食べ始め、リチャードが最初に一口食べた後、倒れた。
セリーナは彼の反応を好意的に解釈し、他の孤児たちにも食べるよう促した。彼らは苦しみながらも食べ続け、その結果、体力と魔力が格段に向上したが、誰もその効果をセリーナに報告しなかった。
3章 従者たちと一緒
3- 1 従者
孤児たちに犬を飼わせて三年が経過し、彼らは犬を家族のように思うようになっていた。セリーナは、孤児たちに飼い犬を殺すよう命じることを楽しみにしていたが、その計画は予想外の展開を迎えることになった。
ある日、セリーナは孤児たちを庭に呼び出し、犬を連れて来るよう命じた。しかし、その場で「犬を殺せ」と命じようとした矢先に、父親から呼ばれたため中断された。父親から、国王がセリーナとの面会を希望していると聞かされた。国王は、孤児たちの教育に興味を持ち、犬も連れて来るようにとの命令を受けた。
セリーナは驚きと困惑を覚えながらも、命令に従うことを決意した。庭に戻ると、孤児たちが犬と共に訓練をしており、その姿に感銘を受けたセリーナは、犬を殺させる計画を諦めた。
そして孤児たちに向かって、「あなたたちはもはやゴミ虫ではなく、わたしの従者であり、兄弟の絆で結ばれている」と宣言した。この言葉に孤児たちは涙を浮かべ、感動していた。
3- 2 リチャード
リチャードは幼い頃、父親が母親を虐待していたため、孤児院に預けられた。孤児院では手が早く、ケンカでは負け知らずであったが、ある日、公爵令嬢セリーナに従者として選ばれた。セリーナの命令で孤児院から他の子供たちと共に連れ出され、公爵家で厳しい訓練を受ける日々が始まった。
セリーナの訓練は過酷であり、リチャードたちは文字や礼儀作法、体力強化などを徹底的に叩き込まれた。さらに、子犬の世話をすることも命じられた。当初は犬の世話に疑問を抱いていたリチャードたちだったが、犬たちとの触れ合いを通じて、彼らの心に愛情が芽生えた。
ある日、セリーナはリチャードたちを犬と共に庭に呼び出し、彼らがもはや孤児ではなく、自分の従者であることを宣言した。リチャードたちはその言葉に感動し、涙を流した。その後、セリーナは彼らを連れて国王に拝謁することを告げ、リチャードはセリーナを一生の主として誓った。
3- 3 謁見
セリーナは国王との謁見を前に、孤児たちを正式に従者に昇格させた。国王に取り上げられることを避けるためである。従者たちはその知らせに感動し涙を流した。セリーナは彼らに国王に会うための作法を教え、彼らはそれを迅速に習得した。
謁見の日、セリーナと六人の従者、六匹の犬が城に向かった。城内で彼らは注目を集めたが、従者たちは堂々と歩いていた。国王、王妃、そして王太子エドワードに会い、彼らは礼儀正しく振る舞った。国王はセリーナの従者育成に感心し、犬たちもよく躾けられていると称賛した。
セリーナは犬を国王に差し出そうとしたが、国王はそれを拒否し、セリーナの忠誠に感謝した。その後、国王はセリーナとエドワードの婚約を提案し、エドワードもこれに同意した。セリーナもこの提案を受け入れたが、彼女は前世ほどのときめきを感じなかった。
王妃とエドワードは犬が好きであり、セリーナが犬を連れてくることを望んだ。セリーナはこれに同意したが、前世での婚約破棄の一因が犬嫌いであった可能性を考えた。
3- 4 ルイス
ルイスは幼少期に両親を亡くし、孤児院に送られた。孤児院では周囲と馴染むことができず、自分の殻に閉じこもっていた。孤児院の他の子供たちは個性豊かで問題児が多かったが、皆愛情に飢えていた。孤児院の環境は厳しかったが、院長は子供たちを平等に扱うことに努めていた。
ある日、公爵家の令嬢セリーナが孤児院に現れ、問題児たちを従者候補として選んだ。ルイスもその中に含まれていた。セリーナはルイスに「必要としている」と言い、その言葉にルイスは救われた。彼らは厳しい訓練を受け、次第に絆を深めていった。
