- どんな本?
- 読んだ本のタイトル
- あらすじ・内容
- 感想
- 同シリーズ
- 同著者の作品
- その他フィクション
- 備忘録
- PROLOGUE
- Chapter.1
No pain No Gain - 1.師との出会い
- 2.毒耐性の指輪と身体強化の腕輪
- 3.とある侍女の独り言
- 4.訓練仲間
- 5.オグマ
- 7.反乱計画
- 8.フラウ
- 9.王都攻略戦
- 10.ガマラスという男
- 11.王位継承
- Chapter.2
Fight Club - 12.闘技場
- 13.僧侶ルイーダ
- 14.王様の仕事
- 15.カドニア国の要求
- 16.スタンピード
- 17.鎮圧
- 18.カドニアの王女
- 19.ニコルの結婚
- Chapter.3
VERY VELL.THEN LET IT BE KRIEG - 20.ドルセン国
- 21.モンスター軍団
- 22.ブリックスの戦い
- 23.五天位
- 24.決着
- 25.戦後
- EPILOGUE
- 外伝.1 とある国の王様
- 外伝.2 雷帝
どんな本?
『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』は、異世界ファンタジーの物語である。
物語の主人公は、ファルーン国の王子であるマルスである。
彼は城の食事に毒が盛られていることを恐れ、城を出て森でモンスターを狩り、その肉を食べる生活を送っていた。
ある日、彼は赤髪の美女カサンドラと出会い、彼女の弟子となる。
物語は、マルスがカサンドラの指導の下、剣術や魔法を学びながら、モンスターの肉を食べることで成長し、毒への耐性を身につけていく様子を描いている。
彼は徐々に力をつけ、王位を巡る陰謀に巻き込まれながらも、持ち前の勇気と知恵で困難を乗り越えていく。
物語の魅力は、ユニークな設定と多様なキャラクターである。主人公マルスの成長物語や、彼を取り巻く仲間たちとの絆、そして権力を巡る策略や陰謀が、読者を惹きつける。
剣と魔法の世界での冒険と、モンスターとの戦いが繰り広げられ、緊迫感と興奮に満ちた展開が楽しめる作品である。興味を惹かれる方には、一読の価値があると思える。
読んだ本のタイトル
モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件
著者:駄犬 氏
イラスト:芝 氏
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
あらすじ・内容
ファルーン王国の第一王子であるマルスは、12歳ながら暗殺に怯える日々を過ごしていた。
食事には高確率で毒が仕込まれているため、城外の森でモンスターを狩り、その肉を食べて飢えをしのぐ日々。
そんなマルスの前にある夜、大剣を担いだ赤髪の美女が現れ告げる。
「おまえ、見込みがあるな。私の弟子になれ」。
たった一つの勘違いから、少年は(全く望んでないのに)最強の王へと成り上がる――。
投稿小説全ての書籍化が瞬く間に決まった驚異の新人、衝撃の2作同時デビュー!
感想
駄犬先生の処女作であるこの作品は、これまでの作品とは異なる新たな作風であった。
ド直球のなろう系とも言えるが、駄犬先生のギャグセンスが光り、笑いを誘う場面が多かった。
外伝で語られる「肉を喰え」という口伝には思わず笑ってしまい、先祖の勇者までもがモンスターの肉を食べていたのかと驚いた。
いや「勇者、お前もか!」かな?
本書では、主人公が毒殺や暗殺を企てられる中で、自らの力を増していく過程が描かれていた。
王子であるマルスが、モンスターの肉を食べ続けることで得た力で周囲の人間たちを巻き込みながら王位を手に入れるというストーリーは、笑いを誘った。
マルスとヒロインがほとんど会話をせずに物語が進行することも、独特の魅力であった。
また、運命に身を任せて国家経営を行うドタバタ劇は、考えずに楽しむことができ、リラックスして読むことが出来た。
ただ、これは電車などの公共の場で読むのは危険な作品だと感じた。
この駄犬先生の作品は、そのユーモアと意外性から、期待を裏切らない一冊となっていた。
ストーリーの展開やキャラクターの個性は、他の作品を読んでる読者にとって新鮮であった。
本書は、駄犬先生の作品を信頼できるブランドとして確立しつつあると感じさせる一冊でもあり、彼のギャグの切れ味とコメディとしての面白さを実感させられる作品であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
(PR)よろしければ上のサイトから購入して頂けると幸いです。
同シリーズ
モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件
同著者の作品
誰が勇者を殺したか
死霊魔術の容疑者
悪の令嬢と十二の瞳
その他フィクション
備忘録
PROLOGUE
あるとき、角の生えたウサギが赤い目を輝かせながら少年に向かって飛びかかった。このウサギはキラーラビットと呼ばれ、比較的弱いモンスターであったが、その跳躍からの角による攻撃は大人でも致命傷を負う危険があった。少年はサイドステップでかわし、側面から長剣で斬りつけたが致命傷には至らなかった。キラーラビットは再び跳び、少年に突進したが、彼はギリギリでかわしてから首筋に剣を振るい、血が噴き出た。キラーラビットの動きが鈍くなった隙をついて、少年は止めを刺した。その後、彼は皮を剥ぎ、血抜きをして、魔法で火を起こして肉を焼いた。
少年はモンスターの肉が不味いと感じていたが、食べないと生きていけなかった。実は彼はこの国の王子であった。彼は城を抜け出して森でモンスターを狩っていた。彼がこの生活を送るのは、国が貧乏だからではなく、城の食事に毒が盛られていることがあったからである。少年の母は病死しており、彼は母の死も本当に病死だったのか疑問を抱いていた。彼の父である王は、宰相に圧力をかけられた。少年は城の人間を信用できず、1年ほど前から森で食料を調達していた。
少年は12歳であったが、幼少時から剣術や魔法を学んでいたため、弱いモンスターなら狩ることができた。彼は毎日が生きることに必死であり、いつまでこの生活が続くのか不安を抱いていた。ある日、背後に気配を感じた少年は、突然声をかけられた。「おまえ、私の弟子になれ」と。その声の主は、長身で赤髪の女性であり、彼女は大剣を肩に担い、軽装の鎧を身にまとっていた。彼女は少年に対し、弟子になるように勧めた。少年は困惑しつつも、その女性が暗殺者ではないことに安堵した。
女性は、少年がモンスターの肉を食べていたことに見込みを感じ、弟子にしたいと考えていた。彼女の目的は少年に剣を継がせることであり、彼を弟子に迎えることがその第一歩であると感じていたのである。
Chapter.1
No pain No Gain
1.師との出会い
ファルーン国の王子マルスは、魔獣の森で赤髪の美女カサンドラと出会った。彼女は「モンスターの肉を食べていたから弟子になれ」とマルスに提案した。カサンドラは、モンスターの肉を食べることで人は少しずつその強さを取り込むことができると信じていた。マルスは城の食事に毒が入っている可能性があるため、モンスターの肉を食べる生活を送っていた。
