小説「嘆きの亡霊は引退したい 10巻 源神殿」感想・ネタバレ

小説「嘆きの亡霊は引退したい 10巻 源神殿」感想・ネタバレ

どんな本?

「嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターによる最強パーティ育成術〜」は、槻影 氏による日本の ライトノベル
この作品は、ファンタジーコメディジャンルに属し、なろう系小説として連載されている。

物語は、世界中に存在する宝物殿と、そこに眠る特殊な力を持つ宝具に焦点を当てている。

富、名誉、そして力を求めて、危険を顧みずに宝物殿を探索するトレジャーハンターたちが大暴れする時代を描いており。

主人公のクライ・アンドリヒは、「嘆きの亡霊」のパーティーリーダーとして所属しており、同時に「始まりの足跡」のクランマスターも兼任。
彼はハンターレベル8でありながら、才能もやる気もなく、凡庸な存在。
一方、ティノ・シェイドはソロとして「始まりの足跡」に所属しており、ハンターレベル4に上達しています。彼は「嘆きの亡霊」に入ることを目指しており、クライの後輩として彼を慕い「ますたぁ」と呼ぶ。

この作品は、 ライトノベルとして小説家になろうで連載されているほか、GCノベルズ(マイクロマガジン社)からライトノベルとして刊行され。
メディアミックスとして漫画化もされており、2024年にはテレビアニメ化も決定している。

読んだ本のタイトル

嘆きの亡霊は引退したい~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~10
著者:槻影 氏
イラスト:チーコ  氏

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あらすじ・内容

その男――稀代の英雄か、 それともただの人か。

精霊人が探し続けていたという呪物「真紅の精霊石」の影響で石化してしまったルーク。
彼を治療するため、世界樹の麓にある伝説の精霊人の国・ユグドラを訪れたクライであったが、
世界を巡るマナ・マテリアルが集まるという世界樹には、なんとレベル10級宝物殿【源神殿】が顕現していた!

さらに肝心のルークが石化したまま動き出し(!?)【源神殿】の奥へと消えてしまったからさぁ大変!
困り果てたクライは、ルークが勝手に戻ってこないか期待しつつ一週間ほど待ってみることにしたのだが……?

嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 10

感想

クライたちは石化してしまったルークを治療するため、精霊人の国ユグドラを訪れるが、クライの引きの強さか、出現したのはレベル10級宝物殿【源神殿】であった。
石化したルークが自力で呪いを解き、宝物殿の奥へと消えてしまう中、クライは彼が勝手に戻ってくることを期待しつつ待つという展開が繰り広げられる。クライのハッタリと勘違いが光り、緊迫した状況の中にも笑いが混じるのがこの作品らしさであった。

ユグドラ編として、長く続いた呪物騒動が今巻でついに完結する。詰んだかと思われた状況を、クライの不幸と幸運が交錯する異能で好転させる展開は痛快であった。
仲間たちが再集結し、戦力を立て直す様子には胸が熱くなる。ケラーという神にも匹敵する強敵との戦いは、圧倒的な力に対してクライがどのように立ち向かうのか、緊張感が漂う場面もありつつ、クライ特有の楽観的な行動が印象的だった。

さらに、石化したルークが最後の一撃を決める場面は感動的でありながら、すぐに次の問題が発生するという、まさにクライらしい運の悪さを感じさせる。
セレンや他のキャラクターたちの可愛らしさや、ポンコツな部分も描かれ、物語全体にユーモアがあふれていた。
結果的に、ケラーとの戦いはクライのハッタリで収束するが、ユグドラが今後どう変化していくのかが非常に気になる展開となった。

全体的に、神という桁違いの存在を相手にしつつも、クライの特異な力と仲間たちの協力で危機を乗り越える様子が見どころであり、次巻でどのような冒険が待ち受けているのか期待が高まる。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

アニメ

PV

『嘆きの亡霊は引退したい』
『嘆きの亡霊は引退したい』
『嘆きの亡霊は引退したい』

OP

『嘆きの亡霊は引退したい』
葛藤Tomorrow Lezel Official フルバージョン

ED

『嘆きの亡霊は引退したい』
すくりぃむ! P丸様。 フルバージョン

備忘録

第10部 源神殿

Prologue  神

世界樹は、星の中心に存在し、マナ・マテリアルを集めて世界中に分散させる巨大な樹であった。しかし、その樹は今、災厄である「源神殿」に呑み込まれていた。源神殿は太古に異形の神を祀る神殿であり、王の帰還を待つ城でもあった。ここには、かつて世界を支配していた「仮面の神ケラー」の眷属たちが並んでいた。

ケラーは完全な復活を果たしていなかったものの、信徒の信仰と貢物を受けて力を徐々に取り戻しつつあった。ケラーは自分の眷属の気配が突然消えたことに異常を察知した。侵入者たちが、ケラーの認識外から唐突に現れたためである。侵入者たちは大群であり、その姿が事前に察知されなかったことが不審であった。

ケラーは神としての完全な力をまだ取り戻しておらず、相手が同格の存在ならば戦う力はなかったため、眷属たちに時間を稼ぐよう命令を下した。神殿に流れる力を使い、肉体を取り戻す時間を稼ごうとしていた。

