どんな本?
『フェアリー・バレット-機巧乙女と偽獣兵士-』は、三嶋与夢氏によるヒロイックSFファンタジー小説である。
物語の舞台は近未来の地球。異界からの化け物「偽獣」の侵攻により、人類は終わりのない防衛戦を強いられている。
通常兵器が通用しない中、唯一対抗できるのは、不思議な力を搭載した女性専用のパワードスーツ《ヴァルキリードレス》であった。
このドレスを装着し戦う少女たちを育成・運営する機関『第三学園』に、一人の男性、一二三 蓮が赴任する。
彼は、今まで一度も実験が成功していない対偽獣人型兵器のテストパイロットであった。
本作は、異界からの脅威に立ち向かう少女たちと、彼女たちを支える男性パイロットの奮闘を描いている。
戦闘シーンやキャラクターの成長が魅力的であり、著者の三嶋与夢氏は、これまでにも多くのヒット作を手掛けており、本作でもその実力を遺憾なく発揮している。
本書は、2024年10月19日にマイクロマガジン社からGCN文庫として刊行された。
読んだ本のタイトル
フェアリー・バレット -機巧乙女と偽獣兵士-
著者:三嶋与夢 氏
イラスト:itaco
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あらすじ・内容
歴戦の兵士が配属されたのは……空を翔る少女たちの学園だった!?
近未来――地球は、「偽獣」と呼ばれる異界の化け物からの侵攻を受け、終わることのない防衛戦を強いられていた。
通常兵器はほとんど効かず、対抗できるのは、不思議な力を搭載した女性にしか扱えないパワードスーツ《ヴァルキリードレス》のみ。
そんな鋼鉄のドレスを装着し戦う彼女たちを育成、運営する機関『第三学園』に一人の男が赴任する。
彼の名は【一二三 蓮】。
今まで一度も実験が成功していない、
対偽獣人型兵器のテストパイロットであった――。
ヒットメーカー三嶋与夢がおくる
ヒロイックSFファンタジー!!
感想
著者の三嶋与夢 氏の名前で購入を即決したが、表紙と作者名のギャップにやや戸惑った。
しかし、ページをめくるごとにその独自の作風が感じられ、終盤の緊張感が漂う展開で「ああ、三嶋与夢作品だ」と再認識した。
物語は、異界から襲来する魔物「偽獣」に立ち向かう未来世界が舞台である。
主人公・一二三蓮は、特殊な改造を受けたテストパイロットとして、女性しか扱えないパワードスーツ《ヴァルキリードレス》を運用する学園に配属される。
この学園で蓮が学園の戦乙女候補たちに反発されながらも信頼を築き、新たな力を持って成長していく姿が描かれている。
蓮は男性でありながら、戦乙女たちの中で数少ない戦力として活躍を期待され、反発も受けつつ少しずつ仲間たちの認められていく。
そんな彼の奮闘ぶりは、学園の女性陣との関係を緊張感のあるものにしているが、彼が学園で信頼を得ていく過程には心を打たれるものがあった。
序盤の戦場で重傷を負って蘇生し、偽獣細胞を利用して新たな力を得た蓮だが、戦乙女たちに囲まれた環境で彼がどのように自身の力を証明していくのかも見どころであった。
戦闘シーンにはハードなロボット要素と戦乙女たちの妖精のような姿が巧みに融合しており、特に蓮の泥臭い歩兵としての流儀が際立つ。
スターシップ・トルーパーズのような歩兵戦から、フルメタルパニックを彷彿とさせる硬派なロボット戦の世界観の中で、蓮は生き抜くための熱い信念を持っていた。
戦場で失った仲間たちの思いを胸に、新たな戦いに挑む蓮の姿には、今後も成長の余地が感じられる。
そんな蓮にどんな戦場が待ち受けているのか、次巻への期待が膨らむばかりである。
『フェアリー・バレット』は、男女の戦力差が明確な未来で、男性としての新たな立場を確立していく蓮の成長と挑戦の物語であった。
独自の要素が巧みに織り込まれており、シリーズの先行きに多くの期待を抱かせる。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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その他フィクション
備忘録
プロローグ
異界からの侵攻と人類の戦い
異界より偽獣と呼ばれる化け物が現れ、人類を脅かしてから約半世紀が経過した。偽獣たちは地球の生物に似た特徴を持ちながらも、凶暴性と残忍さにおいて全く異なり、人類共通の敵として認識された。初期の偽獣は魔物や妖魔と見なされ、どこからともなく現れる異質な存在として恐れられた。しかし長い年月を経て、人類は偽獣の出現するゲートを発見し、これを破壊することで徐々に反撃を開始した。現在では、国家を束ねる形で「妖精機関」と呼ばれる特務機関が偽獣との戦いを指揮し、対偽獣戦が人類にとっての戦争となっている。
蓮の役割とパワードスーツ
