どんな本?
『あたしは星間国家の英雄騎士!4』は、三嶋与夢によるライトノベル作品である。本作は、幼少期に領主に憧れ「正義の騎士」を目指す少女エマが、最上位騎士マリーの指導を受けながら成長し、戦争に突入した帝国と連合王国の戦いに巻き込まれる様子を描いている。
主要キャラクター
• エマ:主人公。幼少期に見た領主に憧れ、「正義の騎士」を目指す少女。
• マリー:最上位騎士であり、エマの師匠。
物語の特徴
本作は、主人公エマの成長と彼女を取り巻く戦争の状況を描いたSFファンタジーである。エマが戦争の中でどのように正義を貫くかが見どころとなっている。
出版情報
• 出版社:オーバーラップ
• レーベル:オーバーラップ文庫
• 発売日:2025年3月25日
• ISBN:978-4-8240-1112-1
読んだ本のタイトル
あたしは星間国家の英雄騎士!4
著者:三嶋与夢 氏
イラスト:高峰ナダレ 氏
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あらすじ・内容
本編「悪徳領主」がTVアニメ放送! もう一つの「星間国家」英雄譚、第4幕!!絡み合う思惑の中、正義が問われる!
幼い頃に見た領主様に憧れて「正義の騎士」を目指す少女エマ。彼女は最上位騎士であるマリーから薫陶を受け、行動で技術試験艦メレアのクルーの心を動かした。そんな中、帝国が連合王国との戦争に突入しメレアも参戦が決定する。戦争のため艦隊司令部より監督官が派遣されてくるが――
「私の命令は艦隊総司令部の命令です。逆らうことは許しません」
メレアと相性悪そうなエリート様! 新たな機動騎士開発チームも加わりクセの強いメンバーが増えたメレアで、エマは正義を貫けるのか……!?
落ちこぼれの少女騎士が成り上がる「星間国家」英雄譚、怒涛の第4幕!!
技術試験隊の結成と訓練
- エマ・ロッドマンは、第三小隊の隊長として部下を率いて敵基地への強行突入作戦を指揮した。
- 厳しい訓練を経て、ラリーやダグとの連携を強化し、エマの指揮能力が試された。
- 訓練評価ではB判定に終わるが、隊員たちは互いを信頼し、さらなる成長を誓い合った。
技術試験隊の配備と新たな隊員たちの登場
- 軽空母メレアが惑星ピュトンの要塞に入港し、リックとアインという新たなパイロットが試験隊に加わった。
- リックは陽気な操縦の天才、アインは形式を重視する理詰めな性格で、両極端の個性が波紋を呼んだ。
- 技術試験隊として新機体の運用も始まり、エマは試験と訓練の指揮に追われた。
星間戦争の勃発と遊撃艦隊への配属
- アルグランド帝国とオクシス連合王国の間で戦争が発生し、バンフィールド家は中央指揮のもと再編を強いられた。
- メレアも例外ではなく、遊撃艦隊への配属が命じられた。
- 指揮官としてのエマの判断に対し、アインやリックは反発し、隊内の緊張が高まった。
監督官アリスン・ベイカーの着任と衝突
- 総司令部から派遣された監督官アリスンは、実はティム司令の曾孫であり、形式上の指揮権を行使した。
- エマと対立し、遊撃艦隊の能力を疑問視するが、後に技術試験隊の実力を認めるようになる。
- ティムは家族との断絶を語りつつ、アリスンとの距離を取る姿勢を崩さなかった。
戦争と派閥の狭間での戦い
- 要塞攻略戦において、バンフィールド家の艦隊が前線に配される。
- 要塞突入作戦ではエマのアタランテが先陣を切り、ダグやラリーが続いた。
- アインとリックもそれぞれの役割で支援し、旧型機体の有効性や装甲重視機体の威力を証明した。
- 帝国正規軍の一部は自軍の損失を避けるため、バンフィールド家の艦を意図的に損耗させようとした。
ダリア傭兵団との因縁と再戦
- 傭兵団団長シレーナとエマには過去の因縁があり、要塞での補給を巡る衝突で再会する。
- 生身での戦いではエマが敗北し、自らの未熟さを痛感する。
- エマはその後、帝国軍の略奪行為に憤慨し、正義感から独断出撃を決断した。
エマの独断と正義の戦い
- 帝国軍モーヘイブ部隊との戦闘で、エマは腐敗した正規軍と対峙し、敵機を次々と撃破。
- 赤いワイルダーとの死闘を制するも、統一軍のネイサンに包囲され、やむなく降伏。