セリーナはルイスに六匹の子犬を拾ってくるよう命じ、彼はそれぞれの仲間に合った子犬を選んだ。犬を飼うことでルイスたちは責任感を持ち、一人前の人間へと成長した。犬は彼らの心を癒し、絆を強めた。
ある日、国王に謁見した際、国王一家が犬好きであることが判明した。ルイスはセリーナに「犬と遊ぶ時間を設けるべき」と進言し、セリーナはその提案を受け入れた。ルイスは初めて自分のやったことに誇りを持つことができた。
第 4章 討伐
4- 1 避暑
セリーナとエドワードの婚約は前世よりも一年早く成立した。しかし、セリーナは思ったほどの喜びを感じなかった。彼女は前世で憧れたエドワードに対して、今は物足りなさを感じていた。セリーナの混乱の中、ルイスが毎日犬と接することを提案し、セリーナは渋々受け入れた。犬嫌いのセリーナにとって、この提案は拷問のようであった。
セリーナは犬たちと一時間遊ぶことを余儀なくされ、その時間はまるで処刑を待つようなものであった。犬たちは元気いっぱいで、セリーナを襲いかかり、彼女は悲鳴を上げたが、従者たちは彼女を助けずに笑って見ていた。セリーナはこの試練を耐え抜く決意をし、公爵家の令嬢としてのプライドを見せた。
一方、セリーナはエレノアによって婚約が壊されるのを防ぐため、エルフェン湖の蛇の魔物を倒す計画を立てた。従者たちに準備を命じ、父には避暑のためにエルフェン湖に行くと説明した。父は娘の説明に納得しなかったが、セリーナは構わず出発した。
4- 2 イザベル
イザベルは娼婦の母親から生まれ、娼館で育った。彼女は母親の死をきっかけに孤児院に逃げ込み、院長に保護された。孤児院では育ちの悪さから浮いていたが、同じ境遇の子供たちを仲間に引き入れ、孤児院の女の子たちを仕切るようになった。
ある日、セリーナ・ローゼンバーグという公爵家の令嬢が孤児院に現れ、従者を選び始めた。イザベルも選ばれ、公爵家での過酷な訓練を受けた。訓練は体力、勉強、戦闘訓練と厳しく、精神をえぐるような罵倒も含まれていた。
一年が経ち、彼女たちは犬を飼うことになった。最初は犬になつかれず苦労したが、次第に心を通わせるようになった。イザベルは犬を通して過去の自分と向き合い、セリーナが自分たちを特別に愛していることに気付いた。
国王陛下との謁見後、ルイスがセリーナに犬と毎日一時間遊ぶことを提案し、セリーナは受け入れた。セリーナが犬と戯れる姿を見て、従者たちは彼女の愛を感じた。夏にはエルフェン湖に向かい、セリーナの指示で蛇の魔物と戦うこととなった。イザベルたちはセリーナのために命を懸けて戦う覚悟を固めた。
4- 3 サーペント
エルフェン湖は美しい避暑地であり、ローゼンバーグ家も別邸を所有していた。セリーナとその従者たちは、ここで蛇の魔物サーペントの出現に備え、大量の武器や防具を持ち込んだ。執事が疑問を抱いたが、リチャードが圧力をかけて納得させた。
アリスの調査により、サーペントは光の魔法が弱点で、ミスリル製の武器が有効であることがわかった。サーペントを陸におびき寄せるため、セリーナとイザベルが囮になる作戦が立てられた。
計画実行の日、サーペントがエルフェン湖に現れ、美女であるセリーナとイザベルに接近した。彼女たちは罠を仕掛け、他の従者たちもそれぞれの役割を果たしながらサーペントを攻撃した。最終的にサーペントは圧倒され、光を失って倒れた。
4- 4 エマ
エマは孤児院に赤ん坊のときから捨てられていた。彼女は身体を動かすのが好きで、建物や木に登ることが好きだったが、孤児院ではよく怒られた。セリーナが現れて公爵家に連れて行かれた後、エマはさまざまな過酷な訓練を楽しんだ。特に、二刀流での剣術をマスターし、騎士に勝利した。
セリーナの従者となったエマは、湖でのサーペント討伐に参加した。彼女はサーペントの頭に登って両眼に剣を突き刺し、他の従者たちと協力して半日かけて討伐した。エマはセリーナを「美しく残酷で強い悪魔」と称え、彼女に仕えることを誇りに思った。
