どんな本?
「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」は、篠崎芳によるライトノベルシリーズで、KWKMがイラストを担当している。
主人公は「 ハズレ枠」と称され召喚した女神に廃棄場に廃棄されてしまう。
廃棄された召喚者達を嬲り殺そうと襲って来たモンスターを【状態異常スキル】を駆使し、困難な状況を乗り越えていく。
物語は、主人公が経験値の取得とレベルアップを繰り返すことで自身の限界を超え、新たなスキルを獲得し、押し寄せる魔物を蹂躙していくところから展開。
このシリーズは、読者に強い印象を与えるストーリーとキャラクターで知られている。
また、このシリーズはオーバーラップ文庫から出版されており。
それぞれの巻は、主人公が困難を乗り越えて成長していく様子を描いている。
このシリーズは、ファンタジーと冒険の要素を組み合わせたエキサイティングな物語で、多くの読者から高い評価を受けている。
読んだ本のタイトル
ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 11
(英語名:Failure Frame: I Became the Strongest and Annihilated Everything With Low-Level Spells)
著者:篠崎芳 氏
イラスト:KWKM 氏
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あらすじ・内容
「ハズレ枠」と称されたスキルを駆使し、桐原拓斗すら退けた三森灯河。彼はS級勇者である高雄聖とその妹である樹を蠅王ノ戦団に加え、ミラ帝国そして最果ての国とともに女神ヴィシスが座すアライオンへと進軍を再開するのだった。
一方大魔帝の心臓を手に入れたヴィシスは、ついに己が目的を果たさんと動き出す。神族の世界の破壊。そして人類の粛清。この2つを掲げ、今や他の神族すら容易く凌駕するほどの力を得たヴィシス。それを止められるのは――。
「ヴィシスの最大の失敗は、トーカ――キミを怒らせてしまったことなのかもね」
かつて空気モブだったE級勇者が、絶対最強へと至る逆襲譚第11幕。
ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 11
プロローグ
三森灯河は高雄聖と十河綾香と共に桐原への対策を話し合い、【フリーズ】を使う提案を受け入れられた。聖はヴィシス暗殺の失敗を謝罪し、十河は自己判断で行動していることを示した。セラスは灯河を信じるよう十河に呼びかけ、灯河は桐原に【フリーズ】を施すこととなった。
1. 死闘のあとに
桐原への【フリーズ】実行後、十河は意識を失い、聖が彼女を休ませることにした。灯河はセラスの善性が十河に響いたと評価し、今後のヴィシスの動きを探るためエリカの使い魔を利用することを決定した。灯河と聖は協力して戦うことを確認した。
2. 飛び交う意思
灯河たちはミラ軍と合流し、狂美帝との会話でヴィシスの脅威が消えたことを確認した。浅葱は灯河たちに協力を表明し、灯河もその信頼を受け入れた。彼らは今後の戦いに向けて準備を進め、再び進軍を開始した。
3. 最強へと至る道
灯河たちはミラ軍と合流し、混成軍が後退を始めた。十河綾香の回復を見守りながら、灯河はベインウルフとの再会で十河が前向きになったことに安心した。彼らはヴィシスの動向を監視しつつ、戦いの準備を進めた。
4. 白き女神と叛逆者
灯河たちはミラ本軍と共に進軍を続け、ヴィシスが聖体軍を送り出したことを知った。灯河はその脅威に対抗するため、セラスや仲間たちと協力して戦いの準備を進めた。ヴィシスとの戦いが迫り、緊張が高まった。
5. つながりてゆくもの
灯河はロウムたちの野営地で戦いの成果を報告し、再びミラ本軍に合流した。ニャンタンたちがヴィシスの邪悪さを証明する証拠を持って合流し、混成軍が後退する中、ネーア軍が寝返る予定が明らかになった。灯河たちはその日を迎え、戦いの準備を進めた。
6. エピローグ
灯河は新しい蠅王の装備を受け取り、戦いの準備を整えた。狂美帝の指示で出陣前の言葉を求められた灯河は、「この世界を救うための戦いを始める」と宣言した。灯河の復讐の旅が最終段階に入り、決戦の時が迫っていた。
感想
三森灯河がアライオンの王都にたどり着き、概念魔法「神創迷宮」に足を踏み入れるシーンは非常に緊迫感があった。
桐原が封印されることに対して寂しさを感じた。
彼の行動は面白く、この物語においてユニークなキャラクターであった。
女神ヴィシスの本性が明らかになり、彼女の邪悪さは予想以上であった。
人間を玩具にし、苦しませることを楽しむヴィシスは、神というよりも悪魔だと感じた。
ヴィシスが天界へのゲートを開き、復讐を企てたが、聖眼により計画が崩れたシーンは印象的であった。
