どんな本?
『機動戦士ガンダム III』は、富野由悠季による小説で、アニメ『機動戦士ガンダム』の物語を基にした三部作の最終巻である。本作は、宇宙世紀を舞台に、人類が地球連邦政府とジオン公国との間で繰り広げる戦争を描くSF作品である。
物語の概要
地球連邦軍の少年兵アムロ・レイは、試作モビルスーツ「ガンダム」のパイロットとして、仲間たちと共に戦いを続ける。最終決戦に向け、アムロはニュータイプとしての覚醒を深め、宿敵シャア・アズナブルとの対峙や、謎の女性ララァ・スンとの出会いを経て、戦争の行方と自身の運命に向き合う。
主要キャラクター
• アムロ・レイ:地球連邦軍のモビルスーツパイロットで、本作の主人公。ニュータイプとしての能力に目覚め、戦争の中で成長していく。
• シャア・アズナブル:ジオン公国軍のエースパイロットで、仮面をつけた謎の男。アムロの宿敵であり、複雑な過去を持つ。
• ララァ・スン:謎の女性で、強力なニュータイプ能力を持つ。アムロとシャア、双方に影響を与える存在。
登場したモビルスーツ
ガンダム(アムロ・レイ搭乗)
• 識別番号:RX-78-2
• 活躍:
• ア・バオア・クー戦において、敵モビルスーツやモビルアーマーと交戦し、多数の撃破を記録した。
• ビグ・ザムとの戦闘では、機体の高機動性とニュータイプの直感を活かして戦い、ドズル・ザビを撃破した。
• シャリア・ブルのブラウ・ブロとの交戦でニュータイプ能力を発揮し、激戦の末に勝利した。
• 最終決戦でシャア・アズナブルとの戦いに臨み、戦場での因縁に決着をつけた。
ガンキャノン(カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ搭乗)
• 識別番号:C-108, C-109
• 活躍:
• ア・バオア・クー戦において、ミサイル迎撃と砲撃支援を担当。
• ペガサス・Jの防衛に尽力し、アムロの戦闘をサポートした。
ジム(キリア・マハ搭乗)
• 識別番号:RGM-79
• 活躍:
• ア・バオア・クー戦で味方の援護を行い、ビグ・ザム戦で果敢に挑むも撃破された。
リック・ドム(ジオン軍)
• 識別番号:MS-09R
• 活躍:
• シャアの部隊や一般ジオン兵が搭乗し、連邦軍のモビルスーツ部隊と交戦。
• ア・バオア・クー戦で数多くの機体が撃破された。
ゲルググ(シャア・アズナブル搭乗)
• 識別番号:MS-14S
• 活躍:
• ア・バオア・クー戦でアムロのガンダムと激しく交戦。
• ビーム・ナギナタを駆使してガンダムと互角に渡り合ったが、最終的に撤退した。
ブラウ・ブロ(シャリア・ブル搭乗)
• 識別番号:MAN-08
• 活躍:
• サイコミュ兵器を搭載し、遠隔攻撃でアムロのガンダムを追い詰めた。
• 戦闘中にニュータイプ同士の思惟の交流が発生したが、アムロの攻撃によって撃破された。
ビグ・ザム(ドズル・ザビ搭乗)
• 識別番号:MA-08
• 活躍:
• 圧倒的な火力で連邦軍のモビルスーツ部隊を壊滅させた。
• 最終的にアムロのガンダムに追い詰められ、撃破された。
関連機体
ペガサス・J(ホワイトベース型強襲揚陸艦)
• 識別番号:不明
• 活躍:
• 地球連邦軍のモビルスーツ部隊を支援し、ア・バオア・クー戦で戦闘に参加。
• 連邦軍の主力艦として攻撃を指揮しつつ、アムロらの戦闘を支えた。
ソーラ・レイ(ジオン公国軍兵器)
• 識別番号:不明
• 活躍:
• ギレン・ザビの命令により発射され、地球連邦軍の主力艦隊を壊滅させた。
• 二度目の発射でア・バオア・クーにも影響を与え、戦況を大きく変えた。
ガトル戦闘爆撃機
• 識別番号:不明
• 活躍:
• ア・バオア・クー戦において、ジオン軍の航空戦力として出撃し、ミサイル攻撃を実施。
ズワメル(キシリア・ザビ搭乗機)
• 識別番号:不明
• 活躍:
• キシリアが戦場を離脱する際に使用した機体であり、最終的にシャアに撃墜された。
物語の特徴
本作は、戦争の悲惨さや人間ドラマを深く描写し、単なるロボットアクションに留まらない深みを持つ。特に、ニュータイプという人類の進化をテーマに、人間同士の理解や葛藤を描き、読者に哲学的な問いを投げかける点が特徴である。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA/角川書店
• 発売日:1987年10月25日
• ISBN-10:4044101035
• ISBN-13:978-4044101039
本書は、アニメ版とは異なる視点や詳細が描かれており、シリーズのファンやSF小説愛好家にとって興味深い作品となっている。
読んだ本のタイトル
機動戦士ガンダム Ⅲ
著者:富野由悠季 氏
イラスト: 美樹本晴彦 氏
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あらすじ・内容
遠大なる《ガンダム・サーガ》第一部、衝撃の結末!