- ティムは命令違反を認めて同行し、二人は帝国軍に拘束されるが、ヴァール艦隊の介入により救出される。
派閥の崩壊と鮮血鬼チェンシーの襲撃
- 帝国派閥の少将が拘束され、傘下の部隊も制圧される。
- 逃走を図ったサイラス部隊はチェンシーによって一方的に殲滅され、彼女の凶暴さが明らかとなる。
エマとクリスティアナの再起
- エマはミスティリア避難民との会談に参加し、かつての姫騎士クリスティアナが民と再会。
- 騎士としての誓いを新たにし、住民の移送と保護が進められた。
- エマは行動の責任を問われながらも、最終的に少佐へ昇進し、現場での評価を高めた。
アリスンの葛藤とティムとの対立
- アリスンはエマの出世に不満を募らせ、自らの能力と中央の地位を誇示したが、ティムに揶揄されて動揺。
- 護送中の艦内では騎士たちの茶化しも混じりつつ、エマとアリスンの口論は絶えなかった。
- 結局、エマはその実力と覚悟により、多くの者から認められる存在へと成長していった。
感想
正義を貫く少女騎士の試練と成長
中隊長としての初陣と苦悩
- エマは中隊長に昇進し、新たに二人の小隊長を率いる立場となった。 - 二人の小隊長は指示を無視し、統率に苦労する場面が続いた。
– それでもエマは冷静に状況を把握し、前回の戦闘を経た芯の強さを見せた。 - 正規の貴族軍であるカルヴァン派に同行させられ、要塞攻略の先鋒を命じられた。
– その役目は危険極まりない任務であり、犠牲を前提にしていた。
– エマはそれでも躊躇せず、自ら先頭に立ち突撃を敢行した。
新たな因縁と敵との対峙
- 元筆頭騎士ティアと因縁のある人物たちが登場し、物語に複雑さを加えた。
– その人物たちは敵勢力と交わりながらも、ティアと深い関係を持っていた。 - エマは彼らを守る決意を固め、正規軍との戦闘に突入する。 - 自軍の一部とすら対立する形となり、彼女の正義が問われる場面となった。 - その行動は、彼女が騎士としてだけでなく、人としての信念に従っていた証である。
メレアの変化と新たな仲間たち
- 技術試験艦メレアには新たな開発チームが加わり、隊内の雰囲気は一層混沌とした。 - クセの強い新メンバーとの関係性により、エマの立場はより難しくなった。
- 艦隊司令部から派遣された監督官が登場し、命令を絶対とする冷酷な姿勢を見せた。 - エマはその態度に反発しながらも、理想と現実の狭間で自分のあり方を模索した。
騎士として、人としての在り方を問う戦い
- エマの行動は、単なる命令への服従ではなく、信念に基づいた選択であった。
- 仲間たちやかつての英雄たちの影響を受けながら、自らの正義を貫こうとした。
- 成長の過程を描きながら、戦場の苛烈さと希望の狭間で彼女の決断が物語を動かした。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ
悪天候下での強行突入
厚い雲に覆われた空を、アタランテを先頭に三機の機動騎士が飛行していた。第三小隊の目標は、迎撃態勢を整えた敵の地上基地であった。激しい攻撃の中、エマ・ロッドマンは加速して敵砲火の中心へと突入し、ダグとラリーに援護を指示した。指揮官としての成長を見せた彼女の指揮に、部下たちも従った。ダグはミサイルによる煙幕で援護し、ラリーも狙撃で支援を行った。
突入成功と撃墜事故
エマは敵の攻撃を掻い潜って基地へ突入し、重要施設を攻撃し始めた。だが、作戦成功目前でラリーの撃墜表示が現れた。狙撃に集中し動きを止めたことが原因で、ダグは激怒したが、エマは作戦を継続し、司令部への攻撃を実行した。
訓練評価と仲間の成長
シミュレーター終了後、汗を拭って出てきたエマをモリーが抱きしめ、B評価を伝えた。撃墜されたはずのラリーも無事で、ダグは彼を激しく叱責した。ラリーはB評価獲得を誇るが、ダグは全員無事で終えたかったと悔しがった。モリーは撃墜がなければA評価に届いたと指摘し、エマはラリーの成長を評価して責めず、ダグもまた称賛された。
訓練再開とさらなる向上心
エマはラリーに次の訓練を予告し、彼を絶望させた。ダグも訓練参加を宣言し、三人の関係はより強固になっていた。モリーは皆の雰囲気が以前とは違うと微笑み、エマは宇宙港での打ち合わせを思い出して出発した。
ピュトン防衛と要塞の役割
