どんな本?
『機動戦士ガンダム II』は、富野由悠季によるライトノベルで、角川スニーカー文庫から1987年10月23日に発売された。
本作は、アニメ『機動戦士ガンダム』の物語を再構築した小説版の第2巻であり、宇宙世紀を舞台に、人類の革新「ニュータイプ」をテーマに描かれている。
物語の概要
ジオン公国のコロニー落としから半年が経過し、連邦・ジオン両軍は消耗戦の様相を呈していた。
その中、連邦軍の新型モビルスーツ「RX-78 ガンダム」が完成する。若きパイロット、アムロ・レイはガンダムで敵機エルメスと交戦中、人類の進むべき道を見出す。
主要キャラクター
• アムロ・レイ:連邦軍の若きパイロットで、ガンダムの操縦者。戦闘を通じてニュータイプとして覚醒していく。
• セイラ・マス:ホワイトベースのクルーで、アムロの仲間。兄であるシャアとの関係に葛藤を抱える。
• シャア・アズナブル:ジオン軍のエースパイロットで、「赤い彗星」の異名を持つ。妹セイラとの再会や、ニュータイプであるララァ・スンとの関係が描かれる。
• ララァ・スン:ニュータイプ能力を持つ女性で、シャアに救われ彼の部下となる。アムロとの間に特別な絆が生まれる。
登場するモビルスーツ(MS)
1. RX-78-2 ガンダム(アムロ・レイ)
- 識別番号:RX-78-2
- 活躍:
- テキサス・コロニーでララァ・スンのエルメスと交戦。ニュータイプの共鳴を経験しながらも、最終的に撃破。
- コロニー崩壊後、ガンダムは損傷し、アムロはコア・ファイターで脱出。
- コレヒドール暗礁空域でエルメス(クスコ・アル機)と交戦し、最終的に撃破。
2. MS-06S ザクII 指揮官用(シャア・アズナブル機)
- 識別番号:MS-06S
- 活躍:
- テキサス・コロニーでガンダムと交戦するも撃破される。
- その後、リック・ドムに乗り換え、模擬戦を実施。
3. MAN-08 エルメス(ララァ・スン機)
- 識別番号:MAN-08
- 活躍:
- ビットを操り、ガンダムと交戦するが、最終的に撃破される。
4. MAN-08 エルメス(クスコ・アル機)
- 識別番号:MAN-08
- 活躍:
- コレヒドール暗礁空域にて、ガンダムと交戦。
- ビットを活用しアムロを追い詰めるが、最終的に撃破される。
5. MS-09R リック・ドム(シャア・アズナブル機)
- 識別番号:MS-09R
- 活躍:
- 模擬戦で運用。ビーム・バズーカを装備し、機動性を向上させている。
6. MS-09R リック・ドム(シャリア・ブル隊)
- 識別番号:MS-09R
- 活躍:
- シャリア・ブル率いる部隊の主力機として編成。
- 連邦軍との交戦で集団戦術を展開する。
関連機体
1. FF-X7 コア・ファイター(アムロ・レイ)
- 識別番号:FF-X7
- 活躍:
- テキサス・コロニー崩壊後、ガンダムから分離し、アムロの脱出カプセルとして使用。
- その後、カセッタⅢにて破壊される。
2. 強襲揚陸艦 ペガサス・J
- 識別番号:SCV-70(ペガサス級)
- 活躍:
- 連邦軍のモビルスーツ運用艦として、各戦闘でアムロたちを支援。
- コレヒドール暗礁空域での戦闘にも参加。
3. 機動巡洋艦 ザンジバル(ジオン公国軍)
- 識別番号:不明
- 活躍:
- テキサス・コロニー戦後、シャアの母艦として運用される。
4. 宇宙型巡洋艦 サフラン(地球連邦軍)
- 識別番号:不明
- 活躍:
- テキサス・コロニー崩壊後、救助活動を行う。
5. 宇宙型巡洋艦 シスコ(地球連邦軍)
- 識別番号:不明
- 活躍:
- テキサス・コロニー崩壊後、救助活動を行う。
6. 宇宙戦闘機 トマホーク(マクベリィ少佐部隊)
- 識別番号:不明
- 活躍:
- 第百二十七独立戦隊の戦闘支援機として登場。
- コレヒドール暗礁空域で出撃するが、敵の攻撃により損害を受ける。
物語の特徴
本作は、アニメ版とは異なる展開やキャラクターの関係性が描かれている。特に、アムロとセイラの関係や、ララァとの出会いの場面など、オリジナルの要素が加えられている。また、戦闘描写やキャラクターの心理描写が深く掘り下げられ、より人間味あふれる物語となっている。
出版情報
• 著者:富野 由悠季
• イラスト:美樹本 晴彦
• 出版社:KADOKAWA
• レーベル:角川スニーカー文庫
• 発売日:1987年10月23日
• ISBN:9784044101022
読んだ本のタイトル
機動戦士ガンダム Ⅱ
著者:富野由悠季 氏
イラスト:美樹本 晴彦 氏
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あらすじ・内容
小説版ならではの《ガンダム・サーガ》がここにある!
ジオン公国のコロニー落としから半年。連邦・ジオン共に消耗戦の様相を呈する中、連邦軍の新型MS「RX-78 ガンダム」が完成する。若き操縦者アムロ・レイはガンダムで敵機エルメスと交戦中、そこに人類の進むべき道を見たのだが……。
感想
ニュータイプの進化と人間ドラマ
物語は、アニメとは異なる独自の展開を見せつつ、ニュータイプという概念の核心に迫っていた。
戦争の中で進化する人類の可能性、それが政治や軍事にどのように利用されるのかが、より深く掘り下げられていた。
アムロは少年から大人へと成長しつつも、その感情の揺れ動きがリアルに描かれ、ニュータイプとしての自覚と個人の感情が交錯する場面が多かった。
特に、ララァを失った後の喪失感と怒りが、シャアへの複雑な感情として表れていたのが印象的であった。
富野節とニュータイプの感応
本作の台詞回しは、まさに“富野節”の真骨頂であり、難解ながらも独特のリズムがあった。
ニュータイプ同士の感応の場面では、言葉にならない思念が交錯し、それがポエムのような形で表現されているのが特徴的であった。
一見すると分かりにくいが、その雰囲気に慣れると逆にクセになる。
単なる戦争ものではなく、人の心の奥深くを描く要素が強く、読むほどにその奥行きを感じる作品となっていた。
女性たちとの関係性
アムロを取り巻く女性キャラクターの描写も、アニメとは異なる魅力を持っていた。
セイラとはより複雑な関係になり、彼女の兄であるシャアとの確執が深まる中で、アムロとの間に微妙な感情が生まれていく。
そして、クスコ・アルという新たな女性ニュータイプが登場し、彼女との関係もまた重要な意味を持つものとなった。
恋愛感情とも違う、ニュータイプ同士の感覚的な繋がりが、理解し合えそうでしきれないもどかしさを伴って描かれているのが印象的であった。
アムロの成長と迷い
本作では、アムロがもはや単なる少年兵ではなく、戦場を生き抜く一人の戦士として成長している様子が描かれていた。
しかし、その成長は彼にとって幸せなものではなく、戦争の中で否応なく進化を強いられた結果でもあった。