地球連邦軍の新型MS「RX-78 ガンダム」によって戦局の均衡は崩れた。ジオン軍の防衛ラインに迫る連邦宇宙艦隊。だがジオンの“赤い彗星”シャア・アズナブルは新たな展望を見出していた。アムロはそれにどう応えるのか。小説版独自の展開はガンダムファン必読!
感想
戦場の終焉と人の業
物語の最終巻となる本作は、ア・バオア・クー戦を中心に、ギレン・ザビの野望とその結末、そしてアムロ・レイの最後が描かれる。
アニメ版とは大きく異なる展開が特徴であり、続く『Z』や『逆襲のシャア』とは繋がらない独自の結末が用意されている。
この違いが本作の最大の魅力であり、同時に大きな衝撃を与える要因でもあった。
ギレンの支配とザビ家の崩壊
ギレンはジオン公国の未来を見据え、地球連邦軍を殲滅するために「システム」を発動する。
彼の戦略は合理的であるが、それはジオン軍すら巻き込む危険な賭けであった。
一方、キシリアは彼の動きを警戒しつつ、独自の計画を進めていた。
ザビ家内部の対立は決定的となり、ついにはギレンがキシリアによって討たれるという劇的な結末を迎える。
これは、独裁と支配の行き着く先を示しており、人の業が生み出す因果の連鎖を痛感させる展開であった。
アムロの死とニュータイプの未来
本作で最も衝撃的なのは、主人公であるアムロ・レイの死であった。
アニメ版では生存し、その後の物語へと続いていくが、小説版では違う。
アムロはニュータイプとして覚醒しながらも、戦場の混乱の中で命を落とす。
ハヤトもまた同じ運命をたどり、戦後に彼らの存在は消えてしまう。
これにより、ガンダムシリーズの象徴的存在であったアムロの物語はここで完結することとなった。
彼の死は、戦争がもたらす虚しさを象徴するものであり、深い余韻を残した。
変わる視点と異なる結末
シャアは最後まで復讐の道を進み、キシリアとの駆け引きの末、彼女を討つ。
アニメ版とは異なり、彼がジオングに乗ることはなく、決着の場はモビルスーツ戦ではなく策略の応酬となる。
また、ランバ・ラルが生存し、クラウレ・ハモンとの関係もアニメとは異なる形で描かれていた。
さらに、ジオン軍の中で独自の動きを見せる者たちが現れ、戦場の混乱をより際立たせ。
このような違いが、本作の独自性を際立たせていた。
戦争の終わりと未来への余韻
ア・バオア・クーが崩壊し、ジオン公国も大きな損害を受ける。
最終的に戦争は終結するが、その後の物語は明確には描かれず、多くのことが読者の想像に委ねられる。
アニメ版のように『Z』や『逆襲のシャア』へと続く展開はなく、物語はここで幕を下ろす。
戦後の世界がどうなるのかは描かれないが、これこそが本作の魅力であり、戦争の持つ不確実性を強く感じさせた。
総括
『機動戦士ガンダムⅢ』は、アニメ版とは異なる独自の結末を迎える。
ギレンの支配とその崩壊、アムロの死、シャアの行動といった要素が重なり、戦争の悲惨さと虚しさを強調する内容となっている。再刊行にあたり、大きな改変がなされなかったことは喜ばしい。
本作が持つ時代の空気と、戦争を描く重厚なテーマは、今なお強い印象を与える。
物語はここで終わるが、その余韻は深く、読み終えた後も長く心に残る一冊である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
PART 17 怨念
作戦の議論とギレンの決断
ギレン・ザビ総帥は、地球連邦軍の兵力がア・バオア・クーに集結しているという前提で作戦を検討していた。チャップマン・ジロム大将に「システム」を発動する可能性について問いかけるが、チャップマンはその条件の厳しさを指摘した。ギレンは、ランドルフ、ドズル、キシリアを含めた作戦の成否を議論し、最終的にシステムの稼働を決定する。チャップマンはギレンの本音を聞いてしまったことで、自身の行動が監視されることを覚悟するのだった。
「システム」の実行計画とチャップマンの決意
ギレンは、ア・バオア・クーの戦況を分析し、ニュータイプの可能性を見据えつつ、「システム」の効果的な活用を検討した。チャップマンは、作戦を成功させれば自らの地位が揺るぎないものになると確信し、最終的にはギレンの決定に従う道を選ぶ。しかし、味方をも殲滅する可能性を含む作戦には慎重さが求められ、彼は最適なタイミングを求めた。ギレンはランドルフの部隊を活用し、作戦の成功率を高めようとした。
ギレンの宇宙観とジオンの支配思想
ギレンは宇宙の広がりを見つめながら、人類の未来について思索していた。彼は、ジオンのコロニー群を眺めつつ、ニュータイプの可能性とジオン公国の存続を考えていた。彼の支配哲学は、宇宙移民者こそが新たな人類の進化形であり、地球の支配権を持つべきであるというものだった。ニュータイプの概念が戦場で注目される中、キシリアは独自にニュータイプ部隊を編成していたが、ギレンは彼女の動きを警戒していた。
シャアの正体とギレンの驚き
