どんな本?
主人公の三森灯河(みもりとうか)は、「ハズレ枠」と称される状態異常スキルを持つE級勇者である。
彼は生存率ゼロとされた廃棄遺跡を脱出し、新たな力を求めて旅を続けている。
とある街で再会したミストと共にミルズ遺跡を攻略し、更なる力を手に入れるための冒険を始める。
灯河の復讐の対象である女神ヴィシスへの旅路は、突如現れた世界最強の黒竜騎士団を統べる「人類最強」シビト・ガートランドによって大きく変わる。
シビトは女神ヴィシスさえも恐れる存在であり、灯河は彼に対抗するためにすべてを駆使して戦うことを決意する。
「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」は、篠崎芳によるライトノベルシリーズで、KWKMがイラストを担当している。
主人公は「ハズレ枠」と称され召喚した女神に廃棄場に廃棄されてしまう。
廃棄された召喚者達を嬲り殺そうと襲って来たモンスターを【状態異常スキル】を駆使し、困難な状況を乗り越えていく。
物語は、主人公が経験値の取得とレベルアップを繰り返すことで自身の限界を超え、新たなスキルを獲得し、押し寄せる魔物を蹂躙していくところから展開。
このシリーズは、読者に強い印象を与えるストーリーとキャラクターで知られている。
また、このシリーズはオーバーラップ文庫から出版されており。
それぞれの巻は、主人公が困難を乗り越えて成長していく様子を描いている。
このシリーズは、ファンタジーと冒険の要素を組み合わせたエキサイティングな物語で、多くの読者から高い評価を受けている。
読んだ本のタイトル
ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 11.5
(Failure Frame: I Became the Strongest and Annihilated Everything With Low-Level Spells)
著者:篠崎芳 氏
イラスト:KWKM 氏
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あらすじ・内容
「ハズレ枠」と称されたスキルを駆使し、強敵を、そして級友をもその手にかけた三森灯河。迫るヴィシスとの決戦を前にした彼に、セラスは静かに語り始める。
ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 11.5
大幻術により外の世界から隔絶されたハイエルフの国「ハイリングス」。その国での御伽噺のような幼少のみぎり。大切な人のために禁忌を犯し、国を追われ、ネーア聖国へとたどりついた時の記憶。そして王女カトレアのもと、聖騎士団長としてその剣を振るった日々の名残を……。
「どこまでも。いつまでもお供します。我が主」
これは、かつて空気モブだったE級勇者に寄り添う、ある姫騎士の追憶。
プロローグ:
ハイリングスの国は、大幻術によって外界から遮断されており、エルフ種の中でも長寿の「ハイエルフ」が居住している。王オライオは妃シーリンが出産するのを待ち望んでおり、ついに王女セラスが誕生する。オライオは新たな生命の誕生に大精霊への感謝の祈りを捧げる。
第1章:
エリオンの王都民は新しい姫君の誕生を祝福する。王家には久しぶりの女児が誕生し、全ての王子が王都を離れている状況で、王位継承権のないセラスは王都で大切に育てられる。セラスは美しさと聡明さを兼ね備えながらも、自身の外見に疑問を抱きつつ成長し、読書を通じて広い世界を知るようになる。
第2章:
セラスが追放される一連の出来事が展開される。彼女は禁忌の谷で禁断の花を求め、病に倒れた乳母を救うために精霊との契約を結び、その代償として睡眠欲を失う。最終的にセラスはハイリングスからの追放を受け入れ、一人外の世界へと放たれる。
第3章:
セラスはネーア聖国への旅を始め、記憶の一部を失いながらも、生きる意志を見つけるために進んでいく。彼女はカトレア・シュトラミウス姫と出会い、運命的な関係が芽生える。二人は互いに影響を与え合い、カトレアはセラスを自らの護衛とする。