蓮は、パワードスーツと呼ばれる特殊強化装甲スーツを装着した歩兵として偽獣と戦っていた。このスーツにより、蓮は強力な機関銃を片手で扱うことができ、昆虫や爬虫類の姿を持つ三等級の偽獣たちを相手に戦っていた。蓮の小隊内では仲間たちが互いにあだ名で呼び合い、蓮は「チェリー」として仲間に信頼され、隊内で共に戦うことを誇りとしていた。彼の小隊は、ムードメーカーの通信兵「MC」や頼りになるギャンブラー、スナイパーの「シャイボーイ」など、多様な仲間たちで構成され、連携して戦場に挑んでいた。
蓮の過去と特異な存在
蓮は幼少期に両親を亡くし、妖精機関の施設に引き取られ、偽獣と戦うための兵士として育てられた。彼は特殊な訓練を受け、感情を抑制されるとともに痛みや恐怖に対する耐性を強化されたため、周囲から「サイボーグ」と称され、孤独な存在と見なされていた。しかし、今の小隊では初めて仲間と呼べる存在に出会い、彼の生き方にも変化が生まれつつあった。
戦乙女の登場と戦乙女への憧れ
戦闘中に現れた戦乙女たちの姿に、蓮は思わず見惚れていた。彼女たちは「ヴァルキリー」と呼ばれる特殊な装甲をまとい、地上の歩兵では対処できない二等級以上の偽獣に対応する切り札である。戦乙女たちが身にまとうヴァルキリードレスは男性には扱えないため、男性の歩兵たちは地上で戦うことを強いられている。戦乙女に憧れつつも現実を思い出し、蓮は気を引き締めた。
人型偽獣の襲撃と仲間の死
任務を終え基地に帰還する途中、人型の偽獣に遭遇した蓮たちの小隊は、次々と仲間を失っていく。この偽獣は今までに見たことのない形状で、通常の兵器が全く効かず、小隊の仲間は蓮をかばいつつ次々に倒れた。シャイボーイも最後の瞬間に蓮へ逃げるよう伝えたが、蓮も大きなダメージを負い、戦場で無力感と絶望を味わった。
戦乙女による救助と意識の喪失
蓮が意識を失いかけたその時、1人の戦乙女が現れ、蓮と人型偽獣の間に立ちはだかった。戦乙女は偽獣と対峙し、蓮の前で戦い始めた。彼女の姿に救われる思いを感じつつも、蓮はついに意識を失った。
プロメテウス計画への誘い
目を覚ました蓮は医療施設のような場所にいた。蓮は自分が生命維持装置で生かされていると知り、不審に思うが、そこに現れたスミス博士からプロメテウス計画への参加を勧められる。蓮は失った手足と臓器の再生を提案されるが、その手術には偽獣の細胞が使われると聞き、動揺する。しかし、自身の命を有意義なものにするため、蓮は計画への参加を決意し、サインを交わした。
一話 女の園
輸送機での新たな基地への移動と覚悟
蓮は准尉に昇進し、新しい軍服を身に着けて輸送機でプロメテウス計画の実験場へ向かっていた。彼は激痛の手術とリハビリを経て、失った臓器や身体の再生に成功したが、その代償としての痛みが実験の証であった。基地での新たな任務に決意を固め、自身に言い聞かせるように新しい環境への覚悟を口にしていた。
グリーン博士との対面と移動
基地に到着した蓮は、プロメテウス計画の副主任であるアリソン・グリーン博士に出迎えられる。敬礼をする蓮に対し、彼女は軍属ではないため不要だと伝えた。博士はこの計画の受け入れに苦労したことや、蓮にとって過酷な場所になるだろうと事前に謝罪を述べたが、蓮は覚悟を決め、どのような環境でも任務を果たすと返答した。
空中要塞「マーメイド校」との対面
施設内に向かう道中、蓮はプロメテウス計画の現状について博士から説明を受けた。学園と見える建物に近づくと、博士はこの基地が戦乙女を育成する第三学園「マーメイド校」であることを明かす。女子校であるこの学園の異質な環境に、蓮は予想外の展開に驚き、動揺した。
学園長・加瀬夏子との顔合わせ
蓮はグリーン博士に案内され、第三学園の学園長である加瀬夏子中将と対面する。加瀬学園長は女性でありながら威厳を備えた人物であり、彼女は戦乙女の第一世代としての実力者だった。グリーン博士は蓮の立場を考慮し、女子生徒との接触を最小限にすることを提案したが、学園長は女子生徒に異性との付き合い方を学ばせたいという理由である程度の接触を認めた。蓮はこの環境が自分にとって試練であると理解しつつも、命令に従う覚悟を示した。
戦乙女たちとの不安と学園内での立場
学園長との対話を終えた後、グリーン博士は蓮に学園側の実情について語った。学園側は男性戦力化の成功が戦乙女たちの地位や予算配分に影響することを危惧しており、蓮が歓迎されない存在であることが明らかになる。博士は蓮に女性との接し方について訓練が不足していることを指摘し、彼は初めての難題に直面した。
ルイーズ・デュランと五組の女子生徒たちの反応
学園の廊下では、男子が編入してくるという噂が広まり、五組の女子生徒たちは不安を抱いていた。中でもルイーズ・デュランは穏やかで温和な性格であり、クラスメイトから親しまれていたが、男子との共学に対して戸惑っていた。彼女はクラスメイトたちに対して、自分なりの言葉で男子を受け入れる姿勢を見せていたが、その場で思わぬ困惑を隠せなかった。