ギレンは、ランバ・ラル大尉との会談でシャア・アズナブルの正体について知る。シャアがジオン・ダイクンの忘れ形見であり、キャスバル・レム・ダイクンであることが明かされた。ギレンは、シャアが自身の正体を隠してジオン軍に入り込み、ザビ家に復讐する意図を持っている可能性を察した。ガルマとの関係や、彼の軍歴を振り返る中で、ギレンはシャアが緻密に計画を進めていることを理解する。
ジオン・ダイクンの理念とギレンの立場
ギレンは、ジオン・ダイクンの掲げた「宇宙世紀における新たな人類の進化」という思想を回想した。ジオン・ダイクンは、宇宙に適応した人類が新しい時代を切り開くと考えていたが、その思想はザビ家の政治的な動きによって変容していた。ギレンは、自らの立場を正当化しつつ、ジオンの理念を実現するためには、ザビ家の支配が不可欠であると考えていた。ニュータイプの存在がジオンにとって有益か否かを見極めながら、戦局を左右する決断を下そうとしていた。
シャアの目的とギレンの対応
ギレンは、シャアがザビ家に近づいた目的を改めて分析した。シャアはガルマの信頼を得て軍での地位を確立し、キシリアのニュータイプ部隊にも関与していた。ギレンは、シャアが自分たちを内部から崩壊させるために動いているのではないかと警戒し、彼の行動を注視することを決意する。ランバ・ラルとの会話を通じて、ギレンはシャアの過去や士官学校時代の映像を確認し、その行動の真意を探ろうとした。
ジオンの未来とギレンの野望
ギレンは、ジオン公国の今後について思索しながら、最終的な戦略を固めていった。ジオンの理念を掲げつつも、実際には独裁的な支配体制を維持することでその理想を実現しようと考えていた。戦後の処理や、ニュータイプの可能性を踏まえた上で、ギレンは最終的な決断を下す時が近づいていることを悟るのだった。
PART 18 ドズル・ザビ
アムロの覚醒と戦場の混乱
アムロ・レイ中尉は、セイラ・マス軍曹に平手打ちを受けた痛みを引きずりつつも、深い眠りに落ちた。しかし、警報によって叩き起こされ、戦闘準備を整えた。パイロット・ルームにはカイ・シデン中尉、ハヤト・コバヤシ中尉、キリア・マハ中尉がすでに待機しており、アムロは彼らと軽口を交わしながら作戦に備えた。彼の心の中では、セイラとの関係と、そこに影を落とすシャア・アズナブルの存在が渦巻いていた。
戦場での交錯とアムロの決意
アムロは、シャアとの戦闘の中でセイラの言葉を持ち出し、シャアを動揺させようとした。しかし、それは戦場にふさわしくない感情のぶつかり合いであり、アムロ自身も感情に呑まれた結果、敵を取り逃がすこととなった。この一件が、アムロの中に新たな覚悟を芽生えさせた。ニュータイプとしての感覚が研ぎ澄まされていく中で、彼は己の未熟さと戦場での冷徹な判断の重要性を改めて認識した。
シャアの苦悩と戦略的撤退
一方、シャアは独立三百戦隊を率い、戦闘で被害を受けた旗艦マダガスカルを後退させた。クスコ・アル中尉を失いながらも、残存戦力を集結させ、キシリア・ザビとの合流を目指した。シャアの部下たちは、彼の仮面を外した姿に驚きつつも、彼こそが真のニュータイプではないかと期待を寄せていた。しかし、シャア自身は、自らの運命を見つめながらも、アルテイシア=セイラとの関係に対する迷いを拭い去ることができずにいた。
ドズル・ザビの決断とビグ・ザムの出撃
ジオン突撃機動軍司令ドズル・ザビ中将は、連邦軍の動きを侮辱と捉え、激怒した。彼は防衛を捨て、すべての戦力を戦場に投入することを決意し、自らが搭乗するモビルアーマー「ビグ・ザム」で戦場に立った。巨大な火力を誇るビグ・ザムは、圧倒的な破壊力をもって連邦軍を迎え撃ったが、アムロ率いるモビルスーツ部隊はそれに真っ向から挑んだ。
アムロとドズルの最終決戦
アムロは、ニュータイプとしての直感を駆使し、ビグ・ザムの動きを読みながら戦った。キリア・マハ中尉が果敢に援護するも、彼のGMは撃破され、戦場に静かな悲しみが漂った。しかし、アムロは確実にビグ・ザムを追い詰めていった。ドズルも最後の抵抗を見せ、戦場の気を支配するかのような異様な存在感を放った。彼は戦場に怨念を残しながらも、アムロのビーム・ライフルによって撃破された。最期の瞬間、ドズルの脳裏には、妻ナルスと娘ミネバの姿がよぎった。
戦いの終結とアムロの目覚め
戦闘が終わり、アムロはヘルメットを外しながら、セイラのことを思い出した。戦場での彼女の存在、そしてシャアとの因縁が、自らの未来にどのような影響を与えるのか、彼にはまだ明確には見えていなかった。ただ一つ確かなのは、ニュータイプとしての自覚が彼の中でさらに強まったことである。
PART 19 後退
ア・バオア・クー攻略戦の展開
地球連邦軍のチェンバロ作戦は困難を極めた。ペガサス・Jと二つの戦隊がドズル艦隊を撃破しつつあったものの、本隊はソロモンからの艦隊との遭遇戦で大敗を喫した。レビルとカラルの主力艦隊はア・バオア・クーへの距離を詰めていたが、長期戦による損耗を避けるため、一気に制圧する必要があった。三つの主力のうち一つが敗北したことで作戦の修正を迫られたが、レビルはペガサス・Jの活躍を信じ、進軍を継続した。
