小説「フルメタル・パニック! FAMILY 2」感想・ネタバレ

小説「フルメタル・パニック! FAMILY 2」感想・ネタバレ

どんな本?

『フルメタル・パニック! FAMILY 2』は、賀東招二氏が執筆し、四季童子氏がイラストを担当するライトノベル。
本作は、シリーズ25周年を記念して刊行された『フルメタル・パニック! FAMILY』の第2巻であり、2024年11月20日にKADOKAWAから発売された。

物語の背景とあらすじ

物語は、世界の存亡を懸けた最終決戦から約20年後の世界を描いている。
主人公の相良宗介は、千鳥かなめと結婚し、二人の子供である夏美と安斗と共に平穏な日常を送っている。
しかし、家族四人での平和な生活を求めて引っ越しを繰り返す中、新たな引っ越し先でかつての戦友であるクルツ・ウェーバーとマオ、テレサ・テスタロッサと再会する。
彼らとの再会は、懐かしさと共に新たなトラブルをもたらし、物語は再び動き出す。

主要キャラクター
• 相良宗介:元ミスリルの兵士であり、現在は家族と共に平穏な生活を送っている。
• 千鳥かなめ:宗介の妻であり、二人の子供の母親。
• 相良夏美:宗介とかなめの娘で、女子高生。父親譲りの戦闘力を持つ。
• 相良安斗:宗介とかなめの息子で、小学生。凄腕のハッカーとしての才能を持つ。
• クルツ・ウェーバー:かつて宗介と共に戦闘チームを組んでいた戦友。
• マオ:同じく宗介の戦友であり、現在は娘のクララと共に生活している。

関連情報

文庫第2巻の発売を記念して、相良ファミリー総出演のスペシャルムービーの制作が決定している。キャストには、相良宗介役に関智一氏、相良かなめ役にゆきのさつき氏、相良夏美役に土屋李央氏、相良安斗役に結川あさき氏が起用されている。

読んだ本のタイトル

フルメタル・パニック! FAMILY 2
著者:賀東招二 氏
イラスト:四季童子 氏

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あらすじ・内容

懐かしき戦友との再会は……弾丸とともに――!?

衝撃づくしの「フルメタ」新シリーズ、待望の第二弾!!

家族四人での平和な日常――“普通の生活”を求めて引っ越しを繰り返す相良家が、とある田舎で再会を果たしたのは……
「こうして三人だけでそろって話すのって、いつぶり?」
「二人とも、こんなおじさんになっちゃって。えらいわよ」
かつて最強の秘密軍事組織〈ミスリル〉にて、宗介と戦闘チームを組んでいたクルツとマオ(と愛娘のクララ)。しかし、そんな彼らの元に物騒なトラブルが舞い込まないハズもなく――
「やっちゃうわよ? 久々に……野郎ども、準備はいい!?」
約20年の時をこえて、伝説のチームが復活! 懐かしき友との再会と共闘――相良家は平穏な日々を手に入れられるのか!?

フルメタル・パニック! Family2

感想

かつての戦友との再会と激闘

かつて最強と謳われたウルズチームが再び集結したことに心が躍る展開であった。
宗介、クルツ、マオの三人が繰り広げる息の合った戦闘は見ごたえがあり、懐かしさとともに新鮮な感動を与えてくれる。
クルツの下ネタ混じりの冗談や、それに突っ込む宗介の姿がまた彼ららしい光景であった。
家族ぐるみの騒動が次々に巻き起こりつつも、彼らの絆の強さを感じる内容である。

相良家の日常と子供たちの活躍

相良家の日常の描写は心温まるものであるが、その中にも緊張感のあるシーンが織り込まれていた。
夏美と安斗の二人が見せる軍事的才能や、父親として葛藤する宗介の姿が印象的である。
特に安斗がハッカーとして作戦に参加する場面では、彼の才能が光ると同時に、宗介が感じる複雑な親心が胸を打った。
家族全員が協力して困難を乗り越える姿は、読む者に勇気を与えるものであった。