エース隼瀬真矢とルイーズの対立
ルイーズがクラスメイトと話をしている際、エースである隼瀬真矢が彼女に対して冷たい態度を見せた。真矢は中等部からルイーズを嫌っており、彼女を仲間に迎えることを拒んでいた。真矢の厳しい態度にルイーズは萎縮してしまい、クラスメイトたちは彼女を慰めたが、エースとの対立が彼女にとって重荷となっている様子が伺えた。
空島麻衣との会話とエースとしての葛藤
隼瀬真矢はエースとしての自覚を持つよう、同じ三組の空島麻衣に促された。麻衣は真矢のわがままに対し、三組の戦力補充の遅延を問題視し、彼女にエースとしての責任を自覚するよう求めた。しかし、真矢は自分のために戦う意志を固持しており、クラスや仲間に対する義務を軽視する態度を崩さなかった。このやり取りにより、エースとしての葛藤と個人主義的な戦う姿勢が浮き彫りになった。
二話 五組
早朝の廊下でのアリソン博士との会話
蓮は早朝、アリソン博士と共に学園の廊下を歩き、今後の活動計画について説明を受けた。彼は基地で訓練を積み、学園長の要望にも応えるよう指示される。博士は機体到着までの予定を話しながら、グラウンドで運動をしている女子生徒たちを見せた。蓮が訓練と勘違いしたことに対し、博士は部活動の朝練だと説明し、少し驚かせた。
五組の教室での着任挨拶と女子生徒たちの反応
蓮は五組の教室に到着し、敬礼と共に自己紹介を行った。しかし、教官から軍式の挨拶は必要ないと指摘され、蓮は教室の雰囲気に戸惑いを覚えた。女子生徒たちは蓮に対して警戒心や敵意を示す者が多かったが、ルイーズ・デュランという銀髪の女子生徒だけは明るく蓮を歓迎し、隣の席に座るように誘った。
ルイーズとの友好的な交流と戸惑い
蓮はルイーズの隣の席に着くと、彼女から友達として接するように頼まれる。ルイーズは彼に親しみを込めて「蓮君」と呼ぶよう促し、蓮も彼女の柔らかい態度に応じ、初めての友好的な交流を経験した。
戦乙女の救助に関する授業と蓮の意見
一限目の授業では、戦場での戦乙女の行動について教官から説明があった。特に、救助部隊への冷たい対応が推奨される理由として、戦乙女たちが救助時に運命の出会いを勘違いし、現役を早々に退くケースが多発したためであると解説された。蓮はかつての救助活動を思い出し、歩兵には事前通達がされなかった理由を疑問視した。
放課後のルイーズのお願いと他の女子生徒の不満
放課後、ルイーズは蓮に開発チームの実験機を見学させてほしいと頼んだが、蓮は確認が必要だと答えた。その返答に他の女子生徒たちは不満を示し、ルイーズを擁護する形で彼を非難した。蓮は戸惑ったが、ルイーズが取りなして状況を収めた。彼は、翌日に返答を約束してその場を後にした。
再会を誓う別れ
蓮は教室を出る際、ルイーズに「また明日」と別れの挨拶をされた。彼は手を振り返し、次の日も続く新しい日常を受け入れる気持ちでその場を去った。
三話 実験機
プロメテウス計画の実験機搬入とアリソン・スミス博士との会話
五組での生活に馴染みつつあった蓮は、休日にプロメテウス計画の開発チームが貸し出されている格納庫で待機していた。人型兵器「サンダーボルト」の搬入作業が進む中、アリソン博士は計画の制約や予算の問題について蓮に説明した。さらにスミス博士も加わり、彼の陽気な性格が周囲を賑わせる一方、蓮は実験機の起動に向けた準備を進めることとなった。
コールサイン「エンヴィー」の決定
実験機の試験前に、スミス博士は蓮のコールサインを「エンヴィー(嫉妬)」と命名した。アリソン博士はその選択に批判的であったが、蓮は旧小隊での思い出と重ね、名前に対して肯定的な意見を示した。博士たちはこの名を、戦乙女の強力な力に対する「嫉妬」とも捉え、蓮の新たなコールサインとして登録した。
実験機サンダーボルトの起動実験と学園エースとの遭遇
サンダーボルトの起動は成功し、蓮は広場に設けられたコースでの歩行試験に入った。その際、赤いローブを身に着けたエース・隼瀬真矢と、他の女子生徒たちが遠巻きに見守る様子に気付いた。真矢は機体に対して嫌悪感を示し、そのまま立ち去った。
五組教室での対立とルイーズの支え
次の日、蓮は休憩時間にルイーズと話し、赤ローブを着ていた女子生徒が隼瀬真矢であると確認した。突然、他の女子生徒たちが蓮を囲み、彼が偽獣の細胞を用いて再生手術を受けたことについて詰問した。蓮は動揺を抑えようとするも、敵意を剥き出しにした女子生徒たちに囲まれる形となったが、ルイーズが介入し教室内の緊張を緩和した。
情報漏洩の原因と隼瀬真矢の個人的な因縁
昼食時間、ルイーズは蓮を屋上に連れて行き、隼瀬真矢が機密情報を五組に流した可能性を示唆した。隼瀬は偽獣に個人的な恨みを抱いており、蓮の実験に対する嫌悪が原因で対立が生じているとの見解を示した。ルイーズは困難な状況にある蓮を支えると約束し、今後も何かあれば相談するよう勧めた。
