小説【嘆きの亡霊】「嘆きの亡霊は引退したい 11巻 レベル9」感想・ネタバレ

小説【嘆きの亡霊】「嘆きの亡霊は引退したい 11巻 レベル9」感想・ネタバレ

どんな本?

「嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターによる最強パーティ育成術〜」は、槻影 氏による日本の ライトノベル
この作品は、ファンタジーコメディジャンルに属し、なろう系小説として連載されている。

物語は、世界中に存在する宝物殿と、そこに眠る特殊な力を持つ宝具に焦点を当てている。

富、名誉、そして力を求めて、危険を顧みずに宝物殿を探索するトレジャーハンターたちが大暴れする時代を描いており。

主人公のクライ・アンドリヒは、「嘆きの亡霊」のパーティーリーダーとして所属しており、同時に「始まりの足跡」のクランマスターも兼任。
彼はハンターレベル8でありながら、才能もやる気もなく、凡庸な存在。
一方、ティノ・シェイドはソロとして「始まりの足跡」に所属しており、ハンターレベル4に上達しています。彼は「嘆きの亡霊」に入ることを目指しており、クライの後輩として彼を慕い「ますたぁ」と呼ぶ。

この作品は、ライトノベルとして小説家になろうで連載されているほか、GCノベルズ(マイクロマガジン社)からライトノベルとして刊行され。
メディアミックスとして漫画化もされており、2024年にはテレビアニメ化も決定している。

読んだ本のタイトル

嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~11
著者:槻影 氏
イラスト:チーコ  氏

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あらすじ・内容

その男――稀代の英雄か、 それともただの人か。

世界樹の麓に顕現したレベル10級宝物殿【源神殿】を攻略し、伝説の精霊人の国ユグドラを救ったクライ。
石化していたルークも元通り、さらに頼まれていた探索者協会ユグドラ支部設立の件も了承を得たということで仲間達と別れ一足早く帝都へ帰還したクライを、新たな波乱(ガークさん&フランツさん)が待ち受ける――!?

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嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 11

感想

今巻の物語では、クライが【源神殿】攻略とユグドラの救済という前巻の壮大な冒険を終え、帝都へ帰還するところから始まる。
しかし、彼を待っていたのは、新たな試練であった。
レベル9認定試験。
試験の舞台は高度物理文明の都市「コード」であり、クライは認定試験を受けるライバル達とともに潜入することになる。

物語の序盤から、ユグドラの報告書をめぐり、ギルドの上層部がクライの報告を信じられず混乱する場面では、ユグドラの皇女セレンが転移してきて「クライの話は全て正しい」と断言するお決まりの展開が安定の面白さを見せてくれた。

その後出てきた、レベル9試験への参加にあまり乗り気でなかったクライ、当初は断るつもりで本部に顔を出したら、あれよあれよと巻き込まれてライバルと共にコードに潜入させられる。
相変わらず主体性が無いw

コードへの潜入では、システムの欠陥を突いたクライへの最低の判定が痛快で。
ライバル達が次々と捕まる中、クライは状況を全く気にせず(気付かず?)、チョコバーを食べながらのんびりと、お姫様の護衛任務を続ける姿が笑いを誘った。
何も考えず自由に振る舞うクライが、逆にシステムの防御をかいくぐり、捕まっていたクラヒを救う展開は痛快であった。
特に、王位継承戦を巡る混乱に巻き込まれながらも、無能と判断されているクライが予測不能な行動で事態を掻き回して相手を混乱していた。

新キャラクターや懐かしい仲間たちの再登場が物語に厚みを加え、王位継承戦の裏側で巻き起こる陰謀や騒動がさらに状況を引っ掻き回し。

クライが王位継承戦を意図せず混乱させていく展開に、下巻への期待が膨らむ。

ただし、物語はレベル9試験の途中で終わり、次巻へ続く形となっため。
前巻のユグドラ編があまりにも壮大だったため、今回の試験編では少し物足りなさを感じてもいたが、それでも伏線が張り巡らされ、次巻への期待が大いに高まる内容であった。

全体を通して、クライのマイペースと、彼を取り巻く騒動が相変わらず楽しく描かれていた。彼が次に何をやらかすのか、そして王位継承戦の結末がどうなるのか、次巻の展開が楽しい11巻であった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

アニメ

PV

『嘆きの亡霊は引退したい』
『嘆きの亡霊は引退したい』
『嘆きの亡霊は引退したい』

OP

『嘆きの亡霊は引退したい』
葛藤Tomorrow Lezel Official フルバージョン

ED

『嘆きの亡霊は引退したい』
すくりぃむ! P丸様。 フルバージョン

備忘録

第11部 レベル9

Prologue  偉業

ユグドラは、世界樹の近くに存在する伝説の都市であり、精霊人が草木と共存し発展させた美しい場所である。クライは、ユグドラでの出来事を終え、帝都に戻る準備をしていた。セレン・ユグドラ・フレステルと彼女の片腕であるルインが、クライに感謝を示しつつも、名残惜しそうに見送ろうとしていた。クライは、リィズ達を残して先に帰ることを告げ、帝都での用事を優先するため、転移魔法での送迎を頼んだ。

セレンは、ユグドラの発展と探索者協会の支部設置についての話を進め、クライが協力することに感謝の意を述べた。また、セレンはユグドラを今後さらに良い国にしていく決意を示し、クライに再度の訪問を歓迎する言葉を残していた。クライは重く感じつつも、彼女たちの好意を受け入れ、次の冒険に向けて帝都へと帰っていった。

セレン・ユグドラ・フレステルは、ユグドラの皇女として、ユグドラと外界との関係を深めるために行動していた。彼女は、転移魔法を用いて帝都にある探索者協会を内密に訪れ、クライ・アンドリヒをハンターとしてさらなる高みへ導くため、彼のレベルを上げるよう協会に要求した。ユグドラは他国との国交を持たないが、世界樹の管理という重要な役割を担っており、一定の影響力があると考えたのである。

セレンはユグドラが次なる世界樹の暴走に備え、ニンゲンとの協力関係を築くことが自らの使命と認識していた。一方で、ルインはセレンがクライに断りなく交渉を進めたことに疑問を抱いたが、セレンはそれがハンターにとって喜ばしいことであると考え、問題ないと断言した。

