どんな本?
「嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターによる最強パーティ育成術〜」は、槻影 氏による日本のライトノベル。
この作品は、ファンタジーコメディジャンルに属し、なろう系小説として連載されている。
物語は、世界中に存在する宝物殿と、そこに眠る特殊な力を持つ宝具に焦点を当てている。
富、名誉、そして力を求めて、危険を顧みずに宝物殿を探索するトレジャーハンターたちが大暴れする時代を描いており。
主人公のクライ・アンドリヒは、「嘆きの亡霊」のパーティーリーダーとして所属しており、同時に「始まりの足跡」のクランマスターも兼任。
彼はハンターレベル8でありながら、才能もやる気もなく、凡庸な存在。
一方、ティノ・シェイドはソロとして「始まりの足跡」に所属しており、ハンターレベル4に上達しています。彼は「嘆きの亡霊」に入ることを目指しており、クライの後輩として彼を慕い「ますたぁ」と呼ぶ。
この作品は、ライトノベルとして小説家になろうで連載されているほか、GCノベルズ(マイクロマガジン社)からライトノベルとして刊行され。
メディアミックスとして漫画化もされており、2024年にはテレビアニメ化も決定している。
読んだ本のタイトル
嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 4巻
著者:槻影 氏
イラスト:チーコ 氏
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あらすじ・内容
その男――稀代の英雄か、 それともただの人か。
帝都を混乱の渦に叩き込んだオークション騒動も終わり、日常へと戻ったクライ。
嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 4
いつものようにクランマスター室で忙しく遊んでいた彼の下に、一通の手紙――最高峰のトレジャーハンターにのみ送られるという、ゼブルディア皇帝主催のパーティー「白剣の集い」への招待状――が届く。
あまりの名誉に急に旅に出たくなったクライは、「重要な用事がある」と言い残し温泉へと向かうのであった……!
感想
主人公クライが帝都を混乱に叩きこんだオークション騒動から一段落し、日常に戻るところから話が始まる。
彼は、ゼブルディア皇帝から「白剣の集い」という、トップハンターのみが招待されるパーティーへの招待状を受け取る。
しかし、クライはこれを名誉とは思わず、むしろ逃亡、旅に出る口実として利用し、温泉へと向かう。
クライのバカンスは平穏に見えたが、同行したティノ、クロ、シロ、ハイイロと、クライを追跡しているアーノルドたちは、雷の直撃特訓、上位精霊の襲撃、オークの群れに遭遇するなど、次々と試練に見舞われる。
一方で、キメラの飲み物に跨ったキルキルくんはヒャッハー!と嬉々と大暴れ。
主のクライ達はこれらの事件に巻き込まれつつも、慰安旅行を満喫している。
ティノは、仮面を被ってレベル4からレベル7へと挑む大冒険を経験し、彼女の成長が世間に知られることとなる。クライの周りで起きる千の試練は彼の伝説にまた一ページを加える。
最終的には、巻き込まれたアーノルドたちも名を上げ、クライもバカンスを楽しめたという、めでたしめでたしの結末を迎える。しかし、ティノにとっては、強大な力を得る代償として、気持ち悪い仮面を武装として扱うことになり、彼女の過去との向き合い方も描かれる。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
第四部 指名依頼
Prologue 頼りになるますたぁ
ゼブルディアオークションが終わり一週間が経過した。クランマスター室にこもっていたクライは、エヴァからグラディス家からのお礼状を受け取る。エクレール・グラディスとの宝具争奪戦は穏便に終わり、彼女との関係も悪化せずに済んだが、貴族や商人の手紙が多く、対応に困っている。
クライは手紙を後回しにする傾向があり、エヴァが代わりに対応することが増えていた。クライは自分には秘密がないとエヴァに語り、エクレールがケーキを気に入ったことを知り、喜ぶ。クライは帝都の甘味処に詳しく、その知識が役立っていた。
手紙の処理をエヴァに任せ、クライはエクレールとの関係改善に貴族の店を紹介してもらうことを考える。しかし、クライは手紙を開封せずに返事を出すようエヴァに依頼し、忙しいと理由をつけて手紙を放置する。
クライはエヴァにケーキの残りをティノに持っていくように指示する。ティノは甘味を楽しむことができる数少ないハンター仲間であり、クライはティノにケーキを届けることに喜びを感じる。
エヴァの助けを借りてケーキを包み、クライは意気揚々とクランハウスを出発した。久しぶりに自分の気の利く姿を見せる機会を楽しみにしている。
ティノはリビングでリィズから厳しい訓練を受けていた。リィズは宝箱の解錠技術について教えながら、ティノに対して経験不足や能力不足を指摘していた。リィズの訓練は厳しいが、ティノは師匠の実力を尊敬しているため、不満は持っていない。
ティノがグレッグというハンターに関心を持っていることが話題になる。グレッグはティノの代わりにオークションでゴーレムを落札し、その後多くの問題に直面していた。リィズはティノに、クライがその状況を考慮してグレッグを代理人に選んだと説明する。ティノは驚きながらも納得する。
リィズはティノに、クライの計画を理解し、グレッグに接触しないように指示する。リィズとティノの会話が続く中、ティノの家の玄関が叩かれる音が聞こえた。
