どんな本?
『魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~』は、甘岸久弥 氏による ライトノベルで、転生者である主人公ダリヤ・ロセッティが主人公。
ダリヤは魔石や魔物の素材、魔力を使った加工でアイテムを作る『魔導具師』の家に生まれ、婚約破棄されたことをきっかけに自身の商会を立ち上げ、数々の便利なアイテムを生み出して行く。
また、このシリーズはコミカライズもされており、『魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~』というタイトルで連載されている。
さらに、TVアニメ化も決定。
この物語は、ダリヤのものづくりと、彼女を取り巻く人々との交流を描いている。
読んだ本のタイトル
#魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 8
(英語名:Dahlia in Bloom: Crafting a Fresh Start with Magical Tools)
著者:甘岸久弥 氏
イラスト:景 氏
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あらすじ・内容
スライム製品に補助魔導具――ダリヤの開発で騎士の背中を守る!
遠征訓練へ同行するなど、魔物討伐部隊との関係を強固にしていく女性魔導具師のダリヤ。
魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 8
彼女は魔物討伐部隊員から、ヴォルフのアンダーシャツに『背縫い』をしてやってほしいと頼まれる。『背縫い』とは、戦いに赴く者の無事を願い、その者の衣服の背に施す縫い取りのことだった。
彼らの頼みを引き受けたダリヤは、シャツへ縫い取りのみならず、スライムを使ったとある付与ができないかを試すのだが――。
「ロセッティの『商会紋』になりそうだ。このシャツも、防具に使えるかも……」
思わぬかたちで、ダリヤは『商会紋』とともに新たな開発品を生みだしてしまう。さらに各界の重鎮をも巻き込み行われた新製品の実験の場で、魔物討伐部隊を引退した侯爵家元当主の義足の不調に遭遇したダリヤは、その改良を試みることにもなり――!?
魔導具師ダリヤのものづくりストーリー、挑戦と前進の第八弾、開幕!
アニメ化
前巻からのあらすじ
恐るべし!堕落座卓!冬に亀を増産させている!!
そしてダリアの工房と家具職人達は更なるビックウェーブに乗って行く。
ヴォルフとの魔剣造りも一波乱があった。
2本のナイフの間にワイヤーを付けて投擲する魔法武器を作って実戦で使用しようとしたら、後輩の風の魔法を使える騎士に貸したら、、
巨大な鳥の魔獣をアッサリと討伐してしまう。
そしたら後輩が魔剣を気に入ってしまい譲ってほしいと、貴族の家から正式に申し込みが来たせいでヴォルフとダリアが魔剣を作っていた事がバレてしまう。
そして、伯爵家の中に魔剣造りをする部門を正式に立ち上げる事になる。
感想
魔獣討伐隊が遠征訓練で近隣の森に行く。
それに同行するダリヤと護衛のマルチェラ。
そして、ヨナス。
そして遠征訓練はダリヤが開発した遠征コンロのおかげで、キャンプBBQとなってしまった。
今回の獲物はカニ、、
それを嬉々と狩った鎧蟹バラして食べる騎士達。
その中に紛れて魔物の部位を見たがるダリヤ。
そんな騎士達を遠目に見る元副隊長だったベルニージは騎士達が弛んでいると批判していた。
でも、その根底には彼等に誰も死んでほしくないという願望が透けて見える。
自身が片足を失ってまで亡くしてしまった部下。
結婚の話を抉られせて喧嘩してしまった息子の事を思い出しながら。。
そんなベルニージにヨナス先生がマルチェラを紹介する。
息子が結婚すると言っていた娘と同じ名前のマルチェラを、、
そして、ベルニージは亡くした息子の面影を残し息子が愛した女性の名前を持つ青年と出会う。
挨拶したマルチェラは大貴族との話にカチコチになりながらも話をする。
そして、彼に今度双子の息子か娘が産まれるとヨナスが教えベルニージに「名書」を依頼する。
名書とは一族の年長者が白紙に名を書き、赤子にその紙を触れさせる儀式。
より長く生きて欲しいと願掛けとなるらしい。
ダリアが懸命に助けたマルチェラとイルマの子達の誕生を待ち望む人がまた増えた。
しかもそれが魔物討伐隊の元副隊長で侯爵家の元当主だったのが、、
そのベルニージの義足が目の前で壊れたのをキッカケにダリヤが義足を魔道具に魔改造。
蒼く輝く魔導義足が爆誕。
最近は元気が全く無くなり本格的に引退するのかと思われていたベルニージが、現役復帰しそうなほど活き活きとして来たのが凄く良い。
孫のマルチェラとの暗黙の了解の中での会話も泣かせる。
そんなベルニージがスカルファロット家の魔剣の部門の後見人にもなってくれて、ダリヤの方も徐々に立場を強化していく。
あと、ダリヤの魔導具の工作は衝撃吸収パットとリラックス用のクッションが、、
それを研究するために貴族達が大集合。
ダリヤ、ルチアの言う事を聞いて魔力を流しまくる貴族達が、、
それを見て胃の辺りを摩るイヴァーノが気の毒w
その研究の果てに出来たクッションが、堕落卓とセットにして堕落シリーズとか言われてたら面白そう。
でも、スライムがさらに狩られるのか、、
ダリヤはいよいよスライム除けの何かを開発しないといけないかもしれない。
あとはダリヤがヴォルフのアンダーシャツに背縫いする話なんだが、、
その発端が遠征用コンロに名前を入れる騒動だというのが、、
それをデザインしていたら、商会の看板も決まってしまう。
