どんな本?
「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」は、篠崎芳によるライトノベルシリーズで、KWKMがイラストを担当している。
主人公は「ハズレ枠」と称され召喚した女神に廃棄場に廃棄されてしまう。
廃棄された召喚者達を嬲り殺そうと襲って来たモンスターを【状態異常スキル】を駆使し、困難な状況を乗り越えていく。
物語は、主人公が経験値の取得とレベルアップを繰り返すことで自身の限界を超え、新たなスキルを獲得し、押し寄せる魔物を蹂躙していくところから展開。
このシリーズは、読者に強い印象を与えるストーリーとキャラクターで知られている。
また、このシリーズはオーバーラップ文庫から出版されており。
それぞれの巻は、主人公が困難を乗り越えて成長していく様子を描いている。
このシリーズは、ファンタジーと冒険の要素を組み合わせたエキサイティングな物語で、多くの読者から高い評価を受けている。
読んだ本のタイトル
#ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 8
(英語名:Failure Frame: I Became the Strongest and Annihilated Everything With Low-Level Spells)
著者:篠崎芳 氏
イラスト:KWKM 氏
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あらすじ・内容
恐れよ女神。神すら弑(しい)する聖(ひじり)なる槍を
「ハズレ枠」と称されたスキルを駆使し、三森灯河が第六騎兵隊と戦いを繰り広げるさなか、アライオンの王城に大魔帝が出現した。邪王素が渦巻く城内にて大魔帝と相まみえた十河綾香は、銀の刃を振るう。すべては、力無き者を守り抜くため。時を同じくして高雄聖は、ひとり女神ヴィシスの元へと向かった。ヴィシスとともに大魔帝と戦うため――否。邪王素にて弱体化したヴィシスを守るため―
―否。勇者を弄ぶヴィシスを、弑するため。
「ここであなたを、始末する」「……クソガキが」
かつて空気モブだったE級勇者が、絶対最強へと至る逆襲譚第8幕。。
ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 8
プロローグ
ヴィシスはジョンドゥを呼び出し、最果ての国の処理を依頼した。ジョンドゥは新たな能力を持ち、その正体に興味を持たれていた。彼は女神に従い、異界の勇者を要求した。
1. ENGAUGE
ジョンドゥは第一騎兵隊を捨て駒にする策略を用いる。灯河は竜人兵や豹兵たちと協力し、敵の騎兵隊を次々と撃破した。セラスの協力を得て、敵の攻撃を阻止する策を実行した。
2. 歪んだ合わせ鏡
灯河は第六騎兵隊を欺くため、豹兵たちの協力を得て策を実行する。セラスの自然な反応を利用して敵を麻痺させ、ジョンドゥとの戦いに挑む。ジョンドゥの速さと気配消失に苦戦しつつも、最終的に彼を捕らえた。
3. 勇者たちは、邪王素の中で
十河綾香と高雄姉妹は大魔帝と戦うために行動を開始。大魔帝の本体を見つけ出し、奇襲を試みる。高雄聖は女神ヴィシスを倒すために戦い、彼女を追い詰める。
4. 風よ吹け、白き女神の笑顔と共に
高雄聖は女神ヴィシスと対峙し、【グングニル】を使って彼女を攻撃する。女神は再生力を使って対抗するが、最終的に聖の策略により敗北する。
5. 最果ての灯火
中央の戦場では、ジオやロアが敵と激しく戦う。灯河は左翼方面で第五騎兵隊と交戦し、勝利を収める。最果ての国とミラ帝国の連合軍がアライオン十三騎兵隊を完全に敗北させた。
エピローグ
鹿島小鳩のスキル「管理塔」は、他の勇者のステータス情報を把握できる。彼女は戦場浅葱のスキルと組み合わせ、グループの戦闘力を向上させた。彼女は蠅王のステータスウィンドウを見て驚愕した。
感想
8巻は、これまでの巻以上に緊張感と戦闘シーンの多い展開であった。
大魔帝がアライオン王城に出現することで、物語は一気に動き出す。十河綾香が大魔帝と対峙する場面は特に印象的であり、彼女の戦闘力と決意が光る。高雄聖のヴィシスとの対決も見応えがあり、彼のスキル【グングニル】が活躍する場面は圧巻であった。驚いたのは、高雄聖がヴィシスに勝利した直後に命を落とす展開である。予想外の出来事が次々と起こり、読者を引き込む力が強い。
また、桐原拓斗の裏切りも予想外であり、彼が大魔帝と同盟を結ぶ姿には衝撃を受けた。この裏切りが今後の物語にどのような影響を与えるのか、続きが気になる要素である。
三森灯河の成長も著しく、第六騎兵隊との戦いでその強さを存分に発揮する。特にジョンドゥとの戦闘シーンは緊張感に満ちており、灯河の策略とスキルの使い方が非常に巧妙である。ジョンドゥの敗北後、灯河が第六騎兵隊の残党を討つ姿も見応えがあった。
鹿島小鳩の固有スキル「管理塔」が、戦場浅葱の「群体強化」と見事に噛み合い、浅葱グループの戦闘力を大幅に向上させる場面も印象的である。このスキルの効果で戦闘中の混乱が減り、戦況が有利に進む様子は読み応えがある。
全体として、登場人物それぞれの思惑や裏切り、そして戦闘シーンが巧みに描かれており、物語の展開に引き込まれる一冊であった。次巻への期待が高まると同時に、灯河たちの今後の戦いがどうなるのか、ますます目が離せない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