4- 5 聖女
サーペントの討伐に成功した。討伐の様子は多くの貴族たちに目撃され、これでエレノアの聖女としての立場を奪うことができたと考えていた。エレノアが現れ、礼を述べたが、彼女は聖女の役割を望んでいない様子だった。
王都に戻ると、セリーナは犬たちに歓迎され、父親からも褒められた。サーペント討伐の手柄が吟遊詩人によって詩にされ、王国中に広まっていた。セリーナは学院に入学するまでの間、各地の魔物退治を引き受けることになったが、これも王妃になるための名声を得る良い機会だと考えた。
4- 6 トレキの村
馬車での旅が退屈だったセリーナは、従者たちとの会話も楽しめなかった。馬車の隣を走っているエマの姿が唯一の気晴らしであった。彼女たちはトレキの村に到着し、聖女が封印した魔物の復活に困っている村人たちに出迎えられた。セリーナはレッサーデーモンを倒すために魔法を使い、山ごと吹き飛ばした。残りの魔物は従者たちが処理し、村は救われた。村人たちは当初驚いたが、セリーナの行動を称賛し、感謝の言葉を述べた。
4- 7 ドーズ領
トレキの村のレッサーデーモン討伐後、セリーナは新たな討伐命令を受けた。百年ぶりに活動を再開したドラゴンの討伐であり、王国の辺境の領土に出現していた。このドラゴンもかつて聖女によって封印されていたが、セリーナは従者たちと共に挑み、見事に討伐を成功させた。セリーナは戦闘の指揮を取り、見事な戦略でドラゴンを倒した。ドーズ侯や住民たちはセリーナに深く感謝し、彼女の勇気と団結を称賛した。
4- 8 ボドガー伯第
オーク討伐の命令を受けたセリーナは、従者たちと共にボドガー伯の領地へ向かった。オークは豚のような頭を持つ魔物で、繁殖力が高く、放置すれば増殖する。ボドガー伯はオークを追い払うだけで追撃せず、和平を結び食料を渡すことで増殖を助けてしまっていた。セリーナは大量のオークを一気に燃やし、従者たちが残党を討伐した。ボドガー伯を王都に連行し、彼の不正を暴いて処罰した。セリーナはその後も魔物討伐を続け、英雄として名声を高めた。
5章 学院
5- 1 帰還
セリーナは魔物討伐の任務を終えて、ようやくローズウッド学院に入学した。学院に入ると、生徒や教師が彼女を恐れて近寄らなかった。従者のオスカーが女子生徒を助ける場面もあったが、彼女の評判は悪く、ゴブリン退治の際の過激な言動が広まっていたことが原因であった。
セリーナは復讐の機会をうかがっていたが、年齢と経験を重ねたことで、その熱意も冷めつつあった。学院内の権力闘争を俯瞰し、虚しい過去を反省するようになった。従者たちには自由に行動するよう伝えたが、翌日から彼らは学院の生徒をセリーナの傘下に収める動きを見せた。セリーナは従者たちが権力闘争に夢中になることを忘れていたことに気付いた。
5- 2 オスカー
彼の最初の記憶は、母親に孤児院に連れて行かれた時のものであった。母親は彼に貴族の父親がいることを誇りに思うよう伝えたが、彼はその言葉を本気にし、貴族としての自尊心を抱いていた。しかし、公爵令嬢セリーナに選ばれた際、その選民意識は打ち砕かれた。セリーナの厳しい訓練と精神的な試練によって、彼は身分の無意味さを悟った。
セリーナは従者たちと共に名声を高め、ローズウッド学院に入学した。彼は学院でセリーナの影響力を広めるために行動を開始した。従者たちはそれぞれのクラスで力を示し、セリーナの名を高めた。特にリチャードとエマは騎士クラスで圧倒的な力を見せつけ、アリスとルイスは魔術クラスと神官クラスでトップの成績を維持し続けた。
セリーナが学院に到着すると、従者たちが集めた生徒たちが彼女を出迎えた。セリーナは驚きと失望を感じたが、従者たちは彼女のためにさらに努力を誓った。
5- 3 掌握