番外編の話は、、そうかダリアの母親はそういうワケで家族から離れてしまったのか。
しかももう亡くなっている。
そして、メイドさんは父親と子育てをしてくれてしかも先輩になってるのが良かった。
早く亡くなってしまったのが悔やまれる。
いい父親だよ本当に、、
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
魔導具師ダリヤはうつむかない
王立高等学院編
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
銀蛍とペーパーナイフ
ダリヤ・ロセッティは現世で魔導具師として働いており、銀蛍の鱗粉を使用して魔道具を作成する様子が描かれている。
彼女は前世の記憶を持つ転生者で、比較的地味な外見の庶民だが、ヴォルフレード・スカルファロットという伯爵家出身の魔物討伐部隊員と親しい友人関係にある。
二人は魔法を使って銀蛍の鱗粉をペーパーナイフに付与し、その光る効果を試している。彼らはまた、将来的に銀蛍を見に行く計画も立てている。
ヴォルフはダリヤの魔導具作成の助けを求める一方で、彼自身も女性に追われるなどの複雑な人間関係を抱えている。
二人はお互いを支え合う良好な関係を築いており、明日の遠征訓練に向けてお互いを励ましあっている。
遠征訓練と鎧蟹
翌朝、快晴の下、ダリヤは男装で遠征に参加する準備をしていた。
彼女は声渡りという変声効果のあるチョーカーをつけ、男っぽい声にしていた。
これは、魔物が弱そうな者を狙う性質を考慮し、遠征中に迷惑をかけないための措置だった。
彼女の装いにはヴォルフが感動しており、同僚たちもその変装を評価していた。
ダリヤの隣では、マルチェラとヨナスが同行しており、遠征にはスカルファロット武具工房長としてのヨナスも参加していた。
ヨナスは、グッドウィン子爵家との関係が希薄で、実家との縁を断っていた。
彼は炎龍の魔付きで、腕には赤いウロコが見えるが、魔法も使えるようになっていた。
遠征は水場の点検として始まり、ダリヤは父カルロが開発した魔導具を使って、隊員たちに携帯温風器の装着を指導していた。
この携帯温風器は、隊員たちに快適な温もりを提供し、その効果に隊員たちは感謝していた。
一方、ヨナスは自分に合った温風器の設定を見つけ、快適に使用していた。
隊員たちの中には、装備の臭いや汗の問題を指摘する声もあり、ダリヤはそれに対して消臭剤の提供を約束するなど、適切な対応を示していた。
遠征は和やかな雰囲気の中で進行し、最終的には大きな銀の鍋で鎧蟹を調理する予定で、隊員たちはそれを楽しみにしていた。
馬車で守られる中、一行は山際の岩場に向かった。
ダリヤは初心者用の鞍に乗り、壮年の騎士に馬を引いてもらっていた。
隊の速度についていけないため、馬に乗せてもらったことが彼女にとっては幸運だった。
マルチェラはダリヤの護衛を務めるが、移動列には参加せず川原で手伝い、代わりにヨナスがダリヤの護衛を担当した。
一行が到着した岩場は、緑が少なく大小の岩が散在する場所だったが、鎧蟹の姿は見えなかった。
鎧蟹は戦闘時に赤くなるため、赤鎧のグリゼルダとランドルフが先陣を切り、鎧蟹を誘い出した。
鎧蟹は自分より大きなものには戦わず隠れる習性があるため、二人が前に出ることで大きな個体が現れる可能性が高まる。
大きな鎧蟹が現れ、瞬く間にヴォルフが鎧蟹を倒した。
その際、グラート隊長の説明によれば、赤鎧を着用することで鎧蟹が敵と認識し、戦いを挑んでくるという。
倒された鎧蟹は食材として重宝され、その管理には注意が払われている。
戦いが終わると、グラート隊長は灰手と呼ばれる特別な魔剣を使用し、鎧蟹を迅速に調理した。
ヴォルフが仕留めた鎧蟹は、青い変異種であり、その毒性を確認するためドリノが毒味役を務めることになった。
彼は毒消しの指輪を装着し、エラルド神官が万が一の場合に備えて治癒魔法を準備した。
この遠征では、変異種の鎧蟹が発見され、その珍しさから食通達に高く評価されることになったが、青い蟹にとっては人間に狙われることが増えただけで迷惑であった。
一方で、毒味が成功し、ドリノに異常がないことが確認されたため、解体準備が進められた。
また、隊員たちがダリヤの男装姿について話している間に、新たな青い鎧蟹が現れ、解体作業が必要になった。
その場にいたヴォルフが、青い鎧蟹を持ち上げて解体を始めることを提案し、他の隊員たちはその提案に従う形となった。
川原に戻ると、二ヶ所に大きな焚き火がおこされ、防水布が敷かれていた。
蒸し蟹を準備するための大鍋が設置され、魔導師たちが鍋を炎で囲む強火魔法を用いて加熱した。
その強烈な熱にダリヤは驚くが、魔導師たちは魔法の効率の良さを解説した。
また、魔導師たちは砂漠のような特定の場所では魔法の使用が限定されると説明し、その理由についても触れた。
さらに、ヴォルフは氷魔法を使い、即座に氷を生成する様子を示した。
これによって、蟹の鮮度を保つための氷が提供された。
一方で、火魔法の制御には高い技術が要求されることが強調された。
その後、蟹が調理され、ダリヤと隊員たちは食事を楽しんだ。
特に、グラートが魔剣で焼いて蒸した蟹は、その美味しさで隊員たちから高評価を得た。
ダリヤは蒸し蟹の味わい深さを実感し、新鮮な蟹の食感と味に驚かされた。
また、ダリヤとヨナスの間で「先生」という敬称を使うことに関する会話が交わされ、お互いに敬意を表すやりとりがなされた。
ヨナスはダリヤを「ダリヤ先生」と呼ぶことを提案し、ダリヤはそれを受け入れる姿勢を示した。
このやりとりから、お互いに尊敬と敬意を持って接している様子が伝わる。
魔導師たちは火魔法を用いて大鍋を加熱し、蟹とバターを使って豪快に料理をしていた。