第4章:
セラスはネーアの姫騎士として名を馳せ、聖騎士団の団長に就任する。彼女は多くの支持を得ながらも、感情を表に出さずに職務を全うする。一方、カトレアはセラスのために水着を用意し、彼女が異性との関わりに慣れるよう手助けする。
第5章:
ネーア聖騎士団は国内外で影響力を拡大し、セラスは団長としての地位を確立する。しかし、ミシュル公爵の野望による陰謀が発覚し、セラスとカトレアはこれを阻止する。最終的にセラスは過去の自己と和解し、自己主張を始めることで新たな章を迎える。
エピローグ:
バクオス帝国の侵攻が始まり、セラスはカトレアと共に困難に立ち向かう決意を固める。しかし、カトレアはセラスのみを安全な場所へと送り出し、自らは運命に立ち向かう。セラスは新たな人生を歩み始めるとともに、未来に希望を持って進む。
感想
セラスはハイリングスの大幻術により隔離された環境で育ち、幼少期は御伽話のような日々を過ごすが、ある禁忌を犯して国を追われてしまう。
その後、彼女はネーア聖国へと辿り着き、聖騎士団長として新たな生活を始めた。
物語は、セラスが過去にどのように苦境を乗り越えてきたか、そして彼女がどのようにして自らの運命を切り開いていくのかに焦点を当てていた。
セラスの成長過程と内面の葛藤が丁寧に描かれ、彼女の心理が深く描かれていた。
感想として、セラスの過去の物語は非常に過酷であり、彼女が過去の自己と現在の自己をどのように繋げていくのかが見どころであった。
彼女が自らの真の自分を理解し、自身の運命に挑む過程に深い印象を与えられた。
また、物語全体としてダークで複雑なテーマが織り交ぜられており、サスペンスフルな展開が読み手を引きつけてくれた。
結末では、セラスが自らの過去と真摯に向き合い、多くの困難を乗り越えた末に、新たな一歩を踏み出す姿が描かれていた。
彼女の過去の経験が現在の彼女を形成し、その経験が彼女の成長にどのように影響を与えたかが描かれていた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
プロローグ
ハイリングスは大幻術により外の世界から隔絶され、誰も入国できない国である。
エルフ種の中でも特に「ハイエルフ」と呼ばれる長命種が住んでいる。
王都エリオンのクインレイル城で、ハイリングスの王オライオ・アシュレインは王妃シーリン・アシュレインの出産を待ちわびていた。
王が部屋にいられない伝統のため、オライオは外の空を眺めながら待ち続けた。
ついに王女が無事に生まれ、シーリンが抱える赤子を見たオライオは、大精霊に感謝の祈りを捧げた。
二人は娘の名前を「セラス・アシュレイン」と名付けた。
1.ハイエルフの姫君
エリオンの王都民は、新たな姫の誕生を祝福した。
アシュレイン王家にとっては久しぶりの女児である。
ハイリングスでは、王家の男児は十五歳になると「王の試練」として王都を離れる決まりがあり、現在、全ての王子たちは王都を離れている。
これは争いを避けるためであり、次期国王候補が多く集まれば王位争いが起こりかねないためである。
王子たちは離れた領地で経験を積み、王としての立場を学ぶこととなる。王位につけなかった者は与えられた領地を治めるのが通例である。
「王の試練」は長い年月を要するが、時期をずらして一時的に王都へ戻ることは許されている。
ただし戻る時期は国王が決めるため、王子が自分の判断で勝手に戻ることはできない。
一方、国王や王妃が息子たちの領を訪ねることは自由であり、定期的に訪問して現状の評価を行っている。
女児の場合は、王都で大事に育てられる。
ハイリングスでは女児に王位継承権がなく、争いの火種になりにくいためである。
アシュレイン王家は昔から女児に恵まれにくく、過去500年ほど女児が生まれていなかった。
エルフは人間に比べて子を孕む確率が低く、一度出産すると次の子を生むまでに長い年月がかかるとされる。
