どんな本?
「嘆きの亡霊は引退したい 〜最弱ハンターによる最強パーティ育成術〜」は、槻影 氏による日本の ライトノベル。
この作品は、ファンタジーコメディジャンルに属し、なろう系小説として連載されている。
物語は、世界中に存在する宝物殿と、そこに眠る特殊な力を持つ宝具に焦点を当てている。
富、名誉、そして力を求めて、危険を顧みずに宝物殿を探索するトレジャーハンターたちが大暴れする時代を描いており。
主人公のクライ・アンドリヒは、「嘆きの亡霊」のパーティーリーダーとして所属しており、同時に「始まりの足跡」のクランマスターも兼任。
彼はハンターレベル8でありながら、才能もやる気もなく、凡庸な存在。
一方、ティノ・シェイドはソロとして「始まりの足跡」に所属しており、ハンターレベル4に上達しています。彼は「嘆きの亡霊」に入ることを目指しており、クライの後輩として彼を慕い「ますたぁ」と呼ぶ。
この作品は、 ライトノベルとして小説家になろうで連載されているほか、GCノベルズ(マイクロマガジン社)からライトノベルとして刊行され。
メディアミックスとして漫画化もされており、2024年にはテレビアニメ化も決定している。
読んだ本のタイトル
嘆きの亡霊は引退したい~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~ 9
著者:槻影 氏
イラスト:チーコ 氏
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あらすじ・内容
その男――稀代の英雄か、 それともただの人か。
クライの活躍で(?)呪物騒動も一段落し、平和を取り戻したように見える帝都ゼブルディア。しかし、まだ事件は終わってはいなかった!
妹狐の策謀によって発動した最凶最悪の呪物――精霊人の女王シェロが残した呪いの宝玉「真紅の精霊石」。
これまでいくつもの国を滅ぼしてきたというその呪いが帝都をも滅ぼそうとする時、《千変万化》クライ・アンドリヒが空を飛ぶ!!
帝都を、そして世界を守ることは出来るのか……!?
感想
クライの活躍によって帝都ゼブルディアは一時的に平和を取り戻したかに見えたが、妹狐の策謀により最凶の呪物「真紅の精霊石」が発動し、再び大きな危機が訪れる。
クライがこの危機に立ち向かい、空を飛び回りながら呪いを返り討ちにする姿が非常に面白かった。
彼の勘違いと不運から生まれる行動には毎度笑わせられる。
特に「呪いの五点セット」のエピソードでは、みみっくんの優秀さと、それに対するクライの反応が笑いを誘った。
また、物語は呪物編の後半と、ユグドラ編の前編という変則的な構成で進行する。
最凶の呪いが引き起こす大混乱の中で、クライが次々と事件を解決していく様子は相変わらずであったが、新たな冒険が始まる予感に胸が躍る。
ユグドラに向かうことでさらなる問題が発生することは明らかであり、次巻での展開に大いに期待が高まる。
そして、ついに嘆きの亡霊の最後のメンバーであるエリザが本格的に登場する。彼女の登場は待望されていたが、クライに対する深い理解とその異常性を察知して距離を置く様子に感心させられた。彼女のキャラクターが今後どのように物語に絡んでくるのか、そしてレギュラーメンバーとして活躍するのかが非常に楽しみである。
全体として、今巻も予想を上回る展開が次々と起こり、シリーズのカオスな魅力が健在であった。
最後に登場した砂漠の精霊人娘も、本格参戦により物語にさらなるスリルをもたらし、次巻の迷宮踏破が非常に楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
第9部 精霊人
Prologue 終わらない災厄
早朝、帝都ゼブルディアの正門前に複数の馬車が集まり、その馬車は全て植物で作られ、強力な魔獣プラチナホースに引かれていた。馬車の近くには精霊人のトレジャーハンターパーティ《星の聖雷》が集まり、話し合いをしていた。彼らは、強力な呪いを持つ宝玉「精霊石」を取り戻すために、精霊人の呪術師の力を借りる準備をしていた。
ゼブルディア第零騎士団団長のフランツは、精霊人の協力を得るための準備が整ったことを報告し、帝都の守りも万全だと述べたが、呪いの浄化が本当に可能かどうか心配していた。それに対し、パーティのリーダーであるラピスは、呪いは精霊人にとって扱いやすいものであり、浄化は問題ないと断言した。
フランツはその言葉を受け、精霊人の呪術師を迎えに行く準備を整え、何かが起こる前に全てを終わらせる決意を固めていた。