セレンはユグドラをより良い国にするため、帝都を訪れる計画を立て、ユグドラの未来の発展に意欲を燃やしていた。

第一章  変化

クライは長い滞在からゼブルディアに戻り、クランマスター室に腰を下ろしていた。ユグドラでの時間も充実していたが、やはりゼブルディアの雰囲気に安心感を覚えた。クランマスター室は埃一つなく、エヴァが掃除をしてくれていたことに感謝を感じた。クライはユグドラからの帰還直後で、しばらくはゆっくり休むつもりだった。

エヴァが部屋に入って驚いたが、すぐに入都審査の問題や支部長ガークからの連絡に対応すると言い、クライは彼女に任せた。また、クライはユグドラとの交流を進め、探索者協会の支部をユグドラに設置する許可もセレンから得たと話した。

その後、エヴァはクライのレベルアップの可能性について触れ、ユグドラとの取引が順調に進めば、クライがレベル9に昇進するかもしれないと言った。クライはレベル9に対する興味があまりなかったが、エヴァの言葉に考え直し、ユグドラとの交流が進展すればレベル9も現実になる可能性を感じた。

エヴァは最後に「おかえりなさい」と微笑みかけ、クライは「ただいま」と返した。

ガークは帝都ゼブルディアの探索者協会支部長として、帝都を揺るがせた呪い事件の後処理に追われていた。事件の詳細は未解明だったが、最終的に「九尾の影狐」という犯罪組織の暗躍として幕を引き、責任は第零騎士団団長のフランツ・アーグマンが負った。

クライ・アンドリヒの関与が疑われたものの、彼が皇帝暗殺を防ぎ、武帝祭で狐の幹部を追い詰めた功績が大きく、追及を受けることはなかった。クライはユグドラに向かったと伝えられ、帝都内の問題からは一時的に逃れた。

驚くべきことに、ユグドラの皇女セレンが転移魔法でガークの元に現れ、クライをレベル9に昇進させるよう要求した。探索者協会の高レベル認定試験は厳しく、レベル9への昇進には莫大な実績とカリスマが必要であった。

ガークは、クライの実績が十分であることを認識していたが、レベル9への道は険しく、協会内部でも支部間の競争が激化していた。彼はクライのレベル9認定を準備するが、そのためにはユグドラでの成果とセレンの協力が必要であることを理解していた。

《始まりの足跡》のクランハウスで、クライは帝都に戻ってから五日間、堕落した生活を送っていた。ユグドラでの事件の報告は面倒で、エヴァに全てを任せていたため、自分は何もせずに過ごしていた。だが、ガーク支部長やフランツ卿、他の機関からの問い合わせが増え、ユグドラに関する情報を求められたため、クライはしぶしぶ話すことを決意した。

クライはラウンジでガーク支部長やフランツ卿、そして探索者協会の調査部員ズルタンと会談した。彼らはユグドラでの詳細な情報を求め、クライに質問を投げかけたが、彼ののらりくらりとした態度や曖昧な説明にフラストレーションが溜まっていった。特にズルタンはクライがユグドラの情報を信じられるのかどうか疑問を抱いていた。

そんな中、突然ユグドラの皇女セレンが転移魔法でラウンジに現れた。彼女は帝都を視察したいと言い出し、クライに案内を依頼した。セレンの出現により、会談の雰囲気は一変し、ガーク支部長やフランツ卿は驚愕しながらも、セレンの言動に対応せざるを得なかった。最終的に、クライはセレンの案内役を引き受け、ガークやフランツらの不安を残しながらもその場を後にした。

帝都ゼブルディアの宿で、ズルタンは探索者協会本部にユグドラ関連の報告をしていた。クライの説明は荒唐無稽で信憑性が低いと感じていたが、ガーク支部長は彼を信頼していた。これまでユグドラ関連の情報は幾度も誤りがあり、慎重に調査しなければならなかった。

ズルタンは《千変万化》が何らかの狙いを持っている可能性を考慮しつつ、報告を続けた。しかし、ユグドラに支部を作る話が進展しないことや、クライのレベル9審査が通らない見込みがあるため、探索者協会の信頼が揺らぎかねない状況を懸念していた。

報告を終えたズルタンが窓の外を見ると、人々が何かに注目していた。彼が確認すると、そこにはクライと精霊人の皇女セレンが人々を引き連れ歩いていた。その光景を見て、ズルタンは驚愕し、精霊人の皇族が現実に目の前にいることを理解したが、身を乗り出しすぎたために窓から落ちてしまった。

クライはセレンを護衛代わりに帝都を散策していたが、いつの間にか巨大な行列を率いる事態となっていた。多くの人々が彼らについてきて、規模は帝都の騎士団のパレードを超えるほどであった。クライ自身はその理由を理解していなかったが、セレンは終始上機嫌で、特に気にすることなく散策を続けた。

クランハウスに戻ったクライは、ガーク支部長やフランツ卿と対面した。彼らは、クライが引き起こした騒動に対して怒っていた。新聞にも「ユグドラからの凱旋」と大々的に報じられており、セレンの存在が注目を集めていた。また、セレンを模したぬいぐるみまで作られており、フランツ卿は混乱していた。

セレンは、ユグドラの制限を緩和し、人族との交流を進める意向を示し、最終的にはユグドラを観光大国にするという計画を語った。彼女の発言に対し、フランツ卿はユグドラの統治体制について質問し、セレンは自らをユグドラの女王であり、世界樹の娘であると説明した。さらに、かつてセレンがクライにユグドラの全権を譲ると発言したことについても、彼女はその時は「魔が差した」と認めた。

ガーク支部長やフランツ卿は、クライの行動に対して不満を抱きつつも、セレンの言葉に納得せざるを得なかった。

ユグドラとの交流は驚くべき速さで進んでいた。ユグドラは小規模な独裁国家であり、セレンが全ての決定を下すため、進展はスムーズであった。セレンはカリスマ的存在であり、彼女の評価は非常に高かった。ガークは、セレンがクライを非常に信頼していることに驚きを感じていたが、その理由をクライは教えてくれなかった。ユグドラとの国交構築により、クライのレベル9認定試験にも好影響を与える可能性があった。

その後、ズルタンが現れ、彼は何故か負傷していたが、ユグドラに関する報告を修正し、クライの審査が通る見込みだと伝えた。しかし、ズルタンは警告を発し、今回のレベル9認定試験には問題があると指摘し、手を引くべきだと助言した。今回の試験は、探索者協会発足以来の大きな汚点とされるものだった。