カサンドラはマルスに指輪を渡し、「これは毒状態になる指輪で、毒と闘うことで毒耐性を得ることができる」と説明した。マルスはこの指輪が呪われたアイテムであると考え、毒で死ぬ危険を感じた。しかし、カサンドラはモンスターの毒に慣れたマルスなら耐えることができると主張した。カサンドラ自身も最初は指輪で体調不良になったが、後に慣れて、さらに強力な指輪を身につけていた。
カサンドラは「7日後にその指輪を克服してみせろ。師として与える第一の試練がそれだ」とマルスに告げて去っていった。マルスはこの試練を前にし、心の中で指輪の重さを感じながら、その提案に困惑していた。
2.毒耐性の指輪と身体強化の腕輪
ファルーン国の王子マルスは、城に戻ってからカサンドラからもらった毒の指輪を見つめ、着けるかどうかを悩んでいた。カサンドラの後ろ盾があれば命を守れると考えた彼は、弟子になろうと決心した。しかし、第一の試練である毒の指輪を着けることにためらいを感じたものの、最終的には装着することにした。
指輪を嵌めた瞬間、マルスは激しい吐き気と高熱に襲われ、意識を失った。彼は三日三晩昏睡状態だったが、目が覚めると身体に毒への耐性がついたことを感じた。マルスは毒見役を廃止し、自身で食事をとることにした。毒が混じった食事も大きな問題なく克服できるようになった。
7日後、カサンドラと再会したマルスは毒の指輪を克服したことを報告した。カサンドラは喜び、今後もモンスターの肉を食べ続けるように指示した。カサンドラはグレートバジリスクという危険なモンスターを捕獲し、その肉をマルスに提供した。生で食べることを要求されたマルスは、拒否することなくその肉を食べた。
続いてカサンドラはマルスに「グラビティ」の効果を持つ腕輪を渡した。これは体重を2倍にするもので、身体を鍛えるための道具であった。しかし、この腕輪は外すことができず、マルスはその重さに苦しみながらも、鍛錬を続けることを決意した。カサンドラは「心配いらない」と言ったが、マルスはその言葉に不安を感じながらも、次の試練に立ち向かう覚悟を決めた。
3.とある侍女の独り言
ファルーン国の王子マルスの侍女である語り手は、毒殺を命じられた経緯とその後の出来事を振り返っていた。ランドルフ伯爵からの命令で、マルスを毒殺するよう指示されたが、実際には精神的に追い詰めることが目的であった。毒を盛り続けた結果、マルスは食事を取らなくなったが、次第に生気を取り戻し、以前よりも逞しくなった。
ある日、マルスが突然食事を取るようになり、驚いた語り手は、毒を仕込まなかったことに気付くも、マルスは倒れた。この出来事で伯爵から褒められたが、実際には何もしていない語り手は、困惑した。さらに、伯爵から強力な毒を渡され、マルスの食事に毒を盛るが、マルスは何の影響もなく食事を楽しんでいた。
語り手は、毒が無害だったと考え、自分で毒を試したところ、重篤な状態に陥った。伯爵に報告すると、伯爵はマルスが毒を無効化する指輪を持っているのではないかと疑い、語り手に指輪をすり替えるよう指示した。偽物の指輪を使ってすり替えた後、伯爵は本物の指輪を試しに嵌めたが、毒で命を落とした。
この事件は城内で大騒ぎとなったが、語り手には疑いがかからず、マルスの指輪は無事に本物とすり替えられた。マルスは何事もなかったかのように指輪を嵌めていた。この一連の出来事を受け、宰相はマルスを恐れるようになり、彼を殺さなければならないと決意した。宰相は、マルスが何者かを味方に付けていることに不安を感じつつも、孫を王位に就けるために、マルスの排除を決意した。
4.訓練仲間
マルスは師であるカサンドラと出会ってから三年ほど経った。彼は週に一度、カサンドラと顔を合わせ、不味いモンスターの肉を共に食べ、手合わせをした。毎日モンスターの肉を食べて鍛錬しなければ、会った時に肉を食わされ、手合わせでボコボコにされることから、毎日欠かさず鍛錬を続けた。
腕輪も、重力魔法の効果で体重が増すものだったが、三ヶ月ほどで慣れ、一年ほどで外せるようになった。しかし、再び新しい腕輪を嵌められ、今度は体重が三倍になるものを経験した。カサンドラの訓練を通じて、マルスは「気を掴む」というスキルを身に付け、襲撃を事前に察知できるようになった。
暗殺未遂は頻繁に起こったが、すべて回避することができた。しかし、暗殺者の質が向上し、数も増えていったため、対多人数の戦闘訓練が必要となった。ある日、森の砦跡で実戦形式の訓練をしている男たちを発見したマルスは、彼らに訓練への参加を願い出た。最初は警戒されたが、実力を見せることで彼らを納得させ、彼らとの訓練を開始した。
マルスは、モンスターの肉を食べることで強くなれることを示し、男たちに試すよう促したが、彼らはその毒性に耐えることができなかった。マルスはこの出来事を誇らしく思った。
5.オグマ
オグマが生まれたファルーン国は、階級差が大きく、貴族が私腹を肥やすことで民衆が苦しんでいた。彼は貴族の三男として生まれたが、人生に行き詰まりを感じていた。剣を振るうことが好きだったが、ファルーンでは実戦での剣の強さが重視されず、美しい所作が求められることに苛立ちを感じていた。
オグマは同じような思いを抱く仲間を集めて、純粋に力を追い求める組織「ハンドレッド」を結成した。彼らは力で序列を決めることを目的とし、傭兵団として他国で成り上がることを目指していた。オグマはリーダーとして仲間と共に剣の腕を磨き、モンスター狩りをしていた。
ある日、魔獣の森で現れた男「ゼロス」と出会った。ゼロスは圧倒的な力を持ち、凶悪なモンスターを倒し、その肉を食べることで力を得ていた。オグマたちはゼロスの教えを乞い、モンスターの肉を食べることで力をつけようとした。
ハンドレッドのメンバーはゼロスに心酔し、彼の指導の下で訓練を重ねた。彼らはモンスターの肉を食べて強さを追求し、ランキング戦を通じて序列を競い合った。オグマはモンスターの肉を食べることで体のキレが良くなり、ハンドレッドの中で強さを増していった。彼らはゼロスの指導を受けながら、集団戦の能力を高めていった。
6.黒の騎士団クロム
騎士団長であるある人物がハンドレッドという組織の存在を知ったのは、部下たちの噂話からであった。ハンドレッドはモンスターを狩り、その肉を食べて戦う集団であり、民衆からの支持を集めて勢力を増していた。黒の騎士団からも参加者がいるとのことで、彼は組織の正体を探るためにハンドレッドに潜入することを決めた。
潜入は容易で、組織は身分や年齢を問わずに人を受け入れていた。彼は、近隣の町のハンドレッドの下部組織に入り、剣の型やモンスターの肉の食べ方などを学んだ。モンスターの肉を食べるのは困難であり、最初は苦労したが、1か月経つと身体が慣れ、効果を実感するようになった。
ランキング戦に参加できるようになった彼は、魔獣の森の中にあるハンドレッドの拠点に向かった。そこでは夜な夜な実戦さながらの戦いが行われており、メンバーたちは順位付けによって強さを競い合っていた。彼はハンドレッドの単純で明確な力の追求に魅了され、騎士団長としての自信を試すべくランキング戦に参加した。
ハンドレッドのメンバーは非常に強く、彼はその力に驚かされた。特に頂点に立つ「ゼロス」という男の圧倒的な力と伝説的な技の使いこなしに衝撃を受けた。ゼロスは力を求める者たちに助力を惜しまず、技を伝授していた。彼はこの場にこそ自分が生きていた意味があると感じ、ハンドレッドを討伐する考えを改めた。
