小説「出会ってひと突きで絶頂除霊! 12」感想・ネタバレ

小説「出会ってひと突きで絶頂除霊! 12」感想・ネタバレ

どんな本?

 本作は、退魔学園を舞台に、主人公が特殊な能力を用いて悪霊を退治する物語である。彼の能力は、対象の急所を突くことで絶頂に導き、悪霊を成仏させるというものである。物語は、彼と仲間たちが様々な悪霊や事件に立ち向かう姿を描く。

主要キャラクター

  • 古屋晴久:都立退魔学園高校1年D組の生徒。特殊な能力「絶頂除霊」を持ち、対象の急所を突くことで絶頂に導き、悪霊を成仏させることができる。
  • 宗谷美咲:退魔学園高校1年B組の生徒。除霊師九大名家の一つ「式神の宗谷」の一人娘。呪われた眼「淫魔眼」を持ち、相手の性的な情報を視覚的に読み取る能力がある。
  • 文鳥桜:退魔学園高校1年D組の女子生徒。主人公や美咲とチームを組んで行動する。
  • 葛乃葉楓:退魔学園高校2年生。除霊師九大名家の一つ「化狐の葛乃葉」の一人娘で、主人公の幼馴染。

物語の特徴
本作は、独特な設定と個性的なキャラクターたちが織りなす物語が魅力である。主人公の特殊な能力や、仲間たちの抱える悩みや葛藤が描かれ、他の作品とは一線を画すユニークなストーリー展開が特徴である。

出版情報

出版社:小学館(ガガガ文庫
著者:赤城大空
イラスト:魔太郎
定価:979円(税込)
発売日:2025年3月18日
ISBN:978-4-09-453236-4

読んだ本のタイトル

出会ってひと突きで絶頂除霊12
著者:赤城大空 氏
イラスト:魔太郎  氏

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あらすじ・内容

ロングラン絶頂退魔シリーズ、ついに完結!
烏丸に憑依したセラフィムの霊視により、敵の本拠地が判明。晴久らを主力とする、日本、欧州、神族、魔族、すべての最高戦力が投入される。一方、ミホトは誰よりも強い決意でこの作戦に臨んでいた。サキュバスパーツの完全破壊。悲願が目前にせまるなか、彼女の秘められた記憶がついに蘇り――。絶頂と絶望が乱れ交わる最終決戦、晴久たちはサキュバス王の復活を阻止できるのか!? 淫らに過激な退魔バトルアクション、ここに堂々完結!!

出会ってひと突きで絶頂除霊!12

主な出来事

プロローグ:次元の狭間に逃れた二人

  • ジェーンとラピスの逃亡
    • 魔界と地上の間にある次元の狭間に、霊能テロリストのラピスと魔界第三位の力を持つジェーンが転がり込む。
    • ラピスは絶頂除霊の影響で動けず、ジェーンは晴久への嫉妬に狂いながら怒りを爆発させる。
  • 上位魔族パイモンの出現
    • 廃城の奥から次期魔王候補パイモンが現れ、二人の逃亡を冷静に迎え入れる。
    • 城の主としての威圧感を放ちながら、彼らの現状を把握する。
  • 戦力差と絶望的な状況
    • ラピスは、ジェーンが霊的な繋がりを阻害され戦力を発揮できず、自分も能力を喪失していることを認識する。
    • 敵側はサキュバス王復活に必要な最後のパーツを手に入れ、第一聖人の誕生で戦力が均衡を崩している状況。
  • パイモンの秘策
    • パイモンは「勝算はある」と断言し、過去に土御門雅に指示した計画がすでに進行していることを示唆する。
    • 彼は処女懐胎事件の発生時に、すでに「爆弾」を仕掛けていたと語る。
  • サキュバス王復活の布石
    • ラピスは半信半疑ながらも、パイモンの自信に一縷の望みを託す。
    • 一方、廃城の奥では、四つのサキュバスパーツを取り込んだアザゼルがサキュバス王として名乗り始めていた。

第一章:日欧神魔合同突入作戦

  • 晴久の帰還と騒がしい学園
    • 晴久たちは欧州祓魔連合の事件を乗り越え、日本へ帰還する。
    • 久々の登校日、長らく行方不明だった烏丸葵が共に登校し、クラスは騒然となる。
    • 彼は欧州のセラフィムに憑かれていると告白し、等身大ラブドールにセラフィムを憑依させていると明かす。
  • 晴久への疑惑とクラスメイトの追及
    • クラスメイトたちは、晴久とゼパルの関係を疑い、質問攻めにする。
    • ゼパルは曖昧な発言を繰り返し、教室の空気をさらに混乱させる。
  • 退魔師協会での合同会議
    • 放課後、日本退魔師協会本部で日欧合同の作戦会議が開かれる。
    • 目的は、アザゼルとパイモンの一派を制圧し、サキュバス王の復活を阻止すること。
    • 会議には、辰姫、葛乃葉菊乃、ナギサ、欧州祓魔連合の聖人たちも参加。
  • サキュバス王の復活計画の詳細
    • 敵勢力はすべてのパーツを集め、最後の祭壇「サキュバスの穴」で復活を試みようとしている。
    • しかし、すべてのパーツを統合しなければ完全復活は不可能であることが判明。
  • 大規模突入作戦の決定
    • 辰姫は敵拠点が次元の狭間にあることを確認し、日欧の精鋭を動員した奇襲作戦を決定。
    • 突入部隊の中心戦力として、晴久が指名される。
    • 晴久は敵に狙われるパーツを宿しているため、直接殺される可能性が低く、戦力として適任と判断される。

第二章:子宮迷宮での戦闘

  • 突入作戦の開始
    • 小日向静香の瞬間移動能力を活用し、日欧の精鋭部隊が異次元へ突入。
    • 廃城の内部では、異形の魔獣やゴーレム軍団が待ち構えていた。
  • 子宮迷宮への囚われ
    • アザゼルの結界「サキュバスの子宮」により、突入部隊が分断される。
    • 各部隊は異なる区域に飛ばされ、個別撃破を狙われる。
  • ジェーンとの遭遇と危機
    • 晴久はジェーン・ラヴェイに捕らえられ、彼女の執着心により拘束される。
    • 仲間の合流を待つため、ジェーンの愛情を受け入れるふりをし、時間を稼ぐ。
  • 部隊の再集結と脱出
    • ゼパルや烏丸、桜たちが合流し、ジェーンを撤退させる。
    • しかし、アザゼルは迷宮全体を解除し、部隊を廃城の外へ強制排出する。

第三章:サキュバス王の完全復活

  • 廃城の転移と艦隊との対峙
    • 廃城が太平洋上に転移し、待機していた艦隊と衝突。
    • サキュバス王が完全復活し、絶対絶頂空間を展開。
  • 絶対絶頂空間の発動
    • 空間内のすべての者が強制絶頂し、艦隊が壊滅。
    • ジェーンやパイモンまでもが無力化される。

第四章:総力戦と決着

  • 宗谷の介入と突破口の発見
    • 宗谷の式神が晴久とミホトを救出し、絶対絶頂空間への耐性を持つ新たな力を開発。
    • 晴久と楓が人式神化し、サキュバス王と互角に戦える力を得る。
  • 最終決戦と勝利
    • 槐の運勢操作能力によって戦況が逆転。
    • 晴久がアザゼルの快楽媚孔を突き、サキュバス王が崩壊。
    • ミホトがパーツの力を完全に消滅させ、呪いが解かれる。