ヒュー・レグランドは、退廃都区で得体の知れない少女から渡された木箱を《千変万化》に届けるため、必死に帝都を進んでいた。箱は手のひら大の木製で、中身を確認していなかったが、異常な瘴気を感じていた。箱の邪気は尋常ではなく、騎士として優れたヒューでさえ、放り出したくなるほどのものであった。
この箱こそが、占星神秘術院の予言で言われていた呪物であることに間違いなかった。ヒューには、光霊教会に持ち込むという選択肢もあったが、彼は《千変万化》に渡すように指示されていたため、その道を選んだ。
ヒューは《千変万化》の神算鬼謀を信じ、この箱をどうにかしてくれることを期待していた。身体が限界に近づき、思考も散漫になる中、彼は箱を落とさぬよう全身の力を振り絞って進み続けた。
第一章 呪いの行方
ティノ・シェイドは、マスターの護衛として任務に就き、緊張と興奮を感じていた。彼女はマスターと二人きりでの時間を楽しみにしていたが、マスターが「空飛ぶ絨毯」カーくんに説教を始め、状況は変わった。ティノは、マスターが何をするつもりなのか理解できずにいたが、突然、騎士団のヒュー・レグランドがクランハウスに倒れ込んできた。
ヒューは手に木製の箱を持っており、その箱から強力な瘴気が漂っていた。ティノはその危険性を察知し、極度の警戒感を抱いた。ヒューはその箱をマスターに渡し、何かを伝えようとしたが、力尽きた。マスターは状況に緊張感を持たず、ティノの不安をよそに、その箱の蓋を開けてしまった。
妹狐は、帝都ゼブルディアの雑踏を歩きながら、自身が仕掛けた呪物を押し付けることで、人間である危機感さんとの知恵比べに勝利したと確信していた。彼女は、かつて【迷い宿】で精霊人から奪った強力な呪物を利用し、危機感さんに恐怖を与え、謝罪を引き出そうと考えていた。
しかし、クランハウスに呪物を渡した後、妹狐は空気の変化を感じたものの、呪いが想定通りに広がらないことに気づいた。呪いはクランハウスの上空に留まり、そのまま吸い込まれるように消えていった。妹狐は何が起こったのかわからず、不安を感じつつも現場に近づくことを避けた。
一方、クランハウス内では、ティノとクライが呪物から放たれた黒い煙と対峙していた。黒い煙は一箇所に集まり、精霊人の少女の形をとって現れた。この少女は、強力な呪いの力を持っており、クライたちに脅威を与えた。ティノとクライは必死に逃げ、クライは光霊教会に助けを求めるため行動を決意した。
ソレの本質は、精霊人の女王としての責務を果たすことにあった。太古から侵入者である人間を排除し、同胞を守る使命を背負っていた。長き眠りから目覚めたソレは、巨大な都市に敵意を抱き、滅ぼすべき相手を見定めた。特に、目の前の青年(クライ)に異様な怒りを覚え、攻撃を試みたが失敗した。
クライは呪われた宝具の指輪をはめており、それが精霊人の怒りを引き起こしていた。クライはティノと共に逃げ、光霊教会へ向かったが、追ってくる黒い猿のような精霊人の呪いから逃れられなかった。精霊人は猿から竜へと変身し、さらに恐怖を巻き起こした。
その後、教会に集まったハンターや神官たちも立ち向かったが、呪いの力は強大で、戦況は絶望的だった。最終的に、クライはマリンの封印を解き、呪い同士をぶつけようとしたが、精霊人の呪いはさらに強力で、事態は悪化した。
最終的に、クライたちはシトリーの助けを求めることになったが、彼女が提案したのは「下水ドラゴン」との実験だった。
精霊人の視点では、人間が別種の呪いを使って対抗しようとするのは、愚かな行動であった。クライがけしかけた二体の呪いも、精霊人には敵わず、その力も弱まりつつあった。精霊人は、その策が愚かであることをクライに示すため、呪いを仲間に引き入れた。
クライたちは絨毯で逃走を試みたが、精霊人は翼を持つ姿に変身し、追跡を続けた。一方、クライが下水道で召喚した「下水ドラゴン」も戦意を見せず、精霊人の呪いに圧倒されて後退した。シトリーお姉さまや錬金術師の策も功を奏せず、ポーションの爆発で場を混乱させたが、精霊人の呪いには通じなかった。
ティノとクライは再び絨毯に乗り、精霊人の追撃をかわしながら逃走を続けた。クライは次にゼブルディア魔術学院のルシアに助けを求めることを決断し、二人はそこへ向かうことにした。
クライは精霊人の呪いに追われながら、状況の現実感が乏しく、頭がついていけなかった。呪いを引き寄せる木の指輪がクライに嵌められていたが、魔力が切れたことで指輪が外れることに気づき、捨てることで呪いが街を襲う可能性があると考えたクライは、指輪を捨てずに逃げ続ける決意をした。ティノの操る絨毯で逃げる中、彼らはルシアの助けを得ようとゼブルディア魔術学院に向かった。
ルシアは強力な炎と水の魔法を使い、呪いに対抗したが、呪いは実体がなく、効果は限定的であった。さらに、精霊人が学院内にある黒い杖に執着し、それを手に取ると、怒りが爆発した。ティノとクライは、状況の悪化に対応しながら、ルークの元へ逃れる策を選んだが、クライの指示には不安が残っていた。