第二章  レベル 9認定試験

セレンが帝都を訪問してから約十日が経過し、彼女の滞在は帝国主導の観光事業として歓迎されていた。セレンは各地を巡り、夜は貴族の邸宅を訪問するなど、多忙な日々を過ごしていた。彼女の適応力により、帝国側も友好的な態度を示していたが、ユグドラには物々交換の文化が残っており、その点が懸念されていた。エヴァはセレンの護衛とクラン運営を両立し、疲れを見せずに働き続けていた。

クランレベルが7に上がることが決まり、エヴァと共に探索者協会本部への招待を受けたクライは、転移魔法陣で本部に移動することとなった。本部到着後、クライは《破軍天舞》カイザーと《夜宴祭殿》サヤという二人の高レベルハンターと出会い、レベル9認定試験に同行することになった。

その後、会議が始まり、議長から高度物理文明に関する依頼が今回の試験の舞台であると告げられた。カイザーは試験が通常とは異なり、高度物理文明の都市「コード」に関する危険な依頼であることを見抜き、その内容に懸念を示した。犯罪者ハンターを動員する可能性も示唆され、議長との対話は緊張感を帯びたものとなった。最終的に、カイザーはサヤとの協議を求め、試験への対応を決める時間を要した。クライは、自らの参加が予想外であると感じつつも、彼らの判断に任せることを決意した。

カイザー・ジグルドは、自らの実力を信じつつも、自分に不可能な依頼が存在することを認識していた。そのため、彼は事前調査を重視していた。今回のレベル9試験において、彼は《夜宴祭殿》サヤとの共闘が勝率を上げると判断し、彼女と協議することを選んだ。

試験の舞台となる「コード」は、世界から孤立し強力な軍事力を有する都市であり、その危険性から、これまで関連する依頼は存在しなかった。今回の依頼がレベル9試験として提示された背景には、協会が多くのレベル8ハンターを集め、何らかの問題解決を図ろうとしている意図が見え隠れしていた。

カイザーは、自らとサヤが試験を断れば、代わりに《千変万化》が依頼を受けて成功する可能性を懸念し、それが協会内での格付けに影響を与えると考えた。《千変万化》はその若さでレベル8に達し、既にレベル9に近い功績を持つことから、彼に劣るという評価が二人にとって屈辱となり得た。

サヤもまた、これまで一度もパーティに所属したことがなかったことから共闘に興味を示し、試験への参加を決意した。カイザーは彼女の能力を評価し、協力して試練を乗り越え、レベル9昇格を目指すことを誓った。二人はリスクを承知の上で、この試験を自らの成長と名誉のための機会と捉え、挑戦する覚悟を固めた。

カイザーとサヤが会議から戻り、レベル8ハンターである《千変万化》は自分が試験から外されていると感じて戸惑っていた。しかし、カイザーは犯罪者ハンターに依頼を任せるわけにはいかないと主張し、この試験を三人で解決することを議長に宣言した。これに対して《千変万化》は、自分の意思を示そうと試みたが、カイザーは彼の能力を理解しており、共闘することに自信を示した。

議長はカイザーの提案を受け入れ、三人に依頼を託すことを決定した。時間が限られており、この選択が最善であると判断された。厳密な審査を期待していた《千変万化》であったが、事態の急迫さに戸惑いながらも、試験への参加を避けられないと感じ始めていた。

依頼の舞台は「高機動要塞都市コード」であり、探索者協会と因縁のある都市であった。コードとの戦いで協会は過去に二度敗北しており、今回の依頼の成功には極めて高いリスクが伴っていた。《千変万化》は、二人のレベル8ハンターと共にこの試練に挑むことで、自らの成長と次なる目標であるレベル9昇格への糸口を見出そうと考えた。

高機動要塞都市「コード」は、高度物理文明の宝物殿から分離して誕生した都市である。犯罪者ハンターによって起動されたこの都市は、搭載された兵器で周辺の国々を制圧し、現在も空から地を支配している。過去に探検者協会は二度、この都市に挑んだが、いずれも失敗に終わった。

一度目の挑戦は都市が起動した直後に行われ、協会は移動能力を停止させることには成功したものの、多くのハンターを失い、都市の完全攻略には至らなかった。二度目の戦いでは初代王の死後、都市の混乱を狙って再び攻撃を仕掛けたが、内部への潜入も失敗に終わり、すべての参加者が消息を絶った。以降、協会は「コード」に干渉することを避けていた。

今回、協会は「コード」に関する新たな依頼を受け、都市内部に潜入して王族を救出するという任務を課した。この依頼は、レベル9認定試験として《破軍天舞》、サヤ、そして《千変万化》の3人に与えられた。依頼内容には不明瞭な部分が多く、依頼人が誰であるかも不明だが、協会はこの任務の緊急性と重要性を理由に受諾した。

潜入には、コードの内部システムが発行する金属製のパスカードが使用される。これにより、裏社会の人物として潜入することが求められ、慎重な行動が求められた。カイザーは、この試練を都市への挑戦と見なし、自信を持って仲間たちを率いた。

議長は3人に依頼の詳細を伝え、彼らの軽装を評価した。コード内での任務は戦闘を避け、隠密に行う必要があるため、この選択が最適であるとされた。サヤも、自分の能力が夜間でのみ発揮できることを告げ、全員が自分たちの役割を理解して行動することを確認した。

この試験は単なる昇格試験を超え、世界の命運がかかるものとなっていた。3人は準備を整え、都市への潜入任務に向けて出発することを決意した。協会の威信をかけたこの試練がどのような結末を迎えるかは、彼らの腕に委ねられている。

第三章  高機動要塞都市コード

探索者協会は転移魔法陣を通じて世界各地と繋がっていたため、クライと仲間たちはその一つを利用し、コードに向かう駅へと移動した。駅は裏社会の複数の組織が協力して造った場所で、どの国にも属しておらず、喧嘩がご法度という独自の秩序が存在していた。しかし、到着したクライは武装した者たちに囲まれ、緊張感が漂っていた。カイザーは武装集団と積極的に会話を交わし、サヤも偵察を行っていたが、駅内に自分たちに匹敵する実力者はいないと判断した。