訪問者は宝具店の店長マーチス・カドルであり、ティノが依頼していた宝具の鑑定結果を持ってきた。リィズとマーチスは軽口を叩き合いながら、ティノは鑑定結果に目を通す。宝具の腕輪「踊る光影」は、幻を作り出す能力を持つが、使いこなすのは難しい。
リィズはこの宝具をクライに渡すと喜び、ティノに新しい短剣を買ってあげると約束する。しかし、もう一人の姉妹シトリーが現れ、宝具の所有権を巡ってリィズとシトリーの間で争いが始まる。ティノは二人の激しい言い争いと物の投げ合いに困惑しながらも、家の被害を最小限に抑えようと必死に対応する。
その時、玄関の扉が再び叩かれる音が聞こえた。
ティノはクライを見つけて歓喜の声を上げ、飛びついた。彼女の家は荒れ果てており、スマート姉妹とマーチスが正座していた。ティノはクライの到着に安心していたが、状況は混乱していた。クライは二人に掃除を命じ、部屋の片付けが始まった。
クライはティノに新作のケーキを持ってきたが、マーチスにその一部を譲ることになった。クライはティノが持っていた宝具の鑑定結果を確認し、腕輪「踊る光影」を手に入れた。この宝具は幻を生成する能力があり、クライはそれを試してみたが、まだ慣れていなかった。
ティノは宝具を使う訓練が必要であり、クライは彼女に合った宝具を選ぶために考え始めた。リィズとシトリーはティノのために身体能力を強化する宝具を求め、クライは「進化する鬼面」を提案した。この仮面はティノにとって恐ろしいもので、彼女は拒絶したが、最終的に試すことになった。
クライはティノを励まし、仮面を被らせようとしたが、ティノは恐怖に泣き叫んだ。仮面の声が響く中、ティノは悲鳴を上げた。
第一章 レベル 8の責任
クランマスター室で、クライは机の上に出現させた幻の人形たちと遊んでいた。彼が使っているのは新たに手に入れた宝具「踊る光影」で、彼はその使用に夢中になっていた。人形たちの精巧さと動きに満足しつつ、ドラゴンの幻も出して楽しんでいた。
しかし、エヴァが突然部屋に入ってきたことで、クライは慌てて幻を消したが、いくつかの小人の幻が消し忘れられた。エヴァはこれに驚き、クライにその正体を尋ねるが、クライは秘密だと言ってごまかす。エヴァは困惑しながらも、貴族からの手紙をクライに渡そうとする。
エヴァはクライのミニチュアの幻が手紙を受け取ろうとするのを見て驚くが、手紙の重さで幻が消えてしまう。クライはこれを楽しみながら、エヴァに穏やかに対応した。
ゼブルディア南西退廃都区でリィズとシトリーは、魔術結社「アカシャの塔」の痕跡を追っていた。リィズは捕らえた三人の闇のハンターから情報を得ようとしたが、得られた情報は期待外れだった。シトリーも「アカシャの塔」について知ることが少なく、調査は行き詰まっていた。リィズは諦めてクライに頼ることを提案し、シトリーも最終的に同意した。
捕虜三人の処遇については、最初は殺して放置することを考えたが、シトリーは手下にすることを提案した。リィズは不満を示したが、シトリーが捕虜に部下になるよう優しく説得を試みた。捕虜たちがどう応えるかは不明だが、シトリーは彼らを再利用する方が有益だと考えた。
クライは探索者協会の応接室でガーク支部長とカイナと対面し、グラディス伯爵家からの感謝状と指名依頼を受けることを告げられる。ガークはクライのノルマ未達成を指摘し、依頼を受けるよう促すが、クライは何とか依頼を避けようと試みる。クライは護衛を探しつつクランハウスに戻る途中、アルトバランとマリーという二人の人物に出会い、彼らから手を引くように求められる。その後、喫茶店で《霧の雷竜》のアーノルドに絡まれるが、アルトバランたちが対処することに。クライはその場を離れてクランハウスに戻り、エヴァから「白剣の集い」への招待状を受け取るも、出席を避けるために帝都を離れる決意をする。
クライは「白剣の集い」を避けるため、帝都から逃げ出す決意をする。準備を整えるためクランハウスを出た際にリィズに出会い、彼女を誘うことに成功。さらにシトリーも誘い、護衛として同行させる。リィズの声掛けにもかかわらず、他のメンバーからの参加は得られなかったため、シトリーが代わりに協力者を見つけることになる。エヴァの手配した豪華な装甲馬車を断り、目立たない馬車での移動を決定。途中でルーク達を迎えに行く計画も立て、クライは遠出の準備を進めた。
ティノは、ますたぁに被せられた仮面の影響で心の奥底にある感情が増幅され、普段とは違う言動をしてしまったことを悔やんでいた。特に、お姉さまやシトリーに対して無礼な言葉を発してしまったことを深く後悔している。仮面の力により、ますたぁへの強い思慕が表面化し、それが恥ずかしい思い出となっている。
ある日、ベッドで悩んでいたティノは、お姉さまが強引に部屋に入ってきて、クライとのバカンスに出かけるよう命じられる。ティノは恥ずかしさからますたぁに会うのを拒むが、お姉さまの強硬な態度に押され、最終的には5分以内に準備するよう迫られる。ティノは、やむを得ず急いで準備を始めた。
日は落ち、帝都は薄暗闇に包まれていた。クランハウスの前に止まった馬車は特筆すべき点のない二頭立ての箱型馬車であった。クラン所有のものではなく、シンボルもついていない。エヴァが手配したもので、目立たないようにしていた。エヴァは「レンタルなので、壊したら弁償です」と警告するが、僕は「壊したんじゃない。壊れたんだ」と反論した。