クライは精霊人の呪いに追われ、状況が絶望的であることに気づいていた。ルシアや他の仲間の力でも対抗できないと知り、自暴自棄になったが、唯一の希望としてルークを頼ることにした。彼らはティノの操るカーくんに乗ってルークの元へ向かったが、呪いの力は圧倒的であった。
ルークは木刀で呪いに立ち向かったものの、呪いは実体がなく、ダメージを与えることができなかった。さらに、精霊人は黒い杖を手に入れ、力を増した。クライはティノの提案で、みみっくんに呪いを閉じ込める作戦を思いつき、クランハウスに戻ることを決断したが、カーくんの魔力が切れかけ、追いつかれる危機に直面した。
フランツ団長は帝都での襲撃を受け、報告を聞いて驚愕していた。帝都の危機に、クライ・アンドリヒがフランツの名を叫びながら呪いに追いかけ回されているという異常な状況であった。ティノとマスターは必死にクランハウスへ逃げ込み、ティノはみみっくんの鍵を開けようと奮闘していた。
ティノは最後の瞬間に鍵が既に開いていることに気づき、呪いの精霊人をみみっくんに閉じ込めようとするが、呪いは容易にそれを回避し、逆にマスターがみみっくんに吸い込まれてしまった。激怒した精霊人は黒い液体となり、ティノも巻き込まれて流されてしまった。ティノは絶望の中で最後の力を振り絞り、お姉さまに謝罪の叫びを上げた。
クライはみみっくんの中に落ちてしまい、暗闇の中で目を凝らして周囲を確認した。そこには古びた街並みが広がり、出口が見つからない中で、追ってきた呪いの精霊人が再び現れた。クライは隠れるために二階建ての建物に逃げ込むが、精霊人は黒い水を街に降らせて呑み込もうとしていた。
クライは絶望しながらも、二階から街を見下ろし、ティノが黒い水に流されながらも何とか生き延びているのを確認した。彼はティノを心配しながらも、自分の状況に諦めを感じていたが、偶然見つけたベッドで眠ろうとしたところ、エリザ・ベックがすでにそこで眠っていることに気づいた。
クライはエリザを何とか起こそうとするが、彼女は全く起きず、仕方なく彼女を背負って外に出る決意をした。エリザの助けで呪いの精霊人がどうにかなることを期待し、クライはヤケクソで精霊人に挑む覚悟を固めた。
精霊人の女王シェロ・イーリス・フレステルは、クライ・アンドリヒに対する強烈な憎しみを抱き、彼を滅ぼすために呪いを広げていた。これまで出会った人間とは異なり、クライは恐れず、挑発的な態度で接していたため、女王は過去のトラウマを思い出し、激しい怒りに駆られていた。
女王はクライを見つけ出し、同族の精霊人であるエリザを人質に取られたと誤解し、殺意を込めて黒い槍を生成した。しかし、クライがエリザに押しつぶされて体勢を崩し、予想外の展開に動揺した。エリザが起き上がり、負傷もなくクライを助け起こす姿を見た女王は、呆然とする。
エリザは静かに女王に向かって、「戦争は終わりました。森に帰りましょう」と告げた。その言葉を聞いた女王は、激しい怒りを忘れ、かつての悲劇から解放される兆しを見せた。
クライ・アンドリヒは、エリザに抱きしめられながら、彼女が呪いの精霊人シェロとの話し合いを成功させたことに気づいた。シェロの殺意は消え、精霊人は戦争が終わったことに驚いていたが、エリザが説得し、戦争は終わったと告げた。シェロは最初信じられず、クライに対して激しい怒りを持ち続けたが、エリザの強い言葉により、最終的に崩れ落ち、呪いの力を失った。
一方、帝都ではフランツが新たな怪物出現の報告を受け、状況を確認していた。騎士団が精霊人を迎えるために手薄になった中、呪いの精霊人が帝都に現れ、ゼブルディア魔術学院や剣聖の道場を襲撃していた。だが、呪いは突然消滅し、フランツはその原因を探っていた。最終的に、呪いが《始まりの足跡》のクランハウスで消滅したとの報告を受け、フランツは事態の予想外の展開に驚愕した。
クライは、精霊人のエリザを《嘆きの亡霊》のパーティに勧誘した。エリザは流砂に飲まれた先の宝物殿で偶然出会ったハンターで、彼女の落ち着いた態度とマイペースさが印象的だった。クライは彼女がパーティにうまく馴染むと感じ、勧誘を行った。エリザは最初戸惑っていたが、最終的に加入した。
クランマスター室で、クライはエヴァに感謝の言葉を伝えた。エヴァが結界指を使い、呪いの影響を受けずに済んだことに驚いたクライは、その指輪を彼女に譲った。また、クライは宝物殿で拾った古びたクマのぬいぐるみが「マリンの慟哭」の一部である可能性に気づき、それを秘密にするようエヴァに頼んだ。