一方、ジオン軍はランドルフの指揮の下、要塞の守備を強化し、衛星ミサイルによる攻撃を仕掛けた。この原始的な兵器は低コストでありながら一定の効果を上げ、すでに数隻の艦が撃沈されていた。地球連邦軍はこの攻撃に対応するため戦線を横に広げたが、それがジオン軍に各個撃破の機会を与える結果となった。
戦場における混乱と撤退命令
レビルは戦力を一点に集中するべきか悩みつつも、戦況を見極めようとした。しかし、その間に「チェンバロの弦が切れた」という暗号が発せられ、作戦変更が決定された。この暗号が撤退を意味することを知ったレビルは、戦場の指揮系統に誤解が生じたことを悟ったが、戦場で叱責することなく冷静に指示を出した。カラル隊には本隊の支援を命じ、ソロモンからの艦隊を殲滅するよう指示した。撤退の報を受けたペガサス・Jのブライト艦長は混乱しながらも、前方の戦隊と共にア・バオア・クーへ進軍を続けた。
一方、ペガサス・Jではオペレーターのマーカー・クラン少尉がレビルの動きを確認できず、セイラ軍曹と共にその真意を測りかねていた。しかし、二百三戦隊司令グロアが撤退命令に疑問を抱き、フォトフェス部隊の援護を命じたことで、ブライトは行動を決定した。
パイロットたちの覚悟と伝統
戦場ではアムロ、カイ、ハヤトの三機のモビルスーツが虎の子のような存在となり、キリアの死を悼む間もなく再出撃の準備に追われていた。その際、戦場の伝統として「お守り」を持つ話が持ち上がる。カイはアムロにセイラからお守りをもらうよう勧めたが、セイラはこれを拒否した。アムロは彼女の意思を尊重しながらも、仲間たちの信念に理解を示した。
一方、補給艦L3のマチルダ中尉はペガサス・Jへ物資を補給しながら、アムロに自身の結婚式への招待を伝えた。彼女はアムロをからかいながらも、戦場に生きる者同士のつながりを意識していた。
戦況分析とニュータイプの可能性
ペガサス・Jのブリーフィング・ルームでは、アムロが戦闘中に感じた「気配」について議論が交わされた。アムロはドズル・ザビの存在が異様なものに感じられたとし、これがニュータイプの感覚によるものではないかと推測した。ブライトは、ジオン軍の指導者ギレン・ザビの影響力が戦況を左右している可能性を示唆し、ペガサス・Jが単独でギレンを討つことの意義について考えを巡らせた。
アムロはニュータイプが一般社会に受け入れられるかどうかを憂慮し、戦後に彼らが排斥される可能性を指摘した。カイやセイラもこれに同意し、ニュータイプが社会にどう受け入れられるかが戦後の課題となることを認識した。
シャアの苦悩とジオン軍の動向
ア・バオア・クーでは、シャアがキシリア配下のガルシアと会談し、戦局の推移について話し合っていた。ガルシアはドズル艦隊の壊滅を報告し、地球連邦軍のニュータイプ部隊が驚異的な戦果を挙げていることを指摘した。シャアは、ニュータイプの戦力がジオン軍の予想を超えていることを認識し、リック・ドムの修理を急ぐよう指示した。
シャリア・ブル大尉は、アムロ・レイの能力が進化しすぎた場合、人類の脅威となる可能性を懸念した。彼は、場合によってはアムロを排除しなければならないと主張し、シャアもその可能性を否定しなかった。
アムロとセイラの再会
戦場の混乱の中、アムロはセイラと再び接触し、シャアについての情報を求めた。セイラは、兄がかつてザビ家のガルマと親しい関係にあったこと、そしてテキサス・コロニーで密かに会っていたことを明かした。アムロはシャアが今もザビ家に対して個人的な復讐心を抱いている可能性を考え、彼との接触の可能性を模索した。
二人は互いの想いを確かめ合いながらも、軍規のもとでは自由に行動できない現実を理解していた。セイラはアムロにシャアとの関係を率直に話し、アムロも彼女に対する感情を抑えきれないことを自覚した。
次なる戦いへの決意
ペガサス・Jでは、ニュータイプの可能性と戦況を踏まえ、今後の行動を検討した。ブライトは、ギレン・ザビの存在が戦争を長引かせていると指摘し、討伐の可能性を探った。アムロはシャアとの接触を提案し、彼が協力者となる可能性を示唆した。
最終的に、ペガサス・Jのクルーたちは次なる戦いに向けて準備を進め、それぞれの役割を果たす覚悟を決めた。アムロはニュータイプとしての自身の役割を自覚しつつ、戦いの行方を見極める決意を固めた。
PART 20 胎動
キシリアとクラウレ・ハモンの接触
キシリアはクラウレ・ハモンを見つめながら、その端正な顔立ちに鋭すぎる眼差しが難点であると感じていた。クラウレは若々しく見え、髪をまとめた襟足からは女の色香が漂っていた。彼女にどこかで会った記憶があるが、はっきりとは思い出せない。クラウレは過去にギレンのパーティに出席したことがあると語るが、その過去と彼女が持参したダルシア・バハロ首相の親書の内容が一致しないことに、キシリアは警戒心を抱いた。
ダルシア・バハロの指令
クラウレはダルシアの命でこの任務を受けたと説明し、戦争終結後にはランバ・ラル大尉と結婚する予定であることを明かした。彼女の発言には裏があるように思えたが、キシリアにはその真偽を確かめる時間も手段もなかった。クラウレがダルシアの信頼を得ていたことは確かであり、彼女の任務には重要な意味があると考えられた。