エヴァは「なるべく早く帰ってきてください」と頼み、僕もそれに同意した。だが、実際には『白剣の集い』が終わるまで帰るつもりはなかった。クランメンバーの多くが同行できなかったが、逆に人数が絞られ馬車一台で済んだ。
シトリーが新しい協力者を連れてきたが、それは悪人面の男女三人であった。シトリーは「クロとシロとハイイロです」と紹介するが、三人の表情は険しかった。シトリーは「納得はしてるの?」と尋ねると、「もちろんです。彼らには貸しがあるので」と答えたが、三人の視線には殺意が感じられた。僕は「悪いけど、三人ともいいかな……」と言ったが、その直後、シロとクロがハイイロを殴り始めた。
この光景にエヴァも驚き、僕はシトリーに「冗談だよ」と言い、三人を連れて行くことを了承した。
そこに壮年のハンターが駆けつけ、「ノミモノを連れて行ってくれ」と頼んだ。ノミモノは以前よりも大きく成長し、完全にモンスターと化していた。騒ぎの中、ティノも泣き叫びながら引きずられてきた。僕は無言で馬車に入り、何もなかったことにして膝を抱えた。「もうお家に帰りたい」と心の中で呟いた。
帝都の著名な薬師によると、アーノルドが手に入れたポーションは強力な酔い醒ましだった。シトリー・スマートに騙された形で、アーノルドとその仲間たちは一億ギール以上を払ったポーションがただの酔い醒ましだと知り、怒りに震えた。法に訴えても勝ち目は薄く、アーノルドは活動を一時停止し、《嘆きの亡霊》に対する復讐を決意した。
アーノルドはこの帝都で散々な目に遭ってきた。酒場ではリィズ・スマートに奇襲され、《千変万化》にも敗北し、酔い醒ましを高値で売りつけられ、《魔杖》と対峙する羽目にもなった。これらの屈辱が多くの人々に目撃され、力を誇示できていない状況が続いていた。
ハンターにとって強さは最重要であり、現在の力を証明しなければならない。アーノルドは《嘆きの亡霊》を討ち、名誉を取り戻すことを決意した。昼間の屈辱を晴らすため、アーノルドは訓練に励んでいたが、右腕のエイ・ラリアーが《千変万化》がバカンスに出たとの情報を持ち込んだ。
アーノルドは怒りを抑え、短く命令した。「追うぞ。用意させろ」
探索者協会帝都支部の支部長室でガークは、クライが帝都を出たとの報告を受け驚いていた。クライは認定レベル8の優れたハンターであるが、行動が遅い点が唯一の弱点である。今回の指名依頼は特に重要であり、成功すればグラディス伯爵のハンター嫌いが緩和されるという重要なものだった。
ガークは、クライが依頼票を持っていないことに気づき、怒りを感じた。依頼票は任務の詳細が記載され、身分証も兼ねているものである。クライはこれまでも依頼票を見ずに任務を遂行してきたが、今回はグラディス伯爵との共同作戦であり、身分証が必要であった。クロエを同行させるつもりだったが、クライは彼女を置いて出発してしまった。
ガークはカイナに、クロエをすぐに追わせ、グラディスの機嫌を損なわないように命じた。また、クロエにハンターの護衛をつけ、その報酬はクライの報酬から引かせるよう指示した。
第二章 変わった試練
帝都ゼブルディアは周辺諸国を含めても最も栄えている都の一つである。整備された道路や立ち並ぶ街灯があり、騎士団の巡回も頻繁に行われている。だが、帝都を出ると外の世界は危険が多く、魔物や人間の賊に襲われることもある。
帝都を出て馬車で移動中、僕は夜間に出発したことを後悔していた。夜目の利かない僕にとって、真の闇の中での移動は不安だった。出発は朝にすべきだった。馬車に乗るのは久しぶりで、全身に伝わる振動に懐かしさを感じる。エヴァが用意してくれた馬車は中型で、広さは脚を伸ばして寝られない程度だが、頑丈で見張り台もついていた。
シトリーは広げた地図を見せながら、どのルートを取るか尋ねた。僕はグラディス伯爵領を避けるよう指示し、安全第一で大回りするルートを選んだ。リィズとシトリーは僕の指示に従い、ティノも涙を浮かべながら同意した。
途中で大雨と嵐に見舞われ、馬車が停止する。リィズは嵐を利用して訓練しようとティノに提案するが、ティノは恐怖で固まっていた。僕はティノを助けようと『進化する鬼面』を見せるが、ティノは馬車から飛び出して逃げ出した。リィズも追いかけ、シトリーはテントの準備を始める。
嵐の中、キルキル君が咆哮しているのを見ながら、僕はこの酷いバカンスに絶望した。雷の音が響き渡り、僕の思考をかき消していった。
強い雨と風が《足跡》のクランハウスのラウンジのガラスを叩いていた。ラウンジは嵐で依頼を中止した者や行き場を失った者で満員だった。ライルが酒瓶片手に「なーにがバカンスだ、クライめ。初っ端から不穏じゃねえか」と叫び、他のメンバーも同調した。彼らはクライの行動に対して不満を募らせていた。
普通、トレジャーハンターは実力が上がれば仕事が楽になるが、《千変万化》の試練は違う。試練の難度はいつも限界ぎりぎりを狙っている。クランメンバーが精鋭と呼ばれるのは試練を乗り越えてきたからだ。しかし、その試練に毎回巻き込まれるのは堪えられない。
イザベラとユウは仲間たちの騒ぎを呆れた様子で見ていた。彼らは特に巻き込まれたティノを心配していた。千の試練は逃げることすらできない状況に追い込まれるからだ。その時、クランの仲間が駆け込んできて「《魔杖》が戦争を始めるらしい。相手は例のアカシャの塔だ」と知らせた。その情報にメンバーたちは驚き、緊張が走った。
ライルは絶望の表情で「クライの奴……バカンスだって!?」と叫び、再びクランの仲間たちは混乱に陥った。イザベラは深いため息をついた。