新キャラクターの魅力とSNS騒動

今回新たに登場したクララは、マオとクルツの娘でありながら、独自の魅力を持つキャラクターである。
彼女のSNS発信がきっかけで巻き起こる襲撃事件は、現代的なテーマを取り入れた展開であった。
クララが夏美とどこか怪しい関係を示唆する描写は笑いを誘いつつも、安斗の妄想かもしれないと思わせる余地が面白い。
この家族劇に新しい風を吹き込む存在であった。

宗介の衰えと家族の信頼

宗介が戦闘中にわずかな衰えを見せる描写が切なく、同時に深みを感じさせた。
娘の夏美がその変化に気づきながらも、父親を無敵の存在と信じ続ける姿は、かつて宗介がカリーニンに対して抱いていた信頼を彷彿とさせる。
年を重ねることで生まれる戦いの余裕と、それを支える家族の絆が、本作に独特の温かみをもたらしていた。

笑いと感動の融合

宗介が風間の代役としてVチューバーになるエピソードは意外性があり、大いに笑わせてくれた。
その一方で、かなめとのイチャラブを邪魔された怒りや、再び巻き起こるトラブルへの対処に追われる家族の姿が、感動的な要素を強調している。
笑いと感動が絶妙に混ざり合い、本作をさらに魅力的なものとしていた。

未来への期待感

今回の復活は「一度限り」と予感させる描写があるのは少し寂しい。
しかし、再登場したテッサや新たな伏線によって、次巻への期待が高まる内容であった。
宗介が見せる達人の域に達した戦い方と、そこに隠れる人間的な弱さが物語をさらに深めている。
次の物語がどのように展開するのか、非常に楽しみである。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フルメタル・パニック! Family 2

その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

第四話  神奈川県横浜市戸塚区の 1 DKの団地

団地での日々と不穏な異変

新たな仮住まいでの生活

相良家は、海辺の邸宅を離れ団地で生活を送っていた。避難先として確保していた古い団地の一室は手狭だったが、見晴らしと静けさは良好であった。家族はそれぞれのやり方で時間を過ごし、安斗はタブレット作業に没頭し、夏美は読書の不足に悩んでいた。

夏美の退屈とASの存在

夏美は紙の本派で、電子書籍にはあまり馴染めなかった。彼女は読書のほかに〈アズール・レイヴン〉の点検も行ったが、整備設備の不足から満足な作業はできなかった。この機体は宗介のコネで入手されたもので、夏美はその操縦技術を北米で磨いていたが、宗介からは実戦では使えないと評されていた。

父の趣味と家族の反応

ある日、宗介は美少女Vtuber「風祭まこ」の配信を視聴していた。彼女は軍事系の実況を中心に活動するバーチャルキャラクターで、その中の人は宗介の高校時代の友人、風間だった。宗介が応援のコメントやスーパーチャットを送る姿に、夏美は少し戸惑いを感じながらも興味を示した。

配信中の異変

配信は順調に進んでいたが、突然風祭まこが体調不良を理由に終了した。宗介は風間に連絡を試みたが応答はなく、不安が広がった。やがて彼からの返信があり、救急車で搬送中であると告げられた。家族は予期せぬ展開に動揺しつつ、事態の推移を見守った。

友人との再会と見舞い

病院での再会

風間信二は胃潰瘍で入院中であったが、命に別状はなかった。宗介と夏美が見舞いに訪れると、風間は笑顔で二人を迎えた。風間は宗介の高校時代の友人であり、久しぶりの再会に懐かしさを感じている様子だった。宗介の娘である夏美に驚きつつも、彼女の美しさを褒めた。

風間の生活と趣味

風間は健康を崩した原因を不摂生だと認め、反省していたが、自身が運営するYouTubeチャンネル「まこちゃんねる」に対する情熱は変わらなかった。彼は登録者数が大台の一万人に届きそうな状況を前に、入院中でも配信を続けたいと強い意志を示した。宗介はそれに対し、無理をしないよう強く諭した。

