どんな本？
「嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターによる最強パーティ育成術〜」は、槻影 氏による日本の ライトノベル。
この作品は、ファンタジーコメディジャンルに属し、なろう系小説として連載されている。
物語は、世界中に存在する宝物殿と、そこに眠る特殊な力を持つ宝具に焦点を当てている。
富、名誉、そして力を求めて、危険を顧みずに宝物殿を探索するトレジャーハンターたちが大暴れする時代を描いており。
主人公のクライ・アンドリヒは、「嘆きの亡霊」のパーティーリーダーとして所属しており、同時に「始まりの足跡」のクランマスターも兼任。
彼はハンターレベル8でありながら、才能もやる気もなく、凡庸な存在。
一方、ティノ・シェイドはソロとして「始まりの足跡」に所属しており、ハンターレベル4に上達しています。彼は「嘆きの亡霊」に入ることを目指しており、クライの後輩として彼を慕い「ますたぁ」と呼ぶ。
この作品は、ライトノベルとして小説家になろうで連載されているほか、GCノベルズ（マイクロマガジン社）からライトノベルとして刊行され。
メディアミックスとして漫画化もされており、2024年にはテレビアニメ化も決定している。
読んだ本のタイトル
嘆きの亡霊は引退したい ～最弱ハンターによる最強パーティ育成術～6
著者:槻影 氏
イラスト:チーコ 氏
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あらすじ・内容
その男――稀代の英雄か、 それともただの人か。
温泉から戻ったクライは、開催延期となっていたゼブルディア皇帝主催のパーティー「白剣の集い」に結局参加することに。
温泉土産を手にしぶしぶ出席するクライを待っていたのは――皇帝暗殺未遂事件!?
そしてなぜか他国へと赴く皇帝一行の護衛をすることになったクライに襲いかかる陰謀の影。
ゼブルディア帝国の未来はどうなる!?
感想
本書は、主人公クライが温泉旅行から帰還し、ゼブルディア皇帝主催のパーティー「白剣の集い」に参加することから始まる物語であった。
クライは、このパーティーが原因で皇帝暗殺未遂事件に巻き込まれ、さらには皇帝護衛の任務を引き受けることとなる。
物語全体を通じて、クライの周囲で騒動が絶えず、彼の行動が結果的に重要な局面を乗り越える形となるのはお約束。
クライのとぼけた性格と運の悪さが相まって、物語はユーモラスでありながらも緊張感を持って進んでいく。
特に、空飛ぶ絨毯やアロハシャツで護衛に挑む姿は、彼の軽率さを示しているが、その結果として奇跡的な成果を収めるのが千変万化のクライならでこそ。
登場するキャラクターたち、特にクリュスやルシアの変化する表情や服装が物語に華を添え楽しませる要素となっている。
また、クライが皇帝護衛の任務を通じて、狐面の敵との対峙や飛行船での戦いなど、様々な困難を乗り越えていく姿が描かれており、その過程で彼が仲間たちに対して持つ信頼(？)と絆(?)が深まっていく様子が感動的である。
特に、クリュスとの関係が焦点となり、彼女のツンデレな一面がクライとのやり取りで際立っている。
この巻では、新たな護衛任務や次なる武闘大会への期待感が高まり、今後の展開がますます楽しみになる内容である。
クライの周囲で起こる騒動や、彼が巻き込まれる出来事の数々は、常に予測不可能でありながらも、最終的には因果応報的に帳尻が合うという独特の面白さを持っている。
このシリーズを読み続ける中で、クライの悪運の良さと彼を取り巻くキャラクターたちの変化を見守る楽しみが増していくことは間違いない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
第6部 狐
Prologue 帰還
天気は快晴、爽やかな風が馬車内を通り過ぎる中、数日間の旅の末に僕は一ヶ月ぶりに帝都ゼブルディアに到着した。スルスでのバカンスは素晴らしいもので、多くの事件があったが、全てが良い思い出となった。馬車はスルスで買ったお土産で満載で、特に温泉ドラゴン関連の商品が多い。
帝都に戻ると、門が修理中で警備が厳重であった。ルシアから帝都で騒動があったと聞いていたが、まだ完全には落ち着いていないようだ。街中も破壊され、騎士団が交通整理をしている。僕は馬車から降り、お土産を持ってクランハウスへ急いだ。
クランハウスに入ると、ラウンジは疲れ切ったハンターたちで溢れていた。スヴェンにお土産を渡し、急いでエヴァの元へ。エヴァは普段通りの態度で迎えてくれたが、少しやつれているようだった。帝都での騒動がかなり大変だったらしい。報告書によると、アカシャの塔と魔杖の抗争があり、精霊召喚まで行われたようだ。エヴァの話を聞きながら、僕は温泉ドラゴン饅頭を食べ、帝都での混乱を乗り切ったクランメンバーを労った。
最後にエヴァから白剣の集いが延期され、開催が三日後に決まったことを聞いた。僕の帰還が間に合って良かったという彼女の言葉に安堵した。
第一章 白剣の集い
