小説【嘆きの亡霊】「嘆きの亡霊は引退したい 8巻」感想・ネタバレ

小説【嘆きの亡霊】「嘆きの亡霊は引退したい 8巻」感想・ネタバレ

どんな本?

「嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターによる最強パーティ育成術〜」は、槻影 氏による日本の ライトノベル
この作品は、ファンタジーコメディジャンルに属し、なろう系小説として連載されている。

物語は、世界中に存在する宝物殿と、そこに眠る特殊な力を持つ宝具に焦点を当てている。

富、名誉、そして力を求めて、危険を顧みずに宝物殿を探索するトレジャーハンターたちが大暴れする時代を描いており。

主人公のクライ・アンドリヒは、「嘆きの亡霊」のパーティーリーダーとして所属しており、同時に「始まりの足跡」のクランマスターも兼任。
彼はハンターレベル8でありながら、才能もやる気もなく、凡庸な存在。
一方、ティノ・シェイドはソロとして「始まりの足跡」に所属しており、ハンターレベル4に上達しています。彼は「嘆きの亡霊」に入ることを目指しており、クライの後輩として彼を慕い「ますたぁ」と呼ぶ。

この作品は、ライトノベルとして小説家になろうで連載されているほか、GCノベルズ(マイクロマガジン社)からライトノベルとして刊行され。
メディアミックスとして漫画化もされており、2024年にはテレビアニメ化も決定している。

読んだ本のタイトル

嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 8
著者:槻影 氏
イラスト:チーコ  氏

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あらすじ・内容

その男――稀代の英雄か、 それともただの人か。

色々あった武帝祭を無事(?)乗り切って帝都へ帰還したクライを待っていたのは、
行方不明になっていた《嘆きの亡霊》7人目のメンバーである《放浪(ロスト)》エリザ・ベックからのお土産である謎の剣型宝具と、
ルークの師匠《剣聖》ソーン・ロウウェルからの呼び出し(+α)であった。

ルークの素行について苦情を言う気満々の《剣聖》の機嫌を取るため、これ幸いと謎の剣型宝具を贈ることにしたクライ。
それが恐ろしい事態を呼び起こすとも知らずに……。

嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 8

感想

武帝祭を無事(?)に乗り越えたクライが帝都へ帰還すると、待っていたのは行方不明だった6人目のメンバー、エリザからの謎の剣型宝具であった。この置き土産が、後に大きな騒動を引き起こすことになる。クライのトラブル体質は健在で、次々と事件に巻き込まれていく様子が相変わらず笑いを誘う。ルークの師匠である剣聖ソーンとのやり取りも面白く、クライの策略が見どころであった。

一方で、エリザの登場は煽り文句に反して本編にはまだしっかりと描かれていない。物語は前後編のようで、今回の巻では多くの謎が残されたままである。謎の剣型宝具が次々と呪われていく展開は、わらしべ長者のような笑える流れであったが、解決は次巻に持ち越しとなっている。

キャラクターたちの個性が際立つ場面も多く、クライを取り巻く師匠たちが次々と登場することで、物語に深みが増している。彼が無意識に引き起こすトラブルに巻き込まれる周囲の反応も非常に楽しく、今回もテンポよく進んでいた。特にクライが手に入れた指輪や箱の中身に関する伏線が張られており、次巻でそれがどう回収されるのか楽しみである。

物語の展開が少し平和な印象を与える部分もあったが、それでも隠れた危機が迫っていることが感じられる。次巻では、クライと仲間たちがどのようにして帝都の危機に立ち向かうのか、非常に期待が高まる。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

アニメ

PV

『嘆きの亡霊は引退したい』
『嘆きの亡霊は引退したい』
『嘆きの亡霊は引退したい』

OP

『嘆きの亡霊は引退したい』

ED

『嘆きの亡霊は引退したい』

備忘録

第8部 呪い

Prologue  呪われた男

クライは、ゼブルディア帝都のクランハウスにある私室に戻り、久々の安息を得た喜びから、その場で回転しながらベッドに倒れ込んだ。特注の柔らかいベッドが、クライを優しく受け止めた。

武帝祭の旅は予想以上に波乱万丈であり、クライはフランツから睨まれ、皇女の訓練に参加し、妹狐をなんとか隠し通し、狐面愛好会やソラとの混乱に巻き込まれた。また、クラヒ達との出会い、そして「大地の鍵」の発動を抑え込むために奮闘した。多くの出来事に対処したとはいえ、クライは振り返ると、自分自身がほとんど何もしていないと感じていた。

そのため、クライはしばらく外に出ないことを決意し、エヴァに面会謝絶を宣言した。彼は部屋で過ごす準備が整っており、食事も持ってきてもらうつもりだった。エヴァはクライの決意に呆れながらも、しばらくの間、要請を断ることを了承した。

クライはベッドの上で休息を取りながら、ふとサイドテーブルに置かれた紙切れに気づき、それを手に取った。そこには「クー、見つからない」とだけ書かれていた。エリザからの置き手紙であり、彼女の放浪癖を再確認させられた。

エリザ・ベックは《嘆きの亡霊》の唯一の外部加入メンバーであり、砂漠精霊人の盗賊だった。彼女はしばしば放浪して姿を消すことが多く、クライとはなかなか顔を合わせる機会が少なかった。彼女の放浪は、危機感知能力の高さが一因だと言われていた。

クライは、エリザが部屋に残していった木箱を発見し、その中に様々な宝具が詰まっていることに気づいた。彼はその一つに、黒い布に包まれた剣を見つけた。それは珍しい剣型の宝具であり、クライは後でルシアにチャージを頼もうと決意した。

エヴァはクライの様子にため息をつきながらも、彼の笑顔に少しだけ安堵しているようだった。

クライが裏社会で指名手配されていることが発覚し、ルシアは驚愕した。シトリーは、クライが《嘆きの亡霊》のリーダーであることもあり、目を付けられてしまったのだと説明した。武帝祭の事件後、帝都ゼブルディアは一見日常を取り戻したように見えたが、背後では大きな混乱が続いていた。