代役の提案と夏美の反対

風間は配信を途切れさせないため、宗介に代役を頼むことを提案した。しかし、夏美は宗介の性格や無愛想な性質から代役は不可能だと猛反対した。一方、宗介は友人を助けたいという思いから譲らず、二人の間で意見が対立した。

父と娘の対話

宗介は風間が配信活動に懸ける思いと、彼が過去にメンタルを崩していた際の経緯を夏美に語り、友人を助けることへの決意を示した。夏美はその真剣さに押され、完全には納得できないまでも協力を承諾した。

過去の話と家族の絆

移動中、夏美は風間の普通さを不思議に感じながら、父の高校時代の話を聞いた。風間が命の恩人であり、重要な友人であることが明かされたが、その詳細は宗介が曖昧に濁した。父親の過去の話に想いを巡らせる中、二人は次の目的地に向かった。

マンション訪問と準備作業

マンションへの到着

夏美と宗介は国道沿いのラーメン店で食事を済ませた後、JR駅近くにある風間信二のマンションを訪問した。風間の住まいは整頓されており、一人暮らしには十分な広さであった。夏美はその清潔さに感心したが、宗介は友人の「小野寺」と連絡を取りつつ、部屋の配信設備を確認した。

配信準備の開始

部屋にはデスクトップPCと配信用の機材が揃っており、宗介は風間からのメッセージをもとに作業を始めた。アバターの調整やボイスチェンジャーの設定には苦戦したが、夏美とかなめ、安斗の協力を得て準備を進めた。風間が病室からアドバイスを送る中、宗介は風祭まことしての代役を引き受ける決意を固めた。

配信の試行錯誤

配信が始まると、宗介は風祭まことしての役割に苦戦し、視聴者の反応も戸惑いを見せた。しかし、彼の独特な話し方や軍事知識が徐々に視聴者の興味を引き、同時接続者数が増加した。宗介は慣れないゲーム実況に挑戦しながらも、風間の計画に応じた形で代役を務めた。

予期せぬ来訪者

配信中、マンションのインターホンが鳴った。応答に出た夏美は、不審な人影が現れたことに気づき、玄関で待機する相手に対して奇襲を決断した。結果、相手は「ヤマダトシオ」と名乗る風祭まこの熱狂的なファンであり、自宅の住所を特定して訪問していたことが判明した。

対応と処理

ヤマダを制圧した夏美は、護衛役のバルダーヌに引き渡し、この件を両親に報告しないよう頼んだ。バルダーヌはその要望を受け入れ、ヤマダを連れて処理に向かった。この一件を通じて、夏美とバルダーヌの間に小さな信頼関係が生まれた。

父の配信の盛況

一方で、宗介の配信は視聴者の興味を引き続け、コメント欄も盛り上がっていた。風間の計画通り、代役を楽しむイベントとして成功しつつあった。夏美はその様子を見守りながら、父と風間の行動に感心する一方で、自分の冷静さを取り戻していった。

配信の成功と父の奮闘

ゲーム配信のクライマックス

夏美が部屋に戻ると、宗介はゲーム配信の最中であった。接続者数は二〇〇人を超え、視聴者たちがコメント欄で応援する中、宗介はリアル系戦闘シミュレーションゲームの難関ミッションをクリアした。彼は饒舌に戦況を説明しつつ、最後の敵を格闘武器で倒し、視聴者から大いに賞賛された。配信終了後、宗介は風間と連絡を取り合い、次の二日間も代役を続けることを約束した。

父への複雑な感情

配信を終えた宗介は満足げで、達成感に満ちた様子だった。夏美はそんな父を見て、珍しく彼がはしゃいでいるように感じた。同時に、父がストーカーの件に全く気づかなかったことに驚き、少しの寂しさを覚えた。宗介は「楽しかった」と言い、夏美の無事を確認したが、夏美はそれ以上何も言わず、そっと父をハグした。