マルスは、城内でモンスターを狩る集団「ハンドレッド」の噂を聞くようになった。貴族たちの中には、ハンドレッドを野蛮人の集団と見なす者もいれば、彼らを好意的に評価する者もいた。特に、民衆からの支持を集めており、モンスターを狩ることで人々を助けていると評価されていた。しかし、ハンドレッドのメンバーは、モンスターの肉を求めて狩りをしているだけであった。
ある日、マルスは国王である父から謁見を受けた。国王はハンドレッドについて尋ね、モンスターを食べるために狩る集団であることを説明した。スネイル伯爵などの貴族たちは、ハンドレッドが王国の権威を損なっていると主張し、討伐を要求していた。ガマラス宰相は、マルスにハンドレッドを討伐するよう命じ、これが次代の王としての実績になると説明した。
マルスは、ハンドレッドを討伐することが彼の支持を失わせる可能性があると考え、逃げることを決意した。ハンドレッドの仲間たちと共に、この国から逃れることを心に決めたのである。
7.反乱計画
マルスはハンドレッドの拠点に向かい、ランキング戦の日に多くのメンバーが集まっているのを確認した。ゼロスとして黒い甲冑に身を包んでいた彼は、幹部たちが集まる会議室に入り、そこで黒の騎士団団長クロムと赤の騎士団団長ワーレンの姿を見た。彼らは国からの討伐命令を受けたにもかかわらず、ハンドレッドと運命を共にすることを決意していた。
しかし、クロムとワーレンは、ハンドレッドが反乱を起こす計画を立てていると考えていた。マルスは反乱に加担する気はなく、むしろ彼らと共に国外へ逃げることを考えていたため、この展開に驚いた。さらに、彼がマルス王子であることが明らかになると、クロムとワーレンは、彼の指導のもとで反乱を正当化しようとする。
マルスは冷静に、反乱計画の現実性について疑問を投げかけるが、ハンドレッドのメンバーたちは熱狂的に反乱を支持した。さらに、魔導士団のフラウが現れ、彼女がマルスの婚約者であり、魔導士団を抑えると宣言したことで、メンバーたちはさらに興奮した。
マルスは、自分の意思とは無関係に進む状況に戸惑いながらも、反乱の成功の可能性が高まっていることを理解した。しかし、彼は自分のプライベートな生活に問題があることを認識し、フラウの監視から逃れる方法を模索する必要があると感じた。
8.フラウ
フラウは生まれつき魔力が見える力を持っていた。幼少期から様々な呪文を習得し、魔導士団に加わりモンスター討伐を行っていた。8歳のときに父によってマルス王子と引き合わされ、婚約者となった際に、彼に契約紋を施した。この契約紋を通じて、マルスの五感を同調し、監視できるようになっていた。
マルスが毒殺されそうになったとき、フラウは再び契約紋を使い、彼の行動を観察した。マルスがキラーラビットと戦い、その肉を食べる様子を見て、彼に興味を持ち始めた。彼の成長と冒険に魅了され、彼の行動を見守り続けた。
フラウ自身もマルスを見習い、モンスターの肉を食べて魔力を高めた結果、雷帝と称されるまでになった。しかし、父がマルスとの婚約を解消しようとした際には、雷撃で家を半壊させることで自分の意志を示した。
ハンドレッドが反乱を計画し始めた頃、フラウは自分の立場を再考し、反乱に加わることを決意した。彼女はマルスの婚約者として、彼を見守る立場から行動を共にすることにした。フラウは、反乱の成功に向けて、彼女の能力を活かして魔導士団を抑える役割を担う覚悟を決めた。
反乱が進行する中で、フラウはマルスと共に戦いに身を投じ、彼らの未来を切り開くための行動を始めた。彼女の魔力と意志は、ハンドレッドの一員として、そしてマルスの婚約者として、重要な役割を果たした。
9.王都攻略戦
マルスは反乱軍を率いて王都に迫り、青の騎士団の内応で城門を開くことに成功した。彼は城へと急ぎ、ハンドレッドと共に戦いながら進んだ。オグマ率いるハンドレッドが城内での戦いを優位に進め、フラウが魔導士団を抑えていた。マルスたちは白の騎士団と貴族の護衛騎士たちを倒しながら、玉座の間に到達した。
一方、マルスの反逆の報に接したブラームスは驚いた。彼はガマラスからの要請を受け、魔導士団を率いてマルスの討伐に向かうことを決めた。しかし、フラウがそれに反対し、父に家督を譲るよう求めた。フラウは魔導士たちを従えて、ブラームスに引退を迫り、魔法を使って彼を退ける決意を示した。
マルスが玉座の間に到着すると、そこには冒険者のパーティーが待ち構えており、父王とガマラスもいた。ガマラスはAランクの冒険者たちを雇い入れていたが、マルスは動じず、装備していた腕輪を外して身体を軽くした。冒険者たちは次々と攻撃を仕掛けるが、マルスはそのすべてを凌ぎ、反撃していった。
冒険者たちの攻撃をかわしつつ、マルスは彼らを圧倒していった。魔法使いのグラビティも毒も効かず、剣士や盗賊を次々に倒していく。最終的に、剣士を倒したマルスは、残ったガマラスに迫る。ガマラスは恐怖で後ずさるが、父王はその様子をただ見つめているだけであった。
10.ガマラスという男
ガマラスは、マルス王子が自分に迫ってくる中で、過去の出来事を振り返っていた。15年前、専横を極めた前王妃とその外戚に対抗して、ガマラスは宮廷クーデターを起こし、国を危機から救った。しかし、マルス王子は廃嫡できず、彼を排除しようとするが、王子はすべての暗殺を生き延びた。
マルス王子を討伐に送り出すも、彼は黒の騎士団、赤の騎士団、ハンドレッドを率いて反乱を起こし、ガマラスの策は失敗した。ガマラスは、マルス王子が自ら組織を築き上げていたことを知り、彼の才覚に驚いた。玉座の間で、ガマラスはマルス王子から政治を任されることになり、その理由を聞くと、貴族たちがいなくなった今、自分が理想とする中央集権国家を実現する千載一遇の機会と考えた。
ガマラスは、マルス王子が自分の改革の兆しに気づいていたことを悟り、感動して涙を流しながら忠誠を誓った。彼はマルス王子を「王の中の王」と称え、命をかけて責務を全うすると誓った。
11.王位継承
マルス王子は、ガマラスを討とうとしていたが、ハンドレッドのオグマたちが現れ、貴族たちを全員始末したと報告した。マルスは彼らの行動に呆然とし、貴族の役割を考えると国の運営が難しくなることを懸念した。父に王位を譲るか相談したが、すぐに譲位が決まり、マルスは困惑した。
政治に興味がなかったマルスは、ガマラスを見て彼に政治を任せることに決めた。オグマとクロムが反対したが、マルスは貴族がいないためガマラスに任せるしかないと説明した。ガマラスは驚きつつも、命が助かったことに感謝し、責務を全うすることを誓った。
マルスは城内の凄惨な状況を見て、誰が片付けるのか疑問に思いながら、政治の責任をガマラスに委ねた。
マルス王は反乱後、国の立て直しに成功し、戴冠式とフラウとの結婚式を行った。フラウは内戦で魔導士団を率い、抵抗勢力を迅速に鎮圧し、彼女の功績が評価されて婚姻が進められた。結婚にあまり乗り気でなかったマルスだったが、周囲の勧めで受け入れることとなった。
ガマラスは貴族たちの財産を没収し、国庫を潤わせた。彼は自身の財産も国庫に返納し、寝食を惜しんで政務に専念した結果、国の財政は大幅に改善された。ガマラスはさらに領地を直轄地とし、王の権威を強化し、法改革を進めた。彼の娘リリアも政務に貢献し、宮廷の支出削減に尽力した。