そんな中で生まれたのがセラス・アシュレインである。
セラスは、両親である国王とシーリンにとって待望の子であった。
乳母のクレシュトー・リエデンは、彼女の世話と教育を担う有能な女性であり、王家からの信頼も厚い。
セラスは六歳になり、美しさと可愛らしさを兼ね備えて育っていた。
彼女の髪は絹のように滑らかで、瞳は湖の水のように澄んでおり、貴族たちからも称賛されている。
しかし、セラス自身はその美しさに対して疑問を抱いていた。
皆が自分を見て喜んでいるが、時折自分自身が見られていないような感覚に陥ることがあった。
その違和感を唯一相談できる相手はクレシュトーであり、彼女はいつも柔和に対応してくれた。
セラスは、自分の美しさについて深く考えることを避けるようになり、窮屈さを感じるからであった。
彼女は王城内の書庫に通い、特に地下の閉架書庫で読書を楽しんだ。
そこには外の世界と交流があった頃の書物もあり、セラスはその中で姫君ではない自分を見つけることができた。
読書は彼女にとって夢中になれる時間であった。
本は平等であるとセラスは気づいた。
本は読み手を区別せず、誰であろうと同じ内容を提供する。
これは、彼が後に指摘したことで理解したことである。
読み手の立場や性別に関わらず、本はその内容を変えない。
どの本もセラスに対して「美しい」とは言わず、ただ静かに平等に内容を提供し続けた。
そのため、セラスは本を好きになったのである。
セラスは幼少期から読書に熱中していたが、王族としての作法や舞踏、剣術も学んでいた。
特に剣術はアシュレイン王家の象徴であり、儀礼的な剣舞を学ぶことが重要であった。
セラスは剣術指南役からも高く評価されていたが、特に読書に夢中になっていた。
読書を通じて広がる世界に心を奪われていたのである。
クレシュトーに孫が生まれたと聞き、セラスはその孫に会うことを楽しみにしていた。
親子三人で穏やかな時間を過ごすことも多く、セラスは両親と一緒にいることが幸せだった。
特に母と一緒に過ごす時間は特別であり、母から褒められることが何より嬉しかった。
ある日、セラスは両親とともに大精霊の神殿を訪れた。
大精霊はエルフの守護者であり、その姿は幻想的であった。
セラスは初めて大精霊に会い、圧倒されつつも興奮を覚えた。
大精霊との出会いは、セラスにとって特別な経験となった。
シーリン・アシュレイン
ある日の昼過ぎ、アシュレイン親子は城内の庭園へ赴いた。
花が咲き誇る庭園は日々丁寧に手入れされ、柔らかな下草が生えているためセラスは走り回っていた。
オライオは敷物を広げ、シーリンは上品に座った。
セラスは花壁を大のお気に入りとして、花を慈しむように撫でていた。
シーリンはその姿に見惚れていた。
オライオはクレシュトーの育て方に感謝し、シーリンも彼女に信頼を寄せていることを語った。
シーリンは外の世界について不安を抱えていたが、娘の呼び声で気持ちを切り替え、セラスに花輪細工を贈った。
セラスはその花輪を喜び、母と父に感謝の言葉を伝えた。
シーリンは娘の美しさに感動し、抱きしめながらセラスに愛を伝えた。
セラスも母に対して同じように愛情を示し、親子の絆が深まった。
しかしシーリンは、セラスが外の世界に触れることを強く避けたいと願っていた。
セラス・アシュレイン
幸せとは何か、セラス・アシュレインは七歳になり、成長とともにその問いに直面していた。
美しさが増し、王族としての作法も身につけ、大人びた振る舞いで人々の心を奪うセラスは、読書欲も変わらず旺盛であった。
彼女の剣術の才能は驚異的であり、老指南役からも兄たちを超える才能があると評価された。
異性からの関心が絶えないセラスだが、母シーリンがその多くを退けていた。
ある日、セラスは私室の窓から外を眺め、病に倒れた乳母クレシュトーのことを考えていた。
クレシュトーの孫が不治のシバナ病にかかり、彼女自身も憔悴していた。
セラスはクレシュトーを助けるため、禁忌の谷に自生する殺し枯花を探す決意を固めた。