前世では、公爵家の名に惹かれた者たちが集まり、セリーナの派閥が形成されたが、最後は役立たなかった。現世でも同様に、有力貴族の子弟たちの派閥が存在していたが、セリーナの従者たちの強引なやり方により、セリーナの評判は悪かった。特に、リチャードとエマの暴力的な勢力拡大、イザベルとオスカーの調略、アリスとルイスの信者増加による影響が大きかった。
ある日、セリーナはシルバーレイン伯爵家の令嬢カレンのもとを訪れ、彼女がセリーナを侮辱したとされる件について直接問いただした。カレンの取り巻きたちが証言し、カレンは孤立して恐怖に震えた。その後、カレンもセリーナの信奉者となり、翌朝には校門でセリーナを出迎える姿が見られた。
ローズウッド学院では、セリーナと従者たちは優秀な成績を収め、騎士クラスのリチャードとエマは実技で高評価を得ていた。やがて、「打倒セリーナ!」を掲げる連合が結成されたが、オスカーとイザベルが情報を駆使して連合を内部から切り崩し、リチャードは倉庫で十人の生徒を圧倒した。こうして、セリーナに逆らう勢力は徹底的に排除され、彼女の支配は強固なものとなった。
5- 4 死闘
セリーナは学院に入学しても犬との戦いを続けていた。王太子と会う際には犬も連れて行く必要があったため、犬に慣れる必要があった。セリーナはルイスに犬の扱い方を尋ね、優しく話しかけることや餌を使って教育する方法を試みたが、結果は思わしくなかった。それでもセリーナは諦めず、犬との関わりを続け、徐々に犬たちの元気がなくなり、扱いやすくなっていったことに寂しさを感じていた。
学院では、セリーナを出迎える生徒の数が増え、教師たちは彼女を避けるようになった。婚約者であるエドワードは以前ほど目立たなくなり、取り巻きも少なくなった。エドワードはセリーナの実績に圧倒され、自分は何も成し遂げていないことに気が引けていた。セリーナはエドワードに対する興味が薄れていき、彼の立場に憧れていただけだと気づいた。
5- 5 婚約破棄
セリーナの従者たちは学院で勢力を拡大し続け、学院の雰囲気は次第に軍隊のようになっていった。生徒たちはセリーナに対して敬礼をするようになり、彼女は学院をほぼ掌握したことを実感していた。その後、エレノアの状況を気にしたセリーナは、イザベルにエレノアにちょっかいをかける者たちを排除するよう命じた。エレノアはセリーナに感謝の意を示し、セリーナはエレノアに聖女の役割を負わせる意向を示した。
セリーナはエレノアに学院生活を楽しむよう伝え、自身が聖女をやりたくて人生をやり直したわけではないことを再認識した。エレノアとエドワードの関係が進展していることを知ったが、セリーナはそのことに対しても冷静であり、特に干渉しなかった。
数ヶ月後、セリーナは父親からエドワードが婚約破棄を望んでいることを聞かされた。エドワードは王太子の座も辞退し、代わりにフェリックスが王太子となることが提案された。セリーナはフェリックスとの婚約を拒否し、公爵家として王家に貸しを作る形で婚約破棄を受け入れた。
セリーナは自分が王妃の座に固執する必要がないと判断し、エレノアに聖女の役割を譲る意向を固めた。卒業後の公爵家の権勢が弱まることはないと確信し、エレノアとエドワードに対する関心も薄れていった。
第 6章 儀式
6- 1 七曜
セリーナは王太子との婚約破棄が決定した後、アリスが「七曜」に推薦される可能性があるという報告を受けた。七曜とはこの国の魔法使いのトップ七人に贈られる称号である。アリスの年齢で推薦されるのは珍しいことであったが、彼女の実績から見れば納得のいくことであった。
しかし、セリーナは七曜の席が空いていたかどうか疑問を抱いた。アリスから他の候補者の名前を聞いたが、どれも心当たりがなかった。セリーナは前世で誰かが七曜になった記憶があり、その人物が自分の人生をやり直させたのではないかと考えた。彼女は「レコード」と呼ばれる不滅の本を思い出し、その本が魔法によって世界が変えられても存在し続けるものであることに気づいた。