国の安定を受けて、マルスはハンドレッドに恩賞を与えるため、闘技場の建設を決めた。彼はランキング戦を観戦料や賭博の対象にして国の事業とすることをガマラスに提案し、ガマラスはその計画を熱心に推進した。マルスは国の再建に成功し、安定した政治体制を築き上げた。
Chapter.2
Fight Club
12.闘技場
ファルーン国の政治改革を進めてきたガマラスには、ある懸念があった。国庫は一時的に潤っていたが、ファルーン国は産業が乏しく、このままでは国として行き詰まる可能性が高かった。優秀な政治家であるガマラスも、産業を生み出すことはできず、その限界に悩んでいた。
そんな中、マルス王が「闘技場を建設してくれ」と提案した。ガマラスは驚いたが、マルス王がハンドレッドのランキング戦を闘技場で興行化し、ファルーン国の名物としようとしている意図に気づいた。このランキング戦は激しさで有名であり、それを興行化することで収益を得るという案は魅力的であった。
ガマラスは観戦料を取る案を考えたが、マルス王は「違う」と言い、ガマラスはランキング戦を賭博の対象にする案にたどり着いた。マルス王はこれを承認し、ガマラスは王の深慮遠謀に感銘を受けた。賭博を産業化することで、国の経済を活性化させる計画を進めることになった。ガマラスは、この事業が国の柱となると確信し、全力で闘技場の建設を推進した。
マルスの統治下でファルーン国に新たに建設された闘技場は、短期間で完成し、予想以上の成功を収めた。数千人を収容するその闘技場は、ファルーン最大の建築物となり、ハンドレッドのランキング戦が開催されると、客席は常に満員で、観戦者たちは熱狂した。近隣国からも見物客が訪れ、経済効果が大きく、国の収入は倍増した。オグマをはじめとするハンドレッドのメンバーは、闘技場での戦いを楽しみ、専念できるようになった。これにより、ハンドレッドの加入希望者が国内外から集まり、魔獣の森の開拓も進んだ。
一方、ガマラスはモンスターの絶滅の可能性に気づき、特にキラーラビットの激減が問題視された。キラーラビットは駆け出しの冒険者の討伐対象であったが、その乱獲により領内から姿を消していた。この状況に対し、マルスは皮肉交じりに「飼育すればいい」と述べたが、ガマラスはそれを真に受け、モンスターの飼育を提案した。
フラウが魔法でマルスの声を封じる中、ガマラスはモンスターの飼育を国の戦力にする考えを持ち出し、手配を進める決意を固めた。マルスはフラウの興味を抑えることが困難であると感じ、事態の推移を見守るしかなかった。モンスターの軍団化という計画が進む中、国の先行きに不安を感じたが、フラウの暴走を止めることができず、暗い気持ちで事態を見守ることにした。
13.僧侶ルイーダ
大観衆の前で、ハンドレッドの1位であるオグマと、その親友ブルーノが闘技場で戦っていた。ブルーノは大柄で逞しい体格をしており、ランキングでは5位から8位を行き来していた。観客たちは、ハンドレッドのトップランカーたちの戦いに熱狂していた。オグマの力はブルーノよりも優れ、激闘の末、ブルーノの腕を斬り落とし、彼の負けを認めさせた。オグマは斬り落としたブルーノの腕を拾い上げ、彼と握手を交わし、観客から温かい拍手を受けた。
ルイーダは闘技場内の医療施設で、オグマに運ばれてきたブルーノの腕を治療した。彼女は回復魔法を使い、ブルーノの腕を再び繋げた。ハンドレッドのメンバーたちは負けず嫌いであり、重傷を負わない限り決して負けを認めない。ルイーダは、元々「銀翼の鷹」というパーティーの僧侶だったが、ある日、ファルーン国の宰相ガマラスから、マルス王子の排除を依頼された。その際、ガマラスの策を逆手にとったマルス王子が大規模なクーデターを起こし、ルイーダはハンドレッド専属の僧侶として迎えられることになった。
ハンドレッドに所属することで、ルイーダの僧侶としての能力は飛躍的に向上した。彼女は日々の回復魔法を使い続け、モンスターの肉を食べさせられる中で、その力を高めていった。彼女はハンドレッドの過激な戦闘に対応し、メンバーたちの治療に尽力していた。ルイーダはハンドレッドの仲間たちと共に日々を過ごし、今の待遇に満足していた。冒険者時代に比べ、収入も何倍にも増え、能力も向上していたためである。
ゼロスは、ハンドレッドと雷帝フラウの魔導士団を率い、ファルーン国の支配者としての地位を確立していた。彼は闘技場での戦いを通じてその力を誇示し、国民からの支持を集めていた。ゼロスの目的や野望については不明であったが、ルイーダは彼の動向を見守りつつ、国の行く末を注視することを決意していた。
14.王様の仕事
モンスターの量産計画が始まったものの、その用途についてマルス王は疑問を抱いていた。国内のモンスター被害は減少しており、辺境の小国を侵略する国もないため、モンスターを軍団化しても使い道がない状況であった。
マルス王は闘技場の完成以降、毎日のようにハンドレッドと戦っていた。彼が冒険者たちを倒した際に本気を出したことが知られると、ハンドレッドのメンバーから「本気で対戦しろ」と要求が殺到した。そこで、彼はランキング戦で勝利した者と特別試合を行うことにした。しかし、ハンドレッドのメンバーは「ランキング戦に勝てば何度でも特別試合に参加できる」と思い込み、連日の試合を要求してきた。
ガマラスからも「王の試合は観客を呼び込む」と言われたため、マルス王は特別試合を毎日行うことを承諾してしまった。しかし、これは失敗だった。回復役の僧侶ルイーダが回復魔法の腕を上げた結果、相打ち試合の勝者まで特別試合に参加するようになり、毎日10人以上の絶好調なランカーたちと戦う羽目になっていた。マルス王は疲れを感じつつ、政務をガマラスに任せている手前、クレームを入れることもできずにいた。
マルスは、王としての存在意義に疑問を抱きつつも、ハンドレッドの上位陣で流行し始めた重力の腕輪のことを考えていた。他国から囚人用の重力腕輪を購入し、ゼロス王に近づこうとする彼らに対して、「囚人グッズにお金を使うなんて馬鹿げている」と感じていた。
そんな中、マルスは妻フラウから重力5倍の腕輪を誕生日に贈られた。フラウは「夫を強くするのも妻の役目」と言って、無表情ながらも満足そうにしていた。マルスは不満を抱えながらも、フラウの献身を理解し、彼女の作った腕輪を身につけることにした。
翌日、玉座がマルスの重さに耐えきれず大破したため、新しい玉座を作ることになった。耐久性を重視した結果、威圧感のある大きな玉座ができ上がった。妻の愛が物理的に重いと感じつつ、マルスはその状況を受け入れていた。
ファルーン国に訪れたカドニア国の外交官オッドは、ファルーン国の王マルスに対し、モンスター討伐と賠償金として金貨3000枚を要求した。カドニア国では近年モンスター被害が増えており、その原因がファルーン国によるモンスター討伐と魔獣の森の開拓にあるとされていた。
ファルーン国のマルス王は、過去に素行の悪さから廃嫡寸前だったが、自ら「ゼロス」と名乗り反乱を起こし、力と恐怖で騎士団を掌握して貴族たちを粛清したという噂が広まっていた。また、マルス王は配下にモンスターの肉を食べさせることで忠誠を誓わせており、ハンドレッドという軍団を組織しているとされていた。