焼かれた蟹の上にバターが乗せられ、遠征中の食事である腹持ちを良くするためにバターやチーズが加えられることがあるという。
また、遠征の食事としては黒パンにオリーブオイルをしみ込ませたり、カロリーアップのために様々な工夫がされていることが語られた。
焼き蟹とバターの香りが漂い、その匂いが食欲をそそった。
食事の際には、蟹の美味しさが特に強調され、蟹を焼いてバターで味を整える工夫がされていた。
周囲の者たちもこの豪快な料理を楽しみ、蟹の焦げ目がつく様子に興味津々であった。
その後、周囲の者たちが遠征用コンロの浅鍋に蟹を置き、魔導師が火を使って蟹を調理する様子が続いた。
バターで炒めるのではなく、上に置くことで蟹が乾燥しないようにする工夫が見られた。
この料理方法は、遠征中の食事で重要なカロリーアップと、料理の美味しさを保つための技術であることが強調された。
食事が進む中で、遠征時の食事に関するエピソードや、蟹を使った様々な料理法についての話が交わされた。
これらの会話から、遠征中の食事がどれほど工夫されているかが窺えた。
隊員たちの声が川の流れを越えて高く聞こえる中、グラートはあぶり蟹と柑橘系の香りの白ワインを楽しんでいた。
そのとき、東ノ国の味噌を使った蟹スープが運ばれてきたが、どちらがワインに合うかはっきりしなかった。
グラートは老人のベルニージに東酒を勧めたが、老人は好物の蒸し蟹とあぶり蟹にほとんど手を付けず、わずかにワインを飲んだだけだった。
老人の食欲がないことにグラートは心配したが、ベルニージは体調が悪くないと断った。
以前、ベルニージが食欲不振で休んでいる日が増えているという情報があり、グラートは遠征訓練の指導という名目で彼を招待した。
隊員たちとの会話の中で、ベルニージは隊の訓練が緩みすぎていると指摘し、その厳しい目が隊員たちを圧倒した。
しかし、ベルニージは隊員たちを酒で鼓舞するべきだと言い残し、自らは馬車で休むことを選んだ。
ベルニージの護衛騎士は、彼が心配しているのは隊員たちが無事であることだと説明し、彼の子供が魔物討伐部隊員として亡くなったことが影響していることを明かした。
この告白により、隊員たちは再び和やかな雰囲気に戻り、酒を楽しむことになった。
グラート自身も、ベルニージの息子を思い出しながら酒を飲んだ。
ダリヤは追加された遠出専用の馬車に一人で入ることを選び、そこで休息をとった。
馬車はスカルファロット家が所有するもので、内鍵もかかるため安心して使うことができる。
近くにはグラートの来客であるベルニージがおり、馬車に上がろうとするも足元がずれてバランスを崩し、ダリヤが支えようとするが、すでにベルニージは自力で扉を掴んでいた。
ベルニージは、かつての魔物討伐部隊員で、今は老体に疲れを感じていると自己紹介した。
ダリヤはベルニージに馬車の扉を開ける間支援を行い、その間に寒さから彼を守るために毛布と携帯温風器を提供した。
ベルニージは過去の厳しい訓練を振り返りつつ、現在の魔物討伐部隊が魔導具に頼りすぎていると感じており、緊張感の欠如を危惧している。
しかし、ダリヤは魔導具の利用が隊員の生存率を高めると主張し、ベルニージとの間で議論が交わされた。
最終的にベルニージは自身の考えに固執していることを認め、若い世代に対する理解を示すことで話は収束した。
また、ベルニージはダリヤの立場を誤解していたが、真実を知り、ロセッティ商会の取り組みに感謝の意を表した。
空蝙蝠に関する議論が進んでいたが、その肉が食用に適しているかどうかは明確でなかった。
空蝙蝠の肉は食べられるが、非常に渋く、苦味が強いため食べるのはお勧めできないとされる。
しかし、皮膚や髪には良い効果があるとも言われており、美容目的で食べる貴人もいるが、その味は非常に苦く、続けるのは困難である。
この話は隊員たちの間で、ユーモラスなやり取りにつながり、最終的には空蝙蝠の肉を防具に塗布することで、魔物が噛みつくのを防ぐアイデアに落ち着いた。
馬車の中で、ベルニージとグラートは昔話に花を咲かせる。特に、遠征先での苦労話や隊員の死にまつわる悲痛な記憶を語り合う。
グラートは、現在の魔物討伐部隊長として、部隊の大きな変化を誇りに思っており、その成果をベルニージに報告する。
予算の増加や設備の改善、優れた隊員の育成など、部隊の質が向上していることを喜ぶ。
ベルニージは、自分の副隊長時代の未練や苦労を吐露しながら、グラートの話に耳を傾ける。
二人は、隊の将来とその発展を祝いながら、昔の苦労と現在の成功を対比させている。
宴を終えて川原を元に戻し、王城へ戻った一行は、健康チェックを受けた。
ダリヤは女性の神官によって迅速にチェックを受け、その後客室で紅茶を飲みながらマルチェラとヨナスを待っていた。
マルチェラには氷で固めた鎧蟹を運ぶ手伝いを依頼し、その間ダリヤはヴォルフと共に帰路につくことになった。
また、ヴォルフは打ち上げへの参加を提案したが、ダリヤは疲れを理由に断った。
最終的に、二人は軽食をとるために食堂兼酒場へ向かった。
隊員四十人程度が三階建ての古めかしい店に移動した。
三階でテーブルごとに分かれて座り、魔導ランプの下で私服姿の隊員たちが新鮮に映った。
グリゼルダが乾杯の音頭をとり、果実水と炭酸水で乾杯が行われた。
ドリノはグラスを滑らせ顔に果実水を跳ねさせた。その後、ヴォルフは「初恋のハンカチ」の話題で気まずくなったが、隊員たちからの理解を得た。
ダリヤは学院時代に父親に刺繍したハンカチを贈ったと話し、他の隊員も縫い手の話を共有した。
最後に、ヴォルフは隊員から安全を祈る「背縫い」を頼まれ、快く受け入れた。
隊員たちはリラックスした雰囲気の中、プライベートな話や飲み比べを楽しんだ。