風間との共演と役割の完遂

その後、宗介は二日間の配信を無事に務め上げた。三日目には風間が予定より早く退院し、風祭まことして配信に復帰した。宗介と風間の共演は視聴者を大いに盛り上げ、チャンネル登録者数は一万人を突破する勢いを見せた。一方、夏美は二日目以降、団地での読書を選び、父の配信には関与しなかった。

家族との会話と結末

三日目の夜、家族で夕食をとる中、かなめが「お父さんが寂しがっていた」と夏美に伝えた。夏美は「やっぱり気持ち悪いから」と言い捨てたが、その一言に含まれる照れ臭さと安堵感が、父娘の間に穏やかな空気をもたらした。

appendix

二つの誕生日と偶然の重なり

宗介と夏美の誕生日の由来

宗介と娘・夏美の誕生日は共に七月七日であった。宗介の誕生日は、過去に高校へ潜入する際、偽造文書に記入した適当な日付がそのまま使われたもので、コールサイン「ウルズ7」に由来していた。一方、夏美は偶然にも同じ日に生まれたため、宗介は自分の誕生日を変えるべきか悩んだが、かなめに却下され、そのままとなった。夏美自身はこれを気にすることなく、誕生日を迎えていた。

団地での誕生日パーティー

今年の誕生日は仮住まいの団地で祝われた。簡単な飾り付けをした部屋で、家族はケーキを囲み、歌とプレゼント交換を楽しんだ。かなめから宗介へは新しいスマートフォン、夏美からは頑丈なナイフ、安斗からはギャグ動画が贈られた。一方、夏美へのプレゼントはかなめからショルダーバッグ、宗介から図書カード、安斗から再びギャグ動画が贈られた。笑いと団らんの中で、楽しい時間があっという間に過ぎていった。

家族の思い出と一七年の歳月

片付けをしながら、宗介は一七歳になった夏美の成長をしみじみと感じていた。夏美がふと、自分が一七歳の頃の誕生日について尋ねると、宗介は明確な記憶がなく、苦労して記憶を手繰り寄せた。すると、かなめがミーティングの合間に「高二の七夕の日、家でカレーを作りすぎて一緒に食べた」と即答した。その正確さに、宗介と夏美は少し驚きつつも、穏やかな結末を迎えた。

第五話  和歌山県東牟婁郡櫛本町の古民家

灼熱の道と重いスイカ

夏美と安斗の帰り道

安斗は灼熱の中、大きなスイカを抱えながら帰路についていた。姉の夏美は軽々とスイカを二つ持ち、迷彩柄のビキニ姿で颯爽と歩いていた。安斗は「ゴリラ女」と小声でつぶやいたが、夏美に聞かれてしまい、「自分はゴリラには遠く及ばない」と即座に返された。ネット環境のない山奥での生活に辟易しつつも、二人は岬沿いの道を進んだ。

古民家での奇妙な様子

古民家に戻ると、ふすまの向こうで母・かなめと父・宗介が慌ただしく動き回っていた。薬物を片付けていると説明されたが、乱れた布団や着替え途中の様子など、明らかに不自然だった。夏美が指摘すると、かなめは焦りながら話題を変え、「スイカ割りをしよう」と提案した。

スイカ割りと姉弟の実力

砂浜でスイカ割りが始まると、宗介、夏美、さらにはかなめまでもが目隠しをしても的確にスイカを割り、一個目のスイカはすぐに消費された。夏美が冗談めかして散弾銃の使用を提案すると、かなめが強く否定した過去の失敗談が語られた。そんな中、突然スイカがライフルで撃ち抜かれる。宗介は冷静に岬の方向へ目をやり、ライフルを掲げるクララの姿を確認した。