エピローグ:新たな未来

  • 晴久の成長と日常の再開
    • 退魔学園に戻り、普通の退魔師としての生活を始める。
    • しかし、呪いの影響で性欲が異常に高まり、新たな問題が発生。
  • 仲間たちの提案と新たな関係
    • 宗谷や楓、ゼパルらが晴久を支えるため、彼の衝動を受け入れる決意をする。
    • 晴久は逃げ場を失い、新たな非日常に巻き込まれていく。

感想

ミホトの過去とサキュバス王の真実
ミホトの正体がついに明らかになり、彼女がかつてのサキュバス王そのものであったことが判明する。この過去編は非常に重く、彼女が神族に追われながらも都市を築き、最後は暴走の末に自壊するという壮絶な内容である。過去の罪を背負いながらも晴久たちと共に戦う彼女の姿が印象的であった。

宗谷の力と彼女の血筋
宗谷が絶対絶頂空間の影響を受けなかった理由も明かされ、彼女がかつてサキュバス王と共にいた「ソーニャ」の末裔であることが発覚する。これにより、宗谷の能力がサキュバス王討伐の鍵となる展開が描かれた。物語の核心に関わるキャラが次々と判明し、緊張感が高まる展開であった。

サキュバス王との最終決戦
絶対絶頂空間の発動により、戦況は絶望的なものとなる。しかし、槐の運勢操作能力や、美咲の式神術によるサポートが活かされ、戦局が逆転していく。晴久とミホトがサキュバス王の本体に突入し、快楽媚孔を突くことで決着をつけるという流れは、これまでのシリーズの集大成としてふさわしいものだった。

総括

大団円だが、晴久の苦難は続く
サキュバス王を討伐し、晴久たちはついに呪いから解放された。しかし、呪いが消えたことで抑えられていた性欲が暴走し、むしろ新たな問題が発生するという展開には驚かされた。宗谷をはじめとする仲間たちが「受け止める」と申し出るが、それが彼にとって本当に救いなのかは疑問が残る。

宗谷と楓の告白、そして晴久の決断
戦いの中で宗谷と楓の気持ちが明らかになり、晴久はついに楓と正式に付き合うことを決める。しかし、その決断に対して周囲の女性陣が黙っているわけもなく、新たな波乱が予感される。晴久の「逃げ場のなさ」が際立つ展開であり、読者としては彼の未来を心配せずにはいられない。

晴久のクラスメイトに知られたら……
呪いの解除による影響をクラスメイトに知られたら、大変なことになるのは間違いない。ゼパルや桜はすでに気づいている可能性が高く、いずれバレるのは時間の問題である。晴久が今後どのように立ち回るのかが気になるところである。

総評

今巻で長らく続いたサキュバス王との戦いがついに決着し、シリーズの一区切りとなった。だが、晴久の物語はまだ終わらず、むしろ新たな波乱が始まる予感がある。バトルの激しさとギャグのバランスが絶妙であり、最後まで楽しませてもらった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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備忘録

プロローグ

次元の狭間に逃れた二人

魔界と地上の間にある次元の狭間に、霊能テロリストのラピス・フランシュテインと、魔界第三位の力を宿すジェーン・ラヴェイが転がり込んでいた。ラピスは絶頂除霊の影響で体を痙攣させ、ジェーンは晴久を巡る嫉妬に狂いながら怒りを爆発させていた。二人は壮絶な戦場から逃げ延びたものの、状況は決して楽観視できるものではなかった。

廃城に潜む上位魔族の出現

ジェーンの強大な魔力に引き寄せられるように、廃城の奥から少年が姿を現した。彼の名はパイモン。魔界の上位魔族であり、次期魔王候補として知られていた。彼の背後には無数の影が蠢き、城の主であることを主張するかのように威圧感を放っていた。彼は冷静にラピスとジェーンの逃亡を迎え入れ、事態を把握した上で言葉を投げかけた。

戦力差と絶望的な状況

ラピスは、自分たちの置かれた状況の悪さを冷静に分析した。ジェーンは霊的な繋がりを阻害され、全力を発揮できず、ラピス自身も絶頂除霊の影響で怪異能力を喪失していた。対する敵は、サキュバス王復活に必要な最後のパーツを手に入れ、さらに第一聖人が誕生したことで戦力の均衡が崩れていた。このままではサキュバス王の復活が困難であることは明白だった。

パイモンの秘策

しかし、パイモンはこの劣勢にも関わらず「勝算はある」と断言した。彼はかつて土御門雅に指示した計画について口を開き、それがすでに実行済みであることを示唆した。処女懐胎事件が発生した時点で、爆弾の仕込みが完了していたという。その詳細は明かされなかったが、彼はこの策が形となることで形勢を逆転させると確信していた。

サキュバス王復活への布石

ラピスはパイモンの言葉に半信半疑であったが、彼の自信に一縷の望みを託した。その頃、廃城の奥深くでは、四つのサキュバスパーツを取り込んだ堕ちた上位神族アザゼルが、ついに自らをサキュバス王と名乗り始めていた。彼女は人間から霊的エネルギーを吸収しつつ、パイモンの策が実行される瞬間を待ちわびていた。

第一章  日欧神魔合同突入作戦

久々の登校と騒がしい教室

欧州祓魔連合の事件を乗り越え、晴久は宗谷たちとともに日本へ帰還した。久しぶりの登校となった退魔学園の教室では、大きな騒ぎが起きていた。その理由は、長らく行方不明だった烏丸葵が晴久と並んで登校してきたからである。クラスメイトたちは烏丸の無事を喜び、次々と質問を浴びせたが、彼は遠い目をしながら「除霊できない悪霊につきまとわれている」とだけ告げた。

その「悪霊」とは、欧州の最上位神族セラフィムであり、第一聖人に選ばれた烏丸に憑いていた。烏丸の保護者であるクリスの話によれば、彼は欧州から送金された予算で等身大のラブドールを購入し、セラフィムを憑依させていた。そして、緊縛の造詣が深いセラフィムと夜な夜な議論を交わしていたという。不本意ながらも、烏丸とセラフィムの相性は抜群だったようだ。

晴久への疑惑とクラスメイトの追及

烏丸の話が落ち着くと、今度は晴久がクラスメイトの男子たちに取り囲まれた。彼らは、晴久が学校を休むと必ず朝風春美(ゼパル)も欠席していることに気づいており、二人の関係を疑っていた。男子たちは根掘り葉掘り聞き出そうとしたが、そこへゼパルが割り込んできた。

ゼパルは曖昧にしながらも、男子たちの想像を掻き立てる発言を繰り返し、教室の空気をさらに混乱させた。男子たちは嫉妬心を募らせ、晴久を問い詰めようとしたが、その場で収拾がつかず、やがて仲間割れを始めた。晴久はその機に乗じて誤魔化すことに成功した。

新たな作戦の準備と重大な会議

放課後、晴久たちは日本退魔師協会本部の最上階へと向かった。そこでは、天界と地上の霊能者たちが一堂に会し、かつてない規模の会議が開かれていた。神族である辰姫を筆頭に、退魔師協会の長葛乃葉菊乃、監査部の長ナギサ、さらに欧州祓魔連合の第二聖人ラヴィニス、第三聖人アイギスも遠隔で参加していた。

この会議の目的は、堕ちた神族アザゼルと魔王候補パイモンの一派を制圧し、サキュバス王の復活を阻止するための合同突入作戦の立案であった。これまで散々暗躍してきた敵を完全に叩き潰すため、日欧の霊能戦力が総動員されることになっていた。

サキュバス王復活計画と敵の動向

会議では、敵勢力が狙う「サキュバス王」の力について詳細が語られた。サキュバス王は性エネルギーを自在に操る存在であり、神族にとって大きな脅威となる。その復活を目論むパイモンたちは、すべてのパーツを集め、最後の祭壇「サキュバスの穴」に持ち込むことで計画を成就させようとしていた。

