どんな本?
『八男って、それはないでしょう! 30』は、異世界転生をテーマとしたライトノベルである。主人公ヴェルは、高校時代の日本から異世界に戻り、育児休暇を再開するが、南方のガトル大陸の探索で問題が発生し、追加の援軍要請を受ける。ガトル大陸は恐竜に似た巨大なトカゲが生息する危険な地であり、ヴェルは喋る恐竜と出会い、違和感を覚える。 
主要キャラクター
• ヴェル:主人公。異世界に転生した青年で、魔法の才能を持つ。
• ブレンメルタール侯爵:故人。ヴェルが遺灰の分析結果に疑問を抱く。
物語の特徴
本作は、異世界での冒険と現実世界の知識を融合させたストーリー展開が特徴である。主人公の育児と冒険の両立、未知の大陸での探索、そして喋る恐竜との出会いなど、読者の興味を引く要素が盛り込まれている。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2025年1月24日
• ISBN:9784046844620
• ページ数:324ページ
• 価格:1,430円(税込)
• 関連メディア展開:アニメ化、コミカライズなど
読んだ本のタイトル
八男って、それはないでしょう! 30
著者: Y_A 氏
イラスト:藤ちょこ 氏
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あらすじ・内容
またしても育休中断!? 南の大陸『ガトル大陸』を開拓せよ!
高校時代の日本から帰還したヴェルは、元ブレンメルタール侯爵の遺灰の分析結果に首をひねりながらも、中断された育休を再開していく。
手始めに職人たちに子供用プールを手配させ、子供たちとの触れ合いの時間を取り戻していくヴェル。
だがそれも束の間、南方の『ガトル大陸』の探索でアクシデントが発生したため、ヴェルに追加の援軍の要請……つまりは探索の引継ぎが命じられるのだった。
バウマイスター辺境伯領の最南端よりさらに数百キロ南下した位置にあるそのガトル大陸は、恐竜に酷似した巨大なトカゲが跋扈する広大で危険な大陸であった。ヴェルはこの過酷な大地で、戦闘と図鑑埋めをするかのような日々を送るが、喋る恐竜を目の当たりにし、えも言われぬ違和感を覚えるのであった……。
感想
主な出来事は以下の通り。
謎の灰と子供用プールの完成
ヴェルは王都へ戻り、ブレンメルタール元侯爵の遺灰を調査したが、灰の起源や黒幕についての疑念が残された。その一方で、南方の暑さを考慮し、子供用プールを製作した。特製の素材を使ったプールは成功し、子供たちが大いに楽しんだ。これを通じ、育児への姿勢を示したヴェルであったが、家庭内では価値観の違いが浮き彫りとなった。
南方探査と領地拡張の野望
レーガー侯爵は新大陸での探査に失敗し、魔物に襲われて命を落とした。この結果、探索隊の再編が必要となり、バウマイスター辺境伯も召集されることが決定した。彼の育休は事実上終了し、王国の発展に尽力する状況となった。
魔物討伐と新たな拠点の建設
陸小竜の討伐を進める中、ヴェルは補給拠点を建設し、探索隊の前進を支援した。アームストロング軍務卿の指揮の下、陸小竜との戦闘が続く一方、魔物のボスが依然として見つからず、探索隊は困難な戦いを強いられた。
エルフ族との邂逅と猿酒の取引
探索中、一行はエルフ族と出会い、彼らの伝統的な酒「猿酒」を発見した。猿酒は王国の貴族たちにも好評を得て、エルフ族との交易が開始された。また、世界樹や特産品を活用した経済発展の基盤が整備された。
貴族社会の葛藤と新たな縁
レーガー家の没落に伴う後継者問題や、ザンス子爵家の婿探しなど、貴族間の複雑な利害が描かれた。特にアーシャを巡る婚約問題では、ヴェルが新しい価値観を提示しつつ、家族間の協力を促進した。これにより、エルフ族との関係がさらに深まった。