隊員たちがにぎわう中、年配の騎士二人が温かなチキンスープを銀のカップで飲んでいた。
彼らはアルコールを避け、体調を考慮している様子だった。
ある騎士が、ヴォルフに「背縫い」を施そうと思っていたが、その意向はなさそうだと話している。
「背縫い」は昔からある習慣で、特に親しい人間が行うものであり、大切な者の無事を祈る行為である。
この行為は家族や親しい親戚、また恋人などによく行われる。
それがすべてのアンダーシャツに適用されることは、「あなたを独り占めしたい」という意味にも取れるが、ダリヤにはそのような意図はないだろう。
ヴォルフは友人から酒を受け取り、一気に飲んでいる。
彼は「黒の死神」「魔王」という二つ名を持ち、戦いでは冷静かつ勇猛であるが、その場では少年のような表情で頬を赤らめていた。
幕間 鎧蟹のお届けと名書き
ベルニージは従者からの報告に困惑しつつも、スカルファロット家から鎧蟹を受け取ることにした。鎧蟹は彼の好物であり、この日はそれを理由に遠征訓練を視察し、満足して帰宅していた。しかし、スカルファロット家との派閥の違いや、夜間の訪問には警戒していた。
彼は護衛を連れて屋敷外へ出た。
馬車の中では、ヨナスと名乗る男が待っており、運んできた鎧蟹の部位を選んでもらうことを提案した。
ヨナスは遠慮がちに人払いを求め、ベルニージは単独で馬車に入った。
中には、ロセッティ商会長の隣にいた男がおり、鎧蟹の二番脚と青い変異種の三番脚を提示した。
また、合うワインも用意されていた。
ベルニージはワインを楽しみ、マルチェラに返杯を求めた。
ヨナスは彼らが「ご家族に乾杯」することを提案し、ベルニージはそれに応じた。
ヨナスはまた、子が生まれた際にベルニージに名前の書き初めを依頼した。
ベルニージは快くそれを受け入れ、妻と共に書くことを申し出た。マルチェラは深く感謝の意を表した。
ベルニージは、孫に会えた喜びと、一族が続いていることに満足感を覚えながら、その場を後にした。
ヨナスが鎧蟹を運ばせるためにマルチェラを馬車から出した後、ベルニージとヨナスは話し合いを続けた。
ヨナスはベルニージに、今後の「名書き」のために死ぬわけにはいかなくなったと語り、ベルニージはそれに笑顔で応じた。
ヨナスは、以前探していた女性「マルチェラ」がもはやこの世にいないこと、それ以上の捜索を控えるよう告げた。
ヨナスの真意を理解したベルニージは、彼の誘いに応じ、スカルファロット家の武具開発部門の一員としての協力を約束した。
また、ヨナスは将来、グイード・スカルファロットが侯爵となる日に、ベルニージが彼に先に挨拶をすることを提案し、ベルニージはこれを受け入れた。
この交渉により、ベルニージとスカルファロット家との間で新たな関係が築かれることとなった。
ベルニージはスカルファロット家の別邸に呼ばれることを約束し、馬車を出た後、マルチェラからの一礼を受け、深くうなずき返した。
屋敷に向かいながら、ついため息がこぼれる。
孫が生きていることの喜びを感じつつ、その存在だけで満足できない自身の欲深さに苦笑いする。
ベルニージは、グイード・スカルファロットとの繋がりやロセッティ商会とのつながり、遠征の件など、今後の計画が多岐にわたるため、気が急く。
彼はスカルファロット家の別邸への準備を考え、孫と曾孫の教育計画を練ることも心に留めている。
また、悪筆を改善するために書き取りの練習を始める決意を固めた。
背縫いと商会紋
昨夜、魔物討伐部隊の打ち上げがあり、ヴォルフは酔わずにダリヤを緑の塔まで送り届けた。
打ち上げではランドルフが酔いつぶれ、ドリノと先輩騎士たちが彼を兵舎まで運ぶことになった。
ヴォルフは身体強化の効果を感じていたようだ。
ダリヤは帰宅後、ヴォルフから「背縫い、楽しみにしてる」と小さな声で言われ、彼女はその言葉を気にかけていた。
その夜、酒の酔いを覚ますために、背縫いの案を考え、彼のアンダーシャツに刺繍をする計画を練った。
しかし、実際の刺繍を試みると、意図せず大きな刺繍になってしまったため、試作品として扱うことにした。
その後、ダリヤは耐久性を高めるためにシャツに特別な加工を試みた。
王蛇の抜け殻の粉とイエロースライムの粉を用いて、シャツに魔力を注入することにした。
意図せず魔力が多く入り、シャツに均一に魔力が付与されたことに驚いた。
確認すると、シャツは防水効果は低いが、特殊な触り心地の素材に変わっていた。
魔物討伐部隊のための防水布としては不向きだが、実験は成功した。
ダリヤは疲れて眠り、翌朝はこれらの結果に改めて向き合うことにした。
シャワーを浴びた後、昼近くに起きたダリヤは、ヴォルフが訪れることを知り、急いで準備を整えた。
ヴォルフが到着する前に、黒いシャツが自立しているのを見て驚き、ヴォルフを迎え入れた。
ヴォルフは不自然に立っているシャツを見て、短剣を抜いたが、単なる誤解だったことがわかり、ダリヤは安堵した。
その後、ヴォルフはシャツの耐久性を評価し、防具に利用できるかもしれないと提案した。
二人はその日、クレープを作りながら過ごし、ダリヤはヴォルフのシャツに背縫いを施す予定だった。
ヴォルフが訪れる間近で、ダリヤは熱心にシャツに背縫いをしていた。
その背縫いは彼女の特徴を強調するもので、ヴォルフによると、それを着れば彼も彼女の作った魔導具の一部になれるかもしれないと冗談を言った。
しかし、ダリヤはそのシャツが商会紋に見えるのは避けたいと考え、彼女の名前を入れることに決めた。
彼女は名前を同色の糸で刺繍し、見た目が目立たないようにした。ヴォルフはそれを理解し、ダリヤの技術を称賛した。
最終的に、ヴォルフはダリヤが作ったシャツに満足し、彼女に何か欲しいものがあれば遠慮なく言うようにと申し出たが、ダリヤは彼が無事に帰ってくることだけを願っていた。