ユグドラの街を歩くクライ・アンドリヒと仲間たちは、石化したルークの行方不明が続く中、状況が停滞していることに焦りを感じていた。宝物殿の強大な敵やアドラー達に対しても警戒を怠らず、《嘆きの亡霊》や《星の聖雷》、そしてユグドラの皇女といった強力な戦力を持っていたが、それでも敵のレベルは予想以上に高かった。

シトリーは、マナ・マテリアル撹拌装置を使い、宝物殿の強化ではなく弱化を試みる計画を提案した。クライはその提案を信じ、シトリーに作戦の指揮を任せたが、彼女の策が失敗した場合には帝都にいるアークを呼び出す切り札も残していた。

第一章  枯らす者

ユグドラの中心部にあるセレンの屋敷で、彼女のパーティと共に重要な作戦会議が行われていた。メンバーには、セレンや《星の聖雷》、そして《嘆きの亡霊》の主要メンバーが集結していたが、雰囲気は重く、閉塞感が漂っていた。原因は、ルークの解呪作戦が思うように進展せず、セレンが疲労困憊していたためである。

エリザが【源神殿】を調査した結果、現在では正面からの侵入が不可能であると報告し、神殿全体が強力な結界で囲まれていることが判明した。結界は、現代の魔術では破壊不可能であり、空間を遮断するほどの力を持っていた。セレンは、この結界が世界樹の力を転用していると推測し、そのため結界が持続する可能性が高いことを伝えた。

議論が進む中、シトリーは「マナ・マテリアル撹拌装置」を使って結界を弱体化させる作戦を提案した。この装置を使えば、地脈に流れるマナ・マテリアルを操作し、【源神殿】の力を削ぐことができると説明されたが、その方法は違法性があるため、メンバーの間で反発もあった。

しかし、セレンと他のメンバーたちは世界の危機を前にして、危険な作戦でも決行する必要があると強調し、最終的に作戦は承認された。計画は二段階に分かれ、まずはフィールド調査を行い、その後装置の製造を行うことになった。

その最中、クライはトイレに立つが、戻る途中で玄関から賊のアドラーが現れた。彼女は手鏡を持ち、クライに対し師匠を名乗り声高く宣言した。

《星の聖雷》と《嘆きの亡霊》のメンバーたちは、ユグドラの古い地図を前に作戦会議を行っていた。彼らは【源神殿】周辺の地脈調査を行う計画を立てていたが、地脈を見極められるメンバーが足りず、セレン一人に負担が集中していた。シトリーはユグドラの技術を活用できると提案したが、地脈の力が変動するため、効率的な調査は難しい状況であった。

話し合いが難航している中、《千変万化》が部屋に戻り、予想外にも《千鬼夜行》のアドラーたちを連れてきた。アドラーは《千変万化》の弟子になりたいと申し出ており、その一行は作戦に協力する意思を示していた。しかし、彼らの真の目的や意図が不明であり、メンバーたちは警戒を強めた。

アドラーは、世界樹の最奥にいる神の姿を「現人鏡」で映し出そうとする意図を示し、緊張感が高まる中、作戦は一層複雑なものとなった。

アドラーが掲げた鏡「現人鏡」が輝きを放ち、黒い祭壇が映し出された。そこには強力なマナ・マテリアルが渦巻いており、セレンや他のメンバーたちはその圧倒的な力に驚愕した。鏡は、使用者が求めるものを映し出すという強力な宝具であったが、神の幻影に気づかれ、鏡には罅が入ってしまった。これにより、全員が大きな精神的負担を負ったが、クライは鏡を直接見ていなかったため、影響を免れていた。

アドラーは現人鏡の性能について説明し、その力を使って調査を続けることを提案した。しかし、現人鏡で映し出せるのは限定されたターゲットのみであり、地脈全体を調べるには別の工夫が必要だと判明した。クライはこれを受け、手持ちの宝具「狗の鎖」を使って地脈の調査を行うことを提案した。この宝具は強力ではないものの、アドラーに自身の力を見せるための手段として選んだ。

作戦会議が終わり、《千変万化》が出て行った後、アドラーは鎖「狗の鎖」を見て困惑していた。この宝具は対象を捕縛するためのものであり、偵察に使うとは考えにくかった。しかし、《千変万化》がこの鎖を選んだ理由が理解できなかったアドラーは苛立ちを感じ始めた。ウーノは、もしかしたら宝具が幻影に敵と認識されないためかもしれないと推測し、宝具の選択には何か意図があると考えた。

一方、シトリーはクライの行動に信頼を寄せ、彼の考えを理解するのは難しいが、彼に従うべきだと主張した。彼女の強い意志と信頼がアドラーを驚かせた。最後に、黒髪の少女が「ますたぁ(クライ)の恐ろしさをまだ知らない」と脅すように言いながらも、彼女自身が最も不安そうな表情を浮かべていた。

宝物殿の攻略は、マナ・マテリアルの濃度に比例して難易度が上がるものであり、シトリーは今回の作戦でリィズグループと自分のグループに分けて、調査と装置の製造を進める事にした。クライは安全そうなシトリーのグループに参加し、リィズたちの偵察には狗の鎖が使われることになった。

シトリーは作業場で準備を進めており、クライもその場に加わった。彼女は宝石を使って装置の製造に取り組んでおり、材料として硝子を必要としていた。クライたちはみみっくんの体内にある街から窓硝子を集め、シトリーは装置の設計図に基づき魔法陣を描き始めた。ルシアが装置の製造を担当することになったが、彼女には同時に5つの魔法を使う負担がかかるという難題があった。