巨大魔物との戦闘と結末
突然の地震で現れた謎の山から巨大魔物が出現した。アーシャや導師と連携し、魔物を討伐するも、その代償としてさらなる課題が浮き彫りとなった。戦勝後には、アーシャとの婚約が決定され、宴が開かれたが、導師の騒動で混乱も見られた。
総括
育休中であったはずのヴェルが、過酷な状況に次々と巻き込まれた姿が印象的であった。
恐竜のような魔物が湧き出る土地での探査や、エルフ族との交流を通じ、ヴェルが新たな縁を築いていく様子が丁寧に描かれていた。
また、従来の貴族像を覆す育児への取り組みや、現代的な家庭観の提示が新鮮であった。
結果として、新たな課題とともに新しい嫁が加わる展開は、シリーズらしいユーモアを含みつつも、物語を盛り上げる要素となったと感じた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
第一話 子供用プールと、南方の新大陸
灰の調査とブレンメルタール侯爵の謎
ブレンメルタール元侯爵の遺灰を回収したヴェルたちは王都へ戻り、灰の分析をベッケンバウアー氏に依頼した。しかし、科学的分析が不可能な異世界では結論に至ることができず、灰の由来や発生原因に疑念が残った。地下遺跡で火種や魔法の痕跡がなかった点が不可解であり、エルは黒幕の存在を示唆した。この灰と黒幕が、侯爵の化け物化に関する鍵を握る可能性が高いと考えられている。
子供用プールの製作と実用化
南方の暑い気候を考慮し、ヴェルはフリードリヒたちのために安全な水遊び環境を整えるべく、子供用プールを職人たちに製作させた。素材にはナメクジの粘液とゴムを混ぜ合わせた特製の材料が使われ、実用的なプールが完成した。試作品を使用した結果、フリードリヒたちは大いに楽しみ、プールや水遊び用玩具の可能性が確認された。量産化すれば貴族層に需要が見込まれるものの、材料の特殊性や製作難易度から課題が残る。
新しい貴族像の模索と家庭観の違い
ヴェルは新時代の貴族として家庭生活にも積極的に関わる姿勢を見せた。しかし、女性が育児の主役とされる慣習の中で、エリーゼやハルカとの間に意見の相違が浮き彫りとなった。それでもヴェルは、新しい価値観を提示することが次世代の貴族に必要だと考え、前向きな姿勢を崩さなかった。
レーガー侯爵の野望と大陸探索
一方、南方の新大陸ではレーガー侯爵が広大な領地を得るべく野心を抱いていた。砂金を発見した彼は領地の確保と栄光の復活を目指して動いたが、川辺で遭遇した魔物の襲撃により探索隊は壊滅状態となった。生き残るために必死で逃げるも、最終的に自らも魔物に捕らえられ、その野望は潰えた。
水遊びと家庭の平穏
ヴェルはフリードリヒたちとの水遊びを通じて束の間の平穏を楽しんだ。特注の水着や日焼け止めなど、細部への配慮を欠かさなかったことで、子供たちは安全に楽しむことができた。次第に育児に対する責任感を強めるヴェルであったが、突如として訪れる新たな問題が彼の育休に影を落とす兆しが見えた。
レーガー侯爵の自滅と王の嘆き
レーガー侯爵は南の大陸探索において、焦りから行動を誤り、魔物に襲われて命を落とした。この一件により、王国が与えた汚名返上の機会を活かすことはできなかった。軍事の名門として千年続いた家系の没落を憂いながらも、王は次の探索隊の編成を検討せざるを得なかった。
探索隊の再編とクリムトの志願
王は後任の探索隊隊長を選ぶにあたり、強力な魔法使いを含む戦力の投入が必要だと考えた。クリムトがその責務を引き受けることを進言し、これを了承した王は彼に隊長を任せる決定を下した。一方で、レーガー侯爵の末路に恐れを抱いた他の貴族たちは、探索への志願を控える姿勢を見せた。