ニュータイプとしての能力に目覚めながらも、それをどう受け止めるべきか迷い続ける姿が生々しい。
戦闘の技術だけでなく、人間関係においても自らの立ち位置を見つけようともがく姿が、この巻の大きな魅力であった。
総括
アニメ版とは異なる展開を見せつつ、ニュータイプというテーマをより深く掘り下げた作品であった。
富野由悠季ならではの哲学的な要素が強まり、戦争を背景としながらも人間の進化と感情の絡み合いを描いているのが特徴であった。
アムロの成長、シャアの野望、そしてニュータイプの未来に対する示唆が、物語に厚みを与えていた。
次巻でどのように決着がつくのか、非常に楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
PART 9 脱出
テキサス・コロニーの崩壊と脱出
テキサス・コロニーは核爆発により崩壊を始め、周辺に待機していた地球連邦軍の宇宙型巡洋艦サフランとシスコは、強襲揚陸戦艦ペガサスとジオン公国の機動巡洋艦ザンジバルの乗組員の救出に奔走した。しかし、救出率は二割から三割にとどまった。コロニーの港区画が爆圧によって突出すると、連邦軍の艦艇は退避行動を開始した。
コロニー外周に設置されていた反射鏡は宇宙へと舞い上がり、それを包み込むように巨大な光芒が拡大した。この光は連邦・ジオン両軍に捕捉された。シャア・アズナブル中佐のザクは撃破され、ララァ・スン少尉のモビルアーマー「エルメス」とそのビットも壊滅した。アムロ・レイ少尉の搭乗するガンダムは損傷し、彼自身もコア・ファイターで脱出を図った。
宇宙を漂うコア・ファイター
アムロは脱出カプセルであるコア・ファイターの計器を確認しながら、かつての上官ラルフ中尉の教えを思い出していた。計器に頼らず、目と勘で状況を判断することがパイロットの生存術であるとされていた。彼はテキサス・コロニーからの脱出時にシスコかサフランらしき艦影を見たように思えたが、それ以上の記憶はあいまいであった。
アムロは、ララァとの邂逅を振り返りながら、彼女の存在が自身にとって何であったのかを問い続けた。ニュータイプとしてのつながりがあったとしても、彼女は絶対的な他人であり、理解し合う理由はなかったと疑問を抱いた。彼は疲れ果て、眠りにつこうとしていたが、その意識の奥底で別の思考が覚醒し始めていた。
ニュータイプの認識とシャアへの憤り
アムロは、ララァとの共鳴によって人類の未来を垣間見た可能性を感じた。しかし、それほどの力を持ちながら、ララァはシャアに荷担した。その事実が彼の怒りを呼び起こした。彼女との認識の共有は憎悪と危機意識によって遮られたものの、それでも強固なものであった。
彼はニュータイプの概念が個人の資質に帰結するものではなく、人類全体の進化を示唆するものであると直感した。にもかかわらず、ララァはシャアへの愛情のためにその可能性を狭めた。それはアムロにとって理解しがたいことであった。やがて彼は意識を失い、コア・ファイターは慣性のまま宇宙を漂い続けた。
地球連邦軍のグラナダ強襲
テキサス・コロニーが燃え落ちる頃、地球連邦軍のレビル将軍麾下の宇宙連合艦隊は、月の裏側にあるジオン公国の前線基地グラナダへの侵攻を開始していた。連邦軍は陽動作戦を展開しながら、主力艦隊をグラナダへと接近させた。レビルは旗艦ドラッグから攻撃開始の暗号を発信し、全艦隊が最大戦速に入った。
連邦軍はミノフスキー粒子によるレーダー攪乱と暗礁帯を利用して接近し、グラナダ基地のキシリア・ザビ少将は、増援の遅れに焦燥していた。彼女はドズル・ザビのソロモン基地に後方攪乱を命じようとしたが、実際にはア・バオア・クーの指令に阻まれていた。
連邦軍は電磁界ミサイルを用いてグラナダのビーム兵器を封じ、宇宙戦闘機やモビルスーツ部隊を投入した。第一波の攻防の末、グラナダは守勢に回った。キシリアはギレン・ザビの判断の遅れを理由に撤退を決意し、ズワメルへと乗り込んでグラナダを離脱した。こうして、連邦軍は月の裏側にジオン進攻の橋頭堡を確保した。
アムロの回想と意識の覚醒
アムロの意識は混濁していたが、彼は過去の記憶を遡り始めた。母との別れ、父の仕事への没頭、自身の幼少期の葛藤が鮮明に蘇った。彼は母の冷淡さに失望しながらも、父との生活を選んだ自分を振り返った。
その中で、ララァの声がかつての閃光のように響いていた。しかし、その声も徐々に遠ざかり、彼の意識は再び深い闇へと沈んでいった。コア・ファイターは、行く宛もなく宇宙を漂い続けていた。
PART 10 クスコ・アル
目覚めとクスコ・アルとの邂逅
アムロは忍び笑いを聞きながら意識を取り戻した。女性の声が響き、低い男性の声も交じっていた。目を開くと、そこは軍艦のような場所であり、見慣れた景色が広がっていた。
突然、視界に女性の顔が現れ、「判って?」と問いかけた。アムロは反射的に「はい」と答えたが、すぐに警戒心を抱いた。しかし、彼女の屈託のない笑顔に思考がかき消された。クスコ・アルと名乗るその女性は、アムロが輸送船で発見されたと語った。
疲労により再び眠りに落ちたアムロは、クスコ・アルが医師を呼ぶ声を微かに聞いた。その後、自身が連邦軍の将校であると知れ渡ったが、彼は危険を察知しない自分の直感を信じることにした。
夢の中の母と過去の記憶
アムロは夢の中で、地球にいる母カマリア・レイの姿を見た。彼女は赤十字の腕章をつけたまま、見知らぬ男と共にいた。「母さん、それは父さんに対して申し訳ないだろう」と思ったが、さしたる嫌悪感はなかった。
幼少期に父と母が別れたことを思い出した。母は地球の生活にこだわり、宇宙には馴染めず、父と別居した。その結果、アムロは孤独な幼少期を過ごしたが、彼なりに両親の決断を受け入れていた。しかし、母の微笑の奥に潜む怒りを感じた瞬間、彼の胸には説明できない悲しみが広がった。
クスコ・アルへの疑念
目覚めたアムロは、クスコ・アルの笑顔に戸惑った。彼女の反応があまりにも素早く、自分のことを理解しすぎているように思えた。警戒しつつ、鈍重に振る舞うことが最善だと判断した。そして、彼女に夢の話を語った。「母が男と寝ていた」と率直に述べると、クスコ・アルは驚きながらも「ご苦労なさったのですね」とだけ言った。
アムロは彼女の言動を観察しつつ、船長に会うことを求めた。思考は明瞭であり、テキサス・コロニーでの戦いの記憶も順序立てて思い出せた。クスコ・アルは船長を呼びに行き、やがて船長のパミラ・アッシュールと事務長のイスファハーンが現れた。
船長との交渉とコア・ファイターの危機
アムロは自分の脱出カプセルの処分を求めたが、船長は拒否した。サイド6の中立条約に従い、カプセルは港で検査を受けることになっていた。パルダ・ベイへの入港まで時間がなかったが、カプセルがジオン側に分析される危険性を理解していた。