クライが一人残された時、裏社会の一団に絡まれる場面が生じた。彼らはクライを過去の因縁で脅したが、カイザーやサヤの能力が背後で発揮され、クライの危機を救った。さらさらと聞こえる音が敵の精神に影響を与え、敵の武闘派リーダーを含む集団は恐怖に陥り、最終的に降参するに至った。しかし、リーダーは突如として何者かに吹き飛ばされ、重傷を負った。残されたメンバーも次々と倒れ、その場から逃げ出した者も全員力尽きてしまった。

この出来事により、クライは仲間たちの実力を再確認し、今回の任務は想像以上に順調に進むのではないかと感じた。彼は唯一生き残った男に確認を取り、戦意を失った相手を放置して、カイザーやサヤが戻るまでの休憩場所を探し始めた。

レベル8ハンターとは、幾多の死線を乗り越え、偉業を成し遂げた者に与えられる称号であった。カイザーとサヤは、そのような超一流のハンターとして探索者協会からの依頼を受け、高機動要塞都市「コード」に向かった。彼らは調査や戦闘を通じて、未知の都市に潜む危険や、コードが外部から戦力を集めている現状について情報を集めた。

カイザーは堂々とした態度で周囲と交渉を行い、サヤはその高い戦闘力で障害を排除した。二人の連携により、彼らはこれまでの危機を乗り越え、依頼を順調に進めていた。サヤの能力「さらさら」は、奇襲や精神への影響をもたらし、敵を圧倒する力として発揮された。クライはそんな二人の頼りがいに感謝しつつも、自分の無力さに悩みながらも協力しようと努めた。

コードについて集めた情報では、その都市が超長距離砲や機装兵を備え、外部からの攻撃を阻止していることが明らかになった。また、コードは市民権を報酬に人材を募集し、組織の内部には危険な戦力が集まっていた。都市の内部構造や目的は不明のままだったが、カイザーとサヤはその力をもってしても、用心深く行動する必要性を認識した。

依頼を無事に遂行するため、彼らは情報を整理し、翌朝に出発する馬車でコードへ向かう計画を立てた。クライは仲間たちの実力に励まされつつも、自らの夢が正夢になることを期待しながら、慎重に次の行動を考えていた。

カイザー・ジグルドは、柔軟と瞑想を通じて体と心を整えることから朝を始め、万全の状態で難関に挑む準備を整えた。今回の試練は、王族の保護という困難な内容であり、その成功は王族の生死や数に大きく左右されるものと彼は判断していた。もし保護が難しい場合、探索者協会が犯罪者ハンターを選んだ背景を察し、最悪の選択肢も視野に入れていた。

サヤは宿でカイザーと合流し、共に出発の準備を整えた。彼女は冷静にクライの行動を観察し、彼が自身の能力にも恐れを見せなかったことを評価したが、同時に彼の意図を完全には掴めずにいた。クライの不可解な行動は、彼の実力を示すと同時に仲間たちへの信頼を試しているように見えた。

彼らは、コードに入るための計画を練り、全員が一緒に行動するのはリスクが高いため、ばらばらに入って中で合流することを決めた。クライは楽観的な態度を見せたものの、仲間に自由な判断を委ね、自分たちの実力を見せるよう促していた。

カイザーは、クライの不可解な発言や行動に戸惑いながらも、彼との協力に意義を見出していた。彼は、今回の冒険が自らのハンター人生で最も波乱に満ちたものになるだろうと予感し、それを乗り越えることで真の英雄となる決意を固めた。

高機動要塞都市「コード」は、地上から百メートル以上の高さに浮遊し、高度物理文明の兵器で武装する世界屈指の強力な都市であった。都市は自動で作動する超長距離砲や、あらゆる攻撃を防ぐバリアに守られ、機装兵は一流ハンターと同等の戦闘力を有していた。人口は少なく、貿易も行われていないが、食料は無尽蔵に生産され、二百年以上にわたり自立した運営が続いていた。

最近、コードの上層部は外部からの移民を受け入れ始めたが、その手続きは都市システムに任され、職員たちは簡単な説明業務のみを行っていた。彼らは出入国管理局で退屈そうに勤務していたが、「ハンターが潜入する恐れがある」という情報が広まると、僅かな緊張感が漂い始めた。

コードの出入りはカードによって管理されていたが、そのシステムは完全には解明されておらず、ハンターの判別はできなかった。職員たちは、カードを持つ者を市民として登録するだけであり、ハンターの潜入を見抜く方法は力量の判断に頼るしかなかった。近年、外部から多くの人間が流れ込んでいたが、職員たちはハンターが三人程度であると予測し、もし誤って別の者を捕縛しても問題にはならないと考えていた。都市そのものが強力な防衛システムを持つため、最終的にはシステムが潜入者を排除するのを期待していた。

大型の乗合馬車が発着する場所で、クライたちは他の乗客と共にコードへの移動を開始した。馬車に乗る者たちは一見物騒な雰囲気を漂わせていたが、誰も騒ぐことなく静かに過ごしていた。クライはサヤやカイザーと別の馬車に乗り、移動中に一時的に眠ってしまったが、無事に目的地に到着した。

馬車を降りたクライは、巨大な建造物「コード」に目を奪われた。空に浮かぶその要塞都市は、まるで島か方舟のようで、圧倒的な威圧感を放っていた。彼はその壮大さに驚きながらも、王族の保護という任務の難しさを改めて実感し、任務の無謀さに不安を覚えた。

列に並んで入国手続きを進めると、柱の内部には白い金属で作られた部屋が広がっていた。そこには威圧的な機装兵が立ち並び、ゲートの向こうには黒い制服を着た職員が待機していた。職員はクライにカードを提示するよう指示し、入国審査を開始した。

クライがゲートを通ると、職員は再びゲートをくぐるよう命じ、不思議な反応に困惑していた。その後、職員はクライに戦闘能力や反意の有無について確認を取ったが、問題がないと判断され、彼を受け入れることを決定した。クライは無事に審査を通過し、コードの内部に足を踏み入れる準備を整えた。

コードの出入国管理局では、入国した青年に関する情報が職員たちの間で議論されていた。ゲートを通過した際、その青年の総合評価が「4」という異常に低い数値を示したため、職員たちは困惑していた。通常、下級民でも30以上の評価が出るため、この結果は極めて異常であった。職員たちは念のため反意の有無を確認し、真偽判定も行ったが、結果は全て問題なしと判明したため、青年を受け入れることを決定した。

職員たちは、侵入を警戒するハンターの数が最大でも三人であることから、わざわざその枠に戦闘力の低い青年を潜入させることはありえないと判断し、特に危険視しなかった。また、コード内部では機装兵が機能するため、万が一の際も市民が制圧できると見込んでいた。