四話 失敗作
開発チームへの報告と反応
蓮は格納庫で、スミス博士とアリソン博士に学園での機密情報漏洩の状況を報告した。スミス博士は事態を軽視し、実験準備を優先する姿勢を見せたが、アリソン博士は学園長を疑い、真剣な対応を求めた。アリソンは学園長への確認のため格納庫を離れた。
アリソン博士と学園長の対話
アリソン博士は加瀬学園長に情報漏洩の責任を問いただしたが、学園長は冷静に対応し、自身は関与していないと断言した。学園長は漏洩の調査を約束し、アリソンに開発チーム内部も調査するよう促した。アリソンは不満を抱きながらも学園長室を後にした。
実験前夜の隼瀬真矢との遭遇
疲労した蓮は自室へ向かう途中、赤ローブを纏った隼瀬真矢と遭遇した。真矢は蓮を挑発し、実験への批判を口にした。蓮は冷静に応対しつつも計画の続行を宣言したが、真矢はその言葉に怒り、蓮への関心を失ったかのように立ち去った。
実験当日と魔力コンバーターの試験
蓮はスミス博士の指示に従い、魔力コンバーターの試験に臨んだ。蓮の魔力が機体に送られたが、力場の発生は規定値に遠く及ばず、実験は失敗に終わった。スミス博士はさらなる人体改造案を提案したが、アリソン博士は危険性を指摘して慎重な対応を求めた。
実験中止と今後の展望
実験が失敗に終わり、アリソン博士は蓮に実験の中止を伝えた。蓮はショックを受けたが、アリソンは冷淡な態度で結果を告げ、彼の感情に配慮しない方針を貫いた。蓮は指示通りにコックピットから降り、今後の指示を待つこととなった。
五話 魔力の資質
実験の失敗と魔力出力不足の問題
蓮は実験の結果、魔力出力の不足が大きな問題であることを認識した。いくら機体や魔力コンバーターを強化しても、蓮自身の魔力が規定値に達しない限り偽獣との戦闘は困難であると判断された。アリソン博士からの助言により、蓮は学園で魔力のノウハウを持つ戦乙女たちから情報を引き出すことを決意した。
アリソン博士との相談と学園の戦乙女への接触の助言
蓮は魔力の出力向上についてアリソン博士に相談したが、博士からは適切な解決策を得られなかった。しかし、アリソン博士から「魔力のノウハウを持つ戦乙女たちから学べ」と助言を受けた蓮は、学園で魔力に関する知識を得ることを決意し、感謝の意を示して学園へ戻った。
ルイーズとの会話と友情の芽生え
学園での授業中、蓮は魔力に関する知識を得るため普段よりも真剣に取り組んでいた。ルイーズは蓮の様子を見て不安を感じ、話しかけてきた。蓮は魔力出力の向上についてルイーズに助言を求めると、ルイーズは基礎的な知識を教えることを快諾し、友情が芽生える様子が描かれた。
魔力と「意志」の重要性についての授業
放課後、ルイーズは図書室で蓮に魔力出力の向上について教えた。魔力操作には「意志」や「動機」が重要であり、単なる訓練ではなく心の強い願いが必要であると説明した。蓮はこれにより、自身の戦い方に「意志」を持つことの重要性に気付き始めたが、ルイーズはまだ蓮には難しいと感じていた。
隼瀬中尉との対立と大日南教官の介入
図書室でルイーズと過ごしていた蓮の元に、隼瀬中尉が現れた。隼瀬中尉はルイーズを叱責し、蓮と距離を取るよう警告したが、そこに大日南教官が現れ、隼瀬中尉の態度を注意した。教官の登場により隼瀬中尉は渋々引き下がり、蓮とルイーズはその後、屋上で今後について話し合うこととなった。
屋上での励ましとルイーズの決意
屋上にて、蓮は母親の言葉「前を向いて一歩一歩進め」を思い出し、ルイーズにもその言葉を伝えた。ルイーズは蓮の言葉に励まされ、隼瀬中尉の妨害にも負けず努力を続ける決意を固めた。また、翌日の授業で魔力に関わる重要な内容があることを蓮に伝え、必ず出席するよう促した。
水泳授業と女子生徒たちの反応
翌日の水泳授業で、蓮は女子生徒たちと共に水泳の訓練に参加した。周囲の女子生徒たちは蓮の存在に戸惑いや嫌悪感を抱き、蓮に対する心ない言葉を投げかけたが、ルイーズが蓮を励まし、体に触れて確認するなどして親しみを示した。蓮はルイーズの支えを受けつつ、周囲の視線に耐えながら訓練に取り組んだ。
水泳と魔力操作の関係
水泳の授業において、ルイーズは水中での感覚が魔力操作に通じると蓮に伝え、魔力操作の上手い者は水泳も得意であると説明した。蓮はこの新しい知識を得て、魔力操作の訓練として水泳にも真剣に取り組む必要性を認識した。
対人訓練と女子生徒たちとの対立
午後の対人訓練にて、蓮は一部の女子生徒から挑発を受けた。蓮は元歩兵としての訓練の経験から冷静に対応し、挑発してきた女子生徒を制圧した。女子生徒たちは蓮に対し不満を漏らしたが、ルイーズは蓮の実力を認め、彼に対する尊敬の念を抱いた。
六話 敵対者
ルイーズからの本と前向き思考の訓練