最後に、クライはぬいぐるみが不気味に倒れる様子を見て、修理の必要性を考えつつも、ぬいぐるみの状態に深い関心を示した。
帝都ゼブルディアは呪い騒動があったにもかかわらず、普段通りの賑わいを見せていた。呪い事件は大事件であったが、この都市にとってはそれほど恐れるものではないようであった。妹狐は自分の策が完璧だったと信じていたが、危機感さんによって呪いが無効化され、帝都にはほとんど被害がなかったことに困惑していた。
妹狐の兄狐からの電話で、自分の策が失敗し、呪いが浄化されてしまったことを指摘された。兄狐は、これ以上知恵比べを続けることは無意味で、妹狐にはまだ危機感さんに挑むのは早すぎたと諭した。妹狐は悔しさを感じながらも、兄狐の言葉に従い、自らの敗北を認めて帰ることを決めた。
その後、妹狐は危機感さんからの電話を受け、彼からの無神経な言葉にさらに苛立ち、電話を切った後、スマホを地面に叩きつけた。
第二章 呪われし者達
ティノ・シェイドは、昨日の呪いの精霊人事件を振り返りながら目を覚ました。彼女はその恐ろしい経験から疲労困憊していたが、マスターの力が圧倒的すぎて、彼女には理解できなかった。ティノはマスターが呪いを封じ込めたと思っていたが、どうやらマスターの意図は異なっていたらしい。
クランハウスに向かったティノは、マスターが宝箱「みみっくん」と会話しようとしているのを目撃した。さらに、マスターがあちこちからの呼び出しを無視していたため、ティノは不安を抱いたが、マスターは呑気にしていた。
その後、マスターがティノに話があると言ったが、その瞬間、お姉さまが部屋に飛び込み、急ぎマスターを連れて行こうとした。ティノも同行するように言われ、状況に戸惑いながらも、マスターとお姉さまに従った。
クライは、リィズに手を引かれ、呪い事件後の帝都を歩き、《剣聖》の道場に到着した。そこでは、剣士たちが石化され、石像となっていた。彼らの中には、ルークや《剣聖》も含まれており、クライは状況に驚愕した。騎士団の調査によると、精霊人の呪術師によって石化されたことが判明したが、アンセムの魔法によって多くの剣士たちは元に戻った。しかし、ルークだけは石化が解けず、エリザの助けが必要だと告げられた。
エリザはルークの呪いを解くため、精霊人の故郷ユグドラに同行するよう提案した。ユグドラは人間にとって未踏の地であり、特に排他的な国として知られていたが、クライたちはルークを救うためにその道を選ばざるを得なかった。
クランハウスに戻ると、クリュスが登場し、呪いに関する出来事を激しく問い詰めたが、クライはみみっくんを使って彼女を驚かせた。その後、ラピス率いる《星の聖雷》のメンバーが現れ、クライが呪石をエリザに渡したことに対して冷ややかな反応を示したものの、クライの説明を受け入れ、事態は収まった。
リィズは赤い宝石を手に取り、呪いが非活性であると確認した。エリザは「シェロの呪石」と呼ばれるその宝石が、過去に災害そのものと称されていた強力な呪物であり、人類を滅ぼしかねないほどの力を持っていたと説明した。この呪石は、かつて猛威を振るっていたが、途中で被害が止まったことも謎とされていた。
アンセムとルシアは、先日の呪い事件で帝都の名だたるハンターたちの攻撃がほとんど通じなかったことに驚きを示した。特にルシアの攻撃は多少の効果があったが、あのままでは多くの死傷者が出ていた可能性があった。エリザは、クーの工夫が成功の鍵だったと語ったが、ルークの石化に関しては深刻な問題が残っていた。
ポーションも効果がなく、普通の石化ではないことが明らかだった。エリザは、シェロ陛下と同格の呪術師、つまりユグドラの精霊人の皇族に会う必要があり、彼らに会わなければルークは永遠に石のままであると述べた。
クライは宝具のメンテナンスを欠かさず行い、ユグドラへの旅の準備を整えていた。クランマスターとして広い私室に多くの宝具コレクションを所有しており、今回の探索に役立つ宝具を選定する必要があった。ユグドラは精霊人の重要な国で、神樹『世界樹』を抱えており、非常に難易度の高い秘境とされている。
クライは今回の探索に向け、ルークがいない間に剣型宝具を持参することを決意した。中でも「静寂の星」という片手剣を選び、これにより重量操作が可能で、たくさんの宝具を持ち運ぶことができる点が便利であった。
さらに、クライは「剣型宝具派手派手エフェクトセット」と呼ばれる派手な宝具コレクションを取り入れ、使えなくとも楽しめるものとして持参を決めた。また、動植物と共生する精霊人の国に適した宝具も選んでいた。
準備が整うと、クライは宝箱「みみっくん」に全ての宝具を詰め込み、さらに「黒堅定鞍」を使用して宝箱に乗ることにした。これにより、みみっくんが自動で動き、クライは宝箱ライダーとして移動を可能にした。しかし、仲間たちはその奇妙な姿に驚きと困惑を示した。