その時、別のゲートから「総合評価10000超え」の人物の情報が届き、職員たちの間に緊張が走った。五桁という異常な数値に驚きながらも、その人物が想定されたハンターであると判断され、内部に通されることが決まった。これにより、先程の「評価4」の青年の存在は職員たちの意識から消え去った。

クライ・アンドリヒは、コードの出入国管理局で住民登録を済ませ、クラス1の市民として階級を付与された。その後、彼はオリビアという侍従長に導かれ、コード王の末娘アリシャ王女の近衛として任命された。クライはこの都市の階級制度や、システムに従って生きることの重要性を学んだが、自身の無能さが逆に歓迎されるという異常な状況に困惑した。

クライは、アリシャ王女が他の王族との争いから幽閉されていることを知った。王族は都市のシステムにおいて特別な存在であり、血筋による支配が重要なため、彼女は「予備」として生かされていた。クライはこの情報を活かし、王族全員を保護する計画を進める意志を固めた。

さらに、彼は他の近衛と出会い、バイカー・グリッド率いる盗賊団が不満を抱えながら近衛を務めている現状に直面した。バイカーたちは自分たちが有能な戦力であるにもかかわらず、アリシャ王女の無意味な護衛任務に不満を抱いていた。クライは巧妙な言葉で彼らをなだめ、今後の協力関係を築く一歩を踏み出した。

こうして、クライは未知の都市システムの中で自らの役割を模索しながら、アリシャ王女の保護と都市脱出という難題に挑む準備を整えた。

高機動要塞都市コードは七つのエリアに分かれており、それぞれが王や王の子であるクラス8の統治下にあった。末娘であるアリシャ王女のエリアは外れに位置し、彼女は予備的存在として都市の一画で管理されていた。ジャンとオリビアは、彼女を見守る役割を担うためにクラス5の市民として配置され、形式的な管理を続けていた。アリシャの世話は都市システムが行っており、二人は彼女の存在に特別な感情を抱いていなかった。

王位継承戦が近づく中、彼らの任務は、アリシャを迅速に排除する準備を整えることであった。次の王が決まると、アリシャはその役割を終え、都市システムによって存在を消される運命にあった。しかし、彼女に従う機装兵がいる限り排除は困難であり、そのため全ての機装兵を人間の近衛に置き換えるよう指示が下されていた。

バイカーたちのような犯罪者集団が近衛に選ばれたのは、処刑や排除の任務に向いた存在であるためだった。アリシャが王位を継ぐ可能性は極めて低く、王の証を巡る継承戦の焦点は他の王族たちに向けられていた。王位を得た者が都市システムを掌握するため、各陣営は外部からも戦闘能力の高い傭兵を招き入れ、王位を巡る争いに備えていた。

ジャンとオリビアは、この状況が維持されることを望んでいた。彼らの目的は、アリシャの近衛たちが無意味な反乱を起こさないよう管理し、王の証が奪われる混乱の中で自らが危険に晒されないよう立ち回ることであった。

クライ・アンドリヒは高度物理文明の都市システムに触れ、その高度な機能と快適さに驚いた。彼はアリシャ王女の部屋の前で王女とのコミュニケーションを試み、王女も独自の機能を用いて生活を楽しんでいる様子を見せた。しかし、平穏な時間はオリビアの到着で一変した。オリビアはバイカーたちが他の王族の近衛を襲撃し、全滅したことを報告した。

この事態により、アリシャの護衛が不足し、クライは新たな近衛を集めるよう命じられた。彼は急遽クラス3に昇格され、都市の監獄から罪人を集めて補充するよう指示を受ける。都市システムの制約と混乱した状況の中、クライは新しい近衛を見つける任務に取り組まざるを得なくなった。

カイザーは罠にかかり、捕らえられた。高レベルハンターとしての耐性を超える薬物を使用され、意識を奪われた彼は拘束されたまま目覚め、コードの貴族階級の男と対峙した。その男は、ハンターを捕らえることが目的で、巧妙な計画を用意していたことを告げた。

カイザーは、自身と仲間が囮として使われた可能性を考えつつ、敵の技術力の高さに危機感を募らせた。彼は自らの身体を壊し、任務の障害にならないよう試みたが、コードの技術による命令で自傷行為を制限された。それでも彼は全力で抗い、身体を使い物にならなくすることで時間を稼ぐことに成功した。

しかし、最終的には白い仮面を被せられ、その心地よさに不安を覚えながらも意識を失った。彼は沈みゆく意識の中で、仲間《千変万化》に後の対応を託し、暗闇に消えた。

アンガス・コードは、総合評価12230のカイを捕らえた後、彼の異常な能力と意思の強さに驚愕していた。カイは捕縛されても誇りを失わず、仮面を使われる直前に自らの肉体を破壊するなど、異例の行動を取ったが、最終的にはアンガスの手駒と化した。

アンガスの側近であるジーン・ゴードンは、コード王位継承戦に備え、外部から優秀な戦士を招く策を立案していた。ジーンは、サーヤというもう一人の戦士にも注目していたが、彼女が実験施設で50体の機装兵を無傷で倒したことに驚愕した。この出来事から、アンガスは最後の仮面をサーヤに使う決断を下した。

アンガスは、現コード王の無策な統治を批判し、新たな王として都市を支配し、全世界にその力を示すことを決意した。さらに、アンガスは今後の王位継承戦に備え、網にかからなかったハンターたちにも対応するため、待ち合わせ場所への監視を強化するよう命じた。彼は、コードを支配する新たな王としての未来を確信し、その力を全世界に知らしめることを誓った。

クライはオリビアの命令を受けて近衛を探すため、コードの監獄へ向かうことにした。監獄では罪人を近衛にする計画が進められており、市民権のない者たちは近衛になれないと聞かされ、監獄で人材を選ぶことが最適とされた。

監獄内部でクライは、透明な扉で仕切られた部屋に収監された罪人たちを確認した。その中には、かつての仲間に酷似した人物が含まれていた。彼女はエリーゼ・ペックと名乗り、外見もエリザにそっくりであったため、クライは驚愕した。また、エリーゼの仲間として収監されていた面々は、クライが以前参加した武帝祭で出会った《嘆きの悪霊》のメンバーたちだった。