クランメンバーのティノ・シェイドは、マスターが「白剣の集い」に招待されたことを初めて知り驚愕する。「白剣の集い」は帝国のハンターにとって最高の栄誉であり、マスターが招待されるのは異例である。副マスターが準備に追われていたが、ティノはそのことを全く知らなかった。
集いには一人のパートナーを連れていくことができ、ティノはその候補に自分が選ばれる可能性を考える。クランメンバーのリィズやシトリーといったお姉さま達が喧嘩する可能性を見越して、ティノはルシアお姉さまがパートナーを譲ってくれるかもしれないと期待する。
ティノは誰よりも早くマスターの近くに行き、とびきり綺麗なドレスを用意すれば、マスターが自分をパートナーに選んでくれると信じて行動を開始する。ティノはクランメンバーにこの話を誰にも言わないように口止めし、ドレスを用意するために駆け出した。
『白剣の集い』は帝国のハンターにとって最も格式の高い会合であり、皇帝や帝国の重鎮たちが出席する。出席者は帝国に大きな貢献をしたハンターのみであり、今回初めて参加することとなった僕は、行きたくない気持ちでいっぱいだった。礼儀作法も知らず、歴戦の勇士たちと比べたら無力に感じる。
バカンスから戻り、集いまで残り二日となったが、僕には何の対策も思い浮かばなかった。エヴァに参加を拒否したいと訴えたが却下され、アークも既に招待されているため頼れなかった。用意されたタキシードを着ることに戸惑いながら、エヴァの提案で一人だけ随伴者を連れて行けることを知る。
随伴者を決める際、リィズとシトリーがそれぞれ豪華なドレスを用意して自己アピールを始めたが、どちらも問題を引き起こす可能性が高いと感じた。ルークも参加を希望したが、彼も適任ではなかった。
最終的に、エヴァを随伴者として連れて行くことを決め、彼女に準備を頼んだ。エヴァは驚きながらも了承した。
『白剣の集い』当日、主人公クライは緊張と不安でお腹が痛くなるほど嫌な予感を抱いていた。エヴァに説得され、彼女を随伴者として出席することを決めたクライは、礼儀作法の不安もあり、エヴァに助けを求めた。エヴァの助言で贈り物として温泉卵を用意したものの、彼はその選択が失敗する可能性を感じつつも準備を進めた。
エヴァと共に皇城へ向かい、緊張しながらも会場に到着したクライは、皇女殿下に温泉卵を渡そうとして騎士たちに取り囲まれてしまった。しかし、エクレール・グラディスが彼を擁護し、事態を収束させた。クライは感謝しつつも、エクレールの真意を疑問に感じながらも助けられたことに安堵した。
クライは『白剣の集い』でエヴァに助けられながらも、皇女にお土産を渡してしまい、騎士たちに取り囲まれるが、エクレールの介入で事態は収束した。クライはエクレールに感謝するも、彼女は怯えた様子で去っていく。集いの開始を告げる鐘の音が響き、ゼブルディア皇帝ラドリックが現れる。簡素な服装で現れた皇帝の姿に、クライは驚く。喝采の中、クライとエヴァは集いの始まりを迎える。
エヴァの助けを得て「白剣の集い」に参加したクライは、貴族や商人たちと交流するが興味がないためエヴァに任せていた。宴会中、シトリーやリィズが無断で参加し、毒を仕込んでいたことが発覚する。突如現れた狐面の侵入者に対し、リィズやルーク、ルシアたちが対応し、会場は混乱に陥る。クライは状況を必死に収めようとするが、《深淵火滅》の魔法によって会場は壊滅状態となる。最終的に、皇帝から話があると呼ばれ、さらに緊張の場面に立たされることになる。
クライの胸元から上のものが炎で焼かれ、狐面のあった場所には大穴が開いていた。現実感のない光景に驚くクライだったが、皇帝が会合の終了を宣言し、彼と《深淵火滅》に話があると言われた。フランツ卿が状況の確認を始め、クライはリィズとルークの言動に苦しむが、最終的に料理に毒が混入していたことが判明した。クライは毒を指摘したことが正しかったとわかり、ホッとするが、皇帝から侵入者の調査を命じられ、再び厄介な状況に巻き込まれる。
尋問じみた聞き取りが終わり、クライが解放された時には夜も完全に更けていた。エヴァの調整で何とか耐えたクライは、帝国が何かを掴んでいるのではないかと感じた。アンセムとルークは夜の警備に参加しており、クライはその役割を免れた。リィズがどうやって潜り込んだのか尋ねると、ルシアの魔法でサポートされたことが判明した。クライはティノの行方を心配するが、シトリーが何とかしたとのことだった。クランハウスに戻ると、シトリーが毒を仕込んだことを明かし、ティノが疲れ果てていた。クライは状況を理解しようとするが、混乱しながらもシトリーの髪を撫でて寝室に向かった。
侵入者への《深淵火滅》の攻撃で混乱した会場を見て、ある者は《千変万化》の恐るべき情報収集能力に驚愕した。知るはずのない情報を知り、いるはずのない場所にいる彼は、まるで神算鬼謀のように神出鬼没である。侵入者の察知や薬の発見も完璧で、その結果は支離滅裂ながらも効果的であった。