セラスは秘密の通路から王都を出て、禁忌領域の禁霊封地へ向かい、封印された精霊たちの力を借りるため、石棺を開いた。
風、氷、光の精霊が現れ、セラスに対価を求めた。セラスは何を差し出せばよいかを問うた。
セラス・アシュレインは禁忌の谷に到着し、風精霊シルフィグゼアの助けを借りて術式刻印を解除した。
三体のはぐれ精霊を宿し、強力な力を得たセラスは、谷の中を進む。
契約の対価として、セラスは睡眠欲を差し出し、深い眠りを取れない状態となった。
谷の中で魔法生物と戦いながら、セラスは「殺し枯花」を見つけ、それを採取した。
帰り道でさらなる魔法生物と遭遇し、精霊の力を借りて戦いを乗り越えた。
翌日、セラスは王都に戻り、捜索していた兵士たちに発見される。
王都へ戻ったセラスは、侍女たちに事情を説明せずに着替え、クレシュトーの家へ急いだ。
リエデン家でクレシュトーの娘コクリにシバナ病の治療薬を手渡し、効果を祈りながらクレシュトーの元へ向かった。
クレシュトーは孫リエリのことを気にしながら眠っていた。
セラスは彼女の手を握り、「大丈夫」と励ました。
セラスは薬を届けクレシュトーを見舞ったが、クレシュトーは目を覚まさなかった。
次の日の朝、リエデン家のシバナ病が治ったという知らせが届いた。
クレシュトーの孫リエリのシバナ病が完治し、クレシュトーも元気を取り戻した。セラスはその報告を聞き、胸を撫で下ろした。
クレシュトーはセラスの訪問が奇跡をもたらしたと信じ、コクリも改めてセラスに感謝したいと述べた。
セラスはリエデン家を再訪し、感謝の言葉を受け、皆の幸せな姿に安堵した。
リエリの病が治った三日後、謝霊祭が終わり、国王夫妻が王都に戻った。
2.追放
その日、王都は冷え込んでいた。謝霊祭の最終日に国王夫妻が戻り、翌日、大神殿で大精霊に呼ばれた。
戻ってきた夫妻の顔は青ざめていた。オライオはセラスが禁忌を犯したことを知って苦悩し、シーリンは泣きながらセラスを抱きしめた。
セラスが禁忌の谷に入ったこと、大精霊が封印の異変に気づき、映像で確認されたことを父から伝えられた。
オライオは王として、セラスの行為を厳しく問いただした。
セラスは自分の意思で禁忌の谷へ行き、はぐれ精霊と契約したことを認めた。
彼女の行動は優しさからのものであったが、掟を破ったことは重大な罪であるとされた。
シーリンは娘の行動を理解しつつも、掟に従わねばならない苦しみを抱えていた。
最終的にセラスの罰は「ハイリングスからの追放」となり、外の世界へ放り出されることとなった。
三日の猶予期間が与えられ、家族は別れを惜しみつつ過ごした。
セラスの母は、娘を溺愛していたが、王妃としての立場から追放を最終的に受け入れた。
母は王としての夫を深く愛し、国の法を優先させた。
セラスは追放の秘密を限られた者だけに保つことを望み、表向きは病で亡くなったことにした。
追放の日、セラスとその両親は、通常とは異なる馬車で大精霊の狭間に向かった。
この馬車は、大精霊の力により守られていた。
セラスの両親は彼女に外の世界についての指示を与え、愛情を伝えた。
最後に、セラスは両親に感謝を示し、別れを告げた。
オライオ・アシュレイン
娘を送り出した後、オライオとシーリンは馬車内で互いに寄り添いながら帰途についた。
オライオは娘を忘れたいと述べ、シーリンも別れが自分たちの教育方法への罰であると受け止めているようだった。
シーリンは娘が外の世界で生き抜くことに不安を感じていたが、オライオは娘が無謀であると同時に賢く、自らの道を選んで歩んでいると信じていた。
彼は娘が持つ優しさが欠点ではあるが、決して弱いわけではないと強調し、シーリンに希望を持つよう励ました。
追放者は記憶を部分的に失うが、オライオは娘にその事実を伝え、秘密を守るための措置として説明していた。
彼は娘の安全と幸福を願いつつ、娘が外の世界で良い人々と出会えることを祈っていた。
3.ネーア聖国
セラスは森の中で覚醒し、自身が何かと別れ、何かを求めて進んだことをぼんやりと覚えている。