クララの登場

クララは黒いパンクスタイルで現れ、陽気に叫びながら安斗に近づいてきた。遠距離からの正確な射撃でスイカを撃ち抜く技量を見せつけ、彼女の存在感が一際際立っていた。

クララの登場と相良家との再会

クララの突然の訪問

クララ・マオ・ウェーバーは、安斗にとって姉のような存在であった。幼少期、かなめの入院中に安斗の面倒を見ていたことが、その絆を深めていた。現在20歳を過ぎたクララは大学を卒業し、華やかな美女となっていた。突然の訪問について、彼女は東京の知人宅が体調不良となり、予定を早めて相良家を訪れたと語った。ライフルを携え、護衛チームを避けながらバイクで来たと笑顔で説明した。

相良家の過去とクララの指摘

安斗が幼少期に虫嫌いで辺境暮らしに適応できなかった話題が持ち上がり、クララはその過去を知るがゆえに軽い指摘を交えた。家族の努力もあり、安斗は以前よりたくましくなったが、それでも都会的な生活への憧れを隠せなかった。会話の中でクララは相良家の現在の生活環境に少し驚きを見せたものの、家族との再会を楽しんでいる様子だった。

アズール・レイヴンのテストとクララの葛藤

廃港に保管されていた〈アズール・レイヴン〉を見たクララは、自身が設計に携わった機体の動作確認を開始した。センサーやフレームの調整を行う中で、夏美が機体を操作したデータについて軽く批判を交えたが、宗介の「夏美の腕を褒めないでくれ」という頼みを守り、評価を曖昧に濁した。

夏美の模擬戦闘

夏美は〈アズール・レイヴン〉に搭乗し、仮想敵との模擬戦闘を行った。六対一の不利な状況にもかかわらず、夏美は次々に敵機を撃破し、圧倒的な技術を見せつけた。クララはその腕前に驚きつつも、「実戦とは違う」とコメントを残した。

夏美とクララの対立と和解

模擬戦闘後、夏美とクララは互いの腕前や性格について口論となった。クララは勢いに任せて夏美にキスをするが、夏美はこれに戸惑いつつも冷静に対応した。その場にいた安斗は驚き、鼻血を出す場面もあった。

宗介の介入

その場の騒ぎを聞きつけた宗介が現れ、三人に状況を尋ねた。夏美の模擬戦闘やクララの行動、安斗の鼻血など、てんでバラバラな説明が飛び交い、家族らしい賑やかな一幕が展開された。

父の静かな叱責と夏美の反省

叱責を受ける夏美

宗介は、〈アズール・レイヴン〉を勝手に起動した夏美に対して怒ることなく、「わかってるな?」とだけ述べ、夏美も「はい」と答えてその話は終わった。相良家では、叱責が厳しくない一方で、母のかなめは夏美の行動について後でしっかり叱るつもりだと話していた。ペレット一つが30万円という話を聞いてかなめは驚き、その後の支出にも敏感さを見せた。

クララと夏美の模擬戦の余波

夏美がクララと衝突した理由について宗介は責任を感じているようだった。クララとの仲については気安さから起きた出来事だろうと推測し、かなめも特に問題視しなかったが、安斗は二人のキスの場面を思い出して困惑していた。

夏美への心配と宗介の思い

安斗は夏美の強さや〈アズール・レイヴン〉の腕前を気にし、宗介に尋ねた。宗介は夏美の才能を認めつつも、それが兵器の世界に深く関わる結果になるのではないかと心配していた。宗介は、夏美に〈アズール・レイヴン〉を教えたのは身を守るためであり、そこから先に進むべきかどうか悩んでいる様子だった。

スイカとクルツの登場

その日の昼食後、宗介が庭でスイカを切ろうとした際、スイカが突然爆発した。直後、岬の方から金髪の男クルツ・ウェーバーが現れた。彼はクララの父であり、相良家の古い知り合いであった。護衛チームを避けて訪問したクルツは、軽い調子で滞在を許可されたが、宗介から「食料や布団はない」と冷たく言われた。