しかし、新たに発覚した情報により、サキュバス王の復活にはすべてのパーツが一つの魂に統合されている必要があることが判明した。この事実により、晴久や宗谷が敵に連れ去られたとしても、即座に復活が成功することはないとされた。

大規模掃討作戦の決定

辰姫は、敵勢力の拠点が次元の狭間にあることを確認し、奇襲作戦の実行を決定した。戦力として、日本の十二師天や欧州の聖人二十名近くが動員され、敵の逃走を許さない総力戦となる予定であった。そして、この作戦の中心戦力として、これまで敵の計画を阻止し続けてきた晴久が指名された。

晴久は敵の狙いであるパーツを宿しているため、直接殺される可能性が低いこと、一撃で敵を無力化できる能力を持つことが理由とされた。この決定に異議を唱える者もいたが、すでに多くの戦場をくぐり抜けてきた彼の実績が認められ、作戦の柱として扱われることとなった。

作戦決行と最終決戦への備え

作戦の成功には迅速な行動が求められた。敵が動く前に奇襲をかけ、サキュバス王の復活を阻止することが最優先であった。辰姫は、作戦を二週間後に決行すると宣言し、全員に準備を促した。

こうして、かつてない規模の霊能戦争が幕を開けることとなった。晴久たちは、それぞれの役割を担い、決戦の日へ向けて動き出したのである。

日欧退魔師業界の混乱

日欧の退魔師業界では、突如として戦力が手薄になり、各地で対応に追われる事態となった。特に日本では、十二師天の二名が長期休養に入った影響で、元々の人手不足がさらに深刻化していた。本部からの説明もなく、主力級の退魔師たちが姿を消していたため、現場には困惑が広がる。しかし、宗谷家当主・宗谷真由美の式神が各地に派遣され、応援要員として配置されていた。ただし、その範囲の広さは前例がなく、退魔師たちはただならぬ事態の兆しを感じ取っていた。

サキュバス王の復活阻止作戦

アザゼルたちによるサキュバス王の復活を阻止するため、大規模な奇襲作戦が計画された。しかし、敵の根城は異次元にあり、大規模な戦力を送り込むには膨大なエネルギーを要する。複数のゲートを開く案も検討されたが、部隊が分散するリスクがあった。そこで、元霊級格6・小日向静香の瞬間移動能力が活用されることとなった。彼女の力を用いて、日欧の精鋭霊能者が一か所に集結し、一斉突入する計画が立案された。

日欧の最精鋭たちの集結

日本退魔師協会本部地下に、日欧の精鋭たちが秘密裏に集結した。日本側からは十二師天の三名を含む最強の退魔師が集まり、欧州からは第二聖人ラヴィニスを筆頭に聖人たちが数百名規模で参戦。特に欧州勢は、聖人の力を借りた天人降ろしの集団が大きな戦力を占めた。さらに、紅富士の園には宗谷美咲が式神を通じて支援を行い、皇樹夏樹や南雲、シーラ姫らが護衛に就いていた。これにより、前線と後方支援の両面で万全の体制が敷かれた。

異次元への突入

小日向静香の能力によって異次元へのゲートが開かれ、突入部隊が一斉に敵の拠点へと踏み込んだ。異次元内は重力や大気が地上と変わらなかったが、不気味な荒野が広がっていた。霊視によって敵の本拠地が確認され、突入部隊は直ちに城へと向かった。しかし、そこには異形の魔獣が多数待ち構えており、戦闘が開始された。

防衛戦力の迎撃と結界の突破

ゴーレム軍団が突入部隊を迎え撃つが、十二師天をはじめとする精鋭たちが次々と撃破。特に多々羅刃鈴鹿は強力な妖刀で敵を切り裂き、土御門晴親は結界術で敵の動きを封じた。しかし、城内へ進入するための結界は極めて強固であり、通常の手段では突破が困難だった。そこで、晴久の快楽媚孔を活用し、結界の弱点を突くことで破壊に成功。続いてゴーレムの発生源となる呪具も破壊され、突入部隊は城内へ進行した。

突入とアザゼルの待ち受け

城内では敵幹部の姿は見られず、罠を警戒しながら進行。すると、地下の大広間に到達した際、突入部隊はアザゼルと対峙した。アザゼルは単独で待ち構えており、周囲には霊能犯罪者たちの残骸が散乱していた。その態度は余裕に満ち、突入部隊を一蹴できると豪語。だが、聖人たちも神威を解放し、激突の気配が高まる。

アザゼルの策と戦力の分断

突入部隊が一斉攻撃を仕掛けた瞬間、空間が歪み、全員が異空間へと引き込まれた。これはアザゼルが保持する《サキュバスの子宮》の能力であり、城全体を結界化し、内部の者たちを分断する力であった。突入部隊は数十人ずつに分かれ、それぞれ異なる肉壁の迷宮に閉じ込められた。

各部隊の孤立とアザゼルの支配

各部隊は戦力を再編成しながら合流を試みるが、アザゼルの結界により完全に分断されていた。烏丸は護衛とともに孤立し、晴久たちはゼパルや桜、楓とともに別の区域に飛ばされた。ラヴィニスら主力メンバーも別の区画に閉じ込められ、敵の思惑通り戦力を削がれていた。

アザゼルの勝算

アザゼルは、自らの胎内ともいえる迷宮内に突入部隊を閉じ込め、個別撃破を狙っていた。その余裕は揺らぐことなく、突入部隊がどれほど強大であろうと、自身の策の前では無力であると確信していた。こうして、サキュバス王復活をめぐる最終決戦の幕が切って落とされた。

第二章  賭け

突入部隊の分断と敵の迎撃

突入部隊は肉迷宮内部で分断された。鈴鹿は晴親たちとはぐれ、周囲に警戒を呼びかけた。直後、天井から高粘度の液体が降り注ぎ、退魔師たちは彼我遮断陣で防御したが、反応が遅れた一人の女性退魔師が液体に触れ、服や霊具を溶かされる事態に陥った。鈴鹿は炎を生む妖刀を使い、液体を吹き飛ばして異形の正体を見極めた。それは「武装解除」を目的とする特殊なスライムだった。さらに、巨大な液体生命体が通路の奥から迫り、晴親をはじめとする退魔師たちは霊力を練り上げて迎撃に備えた。

異形の猛襲と戦況の悪化

ラヴィニス率いる祓魔師たちは、触手の群れに襲われた。彼女たちは事前情報を得ていたものの、実際の異形の凶悪さに顔をしかめながら応戦した。しかし、これは序章に過ぎなかった。突如として迷宮の地面から無数のワームが出現し、祓魔師たちを狙い撃ちするように襲いかかってきた。ラヴィニスは異形の狙いに戦慄し、全員に防御を指示しながら、容赦なく駆逐していった。祓魔師たちは羞恥を押し殺し、下半身の結界に集中しながら戦い続けた。

本部の対応と迷宮の構造

日本退魔師協会本部では、ナギサが突入部隊からの報告を受け、現状を把握していた。問題は、アザゼルの能力によって発動した「子宮迷宮」にあった。この迷宮は戦力を分断し、内部に閉じ込める特殊な能力であり、一度発動すれば脱出は極めて困難になる。ナギサは後方支援部隊に干渉の可能性を探らせたが、効果は得られなかった。だが、事前の情報と各部隊の対応力により、分断されながらも戦力は維持されていた。ナギサは各部隊の状況を整理し、合流を優先するよう指示を出した。