凄まじい雨と風が吹き荒れる草原で、ハイイロは見張りをしていたが、嵐に耐えきれず馬車から飛び降りた。クロとシロもずぶ濡れになりながら馬を宥めていた。シトリー・スマートは嵐を意に介さず淡々とテントの準備をしており、その姿にハイイロは苛立ちを覚えた。
シトリーは、三人に首輪をつけ、逃げられないようにしていた。ハイイロたちは、この首輪が遠隔で強力な電流を流す魔導具であり、解除するのが非常に難しいことを知っていた。シトリーがこの首輪を手に入れた方法もまともではないと考え、彼女の命令に従わざるを得なかった。
ハイイロは一瞬、シトリーを倒して自由になれるかもしれないと考えたが、その時に雷が近くに落ちた。シトリーは冷静にハイイロにポーションを手渡し、「雷に撃たれ続けることで耐性がつく」と言った。その言葉にハイイロは驚愕し、雷への耐性が首輪の電流にも効果を発揮するかもしれないと言われ、逃走計画を練り直すことにした。
シトリーは三人に馬の世話を頼み、自分はテントの準備を続けた。ハイイロはシトリーの指示に従いながら、逃走の機会を探ることにした。
《千変万化》のクライ・アンドリヒは、帝国史上最年少でレベル8に達したハンターであり、その計り知れない力と策略は敵のみならず味方からも恐れられている。クロエ・ヴェルターは探索者協会の一員として、彼の行動を見守り、サポートを行っていた。クロエは今回、クライの任務に同行する予定だったが、嵐の中で置いて行かれ、急いで追うことになった。
クロエは旅装で準備を整え、護衛のハンター達と共に馬車で出発することになった。護衛は若手の有望なハンターであるルーダ・ルンベックとギルベルト・ブッシュを含むパーティ、《焔旋風》だった。クライがどのような状況でも動じないことを知るクロエは、急いで合流することを目指した。
クロエは護衛のハンター達に指示を出し、グラディス領に到着する前にクライと合流することを強調した。彼女はクライが嵐の中でも任務を遂行することを知っており、そのためには迅速な行動が必要だと考えた。クロエは馬車を引くアイアンホースに自信を持ち、時間を空けずに追いかけることを決意した。
しかし、突然現れた大所帯のパーティ、《霧の雷竜》のアーノルド・ヘイルが、クロエたちに声をかけてきた。彼らはつい先日、クライと確執を起こしたばかりのメンバーだった。
ゼブルディアの門の近くで、《霧の雷竜》の副リーダー、エイ・ラリアーは突然の嵐に不満を漏らしていた。彼らは悪天候での戦闘に慣れているが、好んでやっているわけではない。リーダーのアーノルドも苛立ちを隠せず、追跡が困難な状況に悩んでいた。
エイが仲間に提案をする最中、探索者協会の職員クロエ・ヴェルターが現れた。彼女も同じく《千変万化》を追っていたため、エイはクロエたちと協力することを提案した。アーノルドもこれに同意し、クロエも探索者協会としては断る理由がないとして了承した。
ただし、クロエは護衛の報酬が出せない点を注意し、アーノルドに節度を守るよう求めた。アーノルドはこれを受け入れ、出発を命じた。
嵐の中、馬車で進むクライたちは、ティノが雷に撃たれたことにより被害を受けていた。リィズが特訓をさせた結果、ティノは焦げ臭い匂いを漂わせていたが、何とか生き延びた。クライはバカンス中の特訓を禁止すると宣言し、リィズとシトリーに理解を求めたが、彼女たちは訓練を抑えることに対して納得しなかった。
翌朝、小雨の中を進み、最初の町「エラン」に到着。クライは町で一泊することに決め、シトリーに宿を手配するように頼む。シトリーはクライの名を使えば宿を取れると言ったが、クライはハンターとしての身分を隠して旅行することを決意。シトリーとリィズはその計画に賛同し、リィズはティノに共感を求めた。
クライは、自分たちの正体を隠して旅行する新しい体験に期待しつつも、意見をしてくれる人がいないことに不安を覚えたが、シトリーの協力を得て進むことにした。
ティノは、自分が未熟であることに悩んでいたが、ますたぁと二人のお姉さまはいつも通り接してくれた。嵐の中、ティノは厳しい訓練を受け、雷に打たれながらも生き延びたが、ますたぁの言葉に対して恐れを抱いていた。
今回の試練はこれまでとは異なり、訓練を禁止し、弱者としての立場を体験するものであった。ティノはその真意を理解し、ますたぁの姿勢に驚嘆しながらも恐怖を感じていた。ティノは未熟であることを自覚しており、迷惑をかけるのではないかと不安を抱いていたが、ますたぁは優しく励ましてくれた。
ますたぁの善意が恐ろしくもあり、ティノは過酷な試練に耐えられるか不安であった。ティノは涙を浮かべて訓練が厳しいことを訴えたが、ますたぁは羽を伸ばしてほしいと言った。リィズはティノに名誉挽回のチャンスを与えたと喜んでいたが、ティノはますたぁの意図を理解しようと必死であった。
シトリーの案内で一行がたどり着いたのは、一見普通の一軒家であった。特別な特徴もなく、静かに佇むその家は、シトリーが非常時のために用意していた隠れ家である。家には生活に必要な設備が揃っており、シトリーの完璧主義が垣間見える。
内部を探検するリィズと、心配するティノ。シトリーは備蓄があり、長期間の滞在にも耐えられると説明した。シトリーの準備に感心するクライだったが、ティノは不安を感じていた。
クライは、今回のバカンスが危険とは無縁であることをティノに繰り返し説得し、ティノも次第にそれを受け入れた。しかし、突然の雷と警報が鳴り響き、一同は動揺する。クライは、外に出ずに家の中で過ごすことを提案し、リィズの腕を掴んで動かないようにした。
このバカンスを無事に終えることを決意したクライは、ティノの信頼を取り戻すために全力を尽くすことを誓った。