惑星ピュトンはバンフィールド家が開拓を進める重要惑星であり、宇宙要塞がその防衛を担っていた。エマが所属する軽空母メレアは技術試験艦として要塞に入港し、新たな実験機の搬入を受けていた。ティム・ベイカー大佐は形ばかりの謝罪をし、打ち合わせの必要性に不満を漏らしたが、エマは真面目に任務を全うしようとしていた。
ティムとエマの対比
ティムは昔の愚連隊時代を懐かしみ、真面目になったクルーやエマに対し皮肉を口にした。エマは機動騎士について語り、搬入される現行機にも関心を示していた。ティムは機密の多い機体に嫌気を見せたが、エマは指示された通り真摯に対応していた。
格納庫での変化
格納庫内では整備兵たちが忙しく作業しており、ティムはその活気にかつての面影を感じた。以前は挨拶すらしなかった者たちも、今では敬礼を交わすようになっていた。退役したクルーに代わり新たな人員が加わり、メレアは変化を迎えていた。
実戦訓練と隊長への信頼
ダグはエマに連携パターンの確認を依頼し、アタランテとの加速差による課題を語った。エマは実機訓練での対応を指示し、ダグはラリーにも努力を促した。汗だくのラリーは疲労を訴え、ダグとの体力差を指摘された。
モリーの忠告と訓練の日々
モリーは二人の無理を心配したが、ダグは休暇中も鍛錬していたと述べた。ラリーは自宅で過ごしたことを弁明し、過去の任務後に得た休暇の貴重さを語った。教育カプセルによる再訓練を経て、メレアは再び本格稼働を迎えようとしていた。
ティムの回想と孤独
変わりゆくメレアに、ティムはどこか寂しさを感じていた。休暇中も艦を離れなかった彼には、帰る家がなかった。長く音信不通となった家族のことを思い出しつつも、今さらどうすることもできないと考え、ブリッジへと向かった。
第一話 曲者揃い
戦場に揺れる技術試験隊の幕開け
酒場での回顧と葛藤
軽空母メレア艦内にある酒場では、出航前にもかかわらずティム司令の命令で特別に開店されていた。古参であるティム、ダグ、ジェシカの三人はかつての戦友として酒を酌み交わし、若き騎士エマに感化された自分たちの変化を語り合っていた。ティムは頑なに変化を拒み、自身を情けない燃えカスと揶揄しながら、軍人らしい規律や上官への従順を嫌悪していた。過去の戦場で感じた無力さと裏切りが、彼の心を今も縛っていたのである。
格納庫での新機体配備と新兵の登場
改修されたメレアの格納庫には、新たに二機種の機動騎士が搬入され、技術試験隊としての活動が本格化していた。中隊長であるエマは、新たなテストパイロットであるリック・マーティンとアイン・木村に対応する。リックは軽薄な言動ながら操縦技量に優れた陽気な青年であり、一方のアインは過剰なまでに真面目で、形式的な説明を延々と続ける人物であった。両者の極端な性格は、エマに新たな苦労をもたらす予感を抱かせた。
リックとアインの機体紹介
リックが操縦する「アーマードネヴァン」は、追加装甲に特化した試作機であり、設計図とは異なる仕様であることが明かされた。一方のアインが率いるヴァローナ隊は、次世代機ネヴァンに対するコスト削減のために設立された部隊であり、旧型機の有用性を熱弁していた。モリーの素朴な疑問に対しても論理的に返答を重ねるアインの姿勢は、周囲を圧倒しながらも不安を抱かせるものであった。
シミュレーター訓練後の休息
長時間の訓練後、休憩室ではエマやダグ、ラリーらが疲労を癒やしていた。そんな中、元気いっぱいのリックが登場し、訓練に感謝の意を表した。リックは自身の型破りな言動に自覚がありつつも、それを改める意思はなかった。優れた操縦技術を持ちながらも、昇進とは無縁である理由がそこにあった。エマやダグはリックの実力に感嘆しつつも、騎士としての評価が低いことに驚いていた。
突如届いた戦争の報
その時、メレア所属の全員に一斉送信されたフォログラムが再生された。画面に現れたのは、バンフィールド家を代表する騎士であるクリスティアナ・セラ・ローズブレイアであった。彼女は、アルグランド帝国とオクシス連合王国との大規模戦争の勃発を宣言し、バンフィールド家全軍の中央指揮下での再編と出動を命じた。この通達により、技術試験隊としての新たな船出を迎えようとしていたメレアの運命は、大戦争の渦へと巻き込まれていった。
第二話 対外戦
星間国家の戦争の性質と例外事態