プロローグ
アライオンから出発する前に、女神ヴィシスは第六騎兵隊長ジョンドゥを執務室に呼び出した。ジョンドゥは静かに現れ、ヴィシスとの会話が始まる。ヴィシスは最果ての国を見つけたことを伝え、ジョンドゥに禁字族の処理を依頼した。ジョンドゥは新たな特殊能力を持つことを明かし、ヴィシスは彼の強さを評価しつつもその正体に興味を持った。
ジョンドゥの過去についてはほとんど知られておらず、傭兵としての経歴のみが明らかである。彼の実力は非常に高く、勇の剣との連携を提案されるも、勇の剣の危険性と残酷さを考慮して慎重な対応が求められる。
ヴィシスはジョンドゥに対して、最果ての国の者たちを管理するための計画を話し、ジョンドゥはその指示に従うことを了承する。ジョンドゥは善人を堕落させることに興味を持っており、その目的のために報酬として異界の勇者を要求する。ヴィシスはジョンドゥの要求に応じ、特定の勇者たちを対象に選定する。
会話の中で、ジョンドゥはシビト・ガートランドとの関係を明かし、彼らが異母兄弟であることを示唆する。ジョンドゥはシビトとの戦いを避けるために自らの存在感を薄め続けた結果、特殊な能力を得た。
最後に、ヴィシスはジョンドゥにシビト・ガートランドに勝てるかと問うが、ジョンドゥはやってみなければわからないと答えた。
【ジョンドゥ】
ジョンドゥは第六騎兵隊の隊長であり、戦場における指揮能力に優れている。彼はアライオン十三騎兵隊の総隊長ミカエラ・ユーカリオンを戦場では役に立たない指揮官と考え、第一騎兵隊が先行することを予測していた。ジョンドゥは神獣ラディスを危険地帯に送る意味がないと判断し、最大戦力として第六騎兵隊でラディスを預かっていた。
ジョンドゥは第一騎兵隊を捨て駒とし、彼らの動きを見て今後の作戦を立てやすくするための策略を実行していた。彼はミラの狂美帝を警戒し、女神に反旗を翻した彼女が何か勝算を持っていると考え、始末できるならここで始末するべきだと述べた。
最後に、ジョンドゥは自分が見てきた中で最上級の善人を示すために短刀の刃を指先に乗せ、その善人が「イインチョウ」であると示唆した。
1. ENGAGE
竜人ココロニコ・ドラン(ニコ)は、リィゼロッテ・オニクに仕掛けた策を知り驚く。アライオン十三騎兵隊の指揮官ミカエラは戦場で役に立たないとされ、彼の指示で第一騎兵隊が先行し他の騎兵隊が続いていない状況を利用している。ジョンドゥは、第一騎兵隊が功を焦って先走るのを見越していた。偵察から戻ったセラスは、他の騎兵隊の到着が遅れていることを報告。
ジョンドゥは、第一騎兵隊が捨て駒として使われている可能性を指摘。彼らが見殺しにされた可能性も考えられる。リィゼは自分のせいで犠牲になった仲間に対する罪悪感を抱きながらも、自分の役割を果たす決意を固める。ジョンドゥは全体の指揮をキィルに任せ、セラスを補佐として配置することを決定。
蠅王ノ戦団は独自に動く遊撃隊として活動し、戦場での支援を行う。敵の神獣を確保または始末することが最優先課題であり、第六騎兵隊との交戦を避けるよう指示する。ミラ帝国の紋章を持つ者とは交戦を避け、交渉の意思を示すようにする。敵が動き出したことを確認し、蠅王ノ戦団は戦いに備える。
ジョンドゥは馬で岩場を移動していた。今いる位置は、本陣から見て正面のルートにあたる。敵は東、中央、西の三方向から攻めてきている。彼らが分散しているのは好都合である。
伝令が戦闘報告を伝えてくる。左翼ではココロニコ・ドラン率いる竜煌兵団が第四騎兵隊と交戦し、勝利を収めた。右翼では敵が接近しており、数は100〜150ほどと見られる。セラス(クーデルカ)にも報告が届き、指示が飛んでいる。
ジオ率いる豹煌兵団は前線で敵を待ち構えている。竜煌兵団は地形を活かして抜け道を使い、敵を挟み撃ちにした。四戦煌の戦闘能力は高く、特にニコが大いに活躍した。
右翼の主力はリーダー不在の馬煌兵団と魔物の混合部隊で、ケルベロスのロアが率いている。キィル・メイルは本陣で総指揮官を務めている。右翼だけ四戦煌が不在であり、ケルベロスの戦闘能力に期待が寄せられている。
【第十騎兵隊】
第十騎兵隊長アイギス・ワインと副長トーレスは、約100名の騎兵を率いて戦闘準備を進めていた。彼らは「美食騎兵隊」とも呼ばれ、戦闘後の敵を食材として利用することを目的としていた。
戦闘が始まると、彼らは敵を捕獲し、鮮度を保つために生け捕りにして解体する計画を立てていた。彼らは竜人やケンタウロスなどの亜人を食材として期待していた。
突然、中央近くの樹林地帯から敵の襲撃を受けたという報告が入った。伝令によれば、黒い毛の豹人ジオが率いる部隊が強力であるとのことだった。
その後、アイギスたちは偽の伝令に騙され、奇襲を受けた。アイギスは動きを封じられ、偽の伝令によってハルバードを奪われ、致命傷を負った。ケルベロス率いる魔物の群れも現れ、最終的に第十騎兵隊は全滅した。
【三森灯河】
灯河は、策が成功したことをケルベロスのロアに褒められた。第十騎兵隊との戦いで、敵兵士の顔を把握していない点を突いて作戦を立てたことが効果的だった。彼は汚れた装備を整え、次の行動を考えていた。
ケンタウロスが血や汚れを拭いてくれたが、乾いた血や汚れは怪しまれるため、新しい汚れが好ましい。灯河は第十騎兵隊の装備を確保し、同じ手法を何度も使うことを考えたが、全ての戦闘で同じ方法が通用するわけではないと悟っていた。