もともと《嘆きの亡霊》は、敵対組織から賞金をかけられていた。今回の賞金額は非常に高額で、クライが一人も殺していないにもかかわらず、前代未聞の金額だった。これにより、クライは裏社会の注目を集め、さらに危険な立場に置かれることとなった。

リィズは、リストを見て驚き、アークが抜かれていたことに気づいた。シトリーは、「狐」の内部が不安定であり、ゼブルディアから撤収したことを報告した。「狐」は大地の鍵の発動を予想しておらず、その混乱が組織内で広がっていたようである。

《千変万化》のクライはこれまで多くの死線を潜り抜け、かすり傷一つ負ったことがないため、その実力が噂されていた。シトリーは念のためクライに護衛をつけることを提案し、皆でローテーションを組むことになった。

第一章  《千変万化》防衛戦

《始まりの足跡》クランハウスのラウンジは帝都ゼブルディアで有名な場所であり、トレジャーハンターたちの憧れの象徴であった。特に若手のハンターたちは、クラン名に魅力を感じ、そのラウンジに集まることが多かった。

その日、ガークは武帝祭の事件の進捗確認のためにクランハウスを訪れていた。エヴァ・レンフィードはクランマスターであるクライが別件に集中しているため、面会を断っていた。ガークはその判断を尊重しつつも、武帝祭の事件がゼブルディアや「九尾の影狐」への影響を大きく与えていることを理解していた。

事件後、狐の構成員が一部離反し、帝国の殲滅作戦は予想以上に順調に進んでいた。ガークはクライに「共音石」を届け、狐撲滅作戦への協力を依頼するよう託した。

しかし、面会を断ったクライ本人が突然ラウンジに現れた。彼の登場に驚く間もなく、ラウンジのガラスが割れ、クライを狙う矢が飛んできた。矢はクライの結界に阻まれ、彼には被害はなかったが、矢には爆弾が仕掛けられており、クライがそれをガークに投げたことで爆発が発生した。

その混乱の中、奇妙な亜人たちがラウンジに突入し、侵入者たちに立ち向かった。クライは襲撃者たちに驚きながらもエヴァを守り、ガークはその光景を見ながら戦いが始まるのを目の当たりにしていた。

ティノが急いで《始まりの足跡》のラウンジに到着すると、その場の惨状に息を呑んだ。ラウンジは襲撃を受け、大きな窓は粉々に割れ、椅子やテーブルは破壊され、床には大きな穴があいていた。瓦礫の片付けは進んでいたが、元通りにするにはまだ時間がかかりそうだった。

ティノは爆心地と思われる場所に歩み寄り、破壊の跡を観察した。そこでは、一部が爆風を防いだかのように焼け残っていた。この現象は、そこにいた高レベルハンターの耐久力を示すものだった。

その後、クランのハンター、ライルが現れ、クライが無傷であったことや、爆弾をガーク支部長にパスしたことを話した。ティノは驚き、マスターであるクライの行動があまりにも大胆であることに再認識した。

襲撃を受けた後に捕まったのは、クランハウスにやってきていた亜人「アンダーマン」であった。彼らは屈強で数も多く、戦うには非常に厄介な相手だった。ライルは、襲撃の目的が殺害ではなく、クライの弱点を探るための第一手だったと推測していた。

ティノは、マスターであるクライがわざと弱みを見せ、次の襲撃を誘い出して一網打尽にするつもりだと考え、その大胆な策略に感銘を受けた。ティノは、これが次の「千の試練」であり、来るべき戦いに備える必要があると感じ、警戒を強め、クライのもとに向かう決意をした。

襲撃後のクライは、自室でリィズからのしつこい報復の提案に困惑していた。リィズは敵を徹底的に潰すべきだと強調し、クライを守るためにも一族全員を皆殺しにするべきだと主張したが、クライはそれを止めようとした。

クライは、過去にも賞金首にされたことがあり、今回もすぐに事態が収まると信じていた。しかし、リィズや他の仲間たちはすでに報復心に燃えており、彼らをなだめるのに苦労していた。特に、アンダーマンたちがクライを守るために参戦していたことが予想外であった。

ルークもまた、クライに対して報復の準備を促し、彼の剣が血を求めているとまで述べていた。クライは彼らをなだめ、慎重に行動するように求めたが、襲撃者たちがクランに与えた被害は確実に彼の周囲に波紋を広げていた。

最終的に、クライはリィズやルークの報復提案を退け、代わりに師匠のためにエリザからの贈り物である珍しい剣をルークに託し、事態の収束を図ろうとした。この行動で少しでも状況が改善されることを期待していた。

トレジャーハンターの間で、《千変万化》が力を溜めているという情報が瞬く間に広がった。クランハウス襲撃が引き金となり、彼らの報復が徹底的なものになるという予測が一致していた。違法行為であっても、《嘆きの亡霊》が敵を逃さないという恐怖が広がっていた。

ゼブルディアの「赤の酒場」には、《無闘》と《金色》という二人の殺し屋がいた。彼らは《千変万化》をターゲットにしていたが、《無闘》はクライの異常な行動に恐れを抱き始め、撤退を主張した。《千変万化》が彼ら以上に手段を選ばないことに気づき、次第に逃げるべきだと結論づけた。

その時、店が襲撃を受け、扉の向こうには「五十人の人間と何者か」がいると伝えられた。殺し屋たちは、敵が人間だけでなく魔物も使っていることを察し、裏口から逃走を図ったが、すぐに扉が破られた。

帝都ゼブルディアの外れに、こぢんまりとした可愛らしい店が存在していた。その店は、かつて「九尾の影狐」の一員であったガフ・シェンフェルダーと、狐神の巫女であるソラが開店準備を進めている場所であった。ガフとソラは、帝都に身を寄せていたが、彼らの後ろ盾となっている《千変万化》が襲撃事件に巻き込まれたことを新聞で知り、その影響で組織から懸賞金が掛けられていると知った。

ソラは狐神の巫女として神のお告げを信じ、ガフに懸賞金の取り下げを依頼した。ガフは一度は憎々しげに反応したが、最終的にはその依頼を受け入れた。彼はかつて「白狐」としての力を持っており、その腕はまだ錆びついていないため、懸賞金の取り下げも可能であると自信を見せた。