星間国家同士の戦争では億単位の兵士が動員され、艦艇は数百万単位で編成される。その規模はあまりに巨大で、将軍ですら全体像を把握できないほどであった。国内の貴族間戦争とは異なり、外国との戦争は終結の見通しが難しく、時には百年単位で続き、両国が疲弊することすらあった。通常は小競り合いで収めるように調整されていたが、今回はその例外であった。
メレア部隊への命令と動揺
メレアのブリーフィングルームでは、中央からの命令を受けたエマがパイロットたちに状況を伝えていた。命令はメレアをバンフィールド家の遊撃艦隊に編入するという内容で、編成規模は未確定であった。その曖昧な命令に対し、木村中尉やアインが疑問を呈し、部隊内には不安が広がった。リックは実戦参加に消極的な態度を見せたが、エマは強い姿勢で命令に従うよう指示を出した。
指揮への不満と内部の対立
命令の不明確さに不満を抱いたパイロットたちはエマに厳しい言葉を浴びせた。アインはエマの指揮能力に疑問を示し、ヴァローナチームは彼女の指揮下での戦闘を拒否する姿勢を示した。リックも言い訳をして離脱し、メレア内の統制は乱れ始めた。エマは技術試験隊という特異な立場ゆえ、指揮権の複雑さと責任の狭間で板挟みになっていた。
古参兵による経験談と警鐘
ブリーフィング後、古参兵であるダグが対外戦の経験を語り、過去には何もせず帰還した事例もあったことを明かした。ラリーは一時的に安心したが、ダグは油断の危険性を警告し、数十年単位での拘束や生存率の低さを指摘した。その言葉により、ラリーは再び戦争の現実に直面し、顔を青ざめさせた。
艦隊出発直前の出来事とティムの疑念
メレアはバンフィールド家の艦艇として戦場に向かうべく、ゲート前で順番待ちをしていた。司令官ティムは中央の戦争好きを嘆きつつも、命令に従って準備を進めていた。そんな中、小型艇がメレアへの着艦を要請し、艦隊総司令部からの指示により急遽受け入れることとなった。
アリスン・ベイカー大尉との再会
小型艇から降り立った人員の名前はアリスン・ベイカーであり、ティムと同じ苗字を持つ大尉であった。彼女の顔はティムの亡き妻に酷似しており、情報を確認すると父親の名はティムの孫と一致していた。その事実から、ティムはアリスンが自らのひ孫であると確信した。驚きと戸惑いの中で、彼は静かに帽子を取り、事実を受け入れていた。
第三話 アリスン・ベイカー
アリスン大尉の着任と監督官としての使命
メレアのブリッジにて新たに紹介されたアリスン・ベイカー大尉は、総司令部の命により配属された監督官であった。教科書通りの礼儀を示しながらも、彼女の任務は単なる乗艦ではなく、艦隊の統制を担う特殊な立場であった。彼女の監視対象は部隊全体に及び、過去の評価が低いメレアを信頼していない総司令部の意図が明らかとなった。
アリスンとエマの対立
アリスンの立場に納得できないエマは質問を投げかけたが、アリスンはそれに対して高圧的な態度を示した。自らを臨時司令と称し、命令の絶対性を主張したアリスンは、階級を越えた指揮権を振るう構えを見せた。騎士でもないアリスンが中隊を統べることに反発したエマに対し、アリスンは中央所属のエリートであることと、帝国軍中尉の経歴を持つことを根拠に、自身の正当性を説いた。
アリスンの血縁関係と周囲の反応
アリスンがティム司令の曽孫であることが明かされ、クルーたちは驚愕した。関係を問うエマに対し、ティムは無愛想に肯定した。その場の空気は一時的に和らぎ、アリスンを歓迎する雰囲気も生まれたが、アリスン本人は感情を見せず、ティムとの関係を明確に否定した。形式上の親族関係に過ぎず、私情を職務に持ち込まない姿勢を崩さなかった。
冷徹な現実の提示と部隊への侮蔑
アリスンはあくまで監視者としてメレアに乗り込んでおり、部隊を見下す態度を隠そうとしなかった。エマが反論しようとするも、アリスンは聞く耳を持たず、正規艦隊が重視される中央の方針を突きつけた。遊撃艦隊に配属された者たちの立場を格下と断じ、現実を認識すべきと告げた。
ティムとダグの私的な会話