クライはセレンを気遣い、彼女に「快適な休暇」という宝具を貸し、少しでも彼女の負担を軽減しようとした。セレンは戸惑いながらもクライの提案を受け入れ、クライはその場を後にした。

鬱蒼とした大樹海の中、アドラー達は【源神殿】の攻略作戦を進めるため、地脈の調査を行っていた。狗の鎖を使って偵察を進めていたが、その過程で森に異変が起こっていることに気づいた。動物がほとんど姿を見せず、森の中に死骸さえ見当たらないという異常な状況に、アドラー達は次第に不安を募らせた。

さらに、狗の鎖が指示されたルートから外れ、【源神殿】の方向に向かい始めたことが判明した。やがて現れたのは、黒い仮面を被った人型の幻影で、周囲の植物を枯らすほどの力を持つ強敵だった。狗の鎖は果敢に幻影に体当たりを試み、拘束に成功するが、魔導師の幻影は簡単な結界魔法でそれを振り払った。

その後、狗の鎖は逃走し、幻影はその後を追い始めた。この行動にアドラー達は驚き、狗の鎖が逃げた理由を考えたが、その真意を理解できなかった。ティノが「試練」と呟く中、アドラーはこの状況が《千変万化》の計画の一部であることに気づき始めた。彼らは、強力な精霊を伴った幻影をおびき寄せ、迎撃する計画を立てていたのである。

鬱蒼とした森の中、幻影は上位神官の命令に従い、外敵を排除するために歩みを進めていた。彼には強い意志はなく、虚無とわずかな信仰心が残るのみであった。彼は神殿の警備を担ってきたが、外に出るのは今回が初めてであり、不安はなかった。森の中の景色はどこか懐かしく、狗の鎖を追跡しながら進んでいた。

その報告がシトリーに届いたが、彼女は驚くことなく冷静であった。狗の鎖を追ってくる幻影は、ユグドラに向かっていることが確認されていたが、彼女にとっては全てが予定通りのようであった。幻影の力は強力で、精霊を連れているため非常に厄介な相手であったが、シトリーはこの状況でも迎撃を決意した。

幻影の力を正確に理解し、シトリーは周囲を見回し、「私達だけで迎撃しましょう」と告げた。

仮面をつけた魔導師がユグドラに到達した。狗の鎖を追跡していたが、進む速度は遅く、ユグドラの結界にすり抜けて入っていった。この結界は通常、外敵を防ぐものであったが、魔導師には何も影響を与えなかった。彼は街を歩きながら、枯れさせる力で草木を次々と枯らしていた。

シトリーは結界が効かないことを想定しており、冷静であった。ユグドラ中心部でアンセムの結界が発動し、精霊が倒されたが、幻影は依然として強力であった。リィズは短剣を投げ精霊を攻撃し、ルシアの魔法攻撃が続けられたが、幻影は耐え続けていた。

ルシアは精霊人と協力し、強力な魔法を放ったが、幻影は同じ魔法で迎撃し、互角の戦いを繰り広げた。幻影の防御は強力で、結界内での攻撃も通用しなかった。戦いが激化する中、シトリーは最上位の精霊ミレスを使うべきだと考えたが、セレンが協力できる状態ではなかった。

セレンは《千変万化》と共にユグドラを歩いていたが、快適すぎてやる気を失い、完全にリーダーに身を委ねていた。

セレンは、クライから渡された派手な柄のシャツを着た瞬間、まるで奇跡のような効果を感じていた。全身が軽くなり、精神的な重圧が消え、快適な休息を味わった。このシャツは装備者を快適にする宝具であり、セレンにとっては非常に効果的だった。これにより、彼女は長い間抱えていたストレスや悩みから解放され、世界樹の暴走すらも些細な問題だと感じるようになった。

クライが訪れ、彼の指摘を受けたセレンは、世界樹の暴走を止める努力が無意味だと主張し、すべてを運命に任せるべきだと考えるようになった。彼女は、この快適さに浸り、やる気を失ったまま過ごしていた。

しかし、ユグドラで異常事態が発生し、クライは何が起きたのかを確認しようとした。セレンは依然として怠惰な姿勢を崩さず、ユグドラの全権をクライに委ねると宣言した。クライは困惑しつつも、セレンを担ぎ上げ、事態に対応しようと動き出した。

クライはセレンを背負い、ユグドラの戦場へと向かっていた。セレンは「快適な休暇」という宝具の効果で責任感が消え、気力を失っていたが、特に文句を言わずに背負われていた。クライは、重量操作の宝具「静寂の星」のおかげでセレンを軽々と運ぶことができていた。

セレンは、戦うことに興味を失い、戦場へ向かうことに疑問を投げかけたが、クライは「ハンターだから」と軽く返答し、実際には自分が戦うつもりがないことを内心で明かしていた。

やがて、戦場の様子が見えてきた。雪が降り積もり、氷の龍と漆黒の龍が激突する光景が広がっていた。セレンは、その戦いに参加している相手がユグドラの守護精霊「終焉のフィニス」であることに気づき、その力の恐ろしさをクライに伝えた。フィニスは非常に強力で、セレンも正面から戦って勝つことは難しいと言ったが、試してみると約束した。