バウマイスター辺境伯への要請
イクキュウ(育休)中であったバウマイスター辺境伯も、情勢の逼迫により南の大陸探索に召集される見通しとなった。王は約束を破ることに心を痛めつつも、探索が終わり次第、育休を延長させる考えを示した。これにより、彼の役割が探索の成功に大きく寄与することを期待される結果となった。
貴族社会への苦言
王は、危険な任務を避けようとする多くの貴族たちの態度に失望を感じていた。バウマイスター辺境伯への嫉妬を口にするだけでなく、自らの努力を怠る姿勢が、王国の発展を阻害しているとの思いを強くした。この現状を変えるため、王は改革への意欲を新たにした。
第二話 南の大陸へ
ガトル大陸の混乱とレーガー侯爵の最期
レーガー侯爵率いる探索隊は、ガトル大陸で生物たちを刺激した結果、二足歩行の竜「陸小竜」に襲われて壊滅した。彼の独断専行が原因であり、これにより探索隊はベースキャンプから動けない状況に陥った。王国の人選ミスも指摘され、レーガー侯爵家の名声回復の機会は失われた。
新たな探索隊の編成と陸小竜への対処
レーガー侯爵の失敗を受け、王国は新たな隊長にアームストロング侯爵を任命し、大規模な援軍を派遣することを決定した。アームストロング軍務卿は前進を主張し、陸小竜の群れを排除しながら進撃する策を提案した。これにより探索隊は攻勢を強める一方、補給拠点の必要性も浮上した。
バウマイスター辺境伯の補給拠点建設
バウマイスター辺境伯は、補給の要となる拠点建設を志願した。彼の魔法による迅速な堀と石壁の構築により、拠点は安全性を確保した形で完成した。これにより、探索隊は新たな進撃準備を整えることが可能となった。
陸小竜との戦闘と探索の継続
アームストロング軍務卿率いる脳筋軍団は陸小竜を多数討伐したが、竜の数は減らず進撃は難航した。一方、バウマイスター辺境伯は引き続き街の建設を進め、探索再開への足場を固めた。軍と補給の両輪が揃い、さらなる探索が可能となる中、彼の育休再開への道は遠いままであった。
第三話 魔銃と酒飲み
新たな拠点の建設と探索開始
アームストロング軍務卿は陸小竜への対策として、魔銃を用いて本格的な戦闘を開始した。魔銃は威力と射程に優れるが、重さと精度の問題があり、特に初期量産品のズレが命中率に影響していた。ヴィルマは射撃の熟練者として成果を上げたが、他の兵士たちは命中精度に苦労していた。回収された陸小竜の素材は経費削減に利用されたが、その数の多さから戦闘は長期化の様相を見せていた。
陸小竜の無限とも思える数
ノースランドから南方の大陸へ進撃したものの、陸小竜の数は減るどころか、ますます増えているように見えた。この異常な生態により、学者たちはボスとなる魔物の存在を仮定し、その討伐を進撃の鍵とした。だがボスの位置は依然不明であり、探索隊は偵察に頼らざるを得なかった。
巨大口長水竜との遭遇と戦闘
大河の探索中、巨大なワニ型の魔物「巨大口長水竜」が発見された。導師が「メテオインパクト」と名付けられた一撃で仕留めたが、戦闘の余波で導師自身が川底に突き刺さるという事態となった。巨大口長水竜は魔物のボスではない可能性が高いことが後に判明し、さらなる探索が求められた。
寒冷魔法による新たな戦術
バウマイスター辺境伯は寒冷魔法を用いて陸小竜の動きを封じる戦術を提案した。この魔法により多数の陸小竜が動けなくなり、効率的に討伐が進んだ。しかし、討伐を進めても陸小竜の数は一向に減らず、ボス討伐が不可欠であることが改めて確認された。
未知の領域と終わらない戦い