船長に案内され、アムロはハッチの窓からコア・ファイターを確認した。機体は損傷し、右翼がほぼ失われていた。さらに、コンテナの陰に数人のノーマルスーツ姿の作業員がいた。彼はジオン軍の関与を疑ったが、表情には出さず、微笑を浮かべて船長に礼を述べた。
クスコ・アルとの協力と脱出作戦
アムロはクスコ・アルにコア・ファイターの処分を手伝うよう依頼した。彼女は快く承諾し、船外へ出る口実として「記念写真を撮りたい」と管理員に申し出た。こうして二人はノーマルスーツを借り、船外に出ることに成功した。
カセッタⅢの甲板に到達すると、アムロは慎重に周囲を確認しながらコア・ファイターに近づいた。機体を調べると、自爆用の炸薬がすでに除去されていた。ジオンの工作員がすでに内部を調査したことは明白だった。
アムロは新たに火薬を仕掛け、信管をセットした。しかし、その瞬間、サーチライトが彼を照らし、警報が鳴り響いた。すぐに信管を引き抜き、ワイヤーが吹き飛ぶと同時にコア・ファイターが甲板を離れた。爆発の衝撃で機体は完全に破壊され、カセッタⅢの船員たちが右往左往する中、アムロはクスコ・アルの元へ戻った。
別れ際の言葉
クスコ・アルは微笑みながら「おめでとう、少尉」と祝福した。アムロは「これで僕の面目が立ちます」と応じたが、彼女の手が肩に触れると、その背後にある意図を探ろうとした。
「なぜ手伝ってくれたのです?」と問うと、クスコ・アルは含み笑いを浮かべながら答えた。「君が可愛いからよ」。その言葉はアムロの予想と全く異なっていた。困惑しながらも、彼女がララァとは違う存在であることを実感した。
ムッとしたアムロは彼女の手を払い、立ち上がった。その時、カセッタⅢの船員たちが駆け寄ってくるのが見えた。
シャアのア・バオア・クー到着
シャアは新しい赤い軍服をまとい、ア・バオア・クーの司令部へ向かった。道中、すれ違った士官から「若僧が」と侮蔑の言葉を浴びたが、それを記憶に留めた。司令室ではキシリア・ザビが巨大な水槽を見つめていた。シャアはデスクの前に進み、彼女の言葉を待った。
キシリアはシャアの生還に驚きを示しつつも、グラナダが短期間で陥落したことへの不満を口にした。シャアはコロニーの構造の頑丈さを称えつつ、グラナダ防衛への貢献ができなかったことを残念だと述べた。
ニュータイプ部隊の編成
キシリアは、ギレン総帥が戦後の構想ばかりを考え、現状の戦局を軽視していると指摘した。ニュータイプの部隊を編成し、ギレンに対抗する意志を示した。シャアはその考えに共鳴しつつも、ギレンがすでにニュータイプに着目し、別の策を進めている可能性を考えていた。
キシリアは、フラナガン機関が実戦向きのニュータイプを確保していると述べた。シャアはかつてのララァ・スンを思い出し、彼女との関係を指摘されると「若気の至り」と苦笑した。
クスコ・アルの動向
ガルシアは、クスコ・アル中尉が地球でニュータイプの適性検査を受けていたことを明かした。シャアは彼女の実力を確認しようとしたが、結果はまだ届いていなかった。彼女は現在サイド6のパルダ・ベイにいるとの報告を受け、シャアはその動向を注視することにした。
PART 11 前夜
グラナダへの到着
地球の裏側に位置する月の基地グラナダは、かつてジオン公国の前進基地であったが、現在は地球連邦軍の管理下に置かれ、「F・S」と改称されていた。しかし、戦力は最低限に留められ、主要な防衛ラインは基地の裏側「F・B」に集約されていた。
アムロはサイド6のパルダ・ベイを出発後、巡洋艦「トリチゲン」に移乗し、F・Bへ向かった。彼のために輸送船と巡洋艦が接舷したことから、軍が彼を特別視していることは明白であった。個室を与えられたが、その待遇は監視にも等しく、アムロはレビル将軍の特命がある以上、疑惑が不問に付されると考えた。
トリチゲンでの不安
トリチゲンでは、歴戦の下士官たちの視線がアムロに向けられていた。特に監視役の曹長は「少尉殿は大切に扱えと命令されておりますから!」と叫びながらも、その目には敵意が滲んでいた。
ブリッジの士官たちもアムロを距離を置いて扱っていたが、彼自身はそれを気にしなかった。トリチゲンが自身の所属艦になるわけではなく、愛想を振りまく必要もなかったからである。
入港作業が進む中、アムロの意識はクスコ・アルへと向かっていた。昨夜、彼女とゆっくり話す時間を取らなかったことを悔やみ、なぜ腹を立てたのかを自問した。しかし、「会わない方がいい」という思いに至り、ララァとの出会いを思い返していた。
再会する仲間たち
トリチゲンが桟橋に近づくと、アムロは旧友たちの姿を目にした。ブライト中尉、ミライ少尉、カイ・シデン、ハヤト、マーカー曹長、オスカ、ドワイ少尉、そして砲術士官スレッガー・ロウ。さらに、彼の視線は金髪のセイラ伍長を捉えた。
歓喜に満ちたアムロは、仲間たちの無事を喜びつつ、リュウ・ホセイの不在に思いを馳せた。リュウがいれば、完璧な再会となったはずであった。
艦長との別れ際、アムロは「第百二十七独立戦隊」への配属を告げられた。その部隊はレビル将軍の特命によって設立された精鋭部隊であり、アムロもその一員とされたのである。
新たな部隊の任務
仲間たちと共に基地へ向かう道中、ブライト中尉は現在の戦況を説明した。連邦軍は陽動作戦を成功させ、ジオン軍の艦隊を誘い出したものの、ジオン内部ではザビ家の三兄妹が覇権争いを繰り広げているとの情報があった。
ミライ少尉は戦時中とは思えぬほど穏やかで、隊の雰囲気も以前より家族的なものになっていた。アムロは、セイラ伍長が以前とは違い、テキサスで仲間を導いたことで信頼を得たことを知った。
レビル将軍との会談
作戦本部に到着すると、アムロとブライト中尉はレビル将軍との会談に臨んだ。将軍はジオンが新たな兵器を開発している可能性を示唆し、その一環としてニュータイプ部隊の編成が進んでいることを伝えた。
将軍は、アムロを中心としたニュータイプ部隊の設立を決定し、それが第百二十七独立戦隊の役割であると説明した。さらに、アムロのニュータイプとしての能力を信じ、彼に先鋒として戦ってほしいと要請した。
アムロはその責務の重さに驚きつつも、将軍からの期待に応えることを誓い、辞令を受け取った。
シャアの模擬戦
ア・バオア・クーでは、シャア・アズナブルが新型モビルスーツ「リック・ドム」に搭乗し、模擬戦を行っていた。リック・ドムはザクよりも機動力が向上し、ムサイ級の主砲に匹敵するビーム・バズーカを装備していた。シャアは「これならば、あの白い奴を倒せるかもしれない」と密かに期待を抱いた。
しかし、僚機たちの反応速度は彼にとって鈍重であり、チームとしての動きに不満を感じていた。その時、予定外の機体「エルメス」が戦場に現れた。
クスコ・アルの力
エルメスのパイロットは、シャアの部隊を圧倒した。ニュータイプ専用機であるエルメスは、圧倒的な機動力を誇り、シャアのリック・ドムすら左脚を破壊された。