セリーナはレイヴンウッド子爵家を訪れ、記憶の中の本を探し出した。彼女は屋敷内の秘密の部屋で「レコード」を見つけ、その本が過去に存在したことを確認した。本の表紙には「マリウス・レイヴンウッドの書」と記されていた。
セリーナは「レコード」を手に入れ、世界の因果関係まで改変して存在し続けるこの本の力を理解した。彼女は馬車の中で本を開き、そこには「親愛なるセリーナへ」というメッセージが書かれていた。
6- 2 マリウス
セリーナがこの手紙を読んでいるということは、彼女が再び人生をやり直せたことを意味していた。マリウス・レイヴンウッドは、世界を改変することに成功し、七曜にふさわしい魔法使いであると感じた。彼は自分の存在を対価として捧げ、世界から消え去ったため、セリーナは彼を覚えていないはずである。
マリウスは彼らの出会いから始まり、セリーナがわがままな子供であったことを述べた。彼は知識欲からセリーナと会うのを続け、彼女の成長に少しずつ影響を与えた。セリーナは魔法の勉強を始め、徐々にマリウスと本を読むようになったが、感謝の言葉を述べることはなかった。
マリウスはローズウッド学院に飛び級で入学し、セリーナのために努力を続け、首席を維持した。彼は魔法研究者として成功し、セリーナの評判が悪化する中で彼女を守るために奔走した。彼は「リセット」という魔法を完成させ、セリーナが再び人生をやり直すことを可能にした。
マリウスは、自分の存在を犠牲にしてセリーナの人生をリセットし、彼女が過去の過ちを繰り返さないように願った。彼はセリーナに対して、もう一度人生をやり直す中で少しでもマシな人間になって欲しいと願っていた。
最後に、マリウスは自分の思いをセリーナに伝え、彼女の幸せを祈りながら手紙を締めくくった。
6- 3 代償
セリーナは自室で『レコード』を読み終え、そこにはマリウスからのメッセージが書かれていた。セリーナは彼の存在を完全には思い出せなかったが、心の穴を埋める存在として感じた。彼の存在がセリーナにとって重要であり、彼を取り戻すために魔法の儀式を行う決意をした。
アリスに相談したところ、魔法の対価として世界に存在を捧げた人間を取り戻すには、相応の触媒と身代わりとなる人間が必要であると説明された。アリスは即座に理解し、必要な準備を進めることを約束した。セリーナは従者たちにこのことを伝え、誰を代償とするかを考えさせられた。
従者たちは平然と受け入れ、誰が代償になるかについて立候補し始めた。セリーナは最終的に、自分が決めると宣言し、不毛な議論を終わらせた。
6- 4 最後の願い
公爵家の地下にある魔術の修練場で、セリーナと従者たちは儀式を行っていた。アリスが描いた巨大な魔法陣の中心に、マリウスを取り戻すための触媒『レコード』が置かれていた。儀式は順調に進み、代償として白い光の中に入る者が必要であった。セリーナは自ら代償になることを決意し、光の中へ向かったが、従者たちが悲痛な声で止めようとした。彼らはセリーナに対する忠誠心から倒れ込み、動けなくなった。
しかし、その瞬間、屋敷の犬たちが修練場に入ってきた。老犬たちは光の柱に飛び込み、セリーナを代わりに守ろうとした。犬たちは光の中で穏やかに尻尾を振り、セリーナの願いを無視して消えていった。
白い光が収束すると、魔法陣の中心にはマリウスが倒れていた。従者たちは奇跡だと喜び、セリーナは呆然とマリウスを見つめていた。彼女の涙が止まらず、マリウスの帰還に対する喜びと悲しみが交錯していた。
終章 1 マリウス
マリウスが戻ったことにより、世界は前世と現世が交じり合った状態となった。彼は元々存在していた人間として扱われ、従者たちも彼を知っているかのように記憶されていた。セリーナは儀式でマリウスを取り戻すために身を捧げようとしたが、奇跡的に助かり、マリウスは戻ってきた。
マリウスはセリーナに、記憶は曖昧であり、世界は再構築されると話した。彼は以前と同様に七曜の座についており、アリスらと選考会を争って勝ったことになっている。『レコード』の力により、記憶が改変されていた。