ソラは、自身がいなり寿司弁当を作り、神狐に捧げるために努力していることを祈りながら、ガフの行動を期待していた。

クランマスターである主人公は、寝坊していたところを妹のルシアに激しく起こされた。彼女は、クランメンバーが帝都の退廃都区を襲撃し、街を破壊したという新聞記事を持ってきて責め立てた。主人公は襲撃を命じた覚えがなく、報復をしないよう指示していたが、シトリーが暗殺者の情報を広めたことからクランメンバーが行動に出たらしい。

主人公は、退廃都区の被害やクランの評判が悪化したことを気にしつつも、国が狐の問題に対処すると信じ、静観の立場をとる決意を新たにした。そして、ルシアが持ってきた服に着替え、エヴァが対応している取材に関する問題にも対応しようとしたが、取材に時間を取られるのを避けるため、フランツとの共音石を利用することを思いついた。

ゼブルディア皇城の一室で、帝国の重鎮たちが『九尾の影狐』の対策会議を行っていた。第零騎士団団長フランツ・アーグマンが作戦の指揮を執り、作戦は順調に進んでいたが、狐の組織に関する重要な情報は得られず、内部からの情報提供者による裏切りを利用して反撃の機会をうかがっていた。

会議中、フランツは『千変万化』からの共音石による連絡を受け、クランの事件についてのメディア対応を求められたが、フランツはその軽率な態度に苛立ち、彼に対して激怒した。フランツは、貴族として彼に頼らざるを得ない現状に不満を抱いていたが、皇帝からの命令に従い、必要な対応を行うことを決意した。

その後、占星院から帝都に関する厄災の予知が届き、会議はさらに緊張感を増した。予知内容は「帝都を覆う黒い影」であり、過去には呪いによる大規模な死傷者が発生したとの報告があった。フランツたちは呪いの可能性を調査し、対策を急ぐ必要があると判断したが、その直後、《剣聖》の門下生が魔剣の呪いに取り憑かれ暴走しているとの緊急報告が入った。

ゼブルディア皇城の一室で、帝国の重鎮たちが秘密組織『九尾の影狐』の対策会議を開いていた。フランツ・アーグマンは第零騎士団の団長として指揮を執り、組織を追い詰めるための作戦を進めていた。だが、組織は非常に厳重な情報統制を行い、重要な情報は得られていなかった。武帝祭後、狐の構成員たちが姿を消し、組織内部に変化が起きていることが示唆されていた。

フランツは、帝国貴族としての責務を果たしながらも、《千変万化》のような有能だがふざけた人物と関わらざるを得ない現状に不満を抱いていた。会議中、《千変万化》から共音石で連絡があり、彼は軽率な対応に激怒したものの、状況を改善するために行動を取った。

その後、占星院から「帝都を覆う黒い影」という予知が発令され、呪術による大規模な災厄の可能性が示唆された。フランツは、状況を確認し対策を急ぐべきだと判断し、他の関係機関と連携して対応を進めることを決意した。しかし、その矢先に《剣聖》の門下生が魔剣の呪いに取り憑かれ、大暴れしているとの緊急報告を受け、さらなる混乱に直面した。

第二章  呪物

クライは椅子をぐるぐる回しながら新聞を確認していた。フランツに頼んだおかげで、昨日の退廃都区襲撃について、新聞には何も書かれていなかった。まだ一晩しか経っていないのに、これほど迅速に情報操作が行われたことに驚いていた。エヴァが苦労して築いたコネよりも、貴族の圧力が効果的であると感じたクライは、他の記事に目を通してから、満足そうに新聞を置いた。

今日こそは何もせずにゆっくりできそうだと、大きなあくびをしながらクライは安堵していた。しかし、ソファに座っていたルシアが耐えかねて立ち上がり、問いかけた。「リーダー、今日は何をするつもりですか?」クライは「今日は英気を養おうと思っている」と答えたが、ルシアは「昨日も養っていたでしょう」と不満そうだった。クライは果報は寝て待てと軽く返し、彼女の不機嫌をやり過ごした。

ルシアは真面目であり、整理整頓や時間厳守を心がけ、日々の勉強を怠らなかった。クライはルシアのそうした性格に助けられていることを実感しつつ、二日連続でルシアが護衛に付くのは珍しいと話した。ルシアは「他のメンバーが忙しかったから」と説明したが、クライは兄妹の時間を持つことを喜んでいた。

クライは突然、良いアイデアを思いつき、ルシアに「今日は新しい魔導書でも作ろう」と提案した。ルシアは驚きつつも、その考えに反応したが、話が進むうちにクライは魔導書の作成よりも、ルシアの先生との関わりを思い出し、先生を蛙にする魔法を閃いたと言い出した。ルシアは必死にそれを止めようとしたが、クライは彼女の動きを軽くかわしながら、昔の思い出にふけっていた。

そんな時、窓の外に現れた鳩の鎖がクライの注意を引いた。手紙を受け取ったクライは、その内容を確認し、急に真剣な表情になった。手紙には、昨晩《剣聖》の道場で魔剣による事件が発生し、多くの門下生が負傷したという報告が書かれていた。どうやら、その魔剣はクライが鑑定を依頼していたものと同じ特徴を持っているようだった。

クライはすぐにルシアに準備を指示し、《剣聖》のもとへ向かうことを決めた。事件の調査と謝罪が必要だと判断したクライは、急いで準備を進めつつ、フランツにも協力を依頼しようと考えた。

ナドリ達は、剣聖の門下で数々の名剣を見てきたが、今回持ち込まれた剣は特別だった。それは魂が吸い込まれるかのような輝きを放ち、これまで見たことがない美しさと力を持っていた。この剣を持ち込んだのはルーク・サイコル、問題児として知られる弟子であり、帝都でも屈指のトレジャーハンターパーティの一員であった。彼は剣に対して特別な愛情を抱いていたが、この剣を師匠に贈るつもりで持ってきたのだという。