シャアは、このパイロットが女であることを直感し、嫌悪感を抱いた。ララァとは違う、どこか荒々しい感覚が彼を襲った。その正体はクスコ・アルであった。
シャアは模擬戦の終了後、彼女を敵視しながらも、ニュータイプとしての実力を認めざるを得なかった。彼は「また女か!」と呟きつつ、エルメスの機体がア・バオア・クーへと消えていくのを見送った。
すると、シャアの意識にクスコ・アルの声が響いた。
「私の名前はクスコ・アル! 女ではなくってよ」
それは言葉ではなく、ニュータイプ同士の感応であった。
新たな感情の芽生え
アムロはペガサス・Jに帰還し、ブリッジで仲間たちと再会した。ミライ少尉、ハヤト少尉、ブライト中尉、新たなパイロットたちが迎えたが、アムロの目を引いたのはセイラ伍長であった。
彼女の背筋は伸び、かつての「ドジ・セイラ」とは違う、確固たる自信に満ちた姿であった。
アムロはその姿を見た瞬間、胸の内に新たな感情が湧き上がるのを感じた。ララァとの交感で満たされなかった何かが、今ここにあると気づいたのだ。
「ご苦労さま。少尉」
セイラ伍長の透き通る声が、アムロの心を震わせた。
〝今夜、誘おう〟
それは、アムロの率直な欲望であった。
PART 12 人たち
ギレン総帥の決断とザビ家の確執
ジオンの最高作戦会議において、ドズル中将はギレン総帥の決定に異を唱え、本国へ呼び戻されることへの不満を露わにした。デギン公王の前でも臆することなく発言したが、ギレンはそれに対して一切反応を示さなかった。
会議の場では、ギレンが中心に座し、その左右にドズルとキシリアが並んでいた。彼らを囲むように閣僚たちが配置されており、デギン公王の席はあくまで象徴的なものであった。公王の権限はすでに名目上のものであり、実権は完全にギレンが掌握していた。
一方、ダルシア・バハロ首相は、密かにデギンを担ぎ上げてギレンを失脚させようと画策していた。しかし、ギレンはそれを許容し、彼の動きを制限しつつも、反発を抑えるために一定の自由を与えていた。
作戦「システム」の概要
キシリア少将の促しを受け、ダルシア首相はギレンが提案した作戦「システム」の概要を説明した。この計画は、旧型コロニーを利用し、内部に蓄積した太陽エネルギーを一方向へ放出することで、直径六キロにも及ぶレーザーを発射する兵器を開発するというものであった。
この兵器が完成すれば、戦闘大隊どころか連邦軍の総兵力の半分を一瞬で壊滅させることも可能となる。戦力の消耗が激しいジオンにとって、短期間で戦局を覆す切り札となり得る作戦であった。
ダルシア首相は、国民の損失を最小限に抑え、戦争を早期に終結させるためとして、この計画の採用を閣議で決定したと述べた。しかし、この決定は既に既成事実であり、旧コロニーに住む三百万人の住民の疎開も完了していた。
デギン公王の承認
ダルシア首相は作戦の議案をデギン公王の前に提出した。公王は一瞬の沈黙の後、「あやつは、儂の汚点だ。好きにやってよい」と呟き、書類に署名を行った。
ダルシアはその言葉の真意を測りかねつつも、公王がギレンを見限りつつあるのではないかと推測した。さらに、公王は「キシリアだな」と意味深な言葉を発した。これは、ギレンを潰すためにキシリアを利用せよという意図であったが、ダルシアにとってはキシリアもまた強敵であった。
その後、ダルシアはギレンの元へ議案を持参し、公王の承認を伝えた。ギレンは満足げな表情を見せ、システムの導入によりジオンの戦力が大幅に強化されることを強調した。そして、「今こそ地球連邦軍を撃滅し、ジオン公国の名を高からしめる時である」と将兵に演説を行った。
その間、デギン公王は静かに席を立った。
ペガサス・J隊の帰投
ペガサス・J隊の五機のモビルスーツによる戦闘フォーメーション訓練が終了し、F・Bへ帰投したのは標準時間の七時を過ぎた頃であった。アムロにとって初めてのドッキング・ベイは、作戦準備の喧騒に包まれていた。
アムロはブライト中尉に作戦開始の予定を尋ねたが、詳細はまだ知らされていなかった。ただし、二十八時間以内に整備を完了させる必要があり、それが完了すれば即座に出撃の可能性があるとのことであった。
セイラ伍長との再会
アムロはセイラ伍長の案内で宿舎へ向かった。セイラは以前と比べて落ち着いた雰囲気を持ち、アムロは彼女の変化を感じた。しかし、間近で見ると彼女の中に索莫とした空気が漂っていることに気づいた。
彼はなぜかその寂しさの理由を知りたくなったが、答えを見つけられずにいた。
マチルダ中尉との邂逅
整備中のペガサス・Jを見ていたアムロは、そこでマチルダ・アジャン中尉と再会した。彼女は補給部隊の指揮を執っており、ペガサス・Jの装甲の不均一性を指摘するウッディ大尉と共に作業を行っていた。
アムロはウッディ大尉を見た瞬間、マチルダ中尉が彼を慕っていることを直感した。その快活な物腰、堂々とした振る舞いは、アムロには到底及ばぬ大人の男の風格を持っていた。
アムロは動揺を隠せず、その場を立ち去った。彼の胸には、叶わぬ憧れが現実となってしまったことへの苦い感情が広がっていた。
セイラ伍長との食事
アムロはセイラ伍長を食事に誘った。彼女は最初戸惑ったが、最終的に承諾した。約束の時間に現れたセイラ伍長は、薄くルージュを引き、以前とは違う雰囲気をまとっていた。
アムロは彼女の目を見た瞬間、ララァと同じ何かを感じた。彼女こそニュータイプなのではないかと直感し、驚きを隠せなかった。
ニュータイプとしての目覚め
食事の席で、セイラは自らの不思議な体験を語った。テキサスでペガサスが危険になると感じ、クルーの退路を確保するために行動したという。彼女はクルーの位置を把握していたわけではないが、クルーは彼女の存在を感じ取っていた。
アムロはそれがニュータイプの力であると指摘したが、セイラ自身は確信を持てずにいた。そして、彼女は突然「片想いなの」と呟いた。
その相手がシャア・アズナブルであることをアムロは直感し、問い詰めると、セイラは自らの本名がアルテイシア・ダイクンであり、シャアが兄であることを明かした。
アムロはその事実に衝撃を受けた。彼自身がどうしてこの事実を察知できたのか、説明がつかなかった。彼はセイラの内に流れる特別な意志を感じ取っていた。
揺れる感情
食堂ではカイ・シデンがアムロをからかい、セイラ伍長にも声をかけた。しかし、彼女は「今夜はアムロ少尉とご一緒で」と堂々と返した。
アムロは彼女の言葉に驚き、周囲の兵士たちは歓声を上げた。彼は彼女の言葉の真意を測りかねつつも、その瞬間、セイラ伍長が持つ特別な何かに気づき始めていた。
アムロの心には、かつて感じたことのない新たな感情が芽生えようとしていた。
シャア、シャリア・ブル、クスコ・アルの会話
シャアは、シャリア・ブル大尉の慎重な言葉に耳を傾けた。シャリア・ブルは木星船団出身の将校であり、冷静で忍耐強い性格を持っていた。彼は、ジオン・ダイクンの理念を信じつつも、現実の戦争と権力の構造を理解し、理想と現実の狭間に立つ人物であった。