ヴィシスが多くの手下を失い、かつての圧倒的優位から一転して凋落した様子は痛快であり、彼女の最終的な敗北を期待しながら物語の展開を楽しむことができたが、本人(神)は勝てると思ってるので何か隠し球があるのだろうと警戒してしまう。
一方、灯河達の反ヴィシス勢力が集結し、最終決戦に向けての準備が整う様子が描かれており、物語のクライマックスに向けての期待が高まった。
この物語を通じて、善と悪の対立や復讐のテーマが強く描かれており、非常に満足感のあるシリーズ作品である。
灯河たちの成長や絆、ヴィシスの計画に対抗するために結集するキャラクターたちの姿勢が描かれており、物語全体にわたってクライマックスへの緊張感と、これまで苦労したキャラクター達が報われるシーンが交錯していた。
本書も、緊迫感と感動が融合した素晴らしい作品であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
プロローグ
三森灯河は、高雄聖と十河綾香との間で桐原に【フリーズ】を使う件について話し合っていた。灯河は桐原の治療を行ってから【フリーズ】を使うことを提案した。聖は、三森が嘘をついていないことを確認し、説得力があると判断した。十河は、桐原との協力が難しいと認識し、三森の案に賛同した。
聖は十河に対し、自分がヴィシス暗殺に失敗したために負担をかけたことを謝罪し、十河は自分の判断で決めたことだと答えた。十河は、聖に頼りながらも自分の判断で行動していることを示した。
セラス・アシュレインも加わり、灯河を信じるよう十河に呼びかけた。セラスは灯河が多くの善性の者を救ってきたことを語り、今回の選択も正当なものであると信じていた。
十河は最終的に【フリーズ】を使うことを了承し、桐原の傷を治療してから実行する条件で灯河の提案に同意した。聖もその条件を受け入れ、灯河は桐原に【フリーズ】をかけることとなった。
灯河はセラスが桐原の傷の手当てを行う間、傍で待機していた。セラスは疲労にもかかわらず、文句を言わずに応急処置に集中していた。その姿勢が灯河の胸を打った。セラスの言葉は真っ直ぐで、善性の者に最も響くものであった。
灯河は、もし十河綾香とセラス・アシュレインがコンビを組むべきであれば、この物語はもっと清々しいものだったかもしれないと考えた。
ムニンとスレイが互いを励まし合う中、セラスの手当てが終わり、桐原拓斗は【フリーズ】を施され、300日間氷の中で眠ることとなった。
1.死闘のあとに
桐原に【フリーズ】がかけられた後、十河は聖の胸の中で意識を失った。聖は、張り詰めていた緊張が解けたためだろうと述べ、彼女をしばらく寝かせることにした。セラスは灯河に対し、独断で十河への説得を試みたことを謝罪しようとしたが、灯河はその行動を評価し、正しい判断だったと伝えた。
灯河は、セラスの善性が十河に響いたと考えた。桐原の傷の手当てが終わった後、桐原は氷の中で300日間眠ることとなった。
灯河と聖は今後の方針について話し合い、ヴィシスの動きを探るためにエリカの使い魔を利用することを決定した。また、内部協力者であるニャンタン・キキーパットの存在が重要であると認識し、彼女を通じてクラスメイトたちを救出する計画も立てた。
聖は、十河の純粋さが邪悪に利用される可能性があると指摘し、彼女を保護する必要があると述べた。また、十河にヴィシスの全貌を明かさなかった理由も説明した。
灯河は、復讐の旅において自己都合で進めてきたことを認め、結果を出し続けることの重要性を強調した。聖は、灯河が思いやりを持っていることを理解し、そのエゴが失敗の要因となることを懸念していたが、灯河はそれを肯定し、成功させれば問題ないと返答した。
二人は、今後の戦いに向けて協力を続けることを確認し、次の行動を計画した。
聖との会話を終えた後、灯河はセラスたちの方へ向かおうとしたところで、樹が近づいてきた。樹は桐原に変化がないことを伝え、委員長が眠っていることを報告した。樹は灯河の外見や話し方に違和感を覚え、本物かどうかを確かめようとしていた。灯河が仮初めの自分を演じていたことを知った樹は、その演技力に感心した。
その後、樹はセラスの美しさに感動し、彼女の立ち居振る舞いや性格を称賛した。聖は美の基準について詳しく説明し、樹は混乱した様子を見せた。灯河は、美人は中身も重要だと要約し、樹は納得した。
ムニンが輪に加わり、自身も美人かと尋ねたが、樹は彼女を「気のいいお姉さん」と評価した。ムニンは樹を抱きしめ、樹は苦しそうにした。
灯河はピギ丸を紹介し、聖と樹は興味深げにピギ丸を触った。樹は、灯河が可愛い仲間と旅をしていたことを羨ましく思い、灯河はそれに応えた。
この場面では、キャラクター同士の関係が深まり、灯河が本来の自分を見せ始めた。
偽の首とセラスの偽物を含む輸送部隊が到着した。灯河は桐原戦で破損した蠅王のマスクの代わりにムニン用のマスクを被っていた。軍魔鳩で輸送部隊に要点を伝えた後、狂美帝へ新しい軍魔鳩を飛ばした。全員が馬車に乗り込み、広々とした内部で休息を取ることにした。樹は寝袋に入りすぐに寝付き、聖も椅子に座ったままうたた寝を始めた。