蓮は、ルイーズから薦められた本を通じて前向きな思考を取り入れようと努力していた。訓練の休憩中には、読書を習慣とし、自己啓発の内容に従って前向きなイメージを作ることに努めた。だが、疑いを捨てきれない自分に対して焦りを感じていた。
アリソン博士との対話と次の実験への準備
蓮はアリソン博士に、ルイーズからの助言によって本を読んでいることを告げた。博士は蓮が前向きな思考を試みる姿勢を評価し、次の実験についての準備を指示した。新たな目標値は一パーセントと設定され、博士の期待が蓮にかかっていた。
三回目の実験と結果の確認
蓮は三回目の魔力出力実験に臨み、成功するイメージを抱きつつ全力で挑んだ。しかし、実験結果は予想を下回り、わずかに目標値に届かなかった。アリソン博士からは誤差範囲内の結果と評価され、蓮はさらなる改善を求められた。
アリソンとスミス博士の議論
アリソン博士とスミス博士は、蓮の実験結果について議論を交わした。スミス博士は精神的なアプローチに希望を見出し、継続的な努力が目標達成に繋がると主張したが、アリソン博士は科学的根拠に基づかない方法には懐疑的であり、冷静な結果評価を求めた。
ルイーズの励ましと自己への疑念
実験結果の失敗に落胆する蓮に対し、ルイーズは温かく励ました。蓮は自分には魔力を扱う才能がないのではと悩むが、ルイーズは結果を急がずに努力を続けるべきだと助言し、蓮を勇気づけた。
学園での噂とルイーズへの圧力
蓮の実験の失敗が学園内で噂となり、男子パイロットへの懐疑的な意見が広まった。ルイーズは同級生から、蓮との関係を切るよう忠告され、他のクラスへの編入に悪影響が出ることを警告されたが、ルイーズは蓮を友人として支え続ける意志を固めた。
深夜のプールでの隼瀬中尉との対話
蓮は深夜にプールで訓練を行っていたが、そこに隼瀬中尉が現れた。中尉は蓮に対し、自己啓発本やトレーニングだけでは魔力の問題を解決できないと指摘し、真の動機や自己の感情を受け入れることが必要だと説いた。蓮は中尉の真摯な助言に触発され、自らの「嫉妬」や戦乙女への憧れを改めて自覚した。
隼瀬中尉の指摘と蓮の意志の確認
隼瀬中尉は、蓮が自己の感情を正直に受け入れ、自分の目的のために戦うことの重要性を強調した。蓮は、単なる命令でなく、戦乙女に対する嫉妬や憧れが実験に志願した動機であることを認めることで、新たな意志を持って訓練に取り組む決意を固めた。
真矢とルイーズの対立
深夜、ルイーズは真矢と遭遇し、蓮への対応について意見を交わした。真矢はルイーズのやり方に不満を持ち、蓮に対する一時的な解決方法を否定し、本質的な改善を求めるべきだと主張した。二人の意見の対立は険悪な雰囲気を生んだが、ルイーズは蓮を守る覚悟を示し、強い決意を抱いていた。
七話 エンヴィー
上層部との会議と計画の継続の条件
アリソン博士とスミス博士は、上層部との会議でプロメテウス計画の継続を主張していた。スミス博士は魔力出力の微増を根拠に継続を求めたが、上層部は十分な成果が出ていないと厳しく批判した。幹部たちは、計画が失敗した場合に二度と再挑戦の機会は与えられないと釘を刺し、次の3ヶ月で出力を10%まで引き上げることを条件とした。
非人道的な手段への許可
スミス博士は幹部たちに、魔力出力を向上させるためにテストパイロットの体に手荒な手段を用いることを提案した。幹部たちは追い詰められており、スミス博士の非人道的な提案にも許可を与えた。アリソン博士は、この方針に対して複雑な心境を抱えながら会議を終えた。
サンダーボルトの改修と実験への決意
実験機サンダーボルトが格納庫に戻り、蓮はパイロットスーツに着替えてアリソン博士と打ち合わせを行った。アリソン博士は、今回の実験が失敗すれば蓮の健康な手脚を切断する方針が決定されることを告げ、手術のリスクについても警告した。蓮は、この決断を受け入れ、最後のチャンスに臨む覚悟を固めた。
実験の開始と魔力出力の急上昇
実験が開始されると、蓮は操縦桿に魔力を流し、魔力出力が上昇していった。数値は前回を上回り続け、最終的には目標である10%を超えて15%に到達した。この驚異的な成果にスミス博士は大喜びし、プロメテウス計画が次の段階に進むことを期待した。
アリソン博士の冷静な評価と再実験の準備
アリソン博士は、スミス博士の楽観的な見方に対し、武装に回すエネルギーの不足を指摘し、実戦投入の早計さを諌めた。そして蓮に魔力出力の停止と休憩を指示し、15分後の再実験に備えるよう指示を出した。蓮は目標達成に喜びつつも、実験中に何か重要なことを言いかけたことに気付き、内心でその意味を考え始めたが、再実験の呼び出しに応じることとなった。
八話 予備戦力
ルイーズの複雑な祝福と嫉妬の告白