ロアは、戦闘能力の高いケルベロスが見事に第十騎兵隊を仕留めたことを誇りに思っていた。灯河はロアを褒め、魔物たちも意外と戦えていることに満足していた。
左翼方面にさらなる敵影が確認され、灯河はニコたちのいる左翼側に向かうことを決意した。彼は馬を用意し、ロアには少し後退して待機するよう指示した。灯河はスマホがあれば便利だと考えたが、現実には音玉が頼りであった。灯河は、戦場全体の情報をリアルタイムに得る手段が乏しいことが逆に有利だと感じていた。
【第十二騎兵隊】
第十二騎兵隊は竜人兵たちを崖の上まで追い詰めた。背後が崖で、前方には第十二騎兵隊が待ち構えているため、竜人たちに逃げ場はなかった。隊長のアルス・ドミトリーと副長のグレッチェン・ドミトリーは、若者を殺すことで若返るような感覚を味わっていた。
アルスは剣を抜き、他の兵士たちも従った。竜人のリーダー、ニコは大剣を構えて戦う準備をしていた。アルスとグレッチェンは、特にニコに対して警戒を示しつつも、他の竜人兵は数で押し切れると考えていた。
戦闘が始まり、アルスたちが竜人兵に迫ると、突然崖の下から追加の竜人兵や魔物たちが現れた。その数は崖の上にいた者たちの三倍以上であり、急激に増えたため、アルスたちは驚きと恐怖に包まれた。
【ココロニコ・ドラン】
ニコと竜人兵たちは緩やかな斜面を利用し、敵の第十二騎兵隊を欺いて崖に追い詰められたように見せかけた。敵の騎兵隊はニコの演技によって背後が崖であると信じ込み、伏兵の存在を疑わなかった。
戦闘が始まり、ニコたちは敵の老隊長アルス・ドミトリーと副長グレッチェン・ドミトリーと対峙した。敵の増援を呼ばれる前に決着をつけるため、ニコは奮闘したが、敵の援軍が到着しそうになる。そこへ、ベルゼギアが登場し、呪術で老兵の動きを止める。ニコはこの機を逃さず、老隊長と副長を倒すことに成功する。
この戦いで第十二騎兵隊は壊滅し、ニコは蠅王の策が見事に成功したことに感謝した。また、中央方面でジオが第十三騎兵隊を撃破したとの報告が届き、状況は有利に進んでいることが確認された。
【第六騎兵隊】
第六騎兵隊の副長フェルエノクは高台から戦況を眺めていた。隊長ジョンドゥは、敵の動きが戦慣れしていると判断し、伝令の身元確認を徹底するよう指示した。敵が人間を偽装して情報を混乱させる可能性があるからである。
ジョンドゥは、第二と第九騎兵隊が表の顔として重要であると述べ、神獣ラディスを守ることの重要性を強調した。ラディスを失うことは敗北を意味するからである。
ジョンドゥは敵の動きに自分に似たものを感じるとし、狂美帝が関与していると推測した。そして、フェルエノクに戦場全体の流れを感じ取らせ、行くべき場所を指示させた。第六騎兵隊は出撃準備を整え、ジョンドゥの指示に従い出撃した。
【三森灯河】
敵が右翼方面に集中し始め、ジオのいる中央方面には増援が到着した。ニコは元中央方面の魔物たちを中央へ戻すよう灯河に指示し、灯河はジオたちと合流した。ジオの指揮下で、中央は一時的に安定していたが、新たな敵が迫っていた。
灯河はジオから情報を受け、敵が伝令に対して警戒していることを知った。伝令に偽装する手が使えなくなったことに気づいた灯河は、敵の動きを鈍らせるためにこの情報を利用することを考えた。
その後、敵の騎兵隊が現れ、ジオの指揮で迎え撃った。敵は林に身を隠そうとしたが、灯河の巧妙な策略によって伏兵により包囲され、動きを封じられた。最後に灯河は、敵の隊長に「浅い」と告げた。
灯河は第三騎兵隊に勝利し、ジオと共に後方の陣へ戻った。負傷者はほとんど出さずに勝利を収め、予備戦力の魔物部隊も使わなかった。ジオは灯河と共に戦うことで負ける気がしないと感じていた。
その後、伝令がニコのいる左翼方面で神獣を発見したと報告。さらに他の伝令も各方面で神獣の目撃情報を報告したが、灯河はこれは罠であると判断し、深追いせず守りを固めるよう指示を出した。
しかし、左翼方面からの伝令がニコの竜煌兵団が第六騎兵隊に襲われ、ひどい状況に陥ったと報告。灯河はすぐに応急処置の兵を連れて現場へ向かい、ニコたちの惨状を目の当たりにした。ニコは仲間を見捨てられず追撃し、結果として捕らえられたが、灯河は彼女の決断を責めなかった。
ニコは第六騎兵隊に騙され、惨虐な行為を受けたが、灯河は彼女の生存を喜び、今後の戦いに備える決意を新たにした。
灯河は、負傷した竜兵たちを応急処置した後、応援を呼ぶために伝令を出した。竜兵たちは簡易的な処置を受け、豹兵たちはショックを受けていた。灯河はニコが首からぶら下げていたボードを確認し、その内容が敵の見せしめと降伏勧告であることを知った。第六騎兵隊は実利よりも心理的効果を狙って行動していることが分かった。
灯河は、ニコたちの救出後、中央のジオのところへ戻った。ジオはニコの件を知り、怒り狂ったが、灯河はジオを眠らせた。セラスもニコの話を聞き、怒りを抑えつつ冷静に対応した。
灯河は第六騎兵隊のやり方に強い不快感を覚え、彼らを潰すことを決意した。セラスと共に準備を整え、ジオに再び戦闘を任せ、灯河自身が第六騎兵隊を撃破する計画を立てた。ニコは第六騎兵隊との戦いで恐怖を感じたが、灯河の存在に希望を見出していた。
灯河とセラスは、アライオン第六騎兵隊と対峙した。敵の副長フェルエノクは距離を保ちながら交渉を試み、隊長ジョンドゥを紹介した。灯河は第六騎兵隊が精鋭揃いであることを認識し、彼らの動きに警戒を強めた。特に隊長ジョンドゥの平凡さがかえって異様であり、灯河はその存在感の薄さに違和感を覚えた。