灯河はセラスとムニンに高雄姉妹の印象を尋ね、二人とも信頼できると評価した。ムニンも寝袋に入り、セラスも【スリープ】で休息させた。灯河は一人、桐原の攻撃で裂けたマスクを眺めていた。
馬車が走り続ける中、高雄姉妹と蠅王ノ戦団の面々が目を覚ました。樹はエリカの未完成の魔導具の件について話し、聖はその魔導具が神族の能力を阻害する可能性があることを説明した。灯河は往復の時間的余裕があるかを考えた。
樹は灯河に廃棄された時のことを謝り、灯河は気にしないように言った。高雄姉妹のユニークアイテムについて話した後、灯河は自分の魔法の皮袋の能力を説明し、樹は驚いた。駄菓子を皆で食べることになり、聖やセラス、ムニンも楽しんでいた。
移動中、樹は灯河とセラスの関係について質問し、灯河は正直に話した。樹はその関係に驚き、顔を赤らめた。馬車は狂美帝のいるミラ軍の野営地に到着した。
【安智弘】
時は少し遡り、大街道を外れた二台の馬車が北を目指していた。各馬車には様々な年齢の十数名の男女が乗っており、安智弘は先頭の馬車の中にいた。正午を回り、快晴の空が見える中、安の対面に座る中年の女性は不安そうな表情をしていた。
彼らは長い間馬車に揺られ、口数も減り、沈黙が増えていたが、その沈黙が破られた。「ミラがアライオンと戦争を始めたこと」や「謎の白い人間の群れが現れたこと」などが話題に上った。安は顔を伏せがちに話を聞いていた。
ミラの狂美帝への信頼は厚いが、全員がそうではなく、避難を選ぶ者たちもいた。彼らの町は白い人間の群れに襲われ、多くが南の帝都へ逃れたが、ここにいる者たちはヨナトへ避難しようとしていた。
安は、彼らと一緒に旅をすることになり、その間にこの世界の人々と触れ合おうとしていた。夜の野営時には第六騎兵隊での拷問の記憶がフラッシュバックし、うなされたが、彼らは安を心配してくれた。
馬車内では女の子が安にパンを差し出し、安はその善意を受け取った。周囲の人々も安に優しく接し、安は少しずつ元気を取り戻していた。女の子の名前はゆーりで、彼女は無邪気に安に笑いかけた。
馬車が北を目指している最中、金眼の魔物が現れたため、馬車は停止した。馬車の持ち主リンジが傭兵たちと共に外に出て戦う準備をした。安は戦おうとしたが、怪我のため止められた。元傭兵が「馬車内を守る役を頼む」と安に言い残し、外に出て行った。安は自分が勇者ではないと感じ、馬車内に留まった。
馬車内では、ユーリという少女が母親と共に不安を感じていたが、母親が「笑顔の魔法」を使ってユーリを安心させた。安はその様子を見て、この世界の人々の優しさに触れ、安心感を覚えた。
外での戦闘は無事に終わり、馬車は再び北を目指して進んだ。襲撃による被害はごく軽い怪我のみで、全員が無事であった。
2.飛び交う意思
野営地に到着後、灯河は馬車から降り、セラスたちを馬車に残したまま狂美帝の幕舎に向かった。狂美帝との会話で、蠅王のマスクはセラスが修繕してくれたものであると説明した。狂美帝は灯河の報告を受け、キリハラの脅威が消えたことに満足した。灯河は、セラスやムニン、高雄姉妹とともに今後の計画について話し合った。
狂美帝は、蠅王ノ戦団がアヤカ・ソゴウと高雄姉妹の存在を隠すよう指示した。また、最果ての国との連携を強化するため、使者を送ることを決定した。灯河は自身の素顔と本来の名前「トーカ・ミモリ」を狂美帝に明かし、信頼を示した。
会話の最後に、狂美帝はセラス・アシュレインに混成軍との衝突を避ける方法を試すよう指示した。すると、外で鈴の音が鳴り、アサギ・イクサバとコバト・カシマが到着したことが告げられた。
異世界召喚後、戦場浅葱は浅葱グループの無事と帰還をミッションに設定し、その達成のために行動していた。彼はミッション達成のために自らの潔白を証明し、周囲の疑念を晴らそうとした。浅葱にとって、この異世界での出来事は一つのゲームであり、そのゲームをクリアすることが彼の動機であった。
浅葱は灯河の正体を見抜くための仕掛けを逆に利用し、自分の言葉が真実であることを証明した。彼は、鹿島や灯河との会話を通じて、自分がヴィシスの間者ではないことを証明し、灯河たちに協力する意志を示した。
その後、灯河は十河綾香を説得し、高雄姉妹も彼に協力することを決意した。浅葱は今後の戦いで自分たちが協力できることを伝え、灯河の存在を他のメンバーにも知らせるように求めた。そして、浅葱は灯河たちに期待を寄せながら、戦いが続くことを見越して次の行動に移った。
浅葱が幕舎を出た後、聖は灯河に浅葱の信頼性について尋ねた。灯河は、浅葱が追放帝を殺したことから、彼がヴィシス側ではないと判断し、裏切りの可能性は低いと考えた。しかし、完全に信頼するのは難しいとも述べた。聖も同意し、浅葱が勝ち馬認定を続けるためには、優勢な状況を維持する必要があると述べた。