その場からアリスンたちが去った後、ダグはティムにアリスンについて語りかけた。若くして大尉となり、中央所属であるアリスンは正真正銘のエリートであった。ティムはそんな彼女の態度を苦々しく思いながらも、自身の家庭との距離について語った。何百年も帰宅せず、家族とは形式的なつながりしか持っていないと述べ、自分はすでに家族と呼べる立場にはいないと語った。彼の言葉からは、過去に対する悔いと距離を取る姿勢がにじんでいた。
第四話 ダリア傭兵団の強化兵士
『ネイサンとシレーナの邂逅と戦場への再出発』
目覚めと再生の瞬間
ネイサンは液体に満たされたカプセル内で意識を取り戻し、自身が生きていることを確認した。記憶には、帝国軍の機動騎士に敗北し、爆発に巻き込まれた戦闘の情景が残っていた。本来であれば命を落とすはずであったが、奇跡的に生き延びていた。カプセルの外では銀髪の女性シレーナが待機しており、彼女の指示によりネイサンは救出され、対面する運びとなった。
シレーナの誘いとネイサンの葛藤
目覚めたネイサンに対し、シレーナはダリア傭兵団の団長であることを名乗り、ネイサンの身柄を確保した目的を語った。ネイサンは命を助けられたことに感謝しつつも、自らの過去と望まぬ生存に困惑を隠しきれなかった。死を望んだネイサンにとって、救助はむしろ不運であった。だが、統一軍に戻れば再び強化兵士として死ぬまで戦う運命が待つことを指摘され、ネイサンは渋々シレーナの申し出を受け入れる。彼は自らを「ネイサン」と名乗り、シレーナと共に新たな戦場へ向かうことを決意した。
新たな戦地と傭兵団の動向
時を経て、星間国家間の戦争が激化する中、シレーナ率いるダリア傭兵団は戦場に姿を現した。戦争は巨額の予算を伴い、傭兵団や武器商人にとって好機であった。シレーナは旗艦ブリッジで戦況を見つめ、戦争の長期化による利益を見込んでいた。副官として隣に立つネイサンは、普段着の下にパイロットスーツを着こみ、無関心そうに見えながらも冷静に戦況を分析していた。
戦況分析とシレーナの教育的意図
ネイサンは、帝国軍が数で優位にあるものの、オクシス連合王国の士気と指揮官の資質により、勝機は後者にあると判断した。だが、シレーナは傭兵の視点から、利益と安全を天秤にかけ、どちらにも偏らない選択を示した。このやり取りを通じて、シレーナは軍人としての価値観に染まったネイサンに、傭兵としての生き方を教え込もうとしていた。
宿敵の登場と過去の因縁
その直後、ブリッジオペレーターから帝国軍の実質的指揮官の名が告げられた。クラウス・セラ・モントという無名の騎士であったが、その名を聞いたシレーナは一瞬動揺を見せた。彼女にとってクラウスは、かつてダリア傭兵団に大打撃を与えた因縁の相手であった。ネイサンもその名を聞いて警戒心を強め、シレーナの判断を尊重する姿勢を見せた。
未知なる戦争への備え
クラウスの実力は未知数であったが、シレーナは彼を侮らず、有能な指揮官として警戒するよう部下に命じた。経験や才能、運を兼ね備えなければ指揮できない規模の戦争において、クラウスが真の実力を示すかどうかは戦場で明らかとなる。ネイサンはその言葉に頷き、これからの戦いに備えて覚悟を新たにした。
第五話 遊撃艦隊
ヴァール艦内の緊張
帝国軍と連合王国の戦場となったパロース恒星系にて、超弩級戦艦ヴァールが総旗艦に選ばれ、第三皇子クレオ・ノーア・アルバレイトが総大将としてそのブリッジに座していた。だが彼は実質的な指揮権を持たず、お飾りにすぎなかった。姉である騎士リシテアは、弟の扱いに不満を述べ、代理総司令官クラウスや周囲の無関心な態度に抗議していた。しかしクレオ自身は達観しており、軍務には不干渉の姿勢を貫いていた。
副官たちの反応とクリスティアナの立場
クラウスの補佐を務めるクリスティアナと副官のクローディアは、リシテアの発言を煩わしく感じていた。リシテアが皇族であることを知りつつも、副官たちは冷淡に接しており、それは戦局への影響を避けたいという本音の現れであった。クリスティアナは戦場経験の少ないリシテアを戦いに巻き込むことで現実を見せようと考えており、視線をクラウスへと向けつつ、戦場の複雑な背景に思いを巡らせていた。
派閥争いと情報処理能力の優位
帝国は敵国との戦争に加え、内部でも継承権を巡る派閥争いに晒されていた。クレオを支援するバンフィールド家は、敵対派閥からの妨害を警戒しなければならず、戦局は単純な軍事対決ではなかった。クリスティアナは情報処理能力に優れ、光の柱に包まれながら副官たちと共に膨大な戦術情報を処理していた。その姿は人工知能を凌駕するような知性の結晶であり、彼女の指揮が戦場の中枢を担っていた。