《千変万化》は格好の攻撃材料を提供していた。彼が贈った『ドラゴンの卵』は高価で希少だが、ドラゴンにとっては逆鱗に等しい品である。ドラゴンの怒りを買えば国が滅ぼされる可能性もあり、貴族たちは恐怖するだろう。最終的に、《千変万化》は自らが守った者たちに殺される運命にあるとその者は確信していた。
第二章 神算鬼謀の闇鍋
クライは軽率な行動が原因で、悪意はないが困難な状況に陥っていた。彼は「集い」の翌日、クランマスター室で疲れ果てていた。シトリーが毒を仕込んだことが発覚し、不法侵入や毒混入の問題が解決されていない状況にあった。
新聞によると、クライたちが去った後、ゼブルディアにドラゴンが襲来したが、幸いにも高レベルハンターが討伐した。クライはエヴァと共に状況を整理し、侵入者や毒物の混入について推理を進めた。
フランツはクライに「真実の涙」という宝具を使って無実を証明するよう求め、クライと《深淵火滅》はその審判を受けることになった。クライは自らの無実を証明し、フランツは「狐」という敵対者がゼブルディアに災害をもたらしていると説明した。
フランツはクライに依頼をし、報酬として「空飛ぶ絨毯」を提示した。クライは依頼の内容に戸惑いながらも、その報酬に心を動かされた。
クライがクランハウスの地下五階で訓練をしていた。訓練場の前には《始まりの足跡》のハンターたちが集まり、スヴェンはその様子に驚いた。クライが訓練するのは珍しく、彼は新たな宝具を手に入れると、その性能を試すために訓練場を使用する。宝具の使用は予測不可能であり、他のハンターたちは巻き込まれるのを避けるため、その場を離れた。
クライは新たに手に入れた宝具「空飛ぶ絨毯」を試すため、訓練場で訓練を始めた。しかし、絨毯は暴れん坊で操作が難しく、クライは苦労しながらも何とか使いこなそうと努力する。そんな中、エヴァからの依頼で、クライは皇帝の護衛を任されることになった。護衛のメンバー選定に悩むクライは、ケチャチャッカ・ムンク、テルム・アポクリス、クリュス・アルゲン、そしてシトリーが紹介したゴーレムのキルナイトを選ぶ。最後の枠には自分を入れることになり、準備を進める中で、エヴァと共に護衛の準備を整える。クライは慎重に計画を練り、護衛任務に臨むことに決めた。
クライとエリザを除く《嘆きの亡霊》のメンバーは、皇帝の護衛をサポートするために集まり、シトリーの進行で会議を行った。シトリーは、砂漠と空という次の舞台について説明し、メンバーはクライの選定した護衛チームをサポートすることを確認した。クライが選んだ護衛メンバーはテルム・アポクリス、ケチャチャッカ・ムンク、クリュス、シトリーの特製キルナイトである。シトリーは、敵の「狐」と呼ばれる秘密組織について説明し、警戒が必要であることを強調した。リィズは、いつも通りクライの指示に従うことを確認し、シトリーも同意した。クライは《嘆きの亡霊》の羅針盤であり、仲間たちはクライの指示に従う準備ができていた。
第三章 皇帝の護衛
その日は、クライがシトリーから旅の道具とコントローラーを渡され、キルナイト・バージョンアルファと絨毯をお供に出発した。目的地は探索者協会であり、選定されたハンターたちと合流するためであった。クライは初めてケチャチャッカ・ムンクと顔を合わせたが、彼は怪しげな雰囲気を漂わせていた。クリュスも合流し、クライの派手なシャツを非難した。
皇帝の護衛の責任者であるフランツが説明する中、クライは護衛経路の安全性について懸念を示した。クライは派手なシャツ型宝具『快適な休暇』を着用し、絨毯で移動しようとしたが、門に突っ込み、旅の開始前に一度負傷した。これにより、出発が遅れ、クリュスに怒られた。
その後、クライはクリュスの馬に乗せてもらい、移動を続けた。絨毯は後ろをふわふわとついてきた。クライはクリュスに感謝しながらも、絨毯よりもクリュスの方が頼りになると感じていた。クリュスの助けを借りて、クライは護衛の任務を遂行しようと決意した。
帝都ゼブルディアの西の草原で、百人以上の傭兵団がゼブルディアの馬車を襲うために待ち伏せしていた。彼らは依頼人不明の仕事を受け、予定通り馬車を待っていたが、予定時刻を過ぎてもターゲットは現れなかった。不安が募る中、突如現れた一人の女に対し、頭目は警戒しながらも符丁を求めたが、女は叫んで《嘆きの亡霊》の一員であることを明かした。
女は仮面を取り出し、笑う骸骨の仮面をつけた。この仮面は悪名高い《嘆きの亡霊》の象徴であった。続けて、巨大な騎士ともう一人の女が現れ、頭目たちは恐怖に陥った。クライを含む《嘆きの亡霊》のメンバーは、あっけらかんとした態度で傭兵団を圧倒し、その中の一人が空に浮かぶ大きな凧からも声をかけた。
クライたちの一行は、半日以上かけて最初の滞在ポイントに到着した。旅路は冒険ではなく、安全を最優先にしているため、護衛としては楽な部類であった。クライは「快適な休暇」という宝具のおかげで快適に過ごせた。クライが何も起こらなかったことに安堵すると、クリュスはクライの行動に対し不満を漏らす。
宿は豪華で、フランツは一日目の無事を喜ぶが、クライは油断を戒める。クリュスや他の護衛メンバーたちがクライに意見を求めるが、クライは適当に答える。クリュスは魔力の消耗を隠しながらも護衛に奮闘する。