凄腕のハンター集団《霧の雷竜》が、悪天候の中でも夜行性の魔物を蹴散らしながら街道を駆け抜ける。その様子にクロエは内心感心していた。《焔旋風》の護衛はほとんど出番がなく、アーノルド率いる《霧の雷竜》の実力は突出していると感じた。
目的地のエランに到着すると、外壁が燃えているのを発見する。雷鳴が轟き、街は混乱に包まれていた。クロエは探索者協会の紋章を見せ、迅速に状況を把握しようとする。
エランが雷精に襲われていることが判明する。雷精は上位精霊であり、その力は非常に強大である。常駐している騎士団や普通のハンターでは太刀打ちできない相手であるが、アーノルドならば撃退可能であると判断し、協力を求める。アーノルドは多くの視線を受け、協力を承諾した。
昨日の嵐が嘘のように晴れた朝、住宅街には平穏が戻っていた。クロエたちはシトリーの隠れ家で快適に過ごし、外の警報も収まっていた。ティノは夜の不安から眠れず疲れが見えたが、活動に支障はないと言う。
隠れ家を出て街を歩くと、雷精が現れたという話が耳に入る。雷精は上位精霊で非常に強力な存在であり、人里に現れるのは稀であるが、昨日の大騒ぎの原因となった。シトリーは「誘雷薬」が強すぎたのではないかと心配する。
街の門が完全に破壊され、兵士たちが整理している様子を見て、昨日の戦闘の激しさを感じる。幸いにも、偶然立ち寄った高レベルのハンターが雷精を迎撃してくれたおかげで、大きな被害を避けられた。クロエはそのハンターに感謝の気持ちを抱く。
昨夜の激戦でアーノルド率いる《霧の雷竜》は、雷精を撃退した。ネブラヌベスでの経験から雷への耐性はあったが、上位精霊との戦闘は初めてであり、準備不足と疲労でメンバーは消耗していた。奇跡的に町の被害は最小限に抑えられたが、消耗した物資や装備のメンテナンスが必要だった。
アーノルド達はクロエの案内でエランの町に滞在していたが、彼らの追跡目標である《千変万化》が現れず、早朝に出発していたことが判明する。《千変万化》のクライ・アンドリヒが雷精の襲撃を知っていながら介入しなかったことに、アーノルドは激怒する。
クロエの報告によれば、門番の言葉からクライがアーノルド達の戦闘を見守っていた可能性が高い。これを聞いたアーノルドは、追跡を再開することを決意する。準備を整え、次の目的地であるグラに向かう準備を急ぐよう指示した。
第三章 追跡者とバカンス
馬車で丘陵地帯を進む一行は、快晴の中エランを脱出して一日が経過した。前日の嵐が嘘のように穏やかな風景が広がっており、ノミモノライダーのキルキルが魔物を遠ざける役割を果たしていた。途中でリィズが退屈を訴え、ティノに無茶な要求をするも、シトリーとの口喧嘩に発展する。
町グラに到着すると、魔物のオークの群れが原因で厳戒態勢が敷かれていた。シトリーの偽造身分証のおかげで無事に入町し、町の状況を把握する。オークの問題は予想外に大したことはなく、一行は一息つきながらティノにチョコレートパフェを楽しませるため、グラでの滞在を続けることを決めた。
ティノは、ますたぁの試練を乗り越えた自負があったが、エランでの一夜以来、ほとんど眠れず、疲労困憊の状態であった。不安と緊張感が不眠の原因であり、ますたぁや師匠の前で無様な姿を見せたくない一心で気力を保っていた。
町グラに到着した一行は、オークの危険を示す赤旗を目にする。ティノはますたぁの「大したことない」が自分にとっては大したことだと理解しており、ますたぁがあえてこの町を選んだ理由に疑念を抱いていた。
ティノは疲労の中で多対一の戦闘に不安を抱きながらも、試練を乗り越える決意を固めていた。しかし、ますたぁはティノの疲労を察し、グラの隠れ家で休むことを提案する。ティノは予想外の優しい提案に驚きながらも、翌日にチョコレートパフェを食べに行く計画を受け入れることにした。
シトリーお姉さまがグラにも隠れ家を用意していたことが明らかになり、ティノは彼女の備えに感心した。最終的に、ますたぁの優しさとお姉さま達の協力により、ティノは少しずつ心を休めることができた。
クロたちはグラの外でテントを張り、鬱屈した空気の中で作業をしていた。彼らを見守っていたのは、赤いブーメランパンツを履いた灰色の鍛え上げられた肉体を持つキルキル君と、巨大な白い獅子(キメラ)のノミモノであった。クロたちはこの異形たちを懐柔することは不可能であり、その強大な力に圧倒されていた。
キルキル君はクロたちを監視し、ノミモノとともに素早く動き出すと、あっという間に黒い森の方向へ駆け出していった。クロたちは彼らを追いかける必要があり、逃したことがバレたらシトリーに殺されると確信していた。
クロたちは不安を抱きながらも、キルキル君とノミモノを追う決意を固めた。
獣が山道を駆けていた。その獣は合成獣であり、獅子に似ているが翼と尾からその異質さがわかる。獣の上には灰色の狂戦士キルキル君が跨っていた。キルキル君と獣ノミモノは、マナ・マテリアルに満ちた肉体を持つ禁忌の産物である。
彼らは恐怖を感じず、躊躇なく行動するように作られていた。山道にはオークの匂いが染み付いており、これはノミモノにとって美味しい餌の匂いであった。彼らは空腹であり、街道付近で魔物を捕らえて食べていたが満足していなかった。
グラに近づくと、ノミモノは速度を増し、オークの砦に向かった。キルキル君とノミモノは戦闘本能に従い、砦のオークたちに襲いかかった。《最低最悪》の獣が解き放たれたのである。
オークの王シュバルツが率いる堅牢な砦と巨大な群れが、忌まわしき獣と狂戦士に襲われた。獣は高い外壁を飛び越え、オークの雌と子を無差別に殺戮した。オークの戦士たちは恐慌をきたし、シュバルツの命令も通じず、砦は瞬く間に崩壊した。