灯河は慎重に対応しつつ、第六騎兵隊の本当の狙いと実力を探ろうとしていた。彼らが神獣を隠し持っている可能性も考慮しながら、次の一手を見極めようとする灯河の姿勢が印象的であった。
2.歪んだ合わせ鏡
灯河は第六騎兵隊と対峙し、副長フェルエノクからの疑問に答えつつ、狂美帝の首を狙っていることを伝えた。ジョンドゥと名乗る人物が本物のジョンドゥではないことをセラスからの合図で確認した灯河は、敵の動きを観察しつつ交渉を進めた。
灯河は持参した袋の中身を見せ、殺した豹兵の部位を証拠として提示した。この証拠により、第六騎兵隊は灯河の言葉を信じるようになった。灯河はセラスにこの証拠を知らせず、彼女の自然な反応を利用して信憑性を高める作戦をとった。
第六騎兵隊は灯河の提示した証拠を確認し、その信憑性を認めた。灯河は策を駆使しつつ、敵の信頼を得ることに成功したが、真の目的はまだ達成されていなかった。
灯河は第六騎兵隊を討つための策を練る際、豹兵たちから驚くべき提案を受ける。負傷兵が自分の失った身体部位を提供し、それを戦果として第六騎兵隊に見せることで、敵を欺き味方と信じ込ませるというものである。
初めはこの提案に躊躇した灯河であったが、豹兵たちの熱意と覚悟に押され、策を受け入れることにした。しかし、セラスにはこの策を知らせず、彼女の自然な反応を利用して敵を欺くことに決めた。
豹兵たちは、灯河が亜人たちのために本気で怒っていることに気づき、彼を信頼してこの提案を行った。灯河は、彼らの協力を得て第六騎兵隊を討つための準備を進めた。
灯河は第六騎兵隊を欺くための策を実行に移した。セラスと共に第六騎兵隊と交渉を行うが、その際、彼らに信頼を得るための策略を用いた。ミカエラが死んだことを伝え、第六騎兵隊の質を確認するために来たと説明する。
セラスがダークエルフのシャナティリス族との因縁を語り、礼をしたいと言い出すと、第六騎兵隊の兵士たちはセラスに興味を示す。しかし、ジョンドゥだけは反応が異なり、他の兵と同じ反応を示さなかった。
セラスが感謝の意を示すと述べ、マスクを脱いで嫣然と微笑む瞬間、灯河は「【パラライズ】」を発動。フェルエノクが異変を察知するが、すでに手遅れであった。
灯河はセラスと共に、第六騎兵隊との交渉を開始する。セラスの美貌を利用し、彼らの注意を引きつける計画だった。セラスは自らの演技で第六騎兵隊全員を【パラライズ】で麻痺させることに成功する。
その後、灯河は副長のフェルエノクが唯一反応したことに疑問を抱く。ジョンドゥがどこにいるのかが問題であり、彼の存在感のなさが謎だった。灯河はジョンドゥの能力が認識阻害である可能性を考え、セラスと共に警戒を強める。
突然、男が現れ、速攻で攻撃を仕掛けてくるが、セラスが防御に成功する。男は一瞬で消え去り、灯河はジョンドゥの存在を確信する。彼は【スロウ】を発動し、ジョンドゥの動きを封じるための準備を整える。これにより、周囲の状況を把握しながら、ジョンドゥを仕留める策を練ることが可能となった。
【ジョンドゥ】
ジョンドゥは、第六騎兵隊への思い入れはなく、蠅王を危険視している。蠅王の反射速度は非常に速く、その演技力も巧みであった。ジョンドゥは蠅王を異常者と感じ、同時に自分と本質的に似ていると認識した。蠅王の存在に嘔吐感と眩暈を覚え、彼を即座に排除する必要があると感じた。
ジョンドゥは冷静さを保ちながら、蠅王の行動を観察し続け、攻撃のタイミングを狙っている。蠅王の呪術に対抗するため、警戒しつつ攻撃を繰り返し、相手の癖や性質を探ろうとしている。ジョンドゥは、同質の存在を殺すことが自殺に似ていると感じている。
【三森灯河】
ベルゼギアとセラスはジョンドゥとの戦いで苦戦していた。ジョンドゥは驚異的な速度と気配を消す能力を持っており、攻撃と離脱をほぼ同時に行っていた。ベルゼギアは【スロウ】を使い敵の動きを遅くするが、ジョンドゥはすぐに効果範囲から離脱し再び姿を消す。
セラスはジョンドゥの攻撃を防ぎ続けるが、ジョンドゥは仲間の頭部を踏み潰し、その破裂した血や肉でセラスの視界を奪った。セラスは額当てのバイザーを下ろし、視覚以外の感覚を研ぎ澄ませて戦い続けたが、ジョンドゥの動きに完全には対応できなかった。
ベルゼギアはジョンドゥの動揺を誘おうと試みるが、ジョンドゥの反応は速く、状態異常スキルを使う暇もなかった。ジョンドゥの速さと気配消失の能力は強力だが、ベルゼギアはその中に隙があると確信し、何とかしてその隙を突こうと策を練り続ける。
【ジョンドゥ】
蠅王(灯河)とジョンドゥの戦いは続いていた。ジョンドゥは自身の能力を活かして攻撃を繰り返し、敵の動きを観察し続けた。蠅王はジョンドゥの動きを把握し、スライムの鳴き声を使って姫騎士セラスと連携をとっていた。しかし、ジョンドゥもその動きに気づき、スライムの鳴き声と姫騎士の動きが連動していることを見抜いた。
ジョンドゥは蠅王の呪術を警戒しながらも、自らの最高速度を隠して戦っていた。呪術の発動には三文字の発声が必要であり、ジョンドゥはそれに対応するための速度を持っていた。彼はわざと速度を抑えて攻撃し、敵に最高速を見せずに布石を打っていた。
最終的に、蠅王はセラスに完全に合わせるよう指示し、ジョンドゥはその一瞬を狙って最後の攻撃を仕掛けることを決意した。