その後、樹が浅葱の言葉の難解さについてコメントし、聖が浅葱のサブカルチャーへの知識の深さに触れた。鹿島は灯河に感謝し、過去の無視した行動を謝罪した。灯河はそれを受け入れ、鹿島に責任を感じる必要はないと慰めた。
一方で、樹と聖は元の世界での交友関係や恋愛について話し、樹が姉である聖に対する特別な愛情を持っていることを示した。聖はそれを微笑みながら受け入れた。
灯河は一度、三森灯河として浅葱グループと会った。元の世界にいた頃のモブ感は再現せず、浅葱の事前情報のおかげで変貌への反応は薄かった。何人かは廃棄前の態度や罵声について謝罪し、灯河はそれを受け入れた。鹿島は浅葱グループに残ることを選び、灯河も彼女の意思を尊重した。
灯河たちは今後の準備を進めるため幕舎に集まり、狂美帝が基本方針を確認した。ミラ本軍に合流し、アライオンを目指して進軍する計画を立てた。途中の砦攻めは別軍を使い、最果ての国の援軍と合流する予定であった。
ヴィシスの動向についてはまだ大きな動きがなく、灯河は使い魔からの情報を元に状況を報告した。ヴィシスの思惑が見えない中、蠅王装のレプリカや蠅騎士装を準備し、布石を打つことを計画した。
高雄姉妹は蠅騎士装を纏い、灯河の指揮の下で働くことを約束した。準備が整い、狂美帝率いる援軍はミラ本軍との合流に向けて野営地を発った。
灯河たちは野営地を発って五日後、ミラ軍と共に行軍を続けた。灯河は蠅王装を身につけ、スレイに乗って周囲を見渡しながら進んだ。セラスが白馬に乗り、最果ての国の兵団が協力的に応じたことに触れた。土地譲渡の提案が効果を発揮したようであった。
ムニンと樹は馬車の中で過ごし、二人の仲は良好であった。浅葱の印象について、セラスは苦手意識を持ちつつも理解しようとしていた。
十河綾香はまだ目覚めておらず、狂美帝が用意した魔導具で栄養を補助していた。セラスは灯河に十河の戦才について尋ねられ、時間稼ぎはできるが勝利は難しいと答えた。二人は十河の眠る馬車を見つめ、目覚めた後の対応について考えた。
セラスは十河と話をしたいと願い、彼女の真面目さや苦しみを理解しようとしていた。灯河はセラスを守る決意を新たにし、セラスもまたカトレアを想いながら進軍を続けた。
【カトレア・シュトラミウス】
カトレア・シュトラミウスは、ミラからの使者が持参した書状を幕舎で読んでいた。書状にはセラスの筆跡があり、独特な文字の特徴を持つ暗号的な内容が含まれていた。カトレアはその暗号を解読し、セラスからのメッセージを読み取った。
セラスはカトレアが敵に捕まる案を破棄するよう伝えていた。カトレアはこの情報に基づき、混成軍を少しずつ東へ後退させる計画を立てた。彼女の目的はネーアを守ることであり、敵の勢力を分断し、ミラ軍に寝返ることで戦局を有利に運ぼうとしていた。
カトレアはネーアの代表としての威光を利用し、混成軍を後退させつつ他国の軍とも交渉する意向を示した。彼女はミラ軍との合流を目指しつつ、セラスと共に新たな戦略を練り上げていった。
3.最強へと至る道
灯河たちは東へ移動し、ミラの本軍と合流した。同時に、カトレアの指示で混成軍が後退を始めた。カトレアからの返事があり、暗号を用いた結果、カトレアの説得に成功したことが分かった。
灯河はセラスと共に進軍しつつ、十河綾香の精神状態を心配していた。三日前に十河が目覚めたが、精神的に不安定であり、聖が付き添って治療にあたっていた。十河は自己嫌悪に陥っており、精神的なサポートが必要だった。
ある日、狂美帝の計らいで、十河にとって恩人であるベインウルフが到着した。ベインウルフとの再会により、十河は少しずつ前向きな気持ちを取り戻していった。ベインウルフは十河に過去の言葉を思い出させ、信じて祈ることの大切さを伝えた。
灯河は、十河の精神状態を考慮しつつ、彼女の回復を見守ることにした。灯河は善人には善人の言葉が届くと感じており、セラスや聖との関係を通じてその重要性を再認識した。
灯河たちは東へ移動し、ついにミラの本軍と合流した。混成軍はカトレアの指示で後退を始めた。カトレアからの暗号付きの返事により、彼女の説得に成功したことが確認された。灯河たちはアライオンを目指して進軍を続けた。
一方で、ヴィシスが聖体軍を送り出してきたという情報が届いた。聖体は王都エノーの王城付近に集結しており、さらに増える見込みがあると予想された。狂美帝は最果ての国に援軍を頼んだことが正解だったと感じていた。
ウルザの王都モンロイは陥落し、ウルザの魔戦王が早々に逃亡したことで、ウルザ兵の士気は低下した。ミラ軍は大した戦闘もなくウルザに勝利した。混成軍はさらに後退を続け、戦力的にミラ軍に対抗できない状況であった。
灯河は狂美帝に、魔戦王の逃亡を広めるよう頼み、ウルザの民に悪感情を抱かせた。ウルザの砦攻略も順調に進み、最果ての国の援軍も近くまで来ていることが確認された。ミラ本軍は明朝、再びアライオンを目指して進軍を続けることとなった。
【セラス・アシュレイン】