蓮の実験成功を祝福するため、ルイーズは屋上で蓮に会ったが、彼女の笑顔にはどこか悲しみが感じられた。蓮は自分の魔力の出力において後ろ向きの感情を選んだと説明し、それが成功の鍵だったと告げた。ルイーズはそれを理解しつつも、蓮には前向きな感情で魔力と向き合ってほしいと願っていた。蓮はルイーズの助言に感謝しつつ、嫉妬が彼の原動力であると告白した。これにルイーズは落胆しながらも、いつか蓮が前向きな感情で力を使えるようになることを願った。
隼瀬中尉に対するルイーズの警戒心と学園の厳しい環境
ルイーズは隼瀬中尉が蓮に接近することを警戒し、蓮に注意を促した。ルイーズは、学園内ではライバル同士が日常的に騙し合いやスパイ行為を行っていると説明し、隼瀬中尉も計画に反対の立場であるため、彼女の意図には警戒が必要であると伝えた。蓮は学園の環境が想像以上に厳しいものであると知り、ルイーズの忠告に感謝しつつ、彼女からの励ましに安堵していた。
緊急サイレンと五組のスクランブル出撃
突然、学園にサイレンが鳴り響き、ルイーズは蓮を引き連れて五組の教室に戻った。今回のスクランブル出撃は、通常任務が立て込んでいる三組の戦力を補うためのもので、五組に出撃要請が下った。教官は集まった女子生徒の中から成績上位者を選び、出撃する者を決定した。その中にはルイーズも含まれており、彼女は今回の出撃を次のチャンスに繋げるための機会として喜んでいた。
蓮への出撃命令とサンダーボルトへの武装準備
五組の選抜が進む中、蓮の端末にスミス博士から出撃命令が届き、彼も急遽出撃することとなった。格納庫に駆けつけた蓮は、スミス博士から学園長に出撃許可を取り付けた経緯を聞き、サンダーボルトに次々と武装が取り付けられる様子を目の当たりにした。スミス博士は蓮に戦場の空気を味わわせ、魔力出力の安定性を確認する目的で出撃させようとしていたが、蓮は準備された重武装の量に驚きと期待を抱いていた。
サンダーボルトの武装調整と蓮の準備
開発チームはスミス博士の指示の下、サンダーボルトにガトリングガンや大型ミサイルコンテナなどの重武装を装備していた。アリソン博士も指揮を執り、蓮に出撃準備を急ぐように促していた。蓮は、歩兵時代の二刀流の戦闘スタイルに基づいた短剣が装備されていることを聞き、スミス博士の蓮への期待を再確認した。アリソン博士の指示を受け、蓮は出撃の準備を整え、コックピットに向かうこととなった。
九話 バディ
五組の女子生徒たちの出撃準備と不和
出撃を命令された五組の女子生徒たちは更衣室で戦乙女のスーツに着替えていた。鈴木恵は自分がスカウトされると自信を持ち、挑戦的な態度を見せて周囲に宣戦布告のような発言をした。しかし、先輩である浅井麻美は冷静に彼女の発言を諫めた。麻美は恵のような自信家に嫌気を感じつつも、経験を活かして小隊をまとめる覚悟を見せていた。緊張が高まる更衣室内で、ルイーズは気持ちを落ち着かせるため皆に呼びかけ、静かに会場を出ていった。
戦場への移動と戦乙女候補生の任務概要
女子生徒たちを乗せた大型輸送機が発進し、教官が今回の任務について説明を始めた。五組の役割は、ブーツキャット大隊の援護として、偽獣の掃討を支援することとされた。教官は、彼女たちが扱う訓練用バトルドレスの性能の限界を認識するよう改めて指導し、一等級との遭遇時には即時撤退を命じた。第一小隊には浅井麻美が小隊長として選ばれ、鈴木恵と西谷加奈子が隊員となり、緊張感の中で女子生徒たちはそれぞれの任務へと気持ちを整えた。
第一小隊の奮闘と偽獣の増援
出撃後、第一小隊の加奈子は勇猛果敢に二等級の偽獣に立ち向かい、その好戦的な姿勢が顕著であった。恵もまた、仲間に対抗心を抱きつつ前線で戦闘を繰り広げたが、指揮官である麻美は彼女たちの無謀な行動に警戒していた。しかし、偽獣の増援が現れたことで状況は一変し、第一小隊は敵に包囲されてしまう。撤退を試みるも、圧倒的な数の偽獣たちに追い詰められ、困難な状況に立たされた。
蓮の救援志願とルイーズの提案
ルイーズは第一小隊の危機を察知し、蓮にその情報を伝えた。蓮は緊急の救助に向かいたいという強い思いを抱きながらも、自分の立場を考慮して自ら出撃の判断を抑制した。しかし、ルイーズは蓮の本音を引き出し、彼の志願を教官に進言する。教官は最終的にルイーズの判断を認め、蓮の実験機の出撃を許可した。
ルイーズとの連携と出撃への決意
ルイーズの後押しを受けた蓮は、五組の一員としての覚悟を固め、ルイーズとの連携を心に決めた。ルイーズは蓮の意思を確認し、二人は共に戦場に向かうこととなった。蓮は仲間を救うため、兵士としての規範を越え、己の信念に従う決意を新たにした。
十話 出撃
アリソン博士の叱責と出撃準備
アリソン博士は、急遽出撃を決めた蓮に対し準備不足を理由に苛立ちを見せたが、同時に機体の状況を入念に確認していた。魔力出力が三十パーセントに達したことで移動と防御は可能と判断され、蓮はサポートに専念するよう釘を刺された。出撃に向けた準備が整い、蓮はサンダーボルトを起動して輸送機からの飛び出しを成功させた。
ルイーズとの合流と戦乙女の特異性