セレンはクライに背負われた状態から下ろされ、戦場に向かって歩き始めたが、その歩みは非常に億劫そうでやる気が感じられなかった。彼女はフィニスに呼びかけたが、その声は小さく、効果はなさそうであった。クライは彼女を促し、もう少し大きな声を出すように言ったが、セレンの反応は気の抜けたものであった。

戦いが激化していく中、クライはその場に座り込み、せめてセレンを応援することにした。

終焉のフィニスは、長年ユグドラを守護してきた強力な精霊である。フィニスの力は「枯渇」であり、生命や魔力を奪い取る恐ろしい能力を持っていた。この力を持つフィニスと共に戦ったユグドラの戦士たちは、【源神殿】に挑んだが、行方不明となっていた。フィニスの力はあまりに強大で、ユグドラの誰もが使役することはできず、戦士たちは共闘するしかなかった。

フィニスは今、ユグドラに牙をむき、その力で大規模な破壊をもたらしていた。セレンはその姿を目にし、かつての仲間であるフィニスが理性を失っていることに気づいたが、自分にはどうすることもできないと感じていた。セレンはフィニスを止めようと呼びかけたが、効果はなく、フィニスは暴れ続けた。

その中で、ルシア・ロジェは強大な魔力でフィニスに対抗し、壮絶な戦いを繰り広げた。ルシアはフィニスの攻撃を跳ね返し、完璧な魔力操作によって優位に立った。フィニスと共に現れた幻影の魔導師も強敵であったが、ルシアの猛攻により次第に追い詰められた。

最終的に、フィニスとその幻影の魔導師はルシアの術によって倒された。しかし、倒れた幻影の仮面が砕け、その下に現れたのは、二百年前にフィニスと共に戦い、行方不明となっていたセレンのかつての仲間であった。この事実にセレンは驚愕し、快適さを忘れ、凍りついていた。

第二章  フェイズ 2

ユグドラの魔術研究所で、セレンはベッドに横たわるかつての仲間を見つめていた。彼はかつて【源神殿】に挑んだユグドラの戦士ルインであった。彼の衰弱状態を診断したアンセムは、命に別状はなく、間もなく目を覚ますだろうと伝えた。セレンは安堵し、その場に座り込んだが、幻影の中から仲間が現れるという前代未聞の出来事に驚いていた。

ルインは、かつて精霊フィニスと共に【源神殿】に挑んだ一人であり、行方不明となっていた。世界樹の暴走が始まって以来、数多くの勇敢な戦士たちが挑んだが、戻ってきた者はいなかった。セレンはその懐かしい友の姿を見て胸が詰まり、驚きと感動が入り混じる中、シトリーに戦場で起こったことを説明するよう求められた。

セレンは幻影を倒した際、フィニスの力が影響してルインが現れたのではないかと考え、ユグドラの結界が彼を認識できなかった理由を推測した。さらに、仲間がまだ幻影として残っている可能性に気づき、セレンは希望と不安を抱いていた。シトリーの指示に従い、世界樹の暴走を止める作戦が優先されることが確認されたが、同時に仲間を救うための方法も模索された。

その後、セレンはフィニスの力を再現するために動き出し、仲間を救うための手がかりを掴もうと決意した。

ユグドラの邸宅で《嘆きの亡霊》が滞在している中、クライは一人寝室で昨日の出来事を思い返していた。セレンが「快適な休暇」の影響で変わり果てた姿に驚き、また仲間がいなくなって焦る場面もあったが、最終的には全てが順調に進んだようであった。ルシアの強力な魔法が戦局を一変させ、敵が倒されたことで、作戦は成功したと感じていた。

その後、アドラーが部屋に訪れ、クライの行動について探りを入れた。アドラーは、クライが隠れて何か重要な調査をしていたのではないかと疑いを抱いていたが、クライは何もしていないと答えた。それにもかかわらず、アドラーはクライを高く評価し、特殊な能力を持っているのではないかと推測していた。

クライはこれ以上関与するつもりはなく、全てが終わったとアドラーに伝えたが、アドラーはクライの余裕ある態度に不信感を抱いていた。最終的にアドラーは挑発的な笑みを浮かべながら部屋を去ったが、クライは自分の無能さをアピールしつつも、この状況を静観していた。

アドラーは《千変万化》であるクライについて調査を試みたが、クライは動揺を見せず、何も得られなかった。アドラーはクライの手腕を目の当たりにしていたものの、どうやってそのような結果を生み出したか理解できなかった。クライが無意識のうちに示した余裕ある態度がアドラーの神経に触れ、さらに彼の推測通りにユデンの再生が遅れていることも苛立たしさを増していた。

ウーノとクイントがアドラーをなだめ、彼らはシトリーの作戦に従いながら状況を見守ることを決意した。しかし、アドラーはクライの手法を知ることに執着しており、クライがどのようにして幻影を調伏するのかを見極めようとしていた。もし、クライの行動が期待外れだった場合、アドラー達自身が動く必要があるかもしれないという考えに至った。

セレンは重い体を引きずり、早朝に研究所に向かった。そこにはすでに《嘆きの亡霊》のメンバーと《星の聖雷》が集まっており、装置の製造が進められていた。セレンは、ルインが再び気絶していることを確認しつつ、自身も仲間たちに加わり、作業を手伝った。装置の製造は順調に進んでいたが、ルシアが放つ魔法の複雑さと緻密さが際立っていた。