そこにクスコ・アル中尉が加わった。彼女は自由奔放な性格を持ち、軍服を華やかに着こなしていたが、シャアは彼女の振る舞いを快く思っていなかった。クスコ・アルは、ギレン総帥の不幸は「器量と野望が一致しないこと」にあると述べ、シャアとシャリア・ブルの会話に積極的に介入した。
シャアはクスコ・アルに対し、軽率な発言が危険を招くことを警告したが、彼女は反発した。シャリア・ブルもまた、シャアの立場を理解しつつ、慎重に言葉を選びながら、ギレンの意図について推測を交えた議論を展開した。
ニュータイプの存在と戦争の意味
シャリア・ブルは、ギレン総帥の特命を受けてア・バオア・クーに着任したが、彼自身はニュータイプの存在を信じていなかった。それでも、自らの目で確かめるためにここへ来たのだと語った。彼は、ジオン・ダイクンの唱えた「人類の革新」という理念に魅力を感じつつも、それが戦争によって歪められている現実を嘆いた。
ニュータイプとは、本来、人類が宇宙へ進出することで生まれる自然な進化であり、より強い共感と理解を可能にする存在であるはずだった。しかし、戦争の中ではそれが「未来を予測し、戦いに適応する能力」として利用されていた。シャアは、この理想と現実の乖離に共感しながらも、彼自身の立場から容易に肯定することはなかった。
クスコ・アルの介入と対立
クスコ・アルは、シャアとシャリア・ブルの慎重な会話に苛立ちを見せた。彼女は、男たちが権力を求める心理に興味を持ちながらも、その執着を冷ややかに見ていた。シャアは彼女をここから追い出そうとはしなかったが、それは彼女がニュータイプとして有望な存在であるためだった。
シャリア・ブルは皮肉を交えながらも、クスコ・アルの発言を受け流し、彼女の性格が組織内で問題を起こす可能性を指摘した。シャアもまた、彼女の奔放な行動が危険を招くことを警戒し、余計な関与を避けるよう促した。
クスコ・アルはシャアの言葉に反発しながらも、「では、私たちを好いてくれて、席を外すぐらいの配慮をしてくれたまえ」と言われると、一瞬だけ考え込んだ。しかし、彼女は最後まで自分の立場を貫き、シャアとシャリア・ブルの会話に居座った。
最終的に、シャアとシャリア・ブルはリスニング・ルームを出て、バーへ向かった。二人の背後には、月の光が差し込み、地球はすでに見えなくなっていた。
アムロとセイラの夜
アムロは、自分の個室でセイラ伍長と共にいた。彼女の肌の温もりを感じながら、宇宙での戦いとは異なる安らぎを覚えていた。しかし、その穏やかな時間の中で、セイラが忍び泣く声が聞こえた。
アムロは彼女の背中に手を伸ばそうとしたが、セイラは突然ベッドを離れ、シャワールームへ駆け込んだ。裸のまま闇の中を駆ける姿は、まるで逃げるようであった。
セイラの告白
しばらくして、シャワーを浴びたセイラがタオルを巻いて戻ってきた。彼女は真っ直ぐにアムロを見つめ、「シャアを殺してくれて?」と静かに言った。
アムロは言葉を失った。セイラの兄であるシャアを、自分の手で討てというのか。
「怨念で人は殺せません」
彼はそう答えた。セイラは「関係ない」と低く呟いたが、アムロは彼女の言葉に違和感を抱いた。
兄妹の確執
セイラは、自らがジオンの名門ダイクン家の娘であり、本名がアルテイシアであることを語った。彼女は、兄と再会したことで自らの出自を改めて認識し、その結果、シャアに対する複雑な感情を抱えていた。
しかし、アムロは彼女の言葉に納得できなかった。
「僕と寝たのは、そのためですか?」
問い詰めると、セイラは否定した。彼女は、戦場ではアムロと話せる機会が限られているため、すべてを一度に話そうとしてしまったのだと説明した。しかし、アムロは彼女の行動を理解できず、ただ冷静に「戦場でまたシャアに会えるとも思えません」と答えた。
セイラは、「兄妹を持たないから、あなたには分からない」と返した。アムロは、その言葉に反発しながらも、彼女の感情の深さを測りかねていた。
夜の静寂
アムロはシャワーを浴びた後、部屋へ戻ると、セイラがベッドの中でじっと天井を見つめていた。彼は「寝ましょう」とだけ言い、その隣に横になった。
すると、セイラの手がかすかにアムロの腰に触れた。彼女の心の奥底にある孤独と、求める何かを感じながら、アムロはその夜を静かに過ごした。
PART 13 接触
地球連邦軍の戦略判断
地球連邦軍は、ジオン軍の動向を察知し、これまでの艦艇の流れと異なる動きに警戒を強めた。ア・バオア・クーやグラナダに向かう艦艇とは別に、ドズル中将の突撃機動軍がソロモンへ向かっていたのである。レビル将軍は、敵の意図を見極めるため、部隊の動きを慎重に分析した。彼は、ドズルとキシリアがそれぞれの勢力を維持するため、戦力を分散させていると推測し、その戦略の隙を突くことを考えた。
また、ニュータイプ部隊の存在についても議論されたが、レビルはそれを単なるプロパガンダと考えた。彼にとって、重要なのはジオンの中核戦力の位置であり、特にマハルの疎開の進捗に関心を持っていた。情報が不足する中で、レビルは決断を下す必要に迫られていた。
アムロとセイラの対話
アムロはセイラと共に朝を迎えた。セイラは、自らがアムロをニュータイプと認めることが「夢の実現」だったのかもしれないと語った。しかし、彼女は昨夜の言葉を後悔し、アムロに嫌われても仕方がないと自嘲した。
アムロは、兄妹を持たない自分にはセイラの気持ちが分からないとしつつも、昨夜の会話は他人には話さない方がいいと忠告した。セイラは寂しげにそれを認めたが、彼女の心は依然として揺れていた。
アムロは、セイラの本当の願いがシャアの気持ちを自分に向けさせたいというものに過ぎないのではないかと考えた。彼女が求めるのは、ニュータイプではなく、単純に彼女を包み込める存在なのかもしれない。しかし、アムロ自身にはまだその自信がなかった。彼は自分が未熟な少年に過ぎないことを自覚しながら、セイラを強く抱きしめた。
敵の襲来とアムロの出撃
突如として敵襲が警報として発せられた。アムロたちは即座にノーマルスーツを着用し、ガンダムへの搭乗準備を進めた。ペガサスは急速に上昇し、港のハッチが開く中でアムロは発進スタンバイを完了した。
セイラ伍長が管制を担当し、アムロの出撃を支援した。しかし、発進のタイミングが規則よりも早すぎることに彼女は戸惑った。それでもアムロは「敵が来る」とだけ言い放ち、ガンダムを発進させた。彼の判断は的確だった。ペガサスが港外へ出る前に、すでに戦闘は始まりつつあった。
アムロは、ガンダムの機体を操作しながら、前方にザクを確認した。しかし、その動きが通常のザクとは異なり、異様な速さを誇っていた。彼は瞬時にそれが囮であると見抜き、慎重に対応した。その間に、敵の攻撃が連邦軍の艦艇を次々と沈めていった。
新型モビルスーツとの戦闘