オッドは、マルス王が理不尽な要求に応じることはないと考え、恐れを抱きながらも任務を遂行する決意を固めていた。彼はファルーン国が前王の時よりも活気づいていることに驚いたが、貴族が根絶やしにされたという話が本当であることを確認した。オッドは、王城で重力の腕輪をつけた重臣たちを見て、マルス王が狂気の持ち主であることを改めて実感した。
マルス王は予想に反して平凡な貴族の青年のように見えたが、オッドは油断せず、慎重に対応する必要があると考えていた。
15.カドニア国の要求
カドニア国の使者オッドがファルーン国の王マルスに、モンスター討伐と賠償金を要求しに来た。カドニア国ではモンスター被害が増えたため、その原因がファルーン国の魔獣の森の開拓にあるとして要求してきたのである。
マルス王は、ハンドレッドと称する強者たちを集めた部下と共に要求を受け入れる姿勢を示した。これにより、ファルーン国がカドニア国でモンスター討伐を行うことを決定した。ガマラスや他の重臣たちはこの決定に驚いたが、マルスはスタンピードを懸念していると説明した。
スタンピードとは、モンスターが突然大量に押し寄せる現象であり、これがカドニア国で発生するとファルーン国も被害を受ける可能性があるため、早期の対応が必要とした。これにより、カドニア国でのモンスター討伐を通じて両国の関係を改善しようとするマルスの意図が理解された。
最終的に、カドニア国での討伐任務は黒の騎士団に任されることになり、マルスは1か月後にカドニア国を訪れる予定を立てた。
マルス王の智謀は計り知れないものであった。王が退室した後、臣下たちは口々にゼロス王を讃えた。カドニア国の要求を受け入れるという表向きの姿勢の裏には、カドニア国を制圧する意図が隠されていると信じられていた。これは、スタンピードを起こすことによって実現されると考えられた。
カドニア国が無理な要求をしてきたのも、王の計画の一部であったに違いない。
魔獣の森の開発を進めたのも、スタンピードを起こすための布石であった。
モンスター討伐の名目でカドニア領に入り、賠償金支払いのタイミングでスタンピードを起こす計画であった。
モンスターを操り、スタンピードを引き起こすことは黒の騎士団にとって重大な任務であったが、ファルーン国ではモンスター研究が進んでおり、その成果を活用することが期待されていた。
ゼロス王はアレス大陸の統一を視野に入れており、カドニア国を制圧した後、さらなる大国との戦いを計画している可能性がある。
臣下たちは、その計画に少しでも貢献できることを誇りに思い、次なる戦いを心待ちにしていた。
16.スタンピード
マルス王はカドニア国への旅に出発した。隣国への訪問は初めてであり、楽しみにしていた。護衛には、オグマを筆頭としたハンドレッドの精鋭50名とフラウ直属の魔道士団10名がついてきた。
カドニア国との親善を目的としていたが、護衛の集団は討伐部隊のようであった。
旅の途中、彼らはカドニア国の王都モスがモンスターに包囲されているのを目撃した。
オグマによると、黒の騎士団が「予定通り」モンスターを追い立てた結果であった。
マルス王は人道的な理由から、モンスターを一掃することを決断し、護衛たちは戦闘に突入した。
フラウの強力な呪文によって多くのモンスターが倒され、護衛たちの攻撃でモンスターの勢いは失われた。
マルス王は王都モスに入り、内部のモンスターを迅速に倒した。カドニアの騎士団は驚きと感謝の声を上げた。
マルス王はカドニア王に会う予定だったが、モンスターの襲来を受けたカドニア王は王都から脱出しており、不在であった。
護衛たちはモンスターを全滅させ、マルス王はカドニアの他の地域にもモンスターの被害が広がっていることを知った。
マルス王はカドニアの民を守るため、モンスターの討伐を決意し、護衛たちに号令をかけた。
その結果、3日後にはカドニアに侵入したモンスターは殲滅された。
マルス王は、賠償金を支払わずに済む形でカドニアの危機を救った。
マルスたちがカドニア国の王都モスに到着する少し前、カドニア王は近衛騎士団に護られながらモスから脱出していた。
モンスターの大群が迫っており、モスの陥落は避けられないと判断したためである。
王は黒の騎士団がモンスターを撃退していると聞いていたが、モンスターの侵攻を受けている状況に困惑していた。
黒の騎士団との連絡が途絶え、王はファルーンの策略ではないかと疑った。
そんな中、王の馬車は黒の騎士団に包囲された。
団長クロムはカドニア王に接触し、モンスター討伐の結果としてモンスターの侵攻を招いたことを示唆した。クロムはモンスターを引き寄せる薬を使い、スタンピードを意図的に起こしたことを明かした。
カドニア王が賠償金とモンスター討伐を要求したことを非難し、クロムは王の胸に剣を突き刺した。カドニア王の血と薬が混じり、モンスターを引き寄せた。
クロムたちはカドニア王が逃亡中にモンスターに襲われたという形で、証拠を隠滅し、その場を立ち去った。
17.鎮圧
カドニア国、リーム村
マルスたちがカドニア国のモスに到着する少し前、カドニア南部のリーム村はモンスターの襲撃を受けていた。
リーム村はモンスターの恐怖が身近にあるものの、実際にモンスターが出現したことはなく、住民たちは漠然とした不安しか持っていなかった。
しかし、モンスターの大群が迫ると、村は混乱に陥った。
村人たちは避難を試みたが、モンスターによって囲まれてしまい、逃げ場を失った。
村人たちが教会に避難していると、ホワイトタイガーと呼ばれるモンスターが教会を襲撃してきた。
自衛団が立ち向かうも、モンスターの攻撃には太刀打ちできなかった。
絶望の中、ジュウザという若い冒険者が現れ、ホワイトタイガーを次々と倒して村を救った。
ジュウザはファルーン国のゼロス王の命で村を助けに来たと告げた。
彼はハンドレッドという組織の100位であり、他にも99人の強力な仲間がいると話した。ジュウザは村に金貨10枚を渡し、被害の補填に使うように指示した。
村人たちはファルーン国のゼロス王を称え、助けてくれたジュウザにも感謝した。村に残されたモンスターの死体を処分しながら、彼らはゼロス王の偉大さを讃えた。
カドニア併合
カドニア王がモンスターの襲撃により死亡したことは、マルスにとって幸運であった。
これによりスタンピードの責任を問われることはなくなった。しかし、そのためにマルスたちはファルーン国に帰れずにいた。
モンスター討伐と金貨の配布によって、カドニア国民の感謝を得たマルスは、カドニア南部の領主たちからファルーン国への帰属を望む申し出を受けることになった。
領主たちは、助けてもらったことや金貨をもらったことに感謝しつつ、カドニアには戻れないと主張し、マルスに忠誠を誓ってきた。
最終的に、カドニア南部はファルーン領となった。
18.カドニアの王女
カドニア南部を平定したマルスに、ゲオルクがカドニアの王女ルビスに関する話を持ち込んだ。
ルビスはスタンピードの際、他の王族が逃げる中、民のために城に残ることを選んだ王女である。
ゲオルクはルビスを隠していたが、マルスがカドニアの民を救った姿を見て、彼女がマルスに会いたいと望んだため、知らせることになった。
ルビスは会談を極秘にし、マルスとの会食の形で会いたいと申し出た。
マルスはそれに同意し、ゲオルクはその手配に動いた。
カドニアの王女ルビスは、国民の心がマルス王に移りつつある状況に危機感を抱いていた。