ルークの言葉にナドリは驚いたが、彼は理解することができなかった。それでも、ナドリはこの剣の持つ力に魅了されていた。剣士として、この剣を振るうことなく生を終えるのは許されないという衝動が彼を支配していた。

ナドリは、師匠に危険物を渡す前に確認が必要だと主張し、試し切りを提案した。彼の言葉には強い意志が込められ、ルークもそれを認めた。こうしてナドリは一度だけ、この剣を振るう機会を得たのだった。

飛行魔法は安定性に欠け、一流の魔導師でも苦手とする者が多い。飛行用の宝具や翼を持つ魔獣が高値で取引されているのはそのためである。しかし、ルシアは飛行魔法を自在に操る魔導師であり、兄のクライを箒に乗せて飛行していた。

クライは空中での不安定さに困惑しながらも、ルシアの技術に感心していた。しかし、クライは箒から落下してしまい、慌てたルシアが彼を空中で救出する。クライはその状況に冗談を交えるが、ルシアは本気で心配していた。

その後、二人は《剣聖》の道場へ向かうが、道場が瓦礫の山と化している光景を目にする。ルシアは無言で箒を操り、クライは内心で事態の重大さに気づきつつ、何が起こったのかを恐れていた。道場の破壊が、自分たちに関係するかもしれないと感じたクライは、逃げたい気持ちを抑えながらルシアに従って現場へ向かった。

ナドリは、《剣聖》の直弟子としての責任感から、右腕を失い、全身の痛みに耐えながらも、自死を考えた。しかし、彼を止めたのは、無邪気に笑うルーク・サイコルの存在であった。ルークは、道場を半壊させ、門下生たちを傷つけた魔剣の騒動を楽しんでいるかのようで、全く罪悪感を持っていなかった。

魔剣は人の心の弱さにつけ込み、持ち主を操る力を持つ。ナドリはその剣に魅了され、自ら制御を失い、他の門下生を斬りつけた。結果的に、他の門下生たちも次々と魔剣に取り憑かれ、道場内は混乱に陥った。唯一、冷静に対応したのはルークであり、彼だけが魔剣に取り込まれず、門下生たちを制圧した。

ナドリは、全ての責任を感じつつも、ルークの軽率な行動に怒りを覚えていた。魔剣を贈った《千変万化》に対する不信感も募り、ルークにその責任を問い質そうとした。しかし、ルークは《千変万化》が贈った剣に特に悪意がないと主張し、軽く受け流した。

その場に現れたのは、ルークの呼びかけに応じたクライの妹ルシアであった。彼女は箒に乗り、魔導師としての力を見せつけた。

クライは久しぶりに《剣聖》の道場を訪れたが、道場はルークの暴走によって半壊していた。ルークは模擬戦で興奮し、血まみれになりながらも元気だった。道場の破壊に対し、門下生たちはクライに責任を感じているようであったが、ルークはその様子を楽しんでいるかのようだった。

クライは状況を軽く流しつつ、ルークの無茶な行動に対しても慣れた態度を取っていた。ルシアもまた道場の破壊に頭を抱えていたが、クライは場の空気を和ませようと努めていた。

突然、道場に現れた《剣聖》ソーン・ロウウェルは、ルークの行動に対して叱責を飛ばしたものの、クライに対しては親しげな態度を取った。ソーンは道場での破壊について責める一方で、クライに対して杖を贈り、その場は何とか収まった。

その後、クライはルシアに杖を教授に渡すよう提案し、その場を立ち去ろうとしたが、フランツからの連絡で予言が未だに消えていないことが発覚し、再び問題が浮上することになった。

フランツ・アーグマンは第零騎士団の団長として、帝都ゼブルディアで発生した魔剣事件と占星院の予言に関する問題に直面していた。彼はクライとの共音石でのやり取りに苛立ちを感じながらも、皇帝の命令に従って対応していた。フランツは、予言の的中率を無視するクライの態度に怒りを抱きながらも、彼が何らかの知恵を持っていることを認めていた。

新人騎士のヒュー・レグランドは、自信満々に諜報部隊を批判し、クライに対する軽視を見せていたが、フランツはヒューにクライとの接触を命じ、情報を得るよう指示した。ヒューは自信を持って任務を受けたが、フランツは彼の成功を疑問視していた。

一方で、フランツは予言の消失を確認できず、次なる対策として魔術的要因を探るため、各魔術機関の専門家に内密に連絡を取る決意をした。

ヒュー・レグランドは第零騎士団に配属されたばかりの若い騎士で、上昇志向を強く持っていた。彼はクライ・アンドリヒというレベル8のハンターを攻略し、騎士団内での地位を高めようとしていた。クランハウスに向かう途中で《絶影》リィズ・スマートに出会い、彼女に接近するが、予想外にも攻撃を受け、意識を失った。

意識が戻ったヒューは、冷静に状況を把握しつつ、リィズの一方的な攻撃に耐えた。彼は《千変万化》クライに会い、彼の無気力で間の抜けた態度に戸惑いながらも、その存在感に圧倒された。クライの周囲での異様な状況に触れたヒューは、彼の特異な力に魅了され、任務を忘れ、自分を弟子にしてほしいと願い出た。クライは驚きながらもその提案を受けたが、ヒューの行動は従来の常識を超えたものであった。

ヒュー・レグランドはフランツ団長の命令を受け、クライ・アンドリヒの指揮下に入るため、彼を訪れた。だが、彼が到着すると、リィズ・スマートに襲撃され気絶し、騎士としてのプライドが大きく揺らいだ。リィズは無邪気な様子で、クライに報酬として呪物を要求していた。

クライは困惑しながらも、リィズをなだめるために頭を撫でていた。これを見たヒューは、彼の行動を「レベル8の人心掌握術」と感動し、彼の指揮下に入ることを誓った。しかし、クライ自身は全くその状況に納得しておらず、彼がリィズに呪物を渡すためにヒューにその捜索を任せた。