その後、リィズたちがユグドラの外で調査を終えて戻ってきた。彼らは、森の中で監視されているような感覚を抱きつつ、無事に帰還した。シトリーは装置を設置する場所を計画し、戦力をどう割り振るかを議論していたが、戦力不足が課題であった。

そこに、ルインが目覚め、セレンたちに加勢することを申し出た。さらに、クライ・アンドリヒも現れ、北側の防衛を担当すると告げた。この大胆な提案に皆が驚いたが、クライは幻影を倒さず時間を稼ぐと宣言し、セレンの頼みを快く引き受けた。セレンは感謝し、戦いに向けた準備を進めていた。

クライは、研究所を後にして、独り言をつぶやきながら部屋に戻った。彼は、ルインをセレンたちの元に届けただけで、いつの間にか仕事を頼まれることになってしまった。彼はよく頼まれごとをされる体質で、今回も例外ではなかった。ルインはユグドラの住民であり、セレンに会いに行く途中でクライに声をかけ、状況を説明してきた。ルインは仮面に囚われ、幻影となっていたが、戦いの末、解放されたばかりだった。

クライは自分が戦闘に巻き込まれるのを避けたが、時間稼ぎを頼まれることになった。彼は戦闘に自信がなく、戦闘力は低いが、囮としての才能には自信があった。彼は作戦のために足止めの手段を考え、スマホで妹狐に助けを求めたが、冷たい返答を受け取ったため、自力で策を練ることにした。

考えた末、彼は「呪われしクマのぬいぐるみ」を使うことを思いつき、それを準備する決意を固めた。

セレンとルインは、ユグドラでの大きな戦いを前に精神統一を行い、戦いについての会話を交わしていた。ルインは、仮面の神ケラーという邪神の力で幻影に変えられていたが、クライ・アンドリヒの策で解放された。ケラーは仮面を使って生物を眷属に変える存在であり、セレンたちは世界樹の守護者としてケラーを倒す使命を負っていた。

セレンは、ルインがルシアとの戦闘中に動きを止めた理由を問いかけた。ルインは、自分が幻影になっていた間もユグドラを覚えており、郷愁を感じたため攻撃を控えたと説明した。しかし、動きを止めた真の理由は、セレンが酷い格好をしていたからだと明かした。この予想外の理由にセレンは強く恥じ、顔を真っ赤にした。

ルインは冗談めかして、セレンが再びその格好をすれば幻影と元仲間の見分けがつくかもしれないと言ったが、セレンは強く拒否し、あの姿を再び見せるくらいなら死を選ぶと決意した。

アドラーは現人鏡を通じて【源神殿】にいる無数の仮面をかぶった幻影の軍勢を確認していた。その数は膨大であり、彼らは神殿型宝物殿の強力な存在だった。アドラーはこの絶望的な戦力差に対し、高揚感を覚え、《千変万化》がこの戦いで何らかの策を講じることを確信していた。

一方、クイントは軍勢が一体のみで戦うことに不安を抱いていた。だが、アドラーは幻影を調伏する方法に気づいた。彼は、幻影は魔物と異なり、知性を持ち、言葉での交渉が可能であることに注目したのだ。《千変万化》が通信の宝具を使って幻影と交渉している様子を現人鏡で確認し、これこそが幻影を調伏する鍵だと見抜いた。

アドラーはその発見に基づき、言葉による交渉が幻影調伏の鍵であることを同僚たちに伝えた。彼らは驚きつつもその可能性を認め、試してみる価値があると納得した。決戦の時が近づく中、アドラーは期待と恐怖を抱えながら微笑んでいた。

仮面の神ケラーは【源神殿】最奥の漆黒の祭壇で目覚めたが、肉体を取り戻しておらず不安定な状態にあった。神殿内に広がる邪気と共に、ケラーは不吉な予感を感じ取り、その予感に基づき防衛を強化することを決めた。神殿の守備は堅固であったが、周辺の知的生命体が何かを企んでいる可能性があったため、神殿の軍の一部を外へ送り、外敵を排除するよう命じた。ケラーは神託を終えた後、再び眠りに戻っていった。

戦いの日は準備を整える間もなく訪れた。主人公は清潔なベッドから起き、吐き気を抑えながら着替え、顔を洗い、食事を済ませた。今回は宝具を少なくし、身軽な状態で挑むことを決めていた。ユグドラの入り口に集まった仲間達と合流し、彼らが緊張感を漂わせる中、主人公は自身の役割が時間稼ぎであることを再確認した。

シトリーやルシアからの不安げな言葉に対し、主人公は自分なりの策があると伝え、仲間を安心させた。シトリーが計画を説明し、装置の準備が整えられる中、アドラーや他の仲間たちもそれぞれの準備に取り掛かった。彼らは装置を設置し、戦闘の準備を進めた。

アドラーたちが去る際、主人公は協力を呼びかけ、彼自身も自分の任務を遂行するために行動を開始した。

森の奥へ向かう瞬間、ニンゲンの表情には緊張の欠片も見られなかった。その佇まいは威容とは程遠く、微笑みすら浮かべていた。セレンが初めて会った時とは異なり、今回は快適な休暇を装備していなかったが、その平常心には驚愕を覚えた。一方、同行するティノは絶望的な表情をしており、その対比が顕著だった。