親書の内容とクラウレの任務
キシリアはダルシアの親書を手に取り、内容を確認した。親書は正式な書式ではなかったが、逆にそれが本物らしさを増していた。戦線がコレヒドールへ移動する中、ジオン本国からの定期便がア・バオア・クーへ到着し、その一隻にキシリアの家中の者として偽の身分証を持ったクラウレが乗っていた。彼女の偽装は徹底しており、コンテナにはキシリアの家政婦が準備した荷物が含まれていたが、その背後にデギン公王の指示があったことをクラウレは知らなかった。
システムの稼働と疑念
親書には、地球連邦軍がア・バオア・クーに取り付いた時点で「システム」を稼働させる計画が記されていた。最高責任者であるランドルフ・ワイゲルマン中将はギレンの信頼厚い人物であり、彼を巻き込むということは、キシリア自身にも影響が及ぶことを意味していた。キシリアはこの情報の信憑性を疑いながらも、ダルシアがここまでの行動に出たことに強い危機感を抱いた。
ランバ・ラルとの関係と情報の重要性
キシリアはクラウレの過去を思い出した。彼女はかつてギレンが関係を持っていた女性の一人であり、ダルシアに情報を提供したのもつい最近のことだった。クラウレは、ランバ・ラルは自分の任務について知らないと答えたが、彼が現在多忙を極めているのは「システム」の最終チェックが影響していることを示唆した。この状況がランバ・ラルにとって負い目となり、ギレンへの忠誠を証明するための行動を取らざるを得なくなっていた。
シャア・アズナブルへの疑念
キシリアはクラウレが去った後、ふとある考えに至った。彼女はキャスバル坊や――かつてのジオン・ダイクンの息子――の存在を思い出し、それが現在のシャア・アズナブルである可能性に気付いた。彼の成長ぶりに驚きつつも、その策略を見抜けなかった自分に苦笑した。シャアの行動にはキャスバルとしての目的が隠されており、キシリアはそれを利用できると考えた。
ニュータイプの可能性と政治的利用
キシリアはシャアを呼び出し、彼の前歴を知った上で忠誠を誓わせた。ニュータイプとしての彼の能力を戦時中に活用し、戦後には英雄として持ち上げるか、排斥するかを決めればよいと考えた。シャアもまた、キシリアの思惑を理解しながらも、本心を見せることなく、自らの目的のために策を巡らせていた。
レビルの訪問とニュータイプの存在
一方、レビル将軍はペガサス・Jを訪れ、アムロ・レイやその仲間たちと意見を交わした。彼は彼らを「ニュータイプ」と認識し、その存在が戦局に大きな影響を与えると考えていた。アムロは自らの体験を語り、ニュータイプの概念がただの夢物語ではなく、現実のものとなりつつあることを示した。しかし、彼の能力が戦争の道具として利用されることに対する不安も口にした。
戦争の未来とニュータイプの役割
レビルはアムロたちに戦果の拡大を期待しつつも、生き延びることを命じた。セイラ・マスもまた、自身の過去と向き合いながら、ニュータイプが単なる戦争の道具ではなく、人類の未来を変える存在であることを信じていた。アムロは、自身の能力を完全に理解し、制御できないことに苛立ちを覚えつつも、その可能性を信じて戦う決意を固めた。
戦争の結末に向けて
ペガサス・Jのクルーたちは、それぞれの思いを胸に戦いへと向かっていった。彼らがニュータイプとしての力をどのように活かし、戦争を終結へと導くのか――その未来はまだ定まっていなかった。
PART 21 試動
ホワイトベース型強襲揚陸艦とペガサス・Jの戦況
ジオン軍は地球連邦軍のホワイトベース型強襲揚陸艦に「木馬」というコードネームを与えていた。一番艦ペガサスはテキサス・コロニーで撃沈し、二番艦サラブレット、三番艦ペガサス・Jが戦場に残されていた。これらはモビルスーツとの連携を前提に設計された特異な艦であり、ジオン軍にも同様の艦は存在しなかった。ペガサス・Jの甲板では、アムロのガンダムG-3と二機のガンキャノンC-108、C-109がビーム・ライフルを構え、前方を警戒していた。敵ミサイルと長距離メガ粒子砲の射程内に入りつつある状況で、ア・バオア・クーからの攻撃は未だ始まっていなかった。
ア・バオア・クーからのミサイル攻撃
アムロが空域を注視する中、ア・バオア・クーから光条が放たれ、それは瞬時に十数本の軌跡へと分かれ、彼らに襲いかかった。アムロは発射地点を十五箇所と読み取り、それらが複雑な網状に形成されたミサイル攻撃であることを理解した。彼はハイパー・バズーカを右手に、ビーム・ライフルを左手に持ち、甲板を蹴って発進した。カイとハヤトのガンキャノンもそれに続き、ミサイルの網をすり抜けながら、ペガサス・Jへの脅威となるミサイルを狙撃し始めた。
戦闘への自信とニュータイプの覚醒
カイとハヤトは、回避しながらも自信を持ち始めていた。発射されたミサイルはただ直進するだけで、回避が遅れなければ当たることはない。二人の視界は広く、相互に作用し合う直感が、ニュータイプとしての発芽を示していた。二機のガンキャノンは確実にミサイルを回避しながら、ペガサス・Jに脅威を与えるミサイルを撃ち落としていた。