マリウスは自分の研究を続け、セリーナにとって良い話し相手となった。彼の言う通り、世界には矯正力が働くため、結果は大きく変わらない。セリーナは婚約を破棄されたが、生き残り、彼との関係を深めていった。
最終的に、セリーナはマリウスに結婚を命じ、彼は前世からセリーナを好きだったことを告白した。
終章 2 アリス
かつて、アリスは孤児院にいた。孤児院には本が少なく、アリスは修道女たちの日記や手紙を読んで気を紛らわせていた。彼女にとって読むことがすべてであり、それ以外には何もなかった。
10歳の時、セリーナが孤児院を訪れ、アリスに魔法の勉強を提案した。アリスは喜んでそれを受け入れ、公爵家に連れて行かれた。公爵家は本が豊富で、アリスは幸せを感じた。従者としての訓練は厳しかったが、彼女は魔法使いとしての才能を認められた。
アリスはセリーナと共に魔物と戦い、学院に通い、卒業後もセリーナに仕えた。彼女の人生は充実しており、セリーナに生きる意味と役割を与えられたことに感謝していた。
しかし、アリスには秘密があった。セリーナがレイヴンウッド子爵家に立ち寄った日のこと、アリスはセリーナが持っていた見知らぬ本に興味を持った。彼女はその本が魔法的な処理を施された特別なものであると感じた。
アリスはその本を読むために、夜中にセリーナの部屋に忍び込んだ。彼女は本の内容を読み、セリーナがマリウスという魔法使いによって二度目の人生を送っていることを知った。アリスはその内容を暗記し、本を元に戻した。
アリスは、セリーナがマリウスを世界に復帰させるために、自ら身代わりとなることを予感し、その代償を置き換える儀式の準備を始めた。彼女は従者たちの犬たちに暗示の魔法をかけ、セリーナの身代わりになるように誘導した。
儀式の日、アリスは犬たちに魔法をかけて身代わりにし、セリーナの代わりに犬たちが犠牲となった。セリーナは無事で、マリウスが戻ってきた。
アリスだけがこの出来事を覚えており、犬たちのことを忘れることはできなかった。セリーナは犬を遠ざけるようになり、アリスはそれに悲しさを感じた。
ある日、セリーナが王城で子犬を抱きかかえ、涙を浮かべる姿を見たアリスは、セリーナが犬を嫌いではないことを知った。その時、アリスも涙を流し、セリーナは驚きながらも笑顔を見せた。
アリスは、その瞬間に奇跡を感じ、セリーナとの絆を深く感じた。
Another Ending
終章 3 もうひとつの結末(前)
彼女には幼少時から仲の良い三歳年上の従兄弟が婚約者としていた。彼は黒い髪と瞳を持ち、穏やかで心地よい存在であった。14歳のときに婚約が決まり、彼女は夢が実現したと喜んだ。しかし、18歳の年に学院で公爵家の跡継ぎから求婚された。
彼女は身分の差と既に婚約していることから断ったが、公爵家の跡継ぎは執拗に求婚を続けた。彼はいつも笑顔で人当たりが良かったが、彼女は次第にその笑顔の裏に不気味さを感じ始めた。
公爵家からの圧力は次第に増し、彼女の一族の生活も困難になった。親族会議では公爵家との縁を持つことが話し合われ、彼女は涙ながらに従兄弟との婚約を破棄し、公爵家へ嫁ぐことが決まった。
結婚式の日、夫は満面の笑みを浮かべて彼女を迎えた。彼は彼女の一族に圧力をかけたことを全く悪びれず、彼女はそのことに恐怖を感じた。結婚後、彼女はすぐに子供を身ごもったが、夫はその子が自分の子であるかを疑い、彼女に対して冷たい態度を取った。
彼女の従兄弟は何者かに殺され、彼女は夫がその犯人であると確信した。夫はそれを認め、「君を想うがゆえさ」と言った。彼女は震え上がった。
子供は黒髪黒目で生まれ、夫はその子を自分で育てると宣言し、彼女に子育てを任せなかった。彼は子供の成長を通じて、誰の子であるかを判断すると言った。