セラスたちは激しい雨の中、モンロイへ入城した。行軍中の雨は体力を奪い、セラスもひどく濡れたが、かつての逃亡生活のおかげで耐えることができた。狂美帝は兵士たちを休ませるために城の浴場を提供し、セラスたちは感謝しつつも湯浴みを楽しんだ。
セラス、ムニン、高雄姉妹が浴場でリラックスしている中、イツキがムニンと親しげに接していた。ヒジリはセラスに十河の看病を任せられるベインウルフの存在を感謝し、セラスにトーカの支えになることをお願いした。セラスはヒジリに対して、自分の至らない部分を補って欲しいと頼み、二人でトーカを支えることを約束した。
ヒジリの理知的な性格にセラスは感心し、ヒジリもまたセラスの純粋さに共感していた。二人の絆が深まり、共に戦いに臨む決意を新たにしたのである。
セラスたちは浴場から出た後、身体を拭き、清潔になった衣類を身につけた。ムニンとイツキも談笑しながら服を着ていた。ヒジリはセラスに向かって、三森君にとってセラスはかけがえのない存在であり、その代わりは誰にもできないと伝えた。セラスの特別な存在感を認め、彼女を守ると約束した。
ヒジリは剣の腕を学びたいと述べ、さらに精霊についても興味を持っていることを伝えた。セラスはヒジリの申し出を喜んで受け入れ、後で精霊について教えることを約束した。
セラスはヒジリの落ち着いた態度に感心し、憧れを感じていた。
【三森灯河】
灯河たちはモンロイの外壁近くで出立の準備を整えた。ミラ本軍は占領後の休憩と補給を終え、モンロイを離れる準備が整った。灯河は朝日を浴びる外壁を見上げ、ネーア聖国を抜けてアライオンに向かう道のりを思い描いた。狂美帝と話す中で、使い魔や間者の情報が途絶えていることが話題に上がったが、ヴィシスが使い魔を使えないことも確認された。
その時、伝令がパヌバ砦が金眼と人面種に襲われたと急報を持ってきた。灯河は、人面種が魔帝器の影響で動き出した可能性があると推測し、最果ての国の援軍が襲われる危険があると警告した。狂美帝も同意し、軍魔鳩で援軍に危険を知らせ、南下させる方針を立てたが、灯河は人面種の対処を申し出た。
セラスも同行し、ムニンは高雄姉妹に託されることになった。灯河はみんなに事情を説明し、無事に戻ることを約束して出発した。
灯河たちはミラ本軍を離れ、目的の砦を目指して西へ向かった。深夜、道中でミラの兵士たちと遭遇した。兵たちは負傷し、生気を失っていた。指揮官のロウム伯爵は、パヌバ砦を攻めていた部隊の一員であり、金眼と人面種の襲撃を受けて撤退したと語った。兵たちは絶望しながらも、ロウムの指導のもとで生き延びていた。
灯河はロウムに対し、彼らの努力を称賛し、励ました。灯河は砦に集まる人面種を一掃する計画を説明し、彼らが最果ての国の援軍と合流する必要があると伝えた。ロウムはその指示に従い、砦の情報を提供した。
灯河はエリカの使い魔を偵察に使おうとしたが、連絡が途絶えていることに気づいた。情報を得た後、灯河たちは再び砦を目指して駆け出した。
灯河たちはミラの本軍を離れ、パヌバ砦を目指して西へ向かった。丘の上から砦を見下ろし、多くの金眼の魔物と人面種が周囲をうろついているのを確認した。これらの魔物たちは、新たな獲物を求めて外に出てきた様子であった。
灯河とセラスは林を通って砦に接近し、途中で金眼の魔物を倒しながら進んだ。砦付近には兵士の死体が散乱し、生存者の悲鳴が響いていた。生存者はおそらく遊び道具として生かされていたのである。
灯河は人間の邪悪さに触れる機会が多くなり、感覚が鈍っていたことに気づいた。金眼の魔物や人面種は人間を遊び殺す存在であり、灯河はそのことを思い出し、すべてを殺す決意を固めた。セラスも同様に冷ややかな怒りを抱き、戦闘の準備を整えた。
二人は人面種と金眼の魔物を全て蹂躙し、彼らを灯河のエサにすることを誓った。
灯河たちは林を抜け、パヌバ砦に近づくと、一匹の人面種が待ち構えていた。起源霊装の光に気づかせたためである。その人面種は平らな身体に無数の小さな足があり、複数の腕が天に向かって伸びていた。灯河とセラスは連携してその人面種を倒し、青い血が降り注ぐ中、灯河はレベルアップした。
続いて二足歩行の人面種が現れたが、灯河は再び【バーサク】のコンボでこれを撃破した。さらに大型の金眼の魔物も【ポイズン】で混乱させ、人面種と金眼の魔物を次々に倒していった。
最後に、ブリッジ姿勢の人面種がセラスに執着して襲ってきた。セラスは精霊剣を構え、灯河の助けを受けながら戦う準備を整えた。セラスは自分が灯河に選ばれたことを感謝し、彼との出会いが良かったと感じていた。
灯河たちは三匹目の人面種を倒し、魔群帯に入った。後方から金眼の群れが追ってきており、前方からも集まってくる気配があった。灯河とセラスは戦闘を続け、灯河のレベルが上がった。
灯河はさらにレベルを上げるため、人面種を狩ることを決意した。彼のレベルはすでに3121に達していた。セラスはそのサポートをし、金眼や人面種との戦闘を続けた。セラスは灯河の成長を支えるため、全力で精霊剣を振るうと誓った。