ジョンドゥは蠅王の作戦に感嘆しながらも、自身もその策を見破っていた。蠅王がジョンドゥに呪術を決めようとする際、姫騎士セラスは防御をせず、自らの身を犠牲にして蠅王の呪術を成功させようとした。しかし、ジョンドゥはそれを見越しており、セラスにフェイントを入れて蠅王を攻撃対象に切り替えた。
ジョンドゥは蠅王へ最後の一撃を放ち、蠅王も呪術「【パラライズ】」を発動させた。ジョンドゥは呪術によって動きを奪われ、蠅王は計画通りにジョンドゥを捕らえることに成功した。蠅王はジョンドゥに対して、自身の策略が成功したことを告げ、ジョンドゥが最終的に蠅王のことしか考えられなくなっていたことを指摘した。
【三森灯河】
ジョンドゥは蠅王の策略を見破りつつも、意識を常に蠅王に向けていた。セラスはジョンドゥの攻撃に慣れ、反応速度が上がってきていたが、ジョンドゥはそれに気づかず、蠅王に対する警戒を続けていた。
灯河はセラスに小声で指示を出し、ジョンドゥの認識阻害を逆手に取り、セラスを「盾」として利用するように見せかけた。セラスはピギ丸の鳴き声に合わせるように見せかけ、ジョンドゥの注意を蠅王に向けさせた。
決めの一撃のタイミングを合図し、セラスは完全防御態勢を崩して攻撃に転じた。セラスはジョンドゥの意識を乱し、深い傷を与えた。ジョンドゥは負傷と動揺で離脱が遅れ、灯河は「【ダーク】」と「【パラライズ】」でジョンドゥを捕らえた。
蠅王の策略は成功し、ジョンドゥは蠅王のことしか考えられなくなり、その隙を突かれて敗北した。
ジョンドゥは灯河とセラスに敗北し、捕らえられていた。灯河はセラスを称賛し、彼女の努力を認めた。ジョンドゥは灯河の質問に答え、神獣の位置を明かすが、すでに移動している可能性が高いことも伝えた。ジョンドゥは死を覚悟し、さらなる情報を提供した。ジョンドゥは灯河に対し、自分と同じ存在と見なしており、シビト・ガートランドの強さの秘密に固執していたが、シビトの強さを理解できないことに苦しんでいた。最終的にジョンドゥは死亡し、灯河は第六騎兵隊への復讐を竜兵たちに任せた。竜兵たちはためらいながらも、自分たちの手で第六騎兵隊にとどめを刺した。
小雨の中、灯河とセラスはスレイに乗り、竜兵や魔物たちと別れていた。灯河は第六騎兵隊を倒したが、まだ他の騎兵隊と神獣の問題が残っているため、先を急いだ。セラスは疲れたと笑いながらも、灯河に感謝の言葉を伝えた。灯河は竜兵たちが第六騎兵隊と同じ方法で復讐しないと予測していたが、セラスもそれに同意し、最果ての国の住民の優しさを感じていた。灯河は戦いの終わりが近いと感じつつ、他の騎兵隊や安智弘、神獣、狂美帝の動向を気にしながら進んでいた。
【第九騎兵隊】
第九騎兵隊長ナハト・イェーガーは、不安な気配を感じていた。ジョンドゥが言っていた神獣の気配はなく、他の騎兵隊も苦戦している。副長のスノー・ヴァンガードと共に撤退を検討していたが、第五騎兵隊長ブランゾール・スタニオンが登場し、戦いを挑んできた。
ブランゾールが去った後、ナハトは第九騎兵隊に撤退を命じたが、その直後、ミラの兵が現れた。ミラの皇帝である狂美帝が第九騎兵隊に戦いを挑む。狂美帝はその美しさと強さでナハトを圧倒し、ナハトは戦闘態勢に入る。
その時、浅葱と呼ばれる少女を中心とした一団が登場。彼女たちは異世界からの帰還を目指し、戦う決意を固めている。浅葱は仲間たちを鼓舞し、第九騎兵隊との戦いに挑む準備を進めた。彼女たちは異世界での過酷な戦いを経ており、ナハトと第九騎兵隊に対しても強い意志を持っていた。
3.勇者たちは、邪王素の中で
アライオンの王都エノーで、十河綾香と高雄姉妹が大魔帝の襲撃を察知し、修練場に向かっていた。大魔帝が放つ邪王素により、王城周辺では異界の勇者たちしか動けない状況だった。綾香たちは修練場で仲間と合流し、安全を確保することを優先していた。
途中で金眼の魔物と遭遇したが、綾香の戦闘力で撃破する。修練場に到着した彼女たちは、他の勇者たちと合流した。高雄聖は、綾香に大魔帝を討つための行動を促し、王城の人々の救出は他の勇者たちに任せることを提案した。
聖と綾香は、大魔帝と戦うために行動を開始し、勇者たちと連携しつつ、それぞれの役割を果たすことを決意した。
綾香たちは聖のプランに従って行動を開始した。周防班、二瓶班、室田班の指示役は周防カヤ子が務め、高雄樹は自由に動き、他の勇者では厳しい魔物を倒す役目を担う。聖は音玉という魔導具を使って合図を送る方法を説明し、色による音の違いで状況を知らせることにした。
綾香たちは各自の役割を確認し、王城の人々の救出を他の勇者たちに任せ、聖とともに大魔帝を討つために王城の敷地内を進む。途中で見つけた物見塔に登り、広範囲を見渡せる場所から黒い霧のようなものを発見する。これは大魔帝が金眼の魔物を吐き出して産む姿であることを確認し、綾香と聖はこの黒い霧が大魔帝であると確信した。
綾香と聖は物見塔から大魔帝の動きを確認し、慎重に接近することにした。彼らはアーチ状の大きな通路の前に到達し、そこから大魔帝と金眼の魔物を目視する。大魔帝は霧の中に人型の本体があり、それを倒す必要があると判断した。
綾香と聖は奇襲を決意するが、桐原拓斗が現れ、大魔帝に戦いを挑む。桐原の固有スキルが防がれ、彼が大魔帝に対して劣勢になる中、綾香と聖はどう動くかを考える。桐原が吹き飛ばされると、聖は綾香に一人で時間を稼ぐよう頼み、自身は別の確認をしに行くと言った。