彼女は「ネーア聖国」の名を思い出し、そこに向かうべきであると確信している。
セラスは三体のはぐれ精霊と契約しており、これらの精霊からは様々な力を借りることができる。
彼女は自身が王族の姫であることを知り、感情がほとんどない状態で生きているが、生きる意志を見つけるために進むことを決意している。
記憶の一部が欠落しているものの、必要な情報は荷物の中の紙片に記されている。
森の中で狼たちとの戦闘が発生し、セラスは自分の力を信じて戦う。
戦いの後、彼女は再び前に進む決心を固める。
セラスが追放された後、彼女は十七歳を過ぎる頃に少しずつ記憶を取り戻し始めた。
しかし、記憶の中の感情は希薄で、他人の物語を読んだかのような感覚が残った。
この感情の欠如は、復讐の意欲を抑えるための措置かもしれないと彼と話している。
彼は記憶が戻るとは情報としてではなく、感情が伴わないと指摘し、それが副作用のようなものかもしれないと述べた。
セラスは、過去を語る際に感情を込めることがあり、それが相手にとって理解しやすいからだと説明した。
彼女はネーア聖国のカトレア・シュトラミウス姫との出会いに言及し、その後の運命的な展開についてほのめかしている。
カトレア・シュトラミウス
カトレア・シュトラミウス姫は冬の狩りに参加しており、その際に不満を抱えていた。
彼女はこの年に十歳になり、王族としては聖王オルトラ・シュトラミウスの唯一の直系の血縁者である。
彼女の従兄であるミシュル公爵は、自分の息子を次期聖王にしようと企んでいるという噂がある。
カトレアは、公爵夫妻の息子を将来の夫とするプランに反対しており、その事実に苦しんでいる。
一方で、カトレアの護衛として付き添っているマキア・ルノーフィアは、貴族の娘で、剣の扱いに長けており、魔法も使える能力を持つ。
狩りの最中、カトレアとマキアは森で一人のエルフの少女と出会う。
この少女は、ネーア聖国を求めて旅をしており、彼女の記憶は部分的に失われていた。
カトレアの父オルトラはこの少女を歓迎し、彼女の護衛をカトレアに任せることを決定する。
この出来事は、カトレアとその父に新たな感情を呼び起こし、王としての彼の行動には新たな決意が感じられた。
カトレアはエルフの少女の面倒を見ることになり、二人はこれからの交流を通じて互いに何か新しい発見をするかもしれない。
セラス・アシュレイン
セラスは冬枯れの森でネーア聖国の姫、カトレア・シュトラミウスとその一行と出会い、彼らに保護された。
カトレアはセラスを自分の第二私室に案内し、そこを使うことを提案する。
この部屋はカトレア自身が好んで使うものであり、通常は使わない部屋である。
カトレアの誘いに戸惑うセラスは、自分に都合のよいことが次々と起こることに不安を感じるが、カトレアはセラスを落ち着かせ、二人は浴室で更に親交を深める。
カトレアはセラスに親しみを示し、彼女との関係を姉妹のようにしたいと願う。
セラスはカトレアの誠実さに心を動かされ、彼女のために尽くすことを決意する。
王城内で、王オルトラが人が変わったように活動的になったという話が囁かれている。
不摂生を止め、政務も自ら積極的にこなし始めた。
この変化は、北西の森での狩りでエルフの少女セラス・アシュレインと出会ってから始まった。
カトレアに尽くされる彼女の影響が大きいと見られているが、多くはその事実を知らない。
近衛隊長グオーツを含む一部の者たちは、王がエルフの少女との出会いを通じて過去の聖王たちとの約束を果たそうとしていると解釈している。
しかし、この解釈はカトレアがグオーツに与えた手がかりによるものであり、彼自身はそれを自らの考えだと信じている。
この事態はカトレアの計画的な誘導によるもので、彼女の影響力が如何に大きいかを示している。
カトレアが流した偽の情報により、城内で仮面をつけるセラスの話題が広まっている。
この仮面は彼女が公の場に出るまでの措置として、カトレアが指示したものである。
カトレアはセラスに城内で比較的自由に行動することを許しており、時には城外への外出も許されているが、常に信頼できる者の随伴がある。