灯河とセラスは金眼や人面種を次々と倒し、順調に進んでいた。セラスの起源霊装が大きな助けとなり、連携して敵を圧倒していた。灯河は、今までの戦闘経験や邪悪な存在との対峙から、邪悪の性質や思考を理解し、それを利用して戦っていた。
灯河は、自分たちが強く成長していることを実感していたが、油断せず最悪の可能性を常に想定し続けるべきだと考えていた。最後に、灯河はセラスに向かって、自分たちが最強になれると確信していた。
4.白き女神と叛逆者
灯河が出立した後、ミラ本軍はモンロイから東へ進み、短い休息を取っていた。高雄聖は灯河の代理として動き、主に狂美帝からの報告や相談を受けていた。彼女はアライオン側の間者の尋問にも立ち会い、真偽判定で有益な情報を引き出していた。
十河綾香は竜殺しのベインウルフの支えで回復しつつあったが、完璧な状態ではなかったため、聖が夜間は一緒に過ごしていた。綾香はクラスメイトを心配しており、聖は彼女の精神状態を見守っていた。
浅葱グループは綾香と再会し、彼女を受け入れた。彼らは今後、聖の管理下で別働隊として動くことになった。聖は灯河の期待に応え、狂美帝に協力することを誓った。
その時、ヨヨ・オルドがアライオンの王都からの報告を持って現れた。ニャンタン・キキーパットが妹たちと共に脱出し、ミラの間者と合流していた。エリカの使い魔が負荷により連絡が途絶えていた理由も判明した。ヨヨの報告には想定外の情報が含まれており、狂美帝と聖はその内容に驚いた。
【ニャンタン・キキーパット】
ニャンタンがアライオン王城の玉座の間で女神ヴィシスの話を聞いていた。ヴィシスは上機嫌で玉座に座り、アライオンの王は不在であった。ヴィシスは大魔帝が倒され、無効化の禁呪が使用可能になったことを知り、神族の世界を叩き潰す計画を語った。彼女は主神を倒し、自分が神界を掌握することで、人間を玩具にし、苦しませることを楽しみにしていた。ヴィシスは、自分の計画が成就すればこの世界の人間を一割に減らし、苦しませながら殺す計画を持っていた。ニャンタンはその話を聞きながら、ヴィシスの邪悪な考えに驚愕しつつも、表情には出さなかった。
ニャンタンはヴィシスに連れられ、城の地下に隠された巨大な空間に入った。そこには白い巨人が立ち並び、模造聖体と呼ばれる存在が多数いた。ヴィシスはニャンタンに、この地下遺跡が古代文明の建造物であり、自らが作り上げた装置と聖体を見せた。ヴィシスが装置を操作していると、突然ロキエラという女神と彼女の神徒たちが現れた。ロキエラはヴィシスに、根源なる邪悪の干渉値の上昇について説明を求めた。ヴィシスは無視しようとしたが、結局ロキエラたちと戦うことになった。
ヴィシスとその神徒たちが城の地下で戦闘を繰り広げていた。トールオンとテュルムクが戦いに敗れ、アルスとヨミビトが勝利した。ヴィシスは強化された神徒たちを使ってロキエラとヴァナルガディアを圧倒し、ロキエラの頭部を手にしたヴィシスは、彼女を嘲笑しながら無残に扱った。ヴィシスは対神族強化聖体を使い、天界に攻撃を仕掛ける計画を明かした。そして、彼女は聖体の完全起動とゲートの準備を進めながら、西の敵たちを警戒させるように指示を出した。ヴィシスは苦しみと憎しみを広めることを宣言し、その目的のためにすべての存在を利用しようとした。
ヴィシスが地下空間に籠もり始めた。聖体とゲートの起動には時間がかかるため、ニャンタンは比較的自由に行動できた。ヴィシスはニャンタンに代理を任せたが、注意を払わなくなっていた。ニャンタンはヴィシスを止める機会を見つけようとしていた。
ある日、ロキエラが幼児の姿でニャンタンの元に現れ、ヴィシスの計画を阻止するために協力を求めた。ロキエラはヴィシスが蠅の王と狂美帝を恐れていることを指摘し、人間だからこそヴィシスに勝てる可能性があると説得した。
その後、ヒジリからの使い魔がニャンタンに接触し、脱出の計画を伝えた。ニャンタンは勇者たちを集め、タモツ・ザクロギを連れて脱出しようと決意した。ヴィシスの計画を阻止するために、蠅の王と合流することを目指した。ニャンタンはロキエラを革袋に入れて護りながら、行動を開始した。
【高雄聖】
高雄聖はヨヨからの報告で、ヴィシスではない神族、ロキエラがニャンタンに同行していることを知った。ロキエラはヴィシスとの戦いに敗れ、弱体化しているが、対ヴィシスに有益な情報を持っているという。聖はこれを信じ、ニャンタンたちを助けるために人を送ることを決意したが、適任者を悩んでいた。
その時、聖の双子の妹、樹が迎えを任せてほしいと名乗り出た。聖はその申し出を喜びつつも、樹の提案に感謝した。そこへ十河綾香が現れ、自分の固有スキルである銀馬を使えば最速で到達できると申し出た。聖は彼女の申し出を受け入れ、綾香に感謝の意を伝えた。