聖は綾香に首飾りを託し、大魔帝を倒す時の合図を音玉で伝えるよう指示する。綾香は聖の意図を信じ、彼女が戻ることを願いながら、大魔帝との戦闘態勢に入った。
【高雄聖】
高雄聖は静かに城内を駆け、ある場所で足を止めた。ドアが開き、現れたのは女神ヴィシスであった。彼女は青ざめ、弱々しく見えたが、微笑みは変わらなかった。聖は女神を支え、邪王素の濃度が高いため別の場所に退避するように指示した。ヴィシスは大魔帝が勇者を恐れて直接乗り込んできたと推測し、聖に感謝を述べた。
聖は女神を避難させた後、十河や桐原と合流して大魔帝を倒す計画を説明した。彼は女神の存在が元の世界への帰還に不可欠だとし、彼女が生きていることの重要性を強調した。女神は聖の助けを借りてよろめきながらも歩みを進めた。
高雄聖の固有スキル【ウインド】は他の属性を混ぜて複合属性のように使える能力である。しかし、聖はなぜベースが風属性なのか疑問を抱いていた。進化したスキル【グングニル】を習得した際、その意味が明らかになった。スキル名は元の世界のゲームがベースであり、【グングニル】は北欧神話の主神オーディンが所有する槍の名である。オーディンは風の神でもあるため、スキルの主軸が風属性だった意味が納得できた。
【グングニル】の能力は超高威力のエネルギー槍を撃ち出す単純かつ極攻撃特化のスキルである。最近、女神ヴィシスは勇者のステータス確認を怠っていたため、聖の【グングニル】の進化を知らなかった。また、女神は聖を信頼しきっており、ステータスチェックを行っていなかったため、この新しいスキルの存在に気づいていなかった。
高雄聖の固有スキル【グングニル】によって女神ヴィシスの右半身が吹き飛ばされた。女神は回避行動を取ったが、完全には避けられなかったため、右半身は修復中である。聖は女神を追撃し、彼女が何か黒い玉を飲み込んでいるのを目撃した。その後、女神は天井に逆さに張り付いていることに気づき、再生速度が上がった女神の状態に驚く。
聖は女神が黒い玉を飲み込んだことでパワーアップしたことを確認するが、邪王素の影響でまだ完全に動けない様子を見逃さない。女神が邪王素から離れようとしているのを見て、聖は追撃を決意する。女神は虚勢を張って余裕を見せるが、聖はその裏に隠れた弱さを見抜く。
聖は女神と対峙し、【ウインド】を駆使して攻撃を続ける。女神は強化された触手鎌で応戦するが、聖はその攻撃を巧みにかわし、次々と攻撃を繰り出す。最終的に、聖は女神の左腕を斬り落とし、彼女の再生を阻止する。
聖は女神がまだ完全に再生していないことを見抜き、この機会を逃さずに彼女を倒す決意を固める。制限時間は一時間であり、聖はこの間に勝負を決めるつもりでいる。
4.風よ吹け、白き女神の笑顔と共に
高雄聖は覚悟を決め、女神ヴィシスと対峙する。ヴィシスは聖の攻撃を受け、防御に回るが、邪王素の影響で動きが鈍くなる。聖の攻撃は大魔帝のいる方角へヴィシスを誘導し、女神は邪王素の発生源から離れるように動く。
ヴィシスは邪王素の影響で神級魔法が使えず、聖の攻撃に圧倒される。ヴィシスは再生力を上げるために逃げ回り、聖の動きを封じようとするが、聖は巧みに追撃を続ける。女神は黒紫玉を使って一時的に強化されるが、邪王素の影響を完全には克服できない。
最終的に、ヴィシスは聖に致命的な一撃を加えるために策を弄するが、聖は冷静に対応し続ける。女神が聖の腹部に剣を刺した際にも、聖は動揺せず、最後の瞬間に再び【グングニル】を発動させる。
高雄聖は再び固有スキル【グングニル】を発動し、ヴィシスに攻撃を仕掛けた。しかし、今回はヴィシスが防御と回避に成功し、前回ほどの深い傷を負わなかった。ヴィシスは聖を追い、渡り廊下に血痕を発見するが、それが偽装であることに気づく。聖は風の能力を駆使して血痕を残しながら逃げ、ヴィシスを欺くことに成功した。ヴィシスはその賢さに苛立ちながらも、聖の巧妙さに感嘆する。
【高雄聖】
高雄聖は城外へ逃げようとしていたが、女神ヴィシスに行く手を阻まれた。女神は聖が大魔帝の方へ向かうと思い込んでいたが、聖は逆に城外へ逃げようとしていた。聖は女神の意図を見抜き、逃げずに立ち向かうことを決意する。
女神は人間を愚かで短命な存在と見なしており、人間の善意を否定しているが、聖は人間の善意や矜持を信じていた。女神は聖の信念を偽善と断じるが、聖は人間にも神族にも善性が存在すると主張する。
聖は固有スキル【ウインド】を発動し、氷の破裂音で女神の注意を引き、超加速で高雄樹を背後に配置した。女神の振り向く間もなく、樹が【雷神】のスキルを発動し、女神に一撃を加える。この一連の戦術で、聖は女神の不意を突き、決定的な攻撃を成功させた。
【女神ヴィシス】
女神ヴィシスは妹の固有スキルの影響で動きが鈍くなり、高速移動が困難となり、追跡できなかった。攻撃ではなく逃走のための一手であることに気づき、防御行動を取ってしまった。邪王素下でなければ容易に追えたが、黒紫玉を使わされ、邪王素の存在に苛立ちを感じていた。その時、突然邪王素が消えたことに驚いた。
【十河綾香】
高雄聖と別れた後、大魔帝は十河綾香に接近してきた。大魔帝の触手鎌から放たれた紫光の光線を回避し、綾香は攻撃を仕掛ける。激しい打ち合いが続く中、綾香は大魔帝が戦いの中で技を磨いていることに気づく。しかし、綾香もまた双弦の力を試し、攻勢を強める。大魔帝が防戦に回った隙を見逃さず、綾香は一気に攻撃を仕掛けた。その結果、大魔帝は血を噴き倒れることとなった。