彼女はクレープでその日を楽しみ、二人はクレープを食べながら、互いの会社を楽しんだ。
ドリノが更衣室でヴォルフに背縫い用のシャツをダリヤに渡したか尋ねた。
ヴォルフは渡した上で、すでに一枚は縫ってもらったと答えた。
そのアンダーシャツには赤い花を背にした黒い犬の刺繍があり、それがロセッティ商会の『商会紋』であることをヴォルフは笑顔で明かした。
周囲の隊員はその発言に静まり返り、複雑な反応を示したが、誰もそれを批判することはなかった。
対照的に、ヴォルフはダリヤが縫ってくれたことに深く感謝し、喜んでいた。
イヴァーノがスカルファロット家の別邸でグイードにロセッティ商会の新たな商会紋を提示した。
これはヴォルフの「背縫い」という刺繍を元にしており、赤い花を背にした黒い犬の図案である。
二人は商会紋について話し合ったが、ヴォルフが魔物討伐部隊を離れることはないと確信している。
ヴォルフが商会紋を気に入っており、商会の一員としての役割も担っていることが強調された。
また、ヴォルフがこの商会紋を背縫いの素材として鎧の裏に使用したいと提案していることが語られた。
この会話は、ダリヤには未知の話題であり、彼女がこの情報を知った場合の反応は不明である。
商会紋のお披露目と新商品開発
グイードがスカルファロット家の別邸で開催された会議で発言した。
この会議には、様々なギルドのトップや魔物討伐部隊の元副隊長ベルニージ・ドラーツィ前侯爵も出席していた。
ダリヤは、緊張感のある会議で肩の力が抜けない様子だった。
ヴォルフは大猪の討伐のために不在だが、彼の留守中に商会紋を含む議題が話し合われた。
会議では、ロセッティ商会の商会紋とイエロースライムを使用した新素材についての詳細が議論された。
この新素材は衝撃吸収に有用であり、様々な用途での使用が検討されている。
ダリヤは素材の説明とデモンストレーションを担当し、参加者からの質問や提案に答えた。
具体的には、馬車のクッションや鎧の裏地、医療用パッドとしての利用が提案された。
また、この会議はロセッティ商会とスカルファロット家武具開発部門との挨拶も兼ねており、今後の具体的なビジネス関連の打ち合わせに移行する準備が整えられた。
各参加者が新素材に対して積極的な興味を示し、その応用可能性について活発に話し合った。
イヴァーノは、スカルファロット家の別邸で開催された会議に参加していた。
この会議は、ロセッティ商会と他のギルドとの連携について話し合うためのものであり、イエロースライムから作られた新製品の商機について討論された。
商業ギルド長のジェッダ子爵、冒険者ギルドの副ギルド長アウグスト子爵、服飾ギルド長のフォルト子爵などが参加し、各ギルドからの意見や要望が出された。
新製品の衝撃吸収能力が高評価され、特に防具や家具、寝具としての使用が提案された。
会議では、イヴァーノが中心となって各ギルドの協力を調整する役割を任されることとなり、彼はこの新たな責任に戸惑いながらも、ギルド間の調整を進めることを受け入れた。
彼の庶民出身という背景と、商会としての地位を考え合わせると、この新たな役割は彼にとって大きな挑戦である。
しかし、彼を支持する声も多く、彼がこの役割を果たすことで、ロセッティ商会や関連ギルドの間での協力がスムーズに進むことが期待されている。
ヨナスに案内されたスカルファロット家の魔導具制作工房は、武具工房との兼用形態であり、豪華な設備が整っていた。
ダリヤはこの工房に何度か来ており、新しい実験に興奮している様子である。
イエロースライムを用いた布の耐久性を向上させる実験が行われ、その実験結果が他の参加者に共有された。
刃物が刺さりにくい特性についても話が進められ、防具への応用が検討されている。
さらに、三級以下のイエロースライムの粉末は耐久性が低いことが確認され、耐久性の向上方法について議論が行われた。
マルチェラはダリヤの助手として活動し、魔法や魔導具の知識を深めたいと考えている。
工房内では自由な意見交換が推奨され、ベルニージは自らの経験に基づいて付与の技術を指導した。
イエロースライムの布の実験結果については、耐久性が多少向上する程度であり、クッション状にすることで衝撃を減少させることが可能である。
しかし、具体的な計測データは得られていないため、生卵を用いた実験などで性能を確認している。
ダリヤが客室に飛び込み、緊急の協力を求めたことで、ロセッティ商会長としての彼女に対して、各ギルドの代表たちが全力で応じる姿勢を示した。
彼女はスライムへの魔法付与を依頼し、その不思議な要求に当初は皆が戸惑ったが、イヴァーノ以外は頭を抱える始末であった。
魔法付与の経験がある者もいれば、戸惑う者もおり、新素材への関心や実験のための協力が提案された。
ダリヤの提案により、スライム養殖場の増築まで検討されることになった。
会場には緊張感が満ち、未知の実験への期待が高まった。
魔法の付与がわからない者には、ベルニージとレオーネが教師役となり、それぞれの得意分野に基づいた指導が行われた。
実験は一様にうまくいかず、多くの失敗があったが、最終的には各種スライムへの魔法付与が成功し、新たな素材が生み出された。
特に注目されたのは、火魔法で作られた赤茶色の極小粒で、その触感は土魔法で作られたものと同様であった。
また、イデアが水魔法を用いて作り出した薄いグリーンの小石も、今後の研究対象とされた。
全体を通して、未知の実験への熱意と、新素材への期待感が高まった一幕であった。