アムロの戦況分析とア・バオア・クーの要衝
アムロはミサイルを回避しながらも、ア・バオア・クーの全体像を俯瞰していた。彼は、戦場の「気の流れ」を捉えようとしていた。かつてドズル隊と対峙した際に感じた戦場の圧力を思い出し、それと同様の「気」を探し出そうと試みていた。しかし、ア・バオア・クーには、ドズル・ザビが放っていたような圧倒的な存在感が感じられなかった。その理由を考える中で、第二波の攻撃が開始された。
新たな攻撃と戦場の混乱
アムロは、新たに接近するミサイル群を感知した。それは衛星ミサイルと呼ばれるもので、旧式の化学ロケットを搭載した即席の兵器だった。巨大な岩石を推進させるこの兵器は、威力は高いが命中精度は低かった。アムロは即座に回避行動をとったが、その背後ではガトル戦闘爆撃機群が迷彩を施した機体で展開し、続いてジッコ突撃艇やガウ空爆部隊が襲来していた。敵の防備が厚く、どこに突破口を開くかを見極める必要があった。
レビルの戦略とペガサス・Jの役割
レビル将軍は、連邦軍の総攻撃を決定し、その先鋒としてペガサス・Jを配した。これは、敵の防御が薄い地点を突き、戦局を有利にする作戦だった。ペガサス・Jのクルーたちは、この決定の意図を理解し、自由な行動を許された。その中でアムロは、敵のニュータイプ部隊やア・バオア・クーの中枢を発見し、連邦軍を導く役割を果たすことになった。
ギレンの陰謀とセシリアの疑念
一方、ギレン・ザビは、ア・バオア・クーの戦況を分析しながら、冷徹な判断を下していた。彼の秘書であるセシリア・アイリーンは、彼の計画に疑念を抱いていたが、それを口にすることはできなかった。ギレンは、南極条約を破棄し、最終的に核攻撃をも視野に入れていた。彼は、人類の進化を促すためには、現在の社会構造を崩壊させる必要があると考えていた。セシリアは彼の考えに一定の理解を示しつつも、その極端な思想に不安を感じていた。
シャアとシャリア・ブルの作戦
シャア・アズナブルは、シャリア・ブル大尉とともに、新型モビルアーマー・ブラウ・ブロを投入し、ガンダムとの戦闘に備えていた。シャリアは、ゼロ・サイコミュを用いた遠隔攻撃を計画しており、アムロと交戦する機会を狙っていた。彼の目的は、ガンダムの能力を測ることと、戦局の主導権を握ることだった。
ソーラ・レイの発射と戦場の混乱
戦況が激化する中、ギレンは最終兵器「ソーラ・レイ」を発動した。これは、コロニー・マハルを改造した巨大レーザー砲であり、連邦軍の主力艦隊に向けて発射された。その結果、連邦軍のカラル隊が壊滅し、戦場は大混乱に陥った。アムロは、その破壊的な威力と、人々の絶望の叫びをニュータイプの感覚で直接受け取った。それは圧倒的な「死の気配」として彼の精神を蝕み、戦場の現実を痛感させた。
アムロの決断と戦闘の継続
ソーラ・レイの発射により、戦場の空気は一変した。しかし、戦いは続いていた。アムロはガンダムを操り、シャリア・ブルのブラウ・ブロとの戦闘に突入した。シャリアもまた、ソーラ・レイの影響を受け、精神的に動揺していたが、それでもニュータイプとしての直感を頼りにアムロに挑んだ。
レビルの決断と連邦軍の総攻撃
レビルは、戦局が不利になることを悟りながらも、ア・バオア・クーへの総攻撃を指示した。彼は、敗北すれば人類はギレンの支配下に置かれると考え、最後の賭けに出た。連邦軍の部隊は、ア・バオア・クーへの突入を試み、戦いは最終局面へと進んでいった。
最終決戦へと向かう戦場
シャアとシャリア・ブルの部隊は、アムロとの決着をつけるために前線へと突進した。一方、キシリアはギレンの陰謀を警戒しながら、ズワメルを指揮しつつ戦場を離れようとしていた。戦況は混迷を極め、ア・バオア・クーでの最終決戦が迫っていた。
PART 22 ア・バオア・クー
ルナツーの難民収容所
地球連邦軍宇宙総軍の最前線基地ルナツーにおいて、南ブロック一帯は難民収容所となっていた。フラウ・ボウは動員され、エレカのシリンダーをオイル洗浄器で清掃していたが、突然強い悪寒に襲われた。身体の震えが抑えられず、傍らのリュムロに助けを求めると、彼はフラウの異常を察し、休むよう促した。
リスト・ルームへ向かう道のりは遠く感じられ、空気の汚れが喉を刺激した。フラウは必死にカツ・ハウインの名を呼び、助けを求めたが、声は弱々しく、リスト・ルームへたどり着くと同時に倒れ込んだ。テレビ電話の受話器を取り、カツに「来てほしい」と訴えたが、彼女の声は震えていた。カツは慌てて担任の教師を呼び、フラウの異変を知らせた。その時、フラウの意識にはアムロの不在が強く響き、寂しさに包まれながら、彼女は失神した。
ア・バオア・クーの戦闘
アムロはア・バオア・クーの戦闘空域でザクを撃破し、次なる敵を探していた。すると、モビルアーマー・ブラウ・ブロが出現し、その異質なシルエットと威圧的な雰囲気に警戒を強めた。アムロは回避機動を試みるが、ブラウ・ブロの攻撃は執拗に迫り、緊迫した戦闘が展開された。