今回の作戦は非常に危険で、シトリーが練り上げた作戦も確実とは言えなかった。戦力や情報は限られており、【源神殿】の幻影軍に対抗するためにセレンたちは戦力を分散させる必要があった。特に《千変万化》は一人で幻影の軍勢を相手にするという難易度の高い任務を引き受けていた。

セレンたちは地脈の影響を抑えるための装置を設置し、幻影に備えて準備を進めた。ミレスの力を借り、土で作られた兵士たちが幻影の攻撃を防ぎつつ、セレンたちは次々と襲撃してくる獣型幻影と戦った。しかし、戦いの途中で装置が予想外に壊れ、作戦の失敗が明らかになった。

シトリーはマナ・マテリアルの予想以上の流れに耐えられなかったことを説明し、作戦は失敗であると認めた。セレンたちは撤退を余儀なくされ、幻影の襲撃がさらに強まる中、彼らは防衛を続けながら撤退を決断した。

ティノの操縦するカーくんは、速く正確に森を飛び抜け、彼の技術は以前よりもさらに向上していた。ティノは緊張した表情で、乱立する木々の間を巧みに進んでいた。彼らは【源神殿】に向かう途中であったが、ティノは自分の戦力不足を心配していた。クライは、ティノに戦闘の準備をしつつも、もし危険が迫ったらみみっくんの中に隠れるよう指示を出した。

目的地に着くと、クライはマナ・マテリアル撹拌装置を設置し、さらに呪物「マリンの慟哭」を召喚して援助を期待した。しかし、マリンの力は以前と比べて弱まっており、クライは状況が想定外であることに気づいた。さらに、黒騎士も攻撃に耐えながらも劣勢に立たされていた。

そんな中、クライは意図せず「黒き世界樹」の力を復活させてしまった。この世界樹は成長し、【源神殿】の幻影たちを次々と捕らえ、圧倒的な力で勝利した。しかし、世界樹はそのまま【源神殿】へ向かおうとし、クライはこれを阻止しようと、ティノに世界樹の誘導を任せることを決めた。

数百年を生きたセレンでさえ、目の前の光景は理解できなかった。森の中を進む巨大な漆黒の樹は、通常の植物とは異なり、マナ・マテリアルを吸い寄せていた。ティノはその樹に追われて必死に逃げ、シトリーはその状況を利用しようと指示を出した。樹の動きは速くはなかったが、数多くの枝が伸び、セレンや他の仲間たちを追い始めた。ルシアは強力な魔力がターゲットにされていると叫び、皆は全力で逃走を試みた。この混乱の中、樹はマナ・マテリアルを吸収し続け、追跡はまるで地獄の鬼ごっこのように展開された。

アドラーは《千変万化》との遭遇に強い衝撃と興奮を覚えていたが、時間が経つにつれて、その力の差に圧倒されていった。彼は当初、魔物を従えることが導手の最も重要な役割だと信じていたが、《千変万化》の神算鬼謀により、その考えが揺らいだ。ティノと共に絨毯に乗った《千変万化》が、幻影を精霊人に戻す場面を目の当たりにし、彼の作戦の巧妙さを思い知った。

アドラーはその時点で《千変万化》に恐れを抱くようになり、彼が策を練ることなく《千鬼夜行》は心で敗北していた。彼は勝つ手立てを見つけなければならないと考え、ウーノの言葉から《千変万化》の撹拌装置を利用した策を導き出した。そして、アドラーは一つの策に思い至り、仲間たちに戦うことを宣言した。

その後、彼はマナ・マテリアル撹拌装置を破壊し、仲間たちに最後の作戦を説明し始めた。彼の決意は固く、まだ《千鬼夜行》は終わっていなかった。

黒き世界樹は森の中を進み、その上でクライはしがみつきながら本物の世界樹を眺めていた。シトリーの導きに従い、黒き世界樹は魔導師たちを追い回していたが、幻影を倒してもなお力を求め続ける恐ろしい杖であった。途中で新たな幻影も現れたが、黒き世界樹には歯が立たなかった。

クライは黒き世界樹の上で気分が悪くなりながらも、周囲の状況を確認していた。マリンと黒騎士も同行しており、彼らは任務を終えて姿を消した。世界樹の葉が少しずつ薄くなり、シトリーの作戦が順調に進んでいることをクライは確認した。黒き世界樹もついに動きを止め、小さな花が咲き、クライは安堵した。

ティノがカーくんを使ってクライを迎えに来た時、彼はようやく地上に降り立つことができた。地面では精霊人や魔導師たちが疲れ切っており、ラピスも追いかけ回されたことに不満を漏らしていた。クライは世界樹に関する問いに対しては何も答えられず、適当に笑顔を浮かべていたが、シトリーが冷静に時間稼ぎが成功したと説明してくれた。

最後に、アドラーたちが姿を消したことが判明したが、クライはそれに対しても楽観的な態度を示し、ユグドラに戻ることを提案した。

【源神殿】の最奥で、神であるケラーは目覚めた。神官たちはその力に畏敬の念を示して跪いたが、神殿内にマナ・マテリアルの流れの乱れが発生していた。この異常な事態により、ケラーは目覚めざるを得なかったのである。神殿はマナ・マテリアルの供給に依存しており、それが減少すれば、神殿自体が崩壊する危険性があった。