アムロは敵部隊の中に未知のモビルスーツを発見した。その機体は、スカート状の推進装置を備え、ザクよりも遥かに高い機動力を誇っていた。彼はビーム・ライフルを撃ち込み、1機を撃墜することに成功したが、別の機体は驚異的な速度で回避した。その動きにアムロは危機感を覚え、「誰だ!?」と叫びながら、ニュータイプの脅威を感じ取った。
さらに、戦場にはニュータイプ専用のモビルアーマー「エルメス」が出現した。アムロはララァとの戦闘を思い出しながら、その脅威を警戒した。エルメスから放たれるビーム攻撃を避けつつ、正確に反撃を加えたが、撃破には至らなかった。
そして、ついにアムロの前にシャアが現れた。彼の搭乗する機体は、これまでの赤いザクではなく、新型のスカートつきモビルスーツであった。二機は互いに牽制しながら激しく交錯し、一進一退の攻防を繰り広げた。
戦闘の終結と撤退
シャアはアムロとの交戦を続けながらも、最終的に撤退を決断した。彼の狙いは敵戦力の分析と、新型モビルスーツの実戦データの収集にあった。アムロはシャアの動きを追いながらも、彼の存在が持つ圧力に改めて驚かされた。
戦闘が終息し、アムロたちはペガサスへ帰投した。戦闘の功績が評価され、乗組員全員が一階級昇進を果たした。これは、レビル将軍がニュータイプ部隊を正式に編成するための決定であり、ジャブローの上層部もそれを認めざるを得なかった。
ガンルームでの会話
昇進を祝うため、ペガサスのクルーはガンルームに集まった。スレッガー中尉は、今回の戦闘でのニュータイプの影響について疑問を抱きつつも、それを軽く流すような態度を見せた。
セイラとミライは、戦闘中に「敵の気配」を視覚的に感じたことを語った。アムロもまた、ニュータイプ同士の共鳴が戦場で起こったことを確信していた。しかし、彼はララァとの戦いが今回のものとは異なるものであることを、誰にも話さなかった。
カイとハヤトは、次なる戦闘に対する不安を抱えながらも、冗談を交えつつ話し合った。彼らにとって、ニュータイプとの戦いは未知の領域であり、恐怖を抱かずにはいられなかった。
ブライトとミライの静かな時間
戦闘後、ブライトとミライはガンルームで静かに過ごしていた。彼らはお互いに言葉を交わすことなく、ただ共にいるだけで安心感を得ていた。
ミライは「作戦が終わったらガンルームに絵を飾りましょう」と提案し、ブライトもそれに賛同した。彼らは、この戦いが終わった後のことを少しだけ考えていた。
アムロとセイラの抱擁
アムロとセイラもまた、ガンルームを後にした。言葉を交わすことは少なかったが、お互いの存在を受け入れていた。ニュータイプだからではなく、ただ相手を認めることで、静かな安らぎを得ていた。
戦場での激闘を経て、二人は再び寄り添った。しかし、それは確かな未来を約束するものではなく、ただ今この瞬間だけのものだった。
PART 14 予感
キシリアの野心とシャアの危機感
キシリアは、ニュータイプ部隊の活躍を喜びつつ、その力を自らの支配下に置こうとしていた。彼女はギレンとの対立を深めつつあり、ニュータイプの戦力を宇宙攻撃の中核に据えることを画策していた。シャアはそれを危険視しながらも、ニュータイプ隊の実戦テストを重視していた。特に、シャリア・ブル大尉の能力には驚嘆しており、彼がギレンの差し金であるならば、むしろ感謝すべきだと考えていた。シャリアは冷静で洞察力に優れ、シャアの野望を理解しつつ支援してくれる可能性があった。
ニュータイプ部隊の課題とキシリアの戦略
クスコ・アル中尉のエルメスは、戦果を上げたものの、ニュータイプ部隊はまだ未熟であり、増強が急務とされていた。しかし、シャアは練度の低い兵士を無理に増やすことに反対し、チームワークを重視する方針を貫いた。キシリアはそれを認めながらも、ニュータイプ戦力の拡充を急いでいた。彼女の最終目標は、ア・バオア・クーを囮にして地球連邦軍を誘導し、ドズル隊が叩いた後に、ソーラ・レイで殲滅するという作戦「リヴォルⅠ」であった。
一方で、ニュータイプ部隊の現実的な戦力は限られていた。シャリア・ブルをエルメスに乗せたかったが、クスコ・アル用に調整されたサイコミュの関係で実現せず、戦力強化には時間がかかる状況であった。
リック・ドム隊の結束とニュータイプの意識
シャリア・ブルを含む六機のリック・ドム隊は、機体の性能向上を実感し、シャアの指揮に強い信頼を寄せていた。彼らは一撃離脱戦法に適応し、互いにニュータイプ的な直感で連携を取り合うことで、戦場での生存率を高めていた。シャリアは、この部隊の意識の共有が、第二、第三の眼を持つような感覚を生んでいることに気付いた。敵発見時の驚きが即座に共有されるため、迅速な対応が可能となっていた。
シャアはクスコ・アルの精神状態を案じ、彼女の指導をクランブル中尉に任せた。クスコ・アルは初めての戦場で、長距離狙撃による被弾を経験し、恐怖と敗北感に打ちひしがれていた。しかし、ニュータイプ同士の戦闘を知らなかった彼女にとって、戦場の現実は想定以上に過酷であった。彼女は敵の感情を感じ取ることができたが、その油断が狙撃を許す結果となった。
クスコ・アルの覚悟
シャアとシャリア・ブルはクスコ・アルの回復を見守った。彼女は己の未熟さを認め、「私は利口な女ではないのですね」と自嘲した。シャアはそれを否定し、チームの存在こそが人間の弱さを補うものだと説いた。シャリア・ブルもまた、人間関係の中で真の連携が生まれることを指摘した。
クスコ・アルは、次の戦闘に向けて精神を整える決意を固めた。シャアは彼女の内面的な成長を感じ取り、穏やかに微笑んだ。彼女は髪を解き、無重力の中で漂わせながら、静かに眠りにつこうとしていた。
地球連邦軍の動向とペガサス・Jの任務
地球連邦軍の艦隊は、F・BからF・Sの橋頭堡へと展開し、補給と増援を受けながら次なる戦闘に備えていた。ルナツーからの増援は限られており、連邦軍にはもはや余力がなかった。しかし、最終目標は明確にされていなかった。
ペガサス・Jに帰艦したブライト・ノア大尉は、パイロットたちを招集し、十八時間後の出撃を命じた。彼らの任務は、エリア365方面への移動と、戦闘機隊との合同作戦であった。しかし、詳細な作戦目標は知らされず、乗組員たちは困惑した。
ハヤトはペガサス・Jが空母ではなく揚陸艦であることを指摘し、艦隊の扱いに不満を抱いた。ブライトも詳細を知らされていなかったが、上層部の意向を受け入れるしかなかった。アムロは、艦隊の規模からジオン本国への侵攻を予測したが、セイラはその戦略に疑問を呈した。作戦のコードネーム「チェンバロ」に、ブライトは過去の戦争の暗号名になぞらえた可能性を示唆した。
ニュータイプの未来への不安
ミライ中尉は、アムロの戦闘報告がニュータイプの霊感的な能力を強調しすぎていることを懸念した。彼女は、戦争が終わった後にニュータイプが社会でどのように扱われるのかを不安視した。ジオン・ダイクンがニュータイプの概念を提唱したことで迫害されたように、アムロたちも特殊な存在として差別されるのではないかと考えていた。