遊撃艦隊の不安と期待
一方、エマは臨時編制の遊撃艦隊に合流していたが、所属する騎士が自分とリック少尉の二名のみであることに驚愕していた。彼女は一個中隊以上の働きを期待される存在であったが、自身の力には限界があると認識していた。騎士の数が戦略に大きな影響を及ぼす中で、エマは過剰な期待に苦悩し、仲間の安全にも強い責任感を抱えていた。
アリスンの干渉と支援
監督官として現れたアリスンは、エマの無力さを皮肉りつつ、独自の働きかけによって三小隊の機動騎士部隊を遊撃艦隊に派遣させることに成功していた。中佐の陳情が退けられたのとは対照的に、アリスンは自らの交渉力を誇示し、エマを叱責した。正義感だけでは戦場を生き抜けないという冷徹な現実を突きつけ、彼女は自分なら正規艦隊で少佐に昇進していたとまで述べていた。
ティムとアリスンの確執
技術試験艦メレアの配置に関する司令官とのやり取りでは、艦長ティムが前方配置に異議を唱えたものの、司令官はエマの存在を理由にその要求を退けた。そこへアリスンが現れ、状況を把握した上で巧みに司令官を納得させた。彼女の登場によって交渉は円滑に進み、司令官は感謝の意を示した。だがその直後、アリスンはティムに対し激しい敵意を剥き出しにし、かつて家族を捨てた彼を皮肉った。彼女の言葉はティムの心に深い痛みを残した。
複雑に絡み合う人間関係と戦局
戦場では軍事力だけでなく、皇族の立場、派閥の思惑、個々の能力、過去の因縁などが複雑に絡み合っていた。総大将を名目だけの存在とし、実権を持つクラウスとクリスティアナが戦局を主導しつつ、エマやティムといった現場の騎士たちもまた、それぞれの立場で戦いに向き合っていた。アリスンのように冷静に現実を見据え行動する者もいれば、エマのように誠実に努力しながらも苦悩する者も存在し、星間戦争の複雑さが浮き彫りとなっていた。
第六話 帝国軍
遊撃艦隊での静かな日常
メレアが所属する遊撃艦隊は三百隻規模であり、大規模戦においては控えめな戦力であった。このため戦闘に巻き込まれる機会が少なく、メレア自身も一ヶ月以上戦闘経験がなかった。艦内ではラリーがモリーと雑談しながら整備に立ち会い、ラクーンのカスタマイズについて語る場面も見られた。エマの隊長としての成長や、ラリーの内面の変化も静かに描かれていた。
突如として出撃命令が下る
エマとダグが緊迫した表情で格納庫に現れ、第三小隊にコックピット待機の命令を出した。艦内放送がない中での命令にラリーは困惑したが、事情を聞いたところ、味方艦隊が無断で接近してきたことが理由であった。その艦隊は帝国の正規軍であり、警戒態勢を取らずに接触するよう命じられていた。
貴族指揮官との緊張の交渉
エマがモニター越しに見た帝国正規軍の指揮官は、典型的な貴族出身者で傲慢な態度を隠そうとしなかった。遊撃艦隊の司令官が合流を拒もうとするが、相手は命令を無視して合流と要塞攻略の命令を一方的に伝えた。最終的に総司令部からの命令により、遊撃艦隊は要塞攻略の先鋒として動くことが決定された。
出撃準備と隊内の不安
命令を受けたエマは機体の装備を要塞攻略用に換装するよう指示した。アインはこの決定に強く反発し、自らの隊は独自に動くと通告した。リックも出撃を渋ったが、結局は出撃する覚悟を決めた。エマはモリーに対し、武装を可能な限り積み込むよう指示し、ラリーとダグには大盾の装備を求めた。自身にも強い覚悟を課し、隊を率いる決意を固めた。
クリスティアナの苦悩と信頼
総旗艦ヴァールでは、クリスティアナが三日間休まず戦場の状況を把握していた。副官クローディアの助言にも耳を貸さなかったが、総大将代理クラウスの指摘により、ようやく休憩を取ることを決意した。クローディアの気にかけていたエマが遊撃艦隊に所属し、貴族の艦隊に強制参加させられていることを知ると、救援の手配を試みたが状況は動かせなかった。しかしクリスティアナは、成長した教え子であるエマに信頼を寄せ、淡い期待と共に後を託した。
第七話 要塞攻略に向けて
補給物資の到着と混乱