ケラーは神官たちに状況を確認させたが、原因は不明であった。神自らが行動することは、神殿にさらなる負担をかけるため、控えるべきであった。ケラーは再び眠りに就こうとしたが、その瞬間、侵入者が現れた。空間を裂いて現れたのは巨大な百足と三人の人間であった。ケラーは彼らを見定め、その中の黒髪の女性がケラーに取引を持ちかけた。

彼女は自らを《千鬼夜行》の一員であり、現代の魔王だと名乗り、取引の条件として、情報を提供する代わりにケラーの軍勢を要求した。ケラーは人間との取引を本来軽視していたが、その女性が恐れる「英雄」の存在に興味を持ち、取引に応じることに決めたのである。

第三章  神々の戦い

ユグドラの精霊人の故郷は、自然豊かで美しい都市であったが、住民が少なく寂しい場所でもあった。しかし、黒き世界樹の活動が止まり、行方不明だったユグドラの戦士たちが次々と戻ってきたことで、ユグドラは大いに沸き立った。これにより、精霊人たちは再び通りに現れ、宴が開かれる準備が進められた。

戦士たちが無事に戻ったことは奇跡とされ、セレンやユグドラの民はクライたちに感謝の意を表した。彼らは、黒き世界樹の力によってマナ・マテリアルを吸い上げられ、問題を解決できたと信じていた。しかし、クライ自身は自分が何も成し遂げていないと感じていた。

クライは、まだ全ての問題が解決していないと認識していた。特に、ルークの解呪の目処が立っておらず、ユグドラの戦士たちが一騎当千と言われながらも、戦力として不安が残る状況であった。シトリーや他のメンバーたちは宝物殿の調査を進め、結界が消えたことを確認したが、まだ神の幻影が残っている可能性があった。

クライは、シトリーや他の仲間たちと共に、明日には宝物殿への侵入を決定し、状況の好転を待つこととした。そして、宴が静かに続く中で、クライはユグドラの民たちと交流し、シトリーから報酬の交渉を持ちかけられたが、特に望むものはなかった。

その後、ユグドラの端で偶然にも《千鬼夜行》のアドラーたちと再会し、彼らが神の力を使役しようとしていたことに驚かされた。アドラーたちはクライに復讐を試みようとしたが、クライは戦うつもりはなく、宝物殿での神との戦いを翌日に控え、冷静に状況を見守ることを選んだ。

アドラー達は、《千変万化》の去っていく姿を呆然と見送った。今回の計画は失敗し、クライがケラーを使役するつもりがなかったことに驚きを隠せなかった。彼らが交渉を試みた神の幻影ケラーは想像以上の力を持っており、その圧倒的な能力を前に、アドラー達は敗北を喫した。

アドラー達はマナ・マテリアルの減少によるケラーの復活の遅れを利用し、取引を成立させようとしたが、彼らの行動は逆にケラーを復活させてしまう結果となった。ケラーの持つ特殊能力「外部感覚」は想定外であり、彼らの計画は崩れ去った。

戦いの中でアドラー達は重傷を負い、特にユデンが犠牲となり、その圧倒的な力の差を実感せざるを得なかった。ケラーに挑むも為す術なく敗北し、彼らの誇りは傷ついた。しかし、《千変万化》は彼らを一顧だにせず、すべてを計算していたかのように見えた。

アドラーは自らの無力さを痛感しつつも、ケラーとクライの戦いの行方に興味を抱いた。神に対して人間が勝てるのか、その可能性を見せてもらいたいと考え、やがて夜の闇に消えていった。

クライは夢の中で、灰色の仮面を被った神、ケラーと対峙した。その夢は異常に鮮明で、ケラーは神殿への干渉を称賛しながらも、力を誇示し、クライに忠誠を誓うよう迫った。しかし、クライはこれを拒否し、ケラーの過去の敗北を指摘して反論した。ケラーは怒り、攻撃を仕掛けたが、夢の中では痛みも感じないため、現実ではないことをクライは確信した。

目覚めた後、クライはこの奇妙な夢を思い返し、シトリーの作戦によって【源神殿】が陥落寸前であることを確認した。しかし、ケラーの幻影に対する対策が不十分だと感じ、妹狐に助言を求めた。妹狐は神の弱点を教えることを拒否しながらも、神同士が唯一の弱点であることを示唆した。

その後、クライは神の力「神狐の終尾」を持つルシアが鍵になると考え、対策を進めた。そして、ルークの呪いについても、呪いをかけた張本人であるシェロに解呪を頼むことを思いつき、その方が安全かつ効果的であると気づいた。

クライたちがユグドラでの宴を終えた翌朝、ユグドラの戦士たちは戦いの準備を整えていた。宝物殿の弱化に成功し、行方不明だった戦士たちも帰還したことで、ユグドラ全体が希望に溢れていた。戦士たちは次なる目標として、ルーク・サイコルの石化を解呪するため、【源神殿】に向かう準備を進めていた。

戦士たちの一部は、かつて幻影として過ごしていた記憶を持っており、ルークの石像が【源神殿】の奥深く、宝物庫にあることを覚えていた。セレンは、仲間たちと共にその情報をもとにして、解呪のための作戦を立てていた。

その時、クライが現れ、石化の呪いを解くためにシェロと交渉する案を提案した。セレンはその発言に驚いたが、クライの言葉に耳を傾けた。交渉が成功するかは不確定であるため、セレンはその方法を最後の手段とし、【源神殿】への突入を決断した。