ブライトは、アムロがマスコミに利用され、超能力者として扱われる未来を予測した。アムロはそれを否定したが、内心では可能性を感じていた。ミライは、ニュータイプという存在が誤解された形で広まることを恐れていたが、アムロは「その時には、僕たちはもっと賢くなっている」と楽観的に答えた。
ミライはセイラを誘い、夜に飲むことを提案した。アムロも参加を希望したが、ブライトに制され、会話は和やかに終わった。彼らの気軽なやり取りは、ニュータイプとしての特殊な立場を自覚しながらも、人間的な関係を維持しようとする努力の一環であった。
シャアとマルガレーテの夜
シャアはキシリアの秘書、マルガレーテ・リング・ブレアと過ごしていた。彼は彼女の名前が偽名ではないかと疑ったが、彼女の余裕ある態度に引き込まれていった。マルガレーテはシャアの警戒心を見抜きながらも、軽やかに笑い、彼を安心させた。
シャアは、ララァに対して抱いた救済の感情とは異なり、マルガレーテに純粋な愛情を感じた。彼は、彼女に子を産んでほしいという衝動を抱き、それが初めての感情であることに気付いた。ニュータイプという概念がなければ、人間はもっと単純に愛し合えたのではないか、と考えながら、彼は静かに眠りについた。
ペガサス・Jの戦力増強とマクベリィ少佐
ペガサス・Jの上甲板には、マクベリィ少佐の指揮する十二機の宇宙戦闘機トマホークが固定されていた。この戦隊の到着により、艦内の規律は引き締まり、従来のアットホームな雰囲気が中和された。マクベリィ少佐は生え抜きの戦闘機乗りであり、率直な性格と神経質な慎重さを併せ持つ人物であった。彼はペガサス・Jの規律の緩さを批判し、モビルスーツ隊よりも宇宙戦闘機の優位性を主張した。
スレッガー中尉らは少佐の態度に反発したが、マクベリィは意に介さず、自らの戦闘力に自信を持っていた。彼はペガサス・Jの作戦が極めて危険なものであることを明かし、第百二十七独立戦隊がエリア三百六十五へ向かうのは、捨て石としての役割を果たすためだと断言した。この空域はジオンの要塞ソロモンとア・バオア・クーを結ぶ要衝であり、戦場の最前線となる運命にあった。
作戦準備とニュータイプの脅威
ペガサス・Jはキプロス、グレーデンと共に第一戦速でエリア三百六十五へ向かった。航行中、モビルスーツ隊は戦闘フォーメーションの訓練を繰り返し、随伴艦のボール部隊もそれに加わった。パイロットたちは機体の操作に慣れるための慣熟飛行を行い、実戦に備えた。
その中で、アムロはカイとハヤトの成長を実感した。二人の支援は正確さを増し、信頼できる仲間へと変わりつつあった。彼らの援護がある限り、戦場で背中を晒す危険は少ないと感じた。
しかし、アムロの懸念は、ニュータイプ部隊の脅威にあった。F・Bを強襲したエルメスの存在は、連邦軍の中でも理解できた者が少なかった。アムロはその力をララァ以上のものと見なし、敵の戦力が未知数であることを危惧した。彼はカイやハヤトに期待することが正しいのか自問したが、彼らの成長が自らの生存への希望になっていることに気付き、後ろめたさを感じた。
アムロの覚悟とマクベリィとの対立
ペガサス・Jへの着艦時、アムロはマクベリィ少佐と顔を合わせた。少佐はモビルスーツを「玩具」と見なしており、彼らの戦闘能力に懐疑的であった。しかし、アムロは戦闘機とモビルスーツの世代交代が進む現実を理解し、少佐の考えを過去のものとみなしていた。
その後のブリーフィングでは、マクベリィ少佐と彼の部下が参加し、アムロが若いパイロットたちに戦術指導を行うこととなった。少佐の部下たちは歴戦の兵士であり、アムロに対して疑念を抱いていた。アムロはニュータイプの感覚を重視し、従来の戦闘スタイルを超えた認識の広がりが必要だと説いたが、少佐はそれを抽象的すぎると批判した。
それでもアムロは自らの理論を貫いた。ニュータイプの戦闘では、敵の気配を感じ取ることが可能であり、それが通常の戦闘感覚とは異なる要素であることを説明した。しかし、マクベリィ少佐はこの考えに納得せず、モビルスーツは所詮ロボットであり、ニュータイプ部隊といえども簡単にやられるものではないと主張した。
アムロとセイラの対話
ブリーフィングの後、アムロはセイラと二人きりになった。セイラはかつてアムロに「兄を殺してくれ」と頼んだことを後悔していた。それが二人の間に越えがたい溝を作ったことを理解していたが、今さら謝ることもできず、沈黙していた。
アムロは、戦場の気配からシャアとクスコ・アルが接近していることを感じ取っていた。彼は、戦争を止めることはできないが、最も強い戦士が集まり、戦争の元凶を討つことは可能だと考えていた。セイラはそれを夢物語だと否定したが、アムロはザビ家や連邦の政治だけが元凶ではなく、より深い要因があると指摘した。
さらに、アムロはシャアの真意を問いかけた。キャスバル・ダイクンは本当に戦争を望んでいるのかと尋ねると、セイラは即座に否定した。アムロは、もしシャアが戦争の終結を望んでいるのなら、協力する道もあると考えていた。
しかし、セイラは兄がキャスバルとして自分に向き合うことはないと悟っていた。彼女は兄を殺してほしいと願ったことを思い出し、改めて自らの過ちを痛感した。
ニュータイプの未来とアムロの決意
アムロは、ニュータイプの能力が過大な幻想であることを理解しつつ、それでも未来への可能性を信じていた。彼は、戦争を早く終わらせる手段を見つけ、その後に真の元凶を断つべきだと考えていた。
セイラは、その理想を兄と共有したかったと感じたが、今となってはそれも叶わないと悟った。アムロは彼女に対し、シャアの野望が単なる独善でないのなら、共に戦うべきだと提案した。しかし、セイラはそれを簡単に受け入れることはできなかった。
やがて、二人の会話は行き詰まり、アムロは部屋を出た。静寂が訪れた部屋の中で、セイラはモニターに映る発進デッキの光景を見つめながら、自らの無力さを噛みしめた。彼女はアムロやシャアの後を追いたい衝動に駆られていたが、それができるかどうかは、まだ分からなかった。
PART 15 アタック
クスコ・アルの動揺とアムロへの想い
クスコ・アルは、アムロ・レイの名を思いがけず耳にし、驚きを隠せなかった。シャリア・ブルは、彼こそがエルメスを沈めたパイロットであると告げた。クスコ・アルは、サイド6でアムロと会っていたことを思い出し、彼がそこまでの実力を持つとは考えていなかったことに困惑した。彼女にとって、アムロは気にかかる少年であった。カセッタⅢで彼を救出し、コア・ファイターの爆破作業に関わった時点で、彼の素性を完全に把握していたわけではないが、何か惹かれるものを感じていた。