ルシャ、クトリー、ズリィ、クールらも収監されており、彼らはクライの姿を見て歓喜し、再会を喜んだ。クールは、エリーゼが最近パーティに加わったメンバーであり、彼女には《投降》という二つ名があると説明した。

この再会により、クライは彼らを解放し、近衛として採用することを決めた。クールたちの協力を得て、これからの任務を進めていく決意を固めたが、最下層に収監されているリーダー・クラヒの解放にはさらなる困難が待ち受けていると知った。

クライは《嘆きの悪霊》のメンバーであるクールたちを監獄から解放し、彼らと共に行動を開始した。クールは突然の救出に戸惑いながらも、クライの計画に従う覚悟を決めていた。解放後、クライはクールたちを金属製の蜘蛛型の乗り物に乗せ、彼らの協力を求める姿勢を見せた。

クライは「王族を保護する」という大規模な任務に取り組んでいると明かし、そのための人手が必要であることを説明した。さらに、クールには《嘆きの悪霊》のリーダーであるクラヒの救出計画を任せると宣言した。

クールは、その無茶振りに青ざめながらも、クライの指示に従う決意を固めた。クールたちは、今後の行動を通じてクライの指揮下で成果を上げることを目指すことになり、その裏には彼らのリーダーを救い出す強い意志が秘められていた。

クライは《嘆きの悪霊》のメンバーを監獄から解放し、彼らをアリシャ王女の近衛に任命することを決めた。彼らの力量には不安があったが、信頼できる顔見知りであり、彼らの評価も十分高かったため、近衛としての適性があると判断した。

新たな仲間たちと共に、クライは彼らをアリシャ王女のビルへ案内した。メンバーたちは初めて見る都市の光景に緊張しながらも、クライの案内の下で王女との謁見に臨んだ。王女は快く彼らの近衛登録を承認し、新たに五人が近衛に加わった。

その後、クライはメンバーたちに自室を選び、ビル内での自由な行動を許可した。クールたちは監獄での過酷な体験を思い出し、この都市のシステムの異常さと便利さの両面を理解することになった。また、都市内で魔法が使えないことが判明し、彼らはクラヒの救出に向けた新たな計画の必要性を痛感した。

クールたちは情報収集に専念し、《千変万化》の動向を注視しながら、王族を保護するというクライの目的を活かして、クラヒを救出するための隙を探る決意を固めた。クラヒを助けるためには、彼ら自身の活躍が不可欠であり、その瞬間を逃さないよう、準備を進めていくことを誓った。

第四章  神算鬼謀の選択

クライは《嘆きの悪霊》のメンバーを解放した後、アリシャ王女(おひいさま)の観察を続けていたが、大きな進展はなく、五日が経過した。クールたちはクラヒ救出のために情報収集を進めていたが、目立った進展はまだなかった。クライ自身は王女の生活リズムに合わせ、自分も規則正しい生活を試みていた。

王女は毎日規則的な生活を送り、都市システムが提供する食事をとりながら、勉強や運動を行っていた。クライは彼女の生活に合わせることで、次第に王女と心の交流を深め、彼女の退屈を和らげる存在となっていった。王女はチョコバーに特に興味を示し、扉越しにクライが食べる様子を熱心に見つめていた。

一方、クールたちは監獄でのクラヒ救出が難しいと判断し、都市システムや階級制度の詳細な情報を集め始めた。その中で、王女ノーラがクラヒに執着し、彼を近衛にするために監獄へ通っているという噂が判明した。クライたちは、クラヒの解放申請には王族の協力が必要であることを認識するも、現状ではおひいさまにその役割を担わせることは不可能だと判断した。

ルシャは、クライがチョコバーを時空鞄に大量に持ち込んでいることを知り、彼に感心しつつも疑問を抱いていた。おひいさまもまた、チョコバーに強い興味を示しながら、都市システムの無機質な食事に飽きている様子を見せていた。

こうして、クライはおひいさまとルシャと共に穏やかな時間を過ごしつつも、クラヒ救出に向けた次の一手を模索する状況が続いていた。彼は仲間たちの情報収集が進むことを祈りながら、王女との日常を大切にし、機が熟すのを待っていた。

《嘆きの悪霊》のメンバーは都市コードでの情報収集を進めながら、リーダーであるクラヒの救出方法を模索していた。都市は七つのエリアに分かれ、それぞれのエリアが王族によって統治されていた。市民と下級民の間に明確な階級差があり、システムが市民の生活を徹底的に管理していたが、下級民はその保護から外れていた。

監獄の警備は極めて厳重で、多数の兵器と高度なセンサーが配置され、これまで一度も破られたことがなかった。クールたちはクラヒの解放を正規の手続きで目指すも、ノーラ王女がクラヒを独占しようとしているため、それも困難な状況だった。ノーラ王女は他の王族との派閥争いに巻き込まれ、クラヒへの執着を強めていた。

一方で、クトリーが下級民と接触し、王が間もなく死亡するという情報を得た。これにより、王族たちが戦力を集め、次の王位を狙っていることが明らかになった。下級民たちも武装を進め、混乱を利用しようとしていた。

この都市での戦力争いは、想像以上に激しく、クールたちにとって非常に危険な状況だった。《千変万化》の意図は王族を保護することにあったが、それが単なる監禁解放以上の困難を伴うと判明した。クールたちはこの任務の規模とリスクに圧倒されながらも、クラヒを救出するという目的に集中することを決意した。

この難局を乗り越えるため、彼らは慎重に行動しながら、自分たちにできることを模索していた。

アリシャ・コードは、都市システムに管理された快適な部屋で、満たされた生活を送っていた。幼い頃からこの部屋で過ごし、外の世界に興味はあったものの、外に出たいとは思わなかった。彼女の権限は限られており、部屋の管理や配下の任命にとどまっていた。

ある日、クライ・アンドリヒという青年が新たな近衛として連れてこられた。彼は他の近衛とは異なり、アリシャに興味を示し、手を振れば振り返してくれるなど、初めての反応を見せた。クライは部屋の外に居座り、アリシャの生活を観察するようになった。

青年は頻繁に「真っ黒なおやつ」を取り出し、楽しそうに食べていた。それはアリシャが見たことのないおやつで、彼女の興味を強く引きつけた。アリシャは、自分のもらうおやつが栄養面で優れていることを理解していたが、クライのおやつには新鮮さと魅力があり、どうしても気になった。