準備が整ったところで、突然、【源神殿】に崩落の兆しが見られたという報告が届いた。宝物殿が崩壊することは想定外の事態であったが、クライは驚く様子もなく、運が向いてきたと軽く答えた。セレンはその状況に戸惑いながらも、戦闘準備を進め、ユグドラの戦士たちと共に、【源神殿】の確認に向かう決意を固めた。

ユグドラの戦士たちは、宝物殿崩壊の報告を受け、急いで戦闘態勢を整えた。クライはこの事態を冷静に見守っていた。宝物殿の崩壊は珍しい現象であり、シトリーも驚いていたが、彼女の研究成果がこれほどの効果を発揮したことに感嘆していた。クライも宝物殿の崩壊が進行していることに感慨を抱きつつ、リィズや他の仲間たちとともに、今後の展開を見守っていた。

そんな中、ケラーという仮面をかぶった神が現れ、圧倒的な力でユグドラの戦士たちを圧倒した。彼の「外部感覚」という特殊な能力は、周囲の力を自在に操る恐るべきものであり、フィニスや他の戦士たちの攻撃も通じなかった。

ケラーとの戦闘が激化する中、クライは時間稼ぎを試み、冗談のように「神ダンス」を披露しようとしたが、その場面で妹狐が現れ、ケラーを吹き飛ばす。しかし、ケラーの力は強大で、妹狐さえも完全には対抗できなかった。さらに、【迷い宿】の幻影たちが現れ、兄狐も加勢した。彼らはケラーに対して「嘘の力」を使い、神に挑んだ。

クライはこの激戦の中で、仲間たちを撤退させることを決断し、戦いが次第に神々の領域へと移行する様子を冷静に見つめていた。

Epilogue  嘆きの亡霊は引退したい ⑩

ユグドラに戻ったクライ達は、【迷い宿】とケラーの戦いの結果を待ち、嵐が一日中続いた。翌朝、嵐が静まり、戦いは終わったことが確認された。クライは心配になり妹狐に連絡しようとしたが、彼女が現れて、ケラーを倒したことを報告した。妹狐は戦いで傷を負ったが、ケラーを撃退したことに成功した。

その後、【迷い宿】の幻影たちも姿を現し、クライは彼らから感謝されつつも、恩返しができないことに苦笑する。ケラーとの戦いは終わり、ユグドラの民たちは安堵したが、クライは彼らから説教を受けた。

最後に、クライは戦いを振り返り、神々の戦いに巻き込まれながらも無事に終わったことにほっとしていたが、彼は重要なことを忘れていた。それは、ルークの解呪の件であった。

ケラーは、神々の戦いにおいて全力を尽くしたが敗北した。十一の尾を持つ強大な化け狐との戦いで、ケラーは魂に消えない傷を負った。化け狐の強大な力により、ケラーは力を大きく削られた状態で世界樹に辿り着き、回復を試みた。そこで、世界樹のそばにある剣士の石像に気づき、その異常さに疑問を抱いた。石像に触れると、魂が強靭で、呪いを自ら打ち破り、剣士が再び動き出した。剣士は石化から解放され、強烈な咆哮と共にケラーに襲いかかり、白刃を振り下ろした。

アドラーは《千変万化》の策を全て確認した後、ケラーと狐の神との戦いが終わったことを見届けた。アドラー達は、遠く離れた田舎町に身を潜め、結果的に敗北したことを認めたが、アドラーはそれを気に留めなかった。彼は《千変万化》が自分達と組む必要がなかったことに気づき、その力の凄まじさに驚嘆した。クイントが今後の方針を尋ねたところ、アドラーは「次は人助けをする」と答えた。これまでの活動とは正反対の方向性に、クイント達も驚くことなく話し合いを始めた。

Interlude  レベル 9

ガーク・ヴェルターは、探索者協会ゼブルディア帝都支部の支部長として多忙な日々を送っていた。彼はクライ・アンドリヒの動向を気にしていたが、クライがまだユグドラから戻ってこないことに不安を抱いていた。クライはユグドラという未踏の地に向かっており、帝都中を騒がせた呪い事件の重要人物でもあったため、ガークにはその対応で膨大なクレームが押し寄せていた。そんな中、突然、強力な魔力の気配と共に美しい精霊人が現れ、ユグドラの皇族であると名乗った。彼女はクライが大きな借りを作らせたことを感謝し、彼をレベル9に昇格させるよう要求した。この突然の要求に、ガークはクライが一体何をしでかしたのかと困惑していた。

外伝  精霊人の未来

セレン・ユグドラ・フレステルは、ユグドラの今後について改革の必要性を訴え、外の世界との交流を始めるべきだと提案していた。クライは、セレンの提案に対してやや困惑していたが、彼女の熱意に押され、話に耳を傾けた。セレンは、これまでの事件を教訓にして、ユグドラを外界に開放し、人族と精霊人の関係をより良いものにしていくことを目指していた。

セレンは、ユグドラの住民を人族の社会に送り出す計画を立てており、クライに派遣先の選定を任せることを提案した。また、ユグドラを一大観光地にするため、武闘大会の開催や温泉の開発などの案も出した。セレンの急な展開にクライは戸惑いながらも、彼女の情熱に応えようとし、手紙を書いて協力者を探すことにした。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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