ライルやティノはその姿に呆れつつも、クライの決意に驚きながらもユグドラへ向かう準備が進んでいった。
探索者協会帝都支部長ガーク・ヴェルターは、クライ・アンドリヒから聞いた話に驚愕していた。クライは呪いを引き連れて帝都を飛び回り、今回の騒動の原因を作っていたが、その一方で彼はユグドラへの招待を受けていた。ユグドラは精霊人の聖地であり、これまで誰も到達したことのない秘境である。その地に辿り着ける機会は非常に珍しく、ハンターの地位向上や利益の可能性を大いに秘めたものであった。
ガークは、クライに精霊人の皇族との交渉を成功させ、探索者協会の支部をユグドラに設置するよう依頼した。クライはその頼みに対して珍しく頷いたが、彼の目的はあくまで幼馴染みのルークの解呪であり、レベル9昇格や利益には関心がないと強調していた。ガークは、種族間の問題に発展しかねないこの重要な任務をクライに託し、慎重に行動するよう念押しした。
夜明け前、クライは帝都ゼブルディアの正門前にいた。《嘆きの亡霊》と《星の聖雷》のメンバーが集まり、ルークの解呪のためユグドラに向けて出発しようとしていた。クライは、シトリーやリィズ、ティノとともに、馬車に準備を整えて乗り込んだが、クリュスがみみっくんの中に閉じ込められていたことが発覚し、彼に謝罪した。ラピスたちが少し遅れて到着したが、クリュスの不在を心配していたため、クライは彼が無事であることを伝えた。
道中、シトリーが賊の出現を報告すると、クライは戦いには参加せず、ルシアやリィズ、エリザ、クリュスに任せた。護衛を備え、万全な準備で彼らはユグドラへと向かう旅を続けた。
森の奥で、美しい精霊人たちがシェロの呪いに関する報告を受けていた。精霊人の姫は、その力が強大で人間の手には負えないシェロの呪物が見つかったことに困惑していたが、同時にその返還を求める者たちを迎え入れる必要があることを認めた。しかし、ユグドラが外部の者を受け入れる余裕がなく、さらに森と世界樹が危機的状況にあるため、彼らは訪問者に対して適当な対応を考えていた。
一方、クライたちが賊に襲われた際、ルシアが強力な魔法で先手を打ち、リィズやクリュス、アンセムらが敵を迎え撃つこととなった。精霊人のラピスも加勢し、魔法の力で賊を撃退しようと奮闘していたが、敵の勢いは衰えず、戦いは続いていた。
クライは戦闘後に目覚め、クリュスに起こされた。外を見ると、戦場には多くの魔物の死骸が転がり、激しい戦いの痕跡が広がっていた。リィズたちは敵を追跡していたが、賊の逃亡を許し、戦果はあまり得られなかった。クライは自慢の宝具「服従の権威」を披露しようとしたが、欠陥が指摘され、仲間からは戦闘で役立たないと見なされた。クライは宝具を守ろうとしたが、他のメンバーは次の行動を急ぐ様子で、馬車での移動を再開した。
ゼブルディア帝国の外れで、アドラー率いる《千鬼夜行》の軍団が戦闘の後に集結していた。彼らは《嘆きの亡霊》との戦闘で多くの魔物を失い、強力な魔法によって壊滅的なダメージを受けていた。しかし、《千鬼夜行》のリーダー、アドラー・ディズラードは依然として余裕を見せ、彼らの次の戦略を考えていた。
アドラーたちは《嘆きの亡霊》のリーダー、《千変万化》クライの力に興味を抱き、彼を「導手」として認識した。彼らは彼が強力な魔物を操る存在であると見なし、いずれ彼との戦いは避けられないだろうと予感していた。アドラーは強大な敵に対して戦意を新たにし、「魔王は二人もいらない」と宣言し、クライの魔物を奪う決意を固めた。
第三章 神樹廻道
クライ一行は馬車で5日かけて、ゼブルディア帝国南部の大樹海に到着した。この場所は帝国の国境線に位置し、鬱蒼と茂る木々が人の侵入を拒むような雰囲気を醸し出していた。ユグドラへと向かう道を探しつつ、彼らはエリザが所持していた「導」と呼ばれる宝石で進路を確認していた。これによって、ユグドラへの道が示されることとなっていた。
ラピスを始めとする《星の聖雷》のメンバーは、この宝石に関して不満を抱いていたが、最終的にはクライの提案により事態は落ち着いた。その後、彼らは森を進みながら、精霊人の力によって魔物の襲撃を容易に撃退していた。
途中、クライは不思議な羅針盤型宝具を披露したが、それは不幸を指し示す「愚か者の道標」というもので、仲間たちからは困惑の反応を受けた。彼らはさらに森の奥へ進む中、一人の《星の聖雷》のメンバーが単独で行動を開始し、クライはその動きを不審に感じていたが、クリュスに確認すると全員が揃っているという返答があり、クライは困惑を深めた。