配送員の正体と宗介の対応

その後、クルツが注文したビールが届いたが、配送員が不審な動きを見せたため、宗介が即座に行動。配達員を制圧し、彼の正体が敵であることを見抜いた。相良家の皆は驚くことなく、それぞれの見解を述べた。宗介の冷静な行動により、その場は再び平穏を取り戻した。

配達員の正体と新たな敵の発見

偽装配達員の捕縛

宗介は気絶した配達員の変装を剥がし、その正体が以前捕らえた義勇兵であることを確認した。かなめは、通販でクルツが注文した品が原因で敵に居場所を特定されたと推測した。さらに、クララがSNSに旅行中の写真を投稿していたことも判明し、一家全員が原因に納得した。

敵の襲来の予兆

かなめが護衛チームに連絡し、付近の衛星通信回線を復旧させた。安斗は母親が衛星通信を管理していた事実を知り、通信環境が意図的に制限されていたことに怒りを覚えた。押入れに閉じこもった安斗は家族との口論を避けつつも、父の依頼で新型ドローンを使用する準備を始めた。

クララとクルツによる迎撃

クルツとクララは、敵の車両部隊を迎撃するために家を出た。クララの精密射撃とクルツの支援により、敵の車両は次々と破壊され、部隊は撤退を余儀なくされた。その間、安斗はドローンを操作して新たな敵の動きを監視していた。

新型ドローンによる敵ASの排除

裏山を哨戒中のドローンが、透明化した敵AS(二機)を発見した。安斗は自らの判断でドローンを操り、敵の通信アンテナと駆動系を攻撃し行動不能にした。結果として敵は撤退を開始し、安斗は一人でASを追い払うことに成功した。

安斗と母の和解

戦闘後、安斗は母かなめから衛星通信の制限についての事情を聞き、母の意図を理解した。怒りは収まり、二人は和解した。母は息子の成長を喜び、安斗もまたその愛情を受け入れた。縁側での静かな時間が、家族の絆を再確認させるひとときとなった。

敵の完全制圧と戦闘後の様子

戦闘の終結と敵の捕虜化

テディ率いる護衛チームが敵を全員捕虜とし、海岸での戦闘は完全に終結した。クルツとクララは満足げで、宗介は部下を連れて国道に出現予定の敵ASを回収しに向かった。夏美はASで待機していたが、出番がなかったことに特に不満は抱いていなかった。

撤収せず現地に留まる決定

相良一家はすぐに撤収することなく、数日間現地に留まることになった。ヤン&ハンター社が南紀一帯で敵の動向を調査するためである。衛星ルーターも再び使用可能となり、安斗はその状況に満足していた。

ヘリの飛来と新たな訪問者

翌朝、洋上から一機の中型ヘリが飛来した。父と母はその到着を予期していたが、クルツは知らず驚いていた。ヘリが砂浜に降り立つと、一人の女性がクルツめがけて駆け寄り、いきなり飛び蹴りを浴びせた。それはメリッサ・マオであり、彼女はクルツを叱りつつも相良家にスイカを持参して現れた。

メリッサの陽気な挨拶

メリッサはクララや安斗に元気よく声をかけると、大きなスイカを片手に「スイカ割り」を提案した。彼女の明るい様子と大声は、ヘリのローター音をも凌ぐ勢いで、その場の雰囲気を一気に盛り上げた。

第六話  三重県志摩市のもとやま国際ホテル

海辺でのひとときと移動

リゾート気分のマオ

ワンボックスカーの後部座席では、マオが日本の田舎道を懐かしみながらビールを楽しんでいた。クララやかなめもリラックスした様子で、それぞれ自由な会話を繰り広げていた。宗介は運転席から、適度に会話に参加しつつも目的地への移動を続けていた。

敵の状況と撤退の計画

敵は未だ包囲網を敷いていたが、相良一家は古民家を離れ、新たな拠点として国立公園内のホテルに向かうことを決定した。通信環境と地形の利を活かし、敵を誘導しつつ対策を講じる作戦が進行中であった。