第三章  連鎖する災厄

クライは、護衛を担当するシトリーと、首をかしげるキルキル君に囲まれていた。彼は帝都での平穏を楽しんでいたが、リィズとの出来事やヒューとの関わりで、多少の混乱を抱えていた。シトリーはクライに楽しそうに話しかけ、クライはその様子に少し困惑しつつも、持っている宝具の確認作業を続けていた。

クライはフランツからの予言に関連する警戒心を抱きつつも、特に大きな危険は感じていなかった。シトリーを宝具で飾り立てて冗談めいたやり取りをする一方で、彼は帝都の安全性を信じつつ、万が一のために慎重に行動していた。

ゼブルディア魔術学院では、ルシア・ロジェが兄から贈られた漆黒の杖を学院に持ち込んだ。杖は宝具として非常に貴重な品であり、魔術師たちの注目を集めたが、その正体が不明であったため、ルシアは注意深く取り扱うように指示していた。しかし、杖が突然暴走し、周囲の魔導師たちの魔力を吸収し始め、杖が魔物のように成長していった。

学院内は混乱に陥り、魔導師たちは攻撃を試みたが、杖は魔法の攻撃を吸収してさらに力を増していった。ルシアは兄の責任を感じながらも、杖の暴走を止めるべく立ち向かい、元杖は学院を破壊しながら廊下を逃げ出した。ルシアはその後を追いかけ、学院内は混乱の最中にあった。

スマート姉妹は性格が正反対で、リィズは天真爛漫で直情的であり、シトリーは理性的でしっかり者であった。ある日、シトリーが厄呪編纂図という呪われたアイテムの書物を持ち込んできた。彼女はその中の「黒き世界樹」という呪物に興味を示し、その危険性を強調した。しかし、その後、ゼブルディア魔術学院が謎の巨大な魔物によって破壊されたとの報告が入り、クライはシトリーと共に学院に向かうことになった。

学院では「黒き世界樹」に似た巨大な黒い樹が現れ、魔導師たちはその樹と戦っていたが、魔法攻撃は無効で、むしろ樹が成長してしまった。事態はさらに悪化し、帝都で有名な魔導師《深淵火滅》が助けに来たが、それでも状況は収拾せず、樹はますます大きくなった。最終的に、シトリーが厄呪編纂図に書かれていた情報に基づき、樹は火と光に対して弱いと判断され、巨大な儀式魔法で破壊された。

クライはその後、魔術学院に呼び出され、学院の破壊に関する裁判にかけられたが、結局、状況が変わり、学院側が「黒き世界樹」の灰が貴重な触媒であると判断したため、クライは無罪放免となった。

それは、男にとって悪夢のような出来事であった。ゼブルディア魔術学院に突然現れた巨大な黒の木の怪物が、男の地味な研究室を執拗に狙って襲撃してきた。男の研究室に保存されていたのは、伝説級の危険な魔法薬であり、発明者もろとも抹消された代物であった。男は偶然その魔法薬を発見し、自分の才能の無さに悩んでいた彼にとって、それは薔薇色の未来を象徴するものであった。彼はその力を利用し、地位を得ようと考えていた。

しかし、ルシア・ロジェの兄、《千変万化》によって引き起こされたとされる怪物の襲撃で、男の研究室は危険に晒された。幸運にも男は怪物の注意が逸れた隙に逃げ出し、命を取り留めたが、学院の魔導師たちによる厳しい取り調べが迫っていることは明らかであった。男は覚悟を決め、魔法薬を懐に入れ、最後の戦いに向かう決意を固めて歩き出した。

塔の頂上から階段を降りていく途中、クライはシトリーと共にセージ教授との対話の疲れを感じていた。シトリーは被害者のように振る舞っていたが、実際には何もしていなかった。途中、シトリーが誤解し、セージ教授が何も与えなかったことを冗談交じりに不満を言っていたが、実際はその場に巻き込まれただけであった。

階段を降りる最中、突然茶色のローブに身を包んだ人物が現れ、クライに金属の水筒を押し付けて姿を消した。シトリーがその水筒を調べたところ、中にはいちごミルクのような液体が入っていたが、シトリーはそれを伝説の魔法薬「ストロベリー・ブレイズ」と推測した。この魔法薬は極めて危険で、飲んだ者を完全に支配する力を持つとされていた。

その後、クライはその水筒の液体が本物であることを危機察知の宝具で確認し、シトリーに渡すことが危険であると判断してポーションを洗面台に流し捨てた。しかし、いちごミルクの瓶と水筒の液体があまりにも似ていたため、クライは冗談のようにいちごミルクを水筒に注いでみた。

シトリーは水筒の中身が減っているのを見て、クライが危険なポーションを飲んでしまったと勘違いし、解毒薬を作りに急いで走り去った。クライはその場に残され、ルシアと共にシトリーの誤解を解く必要があると気づいたが、事態はすでに複雑になっていた。

帝都の退廃都区と中央区の境にある怪しげな店で、ヒュー・レグランドは店主と口論をしていた。彼は騎士団の一員として呪物の取引に関する捜査を行っていたが、店主は呪物を取り扱っていないと否定した。ヒューは店内を調べようと脅しをかけたが、店主は強く否定し続けた。

ヒューは既にいくつかの店を捜索していたが、どの店でも同じような反応を受けていた。呪物が密かに流通している可能性が高く、捜査は難航していた。彼はこれ以上の捜査には退廃都区の犯罪者たちとの接触が必要だと感じた。退廃都区はかつて第三騎士団が制圧を試みたが失敗しており、内部には犯罪者や魔術結社が根城を構えていた。

フランツ団長から《千変万化》に協力し情報を得るよう命じられていたが、ヒューは捜査が困難な状況であることを理解していた。それでも、彼は笑みを浮かべ、成り上がるための力を得るために挑戦を続ける覚悟を持っていた。

錬金術師における技術は、条件を揃えれば誰もが同じ結果を得られることが特徴である。優れた魔導師には資質が重要だが、錬金術は試行錯誤の結果として発展してきた。その歴史には抹消された成果も含まれており、「ストロベリー・ブレイズ」という支配薬がその一例であった。このポーションは、飲んだ相手の意識を完全に支配する力を持ち、複数の国で内乱を引き起こしたため、レシピや発明者もろとも抹消された。