陸小竜の無尽蔵とも思える数は、探索隊をさらなる困難へと追いやった。ボスの存在が確定するも、その位置や正体は未だ謎のままであった。探索隊は未知の脅威に対し、限りない戦いを続けざるを得なかった。
第四話 導師の悟り
寒冷魔法の活用と新たな戦法
ノースランド周辺での戦闘では、寒冷魔法が重要な戦術となった。寒冷魔法は口長水竜や陸小竜に効果的で、動きを封じることで兵士たちが安全に討伐を進められた。一方で、この魔法はコントロールが難しく、習得できる魔法使いが限られていたため、戦力の偏りが課題であった。
巨大口長水竜との再戦と討伐
再び南の大河で巨大な口長水竜が発見された。寒冷魔法を試みたが、大型の魔物には効果が薄く、導師が魔導機動甲冑による強力な攻撃で討伐を行った。この攻撃は威力が絶大で、短時間で巨大口長水竜を仕留めることが可能であったが、その反動で導師自身が川底に突き刺さる場面も見られた。死骸の回収と分析が進み、この魔物の魔石が大きなエネルギー源となることが判明した。
ボスの特定と全滅作戦
学者たちの調査により、巨大な口長水竜がこの領域のボスである可能性が高いと結論付けられた。大河に点在する複数の巨大口長水竜を全滅させることが、この地域の魔物の根絶に繋がるとされ、討伐作戦が進められた。導師の強力な攻撃が唯一の有効な討伐手段であり、毎日の作業として次々とボスを討伐していった。
領域の浄化と次の課題
最終的に、導師と探索隊によって巨大口長水竜はすべて討伐された。この結果、大河より北の領域から魔物が姿を消し、次なる進撃への道が開かれた。ただし、この成果は導師に大きく依存しており、今後の探索で同様の戦法が通用するかは不透明であった。
第五話 ゴールドラッシュと後継者争い
魔物の移動と新たな課題
ノースランドから南の大河に至る地域は解放され、魔物たちは南側へ移動したと推測された。陸小竜は浅瀬を渡り、口長水竜は支流を通じて、飛行竜は飛んで南へ逃げたと考えられていた。この結果、広範囲の土地が安全となり、ノースランドの開拓が進められる状況となったが、急激な人口増加による食糧不足や治水の必要性が課題として浮上した。
砂金採取の影響と商業街の発展
南の大河で発見された砂金は多くの人々を惹きつけ、ゴールドラッシュのような現象が起こった。貴族たちは領民や貧民街の住民を送り込み、砂金採取に注力していたが、バウマイスター辺境伯は競争を避け、ノースランドの一地区に商業街を建設する方針を取った。この商業街では砂金採取者に向けた宿泊施設や物資販売が行われ、短期間で初期費用を回収した。商業街は今後も開拓者や観光客を受け入れる拠点として期待された。
レーガー伯爵家の後継者問題
レーガー侯爵家は失態により伯爵家へと降格し、後継者問題が浮上した。三名の従妹が候補とされ、いずれかが伯爵夫人となり、その子が次の伯爵になる予定であった。しかし、後継者選びには一族や家臣の対立が絡み、複雑な状況となっていた。この問題にバウマイスター辺境伯も巻き込まれる可能性が示唆されたが、彼は断固として関与を避ける意向を示した。
王都での謁見と警戒
陛下はバウマイスター辺境伯の功績を称賛するとともに、レーガー伯爵家の後継者問題について言及した。陛下の期待とともに、辺境伯には問題解決への関与を求められる気配があった。一方、屋敷では義父であるエドガー侯爵が訪れ、レーガー伯爵家の状況を牽制するため、屋敷での滞在を表明した。訪問者が続く中、辺境伯は新たな奥方の迎え入れを断固拒否する決意を固めていた。
レーガー家の伯爵夫人候補の集結
バウマイスター辺境伯の屋敷に、レーガー家の伯爵夫人候補とされる三人の女性、マチルダ、パトリシア、ヘレンが現れた。それぞれが自らの家系や資格を主張し、激しい口論を繰り広げた。しかし彼女らの境遇は、従妹という共通点と突然姓を変更したという背景があった。バウマイスター辺境伯は彼女たちの争いを無関心に見守りながら、適切に断る方法を模索していた。