アドラーはウーノから「導」と呼ばれる宝石を受け取り、成功した作戦に感嘆していた。ウーノがクライたち《千変万化》を出し抜いて宝石を手に入れたことで、アドラーたちは彼らを追跡する準備を整えた。アドラーは《千変万化》がウーノの存在に気づいていたことを示唆し、その余裕こそが彼らの強さの表れだと感じていた。
アドラーは同時に、彼らの進む「神樹廻道」に潜む強力な神獣や魔獣にも興味を示し、それを調伏することで自身の軍勢をさらに強化しようとしていた。クイントが指笛を使い、大量の魔物を率いて《千変万化》を足止めする作戦が立てられた。アドラーは、この戦いが自らの力を示す絶好の機会だと信じ、彼らを追跡する決意を固めた。
不吉な出来事はいつも予想外に起こるものである。主人公たちは森を進む最中、精霊人に化けた何者かに騙され、受け取ったばかりの宝石「導」を奪われてしまった。馬車で全速力で追跡するも、クリュスやラピスからの冷たい視線を浴び、パーティの空気は悪化していた。
途中で謎の戦闘蟻の集団に遭遇し、戦闘が勃発。リィズやティノが対応し、アンセムは巨大な体を駆使して蟻たちを次々と蹴散らした。戦闘蟻たちは数の上では有利だったが、アンセムの圧倒的な力と《星の聖雷》の魔導師たちの魔法によって次々と撃退されていった。
シトリーは戦況を見て、馬車を捨てる提案をするが、主人公は「みみっくん」という宝具を使って、馬を安全に収納することを思いつき、次の行動へ移る決意を固めた。
クイントは、現人鏡を覗きながら、アンセムが戦闘蟻を圧倒する姿を見て驚愕していた。彼はその巨人の強大な力に感嘆し、未知の魔物への興味を強めた。ウーノもまた、魔物「みみっくん」が馬を呑み込んだ光景に衝撃を受け、その利便性に感心していた。アドラーは足止めが成功したことに満足しながらも、次の目的地「神樹廻道」の門にたどり着いた。
その門は苔むした古びた遺跡に見えたが、魔法の力が微かに働いていることを感じ取った。ユデンも強敵の存在を警戒しており、アドラーは仲間に覚悟を促した。ウーノとクイントは意気揚々とアドラーに続き、門をくぐり進軍した。その後、星喰百足が門を破壊し、静寂が訪れた。
一行は馬車を捨て、みみっくんに乗りながら進軍を続けた。戦闘蟻や他の魔物を蹴散らしながら、アンセムが先導していたが、突如落とし穴に落ちるという罠にかかり、再び戦闘となった。彼らはその後、苔むした古い人工の岩の門にたどり着き、これが目的の神樹廻道であることを確認した。だが、迎えがいないことに不安を覚えた。エリザは導で道を示し、門を通り進むことを提案したが、進行中に導が突然狂い始め、クライに原因があるように見えた。
精霊人たちは疑念を抱き、クライが問題を引き起こしているのではないかと責めた。シトリーやクリュスが擁護し、エリザもクライを庇ったが、状況は悪化し続けた。クライが門に近づく度に空間が歪み、やがて巨大な半透明の精霊が現れた。その精霊は高位の存在であり、交渉することが困難であるとラピスが指摘し、戦いを避けようとしたが、事態は緊迫していた。
《星の聖雷》のアストル・フィロンは、目の前で繰り広げられる光景に驚愕していた。高位の精霊と対峙し、ルシア・ロジェが強力な魔法「ヘイルストーム」で攻撃を仕掛けたが、精霊には全く通じず、その圧倒的な力にアストルは呆然としていた。精霊は自然の一部であり、特に今回のような格の高い精霊に立ち向かうことは、大自然に挑むに等しいことであった。精霊は理性を失い、ただ力の塊となっていた。
アストルたち《星の聖雷》のメンバーは、この状況をどうにかしようとしたが、彼らの攻撃も精霊にはほとんど通用しなかった。アンセムとルシアが次々に攻撃を仕掛けるも、精霊の防御を打ち破ることはできなかった。しかし、《千変万化》が冷静に指示を出し、その指示に従ってパーティが連携し、リィズが精霊に取り込まれていた同族を救出した。この連携は《嘆きの亡霊》の強さを示すものであった。
最終的に、精霊の理性が戻り始めた様子が見られたが、その場面に立ち尽くす《千変万化》と精霊が向かい合う姿は、まるで対話をしているかのようであった。
クライは、自らの状況判断能力の欠如を自覚していた。《嘆きの亡霊》のリーダーとして冒険に挑んでいたが、仲間たちが優秀であったため、その無能さはカバーされていた。ある戦いでは、謎の精霊と対峙する状況に陥り、攻撃命令を出したが、精霊には目立ったダメージがなかった。仲間も疲弊し、《星の聖雷》のメンバーたちは困惑しつつもクライに頼らざるを得ない状況であった。
精霊との対話を試みるも、クライ自身がその言葉を理解できず、精霊はみみっくんの中に姿を消した。その後、仲間たちは精霊の依頼を受けたと認識し、ラピスは事態を正確に把握していたが、クライはその内容を理解していなかった。しかし、精霊との交渉が無事に終了したことにより、《星の聖雷》のメンバーは彼を称賛し、誤解からの謝罪を申し出た。