晴久たちの奮闘と罠の発動

晴久は仲間たちと共に子宮迷宮を進みながら、異形との戦闘を繰り広げた。五感強化を駆使し、烏丸の居場所を特定することに成功したが、進行方向には異形がひしめくモンスターハウスが存在していた。晴久は快楽媚孔を突いて肉壁を破壊し、ショートカットを試みたが、その直後、彼らを待ち受けていたのは「愛液ローション」の罠だった。床一面がぬめる粘液で覆われ、晴久たちは立つことすらできず転倒した。もがく中で仲間同士が絡み合い、戦闘に支障をきたす状況に陥った。

濁流によるさらなる分断

ゼパルの風で罠を突破し、進行を再開した晴久たちだったが、突如として肉迷宮内に濁流が発生した。圧倒的な勢いで迫る液体は、ゼパルの暴風すら飲み込む強大なものだった。逃げ場のない状況で、晴久たちは流され、完全に分断されることとなった。晴久が目を覚ましたとき、そこにはミホトしかいなかった。さらに、両腕が異常な強度の拘束術によって縛られ、直後、耳元で甘やかすような声が響いた。

ジェーン・ラヴェイの登場

晴久を拘束していたのはジェーン・ラヴェイだった。彼女はレヴィアタンを宿す世界最強の地雷女であり、晴久に執着する存在だった。晴久は彼女の異常な気配を感じ取り、恐怖に凍りついた。すべてを支配するかのように抱きしめられ、抜け出す術を失った晴久は、新たな危機の中へと引きずり込まれていった。

ジェーン・ラヴェイとの遭遇

晴久は、子宮迷宮内でジェーン・ラヴェイと遭遇した。ジェーンは世界最悪の悪魔憑きであり、標的とした男を攫っては危害を加える凶行を繰り返してきた存在であった。晴久の両手は強固な拘束術で縛られ、ミホトの力をもってしても脱することができなかった。ジェーンは晴久を執拗に抱きしめ、彼を自らのものにしようとしていた。晴久は最悪の状況に直面しながらも、ジェーンを引きつけて他の仲間の被害を防ぐことを考えた。五感強化を使い、仲間たちがまだ近くにいることを確認すると、時間を稼ぐ作戦を立てた。

時間稼ぎの策

晴久はジェーンの執着心を利用するため、彼女の愛情を受け入れるふりをすることを決意した。彼はジェーンの目を見つめ、「自分も同じ気持ちだった」と告げた。その言葉を聞いたジェーンは恍惚とし、時間を忘れたかのように晴久を抱きしめ続けた。晴久にとっては苦渋の選択だったが、仲間が合流するまでの時間を稼ぐにはこれしかなかった。

拘束の強化と救援の到着

ジェーンは晴久を完全に自分のものにするため、さらに拘束を強めた。しかし、その瞬間、子宮迷宮の壁が突如として破壊され、強力な霊力が空間を揺るがした。ゼパル、桜、宗谷、楓、烏丸、さらにセラフィムや精鋭祓魔師たちが一斉に雪崩れ込んできた。ジェーンは彼らの襲撃に驚愕し、即座に撤退を決意した。

ジェーンの撤退と晴久の救出

ジェーンは強力な魔力を練り上げながらも、状況の不利を悟り、戦わずにその場を離れた。晴久は仲間たちによって拘束を解かれ、無事に救出された。桜たちは彼の無事を確認し、次なる行動へと移った。

宗谷の警告

救出された晴久は安堵したが、宗谷から密かに警告が送られた。彼女は淫魔眼によって晴久の状況の変化を察知しており、後で詳しく説明するよう要求した。晴久は宗谷の静かな怒りを感じ取りながらも、まずは合流を優先することとした。

再び迷宮の攻略へ

ジェーンの脅威を退け、仲間たちは次の目的地へと進んだ。戦力を維持しながら、子宮迷宮の脱出を目指し、侵攻を再開した。ジェーンが直前に見せた動揺の理由を知らぬまま、晴久たちは迷宮の深部へと進んでいった。

部隊の再集結と進軍

部隊が再合流すると、子宮迷宮内での移動は迅速に進んだ。晴久の五感強化と巫女たちの霊視能力により、罠や迷宮の順路を正確に把握し、不意打ちの危険も回避できた。さらに、他の部隊も独自に合流を果たし、ついに戦力が集結した。多々羅刃鈴鹿、晴親、菊乃ばーさんら精鋭たちが姿を現し、その後、第二聖人ラヴィニス率いる部隊が強大な火力で合流を果たした。各部隊は損耗こそあったものの、人員の被害はなく、十分に戦える状態を維持していた。ナギサの指揮のもと、部隊は次なる戦闘に向けて突撃を開始した。

子宮迷宮の異変と強制脱出

進軍が開始されると同時に、ミホトが迷宮の異変を察知した。彼女は迷宮が奇妙な反応を示し、まるで「悦んでいる」かのようだと感じ取った。直後、子宮迷宮が大きく揺れ、突入部隊全員の視界が歪んだ。そして、気づけば彼らは迷宮の外、廃城の周辺へと放り出されていた。アザゼルが自ら子宮迷宮を解除し、部隊を強制的に脱出させたのだった。

アザゼルの奇策と廃城の転移

突如として、アザゼルたちの拠点である廃城が轟音とともに浮上し、空中へと消え始めた。パーツの力を利用した転移の術式により、彼らは拠点ごと別の場所へと移動しようとしていた。これを阻止するため、烏丸とセラフィムが強力な拘束術を発動したが、廃城の結界によって術は破られ、転移が完了してしまった。転移の行き先は太平洋上空、〝サキュバスの穴〟周辺に展開していた艦隊の上空であった。

艦隊との対峙と砲撃

廃城が突如として太平洋上に出現すると、待機していた艦隊が即座に警戒態勢を取った。第七聖人イザベルをはじめとする聖人や祓魔師たちは状況を確認し、指揮官の号令のもと、廃城に向けて砲撃を開始した。強力な結界が廃城を守っていたが、砲撃によりその耐久力は徐々に削られ、次第に崩壊の兆しを見せ始めた。

アザゼルの計画とサキュバス王復活の準備

城内では、アザゼルが高笑いしながら自身の計画が順調に進行していることを確信していた。ジェーン・ラヴェイを利用し、晴久から「因子」を奪い取ることで、パーツを直接奪うことなくサキュバス王復活に必要な要素を手に入れたのである。アザゼルは、晴久の精液を自身の体内に取り込み、霊的構造を変化させることで、その因子を増幅させようとした。

サキュバス王の復活と絶頂空間

アザゼルが因子を取り込み終えた瞬間、〝サキュバスの穴〟が呼応し、周囲に強大なエネルギーを放出した。そして、アザゼルの全身が輝き、ついにサキュバス王としての力を完全に顕現させた。彼女の力は「絶対絶頂空間」という特殊な能力となって発現し、空間内に入った者すべてを強制的に絶頂させるものだった。

ジェーン・ラヴェイの乱入と暴走

その時、ジェーン・ラヴェイが城内へ突入し、晴久の精液を奪われたことに激怒しながらアザゼルへ襲いかかった。しかし、彼女が絶対絶頂空間に踏み込んだ瞬間、抵抗する間もなく絶頂し、完全に戦闘不能に陥った。さらに、レヴィアタン、ラピスまでもが巻き込まれ、アザゼルの力によって一方的に無力化されていった。

アザゼルの暴走と混乱

アザゼルの力は暴走を始め、周囲にいる者を次々と絶頂させながら、空間の範囲を拡大し続けた。パイモンは事態を制御しようと試みたが、霊視の結果、アザゼルの能力やエネルギーが暴走しているのではなく、彼女自身の精神が完全に狂っていることを悟った。これは単なる暴走ではなく、怪異としての覚醒に近いものであり、もはや制御不能な状況であった。