エドガー侯爵の介入と説得
エドガー侯爵は義父として登場し、三人の女性たちに「政略結婚とは互いの支えが必要であり、能力が伴わなければ成り立たない」と厳しく諭した。彼は具体例としてヴィルマを挙げ、バウマイスター辺境伯の妻たちが冒険者として活動し家を支えている事実を指摘した。さらに、レーガー家復活のために辺境伯家を利用しようとする意図を見透かしていた。
ガトル大陸への同行提案
辺境伯は、三人に「ガトル大陸での任務に同行できるならば判断しよう」と提案した。これにより、実力と覚悟を試すという条件を設けた。三人は競い合う形で同意し、辺境伯たちとともにガトル大陸へと向かうこととなった。
現地での試練と適応
ガトル大陸に到着した三人は、想像以上に過酷な環境に直面した。負傷者の治療を手伝う場面では、凄惨な光景に動揺し気絶する場面もあったが、次第に回復し、炊事や洗濯などの後方支援に従事することとなった。地元の貴族令嬢であるフィリーネらとともに、実務に取り組む中で次第に根性を見せ始めた。
次なる試練への準備
最前線に向かう準備として、三人は魔物の解体や資材の扱いについても訓練を受けることとなった。過酷な環境下での経験を通じ、彼女らが伯爵夫人としての適性を見せるか、それとも諦めるかが問われる状況に立たされた。辺境伯は彼女らの変化を見守りつつ、自身は最前線へと向かった。
貴族令嬢たちの過酷な試練
レーガー家の三人の貴族令嬢は、バウマイスター辺境伯に同行してノースリバー北岸での過酷な二週間を乗り切った。魔物の狩猟や後方支援の作業を経験し、貴族としての振る舞いとは異なる現実に直面した。彼女たちは自らの限界を感じ、辺境伯家への嫁入りを辞退する意向を示した。
当主夫人としての覚悟
バウマイスター辺境伯は、三人に「当主夫人としての強さ」を求め、反対する一族や家臣たちを黙らせる方法を説いた。さらに、彼女たちに状況打破の具体策を耳打ちし、それを実行する覚悟を促した。三人は辺境伯の進言を受け入れ、覚悟を決めた。
王城での決断
三人は辺境伯とともに王城へ赴き、陛下に「独立」の願いを申し出た。陛下はこれを承諾し、レーガー家の分割が正式に決定した。三人はそれぞれ男爵家として独立し、新たな生活を始めることとなった。
旧家臣たちとの対立
新たに独立した男爵家に反発する旧レーガー家の家臣たちが、バウマイスター辺境伯の屋敷に押しかけた。辺境伯は正論を述べ、彼らに「陛下の決定」を理解させた。また、三人の新しい家の運営を手伝わない者たちは「整理」の対象になることを示唆し、旧家臣たちは慌てて引き下がった。
三家の繁栄と協調
三人の男爵夫人たちはそれぞれ有能な婿を迎え入れ、ガトル大陸での功績を積ませながら実権を握り続けた。当初対立していた三人は、次第に団結し、終生仲良く過ごすようになった。この経験は、貴族社会における女性の強さを示す一例となった。
第六話 巨大飛行竜と世界樹
巨大飛行竜との戦いと勝利
ノースリバー南岸で苦戦を強いられた一行は、ついに巨大飛行竜「プテラノキング」と対峙した。強烈な風を巻き起こす飛行竜に対し、囮として三人が前線に立ったが、上空からルイーゼが落下攻撃を仕掛ける作戦を実行した。その一撃で飛行竜は倒され、一行は危機を乗り越えた。
世界樹の発見と調査
飛行竜を倒した翌日、一行は「世界樹」と呼ばれる巨大な木を発見した。その大きさは自然の産物とは思えず、古代魔法文明の遺産である可能性が高いとブランタークが推測した。一行は世界樹の調査を開始し、その過程で奇妙な生態系と人の気配を感知した。