シトリー・スマートが持ち込んだこのポーションは、もし本物ならば世界を震撼させるものであった。彼女は慌てふためきながら学長ニコラルフ・スモーキーのもとに解毒剤の必要性を訴えたが、ニコラルフはシトリーがこの伝説的なポーションを独占せず持ち込んだことに驚いていた。

ニコラルフはこの事態をチャンスと捉え、ポーションの複製と解毒剤の製造を計画した。しかし、その最中、ガス攻撃を受け、敵がポーションを奪いに来たことを悟った。ニコラルフは怒りに燃え、ゴーレムを起動させて攻撃に備え、戦いの準備を進めたが、シトリーはその様子を冷静に見守っていた。

第四章  最強の呪い

クライは日課の宝具磨きをしながら、帝都で日々起こる事件に対して無関心であったが、エヴァが新聞を持ってきて報告を始めると、占星院の予言が話題に上がった。帝国が占星院の予言を真剣に受け止め、教会での大捕物があるという話を聞いたクライは、自分が何も関わっていないことをエヴァに強調した。

その後、共音石が震え、フランツから錬金術師が持ち込んだポーションの件で騒ぎが起き、第三騎士団が全滅したという報告が届いた。クライはそのポーションが実はいちごミルクだったと説明するも、フランツは怒り、すぐに魔導科学院へ来るように命じた。クライは状況を理解しつつも、いちごミルクが原因でこの騒動が起きたことに困惑した。

アンセムが訪れ、クライは彼に教会での浄化作戦について尋ね、特に「マリンの慟哭」という呪物に関する情報を得た。アンセムはその呪物の危険性を説明し、浄化作戦に備えていた。クライはアンセムに協力を申し出るが断られ、宝具の鎧を磨いて日が暮れた。シトリーが帰還し、プリムス魔導科学院が閉鎖され、彼女が今後もクライの側にいることを伝えた。クライはシトリーから受け取ったペンダントをアンセムに渡し、彼の浄化作戦の成功を祈った。

帝都ゼブルディアでは不穏な事件が次々と発生し、商人たちは帝都から脱出しようとし、護衛依頼が急増していた。一般市民には占星神秘術院の予言は公表されていなかったが、事件が相次ぎ不安感が広がっていた。特に《剣聖》門下の魔剣暴走事件、ゼブルディア魔術学院の怪物出現事件、そしてプリムス魔導科学院での違法ポーションを巡る争いが注目を集めていた。

フランツは、予言が何か大きな災厄を指しているのではないかと考え、危険物の探索を続けていたが成果は得られていなかった。中でも《千変万化》が起こした騒動は、いちごミルクの誤解によるもので、錬金術師たちが騙されて騒動を引き起こしたが、処罰は免れなかった。

さらに、フランツは教会に力を注ぐことを決意し、『マリンの慟哭』という強力な呪物の浄化作戦が進行していることに注目していた。この呪物はかつて多くの生命を奪ったが、教会の技術の進歩により、今回の作戦は成功すると確信されていた。

フランツは、帝都の安全を守るために、引き続き教会との連携を強化し、帝国の繁栄のために尽力する覚悟を新たにした。

呪物の浄化作戦の日がやってきた。帝都ゼブルディアの光霊教会に向かう道は通行規制がかけられ、市民は不安な表情で騎士たちの動きを窺っていた。教会までの道中、クライはアンセムに話しかけ、彼の知名度や評判に感心していた。教会では多くの準備が進んでおり、呪物「マリンの慟哭」の浄化のために結界が設置されていた。

作戦には帝都支部のガーク・ヴェルターやアーク・ロダンも参加し、彼らとクライは再会を果たした。ガークはクライに対し、呪いの浄化が危険であることを警告し、アークも彼の参加に驚きながらも協力する姿勢を見せた。会議ではフランツ団長がさらなる準備を提案し、教会側も宝具「光の柱」を取り出し、呪物を封じるための万全の準備を整えた。

作戦の成功を確信しながらも、クライはあくまで慎重に行動し、周囲の状況を見守っていた。

儀式が進む中、《星の聖雷》のリーダー、ラピスは期待外れだったことに不満を漏らし、クリュスは火器で呪いに対抗する状況を興味深く見ていた。彼らは光霊教会の技術の力を認めつつ、呪いの浄化を見守っていたが、本命の「呪われし真紅の精霊石」は見つからなかったため、失望していた。

その頃、クライは儀式の様子を高みから観察していた。教会の手による「マリンの慟哭」の封印が解かれ、強力な呪念が姿を現したが、アンセムや騎士たちの攻撃で弱体化していった。ところが、突然現れた黒い騎士が呪物を守るかのように現れ、場は混乱に陥った。この黒騎士は、シトリーが持っていたペンダントから出現したものであり、攻撃を防ぎながらアンセムと対峙した。

通常、魔術はエネルギー源を用いて現象を引き起こすが、ごく少数の者は「考えるだけ」で現象を起こす能力を持っていた。こうした能力を持つ者たちが発する「呪い」は、非常に強力で制御不能であり、呪術師たちはこれを利用して恐るべき兵器を生み出した。

一人の呪術師が集めた素質ある者たちを互いに殺し合わせることで、強大な怨念を宿す兵器「マリンの慟哭」が誕生した。これは、殺意を持ち続ける存在で、守るべき対象を失ってもその力を減じることなく、万象を呪い殺すために生まれた。

また、かつての忠義の騎士が守りきれなかった主への悔いと恨みから、守護の呪いを宿す騎士が登場した。この騎士の念は、かつての主の善悪を問わず、ただ「守る」という純粋な意志に基づいていた。

この二つの異なる時代に生まれた呪いが交錯し、奇跡的な状況が生じた。封印を解こうとした神官たちや周囲の騎士、ハンターたちはその光景に驚嘆し、圧倒的な力を目の当たりにした。