アムロの繊細さや警戒心、さらには自らの役割を全うしようとする真剣な態度が、彼女の好みに合致していた。彼が連邦軍の兵士であっても、自分の家族を焼き尽くした存在ではないことを理由に、彼を特別視することに迷いはなかった。クスコ・アルは、サイコミュを通じてアムロに自分の存在を知らせることができるかどうかを考えた。しかし、その想いは戦場の現実に押し潰されてしまう運命にあった。
第百二十七独立戦隊の戦闘準備
ペガサス・Jはエリア三百六十五に到達し、孤立した状態にあった。この宙域はア・バオア・クーとソロモンの監視下にあり、連邦軍は散開して次の目標を絞らせないよう動いていた。レビル将軍は第百二十七戦隊を陽動部隊として利用し、キシリアのニュータイプ部隊を引きずり出す計画を立てていた。
レビルは、キシリアがテキサスでの戦闘を通じて連邦軍のニュータイプ部隊の存在を認識していると考え、第百二十七戦隊がニュータイプ部隊であると信じさせることを狙った。彼は主力艦隊を散開させ、敵に進攻ルートを特定させないようにしていたが、どの地点で決戦が行われるかはまだ不確定であった。
ペガサス・Jの交戦
ペガサス・Jのブリッジで敵影が確認され、マクベリィ少佐の指揮するトマホーク隊が発進した。彼らの前方には、ソロモン所属のムサイ宇宙巡洋艦三隻が展開し、ザクを六機搭載している可能性があった。続いてモビルスーツ隊も出撃し、戦闘が開始された。
ペガサス・Jのミサイルと主砲が発射され、敵艦隊へと向かった。ザク隊も出撃し、両軍のモビルスーツが交戦状態となった。アムロは迅速に敵を撃破し、ペガサス・Jの本隊への攻撃を阻止した。彼の卓越した操縦技術によって、敵の攻撃を寸前で回避しつつ反撃を行った。
マクベリィ隊は奮戦したが、トマホークの四機を失い、アムロたちモビルスーツ隊の支援を受ける形となった。最終的にムサイ二隻を撃沈し、残る一隻も半壊状態に追い込んだ。この戦闘は十三分で決着し、連邦軍が圧倒的な戦果を上げた。
ジオン軍の反応とキシリアの策謀
ソロモンのドズルは、第百二十七戦隊の戦果に驚愕した。彼は、短時間でムサイ三隻が撃破されたことに激怒し、ニュータイプ部隊の可能性を考慮するよう指示した。レビルの策略によって、キシリアは第百二十七戦隊をニュータイプ部隊と誤認し、それに対応するための部隊を動かさざるを得なくなった。
キシリアは、連邦軍がア・バオア・クーを目標にしている可能性を見抜きつつも、自身の戦力を温存し、敵を迎え撃つべきだと判断した。シャアは彼女に対し、迂闊に動くべきではないと進言し、ア・バオア・クーの前面で迎撃する作戦を提案した。キシリアはシャアの意見を聞き入れたが、連邦軍のニュータイプ部隊を叩くことには強い執着を見せていた。
シャアとクスコ・アルの決意
シャアは、マダガスカルに搭乗し、アムロの部隊との戦闘を準備した。彼は、ニュータイプが戦争の道具であってはならないと考えつつも、連邦軍のニュータイプ部隊を殲滅する必要があると判断していた。
一方、クスコ・アルは、アムロとの戦いが避けられない現実に直面していた。彼女はアムロを魅力的な少年と感じていたが、戦場ではその感情を捨て去る覚悟を決めた。彼女はシャアの指示に従い、エルメスに搭乗し、戦場へと向かった。
コレヒドール暗礁空域での戦闘が始まる中、クスコ・アルはアムロに対する複雑な想いを抱えながら、戦いに身を投じる決意を固めていた。
PART 16 エルメス
ルナツーの生活とフラウ・ボウの決意
地球連邦軍の宇宙基地ルナツーには戦災を受けた民間人が多く収容されていた。フラウ・ボウは、カツ、レツ、キッカという三人の戦災孤児を育てながら、車両整備工場で働いていた。苦労は多かったが、子供たちが懐いてくれることで支えられていた。彼女は将来のために整備士の免許を取得することを決意する。ある日、昼食を届けに来たキッカの姿を見て、髪を切ってやらなければと思う。ふと鏡を取り出すと、自分の顔に油がついていた。それを拭いながら、次の給料で口紅を買うことを決める。女性兵士に蔑まれるかもしれないが、アムロのためなら構わない。そう思った瞬間、涙がこぼれた。
アムロへの願いと決意
フラウ・ボウはアムロの無事を祈り、たとえどんな姿になろうとも生き残ってほしいと願った。もし彼が戦死すれば、彼との最後の会話がルナツーでのものになってしまう。それは耐えがたいことだった。彼女はアムロをつなぐために口紅を買うと決めた。その時、レツがフラウ・ボウの涙を指摘し、彼女は驚くが、子供たちと食事を共にすることで気を紛らわせた。
ブライトとパイロットたちの作戦会議
一方、ブライトはパイロットたちと作戦会議を開いていた。彼は艦隊の進行が予定より早いため、コレヒドール空域で時間を調整すると決めた。しかし、アムロとハヤトは待ち伏せの危険性を指摘し、会議の結論として、コレヒドールを抜けてからの時間調整が提案された。アムロの直感を信じるマクベリィ少佐は、彼の意見に賛同する。ブライトはシフトの決定権を譲らないことを条件に了承し、作戦が決定した。
シャアとクスコ・アルの迎撃準備
一方、ジオン側ではシャアとクスコ・アルが連邦軍の動きを察知していた。シャアの部隊はコレヒドールの隠れた位置から待ち伏せの準備を進め、クスコ・アルはエルメスのビットを起動する。彼女は男たちの権勢欲を嫌悪しながらも、戦場に身を投じることを選んだ。やがて、ガンダムが視界に入り、彼女はそのパイロットがアムロであると直感する。
アムロとクスコ・アルの死闘
戦闘が始まり、アムロはガンダムでエルメスの攻撃を回避しながらビットを破壊していく。クスコ・アルは激しく反応し、怒りと憎悪を募らせながらガンダムを撃破しようとする。しかし、アムロの戦闘技術とニュータイプの能力が彼女を圧倒し、エルメスは次第に追い詰められた。クスコ・アルは最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けるが、アムロのビーム・ライフルの一撃を受け、機体が爆発する直前に彼の思念と交錯する。
クスコ・アルの最期
戦闘の中で、アムロはクスコ・アルの過去の記憶を垣間見た。彼女は幼い頃に両親を連邦軍の兵士に殺され、その恨みを抱えて生きてきたのだった。彼女の最後の思念は、アムロに対する屈辱と微かな受容が入り混じっていた。そして、エルメスは爆発し、クスコ・アルは宇宙の塵となった。
戦場の余波とアムロの罪の意識
戦闘が終わり、アムロは自分がクスコ・アルを殺したことを理解し、その罪を背負う。彼の脳裏には、彼女の最期の思念がこだまし続けていた。しかし、戦争は止まらず、連邦軍とジオン軍の戦闘は続いていく。ペガサス・Jとキプロスは次の作戦に備え、全艦がア・バオア・クーへの突入を目前にしていた。
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その他フィクション
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