その中で、ブラウ・ブロのパイロットであるシャリア・ブルがアムロに語りかけた。彼はニュータイプの可能性を見出し、共に戦争を終結させる道を探るべきだと説いた。しかし、シャリアの思惟の流れはアムロにとって過度に強く、彼の思考を圧倒し、呪縛のように絡みついた。アムロは混乱し、シャリアの言葉を暴力的な介入と受け取った。
アムロの怒りは頂点に達し、ビーム・ライフルを放った。その一撃はブラウ・ブロのコクピットを直撃し、シャリア・ブルを消し去った。だが、その直後、アムロは自身の行為の意味を悟り、後悔に苛まれた。彼が理解したのは、シャリア・ブルの言葉が単なる戦術的駆け引きではなく、戦争の本質を問いかけるものだったということだった。
シャアの動向と戦局の変化
シャアは戦況を観察しながら、ガンダムとブラウ・ブロの交戦を見守っていた。しかし、シャリア・ブルが敗れたことで、彼の計画は狂い始めた。彼はガンダムを取り込むつもりだったが、アムロが拒絶し、さらにルロイ・ギリアムが誤ってガンダムを撃墜したことで、その機会は完全に失われた。
アムロの死の直前、彼の思惟の爆発が空域全体に広がった。その影響はシャアをはじめ、カイやルロイ、さらにはペガサスのクルーたちにまで及んだ。アムロの思惟には、戦争を超えた理想と、新たな世界への願いが込められていた。その強烈な思惟の流れを受け取ったシャアは、自身の立場を改めて考えざるを得なかった。
一方、戦局は悪化し、ギレン・ザビの命令によるソーラ・レイの第二射が迫っていた。キシリアは状況を冷静に分析し、ギレンの策略を警戒した。彼女はズワメルを移動させ、戦局の推移を見守っていた。
フラウ・ボウとアムロの別れ
アムロは死の直前、フラウ・ボウのもとを訪れた。彼の姿は半透明で、まるで幻のようだった。フラウは彼の異変を察し、静かに話を聞いた。アムロはフラウを気遣い、「元気でいてほしい」と告げた。フラウは彼を抱きしめ、彼の温もりを感じたが、次の瞬間には彼の存在が消えていた。
アムロが去った後、フラウは涙を流しながら、彼の不在を実感した。彼女に残されたのは、カツ、レツ、キッカという三人の子供たちだけだった。彼女は彼らを守ることが自分の使命だと悟り、アムロの思いを胸に生きていくことを決意した。
戦場の決断
アムロの死とその思惟の余波は、ペガサスのクルーたちの行動を変えた。ブライトはペガサスの脱出を決断し、シャアとの協力を模索した。シャアもまた、ギレンを討つことを優先すべきだと判断し、ペガサスとの連携を進めた。
戦場では、ルロイ・ギリアムがアムロを撃墜したことを悔いていた。彼はアムロの思惟を受け取り、その死の意味を考え続けた。その思惟の中には、「シャアはニュータイプだ」というアムロの断定も含まれていた。ルロイは涙を流しながら、自らの誤ちを噛みしめた。
アムロの死は、多くの者たちに影響を与えた。彼の思惟は、新たな未来への布石となり、戦場の運命を動かした。ペガサスは脱出を開始し、シャアはギレン討伐への道を進み始めた。戦争はまだ続いていたが、アムロの存在は確かに戦場に刻まれていた。
PART 23 ズム・シティ
ズム・シティの静寂とソーラ・レイの試射
ジオン公国の首都、ズム・シティの港ブロックにはS・Sの支所があり、通関業務に関与する部隊が常駐していた。ランバ・ラル大尉は窓越しに、マハルから放たれたソーラ・レイの光を目にした。S・Sの隊員たちは発射の計画を知っており、息を詰めてその瞬間を待っていた。発射が始まると、直径六キロのコロニーを利用したレーザーの光が外壁の遮光フィルターを突き抜け、隊員たちの目を射抜いた。若い隊員はその威力に不安を覚え、ランバ・ラルは冷静に応じながら、鳴り出したTV電話に手を伸ばした。
第二射の計画とギレンの決断
通信の相手はチャップマン司令であり、彼は戦況次第で二十分後に第二射を行うと伝えた。S・Sはその協力を命じられ、隊員たちはこれが本番であることを理解する。ギレン・ザビは作戦室で監視衛星の情報を確認し、ソーラ・レイの試射が成功したことを確信した。発射装置の機能には問題なく、太陽電池からのエネルギー供給も十分であった。技術士官たちが出力と戦力の展開を報告する中、ギレンは第二射に向けて慎重に判断を下そうとしていた。
連邦軍の動きとギレンの指示
連邦軍はア・バオア・クーを盾にする形で移動しつつあり、ギレンは敵の戦略を見抜いた。彼はジオン艦隊に退避命令を発し、ソーラ・レイの発射準備を進めるよう指示した。チャップマンとのホットラインで、第二射の詳細を詰めながらも、ギレンはチャップマンの行動に疑念を抱く。彼はランバ・ラルにマハルへの出発を命じ、射線の異常があれば責任者を拘束するよう指示を出した。
マハルの射角変更とチャップマンの最期
ソーラ・レイの第二射が放たれると、チャップマンの指示でロケットノズルが点火され、射線が変更された。ギレンはこの異常に激怒し、チャップマンに是正を命じるが、変更はすでに不可逆だった。マハルのレーザーはア・バオア・クーに直撃し、ジオン軍の要衝を焼き払う事態となった。ランバ・ラルがギドルへ急行し、チャップマンの責任を追及すると、彼は動揺しながらも否認を続けた。ランバ・ラルは冷徹に銃を抜き、チャップマンの額を撃ち抜いた。