サキュバス王の支配の始まり

アザゼルの狂気により、空間はさらに拡大し、彼女の支配下にある者はすべて絶頂し続けるという異常事態となった。ジェーン、レヴィアタン、ラピス、そして最終的にはパイモンまでもが巻き込まれ、完全に無力化された。サキュバス王の力が全開になったことで、城内のみならず、周囲の世界にまでその影響が及び始めた。

こうして、サキュバス王の復活は成し遂げられた。そして、その力は暴走し、世界を支配する危機へと発展していった。

第三章  世界のすべてを絶頂させる力

護衛艦隊への帰還と突入準備

太平洋上、〝サキュバスの穴〟を包囲する艦隊から少し離れた位置に、数隻の空母型護衛艦が浮かんでいた。この艦隊の役目は、戦闘発生時の戦況把握と、突入部隊が帰還する際の足場の確保であった。そこへ、小日向静香が構築した次元の裂け目を通じ、突入部隊が続々と帰還した。彼らを迎えたのは、遠方で鳴り響く砲撃音であった。

晴久たちは、アザゼルたちが地上へと転移したことに驚きを隠せなかった。魔王候補パイモンの力が最大限発揮される次元の狭間を離れ、太平洋へ逃れた理由が不明だったからである。淫魔眼を持つ宗谷美咲は健在であり、晴久のパーツも奪われていない状況では、彼女らが取るべき選択肢ではなかった。その不可解な行動に一抹の不安を抱きつつも、敵を速やかに討つべきと判断した部隊は、即座に空中戦の準備を進めた。

〝サキュバスの穴〟の異変

突撃準備が整ったそのとき、ミホトが異変を察知し、驚愕の声を上げた。直後、海の底から鳴動が響き、大海原が震えた。突入部隊が周囲を見渡すと、砲撃を続ける艦隊直下の海面が青白く発光していることに気づいた。それは、〝サキュバスの穴〟から膨大なエネルギーが立ち上る兆候であった。

本来、すべてのパーツが揃わなければ〝サキュバスの穴〟は起動しないはずであり、淫魔眼は紅富士にある。にもかかわらず、海底の異変が続いていた。ミホトは錯乱しながら、パーツが不足しているにも関わらず、なぜ〝穴〟が起動するのか理解できずにいた。そして次の瞬間、彼女は悲痛な叫びを上げた。

艦隊の砲撃と異常な崩壊

砲撃を続けていた艦隊の指揮官たちは、〝サキュバスの穴〟の異変に気づいていたが、敵の策と考え、攻撃の手を緩めることはなかった。その結果、廃城の結界が崩壊し、艦隊の甲板から歓声が上がった。しかし、第八聖人はその崩壊に違和感を抱いた。砲撃の影響というより、もともと脆くなっていたように見えたのである。

その疑念が確信へと変わるのは、廃城を突き破って現れた巨大な影を目にした瞬間だった。

サキュバス王の復活

廃城の残骸を蹴散らして現れたのは、褐色肌の巨大な女。全長百メートルを超えるその巨体は、圧倒的な霊的エネルギーを放ち、周囲に震動を巻き起こした。その姿は、かつてのアザゼルに酷似していたが、その存在感はまるで別物であった。

艦隊は即座に反応し、聖人たちの霊的砲撃と艦砲射撃を一斉に放った。だが、それらの攻撃はすべて巨女の周囲に展開された球状のサークル内で霧散した。まるで攻撃そのものが絶頂させられたかのように、術式も砲弾も無効化されてしまった。

艦隊の壊滅と絶対絶頂空間

サークルは拡大し、そこに取り込まれた艦隊の乗組員たちは、次々と強制的に絶頂させられた。聖人も神族も無関係に、すべての者が無力化された。艦船は轟音を立てながら分解し、乗組員たちは巨女の尾によって捕獲され、性的エネルギーを絞り取られていった。

この異常な光景に突入部隊は恐怖し、ジェーン・ラヴェイやパイモンまでもがサークルに囚われ、絶頂し続けていることに気づいた。敵であったはずの彼女らすら抗うことなく力を奪われ、完全に支配されていたのだ。

拡大する脅威

絶対絶頂空間は艦隊を呑み込んだ後も拡大を続けていた。さらに、その範囲内にいた海洋生物までもが絶頂し、大量のクジラや魚が海面に浮かび上がっていた。彼らから発生する性エネルギーがさらなる拡大を引き起こし、この力が自己増殖するシステムを構築していたのである。

第二聖人ラヴィニスは冷静に分析し、アザゼルが暴走している以上、このままではいずれ自滅するはずだと判断した。部隊は戦闘を避け、一時撤退する方針を決定した。

異変の核心

しかし、その判断にセラフィムが異を唱えた。彼は、サキュバス王が自滅する兆候を一切見せていないことを指摘したのである。この指摘により、突入部隊の誰もが凍り付いた。

確かに伝承ではサキュバス王は力を制御できずに自滅するとされていた。だが、目の前の巨女は完全に力を制御しながら拡大を続けていた。

ミホトは頭を掻きむしりながら取り乱し、サキュバス王の復活が「あり得ないはずのもの」であることを叫んだ。だが、彼女の狼狽ぶりこそが、この脅威が単なる伝承上の存在ではないことを示していた。

サキュバス王の完全復活──それは、世界の終焉を意味していた。

審問会と辰姫の疑念

天界では、欧州祓魔連合による古屋晴久暗殺命令を下した派閥への審問が続いていた。日本を管轄する上位神族、辰姫はその過程に不信感を募らせていた。命令を下したアトラスは、サキュバス王の復活を防ぐためという説明を繰り返すが、その理屈は日欧間の対立を激化させるリスクと釣り合わない。辰姫は、彼が何か重要な情報を隠しているのではないかと疑った。

天界に鳴り響く警報

その最中、神殿内に緊急警報が鳴り響く。それは地上で巨大な事件が発生した際に鳴るものであった。辰姫は審問会の場へ駆け戻り、天界の鏡を通じて地上の様子を確認する。そこに映し出されたのは、太平洋の中心で顕現した災害級の存在──サキュバス王であった。

復活したサキュバス王の異常

辰姫は、セラフィムたちが討伐に失敗し、パーツを奪われたのではないかと疑う。しかし、突入部隊は健在であり、宗谷美咲や古屋晴久の身にも異常は見られなかった。さらに、サキュバス王の周囲にいたパイモンたちすら、その力によって無力化されている。伝承通り、サキュバス王の制御は不可能だったことが明白であった。しかし、異常なのはそこではなかった。サキュバス王は本来、復活後に暴走し、自滅するはずであった。しかし、今回のサキュバス王には自壊の兆候がまったく見られなかったのだ。

アトラスの告白

辰姫が混乱する中、審問を受けていたアトラスが口を開く。彼は、サキュバス王は「自滅」ではなく「自壊」したのだと語る。そして、その原因となった存在が、天界にとっての「汚点」であったため、派閥は情報を隠蔽していたのだという。辰姫がさらに問い詰めると、アトラスは、古屋晴久の記憶とサキュバス王の復活が密接に関係していることをほのめかし、何もかもが手遅れになったことを嘆いた。

絶対絶頂空間の脅威

一方、地上では突入部隊が壊滅的な状況に陥っていた。サキュバス王が展開する絶対絶頂空間は、触れたものすべてを無条件で絶頂させ、無力化する能力を持っていた。精鋭霊能者たちは必死に抵抗するも、徐々に戦力を削がれていく。さらに、サキュバス王は《サキュバスの口》の能力を用い、海洋生物を眷属として増産し、戦場に新たな脅威をもたらした。