綾香は自身の状態が万全ではないことを認めつつも、仲間を助けるために全力を尽くすと決意を固め、聖は彼女に頼ることを決断した。聖は綾香に感謝し、彼女の手を取り、協力を求めた。
【ニャンタン・キキーパット】
ニャンタン・キキーパットは馬上から後方に砂塵を見て、追っ手が差し向けられたことを知った。この地域は枯れた地であり、かつては川があったが、今は廃れている場所である。ニャンタンたちはウルザを目指して進んでいたが、追っ手が迫っていた。
三台の馬車に乗るニャンタンたちは、前方に砂塵を上げて進む追っ手に気づき、道を塞がれてしまった。ニャンタンは、勇者たちやミラの間者たちとともに戦闘態勢に入った。妹たちを守るため、ニャンタンは決意を固めた。
敵の先頭にはアライオン騎士団長ヒンキ・キュルケイムがいた。ヒンキはヴィシスに忠誠を誓い、ニャンタンたちを侮辱した。彼はヴィシスから半神の力を得ることを期待していた。
その時、銀の球体が空中に現れ、破裂し、銀の液体が武器の形を成した。蠅騎士アヤカが現れ、聖体たちを一瞬で蹴散らした。彼女はニャンタンに感謝の言葉を述べ、アライオン騎士と聖体たちに立ち向かった。
アヤカは圧倒的な力で聖体たちを次々と倒し、ニャンタンは彼女に感謝しつつも、他の勇者たちとともに戦いに参加した。アヤカの圧倒的な力により、ニャンタンたちは再び希望を持つことができた。
【三森灯河】
灯河は森から出て平原に出た。セラスとスレイが指定通りの場所で待っていたが、灯河は足取りが重かった。セラスは気づいて駆け寄ろうとしたが、灯河は大丈夫だと手を上げて伝えた。だが、灯河は突然膝を折り、そのまま倒れ込みそうになった。その時、木の葉が破裂するような音がし、6メートルほどの中型人面種が襲ってきた。
灯河は迅速に【パラライズ】を使い、人面種を麻痺させた。セラスは駆けつけようとしたが、灯河は演技で弱ったふりをしており、人面種を簡単に倒した。実際には足がそこまでふらつくことはなく、灯河は意図的に弱ったふりをして人面種をおびき寄せたのである。
灯河はセラスに感謝し、セラスも安心した。スレイも目を覚まし、灯河は少し休めたかと尋ねた。灯河たちはその後、魔帝器が使用された砦に立ち寄り、残っている人面種や生存者がいないか確認した。砦の中はひどい有様であり、生存者はいなかった。
灯河はその後、蠅王のマスクとローブの状態を確認しながら、戦いの中で大分ボロボロになってしまったことを述べた。セラスもローブの修繕が限界に近いことを苦笑しながら認め、灯河は新しい装備が必要だと考えた。
灯河はロウムたちの野営地へ戻り、戦いの成果を伝えた。皆驚き、英雄のように扱われたが、生存者を連れ帰ることはできなかった。軍人たちは悲しみつつも先へ進む決意をしていた。灯河はリィゼたちに進軍の停止解除を軍魔鳩で伝え、偵察を続けるように指示した。
その後、灯河は休まず黒馬に乗り東へ向かった。セラスと共にスレイに乗り、灯河は少し眠ることにした。セラスの背に身を預け、安心感を感じながら眠りにつこうとした時、セラスから「大好きです、トーカ殿」と言われ、灯河も同じ気持ちであることを伝えた。
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【トーカ・ミモリ】
LV 5999
HP: +17997
MP: +197967
攻撃: +17997
防御: +17997
体力: +17997
速さ: +17997
賢さ: +17997
称号: E級勇者
5.つながりてゆくもの
灯河はロウムたちの野営地へ戻り、砦での戦いの成果を報告した。ミラ軍の兵士たちは彼の功績に感激し、敬意を表したが、生存者は連れ帰れなかった。灯河はリィゼたちに進軍再開を伝え、偵察を続けるよう指示した。その後、灯河は休まずスレイに乗り、セラスと共に東へ向かった。
途中で意識を取り戻し、ミラ本軍に合流する。狂美帝やムニン、聖が出迎え、灯河はセラスとスレイを休ませるよう指示した。聖からニャンタンが妹たちやクラスメイトを救出し、ヴィシスの邪悪さを証明する証拠も押さえていることを聞いた。さらに、ヴィシスに敵対する神族を連れているという驚きの情報も得た。
混成軍は後退し続け、ミラの将や兵が復帰しているため、戦力が増えていた。聖は、ネーア軍が明日寝返る予定であることを説明し、灯河はその方角を見つめた。「ともあれネーア軍がこっちに寝返るのは――いよいよ明日、か」と呟いた。
翌朝、最果ての国の先行組が灯河たちと合流した。リィゼロッテ・オニクを始めとする多くの仲間が到着し、再会を喜び合った。その中には、ハーピーのグラトラや青肌ケンタウロスのキィル・メイルも含まれていた。
ニャキも合流し、久々に灯河やセラス、ムニンと再会し喜びの涙を流した。その後、ニャキの姉であるニャンタン・キキーパットも到着し、感動的な再会を果たした。ニャンタンは妹たちとも再会し、皆で涙を流しながら抱き合った。
十河綾香も無事に戻り、灯河に謝罪するつもりだったが、灯河の指示で聖のもとへ向かい、再会の言葉を交わした。聖は十河の功績を称え、感謝の意を表した。