戦況の変化とキシリアの決意
連邦軍は壊滅し、ジオンも大きな損害を受け、戦争は事実上終結した。しかし、キシリア・ザビはギレンの行動が意図的であると確信し、彼を討つ決意を固める。シャア・アズナブルと合流した彼女は、ズム・シティへの突入作戦を指示し、シャアと共にモビルスーツ部隊を率いて進軍した。ズム港を突破し、ギレンの官邸へと迫る。
ギレン・ザビの最期
ギレンは統合本部を離れ、エレカで逃走を図るが、カイ・シデンのガンキャノンをはじめとする部隊に包囲された。キシリアはギレンに銃口を向け、彼を討つ理由を問いただす。ギレンは冷静に応じるが、キシリアは躊躇なくビーム・ライフルを発射し、ギレンの肉体を焼き尽くした。しかし、その直後、シャアがキシリアを裏切り、彼女を処刑する。
戦後の変遷とセイラの旅立ち
ジオンはデギンの退位後、共和制を復活させ、連邦と講和条約を締結した。シャアはジオン軍の再建に残り、ブライトやミライもそれに従った。しかし、セイラ・マスは過去を捨て、地球へと降り立った。彼女は地中海の波に足を浸しながら、自分自身の未来を考え、静かに泳ぎ出した。
あとがき
仕事の継続と心境の変化
長年にわたり週に一本のアニメ番組を制作し続けたことで、富野由悠季は自身の感覚が狂い始めているのではないかと反省していた。しかし、これほどの仕事が続いたことには深い感謝を抱いていた。今後のことを考えると不安を覚え、忙しさに慣れた身体と感覚がすぐには戻らないことも理解していた。他者の苦しみを完全に理解することは難しいが、少なくとも自身の作品が再出版されることに対しては、照れや恥を感じないよう努めていた。それは、再出版を望む読者に対する無礼を避けるためであった。
作品執筆の背景と反省
仕事として文章を書いてきたことは事実であり、それが将来的に自身の書きたいものを書くための足がかりになることを願っていた。特に『機動戦士ガンダム』の小説版は、その時々の思いを込めて執筆していた。しかし、当時の執筆が恥ずかしいものであったという自覚があり、今回、作品全体の整合性を取ろうと試みた。改めて読み返した際、それができないと知り、大きな恥を感じた。特に、『機動戦士ガンダム』三巻の終盤でアムロ・レイとハヤト・コバヤシを死亡させたことが問題であった。
物語の整合性と改訂の困難さ
その後の『Zガンダム』では、この二人が生存しており、さらに『逆襲のシャア』ではシャア・アズナブルが再登場する。これらの物語の整合性を取ることはもはや不可能であった。『機動戦士ガンダム』小説版が一つの物語として完結している以上、『逆襲のシャア』のために書き直せば、本編の破綻を招くと感じた。読者にとっては理解しがたい問題かもしれず、こうなった経緯を知らなければ納得できないだろうと考えた。しかし、それに対する明確な回答を持たない自身を恥じた。
ビジュアルメディアと文字メディアの違い
ビジュアルメディアと文字メディアの違いを言い訳にするつもりはなかった。『Zガンダム』を執筆する際、アムロとハヤトを登場させることは承知の上で進めていた。しかし、テレビアニメの制作という仕事に対応するためには、小説版をこのような形にするしかなかった。これ以上の理由はなく、それがテレビ業界で仕事を続けるために必要な決断だったと述べた。それに対する批判や非難は当然のこととして受け止める覚悟もあった。
再出版の意義と決意
今回の再出版を受け入れたのは、単なる仕事としてではなく、アニメから派生した自身の作品を一つにまとめたいという欲望があったためである。過去の失敗を覆そうと、アムロとハヤトを死亡させない改訂を試みようとしたが、それを断念した。もし彼らが復活する改訂版を出せば、これまでの読者を無視し、作品の一貫性を失うことになる。それが自己否定につながることを悟り、改訂版を出すことをやめた。
作品への愛着と評価の受容
執筆当時の『機動戦士ガンダム』小説版は、自身が全力を注いだ作品であった。文章の拙さは許せなくとも、作品自体を嫌っているわけではなく、むしろ誇りに思っていた。過去の自分を否定するのではなく、その上でさらなる挑戦を続けることが作家としての道であると考えた。その決意を持って、今回の再出版に臨むことにした。
改訂の方針と謝辞
第一巻については、文章の問題点を改善するために改訂を行ったが、それは第二、三巻との整合性を保つためのものであった。また、コロニーの直径については、オニールのプランに基づく物理的な合理性を考慮し、初期の設定を修正した。過去の自分の夢想が六キロという設定を生み出したが、映画版では視覚的な違和感を避けるためにそのままにされている。これらの改訂については理解を求めるとともに、今回の出版に関わった関係者や読者に深く感謝の意を表した。
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その他フィクション
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