夫は彼女に子供と会わせず、彼女は子供の成長を見守ることもできなかった。子供は甘やかされて育ち、悪評が広がった。ついに、子供は聖女を害そうとした罪で捕らえられた。
夫は陛下に娘の死罪を願い出て、それを実現させた。彼は全く罪悪感を感じていないように振る舞い、彼女はそのことに深い絶望を感じた。彼女はこの怪物から逃れることができないと悟った。
終章 4 もうひとつの結末(現)
彼女の夫はいつも笑っているが、六歳の娘セリーナを見て「本当にわたしの子なのか?」と疑問を抱いていた。セリーナは幼少のころから必死に習い事に取り組み、礼儀作法、馬術、剣術、護身術、魔法を優秀に学んでいた。家庭教師たちは彼女を天才と称えた。彼女の母親は、不義を疑われることがなく、安心していた。
十歳の誕生日にセリーナは従者を持ちたいと言い出し、孤児院から自分で選びたいと要望した。夫は困惑したが、セリーナの要望を聞き入れた。孤児院から連れてきた六人の問題児を教育し、彼らの成績が良かったため、セリーナの手腕は高く評価された。
さらにセリーナは野良犬を拾い、孤児たちに育てさせた。犬たちはしっかりと教育され、貴族が飼っている犬と同等かそれ以上の躾が行き届いていた。セリーナは孤児や野良犬を立派に育て上げる優しい令嬢として噂になり、国王陛下からも会いたいと言われるようになった。
セリーナが十四歳のとき、国王陛下は彼女を称賛し、夫も彼女を自分の娘と認めた。セリーナはローズウッド学院に入学し、事実上の学院の女王となった。彼女の従者たちは生徒たちをまとめ、彼女の名声は高まった。
セリーナはエドワード王太子から婚約を破棄されたが、代わりに領地を要求するという豪胆な提案をした。夫は彼女を褒め称え、セリーナに全幅の信頼を置いた。卒業後、セリーナはマリウスと結婚し、夫もそれに反対しなかった。
しかし、彼女の母親は密かに復讐を企んでいた。セリーナは従兄弟との間にできた子であり、公爵家の血を引いていない。彼女の母親は夫の血を絶対に残さないと誓い、ローゼンバーグ公爵家を乗っ取る計画を進めていた。彼女は最愛の従兄弟を殺した夫を一生許さず、神が報いをもたらすと信じていた。
エピローグ
屋敷の中から揺り椅子に座って外を眺めることが、彼女の日課であり楽しみであった。外では曽孫たちが彼女が作った訓練施設に挑んでいた。施設は老朽化していたが、彼女の子供たちが改修し、さらに新たな設備も追加された。この訓練はローゼンバーグ家の伝統とされ、彼女の子供たちも孫たちも通った道であった。
彼女とマリウスが結婚した後、従者たちもそれぞれ結婚した。リチャードはエマと、オスカーはイザベルと、ルイスはアリスと結ばれた。彼らは自分たちの子供も従者にしたいという思いが強かったようだ。
彼女の結婚後、父が殺される事件が起きた。原因は怨恨で、父は表向きは優しいが裏では策略や陰謀を巡らせていた。父の死後、ローゼンバーグ家は貴族たちの反感を買い、窮地に立たされた。しかし、彼女はエレノアや学院時代の縁故、そして従者たちの支援で平和的に乗り切ることができた。
母は父との結婚も強引に進められたもので、彼女との接触を厳しく制限されていた。父の死後、母は明るくなり、彼女やマリウスと親しく接するようになった。母は亡くなる寸前に彼女に「あなたはお父様の本当の子ではない」と告白した。それは彼女も薄々気付いていたことであった。
人生をやり直させてくれたマリウスには感謝していた。彼は「君は君だ」と優しく告げた。彼女は父の墓に毎年白い花を供え、長い人生を振り返っていた。
ある日、彼女は昔のことを思い出した。従者たちが犬の名前を付けてほしいと願ったことを。彼女は犬が嫌いで適当に名前を付けたが、みんなすぐに覚えた。その犬たちのことを今まで忘れていたことを思い出し、遠くで聞こえる懐かしい犬の吠える声に包まれながら眠りに落ちた。
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