その夜、クライの部屋が揺れ、チルドラゴンの群れが現れた。クライはクリュスと共に皇帝を守るために駆けつけ、チルドラゴンと対峙する。クリュスが魔法で応戦するも、苦戦を強いられる。クライは宝具を使って援護し、クリュスと共に皇帝を守るために行動する。
最終的に、クライはクリュスと共に皇帝を守るために戦い、後でシトリーに対する真剣なお説教を決意する。
宿の一室で、男は小さく笑みを浮かべた。彼の持つ漆黒の宝玉『叛竜の証』が発動し、ドラゴンが誘引されたのである。『叛竜の証』は竜の財宝を盗んだ者の証であり、周囲のドラゴンを引き寄せ、破壊をもたらす力を持つ。
近衛の騎士たちはこの攻撃に対して無力である。クライが慌てている様子を想像しながら、男は彼を観察していた。クライは表面上は無能に見えるが、何度も男の策を逃れてきた。酒に仕込んだ薬物やドラゴンの卵の件、雇った襲撃者の失敗など、彼の計画は度々狂わされた。
しかし、男は攻撃を止めない。守りに限界があるならば、攻め続ければいいだけの話だ。男の役割は判断することではなく、与えられた任務を忠実に実行することである。
チルドラゴンは群れを成すドラゴンであり、単体で遭遇することは稀である。過去に《嘆きの亡霊》も大規模なチルドラゴンの群れと戦った経験がある。現在、チルドラゴンの群れが民家や住人を無視し、皇帝一行が宿泊している宿に向かっている。この異常な光景に、リィズ・スマートは驚愕する。
リィズは窓からその様子を確認しながら、妹のシトリーに怒鳴りつけた。シトリーは、仕込んだのはわずか十一匹であり、それ以上の数のドラゴンが現れていることに驚いていた。リィズ達は山からドラゴンを捕獲し薬を仕込んだが、こんな大量のチルドラゴンが集まることは予想外であった。
ルシアは、捕まえたせいで報復に来たのではないかと疑念を抱くが、リィズとシトリーには確信が持てない。リィズはクライの安全を心配し、少しドラゴンの数を減らそうかと提案するが、シトリーはキルナイトと《止水》がいるから大丈夫だと信じていた。また、「お兄ちゃん」がいることも安心材料だと述べた。
チルドラゴンの群れが皇帝の宿泊する宿を襲撃し、護衛の騎士たちが必死に応戦していたが、数の多さに苦戦していた。クライはその光景を見て驚き、クリュスと共に応援に駆けつけたが、自分の無力さに気づく。
シトリーから預けられたキルナイト・バージョンアルファが自動で戦い、チルドラを圧倒するが、それでも状況は厳しかった。クライは、なんとか騎士たちの助けを借りて皇帝を守るが、新たな大群が迫ってくる。
その時、アンセムの宝具による結界が現れ、チルドラの攻撃を防ぎ、更に《止水》のテルムが強力な魔法でチルドラの群れを殲滅する。テルムは狐の面を被った敵と対峙し、これを撃退する。
クライは、今回の襲撃がシトリーの仕業であることを知っていたが、真相を隠しつつ、護衛の重要性を説いた。彼は、自分がいれば次の襲撃も防げると断言し、護衛の続行を提案した。
黒ずくめの男は、一連の襲撃結果を反芻していた。チルドラゴンの群れは《止水》の力で殲滅され、これは想定通りであった。騎士団に死者が出なかったのは予想外だったが、これも許容範囲内であった。しかし、《千変万化》が旅の続行を進言したことは全く予想外だった。
通常、このようなアクシデントが発生すれば旅を中止するのが常識であり、フランツや《止水》の判断も当然であった。だが、《千変万化》はこれを止め、自信満々に旅の続行を進言した。彼が力に自信を持っているのか、それとも他に何か意図があるのかは不明だった。
男は《千変万化》が遠くから様子を窺っていた自分に向かって親指を立てた仕草を思い出した。この行動は意味不明であり、彼の真意を測りかねた。護衛の続行は男にとって都合が良く、計画に変更はなかった。帝都の中で皇帝を暗殺するのは難しいが、護衛の薄い外でなら可能性がある。
《千変万化》がドラゴンはもう出ないと言ったことは誤りであり、男は再びドラゴンを呼び寄せる準備をしていた。彼は不安を感じながらも、目的を達成するために忠実に任務を遂行する決意を新たにした。
クライはクリュスの後ろにしがみつき、隊列の殿を務めていた。ドラゴン襲撃から一夜明けて街を出発し、馬車の動きが遅くなっていた。クライはテルムの実力に安心していたが、絨毯を見失い、戻る決断をした。クリュスは反対したが、クライは絨毯の重要性を訴え、絨毯を捜しに行くことにした。
一方、シトリーたちは竜や魔物と遭遇しながら護衛を続けていた。シトリーはクライの意図を察し、ルークにドラゴンだけを斬るよう指示した。クライの計画が進む中、護衛依頼は順調に進行している。
クライは絨毯を見失ったため、クリュスと一緒に絨毯を捜しに戻ることにした。その間、護衛の馬車が魔物に襲撃され、多くの魔物の死骸が残された。護衛に戻るとフランツから激しい非難を受けるが、幸い負傷者は出ていなかった。
再び行軍を続けると、道中にドラゴンの死骸が次々と発見された。これらはクライの仲間たち、特にルシアやルーク、シトリーたちによるものであるとクライは推測したが、フランツや他の護衛たちは驚愕していた。