エルフ族との邂逅
世界樹で暮らす「エルフ族」と名乗る人々が現れ、一行と接触した。エルフ族の代表であるアーシャは、一万年以上も世界樹の中で生活してきたと語った。外の世界が魔物で満ちているため、外部との接触がなかったが、一行が飛行竜を倒したことで安全が確保されたことを感謝された。
エルフ族の歴史と提案
エルフ族の族長ザンスは、一行に古代魔法文明時代からの歴史を語り、彼らがオーガス王国の研究者の末裔であることを明かした。ザンスは、ヘルムート王国への臣従を受け入れる意向を示し、領地として世界樹とその周辺を希望した。
ヘルムート王国への臣従
一行はザンス族長とアーシャを伴い王城へ向かい、ザンスは陛下から第四位子爵に任じられた。領地として世界樹が認められ、エルフ族はヘルムート王国の一員となった。これにより、一行はガトル大陸の探索を進める新たな基盤を得た。
第七話 エルフ族(人間)と猿酒
エルフ族との猿酒取引
アーシャがエルフ族の特産品「猿酒」を紹介した。猿酒は世界樹の動物たちの助けを借りて作られる独特な酒であった。導師とブランタークは猿酒を熱望し、エルフ族との交換条件として金属製品を提供した。村人たちは金属製品に歓喜し、猿酒との交換が成立した。
猿酒の醸造と試飲
アーシャの案内で猿酒の醸造現場が紹介された。虹色の体毛を持つ猿たちが果肉をウロに捨て、発酵が進むことで猿酒が生成されていた。試飲した導師とブランタークは猿酒の味を絶賛し、その深い味わいに大いに満足していた。
猿酒の古酒と貴族たちの興味
猿酒の古酒が紹介され、十年物から二千年物までの豊富なラインナップが見られた。導師とブランタークは多額の金貨を支払い、古酒を次々と購入した。その希少性と品質はヘルムート王国の貴族たちからも高い評価を受けた。
猿酒の販路拡大
猿酒はバウマイスター辺境伯家の支援により、アルテリオ商会が流通を担当することとなった。試飲によるプロモーションが功を奏し、貴族や金持ちを中心に大きな需要を生み出した。希少な古酒は限定商品として高値で取引され、ザンス子爵領の経済を支える柱となった。
世界樹の葉の新たな利用
バウマイスター辺境伯は世界樹の葉を使った料理を試みた。フリカケ、佃煮、おひたしなど多彩な料理が生まれ、エルフ族にも好評であった。赤い実の渋抜きに魔法を使うことで、新たな果実酒の製造も実現した。この取り組みは、ザンス子爵領の特産品をさらに増やすことにつながった。
第八話 お見合い写真
魔物討伐と導師の実力
アームストロング導師は、ステゴサウルスモドキからティラノサウルスモドキまでの魔物を単独で討伐し、その圧倒的な実力を見せつけた。バウマイスター辺境伯とブランタークは後方待機するのみで、助けが必要になる場面はなかった。これにより周辺の土地は解放されたが、移住と開発には長い時間がかかる見通しであった。
エルフ族の狩猟技術
アーシャは、エルフ族らしい高い狩猟能力を見せた。彼女は魔法を駆使して矢の威力を増強し、陸小竜を一撃で仕留めるほどの腕前であった。彼女の活躍により、世界樹周辺の食材が多様化し、村人たちの生活に貢献していた。
世界樹での生活環境の課題
エルフ族は世界樹の上で生活しており、地上への移動には不便を感じていた。簡素な手動エレベーターは安全性に問題があり、特に高齢者や子どもにとって使用が困難であった。この問題を解決するため、バウマイスター辺境伯は魔導ギルドに相談し、昇降装置の設置を検討することとなった。
アーシャの婿探し
ザンス子爵家の寄親となったバウマイスター辺境伯の元に、アーシャの婿候補として多くの見合い写真が送られた。しかし、それらの貴族子弟は目的が不純であり、婿として適していない者ばかりであった。アーシャ本人も結婚に関して具体的な考えはなく、領内から婿を選ぶことが難しい現状が浮き彫りとなった。