獣の目的は殺戮であり、その力は圧倒的であった。シュバルツが獣と戦士に立ち向かうも、二対一の戦いに勝てず、やむを得ず撤退した。こうして、シュバルツの王国は滅亡したのである。
クロエたちは夜更けにグラへ続く街道沿いで休憩を取っていた。馬が限界に近づいていたため、野営を選んだのだ。焚き火を囲んで話すハンターたちは、クロエが語る《千変万化》の話に耳を傾けたが、アーノルドは不機嫌そうだった。
突如として強い風が吹き、獣の臭いが漂ってきた。エイは興奮した獣が近づいてくると警告し、地面の震動を感じた。クロエはエランで聞いたオークの群れの話を思い出すが、そんなところに来るとは思っていなかった。
しかし、エイはオークの群れが真っ直ぐ向かってくると叫び、アーノルドは戦闘準備を指示した。クロエも剣を抜き、戦闘に加わることを宣言した。アーノルドの号令のもと、《霧の雷竜》のメンバーとクロエたちはオークの大群と正面から衝突した。
夜が明け、外は快晴であった。クロエは伸びをしながら、リィズ達の寝室から騒がしい音が聞こえた。チョコレートパフェを食べに行くための準備である。
ティノは変装し、リィズとシトリーはクライに対する警戒心を示した。彼女たちはティノを送り出し、クライとティノは物々しい町へ向かった。町はざわついていたが、クライは気にせずにティノを励ましながら、目的の喫茶店に入った。ティノのメンタルケアも兼ねての訪問だった。
ティノとクライは美味しいチョコレートパフェを楽しみ、ティノはクライへの感謝と尊敬を表明した。その後、店長からクライが《千変万化》と呼ばれていることを知らされ、驚くが、クライはそれを否定した。
外に出ると、オークの群れを討伐した英雄が祝われている場面に出くわした。その中にアーノルドがいたことに驚き、クライ達は急いで町を出ることを決めた。リィズがアーノルドに挑発的な言葉を投げかけ、クライ達は慌てて馬車に向かった。
第四章 楽しいバカンス
アーノルドのハンター人生でも類を見ない魔物の群れが襲ってきた。オークが大半を占めるその群れは狂乱状態であり、彼らは恐怖に包まれながらも防御の陣を組んだ。エイの指摘から、群れは何かから逃げているようだった。
アーノルドはリーダーとしての責任を果たすため、身体能力を強化するポーションを飲み、仲間を鼓舞して戦いに挑む。突然、異様な黒いオークが襲いかかり、アーノルドは激しい戦闘を繰り広げる。黒いオークは強力だが、アーノルドの方が優れていると感じた。
しかし、黒いオークがクロエを襲おうとした瞬間、天から降り注いだ炎がオークを吹き飛ばした。炎は一帯を焼き尽くし、戦場を炎の海と化した。アーノルドたちは何とか結界で防ぎながらも、その異常な光景に驚愕する。空には青く輝く炎が浮かんでいた。
昨晩の出来事は、アーノルドたちにとって悪夢であった。グラの町で市長から歓迎を受けているが、アーノルドの心中には怒りと闘争心が渦巻いている。町を救ったことで称賛されるが、彼の内心は冷静ではない。
市長は、オークの群れがいなくなったことに感謝しているが、アーノルドたちは戦闘の疲労から回復していない。仲間の負傷と装備の損傷が深刻であり、すぐに追跡に出るのは困難だが、アーノルドは報復を優先している。
精霊の炎がオークたちを焼き尽くしたことが幸運であったが、その中でアーノルドは《千変万化》の行動を疑い、怒りを募らせている。市長の協力を受けつつ、アーノルドは一日で準備を整え、追跡を決意する。彼は《千変万化》と《絶影》に対する報復を誓い、仲間たちに準備を指示する。
アーノルドの追手を撒いたが、リィズの挑発が原因でアーノルドたちの怒りを買った。リィズとシトリーの無責任な態度に、クライは追跡の危険性を理解しつつも、不安を感じていた。彼らは追跡を避けるために街道を外れ、危険なガレスト山脈を通ることに決めた。
クロエはアーノルドたちの追跡を確認するために街道沿いに走り続けたが、彼らがまだ追ってくる可能性があることに気付いていた。クロエたちはレベル8のハンター《千変万化》と同様に身分を隠しながら移動している。
ガレスト山脈の危険性を知りつつも、リィズとシトリーの強さを信じて山脈を抜けることにしたクライは、彼らの無責任な態度に不安を感じていた。クロエはアーノルドたちがまだ追ってくることを懸念しつつも、シトリーの指示に従って進んでいた。
クロエは、アーノルドたちがオークの群れと戦った際に奇跡的に助かったことを思い出し、その奇跡が《千変万化》の策略である可能性に思い至った。彼女は《千変万化》の真意を掴むために、アーノルドたちと共に追跡を続けることを決意した。
この世界には、立ち入りを避けるべき危険な場所が存在する。特に国の管理下にない山や森は危険であり、ガレスト山脈もその一つである。そこには貴重な資源がある一方で、強力な魔物も生息している。
クライ一行は山脈を進むが、度々魔物に襲われる。シトリーの護衛とノミモノの力を頼りに進んでいたが、リィズ達が戦闘に参加せず、護衛たちが苦戦する場面が続く。
クライはシトリーに確認を取り、リィズに魔物との戦闘が暴力に含まれないことを伝え、リィズは戦闘に参加する。結果、状況は改善するが、魔物の数が多く困難な状況が続く。
道中、クライは偽装された道を選び、危険な魔物「迷い巨鬼」の罠にかかることが判明する。道を戻り、野営地で休むことにしたが、リィズの暴れ方やシトリーの冷静な行動が目立つ。
クライは過去の冒険を思い出しながらも、現在の状況に対応し、仲間と共に安全な場所を目指して移動を続ける。