謎の黒騎士が登場し、彼の闇色の剣が弾丸や雷を防ぎ、アンセムとの戦いが激化していた。戦況は一変し、結界の柱にひびが入り始めていた。教会が想定した「マリンの慟哭」の呪力を超える力が黒騎士にあり、神官たちは焦って出力を上げるよう命じた。

マリンの姿も変わり、黒騎士との相乗効果で更に強力になった。黒騎士は紫に輝く盾を持ち、攻撃力も増していた。アンセムが猛攻を仕掛けるが、黒騎士は何とか攻撃を避け、状況は緊迫していた。

その間、ルシアが氷嵐の魔法「ヘイルストーム」を発動させ、アンセムをも巻き込みながら、黒騎士に追撃を加えた。だが、結界の柱が崩れ、マリンの呪いが解放される。恐ろしい慟哭が響き渡り、騎士たちは恐怖に震えた。

最後に、神父が光の鎖を使い、マリンと黒騎士を貫き、彼らの動きを止めた。この鎖は「光の柱」と呼ばれる宝具であり、強力な呪いを封じ込めるために使われた。

最終的に、精霊人の呪術師を呼び寄せる案が浮上し、精霊人と教会が協力する形で呪いの浄化を進めることになった。

クライは教会から戻り、エヴァと話していた。光霊教会で大事件が起こったものの、彼自身はお土産をもらったことに満足していた。教会の騒動を「星の聖雷」がうまく収めていたこともあり、クライはひと安心していた。

クランマスター室でリィズやティノと合流した後、リィズは宝箱に興奮し、解錠を試みたが、ティノが代わりに鍵を開けた。しかし、宝箱が突然動き出し、ティノを丸呑みにしてしまう。その後もリィズやエヴァ、さらにはライルのパーティまで宝箱に飲み込まれてしまった。

クライは宝箱がただの宝具ではなく、時空鞄のような性質を持っていることに気づいた。中に入った人々は無事に救出されたが、宝箱は異常な力を持っており、時には神隠しのように人を消す力があった。

最後に、クライはティノから奇妙な指輪を受け取り、それが「天命の呪樹輪」と呼ばれる呪いを引き寄せる宝具であることが判明した。クライは、この指輪によってさらに多くの呪いを引き寄せることを恐れつつも、状況を受け入れるしかなかった。

ソーン・ロウウェルの道場では、弟子たちが魔剣に挑む修行を続けていた。魔剣は人の心を惑わし狂気に導く危険なものであり、ナドリがその影響を受け大暴れした騒動があったが、フランツ卿の迅速な対応によって事態は収束し、箝口令が敷かれたことで大事には至らなかった。

ソーンは魔剣に打ち勝つためには、精神を鍛え、心を乱さないことが重要だと説いていた。彼自身は「剣聖」としての力で魔剣を制御し、弟子たちに剣技だけでなく心の鍛錬を求めた。弟子たちの中でも、特にルーク・サイコルは魔剣の影響を受けなかったが、それは彼の純粋すぎる剣への執着によるものだったかもしれない。

ソーンは弟子たちに魔剣への挑戦を勧め、その挑戦を通じてさらなる成長を期待していたが、ルークの斬ることへの執着に不安を覚え、ため息をついた。弟子を正しい道に導くことの難しさを改めて感じながらも、修行は続けられた。

ゼブルディア魔術学院で、黒い杖が発見された。この杖は、黒き世界樹の灰を元に作られ、空気中から魔力を吸収する極めて強力な宝具であった。杖の性能は学院の教授陣を驚かせ、その魔力増幅能力は優れた宝具と同等と評価された。杖がもたらす可能性は計り知れず、学院内で注目を集めた。

一方で、この杖が原因で起こった学院破壊の責任については、議論が分かれた。セージ・クラスタは、杖を送りつけた《千変万化》の行動を問題視したが、教授陣は《千変万化》の功績を強調し、彼を非難しない方向で話が進められた。

最終的に、この杖の研究はセージ教授の研究室に任されることとなったが、セージはこの決定を疑問視しつつも受け入れた。学院全体が《千変万化》に対して寛容な姿勢を示しており、セージは無力感を抱きながらも杖の研究に取り組むことになった。

ニコラルフ・スモーキーは取り調べを受けた後、シトリーと共に拘置所を出た。彼は、クライ・アンドリヒの策略に騙されたことに憤りを感じていた。プリムス魔導科学院の学長としての地位を失う危機に瀕していたが、彼の元弟子であるシトリーは上手く危機を回避し、他の研究者たちの資料を掠め取った可能性が高かった。

一方、シトリーはクライの幼馴染であり、彼に対する特別な感情を抱いているようであった。彼女の行動や策略に対してニコラルフは苛立ちを隠せなかったが、クライが伝説級の魔法薬「ストロベリー・ブレイズ」を排水口に流したという話を聞き、その事態をどうにか利用できないかと考えた。

さらに、帝都の地下下水道には怪物が潜んでいるという都市伝説があり、ストロベリー・ブレイズが怪物に影響を与える可能性に気づいたニコラルフは、シトリーと共に調査を決断した。彼はこの機会を利用し、錬金術のさらなる研究材料を得ようと考え、地下調査の準備を進めることにした。

Epilogue  嘆きの亡霊は引退したい ⑧

クライは、エヴァと共にクランマスター室で最近の出来事を振り返っていた。帝都で次々に起こった異常な事件に巻き込まれたが、彼自身はほとんど無傷で終えることができた。魔剣騒動、黒き世界樹、いちごミルクの騒動、そして時空鞄(彼が命名した「みみっくん」)など、様々な出来事が立て続けに発生したものの、クライは直接的な被害を受けず、無事に済んでいた。

エヴァはクライの態度に対して少し厳しい指摘をしつつも、懸賞金の取り下げや結界指の無事に関しても報告した。クライは、今回の出来事に運が味方していたと感じ、自分の成長を喜んだ。

さらに、エリザが一連の騒動のきっかけを作ったことに触れ、彼女に少し説教をするつもりであることを明かした。最終的に、クライは残された課題として、クーを見つける必要があると決意し、今後の行動に備えていた。