輸送機から出撃した蓮はルイーズと合流し、彼女の小柄なバトルドレス姿に一瞬不安を感じたが、規格外の戦乙女である彼女の機動力と耐性を目の当たりにして驚嘆した。ルイーズはサンダーボルトを興味深そうに観察しながらも、目的地に到着する準備を整え、蓮に自身の命を最優先に考えて行動するように助言した。
三等級偽獣の群れと撤退の判断
砂浜に向かう三等級の偽獣の群れを目撃した蓮は、仲間を守りたい気持ちから攻撃を試みようとしたが、ルイーズに無駄弾を使うなと制止された。戦乙女の武装と比べてサンダーボルトの武装は限られており、現状では救助が最優先であることを蓮は理解し、渋々三等級の偽獣を無視することに同意した。
第一小隊の危機と戦場の現実
蓮とルイーズが目視できる距離に接近すると、弾薬と武装が尽きた第一小隊の女子生徒たちが偽獣に追い詰められている様子が確認できた。浅井准尉は無理な突撃で被弾し意識を失った仲間の加奈子を抱え、鈴木准尉は武器も弾薬も尽きた状態で絶望していた。ルイーズは二人だけでも救助する策を考えたが、その選択に蓮は違和感を抱いた。
偽獣への突撃と囮としての奮闘
過去の戦闘で仲間を失った記憶が蘇り、蓮は囮になる決意を固めて偽獣の群れに突入した。ミサイルを発射して偽獣の足止めを試みるも、効果は限定的であった。しかし、その行動により偽獣たちの注意を引き付けることに成功し、ルイーズは蓮の判断を信じ、第一小隊の救助へ向かうことを決断した。蓮は偽獣たちの攻撃を回避しながら戦場で奮闘し、ルイーズの帰還を待ち望みつつ、仲間を守るために戦い続けた。
十一話 歩兵の心得
偽獣の追撃とサンダーボルトの奮闘
蓮は三十体の二等級偽獣に追い回される中、残弾数とエネルギーの不足に直面していた。彼は装甲防御を捨て、魔力を移動と武装に全力で回す決断を下した。地上戦時代の戦法を活かし、ビームもどきを回避しつつ、ガトリングガンと大型ライフルで偽獣を撃破していった。戦闘の中でミサイルの一撃が二等級偽獣に決定的なダメージを与えたことにより、大型ミサイルコンテナを戦術に組み込む形となった。
第一小隊の安全確保とルイーズの進言
蓮が囮として戦う中、ルイーズは第一小隊を簡易基地へ無事送り届けた。担任教師に蓮の救助を求めたが、二等級の増援が発生したために救援は不可能と告げられ、ルイーズは落胆してしまった。担任教師はプロメテウス計画に懐疑的であり、蓮の犠牲を容認する態度を見せたが、ルイーズは蓮を案じて心を痛めていた。
サンダーボルトの近接戦と二等級の殲滅
弾薬が尽きた蓮は、左膝に格納されていた短剣を引き抜き、近接戦を開始した。大型ライフルと短剣の連携により、偽獣たちの弱点を確実に突き、効率的に撃破していった。彼は魔力の不安定さを感じつつも、短剣で急所を突く戦い方を習得し、最終的に偽獣を殲滅した。
サンダーボルトの損傷と蓮の勝利感
偽獣との激戦を終えたサンダーボルトは、両腕を含む機体各所が甚大なダメージを負っていた。推進剤やエネルギーも尽きかけ、帰還が困難な状態であったが、蓮は救難信号を発信しつつ、二等級偽獣との勝利に喜びを感じていた。彼は戦士としての誇りを取り戻し、過去の仲間たちに想いを馳せた。
ルイーズの救援と最後の一撃
蓮が感慨に浸っていると、突如として味方機の反応があり、ルイーズが迎えに現れた。彼女は微笑みながら蓮に声をかけ、大型ライフルから魔力を込めたビームを発射し、偽獣への止めの一撃を放った。蓮のモニターは光で白く染まり、戦闘はルイーズの援護によって幕を閉じた。
十二話 存在意義
ルイーズの裏切りと蓮への襲撃
ルイーズが突如として蓮を攻撃し始め、冷酷な言葉を浴びせた。彼女は蓮の存在がプロメテウス計画の障害であり、社会のためにも計画を阻止する必要があると主張した。蓮は彼女の態度に衝撃を受けつつも、自身の使命を全うする覚悟を示したが、ルイーズの攻撃により機体は深刻な損傷を受け、海面に打ち付けられた。
一等級偽獣バオーガの出現とルイーズの危機
ルイーズの攻撃が続く中、一等級偽獣「バオーガ」が現れた。ルイーズはバオーガに狙いを定められ、追撃を受けることになった。彼女は必死に回避しながら反撃を試みたが、偽獣の強固な力場を貫くことができず、苦戦を強いられた。
隼瀬中尉の救援と偽獣の撃破
蓮とルイーズが窮地に陥っている最中、隼瀬中尉が白と赤のバルキリードレスで現れ、強力な攻撃により一等級偽獣バオーガを瞬時に撃破した。隼瀬中尉の戦闘力に圧倒され、蓮は安堵の表情を浮かべた。
ルイーズの正体と隼瀬中尉の追及
隼瀬中尉はルイーズの正体に気づき、彼女を冷たく追及した。ルイーズはプロメテウス計画の問題点を訴え、自身の行動を正当化しようとするが、隼瀬中尉はその薄っぺらさを見抜き、容赦なく彼女の装備を無力化した。隼瀬中尉の前で、ルイーズは自らの本性を露わにし、二人の対立は頂点に達した。
サバット部隊の登場とルイーズの拘束