到着したホテルと新事実

一行が到着したホテルは廃業予定であったが、かなめがオーナー会社を買収していたことが判明した。支配人の村上が驚きつつも対応を進め、相良一家は貸し切りのような状況でホテルの最上級スイートに案内された。

敵への準備とリラックスした時間

作戦会議を兼ねた一幕では、敵の動きを見据えつつ、マオがリゾート気分を満喫していた。風呂やゲームコーナーを楽しむ中で、家族とチーム全員がそれぞれの形でリラックスしていた。宗介は偵察を提案しつつも、安斗の話に気を取られていた。

仲間との再会と昔話

宗介、マオ、クルツの三人は久々に集い、昔話を交えながら思い出に浸った。各自の現在の状況やこれまでの経緯を語り合い、互いの変化や成長を確認する時間となった。夕焼けを背景にした穏やかな一時が、戦いの緊張感の中で静かに流れていた。

作戦準備と買い物

宗介、マオ、クルツの三人はホテル周辺を見回った後、最寄りのコンビニに立ち寄りビールやおつまみを購入した。その帰り道、黒塗りの車に追い抜かれた後、テディくんが車を降りて挨拶してきた。マオとクルツに緊張しながらも礼儀正しい態度を見せた彼を残し、三人は車でホテルに戻った。

バルダーヌの帰還と夕食

ホテルに到着した一行は、バルダーヌが日本に戻っていたことを知った。彼女は夏美と簡単な挨拶を交わし、その後、車の駐車に向かった。夕食では伊勢海老や松坂牛といった高級料理が並び、マオたちは満足そうだったが、宗介はどこか落ち着かない様子であった。

カラオケとリゾート気分

食事後、マオたちはカラオケルームで歌い始め、宗介は隣室で打ち合わせに参加した。かなめの歌声やクララと安斗の騒ぎ声が漏れ聞こえ、宗介の集中を削いでいた。彼は一時部屋を抜けて注意を促すが、カラオケの熱気は衰えなかった。

夫婦のひとときと中断

夜中、かなめがノートPCで作業をしているのを見た宗介は、彼女の誘いで共に温泉に向かった。暗闇の中で親密な時間を過ごそうとしたが、外で銃声が響き、敵が接近していることが判明した。宗介は未練を残しながらも警戒体制に戻ることを決意した。

戦闘の開始準備

銃声により敵の接近が早まったことを悟った宗介は、脱衣所で急いで身支度を整えた。彼は怒りを胸に敵に向き合う覚悟を決め、かなめに後を託して現場に向かった。

敵の陽動と宗介の準備

宗介はホテルの通用口から外へ出て、北側で続く銃声が陽動だと判断した。敵の本命が東側であると見抜き、車から武器と装備を回収した。カスタムされたM4カービンに電気スタン弾やグレネードを装着し、慎重に準備を進めた。かなめたちが避難を完了したことを確認し、宗介は単独で東側へ向かった。

単独での迎撃

東側の急斜面に陣取り、宗介は敵を迎撃した。スタン弾を駆使して次々と敵を無力化し、粘着グレネードや発煙弾を用いて混乱を誘った。冷静な判断と圧倒的な技術で、複数の敵を制圧し続けたが、敵の数は多く、宗介一人では次第に手が回らなくなってきた。

マオとクルツの参戦

敵の増援に対し、マオとクルツが浴衣姿で戦場に現れた。酔った状態ながらも、彼らの連携は絶妙であり、宗介の負担を大幅に軽減した。三人はそれぞれの役割を活かし、リズムよく敵を制圧していった。かつてのトリオの再現に宗介は感慨深いものを感じつつも、この瞬間が最後かもしれないという寂しさも覚えた。

夏美の突入と圧倒的な操縦技術

戦闘が激化する中、夏美が〈アズール・レイヴン〉を操縦し、敵のAS部隊を圧倒した。流れるような機動と正確な攻撃で敵ASを次々と撃破し、圧倒的な存在感を示した。夏美の行動に驚きながらも、宗介は彼女の能力に驚嘆した。