婿入り試験の実施と失敗
婿候補たちに対し、世界樹での生活に必要な能力を試す試験が行われた。候補者たちは木登りすらできず、全員が不合格となった。これにより、貴族たちが婿入りを望む動機が単なる資産目当てであることが明確になった。
試験後の対応
バウマイスター辺境伯は、不採用の理由を各貴族に通知し、課題を克服するまで連絡を控えるよう要請した。その後、彼は問題解決に向けて新たな手段を模索しつつ、日常の生活に戻ることとなった。
第九話 面倒臭い
アーシャへの贈り物とザンス子爵家訪問
バウマイスター辺境伯は、ルイーゼとカチヤを連れて世界樹を訪れ、アーシャに王都で購入したケーキを贈った。アーシャはその贈り物に喜び、ザンス子爵邸へ案内した。ザンス子爵は視察をアーシャに任せ、バウマイスター辺境伯と後継者問題について話し合ったが、解決の糸口は見つからなかった。
ザンス子爵家の後継者問題
ザンス子爵家は婿入り候補の不足に直面していた。外部の貴族子弟は使い物にならず、領内では適任者が婚約済みであるか、アーシャを女性として見ていない状況であった。さらに、バウマイスター辺境伯の家臣を候補にする案も、貴族社会のしがらみや格差問題から困難であった。
婿探しと貴族の事情
バウマイスター辺境伯は、アーシャの婿探しのため慎重に候補者を選んだが、いずれも難点が多く進展しなかった。特に、貴族間の利害関係や政治的な影響を考慮すると、理想的な候補を見つけるのは困難を極めた。
アーシャへの魔法指導
バウマイスター辺境伯は、アーシャの魔法の才能を伸ばすため、専用の魔法の袋の作製を教えた。彼女は器用さを発揮し、見事に袋を完成させた。その後の狩猟で彼女の腕前を確認し、放出系魔法の指導を申し出た。アーシャはその提案に大いに喜び、魔法の練習を熱心に行うこととなった。
婿問題への苦悩
バウマイスター辺境伯は、アーシャの婿探しが進展しない現状に頭を悩ませていた。彼は内部候補や養子案を検討したが、貴族社会の問題や将来的な争いを考慮し、どの案も採用できなかった。結局、魔法の指導に集中することで当面の問題を先送りすることにした。
第十話 現実逃避じゃないから!
魔法の特訓開始
アーシャは放出魔法を使えない悩みを抱え、バウマイスター辺境伯の指導を受け始めた。彼女の魔法矢は攻撃力が高く、陸小竜を次々と倒す実力を持っていたが、広範囲の攻撃ができなかった。特訓により彼女の魔力量は増加し続けたが、依然として矢を使わなければ魔法を発動できなかった。
器合わせの実施
魔力をさらに引き上げるため、器合わせを行う必要があった。しかし、男女間で行うことの適切性を考え、バウマイスター辺境伯は代わりにカタリーナを呼び、彼女とアーシャの器合わせを実施した。これによりアーシャの魔力量は大幅に増加し、上級魔法使いへの道が開かれた。
弓型の杖の導入
アーシャが放出魔法を習得できない理由を探る中、彼女が弓に慣れ親しんでいることに着目し、バウマイスター辺境伯は弓型の杖を開発した。この新しい発動体を使うことで、アーシャはついに放出魔法を成功させ、火炎や風の魔法を広範囲で使用できるようになった。
魔法の応用とさらなる成長
弓型の杖を用いたアーシャは、多彩な魔法を習得し、巨大なブロントサウルスモドキを一撃で倒すほどの威力を発揮した。ブランタークの助言を受けながら、魔法の種類を増やし、使用効率を高める訓練を続けた。結果として、彼女は後衛の魔法使いとしての役割を確立した。
世界樹の渡し船建設