その後、ユグドラの民であるセレンが現れ、世界の滅亡に関する重大な話が語られた。クライは不本意ながらもユグドラに案内され、さらに深刻な問題に巻き込まれていくこととなった。
第四章 精霊人の国
クライ達がセレンの案内でユグドラの村に到着し、壮大な世界樹を目にした。その地は強力なマナ・マテリアルで満ちており、高レベルの宝物殿にも匹敵する環境であった。セレンからユグドラの現状と、世界樹の崩壊による世界の滅亡の危機について語られた。
クライ達はルークの石化を解くために世界樹の下で儀式を行う必要があったが、その地は強力な幻影によって守られていた。リィズやラピスは戦いに意欲を見せ、クライは仲間たちに頼りながらも解呪を優先することを決意した。彼らはユグドラの秘密や、宝物殿の危険性に直面しながらも、解呪と今後の対策を模索していった。
魔物は人類に敵対する強力な存在であり、その種類は多岐に渡っていた。ウーノ達はこれまで世界各地で多くの魔物と戦ってきたが、神樹廻道で出会った魔物達は特に強力で、通常の魔物とは異なり恐怖や痛みを感じないように見えた。神樹廻道には強力なマナ・マテリアルが流れ込んでおり、それが魔物を異常に強化していた。
アドラー率いる星喰百足のユデンは、強化された魔物達を一掃し、ウーノ達はこれを機にさらに強力な魔物を服従させることを目指した。アドラーはマナ・マテリアルの源がある場所には最強の魔物がいると考え、その力を利用しようと計画していたが、ウーノ達はその危険性に懸念を抱いていた。それでも、強大な魔物との戦いは彼らにとって避けられないものとなっていた。
トレジャーハンターが活躍する時代、宝物殿は注目される存在であり、その攻略は多くの国や探索者協会で研究されていた。特に「神殿型宝物殿」は強力な幻影が出現し、そのボスは神に近い力を持つと言われていた。この宝物殿は攻略すれば歴史的快挙となることが多く、崩壊時に大きな力を放つ。
エリザは偵察の結果、宝物殿内には異形の魔獣が多数存在し、攻略は難しいと報告していた。ルークの解呪を行うためには、宝物殿の奥深くまで行く必要はないものの、周囲には強大な敵がひしめいていた。神殿型宝物殿の最奥には、力の根源である「眠れる神の卵」が存在し、それをどうにかできれば宝物殿自体を消滅させられる可能性があるが、成功例はなく、非常に危険であった。
クライは幻影の数が多すぎることから、作戦の決行を見送り、最適なタイミングを待つ決断をした。
ユグドラは全ての精霊人にとって特別な都市であり、各地の精霊人たちに伝説として語り継がれていた。クリュスや《星の聖雷》のメンバーがユグドラを訪れるのは初めてであり、彼らはかつてユグドラから疎外された精霊人たちの末裔であった。しかし、セレンの話を聞き、彼女たちが長年世界樹の変容に対して尽力してきたことを知り、クリュスたちはその責任を共有することになった。
クリュスたちの力はユグドラの民には劣るものの、彼らは宝物殿を攻略してきた経験と外で得た仲間たちの力を信じていた。しかし、クライ・アンドリヒは宝物殿の攻略を遅らせ、毎日作戦を延期し続けていた。クリュスはクライの行動を不思議に思いながらも、過去の経験から彼がタイミングを見計らっていると信じ、彼の行動を見守っていた。
ユグドラは静かで美しい町で、訪れた者に楽園のように映る場所であった。精霊人が少なく、住民は人間との交流を避けていたが、精霊人のセレンは外の世界に興味を持ち、主人公一行に協力的であった。ユグドラの町は、マナ・マテリアルを管理する魔法技術で支えられ、世界樹を守るために特殊な術式が用いられていた。
一行は解呪のために世界樹を訪れたが、予期せぬ幻影の増加に直面した。主人公は周囲の状況に圧倒されながらも、仲間たちの助けを得て敵を引きつけ、解呪を試みた。しかし、状況は次第に悪化し、幻影の数が増え、ついには圧倒的な力を持つ騎士が出現した。
その最中、謎の集団が突然現れ、幻影と戦闘を開始。彼らはかつて追いかけていた賊であり、主人公は混乱する中、戦闘に巻き込まれていった。最終的に、幻影と賊の軍勢が衝突し、状況はさらに混迷を深めた。
アストル達は幻影との激しい戦いを繰り広げ、なんとか世界樹に戻った。彼らが確認した光景は、無数の魔物の死骸が転がる遺跡で、その中心に血まみれのクライが立っていた。アストルはエリザを見て、彼女が幻影を引きつけたことを思い出し、驚きを隠せなかった。エリザはため息をつき、直前まで何もいなかったことに困惑していた。どうやら、アストル達が現場を離れていたのは一時間程度であり、その間にクライは驚異的な戦闘を繰り広げたようであった。