遊撃艦隊は要塞攻略を前に、総司令部からの補給物資を受け取っていた。補給部隊が航路上に先行して待機していたため、スムーズな合流が実現した。補給品の到着にモリーは驚きを見せ、エマは戦場の複雑な状況により補給先が変更された事情を説明した。物資は他部隊から回されたものであり、その措置に不満を抱く者もいたが、艦隊総司令部の配慮と受け取られた。
過剰な武装と仲間たちの不安
格納庫ではラクーンに過剰な武装が施されていた。特にダグとラリーの機体は大盾を装備し、機動性に不安があった。ラリーとダグは作戦に対する意見の相違から口論寸前となるが、エマが割って入り、自らが突破口を開くと宣言して士気を鼓舞した。ラリーは不安を抱きつつも従う姿勢を見せ、緊張した空気を和らげた。
特務陸戦隊の登場
補給物資とともに派遣された特務陸戦隊が登場し、要塞内部の制圧を請け負うことが明かされた。彼女たちはかつて惑星エーリアスで共闘した実力者であり、その存在にエマは安堵した。要塞の重要性は派閥争いに由来し、軍事的には優先度が高くないとされた。ダグはその背景に憤りを見せたが、特務陸戦隊の隊員は冷静に対応した。
ヴァローナチームの作戦方針
アイン率いるヴァローナチームは高機動戦闘を重視した装備を選択していた。武装を最小限に抑える代わりに機動性を確保し、迎撃システムの破壊に集中する作戦である。アインは自身と部下の技量に自信を持ちつつ、バンフィールド家内の派閥や兵器開発における政治的背景を懸念していた。彼は今回の戦いがヴァローナ採用に影響する可能性を意識していた。
リックの消極的な態度
アーマードネヴァンを担当するリックは、戦場投入に対して消極的であった。開発責任者は実戦での成果が採用に直結することを説くが、リックは不満を口にしつつも任務遂行を決意した。戦争を嫌う彼は、本来のテストパイロットとしての仕事から逸脱している現状に強い不満を抱いていた。
メレアの最前線配備とアリスンの焦り
メレアは遊撃艦隊の中でも特に前線に配置され、要塞攻略戦の先鋒を担うこととなった。その理由は最新鋭の機動騎士が多数配備されているためであった。アリスンは表向きには合理的と述べたが、内心では自身の戦略が裏目に出たことに焦りを感じていた。ティムの助言に対し、アリスンは激しい言葉で返し、自身の上昇志向を隠さなかった。彼女は今回の戦いを機にさらなる地位向上を目指していた。
第八話 稲妻の騎士
要塞攻略戦と派閥争いの構図
連合王国軍の攻勢により、一度は放棄された要塞の奪還作戦が帝国軍によって開始された。編成の中心は寄せ集めのパトロール艦隊であり、唯一実戦的な戦力としてバンフィールド家の遊撃艦隊が加わっていた。指揮を執るのはカイゼル髭が自慢の少将で、派閥争いの利害によって要塞奪還に執着していた。目的は戦略上の意義よりも、皇太子カルヴァン派の面目を保つことにあった。
バンフィールド艦隊への思惑と少将の腹黒い計略
少将はバンフィールド家の艦隊を前線に立たせ、自軍の損耗を抑えつつ彼らの戦力を削ぐつもりであった。少将の副官である美貌の女性士官は、彼の私的な支援者として振る舞い、バンフィールド艦隊に対する私怨からも作戦に熱を上げていた。二人の会話には、個人的な憎しみと派閥間の確執が色濃く反映されていた。
作戦開始と意外な展開
作戦が開始されると、遊撃艦隊が要塞の砲火を浴びる中、予定外の早さで機動騎士部隊が出撃を開始した。指揮を任されていたアリスンは実戦経験の乏しさを露呈し、船の性能や距離感を誤認していた。その状況を見かねたティムが指揮権を奪い、的確な命令で艦の防御と出撃準備を整えた。アタランテに搭乗するエマは、先行して要塞へ向けて出撃した。
アタランテの突撃と迎撃システムの突破
エマは抜群の操縦技術で迎撃網をかいくぐり、多目的ライフルによって敵砲台やシステムを次々に破壊した。反応速度とアタランテの高性能を活かし、敵の動きを封じ込めた。要塞へ最初に接触したエマは、アサルトライフルやミサイルを駆使して防衛施設と敵機動騎士を一掃し、要塞表面に着実な足場を築いた。
後続部隊の着陸と陸戦隊の投入
続いて到着したダグやラリーのラクーン部隊が要塞に着地し、特務陸戦隊の兵士を安全に運び込んだ。荒々しい着地にも関わらず、兵士たちはユーモアを交えて指示に従い、要塞内部への侵攻を開始した。後続のラクーン部隊も無事到着し、エマは誰一人欠けることなく戦線に立てたことを確認して安堵した。