クライはこれらの死骸が大したことではないと説明し、急いで街に向かうことを提案した。再び襲撃があった場合の備えをしながら、護衛隊は不安を抱えつつも行軍を続けることとなった。
フランツ・アーグマンは、ラドリックの命によりハンター達を側に置く決定に戸惑った。護衛任務は異常続きで、狐による襲撃やドラゴンの群れ、理解不能な死に方をした竜などが相次ぎ、騎士団も疲弊していた。ラドリックの冷静な表情は変わらなかったが、内心の心労は計り知れない。
フランツは、ハンターの《止水》の力を認めつつも、《千変万化》の行動には不審を抱いていた。しかし、《千変万化》の無実が真実の涙で証明されている以上、彼を信用せざるを得なかった。皇帝の安全を最優先するため、フランツは内心の葛藤を抑え、「御心のままに」と答えた。
一方、テルム・アポクリスは、《千変万化》が『九尾の影狐』の一員である可能性を強く感じていた。真実の涙を欺いた手法は不明だが、状況証拠から彼を疑わざるを得なかった。
第四章 深淵鍋とお化け部隊
クライは、フランツからの呼び出しから戻ると、絨毯に飛びかかられた。部屋に戻ると、クリュスが宝具のチャージをして待っていた。クライが絨毯を拾いに行ったことで、翌日から皇帝の側で護衛をすることになったが、自身でも理解できない状況だった。
クライは、クリュスに宝具のチャージを頼み、皇帝の護衛を共にすることを伝えた。クリュスは嫌々ながらも協力することを受け入れた。
一方、男は、絨毯の問題や護衛の指示変更に困惑していたが、結果的にクライと皇帝の近くで護衛することになり、暗殺の好機と捉えた。しかし、キルナイトという未知の存在が障害となることを懸念していた。
その時、テルムが現れ、《千変万化》が『狐』の構成員である可能性を示唆した。ケチャチャッカ・ムンクは驚愕し、計画の変更が必要だと感じた。
この世界にはいくつかの都市伝説的な脅威が存在する。主人公クライは、かつてその一つ「迷い宿」と遭遇し、攻略できなかったが、「神狐の終尾」という魔力の塊を持ち帰った。
クライとその仲間たちは皇帝の護衛任務についているが、クライの行動はしばしば理解不能でありながらも、その結果として皇帝の護衛の一員として選ばれた。ケチャチャッカはクライを「狐」の一員として疑い、テルムもクライの秘密を追及する。
クライはクリュスに席を外させ、テルムとケチャチャッカに対し、「尾」を持っていることを認める。これは「迷い宿」から持ち帰った魔力の塊であると説明する。
ケチャチャッカはクライが「狐」の構成員であることを確信した。クライが「尾」の有無を聞かれると、自らの正体をほのめかす答えをしたが、彼の行動は依然として自然体であった。テルムは攻撃態勢を取り、クライに「尾」の本数を尋ねると、クライは「十三本目」と答えた。これは「狐」の最高位である九本を超えており、テルムは驚いた。クライは「尾」を妹に預けていると言い、具体的な証拠を示さなかったが、その言葉は真実味を持っていた。
クライはテルムとケチャチャッカに「尻尾」の話を打ち明けた後、テルムはクライの計画を確認し、チームの信頼を再確認する。ケチャチャッカはクライの行動に疑念を抱くが、クライは平然と対処する。その後、リィズが突然現れ、クライは困惑するが、クリュスに見つかる前にリィズを隠す。クリュスはクライの行動に怒り、テルムとケチャチャッカも巻き込んで問い詰めるが、最終的にフランツが現れ、事態は一旦収束する。
クライは皇帝ラドリックと謁見することになる。彼は緊張しながらも仲間を伴うよう主張し、テルムとケチャチャッカが同行することを許される。皇帝との対話で、クライは彼の能力についての噂を否定するが、皇帝からその魔力を試すように求められる。困惑したクライが魔法のふりをすると、周囲の人々が蛙に変わってしまう。クライはその場を収めようとするが、元に戻す方法がわからず、事態は混乱を極める。
クライは誤って皇帝や護衛たちを蛙に変えてしまい、混乱を引き起こす。フランツは激怒し、クライを追い出そうとするが、皇帝はクライを庇う。クリュスも怒りを抑えきれず、クライに詰め寄るが、クライは魔法の才能が開花した可能性を感じる。皇帝の護衛計画についてテルムとケチャチャッカと話し合うが、クライは護衛中の事故で計画変更は避けるべきと説得する。フランツの反対を受けながらも、皇帝の助けで準備のために三日間の猶予を得たクライは、護衛任務の準備を進める。
クライは、チャージ役としてクリュスに協力を求めるが、練習中に絨毯に振り回されて苦戦する。訓練場でクリュスが疲弊している間、謎のシーツを被った集団が登場し、彼らがクライの仲間であることが判明する。彼らは「盗賊お化け」や「錬金お化け」などと名乗り、それぞれの特技を持っていた。ケチャチャッカはその奇妙な集団に混乱し、最後には訓練場から逃げ出した。