【女神ヴィシス】
その日の朝、ヴィシスは王城の外で準備が整ったことを確認していた。彼は天界へのゲートを開く装置を手にし、地下空間の天井を開かせるための魔素を注入した。巨大な聖体が次々と現れ、その背に翼が生えた。ヴィシスはその光景に感動し、人間への怒りを忘れさせた。
ヴィシスは堕神ヲールムガンドや初代勇者アルス、虚人ヨミビトと共に天界への復讐を誓っていた。ゲートが開かれ、巨聖体たちが飛び立つが、天界の聖眼がゲートを破壊した。ヴィシスは計画が崩れたことに憤りを感じたが、根源素がまだあるため再挑戦を決意した。
ヴィシスは対神族強化の聖体軍を起動し、聖眼を破壊するための行動を指示した。また、蠅王と狂美帝を足止めするための聖体軍を振り分け、邪魔させないようにする計画も立てた。最後に、ヴィシスは笑顔で手を打ち合わせ、自分が最終的な勝者になると信じていた。
【三森灯河】
灯河たちが和やかに会話をしている時、巨大な光線が上空を突き抜けた。それはアライオンの方向であり、狂美帝は「聖眼が発動したのか」と言った。
聖眼はヨナト公国の王城にある古代魔導具で、一定以上の高度に存在する金眼を攻撃する機能を持っていた。聖眼の存在はヨナトの重要性を高め、ヨナト国内ではその一族が信仰されるようになり、大公家に代わり国を治めるようになった。
十河の袋から現れた小さな少女ロキエラは、ヴィシスが天界へのゲートを開いたために聖眼が発動したと説明した。ゲートは天界と地上を結ぶ特別な通路だが、正規の手続きを踏まずに開いた場合、聖眼によって破壊される。ヴィシスはその知識を持っていなかったため、ゲートが破壊されたのだ。
ロキエラは、ヴィシスが聖眼を停止させる前にヴィシスを倒す必要があると語った。ニャンタンは証拠の入ったスマホを各国に送るための準備を進め、クラスメイトたちも協力した。特級軍魔鳩を使って証拠を運び、各国に知らせる計画であった。
灯河は空を見上げ、希望の種が芽吹くことを祈った。
【カイゼ・ミラ】
ミラの帝都ルヴァでは、処刑された剣虎団の首が晒されていた。剣虎団は白き軍勢を操りミラを混乱に陥れたとして処刑されたが、実際には偽物であり、団員たちは生きていた。彼らは狂美帝によって捕らえられ、地下牢で保護されていた。
宰相のカイゼ・ミラは地下牢でマグナルの白狼王と対話していた。白狼王はヴィシスが弟ソギュードを犠牲にしたことに憤り、ヴィシスを許せないと誓った。
一方、剣虎団は密かに解放され、カイゼから聖眼を守る任務を託された。剣虎団の団長リリ・アダマンティンは、蠅王が彼らを殺さずに救った理由を尋ねた。カイゼは、蠅王がミルズ遺跡で親切にされたことを理由に挙げた。リリたちは驚愕し、蠅王が彼らを救ったことに感謝した。
最後にカイゼは、蠅王からの伝言として「あの時は何気に嬉しかった」という言葉を伝えた。
エピローグ
ヴィシスの音声や動画を記録したスマートフォンが混成軍に届き、大きな動揺をもたらした。カトレアは各国の司令官たちを連れ、ミラの陣営を訪れ、ネーア、バクオス、アライオンの軍勢がこちらの陣営に加わることとなった。さらに、魔戦騎士団とウルザ兵も加わることになった。
カトレアとセラスは再会を喜び、互いの信頼を確認し合った。一方、十河はバクオスやポラリー公爵に挨拶し、旧交を温めていた。十河は灯河に謝罪し、信頼を示したが、小山田翔吾の真実は知らされていなかった。灯河はヴィシスとの戦いに集中するため、その事実を明かさないことにした。
聖体軍との戦いが迫り、準備が進められていた。灯河はロキエラと話し、ヴィシスが天界に逃げたがっている理由について尋ねた。ロキエラは、ヴィシスが無意識に灯河を避けているのではないかと述べた。ヴィシスはこれまで灯河によって多くの計画を妨害されてきたため、最終的な勝利を確信していても、灯河との戦いを避けたがっているのではないかという。
灯河は、ヴィシスが自分を嫌がっていることを知り、復讐心をさらに燃やした。ヴィシスの失敗は灯河を怒らせたことだとロキエラは指摘し、灯河はヴィシスに対する怒りをさらに強めた。
灯河は狂美帝に呼ばれ、幕舎の中で新しい蠅王の装備を受け取った。黒いローブと蠅の王のマスクは、過去の伝説の蠅王ベルゼギアをイメージして造形されたもので、特注の新しい装備であった。これまで使ってきたマスクの限界が来ていたため、新しいマスクとローブは特に必要とされた。
灯河は新しい蠅王装を身に着け、姿見に映った自分の姿を確認した。外へ出ると、これから戦いに向かう者たちが待機しており、狂美帝は斥候からの聖体軍の接近報告を受けた。狂美帝が灯河に出陣前の言葉を求めると、灯河は周囲を見渡しながら、「それでは、始めるとしましょうか。この世界を救うための、戦いを」と宣言した。灯河の復讐の旅を終わらせるための戦いが始まった。
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