カトレアは、セラスが仮面をつけることによって無用な注目を避けることができると説明している。
さらに、カトレアの風変わりな行動は城内では「いつものこと」と受け止められており、彼女の非常識な行為も容認されている様子である。
セラスは主に学びと鍛錬に時間を費やしており、読書を楽しむことが多い。
カトレアは彼女に適切な読み物を選んで提供し、セラスの知識を広げている。
また、剣の稽古も行っており、一部の師からはその才能を認められている。
カトレアはセラスの精霊術の扱い方についても指導しており、隠すべき力と公にする力を区別している。
セラスの活動はカトレアの計画的な管理の下で行われており、彼女は順調に成長している。
時間が経過し、聖王の影響力が回復したことが大きな変化である。
近衛隊は近衛騎士団に改められ、その規模と質が向上した。
王の発言力が高まり、国民の支持も集めている。
一方で、悪徳貴族の一部が罰された。これらの変化は民に歓迎された。
もう一つの重要な変化は、ハイエルフの国の姫君、セラス・アシュレインの存在が国内で広く知られるようになったことである。
しかし、カトレアによるセラスの公開は失敗に終わったと自己批判している。
夜会でセラスの素顔が初めて公にされた際、その美貌に参加者たちは驚愕し、場は大きな騒ぎになった。
この出来事に対し、王が厳しく介入し、場の秩序を回復させた。
この事件を通じて、カトレアはセラスが公の場に姿を現すことに恐怖を感じるようになり、公の場に出る回数を減らすことを決意する。
また、王はこの事件を機に、ハイエルフとの関係改善という国の方針を貴族たちに再認識させた。
この一連の出来事は、王の権威の回復と、カトレアとセラスの絆の深まりを示すものであった。
カトレア・シュトラミウス
その夜、カトレアはセラスと共に第二私室で過ごしていた。
部屋は暗く静寂が満ちており、疲れ果てたセラスは隣でぐっすり眠っていた。
カトレアはセラスの美しさに感銘を受けながら、自らが感性が麻痺していたことに気づいた。
彼女は過去にセラスの美しさに気づいたが、今回の夜会で彼女の美しさが他の者に与える衝撃を思い出した。
その美しさは外見だけでなく、魂の形にも表れている。
ただし、カトレアはその美しさが問題を引き起こす可能性も認識しており、より大きな力が必要だと感じていた。
カトレアは自分がより強い力を必要としていることを認識し、自分のために動く組織の必要性を考えた。
王の力に依存することの限界を感じ、自分の立場を保持しながらも、王の影響力を弱めないように舵取りが必要だと考えていた。
また、セラスにこのことを伝えないことを決めた。彼女の生真面目な性格が父王に違和感を与える可能性を避けるためである。
セラス・アシュレインが公に素顔を晒した日のことは、「奇跡の夜」として広く語り継がれるようになった。
国内外から彼女に会いたいという申し出が多数寄せられたが、カトレアはセラスが男性への恐怖を克服するまで待ってほしいと断った。
また、オルトラも男性がセラスに近づくのを避けるよう配慮しており、ミシュル公爵の申し出も断られた。
この出来事は参加者たちによって自慢の種として語られ続けている。
4.ネーアの姫騎士
かつて「カトレア・シュトラミウスの第二私室」と呼ばれていた部屋は現在、彼女の従騎士であるセラス・アシュレインの私室として使われている。
セラスは、ネーアの王都の城の三階から城下を眺めており、夏風が窓掛けを優しく揺らしていた。
その日、カトレアが訪れてお互いに挨拶を交わし、カトレアは十八歳、セラスは十五歳であった。
ネーアで騎士になることができるのは満十五歳からであり、セラスはその日を待ち望んでいた。
新年祭の翌日に行われた叙任式では、セラスが特に注目を集めた。
公の場ではベールをかけて顔を隠しており、カトレアが彼の叙任の儀を行った。
セラスの美しさは更に加速しており、成人に近づくにつれてその魅力は増していった。