工房に戻ったダリヤが深く一礼し、イヴァーノとヨナスも続いた。イデアとイヴァーノが実験結果をまとめ、参加者全員に配布することを決めた。製品化までには耐久性チェックや時間経過の確認などが必要であるため、製品に近いものを試作し、安全性などの確認作業が進行中である。スライムに関する文献が少ないため、商品化に向けては各ギルドやスカルファロット家の魔導師・錬金術師・鍛冶師の協力が必要とされた。
ダリヤは商品開発を進める中で、利益契約書を作成し、全員の署名を得ることになったが、その提案が誤解を招きかけた。
しかし、利益配分の割合を具体的に説明することで、イヴァーノが状況を整理した。
参加者は利益契約書に署名することに同意し、製品名の決定にも協力的だった。
製品名は直接的で理解しやすいものが選ばれ、「軽度防護布」や「衝撃吸収材」などが命名された。
最終的には、商品化に向けた具体的なステップが設定され、レオーネやフォルトなどからも支持された。
商業ギルドに利益契約書で登録された場合、開発者の利益が保護されるが、外国への秘密輸出や特定顧客への卸売りなどには対応できないという制限があることも説明された。
ダリヤは製品開発を続けることを約束し、将来的にはさらなる協力を求める可能性が示された。
猪鍋と柚子酒
緑の塔に訪れたヴォルフは、新しくできたクッションの極小の粒「砂丘泡」に包まれ、温熱座卓で全力でリラックスしていた。
このクッションはヴォルフに大いに気に入られ、彼はなかなか離れようとしなかった。
遠征から疲れて帰ってきたヴォルフは、ダリヤの温かいもてなしとクッションの心地よさに甘え、そのまま休息を楽しんだ。
ダリヤとヴォルフは、この新素材の名前について話し合い、「砂丘泡」という名前が決定した。
ヴォルフはこのクッションを非常に気に入り、家にも欲しいと述べ、疲れを癒やす時間を過ごした。
幕間 追い出しの雛
イヴァーノは商業ギルド長の執務室で、業務の引き継ぎが完了したことを報告し、手順書を添付して書類を提出した。
長年にわたりギルドで働いた経験を基に、書類整理の改善案も提案した。
これはダリヤと共に商会内で行っていた方法で、書類検索の効率化を図るものだった。
イヴァーノの提案はレオーネとガブリエラに受け入れられ、彼らはこの新しい方法を取り入れることを検討することにした。
イヴァーノはかつての恋人と共に王都へ移り住み、商業ギルドでの採用試験に合格し、長い間ギルドで働いた。
彼はガブリエラの指導のもと、商業ギルドでの業務を学び、経験を積んでいった。
その後、彼はダリヤ・ロセッティとの共同作業を経て、ロセッティ商会で副会長の地位を得る。
イヴァーノがギルドでの最後の日、レオーネは彼にギルド職員としてのさらなる道を提案したが、イヴァーノはこれを辞退し、ダリヤ・ロセッティとの仕事を続けることを選んだ。
レオーネとガブリエラはイヴァーノの決断を尊重し、彼の新しい章への門出を祝った。
彼らはイヴァーノに特別な魔導具を贈り、彼のこれからの安全と成功を願った。
学術的意見交換と魔導義足
ルチア、イデア、ダリヤはスカルファロット家の別邸の工房で、胸パッドの感触について議論していた。
彼女たちは、特殊な材料を用いた胸パッドの試作に取り組んでおり、その触感には個人差が大きいと感じていた。
結論として、オーダーメイドで一人一人に合った感触の胸パッドを作ることが望ましいと考えられた。
ルチアは服飾ギルドで状態固定の魔法をかけ、必要に応じて神殿契約を結び、守秘を保ちつつ、特定の個人に合わせた胸パッドを試作することを提案した。
この胸パッドは、医療的な必要性から、特に胸を失った人が違和感なく生活できるよう配慮されていた。
一方で、イデアは自身の身体的な特徴と社会的な反応について語り、胸が大きいことで生じる不便さや不適切な接触を避けるために、女性騎士用のサポーターを使用していることを明らかにした。
また、イデアは自分の防御策として、スライムの消化液を使用することも説明した。
最後に、ルチアはオーダーメイドの胸パッドの利点をさらに詳しく述べ、見た目の美しさや装飾用としての可能性も指摘した。
彼女たちは、個々のニーズに応じて胸パッドをカスタマイズする方向で一致していた。
部屋の外でヨナスは、護衛騎士と共に立っていた。
ベルニージが到着する前に休憩用の菓子と茶葉を準備したが、部屋の中で白熱した意見交換が行われているため、入室を控えることにした。
彼は炎龍の魔付きであり、部屋の中での話も明瞭に聞こえていたが、専門家による医療や学術的な議論には参加しないと決め、護衛騎士にその旨を伝えた。
ヨナスがブルースライムに氷魔法を付与した実験結果を紹介し、その使用感についてベルニージとダリヤたちが議論していた。
保冷剤としての使用可能性についても話し合われ、安全性や効果の持続時間の確認が必要であるとされた。
さらに、ブルースライムの素材が溶解力を失わず、安全に使用できることも確認された。
この研究が長期間にわたる可能性があることが示され、商品化には時間がかかることが明らかにされた。
ベルニージが従者に対し、用意された部屋で茶を飲むよう指示した。
従者はマルチェラにベルニージの世話を頼み、ベルニージは杖を使わずに歩き始めた。
新しい義足に慣れていないベルニージは歩行中に左右に大きく揺れたが、マルチェラがサポートした。
途中、ベルニージは義足と靴に魔力を流す実験を試み、均等に流れないために困難を感じていた。
さらに、マルチェラと土魔法についての話を交わし、共に笑い合った。
その後、ベルニージは階段を試みたが、階段で滑り、マルチェラが支えた。
その瞬間、ベルニージはマルチェラに謝罪し、マルチェラは自分の幸せを述べた。
ベルニージが新しい義足を試してから戻ってきたとき、ダリヤが書類作成中であった。
ベルニージは義足の性能に満足しており、廊下を二往復し、階段の上り下りをしたことを報告した。