クライはクリュスに協力を求め、訓練場で絨毯の飛行訓練を行うが、絨毯に振り回されて苦戦する。訓練中、謎のシーツを被った仲間たちが現れ、クリュスの治療を手伝う。シトリーたちは通信魔法を使いクライをサポートする。クリュスが回復すると、彼女は仲間の正体に気づき、クライを問い詰めるが、テルムの介入で誤解が生じる。クライはこの状況を利用しようと考える。一方、フランツはクライの行動に疑念を抱きつつも、飛行船での護衛準備に努める。部下からクライが大量のポーションを飛行船に持ち込みたいと連絡があり、フランツは戸惑う。
トレジャーハンターにとって、ハントは準備から始まる。情報収集や物資の補給が依頼の成否を決める。《嘆きの亡霊》の準備は錬金お化けが担当し、万端である。フランツは、クライが用意した大量の物資に驚き、激怒するが、クライは備えだと説明する。フランツは飛行船が墜落することはないと断言するが、クライは万一に備えて準備を進める。出発の際、盗賊お化けが大きな杖を持って戻り、準備が整う。フランツは荷物のせいで人員を減らすことになったと不満を述べるが、クライは備えが重要だと主張する。最終的に、クライたちは飛行船『黒き星』に乗り込み、出発する準備を整えた。
テルム・アポクリスは、帝国が保有する最新鋭の飛行船『黒き星』に驚嘆していた。この船は貴族専用であり、一般人やハンターは通常搭乗できない。船体には一級の防御魔法や重量軽減、修復魔法が複雑に刻まれており、自然災害にも対策が施されている。これまで一度も落ちたことがないのも納得できる仕組みである。
テルムは外部からこの船を落とすのは難しいと感じたが、内側からならば容易だと考えた。この時、テルムは《千変万化》の不可思議な行動と指示の意図を理解した。帝国側は飛行船の墜落を考えておらず、そのために対策が不十分である。この船が落ちれば、皇帝の暗殺は『仕方ない』として処理されるだろう。テルムの策よりも《千変万化》の策の方が遥かに効果的であることを理解し、嫉妬すら抱かない。
テルムは襲撃の準備を任されており、フランツ率いる近衛騎士団の腕利きと対峙する必要があった。油断は禁物であり、テルムは気を引き締め直して『黒き星』に乗り込んだ。
第五章 迷い宿と迷子達
飛行船が飛び始め、クライはその浮遊感に驚嘆していた。クリュスはそれを冷ややかに見ていた。クライは持っていた宝具の杖『丸い世界』をクリュスに貸すことにした。その杖は通訳機能を持っているが、ケチャチャッカの言葉は翻訳されなかった。ケチャチャッカは自分の言葉で話しているようだ。
フランツは飛行船の安全を保証しつつも、クライの態度に苛立っていた。フランツは乗客のチェックと飛行船の整備を完璧に行い、万全の体制を整えたが、クライは嵐が来る可能性を示唆し、船の安全に疑問を投げかけた。
船の中では緊張感が高まり、フランツの部下が嵐の兆しを報告する。フランツは警戒を強め、船の安全を再確認した。クライは嵐が来ることを予感しつつも、旅の続行を決めた。
嵐の中、飛行船が激しく揺れる中、ケチャチャッカはクライ・アンドリヒの存在に不安を抱えていた。クライは能天気で護衛には不適切に見えるが、狐の一員であり、レベル8のハンターでもある。しかし、その行動は常に不可解であり、ケチャチャッカの疑念は深まるばかりであった。
嵐の中での飛行船内部は混乱しており、ケチャチャッカはクライの真意を見極めることができずにストレスを感じていた。テルム・アポクリスは冷静に対処し、内部からの攻撃が可能であることを示唆したが、ケチャチャッカの不安は消えなかった。
テルムはクリュスをどうするかをクライに尋ね、クライは口頭で注意するだけで対処すると答えた。この答えにケチャチャッカは不安を覚えたが、上級者の命令には従わざるを得なかった。
外の嵐の中、シーツの精霊たちが乗った凧が雷に打たれて落ちていく様子を見たケチャチャッカは、完全に疲弊し、寝室へ向かいベッドに潜り込んだ。
クライがクリュスにテルムに対して失礼なことをしたか尋ねると、クリュスは不満そうに否定する。嵐の中、飛行船が揺れるが、クライは快適な休暇のおかげで平静を保っていた。クライの絨毯は購入した絨毯と踊り、クリュスはクライの頻繁な呼び出しに不満を持つ。
嵐が一段落し、船が安定するとフランツが現れ、嵐を乗り切ったことを誇らしげに報告する。クリュスは人間はもっとリラックスすべきだと提案する。クライは飛行船の運行が順調に進む中、クリュスとテルムの態度に疑念を抱きつつも、何事もなく進むことを願う。
深夜、テルムがクライに今後の確認を求めるが、クライは特に問題ないと答える。テルムはクライの指示を尊重することを確認する。旅は順調に進み、フランツも安心しているが、最後に外を見ると、嵐が続いていることに気づく。
窓の外では、異常な嵐が続いていた。テルム・アポクリスは嵐の正体を解明できず、自身の無力さを感じた。この異常な現象には魔術的な兆候が見られず、テルムには理解できなかった。
嵐の中、クライはフランツに嵐の原因を尋ねられるが、答えを持っていなかった。フランツはクライに謝罪し、解決策を求めるが、クライも困惑していた。そこで、クリュスがフランツを落ち着かせるために介入した。