クライは怪我一つなく、魔物の血を浴びただけと述べたが、その状況からは壮絶な戦いがあったことが容易に想像できた。ラピスは、その激戦の跡を見て、クライが相打ちになったと聞いてさらに驚いていた。そんな中、突然、魔物の死骸の山から赤い鎧をまとった仮面の騎士が現れた。その騎士は深く傷ついていたものの、その力強さはアストル達が倒したトカゲよりも遥かに上だった。
仮面の騎士は巨大な剣を引き抜き、アストル達を圧倒するプレッシャーを放っていた。しかし、《千変万化》は揺るがず、周囲の状況に余裕を見せていた。騎士が《千変万化》に斬りかかろうとした瞬間、突如として剣が止まった。それは《千剣》ルーク・サイコルの石像が動き、騎士の攻撃を防いだからであった。ラピスは石化した状態で動くことがありえないと驚き、仲間達も恐れを抱いた。
石のまま動くルークの姿に、騎士は後退し、ついにルークの声が響いた。彼は幻影の騎士を追いかけて行き、戦場は再び静寂に包まれた。
Epilogue 嘆きの亡霊は引退したい ⑨
クライ達は、ルークの解呪作戦に挑み、様々な出来事を経たが、最終的には何も解決していなかった。作戦から三日後、リィズがクライの話を聞き、驚きを隠せなかった。幻影が現れたかと思えば、リィズ達が追い払った魔王達が乱入し、ルークの石像が動き出すという異常な展開が続いていた。
ティノやアンセムも、酔いから復帰し、その状況を理解するのに苦労していた。クライは仲間達が成長していることを実感し、彼らの今後の活躍に期待を寄せていた。その中で、シトリーはクライに試したいことがあると告げたが、クライは特に何も気にしていない様子だった。
アンセムがルークの行方を尋ねたところ、クライはルークが幻影を追いかけて世界樹に入ったまま戻っていないことを明かした。世界樹の中は幻影の力が強化されており、容易には侵入できない状況であった。
そんな中、シトリーが提案したのは、幻影を倒すのではなく、宝物殿を弱らせるというアイデアであった。彼女は、自身の研究がこの状況に役立つかもしれないと興奮しながら囁いた。
神樹廻道最奥部で、ウーノ・シルバ率いる一行は、戦いに敗れ、空間を裂いて撤退した。アドラーとクイントは大きく消耗し、ユデンも首から下を失った状態で戦いを終えた。アドラーたちは強化された幻影と古代の騎士に苦戦し、強力な魔物たちが次々と倒され、結果的に壊滅的な損害を受けた。
アドラーは、もう少しで《千変万化》を打ち崩すことができたと悔しがっていたが、幻影の圧倒的な力により敗北したことを受け入れるしかなかった。クイントもまた、片腕であったゾークを失ったショックを抱えていた。ウーノの『リッパー』の能力も限界に近づき、あと一度か二度しか使えない状態となっていた。
アドラーは今回の戦いから新たな力の可能性を学び、なんと《千変万化》に幻影の従え方を教えてもらうことを提案した。この意外な提案に、クイントは納得しつつもウーノは反対したが、アドラーの決意は揺らぐことはなかった。
Interlude 源神殿
セレン・ユグドラ・フレステルは、ほとんどユグドラの外に出たことがなかった。ユグドラは世界樹を守るために閉鎖的であり、外部の者が立ち入ることはなかったため、セレンにとってハンターやニンゲンは知識上の存在でしかなかった。
セレンがクライ・アンドリヒから宝物殿攻略の提案を受けた際、彼女は期待していなかったが、守護精霊ミレスの意志によってその提案を受け入れた。結果として、その期待は現実のものとなり、クライはユグドラの戦士たちが倒せなかった幻影を打ち破った。
セレンはクライの実力を目の当たりにし、彼ならばユグドラの悲願である神の卵に届くかもしれないと考え始めた。ユグドラの皇族として外部の者に重責を託すことは本来許されない行為であったが、彼女は既に覚悟を決めていた。
最後の仲間たちが挑んだ宝物殿で消息を絶った今、残された戦士はセレン一人だけであった。彼女は《千変万化》の実力を確認し、その卓越した戦略に賭ける決意を固めた。
外伝 《千変万化》のお土産
セレン・ユグドラ・フレステルは、ユグドラの皇女として《千変万化》クライ・アンドリヒから贈り物を渡されることに驚いた。クライはレベル8ハンターであり、その智謀と力で数多くの敵を倒し、セレンも彼の実力を認めざるを得なかった。彼は自信満々で「暴猫の下僕」という猫を呼び寄せる宝具を取り出し、さらに金色の横笛「愛犬の絆」も見せた。この笛は犬を呼び寄せるが、襲われるという奇妙な効果を持っていた。セレンは困惑しながらも、彼の奇策が本当にユグドラの危機を救うのか理解できなかったが、その行動に何か意図があると信じるしかなかった。
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