彼はこの義足を「魔導義足」と名付け、これからも公に自慢するつもりであると述べ、ダリヤに対して深い敬意を示した。
その後、マルチェラがベルニージに対して騎士に戻ることを提案したが、ベルニージは膝の問題を理由にそれを断った。
その代わり、マルチェラは膝関節の対策として鶏の軟骨と皮のスープのレシピを提案した。このやり取りは、祖父と孫のような親しさを示している。
ベルニージは義足に慣れた後、自身が率いていた騎士たちを招き、鍛錬場で模造剣を用いた打ち合いを行った。
彼は義足を用いることで、驚くほどの動きを見せ、かつての速度や斬り込みを披露し、騎士たちを三度驚かせた。
打ち合いの後、彼は騎士たちに感謝を示し、義足が「魔導義足」であることを説明し、今後も訓練を続けたいと述べた。
その後、ベルニージは馬に乗って自由に動き、その姿から彼がかつて持っていた「魔物泣かせ」という二つ名の由来を感じさせた。
護衛騎士たちは彼の動きに刺激を受け、自分たちも訓練を強化することを誓った。
大盾と老騎士の復活
王城の鍛錬場で、大盾を持つ騎士、ランドルフが魔物討伐部隊の紋章が刻まれた大盾を用いて訓練を行っていた。
訓練は主に回避練習として行われ、騎士たちがランドルフの大盾に剣を当てるも左右に飛ばされる形式である。
時には騎士が大盾によって宙を飛ばされる場面も見られ、落下する騎士を他の騎士が受け止めることもあった。
訓練は厳しいものの、死人や重大な怪我人は出ていない。
ランドルフは試しに装備した衝撃吸収材を張った大盾を試用し、その効果を確認していた。一方、ダリヤは大盾の裏に衝撃吸収材を張る作業を行っているが、彼自身の試みで、戦闘用の革手袋に衝撃吸収材を付けた試みは成功しなかった。
訓練は剣と盾の打ち合いと、騎士たちの飛び込みで行われ、見事な連携プレーが展開されたが、ランドルフは大盾でそれらを巧みに弾き返す。
最終的にヴォルフが大盾に強くぶつかり、宙を舞ったが無事に着地し、再び攻めに転じる様子が描かれた。
この厳しいが実り多い訓練により、騎士たちは自身の技術向上に努め、互いに刺激を受けていた。
王城の馬場に現れた白髪白髭の老騎士、ベルニージは、青空色の義足をつけて堂々と歩き、多くの注目を集めた。
彼は護衛騎士一人を伴い、魔物討伐部隊棟に向かい、そこで訓練を見学し始める。
ベルニージの青空色の義足は、注目の的となり、その動きは老いを感じさせないほど若々しかった。
彼はグリゼルダとの会話で、自身の技術がまだ足りないと述べ、現場の訓練に参加することを決めた。
ベルニージは基礎訓練に参加し、隊員たちと共に鍛錬を楽しんだ。
彼の動きは全盛期に比べて遅くなっていたが、技術の巧みさは健在で、若い隊員たちにとって良い勉強になった。
訓練の後、グラートと会話し、ベルニージは新しい義足について語り、自分を「魔導義足」と称えた。
彼はこの義足を使って、春までに体を鍛え直し、グラートと真剣に打ち合いたいと望んでいる。
その後、ベルニージは隊員たちと再び訓練に参加し、活気に満ちた様子で訓練を楽しんだ。
彼の存在感と魔導義足によって、かつての部下たちとの再会も、訓練の場をより活気づけた。
幕間 剣の重さとペンの重さ
ベルニージは自宅で子供用の書き取り紙を使って書き方を学んでいる。
彼は長年書類や手紙を人に任せてきたが、曾孫の名前を書くために苦もなく練習している。
彼の妻メルセラが教師のように見守っている中、ベルニージは少しずつ字を書くスキルを向上させている。
彼の苦労を知るメルセラは、「百枚から字が変わり始める」と励まし、ベルニージはそれに応える決意を見せている。
この情景は、ベルニージが家族のために努力している様子を示している。
また、彼の生涯を通じた騎士としての経験や家族との結びつきも感じられる。
息子ベルナルディとの関係には複雑な感情があり、ベルナルディの選んだ人生に対する理解が進んでいなかったことがうかがえる。
ベルニージは息子との最後の会話を振り返りながら、今は剣も義足も重く感じているが、それでも彼は剣の練習を続けている。
これは彼の不断の努力と、剣を振ることで健康を保ち、外見を保つための方法としての意味もある。
時間が経過し、ベルニージは老いを感じつつも、魔物討伐部隊の遠征見学への招待を受ける。
現魔物討伐部隊長であるグラートからの招待に応じ、遠征に参加することを決めた。
その遠征での経験から、自身が立ち止まっていたことに気付き、残りの時間を前向きに生きることを決意する。
彼は自宅で妻メルセラと再び活動的な生活を目指す計画を立て、以前の活動を再開する。
特に、ベルニージは遠征から帰宅後、メルセラと共に家族のこと、特に孫と曾孫の将来を話し合う。
スカルファロット家のマルチェラという名を持つ男児について知り、彼の将来と家族を支援する方法を模索する。
二人は貴族としての役割を再び担う決意を新たにし、様々な社会活動に再参加する計画を練る。
ベルニージとメルセラは、それぞれが持つ社交的な役割を通じて、多くの人々との繋がりを強化し、その縁を通じてさまざまな支援を行う計画を立てている。
彼らは自分たちの経験と人脈を活かし、残りの時間を有意義に過ごすことを目指している。
若き八本脚馬の悩みと父の背中
商業ギルドからの帰り、ダリヤは通常と異なる馬車を見つける。
今回の馬車は金属扉の箱馬車で、牧場にいる馬の代わりに八本脚馬が用意されていた。
これは冬向けに暖房が可能なもので、副会長の配慮によるものである。
ダリヤはこの馬車を引く八本脚馬が以前にも使われたことがある馬であることに気づく。
八本脚馬は「十二番」と番号で呼ばれることが多いとメーナが説明する。