彼が別の近衛にそのおやつを分け与える様子を目の当たりにしたアリシャは、自分だけがそれを手に入れられない現実に直面した。システムの制約で外部のものを受け取れない彼女は、無力感に打ちひしがれた。

アリシャは、自分の部屋から唯一連絡が取れる都市の支配者、コード王に頼むという決断をした。これまで一度も行使したことのない権利を使い、青年の持つ「真っ黒なおやつ」を手に入れるため、王に連絡を取る準備を始めた。彼女は、断られても納得できる覚悟を持ち、仮想端末を呼び出して行動に移した。

機動要塞都市「コード」は、初代コード王によって起動された都市システムを基盤に、一本の塔を中心として成長を遂げた高度物理文明の都市である。その中枢となる王塔は、コード王だけが直接管理し、他の誰も立ち入ることが許されない神聖な領域であった。

現コード王であるクロス・コードは、都市の全てを掌握し、王の権限をもって支配していた。彼は自分の子どもたちに次の王位を競わせるために巧妙な計画を進め、各王子・王女が互いに競い合い、最も強い者が新たな王となることを望んでいた。クロスの肉体は限界を迎えつつあったが、王位継承戦を見届けるため、彼は最後まで都市を支配し続ける覚悟を固めていた。

そんな中、クロスに突如として連絡が入った。王に直接連絡を取れる者は限られており、その内容に注目したクロスは、差出人が自身の娘であるアリシャ・コードであることに驚いた。アリシャは王位継承者のスペアとして生まれた特別な存在であり、これまで一度も連絡を寄越したことがなかった。

アリシャの依頼内容は「真っ黒なおやつが食べたい」という不可解なものだった。クロスはその意味を測りかね、都市システムを通じてアリシャの部屋の映像を確認することにした。この出来事が、王にとっても予測できない展開への幕開けであった。

クライはコード都市の高度なシステムに支えられた快適な生活を送りつつ、おひいさまと日常を共有していた。おひいさまは、彼が部屋の前に現れるのを楽しみにしており、二人の関係は日を追うごとに深まっていた。しかし、クライがチョコバーを食べたことでおひいさまは強い興味を示し、それが彼女の生活に大きな変化をもたらした。

ある日、クライはオリビアから職務怠慢を理由に階級を下げられ、近衛の任を解かれたが、おひいさまの意外な一言で状況が一変した。おひいさまがクライに対し階級6への昇格を命じたことで、オリビアの権限が無効化され、彼女は動揺しつつその場を去った。おひいさまはクライの力を信頼し、彼にチョコバーの提供を求めた。

クライは物質転送機能を使い、念願のチョコバーをおひいさまに届けた。おひいさまの行動によってクライの立場は劇的に変化し、二人の関係が一層特別なものとなる兆しを見せた。

アンガス・コードは、ノーラ・コードとの王位継承戦に備えて、監獄に囚われている強力な魔導師《雷帝》の扱いについて議論していた。ノーラが《雷帝》を手駒にしようとしていることを知り、アンガスはそれを阻止するために策を講じる必要に迫られていた。

ノーラは、自分の配下を鍛えることで戦力を整え、《雷帝》を解放するための説得を試みたが失敗していた。アンガスは、ノーラが説得を諦めた以上、次は強制的に《雷帝》を従わせるための道具を使うと予測し、事態を警戒していた。

アンガスは、《雷帝》をノーラの手から奪うため、アリシャ王女の陣営に目をつけた。アリシャは元々王族のスペアとして幽閉されていたが、彼女の近衛が《雷帝》の解放に向けた情報収集を行っていることを突き止めた。アンガスは、アリシャ陣営に《雷帝》を預けることでノーラの計画を妨害しようと画策した。

さらにアンガスは、都市システムを操作し、アリシャの近衛であるクライ・アンドリヒをクラス6に昇格させた。これにより、クライたちは《雷帝》を解放するために動き出すが、それはアンガスが仕組んだ罠であった。アンガスはジーンにノーラの動きを封じるよう指示し、監獄の規則を一時的に変更する準備を進めた。アンガスは、自身の計画が成功し、ノーラを出し抜くことを狙っていた。

アリシャ王女の部屋で、彼女はゼブルディア製のチョコバーを心から楽しみながら食べていた。クライは、チョコバーがアリシャのお気に入りになったことに喜び、今後の生活がさらに楽しくなると期待した。そんな折、クールたちが慌てて駆け込んできて、ノーラ王女が《雷帝》を確保するために本格的に動き出したと伝えた。

クライは、自分の階級が昇格していることを確認し、アリシャ王女にクラヒを助けてよいかと尋ねた。彼女の許可を得たクライは、《嘆きの悪霊》の仲間たちと共にクラヒを助け出すため行動を開始した。監獄までの移動には通常の「クモ」が必要だったが、ノーラによってクモの利用が封鎖されていたため、移動手段がなく困っていた。

その時、赤いクモに乗った謎の男TCが現れ、彼らを監獄まで送ると申し出た。TCはノーラの妨害を見越して待機していたと言い、移動中に下級民からの攻撃を受けるも、ノーラが彼らを操っていたことを明かした。TCはノーラの策略を見抜きながらも、都市規則をわずかに曲げて下級民を助けることに同意した。

クールたちは移動中に、TCの正体が王族であるトニー・コードであると察し、驚愕した。トニーが他の王族と協力してノーラの計画を妨害していることが明らかになったが、クライは落ち着いて行動を続けた。監獄の近くに到着した彼らは、トニーに見送られながら、クラヒの解放を目指して監獄へと向かった。ノーラに先んじて《雷帝》を解放するための戦いが、いよいよ始まろうとしていた。

クライたちは監獄を訪れ、クラヒの解放を目指して行動を開始した。監獄職員から、権限争いによる混乱で規則が頻繁に変更されていることを聞き、解放申請には面会が必要であると説明を受けた。そこへノーラ王女が現れ、威圧的な態度で自分を優先するよう命令したが、職員は規則に従ってクライを先に案内すると告げた。

激怒したノーラは、アンガスや他の王族への怒りを爆発させ、自分が王になった暁には全員を抹殺すると宣言した。クライは冷静にノーラに近づき、和解の提案を行い、彼女と共に《雷帝》との交渉を進めようと持ちかけた。ノーラは困惑しながらも、その提案を受け入れることにした。