フランツ団長は、精霊人の呪術師を迎えるため、急いで馬車と人払いの準備を進めていた。帝都での通行止めや幻獣の手配は難航していたが、共音石を通じて占星院からの報告を受け、事態が進行していることを察知した。予言が消えず、狐の形が見えたとの情報に、フランツは狐である『九尾の影狐』が今回の事件にも関与している可能性を考えた。

『九尾の影狐』は、過去の因縁から報復を行う可能性が高く、特に呪術師の身柄が狙われていると判断した。もし呪術師の助力を得られず、マリンの慟哭の浄化に失敗すれば、恐るべき呪いが帝都に降りかかる恐れがあった。

フランツは騎士団に全軍を動員し、狐の襲撃に備えるよう指示し、教会の防衛にはハンターの力を借りることを決定した。これは彼にとって絶対に失敗が許されない重要な局面であり、皇帝や皇女に対して恥をかくわけにはいかなかった。

迷い宿の宝物庫で、妹狐は「呪物」を探していた。兄狐はその姿に驚き、何に使うのか尋ねたところ、妹狐は「呪物なうする」と答えた。妹狐は、人間とスマホを通じてやり取りしており、兄狐はそれが異例であることに気づいたが、成長の証として受け入れていた。

兄狐は、宝物庫には危険な呪物もあることを警告した。特に、美しい木箱は開けるべきでないと忠告し、災いを招くものであると説明した。しかし、妹狐はその木箱を持ち去り、スマホで写真を撮った。兄狐は人間との関わりを控えるよう助言し、妹狐は最後に頷いて迷い宿から姿を消した。

Interlude  精霊人

精霊人は、美しい容貌と強靭な肉体を持ち、長寿で高い魔術的資質を持つ高位種族である。彼らは動植物や時には魔物と対話することもでき、森の守護者を自称していた。人間との関係は長い間対立しており、自然を切り開いて技術を発展させる人間を野蛮と見なし、人間は精霊人を高慢で自己中心的と見ていた。かつて千年以上前に発生した戦争では、人間と精霊人の間で多くの犠牲者が出た。

その戦争は、精霊人の女王が死の際に残した呪いにより終結し、以降、精霊石と呼ばれる呪いの遺物が語り継がれることとなった。その呪いは今でも強力であり、危険とされている。精霊人クリュスとラピスはこの呪いを警戒していたが、呪いが封じられている間は被害は出ていなかった。

一方、騎士ヒューは《千変万化》の依頼により呪物を探していたが、成果は全く上がらず、限界を感じていた。退廃都区での調査中、ヒューは狐の面を被った少女に出会い、彼女から木製の小箱を手渡された。箱は軽いものの、ヒューは不安を覚えた。その少女は「これが最後の戦いだ」と告げ、箱を《千変万化》の男に渡すよう伝えて欲しいと話した。

外伝  《千変万化》の師匠巡り

トレジャーハンターとして活動するためには、独学では限界があり、先人からの知識や指導が不可欠である。特に、宝物殿のような魔境の探索や戦闘スキルの習得には、師匠の存在が大きく影響する。優れた師匠を見つけることは、才能と運の両方が必要で、誰もが簡単に師事できるわけではなかった。

クライはトレジャーハンターとして自分に才能がないことを感じ、絶望していたが、親友のルークが《剣聖》ソーン・ロウウェルに師事することを知り、その道場に同行した。ソーンは帝都で有名な剣士であり、道場は非常に規模が大きく、門下生たちの気迫も凄まじかった。ルークは大興奮しながら訓練を受けていたが、クライはその様子を見て、自分には合わないと感じた。修行の密度が非常に濃く、基礎訓練だけでも常人には到底こなせないレベルであった。

クライはハンターを引退したいと願っていたが、ハンターへの憧れは完全には消えていなかった。彼の幼馴染たちは才能がないクライにも優しく、彼が同行を希望すれば大抵連れて行ってくれるのだった。

シトリーはプリムス魔導科学院に所属するための面接にクライを連れて行き、クライを「爆発物の合成の天才」として面接官に紹介した。しかし、クライ自身は錬金術に全く才能がないと感じていた。シトリーが特別に推薦してくれたが、クライは学院に入るつもりはなく、むしろ錬金術の難しさに苦しんでいた。

一方で、クライの妹ルシアはゼブルディア魔術学院への編入を許され、彼女はこれから学業と本業の両立に忙しくなるだろうと予想された。クライはルシアの保護者として学院に同行し、ルシアの学び舎を訪れることになった。そこで彼は道を尋ねるため、学院の小柄な学生に声をかけたが、その学生が驚くほど美しいことに気づきながらも、研究棟までの道を案内してもらった。

セージ教授の研究棟に到着するための魔法陣が発動し、クライは新たな経験を楽しみにしていたが、どんな出会いが待っているかに不安も感じていた。

光霊教会は癒しの力の総本山であり、ハンターのパーティには治癒魔法の使い手が必要不可欠であった。《嘆きの亡霊》のアンセム・スマートはその役割を担い、かつて故郷の教会で修練を積んでいた。聖騎士である彼は、リーダーとしても信頼される存在であり、無口ながら実直であり、妹には甘い一面もあった。

クライは、ルシアをセージ教授のもとに預け、彼女の成長を期待していた。ルシアや他の幼馴染たちの才能がさらに磨かれることを楽しみにしていたが、特にリィズの成長が気がかりであった。リィズは斥候としての力を磨き、今では強力なハンターとなっていたが、彼女が新たに師事した師匠の技「絶影」は習得に失敗すると心臓が破裂すると聞き、クライは心配していた。

クライはリィズの成長を応援しつつも、彼女の訓練に一緒に参加することを断り、結局自分の師匠としてマーチスを選ぶことに決めた。どの選択肢も危険が多く、彼にとって唯一の安全策だったからであった。

クライは宝具鑑定師のマーチスに師事しようと試みたが、彼から「宝具マニアのガキには教える事などない」と罵られ追い返された。だが、クライは諦めず土下座して頼み込み、最終的にマーチスから「時間がある時に教える」との返事を得ることに成功した。クライはハンターを辞めてでも宝具鑑定師になる熱意を見せていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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