十河綾香は容姿端麗で文武両道、お嬢様として完璧な少女である。祖母から古武術「鬼槍流」を学び、その才能を「天才」と評されていたが、元の世界では誰もその本質に気づくことはなかった。大魔帝は、東の戦場で他のS級勇者と遭遇した後、転移奇襲作戦を実行した。しかし、十河綾香の存在を過小評価していた。彼女の本質は、異世界で武才として花開き、大魔帝にとって誤算となった。十河綾香は希代の天才として現存している。
十河綾香は大魔帝に対し戦いを挑んだ。大魔帝の黒い霧の中に人型の本体が存在し、直接攻撃が通ることを確認した綾香は、素早く行動に移った。大魔帝が吐き出した石を弾き飛ばし、固有武器で攻勢をかけるが、大魔帝は触手鎌を増やして抵抗した。大魔帝が「誤算だ」と喋った瞬間、綾香はその機を逃さず攻撃を続けた。
しかし、そこに現れたのは桐原拓斗であった。桐原は遠距離からの攻撃で大魔帝の側に現れ、綾香の攻撃を防いだ。桐原は自分を王と称し、大魔帝と同盟を結ぶと宣言した。彼の言動にショックを受けた綾香は必死に説得を試みるが、桐原は耳を貸さない。桐原はこの異世界で真の王となることを望み、大魔帝と共に北の最果てへ転移して姿を消した。
綾香の説得も虚しく、桐原拓斗は敵となり、大魔帝と共に去った。
5.最果ての灯火
激しい雨が降りしきる中、中央の戦場は乱戦に突入していた。十河綾香は騎兵隊と亜人たちが激しく戦う中、一人の男が現れた。男は第二騎兵隊長ラシッド・デッド・ストリッドであり、精悍な顔立ちと彫り物のある体を持つ。彼は戦神デッドに魂を捧げた戦士であり、戦いの中で死ぬことを本懐としていた。ラシッドは、死後に戦神の軍勢の一員となることを信じていた。
ラシッドとジオ・シャドウブレードは互いに名を告げ、戦いを開始する。ラシッドは勇敢に戦った者の死体を丁重に扱うと約束し、戦えない者は蹂躙するか奴隷とすると語った。ジオはその考えに同意できないが、両者は戦闘態勢に入る。ラシッドは「戦神のもとへ送ってやる」と言い、ジオも「かかってこい」と応じ、激しい戦いが始まった。
右翼の戦場では、ケルベロスのロアと第八騎兵隊長リューゲイン・ゴーフゴリオの戦いが始まろうとしていた。ロアはぬかるんだ地面で踏みとどまり、敵に向かって構える。リューゲインは異様に長い緑色の髪を持つ上半身裸の男で、長剣を手にしている。
リューゲインはロアに感謝の意を示しつつ、解体することを告げる。ロアは劣勢に立たされながらも名乗り、戦いを決意する。リューゲインの異様な態度に対し、ロアは仲間のケルベロスと共に戦いを挑む。雨の中、ケルベロスは獰猛に跳びかかる。
【三森灯河】
雨が激しさを増す中、戦局は進展していた。キィルは総指揮官としての役割を果たし、セラス不在でも堅実な指揮を執り続けた。中央の戦線はジオたちが強固に持ちこたえていたが、左右はやや押され気味であった。
伝令が左翼への敵の接近を報告し、ニコが左翼の指揮を執ることを提案する。包帯を巻いた竜兵たちと共に戦線復帰し、左翼の防衛を引き受けることを決意した。
灯河は中央方面へ向かう途中、第二騎兵隊との交戦を開始したジオの報告を受ける。第二騎兵隊は分隊単位で広く散らばっており、個々の能力が高いと推測された。灯河はセラスに本陣へ向かうよう指示し、ピギ丸と共に第二騎兵隊の遊撃隊と対峙する。
彫り物をしている筋骨隆々とした男たちとの戦いが始まり、灯河は次々と敵を倒していった。敵の独立部隊が集まりつつある中、灯河はその動きを察知し、迎え撃つ決意を固めた。
伝令から、第七騎兵隊の増援が報告され、灯河はこれに対応するための戦力を確保するため、扉の中の防備戦力を外に回す計画を聞く。リィゼが扉の中の者たちを説得し、武装させたことで、戦力が増強された。
夜戦への突入が近づく中、灯河は最後の総力戦に向けて準備を整えた。敵もほぼ全戦力を投入し、戦いは最終局面を迎えようとしている。
リィゼロッテが送った援軍は各方面に配置され、各方面軍は地形を活かし迎撃戦を開始した。ロアのいる右翼は第八騎兵隊と交戦し苦戦していたが、狂美帝率いるミラの軍勢が現れ、第八騎兵隊を撃滅した。狂美帝はミラがアライオンと敵対しているため、最果ての国と交渉を望むと伝えた。
ミラ軍は第七騎兵隊の横腹を攻撃し、これが第七騎兵隊崩壊の序曲となった。ミラと最果ての国の軍勢は挟み撃ちの形を作り、第七騎兵隊は混乱に陥った。灯河は事前にリィゼや四戦煌に敵味方の見分け方を伝えていたため、最果ての国の者たちは混乱を避けることができた。
混乱の中、第十一騎兵隊が本陣を突撃したが、セラス・アシュレインがこれを迎撃し、第十一騎兵隊を撃退した。さらにセラスは神獣ラディスを確保した。一方、灯河は左翼で第五騎兵隊出現の報を受け、ニコの身を案じて左翼へ赴いた。
ニコは第五騎兵隊長を討ち取り、竜兵たちは感動の涙を流した。最大規模だった第七騎兵隊は総崩れとなり、隊長と七人の副長のうち二名が生存して投降した。この日、アライオン十三騎兵隊は最果ての国とミラ帝国の連合軍によって完全に敗北した。
灯河は戦闘後、本陣に戻った。アーミアも合流し、勝利の報告が扉の中にも伝えられた。セラスが現状を確認し、敵軍の残存兵力は戦意を失い、撤退を開始していることを報告した。ジオが前線に残り、狂美帝側を警戒している。
狂美帝の戦力は撤退するアライオン兵を追撃し、捕虜管理の一部をこちらに任せたいとの提案があった。灯河はこの件をゼクト王かリィゼが決めるべきだと答えた。捕虜の管理については「善処する」と返すよう提案した。