突然、部屋に狐面の男が現れ、緊張が走る。キルナイトが攻撃するも、狐面の男は回避し、テルムとケチャチャッカがタイミングよく現れる。しかし、狐面の男を取り囲んでいた近衛兵や使用人たちが次々に倒れ、無事なのは皇帝陛下、皇女殿下、クリュス、キルナイト、テルム、ケチャチャッカ、そして狐面の男だけだった。
テルムは最後の言葉としてクライの手管に驚いていることを伝え、物語は幕を閉じる。
精霊人のクリュスはクライに協力を求められるが、不満を漏らす。長寿で穏やかな生活を送る精霊人にとって、人間社会は目まぐるしく、クリュスもその例外ではない。しかし、パーティリーダーのラピスからクライの任務に協力するよう説得され、クリュスは渋々応じることにする。
嵐の中、クライとフランツのやり取りが続き、突然現れた狐面の男が近衛を一掃する。クリュスは状況を把握し、テルムが敵であることを理解する。クリュスは反撃を試みるが、テルムの力に圧倒される。クライの正体について疑念を抱いたフランツがクライを非難するも、クライは無知を装う。
クリュスは逃げる決意を固め、皇帝と皇女を守るために大きな魔法を使う覚悟を決める。しかし、クライの反応は状況を理解していないようであった。
クライは突然の事態に戸惑う。テルムが敵であり、彼がクライを味方と思っていることに驚く。テルムが護衛を一掃し、状況が混乱する中、クライは弾劾するが、テルムはクライを「狐」の一員だと思い込んでいる。クライはそれを否定し、状況を説明しようとするが、テルムは信じない。
テルムは船の動力を破壊し、船が落ちると言う。クライはテルムを止めようとするが、彼の魔法は防がれてしまう。ケチャチャッカがコントローラーを使いキルナイトを操ろうとするが、キルナイトは踊り始めてしまう。テルムの攻撃を受けるが、クライは結界指と宝具の効果で無傷である。
テルムが再度攻撃を試みる中、クリュスが反撃するも効果がない。最終的にテルムが強力な魔法を発動し、船が大きく揺れる。クライとクリュスは状況に対応しようとするが、困難な状況に直面する。
クライは状況を把握できず混乱していた。テルムが襲撃を仕掛け、魔法を使おうとするが、何故か発動しない。クライはテルムと対峙するも、戦力差がありすぎて打つ手がない。クリュスも魔法が使えず、困惑する中、テルムとケチャチャッカは逃走する。
その後、クライは近衛兵たちの治療を優先し、なんとか一命を取り留めるが、状況は依然として厳しい。船の中で異質な気配を感じると、小さな白い服を着た子どもが現れる。その子どもは狐の面を被っており、異世界から来た存在であることがわかる。
子どもは彼らを歓迎し、クライたちは完全に異世界に取り込まれていることに気づく。この世界は現実とは異なるルールが支配する宝物殿「迷い宿」であり、脱出は極めて困難である。クライはこの異質な存在と交渉するしかないと悟る。
クライたちは異界の宝物殿に迷い込み、異常なプレッシャーに苦しんでいた。特にクリュスは吐き気を感じながらも、精霊人としてのプライドで立ち続けていた。異界の濃密なマナ・マテリアルにより、彼らの体調は悪化していた。
一方、狐の面を被った子どもは強力な存在であり、その言葉は人語に似ていても実際には意味が異なっていた。クライはこの子どもと交渉しようと試みるが、子どもは突然消え去り、残されたのは狐の面だけであった。
その後、クライたちは宝物殿から脱出するために、クライが先頭に立って行動することを決意する。彼は過去にこの場所を訪れた経験を活かし、再びボスとの交渉を試みようとしていた。
物語の結末に向かう中、彼らはさらに強力な狐の面を被った子どもに遭遇し、困難な状況に立ち向かっていく。
クリュス・アルゲンは、異常なマナ・マテリアルの濃度による絶体絶命の状況に直面していた。魔法を使えず、守るべきプライドもありながら、頼れるのは宝物殿に詳しいクライだけであった。クリュスは体内での魔力強化を試み、ようやく動けるようになったが、強敵の幻影との戦いは避けられなかった。
クライは、かつての経験を頼りに冷静に対応していたが、彼らは次々と強力な狐面の幻影に遭遇した。幻影の一撃でクリュスは壁に叩きつけられたが、クライは平然と対応し、幻影を倒した。クライ自身も何が起こったか分からず、クリュスに問い詰められても答えられなかった。
その後、クライは再び狐面の幻影たちに囲まれ、最上位の狐面の存在に導かれて最奥へと進んだ。幻影はクライに対して一番大切な物を差し出すよう要求したが、クライは快適な宝具のおかげで冷静さを保ちつつ、慎重に対応した。最終的に、クライは覚悟を決めて異形の神との交渉に臨むことになった。
クリュスは圧倒的なマナ・マテリアルの前に自らの死を確信した。扉の奥には神としか思えないほどの強力な存在が待っていた。クライは平然とその扉の向こうに進み、圧倒的な神の前に立つ。彼は恐怖を感じながらも堂々と土下座し、神との会話を交わした。クライは神から「絨毯」を差し出すよう要求され、結果的にそれを差し出した。狐面の兄はクライの一番大切なものが絨毯であると認識し、それを受け取った。クライとクリュスは無事に戻り、船上の仲間たちの生存を確認した。クリュスはクライに怒りつつも、二人は神との取引を無事に終えたことに安堵した。