戦局の悪化

戦闘が進むにつれ、サキュバス王は新たな能力を発揮する。海水をすくい上げ、それを津波のように精鋭部隊へと投げつけたのだ。この攻撃により、部隊は大きく分断され、戦況はさらに悪化する。また、一瞬の時間停止を発生させる能力まで発揮し、霊能者たちの回避行動を封じた。その結果、次々と味方が絶頂し、戦線が崩壊していった。

ミホトの異変

戦場に絶望が広がる中、ミホトは錯乱し、強く取り乱していた。そして、戦いの中で彼女の記憶が断片的に蘇る。サキュバス王に関する重要な情報を思い出しつつあったのだ。しかし、その瞬間、サキュバス王の胸部から発せられる強制吸引によって、古屋晴久とミホトは絶対絶頂空間へと引きずり込まれた。

失われる希望

絶対絶頂空間の中で、古屋晴久とミホトは抵抗することもできず、意識が快楽に塗りつぶされていく。仲間たちが必死に救おうとするも、誰一人として手を差し伸べることができなかった。そして、その瞬間、ミホトの記憶が完全に蘇った。彼女は、かつてのサキュバス王の崩壊に深く関与していた存在だったのだ──。

ミホトの過去編

追跡と逃亡
少女は神族の追っ手に命を狙われ、荒れた地を転がりながら逃げていた。傷つき、心細さに押しつぶされそうになりながらも、脳裏には命をかけて彼女を逃がした両親の言葉がこだましていた。神族と魔族の間に生まれた彼女は、どの勢力からも異端として追われる存在であった。やがて深い森を抜けた先で峡谷を発見し、追っ手の神族たちを揶揄する一言で動揺を誘うと、わずかな隙を突いて時間を止め、峡谷の崖を崩落させることで追跡を振り切った。だが、彼女の戦いは終わらなかった。

孤独と生存
少女は命からがら逃げ延び、暗い森の中で膝をついた。追っ手から解放された安堵の中で、次に襲ってきたのは耐え難い孤独感であった。人々は彼女を化け物と恐れ、話すことすら許されない。生き延びるために彼女は動物の性エネルギーを吸収するという異能を使って力を得たが、それだけでは満たされることはなかった。人の営みを垣間見ては、帰る場所を持つ者たちを羨む。しかし、彼女にはそれすら許されなかった。

運命の出会い
ある日、森の奥で助けを求める少女の悲鳴が響いた。少女が駆けつけると、幼い少女ソーニャが野犬に囲まれていた。彼女は迷うことなく野犬を撃退し、ソーニャを助けた。驚くべきことに、ソーニャは彼女の言葉を理解し、会話を交わすことができた。ソーニャは霊的な感応能力を持ち、その力ゆえに村から追放されていた。二人は似た境遇を持つ者同士、自然と行動を共にするようになった。そしてソーニャは少女に「ミホト」という新たな名前を与えた。

仲間と共同体の形成
ミホトとソーニャは各地を旅しながら、人々の暮らしに溶け込む術を学んだ。やがて、彼女たちのもとには社会から追われた者たちが集まり、次第に一つの共同体が築かれていった。そこでは追放された者たちが安心して暮らし、ミホトはその力を使い、人々を守る存在となった。都市ソドムとゴモラはこうして誕生し、彼女は次第に「サキュバス王」と呼ばれるようになった。

神族の脅威と決戦
都市の繁栄は神族の目に留まり、彼女の力を危険視した神々は討伐軍を差し向けた。ミホトは必死に抗ったが、圧倒的な神族の戦力を前に追い詰められていく。絶望の中で力を求めた彼女は、己の異能を暴走させ、怪異へと変質してしまう。暴走した力は敵も味方も関係なく全てを呑み込み、絶頂の連鎖によって神族の軍勢を壊滅させた。しかし、それは自らが築いた街すら滅ぼす破滅の力であった。

決断と崩壊
ミホトは己の暴走を止めるため、最後の理性を振り絞り、自らを破壊することを決意した。彼女は眷属たちを強制的に退避させると、己の力を内側から爆発させ、ソドムとゴモラを巻き込みながら自壊した。しかし、その衝撃でも彼女の力は完全には消滅せず、各地に散らばることとなった。そして、最後の意識を「サキュバスの手」へと宿し、未来の誰かがこの厄災を終わらせることを願った。

長き時を経て
ミホトの意識は遠い未来で目覚めた。しかし、その力は大きく失われ、彼女の使命も曖昧になっていた。記憶を失いながらも、彼女は己の力を完全に消滅させるべく、宿主を探して彷徨い続けた。そして、ついに彼女は運命の少年と出会う。彼の中に秘められた膨大な精力を感じ取ったミホトは、最後の望みをかけ、彼に取り憑いたのだった。

場面転換

強制絶頂空間の中心

復活したサキュバス王の尾に絡め取られた古屋は、強制絶頂サークルの中心へと引きずり込まれ、意識が飛びそうになりながら膨大な記憶を受け取った。ミホトもまた絶頂を繰り返しながら記憶を完全に取り戻し、慟哭する。彼女はかつての自らの過ち、守れなかった都市、逃げ延びたはずの眷属が狩られた事実を思い出し、自らを責め続けていた。

ミホトの正体

流れ込んできた記憶により、古屋はミホトこそがサキュバス王本人であることを理解する。彼女の存在について多くの疑問があったが、それがすべて氷解した。しかし、いまは責めるべき時ではなかった。彼女を救いたいという思いが募るなか、拡大を続ける強制絶頂空間によって世界の崩壊が迫っていた。

敗北の現実

状況は絶望的であった。ミホト自身もこの絶対絶頂空間の影響を受けており、さらに彼女がサキュバス王の中核を担えていないため制御不能に陥っていた。古屋自身も絶頂に囚われ、打開策が見つからないまま、ただ無力さに苛まれる。全てを知ったことで、この事態が避けられないものであると痛感し、悔しさを爆発させるしかなかった。

予想外の声

そのとき、絶対絶頂空間の中心で、本来聞こえるはずのない声が響いた。それは宗谷のものであった。生者も死者も問わず絶頂に巻き込むこの場所で、彼の声だけが鮮明に響き渡ったのである。

第四章  総力戦!

絶対絶頂空間の中心での救出

絶対絶頂空間の中心で囚われていた古屋とミホトは、絶え間ない快楽と絶望に呑み込まれていた。だが、そこで宗谷の声が響いた。幻聴だと疑う中、霊級格5を超えるほどの龍の式神が現れ、宗谷を乗せて突入してきた。絶対絶頂空間すらものともせずに進む宗谷の姿に、古屋は本気で幻覚を疑った。しかし、式神はサキュバス王の尾を切断し、二人を救出すると、驚異的な速度で離脱を開始した。

戦場からの脱出と護衛艦への帰還

サキュバス王の尾が襲いかかるも、宗谷は防御術を展開し、それを迎撃。圧倒的な機動力を活かして絶対絶頂空間を脱出し、復活したサキュバス王の戦闘区域から離れた護衛艦へと突入した。デッキに投げ出された古屋とミホトは、強制絶頂から解放された反動で苦しみながらも、宗谷や仲間たちの治療を受けることになった。

宗谷の謎の耐性とソーニャの血統

古屋とミホトは、宗谷が絶対絶頂空間の影響をまったく受けていなかった事実に困惑した。さらに、彼女の霊力の性質や耐性が、かつてのサキュバス王の筆頭眷属・ソーニャと酷似していることに気づく。ミホトは衝撃を受けながらも、宗谷こそソーニャの末裔であると断言した。