戦闘の終結と課題

夏美の活躍により、敵は完全に壊滅した。マオとクルツも戦闘を終え、撤収準備に移った。宗介は夏美の行動に対し、彼女のAS操縦への執着を理解しつつも、親としての悩みを抱えた。一方、アルが遠隔で支援していたことが判明し、技術の進歩に改めて感心した。朝日が昇る中、宗介たちは戦いを終えホテルに戻ったが、宗介は中断された大浴場でのひとときを思い返し、複雑な思いを抱えていた。

ジム・ディアスの野心と行動

ジム・ディアスは巨額の資産を持つ大富豪で、世界的な成功者として知られていた。彼はこれまで三人の盟友を抹殺するなど、手段を選ばず野心を追求してきた。サガラ・カナメの存在を知ったディアスは、時間干渉技術を操る鍵として彼女に目を付け、多額の資金を投じて彼女を拘束する計画を立てた。その結果、傭兵部隊を使って彼女を捕らえたと報告を受けたディアスは、計画の成功を確信していた。

捕らえたサガラ一家の登場

スイートルームで待機していたディアスのもとに、捕らえられたサガラ・カナメが現れた。彼女の他には夫の宗介、娘の夏美、息子の安斗が同行していた。ディアスは計画の完遂を喜ぶ間もなく、宗介たちの逆襲を受け、部下や警備は速やかに無力化された。ディアスは困惑しつつも状況を理解し、必死に説得を試みた。

ディアスへの制裁

かなめはディアスの言葉に耳を傾けつつも、その軽薄な発言に苛立ちを覚え、宗介に指示して彼の膝を撃つよう命じた。ただし、それはゴム弾であり、致命傷には至らなかった。宗介はさらに本物の銃弾での脅しを加え、ディアスから重要なアカウントのパスワードを引き出した。ディアスは完全に恐れをなして降伏した。

家族のやり取りとディアスへの警告

宗介はディアスに対し、今後の行動を監視することを告げた。さらに、彼の違法行為が再発すれば再び制裁を加えると念押しした。サガラ一家はディアスを置き去りにし、次の行動に移った。

日常への回帰と新たな出会い

一家はディアスとの対峙を終えた後、普通の日常に戻ろうとホテルを出た。近くの飲食店で食事をとることに決めた彼らの前に現れたのは、テレサ・テスタロッサであった。彼女は久々の再会を喜びつつ、サガラ一家に新たな依頼を告げるために訪れた。

appendix 2

ホテルでの計画と予期せぬ展開

テレサ・テスタロッサは、ホテルのラウンジで颯爽と登場し、相良一家に優雅に挨拶をする計画を立てていた。しかし、彼らがラウンジを通らず通用口のエレベーターを使用したため、計画が狂った。慌てて駐車場へ向かったが、相良一家はそのまま徒歩で外に出てしまい、計画はさらに混乱した。

路上での試行錯誤

彼女は車で彼らを追いかけることを決意したが、一方通行や路駐車両の影響で思うように動けなかった。やむを得ず車を止めて待機していると、パトカーから駐停車禁止の指摘を受けた。結局、車を降りて徒歩で彼らを追い始めることになったが、猛暑が体力を奪い、彼女を苦しめた。

コンビニと寿司屋での迷走

相良一家がコンビニに立ち寄ると、テッサは店外で彼らを待つことにした。しかし、一家はその後も繁華街をぶらつき、回転寿司屋に入ったものの、すぐに退店した。注文予定だったネタが品切れだったらしい。その迷走ぶりにテッサは困惑しつつも追跡を続けた。

牛丼屋での決断

最終的に一家は牛丼チェーン店に入った。テッサは暑さと疲労で限界を迎えつつあり、冷房と水を求めて同じ店に入る決意を固めた。彼女はわずかに体勢を整え、堂々と店内に入った。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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