クライは、穏便な解決を目指すため、ノーラと協力してクラヒの解放に挑む姿勢を示した。ノーラは兵士たちにその場で待機を命じ、クライと共に監獄内へと進む準備を整えた。

ノーラ・コードは、クライの意図が理解できずに戸惑いながらも、彼と共に《雷帝》の収監された監獄の最下層へ向かった。ノーラは王族としての圧倒的な権力を持ちながら、クラヒ・アンドリッヒを説得できず、洗脳道具の使用をもためらっていた。アンガスの規則変更により、《雷帝》の解放申請が可能になったが、ノーラはクールタイムが終了する直前に規則を元に戻し、クライの解放申請を無効にしようと試みた。

しかし、クライは《雷帝》の獄房に向かい、彼を「友達」として呼びかけ、何気ない挨拶を交わした。その瞬間、獄房内に雷が迸り、これは《雷帝》からの返事であるかのようにノーラに感じられた。ノーラは都市システムを通じてクライの名前を確認し、彼が《雷帝》に似た偽名を使ってこの場に来ていたことを知った。

ノーラは自らの敗北を認め、クラヒを自由にするよう告げた。これにより、彼女は自身の敗北を初めて痛感し、言い逃れもできない形で認めざるを得なくなった。

クラヒ・アンドリッヒの解放申請が無事に通り、彼は拘束から解放された。クール達は歓喜し、クライも謙虚な態度を見せながらクラヒと再会した。クラヒは収監中にも自信を失わず、仲間たちに感謝の意を示した。ノーラ王女もこの解放劇を無言で見守り、彼女の態度には以前とは違った変化が見えた。

だが、解放後すぐに監獄にサイレンが鳴り響き、脱獄認定が下される事態となった。アンガス・コードが規則を巧妙に書き換えたため、クラヒの解放は不正と見なされたのだ。脱獄認定により、監獄の防衛システムが作動し、脱獄者とその協力者を排除するために機装兵が動き出した。

ノーラ王女は自らの逃走を図り、クラヒたちを見捨てる形で円盤に乗り込んだが、クラヒへの未練も見え隠れしていた。彼女は「かつて大好きだった《雷帝》は、そんな防衛システムには負けない」と豪語した。

クラヒは圧倒的な自信を見せ、機装兵の攻撃に対抗。魔術が制限される環境にもかかわらず、自らを雷と同化させるという新たな技を披露した。彼の放つ紫電により、巨大な機装兵は一瞬で粉砕され、彼の圧倒的な力が改めて証明された。

Epilogue  嘆きの亡霊は引退したい ⑪

クラヒ・アンドリッヒの雷の魔術によって、クライたちは監獄からの脱出に成功した。クラヒは雷の力で監獄の兵器や機装兵を圧倒し、戦力を無力化した。ノーラ王女も規則を書き換えることで増援を停止させ、彼らの脱出を支援した。これにより、一行は無事におひいさまのビルに帰還することができた。

おひいさまはクラヒを大歓迎し、即座に彼を近衛に登録した。クラヒの体力もすぐに回復し、彼の圧倒的な力が改めて証明された。クライはクラヒに協力を求め、彼も喜んでその依頼を受け入れた。

一方で、監獄の戦闘の顛末を確認していたアンガス・コードは、クラヒの力に驚愕していた。彼は魔術が抑制されるはずのコード内でクラヒが雷を活用した手腕に感嘆しつつ、作戦が完全に思い通りに進まなかったことを悔やんでいた。アンガスは、ノーラがクラヒを得られなかったことを幸いとし、次の王位を目指して準備を進める決意を新たにした。

Interlude  王位継承戦

オリビア・デルシアは、アリシャ王女の侍従長として映像を確認し、クライ・アンドリッヒの予想外の行動に衝撃を受けた。クライがバイカー達を唆し、ノーラ王女が狙う《雷帝》を奪取した事実は、彼らにとって致命的な失敗であった。オリビアとジャンは、これまでの監視不足が原因で事態を悪化させ、今後の立場が危うくなったことを痛感していた。

クライの予想外の能力に対処するため、オリビアはアリシャ王女に忠誠を誓い、彼女の権限の回復を頼ることを決意した。彼女は《雷帝》やクライを利用して王位継承戦の混乱を引き起こし、状況を逆転させる可能性に賭けた。

一方、クロス・コード王は、都市システムを通じて王位継承者たちの動向を把握し、その暗闘を観察していた。《雷帝》の登場は想定外だったものの、コードのシステムは外敵にも適応できると確信していた。クロスは、次代の王候補たちの成長を喜び、自分の死後も彼らが都市をうまく運営するだろうと期待していた。

また、クロスはアリシャ王女の行動に関心を示し、彼女が新たに得た近衛と共に侍従を管理する姿を確認した。彼はアリシャの権限を部分的に復活させたことについて、特に深い理由はないとしつつも、それが自分の最後の戯れであることを認めた。アリシャの動向は王位争奪戦には大きな影響を及ぼさないと見込みつつ、クロスはこの一連の出来事を静かに見守っていた。

外伝  それぞれの英雄

探索者協会のガリスタ支部とテラス支部の面々は、レベル9認定試験として、都市コードへの潜入任務が選ばれたことに困惑していた。コードは極めて危険な場所であり、依頼が急遽決まった経緯にも不信感が漂っていた。試験に参加するハンターたちは既に転移魔法陣でコードに飛んでおり、支部長たちは成功を祈るしかなかった。

特にガークは、クライが推薦を取り消されながらも試験に参加することになった経緯を悩んでいた。これが失敗すれば、協会内部で責任を追及され、上層部の首がすげ替えられる可能性もあったため、重苦しい空気が漂っていた。

そんな中、ユグドラの皇女セレンが登場し、状況を一変させた。彼女は戦士たちの挑戦を讃え、彼らが失敗することを疑う者に毅然と反論した。セレンはカイザーやサヤといった優秀なハンターたちを紹介され、彼らの実力を確信した上で、クライについても絶大な信頼を寄せた。

セレンは、クライがユグドラで「異能持ち」の敵を打ち倒し、人々が解決できなかった問題を一月で片付けた実績を強調し、その神算鬼謀ぶりを称賛した。そして、彼がどんな絶望的な状況でも打開できる人物であるとし、今回の試験も成功すると断言した。

セレンのカリスマと確信に満ちた言葉により、不安に包まれていた会議室の空気は一変した。ガークたちは、自分たちにできることは祈ることだと理解し、ハンターたちの成功を信じて見守ることにした。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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