リィズとクライは水の匂いを頼りに大きな川に到達した。リィズは川辺で水浴びを始め、クライはその様子を見守りながら水を汲んでいた。リィズは幼い頃からクライを知っており、クライに対して親しみを感じているが、クライは彼女の無礼を注意する。
リィズはクライに強いハンターになる決意を語り、ティノも強いハンターに育てると誓う。クライは自分の無能さに負い目を感じつつも、リィズ達が自分を責めないことに感謝していた。
その時、野営地から爆発音が響き、リィズはすぐに戦闘態勢に入る。クライもリィズの決意に応え、再び仲間と共に行動を続けることを決意する。
リィズに手を引かれ、クライは暗闇の中を走る。夜目が利くリィズと、宝具の指輪「梟の眼」を使うクライは、暗闇でも問題なく進んでいた。途中で彼らは「迷い巨鬼」と呼ばれる魔物に遭遇する。この魔物は風のように速く、影のように静かに動く特異な存在であった。
シトリーやティノも戦闘態勢に入るが、魔物の動きが速すぎて攻撃が当たらない。リィズは魔物に対して反撃するが、物理攻撃がほとんど効かないことが判明する。シトリーはこの魔物が執念深く、夜の闇を利用して奇襲をかけてくると説明する。
クライは状況を見て撤退を決断する。ティノを一人前のハンターに育てるという約束があるため、無理に戦うことは避けることにした。夜の山登りは危険だが、背に腹は替えられない状況である。
迷い巨鬼は、驚異的な力を持つ侵入者に遭遇し、その痛みに驚く。これまで敵う者がいなかったが、今回の相手は異なる。迷い巨鬼は慎重に計画し、弱者から狙うことを決意する。
一方、ティノは自身の未熟さに悩み、逃走を選んだ自分を責めていた。次は全力で戦う決意をするが、迷い巨鬼の執念深さに不安を感じる。シトリーは迷い巨鬼を囮で引き付ける策を提案するが、ティノは恐怖に震える。
最終的に、クライはシトリーの別の提案である魔物を囮にする策を選ぶ。ティノは自分が囮にされると思っていたが、命を大事にするというクライの決定に安堵する。それでも、シトリーの提案は危険なものであり、彼女の冷酷な視線に恐怖を覚える。
日が昇り、アーノルド一行は市長や町の者たちに見送られ、グラを出発した。疲労は残っていたが、新しい馬車は大きく、乗り心地が良かった。若手のギルベルトはレベル7の待遇に感心し、エイは報酬が増えることを期待していた。
ハンターは高額な馬車を使わないことが多く、馬車は一台だけ用意されたため、前衛は交替で歩くことになった。《焔旋風》のメンバーは疲労が抜けきらず、馬車で休んでいたが、《霧の雷竜》のメンバーは情が移り、文句はなかった。
道中に異常はなく、先に行った《千変万化》の轍を見つけた。ギルベルトは竜殺しについて質問し、アーノルドは雷竜の強さを語った。クロエは、アーノルドが《千変万化》と敵対してしまったことを惜しみながらも、追跡を続けることを決意していた。
道を進むと、魔物の死骸が散乱している場所に到達し、クロエたちは《千変万化》の手によるものだと推測した。死骸が多すぎて魔物が集まらない状況に不安を感じたが、アーノルドは進む決意を固めた。
ガレスト山脈に入り、途中で分かれ道に出会ったが、見え透いた罠だと判断した。やがて、焚き火の跡と戦闘の痕跡がある場所に到着し、アーノルドは一時間の休憩後に先を急ぐことを決めた。クロエは疲労とストレスで頭を押さえ、ため息をついた。
馬車が平坦な地面に到着し、ようやく休息が取れる状況となった。これまでの夜は、シトリーが投げたデンジャラス・ファクトが引き起こした魔物の狂乱で、まさに地獄だった。風向きの変化が誤算となり、ポーションの効果が広範囲に及び、馬車は四方から魔物に囲まれた。
ティノは戦闘の恐怖から震え、リィズは一方で全く平然としていた。シトリーは休憩が必要だと提案し、クロたちの酷使についても話し合うべきだと判断した。シトリーのポーションの効果は一日程度続くため、湖の近くで休憩することに決定。
キャンプファイヤーを計画し、湖畔での休息を楽しむ準備を始めた。リィズは湖で遊び、ティノは恥じらいながらも水浴びに参加。クロたちは疲労困憊で横たわっていたが、シトリーは楽しそうにキャンプの準備を進めていた。
シトリーが提案したキャンプファイヤーは特異な形をしていたが、クライはそれを受け入れた。シトリーとクライはクロたちの酷使について話し合い、彼らが犯罪者であることが判明。しかし、シトリーはクライに彼らを解放するための鍵を渡した。
クライは慎重にタイミングを見計らい、クロたちを休ませることを決めた。シトリーはクロたちのことをクライに任せると伝え、クライは彼らにどのように伝えるべきかを考えた。
『迷い巨鬼』は新たな人間達の接近を感じ取った。ガレスト山脈の環境は彼の味方であり、山の中の動きは全て知覚できた。新たな一行は強力であり、その先頭に立つ大男の力は、以前遭遇した女と同等であった。迷い巨鬼は、この一行も確実に仕留める必要があったが、人手が足りなかったため、強者には強者をぶつける作戦を立てた。
一方、捕らえられたクロ達は、絶望と諦観に包まれていた。過去に多くの罪を犯してきた彼らであったが、現在の状況はこれまでのどの修羅場よりも過酷であり、抵抗の気力さえ失っていた。『千変万化』やその仲間達の戦闘能力は彼らの想像を超えており、クロ達は全く歯が立たなかった。
クロ達が恐怖と疲労で朦朧としている時、クライが現れ、彼らを解放する意向を示した。クライはクロ達の罪が大したことではないと述べ、今後安全な場所に着いたら首輪を外すと約束した。この言葉に驚くクロ達だったが、クライの提案を受け入れざるを得なかった。