叙任式で、セラスは精式霊装を身につけており、その姿に列席者は感動したが、過去のような騒動は起きなかった。
聖王の近衛騎士が厳重に警護していたためである。
この日以降、セラスは「ネーアの姫騎士」と呼ばれるようになった。
ドロシーの名前が過去の事件と関連付けられたとき、セラスはそれを記憶していた。
セラス自身も聖騎士団長としての地位に就いており、その成功を周囲の支援に感謝していた。
セラスとカトレアは王都に戻る道中、ドロシーは他の騎士たちと話していた。
カトレアはセラスの人間性を評価しており、セラスは風の精霊の力で嘘を見抜く能力を身につけていた。
この力はセラスとカトレアだけが知っている秘密であり、カトレアはこの力を利用して前倒しで計画を進めることができると考えていた。
セラスはカトレアとの関係を大切に思い、オルトラ王に対しても適切な距離を保ちつつ、尊敬の念を忘れずにいた。
カトレア・シュトラミウス
カトレアは自室で書き物をしていた。彼女は長い間、マキアに水面下での準備を行わせており、その結果として整理された情報が紙束に記されていた。
マキアは地道な作業を黙々とこなし、カトレアは彼女に感謝している。
また、セラスの噓を見抜く力も計画を早める上で重要であった。
従騎士探しの名目で、候補者選びも進行中で、準備はほぼ整っている。
カトレアは「いよいよですわね」とつぶやきながら筆を止め、灯りを落とした。
セラス・アシュレイン
カトレアが聖騎士団の復活を願い出て、その団長にセラスを据えることをオルトラと話し合った。
王の私兵としての近衛騎士団が拡大する中で、聖騎士団の再設立は王家の権威を高める手段と見なされた。
また、セラスの安全を保つ意味でも団長の位置が適切だと考えられた。
この計画にはネーアの小さな国が大陸の政治状況において少しでも有利に立つことを狙う戦略が含まれている。
さらに、セラスにとっても、ハイリングスとのつながりを示すことで、聖騎士団長としての立場が国内外に示されることになる。
聖騎士団の復活は、オルトラによって受け入れられ、正式な発表が計画された。
式典が滞りなく進行し、聖騎士団は総勢八十名と発表された。
その中の十名が外向けの「広報部隊」としてお披露目され、これにはカトレアの意向で家の格や容姿が重視された者たちが選ばれていた。
式典ではセラスが最後に登場し、その美貌と存在感で場を圧倒した。
聖王オルトラの前で正式に聖騎士団長に任命され、拍手と感動で式は締めくくられた。
その後の歓待の宴では、セラスがさまざまなゲストに挨拶し、彼女の魅力と聖王の支持により、式典は成功裏に終わった。
聞き覚えのある名前に彼が反応し、モンク・ドロゲッティのことを振り返った。
セラスは逆恨みを受けていることを認め、もっと上手く対処できたかもしれないと反省した。
彼はセラスが他人のために怒りを感じることを評価し、セラス自身のためにも怒ることを勧める場面であった。
5.そうして彼女が、手に入れたもの
ネーア聖騎士団が正式に発足してから三年が経過し、セラス・アシュレインが団長を務めている。
この騎士団は実際に国内の治安維持に貢献し、民や貴族間の問題に積極的に介入して解決している。
カトレアの権限は姫としては限られているが、聖騎士団を通じて大きな影響力を持つようになった。
しかし、その権力の増加は一部の大貴族には快く思われておらず、聖王の権限強化に反発する声もある。聖騎士団は民からの人気も意識し、様々な支援活動を行っている。
特にセラスの人気は非常に高く、「ネーアの姫騎士」として知られるようになり、他国からの関心も高いが、その接触は限られている。
聖騎士団の組織としての自由さや報酬の良さもあり、メンバーからの評判は良いが、セラス自身は以前より感情を表に出さず、冷たい印象を与えることもあるが、団長としての威厳は確立している。
セラスはカトレアから水着を渡され、戸惑いを隠せない。カトレアは既に水着を着用しており、他の団員も水着姿になっていた。