アーミアやキィルと共に戦略を話し合っていると、竜兵が急報をもたらした。例の人間、安智弘が発見されたという。彼は酷い怪我を負い、水と食糧を与えられた状態だった。灯河は安の状態を確認し、彼を捕虜として扉の中へ運び込むよう指示した。
安の状態はひどく、灯河は【スリープ】をかけて運搬中に目覚めないようにした。口の拘束具も装着し直すよう指示し、安が礼を口にしたことを知った。灯河は今の安には「ざまぁみろ」などの感情はなく、ただ惨すぎると感じた。
その後、ケンタウロスの伝令が狂美帝からの伝言を伝えた。ミラの使者は、回答の期限を夕刻まで設け、交渉場所を指定するよう求めた。また、蠅王ベルゼギアの同席も望んでいるという。灯河は最果ての国の問題であり、助言を求められていると感じた。
最終的に、灯河は引き続き防御線を残しつつ、一度扉の中へ戻ることを決めた。
灯河と一部の戦力は扉の中へ戻り、防衛線を維持した。ミラから新たな使者が来る可能性もあり、防衛線に余力のある部隊を残すことにした。灯河はアーミアとともに外での指示を出し、扉の中へ戻る。
扉の中で、灯河はニャキやムニンと再会。ムニンはクロサガの族長であり、灯河に感謝の意を伝えた。合議が開かれ、キィルが進行役となり、最果ての国とミラ帝国の今後について話し合った。ゼクト王とリィゼは悄然としていたが、灯河はリィゼの能力を評価し、今後も発言するよう促した。
灯河はミラとの交渉の場を持つ方針を提案し、同盟を結ぶ可能性について話し合った。食糧支援や捕虜の管理についてもミラと交渉することを決めた。ミラの豊かさや軍事力についてセラスが説明し、交渉の重要性が確認された。
灯河は、交渉が成立する見込みが高いと見ており、ミラの狂美帝との同盟が必要であると考えた。狂美帝は若くして帝位についた人物であり、その人物像に興味を持った。
灯河はリィゼロッテ・オニクに呼び止められ、彼女の部屋へ向かった。部屋は執務室のような雰囲気で、リィゼが簡単な料理を用意してくれた。灯河は彼女の気遣いを感じながら食事を楽しんだ。
リィゼは今回の戦いに対する謝罪と感謝を改めて述べ、灯河に感謝の意を伝えた。灯河はリィゼの成長を認め、彼女が周囲の信頼を得ていることを評価した。リィゼは灯河の優しさに涙を流し、感謝の気持ちを抱いた。
その後、リィゼは灯河を自分の寝室に招き、灯河はリィゼに現代のお菓子を渡した。リィゼはそのお菓子を食べて喜び、二人の間に秘密ができた。
リィゼは灯河の助けを得て、ミラ帝国との交渉に挑むことを決意し、最果ての国の宰相として一歩成長したことを示した。
灯河はリィゼの部屋で食事を済ませ、セラスが待つ自室に戻った。セラスは灯河の疲れを見抜き、休むよう促した。灯河はミラとの交渉に備えて予習しようとするが、セラスの説得で休息を取ることにした。
ベッドに横たわる灯河に、セラスも一緒に休むよう勧められる。セラスは少し躊躇するが、最終的に灯河の隣で休むことを決意する。灯河は眠りに落ちる前、セラスとの会話で過去の出来事について謝罪し、今後は気にしないと伝えた。
こうして、灯河は疲れを癒すために一時的な休息を取ることとなった。
灯河が目を覚ますと、セラスが机に突っ伏して寝ていた。セラスは灯河が寝ている間に、彼の仕事を引き継いで予測文書をまとめようとしたが、途中で眠りについてしまったらしい。灯河はセラスに【スリープ】をかけ、ベッドに運んで休ませた。その後、灯河は安の状態を確認しに行った。
安はまだ目を覚ましていなかったが、担当のケンタウロスから日常生活に支障はない程度に処置が施されたと報告を受けた。灯河は安が目を覚ました際の対処を指示し、夕刻の交渉に備えることにした。
灯河たちは、交渉場所である岩場に到着し、ミラ皇帝ファルケンドットツィーネと会う。皇帝の挨拶の中で、灯河は戦場浅葱と鹿島小鳩の姿を見つけ、驚く。
【高雄聖】
高雄聖は毒の影響で倒れ、妹の高雄樹に看取られる。聖は女神の毒剣によって致命的な毒を受けており、逃れることができなかった。彼女は自分の死を悟り、樹に次の行動を託した。女神に対抗するための情報を十河綾香に伝えるように指示し、感謝と謝罪の言葉も伝えるように頼んだ。
最期の瞬間、聖は樹に自分の満足と愛情を伝え、穏やかな時間を過ごした。聖が死を迎える直前、樹は姉への愛情を再確認し、その別れを受け入れた。
その後、樹は禁忌の地「金棲魔群帯」に到着し、豹人のイヴ・スピードと再会する。この地は女神の監視を逃れるために選ばれた場所であり、二人の勇者と豹人の奇妙な再会が果たされた。
エピローグ
鹿島小鳩の固有スキル「管理塔」は、他の勇者のステータス情報を把握できる能力を持つ。ステータス情報は「ステータスオープン」で表示され、通常は本人のみが閲覧可能であるが、女神や女神から閲覧許可を得た者も例外として見ることができる。このスキルは、戦場浅葱の固有スキル「群体強化」と組み合わせることで、浅葱グループの戦闘力を大幅に向上させる。浅葱はバフ効果の持続時間を把握するのが難しく、小鳩のスキルがこれを補う役割を果たす。バフが切れたことを小鳩が即座に報告できるため、戦闘中の混乱が減り、浅葱グループはより効果的に戦えるようになった。
浅葱と小鳩は獣人たちとの会談に向かうが、小鳩はスキルを解除し忘れており、蠅王と呼ばれる人物のステータスウィンドウが見えることに気づく。これに驚き、混乱する小鳩であった。
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