宗谷の能力を活かした秘策

ミホトは宗谷の霊力と耐性を活用し、サキュバス王とまともに戦う方法を提案した。しかし、そのためには宗谷の霊力を爆発的に増幅させる必要があった。そこで彼女は、古屋と宗谷が濃密な肉体的接触を行うことで霊力を生み出すよう勧めた。

楓の告白と三者の決意

この提案を受けた楓は、自身も古屋への想いを告白し、宗谷とともに霊力増幅の役目を担うことを申し出た。宗谷もまた、古屋への想いを明かし、二人の間に張り詰めた緊張が走った。最終的に古屋は、二人に対して責任を持つことを誓い、ミホトの提案を受け入れた。

霊力増幅と決戦の準備

ミホトの指示のもと、時間操作能力を用いて古屋、宗谷、楓は霊力を極限まで高める儀式を開始した。その結果、宗谷の力はかつてないほど強化され、彼女の式神もまた絶対絶頂空間の影響を完全に無効化できるものへと進化した。

戦場での異変

太平洋の戦場では、サキュバス王の圧倒的な力により、精鋭退魔師や聖人たちが次々と蹂躙されていた。戦況は絶望的であり、援軍の到着も間に合わないと思われていた。だが、そのとき、戦場の遠く離れた地点から異常な霊力の波動が発せられた。それはサキュバス王の眷属すら動きを止めるほどの莫大な力であり、戦況を一変させる狼煙となった。

護衛艦からの霊力爆発とサキュバス王の反応

護衛艦から放たれた凄まじい霊力に、桜やゼパル、烏丸、セラフィムも驚愕していた。だが、サキュバス王だけはその圧倒的な力を前にしても動じることなく、依然として強力なエネルギー弾を放ち続けていた。桜とゼパルは即座に対応を試みるが、回避が困難な状況に追い込まれる。しかし、次の瞬間、驚異的な速度で現れた二つの影が、エネルギー弾を真正面から弾き飛ばした。

晴久と楓の登場

その影の正体は、晴久と楓、そしてミホトであった。彼らは身体の各部を鎧のようなもので覆い、宙を自在に駆けていた。桜はそれが霊具ではなく、まるで式神と一体化しているようなものだと気づく。晴久と楓の霊力は明らかに以前とは比べ物にならないほど強大になっていた。さらに驚くべきは、彼らが絶対絶頂空間の中でもまったく影響を受けずに戦えていることであった。

人式神の術と絶頂耐性

桜の問いに、美咲が答えた。彼女は自らの力を用いて、晴久と楓に絶頂耐性を付与する「人式神の術」を施していた。これにより、彼らは絶対絶頂空間内でも自由に行動し、戦闘を行うことが可能になっていた。さらに、霊力の相乗効果によって、彼らの能力は通常の限界を超え、エネルギー弾を素手で弾き飛ばすほどにまで強化されていた。

美咲の覚醒と式神軍団

美咲もまた、驚異的な霊力を発していた。彼女の周囲には霊級格 5を超えるほどの強大な式神が百体以上展開しており、それは彼女が母・宗谷真由美を超える存在へと成長したことを示していた。ゼパルや烏丸は、その圧倒的な霊力に戦慄しつつ、美咲の変貌に戸惑っていた。

桜たちの人式神化と戦力強化

美咲は桜やゼパルたちにも人式神の術を施し、絶頂耐性を付与した。これにより、彼女たちもまた絶対絶頂空間内での戦闘が可能となり、戦力が一気に強化された。さらに、霊能力の増幅効果によって、桜の結界術や烏丸の捕縛術の威力も格段に向上していた。

サキュバス王との本格的な戦闘開始

絶頂耐性を得た晴久たちは、再びサキュバス王との戦闘を開始した。だが、相手は世界を滅ぼす怪物。新たな力を得たとはいえ、まだ決定打には至らなかった。さらに、サキュバス王は自身の眷属にも耐性を付与し、淫魔化した水棲生物の軍勢を一斉に晴久たちへと向かわせた。

南雲と夏樹の参戦

この危機的状況の中、さらなる増援が現れた。南雲睦美と皇樹夏樹である。南雲は巨大な霊具の木刀を振るい、凄まじい膂力で淫魔の眷属をなぎ倒していった。一方、夏樹は自身の力でその木刀をさらに成長させ、神威を帯びた武器へと強化。二人の連携により、サキュバス王の攻撃を逸らすことにも成功した。

戦況の変化と新たな脅威

人式神の術によって得た力を駆使し、晴久たちはサキュバス王に迫る。だが、ここで新たな問題が発生した。葛乃葉菊乃の幻術が限界を迎え、彼女が戦線を離脱してしまったのだ。これまで幻術によって妨害されていたサキュバス王は、その影響を完全に振り払ったことで、攻撃の精度と密度を大幅に向上させた。これにより、晴久たちは再び劣勢へと追い込まれた。

槐の介入と運命の変化

絶体絶命の状況の中、突然、晴久の背後に新たな存在が現れた。それは童戸槐であった。彼女が晴久の手を握ると同時に、奇跡のような現象が起こる。突如、サキュバス王のエネルギー弾がそれて命中を免れた。さらに、海底火山が爆発し、その衝撃がサキュバス王を直撃。晴久たちは、わずかではあるが戦況を立て直すための時間を得ることに成功したのであった。

槐の突如の出現とその謎

晴久は戦場に突如現れた槐の姿を目にし、驚愕した。槐は今回の作戦に関与しているはずがなく、その存在自体が秘匿されていたはずである。にもかかわらず、彼女は後方支援部隊を守る紅富士の陣内におり、混乱する様子もなかった。それ以上に驚くべきは、彼女の右手によって発動している強力な運勢操作能力であった。槐の能力は《サキュバスの角》を除霊した際に弱まっていたはずであり、これほどの威力は出せないはずだった。にもかかわらず、敵の攻撃が次々と逸れ、海底火山が噴火するなど、尋常ではない幸運が次々と巻き起こっていた。

シーラ姫の介入と能力の増幅

槐の異常な力の発動に関する疑問は、シーラ姫によって解決された。シーラ姫は王家の特別な増幅能力を使用し、槐の運勢操作能力を強化していたのである。この力は、対象の能力を一つだけ永続的に強化するものであり、アルメリア王国が欧州祓魔連合内で特別視される理由でもあった。シーラ姫は戦いの切り札として、事前に菊乃と打ち合わせをし、敵だけでなく味方にも秘匿した状態で準備を進めていたのである。この策によって、槐の運勢能力は劇的に向上し、戦場の流れを変える力となった。

サキュバス王との決戦

槐の能力強化により、晴久たちは戦場で圧倒的な幸運を得ることができた。しかし、それでもサキュバス王の圧倒的な力を前に完全な勝利は遠かった。サキュバス王の攻撃は苛烈を極め、高密度のエネルギー弾と海水攻撃が容赦なく降り注いだ。しかし、槐の「ラッキースケベ」の加護によって、攻撃の照準がわずかにズレたり、敵の猛攻が思わぬ形で回避されたりと、不利な状況を覆す要素が増えていった。

その中で、楓や桜、ゼパル、烏丸らが連携し、サキュバス王の攻撃を迎撃。さらに、美咲の強力な式神軍団が戦場に参戦し、戦況は少しずつ好転していった。そして、ついに晴久はサキュバス王の「快楽媚孔」に一撃を叩き込むことに成功。サキュバス王に明確なダメージが刻まれたことで、仲間たちの士気は一気に上昇した。