クライは危機感がない人物として描かれているが、彼の行動には一種の戦略性がある。兄狐はクライが一番大切な物として絨毯を差し出したことに驚愕し、それが実際には大切でないことに気付く。兄狐は知恵比べに負けたと感じるが、飛行船の駆動装置が壊れており、再び重力に捕らわれると船が墜落することを予言する。
飛行船が墜落し始めた際、クライは冷静に対処し、ルシアに魔法で船を浮かせるよう思念を送る。最終的に船は墜落するが、砂漠に無事着陸し、全員生存する。船の外にはトアイザントの街が見え、クライはその朗報を船内の皆に伝えた。
Epilogue 嘆きの亡霊は引退したい ⑥
クライとその仲間たちは無事に砂の国トアイザントに到着したが、クリュスは魔力を使い果たし、他の乗組員も多くが負傷していた。クリュスは精霊人として周囲に受け入れられ、命の恩人と称されるようになった。彼らの護衛任務は完了し、会談は文官に任せられることとなる。クライは今回の旅を振り返り、自分が予想していなかったことが起きたことに驚く。彼の運の良さについて考えるが、クリュスに殴られた。
シトリーが持ってきたアイスドリンクを飲みながら、ルシアが大変な魔力を使って飛行船を飛ばしたことを知る。ルシアの耳と尻尾は神狐の終尾の力の副作用であり、彼女はその力をうまく利用していた。
クライは仲間たちと話し合い、今回の旅で得られた成果を喜ぶ。クライは新しい尻尾をルシアにプレゼントしようとするが、暴れん坊の絨毯に阻止される。最終的に絨毯の機嫌を取り戻すために、クライは新しい絨毯を買うことを約束する。
クリュスはクライに対し、精霊人としての誇りと名誉を守るために、クライの名誉の失墜を防ぐように忠告する。彼女はテルムたち裏切り者のことを忘れていたクライに対して、策を持つように求めた。
テルムは船から飛び出して宝物殿に迷い込む。宝物殿は「九尾の影狐」の組織名の由来となった場所で、強力な狐の神が存在する。テルムは狐面の青年に対峙し、彼の力を感じ取るが、勝負を挑むのは危険と悟る。青年はテルムとケチャチャッカの大切な宝具を要求するが、テルムは拒否する。
一方、クライは墜落した飛行船の中でシトリーと共にテルムの痕跡を探していた。貨物室で狐面の少女を見つけ、彼女がスマートフォンという宝具を持っていることに驚く。少女は油揚げを食べることに夢中であり、クライたちは彼女をどう扱うべきか悩む。最終的に、少女はクライにスマートフォンを渡し、クライは彼女を救うために考えを巡らせることを決意する。
トアイザントの砂漠の村では、村人たちが植林作業に苦戦していた。水が不足し、過酷な環境で植物は育たない。そんな中、クライ・アンドリヒというレベル8のハンターが現れ、「神様」を貸すと提案する。クライは村人に、油揚げを毎日三つ捧げるよう指示し、神秘的な白い尻尾を地中深く埋めるよう頼む。
一方、フランツはクライに護衛任務の経過を尋ね、クライの過失を指摘する。しかし、クライは運が悪かったと答え、それを聞いた皇帝は温情を示す。フランツは戸惑うが、皇帝はクライにミュリーナ皇女の護衛兼指南を依頼する。クライとクリュスはその理由に疑問を抱くが、皇帝はミュリーナ皇女が非常に運が悪いことを明かす。
Interlude 武帝祭
世界中に存在する宝物殿やトレジャーハンターは、地脈を奔るマナ・マテリアルにより、誰もが英雄になり得る時代を迎えていた。しかし、マナ・マテリアルの吸収効率は個人の才能に依存し、才能ある者とない者の間には大きな格差が生まれていた。上流階級は才能値の高い者との子孫を重視し、才能至上主義が蔓延している。
クライ・アンドリヒは皇帝からミュリーナ皇女の護衛と指南を依頼される。皇女は運が悪く、気弱であるため、彼女を支えるための要請であった。クライは自分にその役目が務まるか疑問を抱きつつも、皇帝からの依頼を受け入れる。
その見返りとして、クライは武帝祭のチケットを受け取る。武帝祭は世界有数の武闘大会であり、各地から集まる強者たちが最強の座を争うイベントである。クライはそのチケットに喜びを感じ、世界最強の戦いを観戦できる機会を楽しみにしていた。
外伝 不運と幸運
クライは念願のトレジャーハンターとなって一月が経った。ある日、帝都を歩いていると、占い師の老婆に声をかけられ、不運な運命を告げられる。占い師はクライが遠からぬ内に死ぬと断言し、ハンターになることで運命が悪化したと警告する。
ルシアは占い師を信じず、クライもまた占いの内容に納得できなかったが、老婆の言葉に一抹の不安を感じる。占い師はクライの運命が極めて悪いと語り、不運が次々と襲うと説明した。具体例として嵐や雷、盗賊に襲われること、友人が悪に手を染めることなどを挙げ、クライの将来を暗示する。
占い師は最後に、クライが人間運や恋愛運が非常に良いと述べるが、それも不運に巻き込まれる友人や恋愛関係に発展する相手にとっては迷惑なことだと指摘する。クライは結局、占い師の言葉に疑念を抱きつつも、彼女の言うことを完全には信じず、占いを終えた。
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