スタンピードの被害を受けたカドニア南部に金を提供して支持を得たマルス王が、その資金の出所は、父王がファルーン国に要求していた賠償金であるという噂を耳にし、すべてがマルス王の企みであると疑った。
ルビスは、暗殺を決意し、毒を用いる計画を立てた。
会食の場で毒殺を試みるが、マルスは何の影響も受けず、逆に彼女自身が体調を崩していった。
会食の最中、マルスは弟ニコルをカドニアに送り込み、彼にカドニアの統治を任せることを思いついた。
ニコルとルビスの縁談を画策することなく、単にカドニアの管理を弟に押し付けるつもりだったマルスは、ガマラスの誤解により、ニコルがルビスと婚姻を結ぶ方向で準備が進められた。
この間、ルビスは毒で体調を崩していたが、外堀が埋まっていく事態に無力感を感じていた。
19.ニコルの結婚
マルスはカドニアで、逃げた貴族の屋敷を拠点としていた。
その屋敷は豪華で、カドニアでも有数の大きさであったが、『グラビティ』5倍の腕輪のために、マルスが座ると椅子が壊れるのが難点であった。
ファルーンから呼び寄せたニコルとその母リリアが到着し、リリアは「良縁をありがとうございました」と礼を述べた。
ニコルは、マルスからカドニアの運営を任され、ルビス王女との協力を求められたが、ルビス王女は体調を崩していたため、すぐには会えない可能性があった。
クロムがニコルを城に案内することになり、マルスは安心してカドニアのことをニコルに任せることにした。
カドニアの王女ルビスの部屋に、クロムたちが強引に押し入ろうとする場面で、ゲオルクは必死に彼らを止めようとしていた。
クロムはニコルを王女の夫とすることを理由に、会わせるよう求めたが、ゲオルクはそれを否定した。
ニコルは、既に彼の祖父ガマラスと王女の祖父ゴードン公爵の間で話がついていると主張した。
ニコルは、ルビスがマルス王に対して何かを企んでいることを察しているとほのめかし、ルビスの意図を見透かしていることを示した。
最終的に、ルビスは自ら扉を開け、ニコルを部屋に迎え入れることを決断した。
ルビスは体調不良で青ざめていたが、気丈に振る舞っていた。
ルビスは、ファルーンの臣下ニコルに対し、彼らが何を求めているのか尋ねた。
ニコルは、ファルーンがカドニアを良い国にすることを目指していると答えた。
ニコルは、ファルーンの介入前からカドニアには問題があり、マルス王の行動は国民のためであると主張した。
ルビスはマルスの悪評を指摘したが、ニコルは民衆への被害がないことを挙げて反論した。
ニコルは、貴族の数が多すぎると主張し、民衆への負担を減らすためには貴族の存在を見直すべきだと述べた。
ルビスはこの考えに戸惑ったが、ニコルはファルーンを訪れて実情を知るべきだと提案した。
そして、自分の結婚相手が賢くて可愛い人であることを喜んだ。
ニコルとルビスの結婚式は盛大に執り行われ、カドニア南部はこれを熱狂的に支持した。
北部もゴードン公爵が調整し、貴族の権益を認めることで婚姻が認められた。
ニコルが新たなカドニア王となり、カドニアは実質的にファルーンの属国となった。南部はカドニア王の直轄地となり、ニコルは改革を進めた。
ルビスもファルーンを訪れ、その先進性を認め、ニコルを支えてカドニアのために働き、仲睦まじい夫婦となった。
しかし、マルスは「何であのふたりは結婚したの?」と不思議に思った。
Chapter.3
VERY VELL.THEN LET IT BE KRIEG
20.ドルセン国
ファルーン国とカドニア国の北側に位置するドルセンは、広大な領土と豊かな経済力を誇る強国であった。近年、ファルーンがカドニアを併合したことを受け、ドルセン王はその動きに警戒感を抱いた。特に、ファルーンの軍事力や魔法使いの集結が気がかりであった。
ドルセン王のもとには、スタンピードの際に逃げ出したカドニアの第一王子と第二王子が助けを求めていた。彼らはファルーンによるカドニア併合を非難し、父王の死はファルーンの陰謀だと訴えた。しかし、その主張には証拠がなく、ドルセン王は単なる負け犬の遠吠えと感じた。
とはいえ、ドルセン王にとってはファルーンの台頭を抑えるための大義名分が必要であった。王子たちの訴えを利用し、ファルーンに対する対抗策を講じることを決めた。外交ルートを通じて王位の明け渡しを要求し、カドニアの貴族たちを調略する計画を立てた。
ドルセン軍はカドニア国境に兵力を集結させ、示威行為を行うことで圧力をかける意向であった。最終的にはファルーンとの戦闘も視野に入れていた。ドルセン王の目的は、ファルーンの台頭を阻止し、カドニアを傀儡として支配下に置くことであった。戦費はカドニアから徴収し、新たなカドニア王に恨まれる形で問題を解決するつもりであった。
ニコルはカドニア王として、ドルセン国からの王位明け渡し要求に直面しながらも、ファルーン国への忠誠を誓っていた。彼はファルーン国のマルス王から一国の運営を任されたことを誇りに思い、ドルセンの脅威にも屈せず、カドニアの立て直しに取り組んでいた。幼少期から帝王学を学び、母と祖父ガマラスからの教育を受けたニコルは、政治家としての資質を持ち、兄マルスを尊敬していた。
マルスはかつて軍事クーデターを起こし、圧倒的な軍事力で王都を制圧し、貴族たちを粛清してファルーンの改革を実現した。ニコルはその過程を間近で見て、兄の卓越した王としての姿を目の当たりにし、彼に対する尊敬の念を深めた。ニコルはカドニア王女ルビスとの結婚を通じて北部の貴族たちを懐柔し、南部では直轄地を増やすことで急速な復興を推進した。
ドルセンとの対立が迫る中、ニコルはファルーン国からの軍事支援を求め、赤の騎士団を迎え入れていた。彼はまた、いざという時にはマルスとフラウの参戦を期待し、その実力を信頼していた。ニコルは戦場に出て、自ら士気を高めると同時に、ドルセン側に内応する者を見極める考えであった。
ニコルは、マルスがアレス大陸の統一を目指していると信じ、そのために弟として、カドニア王としてマルスを支える決意を固めていた。彼は戦争を避けられない道と認識し、マルスの下でアレス大陸の初の統一王を目指すため、カドニアを強化し、ファルーン国と共に戦う意志を示した。
21.モンスター軍団
マルスは、ニコルからドルセン国がカドニアの王位を譲り渡すよう要求しているという書状を受け取った。ニコルが王位を譲らず、むしろ開戦を求める状況に、マルスは困惑した。彼は戦争を望んでおらず、面倒を避けたかったが、部下たちは戦意を高め、カドニアを守ろうとする意志を示していた。
赤の騎士団は既にカドニアに向かっており、ガマラスも戦争を計画通りと称賛した。ハンドレッドのメンバーは、王城に集まり、戦意を高める演説を行い、戦争の準備を進めた。マルスは最初、戦争を避けるために決断を先延ばしにしようとしたが、国民や部下たちの支持を受けて、最終的には戦争を決断せざるを得なかった。
国民の多くは戦争に肯定的であり、ハンドレッドの強さを信じ、ドルセンに対抗する意志を持っていた。マルスは戦争が避けられないと悟り、しぶしぶながらも戦争を決意した。
マルスは、ドルセンとの開戦が決まった翌日、モンスター量産計画の進捗を確認するために責任者と会った。責任者はキーリという女魔導士で、キエル魔道国から追放されてファルーン国に来ていた。彼女はモンスター研究を続けており、特にモンスター軍団の編成を進めていた。