イヴァーノとマルチェラが到着し、新しい馬車と八本脚馬について話を交わす。
その中で、イヴァーノがポケットからグリーンスライムの加工品を取り出し、八本脚馬がこれを食べてしまう。
メーナは八本脚馬が様々なものを食べることができると説明し、ダリヤはこの食事のシーンに困惑する。
結果的に、八本脚馬はグリーンスライムの加工品を問題なく消化し、獣医によって健康であると診断される。
この経験から、八本脚馬が魔力を摂取することで食事の必要が少なくなる可能性があることが明らかになる。
ダリヤとヴォルフはこの事実に基づいて今後の計画を立てることになる。
スカルファロット家の武具開発部門が拡張されたことで、ヴォルフとイヴァーノは屋敷を訪れる。
彼らが到着したとき、グイードとヨナスも部屋の視察をしていた。
イヴァーノはグイードに秘密の話があると伝え、盗聴防止の措置を取りつつ、更に安全な場所へと移動する。
ヴォルフは八本脚馬が魔法付与されたグリーンスライムを食べたことと、その後の状況を説明し、これが汎用化されれば飼料として隊の遠征に役立つ可能性があると述べる。
グイードはこの新しい発見がもたらす影響を深く検討し、八本脚馬の育成や飼料の問題、さらには軍事利用の可能性までを考察する。
彼はヴォルフにより高い視点から物事を考えるよう求め、状況が悪化する前に問題を把握して対処することの重要性を説く。
イヴァーノとグイードはさらに具体的な対策を検討し、八本脚馬の餌が量産できるようになった場合の影響と対策を話し合う。
最終的に、グイードはヴォルフにロセッティとの関係を保護する方法として、ダリヤとの結婚や養子縁組などの選択肢を提示する。
ヴォルフはダリヤの自由と安全を最優先に考え、彼女に無理な制約を課すことなく支援する方法を模索する。
イヴァーノはカルロ・ロセッティの話を引き合いに出し、彼の影響が今もダリヤに及んでいることを語る。
グイードはイヴァーノの提案を受け入れ、問題の解決に向けてさらに努力することを決意する。
茹で蕪と青年の逃走と迷走
ヴォルフが夕方、緑の塔に到着すると、ダリヤは夕食を準備して待っていた。
会話が難しいと感じているヴォルフを前に、ダリヤは食事を優先し、その後で話すことを提案する。
彼女は大きな蕪を煮てバターと塩で味付けし、味の変化として鶏挽肉の味噌ダレも用意した。
食事中、二人は蕪の美味しさに感動しつつ、ヴォルフはダリヤに兄との話を切り出す。
この話には八本脚馬の飼料問題や軍事利用の可能性など、予想外の重い内容が含まれていた。
ダリヤはヴォルフとの会話を通じて、自身の開発が政治的な問題に発展することに気づくが、ヴォルフは彼女が自由に魔導具を開発し続けることを支持し、必要な保護を提供することを約束する。
二人は静かに酒を飲み、ダリヤは支えられていることに感謝しつつ、自分の役割と責任を考え直す決意を新たにする。
ヴォルフがダリヤに提案した内容は、彼の兄であるグイードが侯爵になるにあたり、ダリヤを彼らの家族の養女にすることで、ダリヤを保護できるかもしれないというものである。
この話は、ヴォルフが冗談として言ったもののようだ。
この提案を受けて、ダリヤは自分の姓が変わることを想像し、その響きが自分には合わないと感じる。
しかし、ヴォルフはこの提案に一定の誠実さをもって接しており、自身がダリヤの兄となることを考えると、彼女を守るという役割に自信を持っている。
この会話中、ヴォルフはダリヤを思いやり、彼女が兄妹として一緒にいることを楽しいと考える。
番外編 父と娘の魔導具開発記録 ~小型冷凍庫 ~
カルロは娘のダリヤが小型冷凍庫の制作に成功したことを祝い、二人で名のあるレストランに食事に行く。
ダリヤの成功は氷の魔石を使った冷凍庫の制作であり、カルロは彼女が一人前の魔導具師として成長したことを認めているが、氷の魔石の扱いにはまだ学ぶべきことがあると指摘する。
レストランで、カルロは亡き妻を思い出しながら、ダリヤと共に食事を楽しむ。
ダリヤは、その日の食事と共に過ごした時間を忘れないだろうと喜びを表現する。
テリーザはカルロと結婚し、義家から庶民の家庭に入ることを選んだ。
ランベルティ家からの祝福はなく、テリーザの持参金もなかったが、カルロにとってはテリーザの存在が何よりの価値があった。
テリーザが元乳母であるソフィアと共に緑の塔に移住した後、彼女は少しずつ健康を取り戻し、カルロは日々、テリーザに不自由のない生活を提供するために努力した。
ある日、義父から魔導具師としてのカルロに対する賞賛と共に援助の申し出があったが、テリーザの健康が心配された。
やがて、テリーザは産後の記憶を失い、ランベルティ家の状況も複雑化した。
カルロはテリーザと別れるように言われ、義母からテリーザの病状が安定していないことが明かされた。
治癒魔法の持ち主をテリーザの傍に置く必要があると伝えられたが、カルロは自分の力ではテリーザを支えられないことを知らされた。
最後に、テリーザにもう一度だけ会うことを願った。
カルロはテリーザとの結婚生活を経て、彼女が記憶喪失となり、かつての夫婦の関係を失った。
彼女の家族からは新しい人生を歩むよう勧められるが、カルロは娘ダリヤの世話を自身で引き受けることを決意する。
ソフィアとその娘の支援を受けながら、カルロは独自に子育てに励み、全ての困難に立ち向かう。
彼は自分の力で娘を守り、テリーザの分も愛情を注ぐことを誓う。
時間が経ち、娘が成長するにつれ、カルロは自身の仕事と育児のバランスを取りながら、ダリヤの未来への支援を続ける。
最終的に、彼はダリヤを自慢の娘として育て上げ、彼女の幸せを祈り続ける。
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