隼瀬中尉の制圧の後、黒塗りの戦乙女たちが登場し、ルイーズを拘束した。サバットという特殊部隊であり、こうした問題の対処を専門としている彼女たちは、ルイーズを連行していった。隼瀬中尉と蓮も事情聴取のために同行を求められ、蓮はそれを受け入れたが、隼瀬中尉は不満げな態度を見せていた。
十三話 パフェ
サンダーボルトの損傷と開発チームの反応
学園に戻ったプロメテウス計画の開発チームは、損傷したサンダーボルトを見て異なる反応を示した。好意的な作業員たちは蓮の無事を喜び、スミス博士は得られたデータに興奮し、修理の予算申請を計画した。一方、アリソンは防御を捨てた戦闘スタイルに懸念を示し、蓮の行動に批判的であった。スミス博士はアリソンの忠告に対し無頓着な態度を取り、実験の成果に満足していた。
隼瀬中尉との再会と祝いの誘い
取り調べを終えた蓮は、深夜に隼瀬中尉と再会した。隼瀬中尉は蓮の無事を祝い、共に甘い物を食べに行こうと誘った。蓮は戦乙女たちの「祝いの流儀」に戸惑いつつも従うことにし、隼瀬中尉とレストランへ向かった。
レストランでの甘い物と隼瀬中尉の配慮
二人が訪れたレストランでは、出撃があった日には深夜営業を行っていた。隼瀬中尉は蓮にチョコのパフェを注文し、互いに甘い物を楽しむこととなった。蓮は過去の携帯食の話題から、歩兵時代の厳しい食事について語り、隼瀬中尉はその状況を理解し、彼の苦労を労った。
歩兵時代の思い出と仲間たちへの思慕
蓮は隼瀬中尉に促される形で、歩兵時代の仲間たちとの思い出を語り始めた。プロテイン、シャイボーイ、ギャンブラー、ルーザーなど個性的な仲間たちとの思い出が次々と蘇り、彼らとの時間を懐かしむ姿が見られた。蓮は彼らとの絆を大切に思い、再び共に過ごしたいと願っていた。
蓮の涙と隼瀬中尉の叱咤
甘い物を食べながら蓮は涙を流し、仲間を守れなかった自責の念に苛まれた。しかし、隼瀬中尉は仲間の想いを否定する蓮の発言を叱責し、生き残ったことの意味と仲間の仇を討つことの意義を強調した。この言葉により、蓮は自身の戦う理由を改めて確認し、隼瀬中尉への感謝の気持ちを深めた。
隼瀬中尉の勧誘と新たな決意
隼瀬中尉は蓮に自分の小隊に加わるよう勧誘し、蓮はそれを前向きに受け止めた。隼瀬中尉は、蓮が歩兵時代に使用していたコールサインを尋ねたところ、「チェリー」であることが明かされ、彼女は驚きと困惑を見せた。
学園長同士の対話と緊迫した駆け引き
夏子は、第五学園の学園長である陽葵・ルナールとリモートで会話をした。陽葵は、取り調べ中のルイーズを引き渡すよう要求したが、夏子は拒否した。陽葵は代わりに一等級の素材を提供することを提案し、夏子は特等級の素材を要求して交渉を続けた。陽葵は怒りを見せつつも、最終的に特等級の素材の提供を承諾した。
ルイーズに対する警告と学園間の勢力争い
陽葵は、ルイーズに傷をつけないように強く警告し、夏子もこれに応じる姿勢を見せたが、拘束前の傷については責任を負わないと宣言した。陽葵は、プロメテウス計画への協力を批判し、他学園が計画に反対していることを伝え、夏子に孤立を警告した。しかし、夏子は独自の方針を貫くことを表明した。
プロメテウス計画への期待と今後の展望
陽葵との会話を終えた後、夏子はプロメテウス計画に関する資料に目を通し、実験機が二等級の偽獣を多数撃破した戦果に満足した。計画が組織内で注目され、さらに騒がしくなることを予見し、今後の展開を楽しみにしていた。
番外編 副担任
隼瀬真矢の呼び出しと特機の整備
隼瀬真矢は、朝から特機用のヴァルキリードレスの整備と調整のために格納庫に呼び出された。整備士とともに、冷静で頼りがいのある副担任リューディア・鏡が付き添い、真矢の愚痴を聞きつつ作業を見守った。リューディアは、戦場での冷静さと報告書の苦手意識を抱える真矢のギャップを微笑ましく感じていた。
追加メンバーの選出とリューディアの忠告
リューディアは、ブーツキャットに三人の追加メンバーが選ばれたと伝え、タブレットで情報を真矢に共有した。しかし、真矢は未熟さを理由に懸念を示し、戦力としての不安を口にした。リューディアは、戦力が不足している現状で妥協が必要であることを説き、新人の育成を決意した。
一二三蓮の従者への選出理由についての問答
リューディアは、真矢が従者として一二三蓮を選んだ理由を問うた。真矢は素直に、戦闘での実力と自身の直感に従ったと答え、リューディアは彼の言葉を受け入れつつも慎重に評価する姿勢を見せた。また、真矢はプロメテウス計画に対する懸念から、蓮を救いたい気持ちがあることを明かした。
リューディアの決意と共闘の確約
リューディアは、真矢の気持ちが本物であると確認すると、上層部と交渉して蓮を従者として迎える準備を整える意志を固めた。
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