モンスター軍団には、ウォーウルフという犬型のモンスターが使われていた。キーリはこのウォーウルフにモンスターの肉を与えて大型化させ、さらに調合した薬で戦闘力を強化していた。また、ウォーウルフは群れの主に従う習性があるため、群れの主がマルスに従うようになっていた。これにより、ウォーウルフの軍団化が進んでいた。
最終的に、ファルーン国は500匹以上のウォーウルフを支配下に置き、ドルセンとの戦いに備えていた。マルスは自分の意図とは異なる方向に進んでいることに困惑しつつも、戦争の準備が整いつつあることを認識した。
22.ブリックスの戦い
ドルセン国の将軍キンブリーは、カドニア侵攻の全権を任され、準備を整えた。彼はカドニア国境で演習を行い、ファルーン国に対するシミュレーションを実施した。ドルセン国の兵力は1万であり、ファルーン国の想定兵力2000に対して5倍の兵力差があると考えられた。
キンブリーはハンドレッドというファルーン国の私兵集団に対抗するため、騎士や兵士を3人ずつのグループに分け、複数で一人を相手にする訓練を行った。さらに、現ファルーン国王妃である雷帝フラウに対抗するため、魔導士団に防御結界の訓練を指示した。
最大の問題であるファルーン国王ゼロスに対しては、五天位と呼ばれる王直属の騎士から二人を借り受けた。彼らはゼロスと同等の力を持つとされ、二人がかりであれば勝利が見込めると考えた。
カドニアの北部を領有する領主たちは、容易にドルセン側に調略され、新しい国王がファルーンの王族であることから、裏切りやすい状況にあった。キンブリーはこれらの準備を整え、カドニアへの侵攻を開始した。
ドルセン軍の将軍キンブリーは、カドニアへの侵攻を進める中で、貴族たちが抵抗せずに降伏したことに拍子抜けしていた。進軍は順調に進み、カドニア北部を抜けたところで、ようやくファルーンとカドニアの連合軍と相対した。戦場はブリックス平原で、「ブリックスの戦い」が始まった。
序盤は遠距離からの魔法の撃ち合いで始まり、ドルセン軍は防御に徹していた。ファルーン軍の攻撃魔法は強力であったが、ドルセン軍の結界はそれを防ぎきった。キンブリーは魔導士団に結界の維持を命じ、攻撃の機会を待った。
ファルーン軍の攻撃が止むと、キンブリーは右翼と左翼からそれぞれ1000名の兵力を投入した。敵の赤の騎士団と黒の騎士団はそれぞれ500名ずつであったが、驚くほどの強さを見せた。倍の数の兵力を抑える敵の実力にキンブリーは驚かされたが、それは想定内であった。これらの騎士団はハンドレッドに所属する最精鋭部隊と考えていたからである。
残るファルーン軍の兵力は1000で、カドニア軍が後衛として1000程度いるが、戦力にはならないと判断された。対するドルセン軍は8000の兵力を残しており、勝利は確実であるとキンブリーは判断した。彼は主軍5000の歩兵に攻撃を命じ、ファルーン軍を圧倒し始めた。
戦況はドルセン軍に有利に進んでおり、キンブリーはゼロス王が戦場に姿を見せたら、五天位の騎士を投入して戦争を終わらせる計画を立てていた。彼は自軍の勝利を確信した。
マルスはドルセン軍との戦いにおける自軍の戦い方を見て、満足していた。ドルセン軍は数的優位を生かし、常に1対2もしくは1対3の戦闘に持ち込むよう訓練されており、ハンドレッドのメンバーたちも押し込まれていた。マルスの心配は、ハンドレッドの上位陣が敵兵をすぐに蹂躙してしまうことであった。これではランキング100位に入っていないメンバーが十分に戦うことができないため、全員に戦場での戦い方を経験させることを考えていた。
マルスは、赤の騎士団、黒の騎士団の団長であるワーレンやクロムに指揮に専念させ、フラウにも魔導士団を上手く使うように指示した。これにより、部下たちが戦場での統率を学ぶことを狙っていた。ランキング外の者たちが主体で戦い、苦戦することで、経験を積ませることができた。
オグマが、中央の軍と戦っている兵士たちが疲れを見せ始めたことを伝え、上の連中を投入して良いか尋ねると、マルスは許可を出した。入れ替えは徐々に行われ、ランキング(下位)の者たちが戦いに加わったことで、戦況は好転した。マルスはこの戦いを通じて、自軍が経験を積むことを重視していた。(舐めプ?)
ワンフーという男がハンドレッドにいた。彼は大柄な体格で、力任せの攻撃が得意であった。ワンフーは木こり出身で、その怪力でハンドレッドの中でも注目されていたが、ランキングでは20位前後に留まっていた。彼は力を重視するスタイルを変えず、怪力を鍛えることに専念していた。
マルスは過去にワンフーと共に魔獣の森のジャイアントツリーの亜種を討伐したことがあった。このとき、ワンフーはその怪力を発揮し、討伐に貢献した。討伐の際に得た赤黒い棒をワンフーは武器として使うようになった。この棒はブラッディロッドと呼ばれ、ワンフーと共に有名になった。
ドルセン軍との戦いで、ワンフーは前線に立ち、敵兵を次々と打ち倒していった。彼の攻撃は強烈で、ドルセン軍の集団戦法は通用しなかった。ブラッディロッドは吸血の性質を持ち、ワンフーの体力や傷を自動で回復させるため、彼は傷を気にせず戦い続けることができた。ワンフーはまるで歩く要塞のようであり、ドルセン軍にとって恐怖の存在となった。
新たに投入されたハンドレッドのランカーたちも戦況を覆す力を発揮し、ファルーン軍は勢いを取り戻しつつあった。
23.五天位
ドルセン軍は当初、数的優位に立っていたが、ファルーン軍の精鋭による突然の反撃により劣勢に立たされ、驚きを隠せなかった。キンブリー将軍はゼロス王が前線に立っていると誤解し、五天位を投入する準備を急いだが、実際にはハンドレッドの上位者が戦場で猛威を振るっていた。ワンフーを始めとするファルーンの精鋭たちは、ドルセン軍を圧倒し、その勢いを止められなかった。キンブリーは一時撤退を考えたが、参謀たちの反論により決断が遅れた。
戦況が悪化する中、ドルセン軍はモンスターの襲撃により補給部隊を失う事態に陥った。補給路が脅かされたことで、キンブリーは撤退を決断せざるを得なかった。参謀たちは短期決戦での勝利を求めたが、ゼロス王の存在が不確定要素として残り、無理な戦闘がかえって不利になることをキンブリーは悟った。
こうしてドルセン軍は、翌朝には撤退を決定し、ファルーン軍に大きな被害を与えることなく撤退することになった。
24.決着
ドルセン軍が撤退した後、キーリから魔術通信でウォーウルフ部隊の活躍が報告された。ウォーウルフ部隊は敵の補給部隊を壊滅させ、ファルーン軍の戦略的優位を確保した。マルスはファルーン軍の勝利を確信し、戦闘経験を得たことで軍の成長を評価した。
しかし、ハンドレッドのメンバーやオグマ、ワーレン、クロムはゼロス王としてマルスが自ら戦場に立つことを望んでおり、士気が高まった。マルスはその期待に応え、ファルーン軍の先頭に立って出陣した。フラウの『サンダージャッジメント』によってドルセン軍は大打撃を受け、士気を失った。キンブリーは五天位を率いてファルーン軍に立ち向かったが、マルスの圧倒的な力により、マテウスとダンテの両名は倒された。
ドルセン軍は総崩れとなり、戦意を失って退却を始めた。キンブリー将軍は殿で奮戦し、最後はオグマとの一騎打ちで戦死を遂げた。ファルーン軍は勝利を収めたが、戦場には多くの犠牲者が残された。