サキュバス王の驚異的な再生能力

しかし、晴久たちの希望はすぐに打ち砕かれた。晴久が攻撃を加えた部位は、瞬く間に再生し、先ほどの一撃がなかったかのように復元されてしまったのである。晴久たちは愕然としながらも、サキュバス王の本体の快楽媚孔がどこにあるのかを見極める必要があることに気づいた。ミホトと美咲の観察によって、真の快楽媚孔はサキュバス王の下腹部の奥深くにあり、そこに囚われているアザゼルを直接狙わなければならないことが判明した。

最終決戦の策

アザゼルの快楽媚孔を直接突くため、晴久は美咲の策に従い、サキュバス王の体内へと侵入することを決意する。南雲や夏樹、烏丸、ゼパルらが総力を挙げて道を切り開き、静香のワームホールや槐の運勢操作能力を駆使して晴久の進撃をサポートした。そしてついに、晴久は高速で投擲される形でサキュバス王の子宮部へ突入。美咲の式神の支援も受け、サキュバス王の内部に到達することに成功した。

内部では、サキュバス王の膣圧による妨害が待ち受けていたが、晴久とミホトは美咲の式神の力を借り、進路を確保。そして、晴久の最後の一撃がアザゼルの快楽媚孔に突き刺さり、サキュバス王は崩壊を始めた。

サキュバス王の完全消滅と新たな危機

晴久の攻撃によって、サキュバス王は完全に消滅した。しかし、アザゼルの持つパーツのエネルギーが世界中に散らばろうとしていた。これを防ぐため、ミホトは最後の力を振り絞り、パーツを一箇所に集めた後、サキュバスの穴に蓄積されたエネルギーを用いて完全に破壊。数千年にわたって世界を脅かしてきた呪物は、この瞬間、完全に消滅した。

戦いの終結とミホトの決意

戦いを終えた晴久たちは、パーツの呪いが完全に消えたことを実感した。美咲の淫魔眼や晴久の快楽媚孔の視認能力も消滅し、彼らはようやく元の状態に戻った。しかし、ミホトは自らの存在を消す決意を固めていた。サキュバス王の本体であった彼女は、罪を償うために消滅するべきだと考えていたのである。

しかし、晴久はそれを認めなかった。彼はミホトに、残った性エネルギーを利用して受肉し、退魔師として償う道を選ぶよう説得する。そして、ゼパルやセラフィムの賛同も得て、ミホトは受肉することを決意した。

新たな未来へ

ミホトの受肉作業が開始され、晴久たちの長きにわたる戦いは終結を迎えた。これまでの呪いの物語に終止符を打ち、彼らは新たな未来へと歩み始めるのであった。

エピローグ

呪いの解除と退魔術の成長

サキュバス王との戦いから数週間が経過し、晴久は退魔学園での日常に戻っていた。しかし、以前とは異なり、パーツの呪いから解放されたことで霊力の制限がなくなり、まともに退魔術を使えるようになっていた。これまで術を扱えなかったのは、養父が施した封印の影響であり、宗谷がその封印を引き継いで強化したためであった。しかし、パーツが体から離れたことで、その束縛も消え、晴久は本来の能力を発揮できるようになったのである。もっとも、習得は一からのため、卒業までにDクラスレベルに留まる可能性もあったが、それでも憧れていた普通の退魔師としての第一歩を踏み出せたことに満足していた。

残る異能と新たな問題

完全に「普通の退魔師」になれたわけではなく、「絶頂除霊」の能力が一部残留していた。宗谷も同様で、特定の条件下で淫魔眼が発動する状態にあった。パーツに憑かれた槐ですら五感強化の能力が残っていたことを考えれば、長年パーツと共にあった晴久や宗谷に影響が残るのは当然の結果であった。しかし、その発動条件が限られていたため、実生活に支障は少なかった。ミホトが退魔学園に編入する際にはチームを組む予定であり、仕事の関係で能力を使う可能性はあったものの、以前ほど無法な力ではなくなっていた。

戦後処理と精神的疲労

サキュバス王討伐作戦は成功し、一人の犠牲者も出さずに終結したが、戦後処理は膨大であった。ミホトの正式な処遇決定のための取り調べや、作戦による被害の対応に追われ、晴久は疲労を溜めていた。特にミホトの処遇は不安要素の一つだったが、天界の神族がサキュバス王復活の際に証言した内容とミホトの供述が一致したため、意外にも早く解決した。これにより、ミホトは監視付きながらも地上での生活を許可された。さらに、サキュバス王復活に関与したアザゼル一派は全員捕まり、強制絶頂空間で長期間囚われていた彼女らは瀕死の状態だったが、一部は自前の生命力で生き延びた。特にラピスは人格が複数あったことで、サブ人格が盾となり、精神を保ったまま存命していた。

楓との関係と選択の苦悩

戦いの後、晴久が最も悩んだのは、宗谷と楓の気持ちに対する返答だった。人生で最も考え抜いた末、晴久は楓と正式に付き合うことを決めた。しかし、それは誰かを傷つける選択であり、自分の決断に対して完全に納得していたわけではなかった。それでも、答えを出したことで関係が進展し、彼の日常は大きく変わりつつあった。

異常な性欲の発現

戦後処理の疲労とは別に、晴久には新たな異変が発生していた。パーツの呪いが解けたことで、彼の性欲が異常に高まっていたのである。これは、長年ミホトが霊的な力を保つために晴久の精力を吸い続けていたことが原因で、突如として解放された結果、抑えられていた欲望が暴走する形となった。いくら処理しても衝動は収まらず、一人での解決が困難な状況に陥っていた。

宗谷たちの提案と重圧

この異変を知った宗谷は、晴久を支えるために彼の衝動をみんなで受け止めるという提案を持ちかけた。桜、夏樹、南雲、小日向先輩、ゼパル、さらにはシーラ姫までもが協力する意志を示し、退魔師協会の会長である菊乃ばあさんや童戸手鞠も事態を受け入れるよう促した。戦後の混乱で人手不足が深刻化しているため、宗谷たちが戦線離脱する事態を避ける必要があったのも、彼らの提案を後押しする理由の一つであった。

逃げ場のない状況

さらに、晴久はミホトに解決策を求めたが、彼女は「再び精力を吸収するとさらに増強されるだけ」と断言し、逆にこの状況を楽しんでいる節すらあった。また、楓も「正妻と妾の区別をつけるなら許容する」とし、晴久の逃げ道はほぼなくなっていた。ゼパルに至っては「ハーレムに加えろ」と無邪気に宣言し、戦いを共にした仲間たちが次々と関係を望む状況に追い込まれていった。

宗谷の想いと決意

最終的に、宗谷は晴久に対し、「嫌でなければ諦めない」と宣言した。彼女にとって、晴久が呪いを解くために共に戦うと誓ってくれたことが何よりも嬉しかったのだ。そして、彼の負担を軽減するためにも、無理強いはしないが可能性があるなら関係を継続したいと伝えた。その想いは真剣であり、晴久が逃げ続けることは困難となった。

終わらぬ非日常

サキュバス王討伐後も、晴久の日常は決して平穏ではなかった。呪いから解放されたことで、今度は別の問題に巻き込まれることとなり、彼の退魔師としての日々はまだまだ続いていくのであった。

同シリーズ

出会ってひと突きで絶頂除霊! シリーズ

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出会ってひと突きで絶頂除霊!
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出会ってひと突きで絶頂除霊! 12

赤城大空 氏の著作の別シリーズ

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 シリーズ

image-3 小説「出会ってひと突きで絶頂除霊! 12」感想・ネタバレ
下ネタという概念が存在しない退屈な世界

淫魔追放

image-39 小説「出会ってひと突きで絶頂除霊! 12」感想・ネタバレ
淫魔追放~変態ギフトを授かったせいで王都を追われるも、女の子と”仲良く”するだけで超絶レベルアップ~

その他フィクション

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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