水着の露出度について議論が交わされ、エスメラルダはセラスの気持ちを尊重し、無理をさせたくないと述べた。
ドロシーをはじめとする他の団員も、セラスを好意的に支持し、最終的にセラスは水着を着用することを受け入れる。
その日の夕刻、カトレアは厳粛な雰囲気で聖騎士団を率いて城内を歩いた。
この「練り歩き」はカトレアの意図で行われ、ネーア聖騎士団の象徴としての影響力を示している。
カトレア・シュトラミウス
カトレアは、セラスが異性との交流に慣れるため、意図的に無実の縁談をセットアップした。
この計画はオルトラにも伝えられ、彼も了承している。
セラスは結果的に相手の男に興味を持たず、カトレアはセラスが異性への免疫をつけることに成功したと感じている。
しかしその一方で、セラスが異性への見方を悪くしてしまったことに対しても若干の後悔がある。
カトレアは自己反省し、セラスが誰かに恋をする日が来たら、その恋愛を全力で応援しようと決意している。
セラス・アシュレイン
その年の冬、ミシュル公爵から聖騎士団に「蜃気楼の賛歌」と呼ばれる盗賊団の討伐依頼があった。
盗賊団はネーア国内を荒らし回っており、頭領ミロクは未だ実態が掴めず、勇血の一族から来たとされる。
さらには、戦神デッドを信奉する戦士も含まれているという。
情報によりミロクが廃城にいると聞き、カトレアは聖騎士団の派遣を決定した。
総勢二百名の聖騎士団から五十名がセラスの指揮のもと派遣され、蜃気楼の賛歌の根城がある可能性の高い場所を調査することになった。
セラスとマキアは下水道を通じて城内に潜入し、ミロクと直接対面した。
戦闘が発生し、セラスは戦いでミロクを倒し、その後、ドルーギン・デッド・ストリッドという別の敵も現れたが、セラスは彼をも制圧した。
ハッグ・ミシュル
ミシュル公爵は、オルトラを影から支配し、息子を次期聖王に据える計画を立てていたが、計画は失敗に終わった。
オルトラが予期せぬ回復を遂げ、ミシュル公爵の影響力は急速に低下した。
公爵はオルトラの変化の原因を探ろうとし、セラス・アシュレインに疑いの目を向けた。
公爵は自分の野望のために盗賊団を使い、セラスを殺害しようと画策したが、カトレアによって計画が暴かれ、最終的に失敗に終わった。
カトレアは公爵を反聖王派として摘発し、公爵の企ては完全に阻止された。
セラス・アシュレイン
ミシュル公爵領から戻ったセラスは王都でカトレアと再会し、感動的な抱擁を交わした。
カトレアはセラスの無事を心から安堵し、感情的になっていた。
二人は共に聖騎士団員たちと再び合流し、金眼の魔物たちとの戦いに臨む準備を整えた。
この戦いはオルトラが命じたもので、ネーアの民を守るためである。
一方、アライオンの女神が再び公の場に現れ、不穏な発言をしたことで、根源なる邪悪の降臨が近いのではないかという噂が広がった。
さらに、バクオス帝国がネーア聖国への侵攻を開始し、状況は更に緊迫していった。
エピローグ
バクオス侵攻が報じられた際、セラスは最後まで戦う覚悟を示したが、オルトラ王が〝人類最強〟の名を聞き全面降伏を決断した。
カトレアは迅速にセラスを城から脱出させる準備が整っていたが、セラスはカトレアたちが城に残る決断に反対した。
結局、カトレアがセラス一人だけを逃がすと述べ、自害することをちらつかせたため、セラスは脱出を受け入れた。
その後、光の精霊で顔を変え、殲滅聖勢に参加するふりをしてヨナト公国を目指した。
途中、名高い四人組の傭兵、聖なる番人に遭遇し、彼らから逃れながら西を目指した。
現在は女神討伐軍の野営地におり、戦いの前夜にセラスの過去話を聞いた。
セラスは自らの過去話を話し、その話を通じて心残りが消えたと感じた。
セラスの物語には、自己犠牲の強さが色濃く、彼女自身が言うように、他者に尽くす傾向が強いことが語られている。
最後に、セラスは自分自身の過去と向き合い、トーカとの関係においても自己主張を始めている様子が描かれている。
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