25.戦後
ドルセン軍が撤退した後、マルスはウォーウルフ部隊を指揮するキーリから報告を受けた。ウォーウルフたちは補給部隊を襲撃し、敵に大きな被害を与えていた。マルスはその成果を評価しつつも、過度な被害がもたらす影響を憂慮した。
一方、カドニアの第一王子と第二王子は敗戦を受けて逃亡を図っていた。彼らはドルセン軍に従軍していたが、戦況が不利になると真っ先に撤退した。山間部を通ってドルセン国へと逃げる途中、彼らは補給部隊の残骸を発見し、その場所がモンスターに襲われた現場であると理解した。
しかし、彼らもまたウォーウルフの襲撃に遭い、王子たちや側近たちは次々と捕らえられていった。ウォーウルフたちはその場に残された遺体をすぐに始末し、キーリと共に姿を消した。
キーリはウォーウルフの活躍に満足し、ゼロス王とフラウのためにさらなる努力を誓った。彼女の冷静さとモンスターとの連携は、ファルーン国にとって強力な武器となった。
ドルセン王は、戦争で1万の兵のうち7割を失う大敗を喫したことを知り、玉座から立ち上がって驚愕した。キンブリー将軍は殿を務めて戦死し、五天位のマテウスとダンテもゼロス王に討ち取られていた。カドニアの第一王子と第二王子は行方不明となっており、これに関しては、彼らが真っ先に逃げ出したという報告があったが、捜索する必要はないと判断された。
補給部隊がモンスターに襲われた件についても、調査は困難であり、ファルーンの仕業ではないかとの疑念が残った。ドルセン王は、ファルーンと和平を結び、賠償金を支払うことで抑え込む方針を決めた。これは格下の国に対する破格の条件であったが、ファルーンが脅威となったことを示していた。
一方で、五天位のカーミラがゼロス王を討つと提案したが、ドルセン王はこれを拒否した。カーミラは他の五天位とは異なり、恐れられる存在であり、彼女の力は確かであるものの、信頼に欠ける一面もあったため、王都の守護に留め置かれた。
最終的に、ドルセン王はカーミラに勝手な行動を慎むよう命じ、会議を解散した。カーミラはその場を後にし、依然として微笑を絶やさなかった。
EPILOGUE
ファルーン国はドルセンとの戦争に勝利し、国中が歓喜に沸いていた。ハンドレッドが強者揃いとはいえ、戦争に対する不安を抱く者も少なくなかったが、わずか2000の兵力で1万のドルセン軍を撃破し、犠牲者もほとんど出さなかったことで、歴史に残る大勝利となった。この勝利を祝して、国中はお祭り騒ぎとなり、ハンドレッドのメンバーたちも喜びを分かち合っていた。
王城では、マルスの前に新鮮なモンスターの生肉が積まれていた。オグマたちが魔獣の森の奥深くまで行き、強力なドラゴンを倒して持ち帰ったものであった。彼らは負傷していたが、マルスに新鮮なうちに食べてもらおうと回復を受けずに駆けつけたのだった。マルスは、彼らの期待に応えて生肉を口にしたが、強烈な毒性により意識を失いかけた。オグマたちはそんなマルスを称賛し、彼の命を狙っているのではと疑念を抱かせた。しかし、部下たちの無邪気な喜びに応えるべく、マルスは再び肉を口に運んだ。
外伝.1 とある国の王様
ファルーン国の王は、何事も無難に進むことを望んでいたが、王妃の一族が権力を握り過ぎたために新たな問題が生じた。王妃の一族の力が増す中で、宰相のガマラスが大貴族たちを取りまとめ、王に対して王妃の一族を排除するように迫った。国土の半分以上を支配するガマラスの要望を拒むことはできず、王は王妃の一族の排除を認めざるを得なかった。
ガマラスは速やかに王妃の一族を排除し、権力を掌握した。王妃の一族は処刑され、王妃も幽閉されて亡くなった。ガマラスは自らの娘リリアを王に嫁がせ、その子ニコルを次の王にしようとした。王はそれを受け入れ、ニコルを次代の王と定めた。
一方、王妃の子であるマルスは、毒や刺客から命を守り続け、ガマラスの策謀にも屈せず生き延びていた。ガマラスはマルスを亡き者にしようと、ハンドレッド討伐を命じ、王はその命令を受け入れた。マルスは危険な任務に赴くことになったが、王は心の中で息子に対し、王家のために命を捧げるよう詫びていた。
マルスがハンドレッド討伐の日を迎えた。ガマラスは念を入れてAランクの冒険者を雇い、万が一に備えたが、実際にハンドレッドを組織していたのはマルス自身であり、黒、赤、青の騎士団を従えて反乱を起こした。マルスはたったひとりで玉座の間に現れ、ガマラスが雇った冒険者パーティーを打ち倒す力を見せた。王は驚きつつも、マルスに王位を譲り、その後は王都を離れて離宮で暮らすこととなった。王は、王家に伝わる「肉を喰え」という口伝をマルスに教えていなかったが、特に必要なこととは思わなかった。
外伝.2 雷帝
フラウという少女は、幼少期から類まれな魔法の才能を持っていた。「雷よ」という言葉で魔法を発動させ、父ブラームスを驚かせた。彼女の才能は早熟と見られ、成長後に伸び悩むのではないかと心配された。6歳でオロチというモンスターを倒すなどの戦功を上げ、フラウの名声は広まったが、彼女の才能が限界に達しているという意見もあった。
8歳でマルス王子との婚約が決まり、14歳の時にはモンスターの肉を食べ続けることで魔力の成長を続けた。ある日、ファルーン国にドラゴンが現れたが、フラウは単独で討伐に向かい、雷系統の最強魔法「サンダージャッジメント」を用いてドラゴンを倒した。これにより、彼女は「雷帝」と称されるようになった。このドラゴンは、かつてマルスが殺した雄ドラゴンのつがいであったが、マルスはそれを知らずに無関心であった。フラウは、知らぬ間に婚約者の尻拭いをした形となったが、このことはフラウ以外には知られていない。
ガマラス派閥の貴族たちの軍勢が、マルスの殺害計画を遂行するために王都近郊に集結していた。彼らは王の命を受けたマルスに対して反逆を企て、5000を超える兵力で王城を目指して進軍していた。王よりも貴族たちの力が強いファルーン国では、貴族たちの軍勢は王直属の軍を上回っていた。
その時、フラウは魔導士団を指揮し、魔導士団を掌握していた。フラウは魔導士団を自らのものと宣言し、反対する者には圧倒的な魔力で従わせた。フラウの力に畏敬の念を抱く若い魔導士たちは彼女に従ったが、年長の魔導士たちは一度は反抗した。しかし、フラウの強大な力によって彼らは屈服し、もはや逆らう者はいなかった。
貴族たちの軍勢が進軍を開始すると、フラウは空中から攻撃を仕掛け、禁忌の闇の魔法を駆使して敵を撃滅し始めた。貴族たちの軍勢は恐怖と混乱に陥り、死者たちが蘇って生者を襲う様子に、兵士たちは絶望に包まれた。フラウは精神魔法を使って、生き残った兵士たちをも操り、同士討ちを引き起こした。
貴族たちの軍勢は降伏を余儀なくされ、フラウの配下の魔導士たちは彼女に降伏の機会を与えるよう説得した。フラウは最終的に降伏を受け入れ、貴族たちの軍勢はこの地獄から逃れた。
同時に、王城ではマルスがAランクの冒険者パーティーを倒し、戦いは終結した。フラウはマルスに「倒した」と報告し、彼からの礼を受けたことに内心喜びを感じていた。彼女はその才能故に称賛されることはあったが、直接的に感謝されることはなく、触れられることも少なかったため、新鮮な感覚を覚えていた。
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