その瞬間、ガレスト山脈の方で光が瞬いた。
リーダーであるクライがシチューを味わっている間、シトリーの話を聞いていた。その中で、山で見た光が気になっていたが、シトリーはいつものことだと説明した。シトリーが酒を出し、リラックスしようとする一方で、クライは心配していた。
突然、金髪で筋肉質の全裸の男が現れ、自分をアーノルドと名乗った。その姿に驚きつつも、クライは冷静に対応しようとするが、アーノルドは激怒し、キャンプを破壊し始めた。アーノルドの猛攻に対してクライは「結界指」で防御しつつ、交渉を試みるが、アーノルドの怒りは収まらなかった。
その時、ティノが現れ、アーノルドの攻撃を阻止しようとする。ティノはマスターであるクライを守るため、仮面の力を借りる決意をする。ティノは「進化する鬼面」を顔に押し付け、その力を引き出そうとした。
ティノは仮面の力を受け入れ、ますたぁのために戦う決意を固めた。仮面を被ることで、ティノは成長し強大な力を得た。アーノルドが驚く中、ティノは冷静に力を使いこなすことができた。
仮面の効果で身体が成長し、視界が高くなり、髪が伸び、右瞼には角が生えた。仮面はティノの潜在能力を引き出し、身体の使い方を明晰に理解させた。ティノは勝つ決意を固め、ますたぁの呟きに強い満足感を覚えながら、試練に向かって加速した。
Epilogue 嘆きの亡霊は引退したい ④
平原を走る馬車の中、ティノが目覚めた。ティノは戦いの後遺症に苦しみながらも、アーノルドに敗北したことを覚えていなかった。リィズがその結果を伝えたが、ティノはショックを受ける。クライはティノを慰め、敗北は成長の一部だと励ました。
ティノはアーノルドとの戦いで成長したが、技術不足が敗因だった。リィズとシトリーは迷い巨鬼を倒し、アーノルドの仲間を撃退して勝利した。その後、彼らはガレスト山脈を抜け、目的地である【万魔の城】に向かっていた。
ティノは《嘆きの亡霊》に入ることを望み、クライはその願いを承諾した。ティノがハンターとして成長することを信じ、クライもまた自分の経験を共有した。ティノがクライの敗北経験を尋ねると、クライは穏やかに「ないよ」と答えた。
クロエ・ヴェルターは《千変万化》の智謀と計画に驚かされていた。《千変万化》は人を育て、適性を見定めて試練を与えることで成長を促しているように見える。レベル4のティノ・シェイドがレベル7のアーノルドに抵抗できたのも、その結果である。
ティノは最終的に負けたが、その成長は明らかであった。アーノルドの怒りは収まらず、彼は《千変万化》を追い続ける決意を新たにした。《千変万化》のバカンスはまだ終わっておらず、彼らは次の目的地【万魔の城】に向かっている。
アーノルドの仲間たちも馬車を失い、徒歩で町を目指すことになった。クライ・アンドリヒは最後に【万魔の城】への道を示唆し、彼らの計画は進行中である。
一方、シトリーとクライは【万魔の城】に到着したが、ルーク達は既にいなくなっていた。修行を終えたルーク達は早々に帰ってしまったようで、クライ達は予定通り温泉に寄って帰ることにした。現実の非情さにため息をつきつつ、次の行動を決めた。
Interlude バカンス
始まりは大陸の果ての貧しい国であった。たった二人の小さな盗賊団が、武器も資金も食料もなく、唯一持っていたのは力と知恵である。一人は強く、一人は賢く、その価値は千金に値した。
盗賊団は他の盗賊団を吸収し、パトロンを得て勢力を急速に拡大した。国を渡り歩き、どの国でも略奪を繰り返しながら、一度も負けることなく、一度も捕まることがなかった。盗賊団のシンボルは最初に手に入れた酒樽であり、『バレル大盗賊団』として各国から恐れられるようになった。
バレル大盗賊団のモットーは三つ。勝負しないこと、当然に勝つこと、質を保つことである。頭領のジェフロワ・バレルは、レベル8ハンターとの戦いを無意味と判断し、退却を決定した。
盗賊団は強者とは戦わず、常に準備を怠らず、移動時には地脈をなぞり、常に訓練を怠らなかったため、強い。頭領の決定により、配下達は一糸乱れぬ動きで行動を開始し、その姿はまるで一つの軍のようであった。
外伝 ティノ・シェイドの足跡
ティノ・シェイドは《嘆きの亡霊》にとって特別な存在である。僕達が帝都にやってきてトレジャーハンターになったのは十五歳の時で、成人を待ってからハンターを志した。帝都には未成人のハンターも多く、僕達は故郷で少し訓練をしてから帝都に来たが、当初は敵だらけであった。
ティノはそんな僕達にできた初めての後輩であり、最初はただの知り合い程度だったが、突然ハンターになりたいと言い出し、驚いた。彼女の意志が強かったため、リィズの弟子にして訓練を始めたが、彼女は過酷な指導にも耐え抜いた。
ティノはリィズの厳しい訓練を経て、ソロのハンターとして活動できるまでに成長し、僕は彼女を説得するのを諦めた。彼女は成長し続け、《嘆きの亡霊》の一員として名を馳せるようになった。
ある日、ティノはアーノルドと戦うが、仮面の力を借りても彼に勝つことはできなかった。それでもティノの成長は明らかであり、シトリーは彼女がクライに鍛えられた結果だと言う。ティノはリィズの過酷な訓練にも耐え、今では一人前のハンターとなった。
ティノの成長の背後には、厳しい訓練と多くの実戦経験があった。彼女はこれまで数々の試練を乗り越え、そのたびに強くなった。今後もティノは成長を続け、《嘆きの亡霊》の一員としてさらなる高みを目指すであろう。
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