世界樹周辺の移動を円滑にするため、小型魔導飛行船を使った渡し船と船着き場が建設された。この改良により、エルフたちの生活が大きく改善され、赤い実や猿酒などの特産品が効率的に流通するようになった。これらはザンス子爵領の経済を支える重要な要素となった。
第十一話 母
魔物側の危機感と決意
魔物の指揮者は、人間たちが短期間で多数の魔物を狩ったことに憤りを感じていた。領土の拡大を防ぐため、自身が直接戦う決意を固め、強大な魔法使いたちを討ち取ることで人間たちに恐怖を与え、進撃を止めさせようと計画していた。
アーシャの成長と感謝
アーシャは、バウマイスター辺境伯から魔法を学ぶ中で、大きく成長していた。彼の指導により、魔力量が向上し、弓型の杖を使用することで放出魔法も習得可能となった。彼女はその恩に深く感謝しつつ、訓練が終わる寂しさを感じていた。また、彼への尊敬以上の感情を抱きつつも、自分の立場を考え、その思いを秘めていた。
母ミスマとの対話
アーシャは、母ミスマと対話するため世界樹を訪れた。ミスマは猿酒の製造に専念し、ザンス子爵と別居中であったが、実は信頼関係の下で役割を分担していた。彼女はアーシャの結婚話について冷ややかに見つつも、娘の気持ちを察していた。最終的にミスマは、娘の支えになるため屋敷に戻る決意を示した。
バウマイスター辺境伯とミスマの初対面
バウマイスター辺境伯は、アーシャの母ミスマと初めて対面した。ミスマは技術者としての能力を発揮しつつ、夫を支える独特な姿勢を見せた。辺境伯は彼女の合理的な生き方に理解を示し、アーシャの成長を引き続き見守る決意を固めた。
導師クリムトの不在と陸小竜狩りの中断
陸小竜の偵察を行う予定であったが、導師クリムトが暴飲暴食による体調不良で欠席したため、計画は中止された。アームストロング軍務卿は冷静に判断を下し、辺境伯とアーシャは引き続き陸小竜の討伐に従事することとなった。
第十二話 死闘、復活、結局こうなる
謎の山と議論
アームストロング軍務卿とバウマイスター辺境伯は、遠方に見える整然とした山について話し合った。その形状が自然にできたものではなく人工的な要素があると推測された。アーシャもこの山に関する資料が残されていないことを不自然と考え、古代魔法文明崩壊以後に造成された可能性を示唆した。
地震と異変の発生
突然の大規模な地震により陣地は混乱に陥り、多くのテントが倒壊した。山頂付近では雪が舞い上がり、山全体で異常が起こっている様子が観察された。直後、山頂から巨大な魔物が現れ、野営陣地を目標に迫ってきた。
喋るボスとの戦闘
バウマイスター辺境伯は、急ぎ魔物を迎撃することになった。この魔物は複数の属性に耐性を持ち、攻撃を受けるたびに苦手属性を変える厄介な特性を持っていた。辺境伯とアーシャは連携し、苦手属性を見極めながら戦闘を続けたが、魔物の再生能力に苦戦を強いられた。
導師の復活と決着
途中で導師が復活し、魔導機動甲冑を装着して戦闘に加わった。導師は魔物の大鎌を利用し、その巨体を真っ二つに斬り裂いた。魔物は最期に自爆を試みたが、辺境伯とアーシャが魔法障壁を張り、陣地を守り抜いた。
戦勝と婚約の決定
戦闘後、軍とザンス子爵家は勝利を祝う宴を開いた。アーシャとバウマイスター辺境伯の婚約がその場で決定され、彼らは周囲から祝福を受けた。辺境伯は複雑な感情を抱きつつも、アーシャとの未来を受け入れる決意を固めた。
宴の騒動と導師の無茶
宴の最中、導師が再び猿酒で無茶をしようとしたため、辺境伯とアーシャはその暴走を止めることに奔走する羽目となった。宴は混乱を伴いながらも盛況のうちに終わった。
同シリーズ
八男って、それはないでしょう!シリーズ(修正中)
その他フィクション
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