要塞制圧への布石と新たな段階へ
エマは迅速に命令を出し、陸戦隊の支援と残存迎撃システムの破壊、さらに現れた敵機動騎士への警戒を全隊に通達した。要塞奪還は個人の私怨や派閥争いを超え、前線の兵士たちによる実直な戦闘によって進められていた。戦いは新たな局面を迎えつつあった。
第九話 技術試験隊の力
要塞攻略戦と帝国軍の分裂
要塞接近と遊撃艦隊の作戦
アタランテが要塞に取り付くと、迎撃システムの破綻により遊撃艦隊が次々に機動騎士を展開し、短時間で突破口を築いた。被害は予想よりも軽微であり、艦隊単独で要塞への足掛かりを確保した様子にアリスンは驚愕した。ティムは要塞内に潜む騎士の数を懸念していたが、アリスンは指揮権を奪われたことへの感情を抑えきれず、ティムと対立した。
アインの援護とラクーン中隊の苦戦
要塞表面での戦闘では、アイン率いるヴァローナチームも砲塔の破壊を続けていたが、弾薬が尽きかけていた。アインは近接武器を装備して仲間の支援に回る判断を下し、味方と協力して戦局を乗り切る姿勢を示した。アタランテの戦闘力に敬意を抱きつつ、自身も再び戦場へと身を投じた。
アーマードネヴァンと敵機の奇襲
戦場の全体像を把握していたアーマードネヴァンは、要塞の隠し通路から出撃した高性能な敵機動騎士の奇襲を受けた。単独で対応する決意を固めたリックは、敵の装備を的確に破壊し、ミサイルによって三機を撃破した。弾薬が尽きたリックは逃走を余儀なくされつつも、アタランテの存在に安心感を覚えていた。
アタランテの迎撃と戦果
新たに出現した連合王国の騎士たちに対し、エマはアタランテで立ち向かい、接近戦と二丁拳銃による攻撃で次々に敵機を撃破した。連携と機動力を活かして最後の敵も地面に叩きつけ、要塞表面の制圧に貢献した。戦果を確認したエマは、メレアからの帰還命令を受け入れ、中隊全機と共に帰投した。
作戦成功と評価の分裂
要塞の八割を制圧し、敵司令部の確保にも成功した帝国軍では、バンフィールド家の戦果に対する評価が高まっていた。エマの指揮と中隊の働きは高く評価され、アリスンはその実力を認めつつも、彼女の離任を望むティムに反発した。ティムは命令だけで動くエマを好ましく思わず、機械のような存在と捉えていたが、アリスンは優秀な人材を軽視する姿勢に怒りを募らせた。
帝国軍内の不満と傭兵団の登場
要塞攻略に乗り遅れた帝国軍少将は、バンフィールド家の功績が大きすぎることに憤慨していた。自らの作戦が失敗に終わったことに苛立ちながらも、部下たちは少将をなだめようとした。その時、著名なダリア傭兵団が接触してきたことで、状況は新たな展開を迎えようとしていた。秘書官はその名に驚きつつも、意図を測りかねて困惑していた。
第十話 傭兵という存在
ダリア傭兵団と要塞攻略後の交渉
要塞の視察と交渉の機会
ダリア傭兵団の旗艦ブリッジにて、シレーナは既に攻略された要塞を眺めて落胆していた。戦果に参加できず稼ぎの機会を逃したことに不満を抱きつつ、ネイサンに商機の重要性を説いた。シレーナは要塞への合流と補給の交渉が必要と考え、巧みにその道筋を組み立てていた。消耗した戦力の整備と補給を求め、要塞の再整備に協力するという名目で帝国軍少将と交渉に臨んだ。
帝国軍との交渉成立
シレーナは礼儀正しく少将に接し、要塞防衛のためにダリア傭兵団を雇用することを提案した。防衛体制が不十分であることを指摘し、その隙を埋める形で自らを売り込んだ。少将は不満を抱えながらも、戦力としての価値を認めて契約に応じた。ドック使用と補給・整備を条件に、傭兵団の協力が決定された。
要塞内部の混乱と物資不足
一方、少将の執務室では、要塞内部の物資不足が発覚し、補給が困難な状況となっていた。秘書官は傭兵団への補給物資が足りないことを懸念し、少将も困惑する。傭兵団を敵に回せば情報漏洩や寝返りのリスクもあると判断した少将は、物資調達のために周辺宙域の探索を命じた。
騎士サイラスの登場と略奪の示唆
そこへ現れたのが少将配下の実力派騎士サイラスである。彼女は実家から追放された身でありながら、実力で地位を築いていた。物資調達の名目で要塞外での行動許可を求め、傭兵団の協力も取り付けようとする。少将はその行動を黙認し、必要であれば戦力を引き連れることも許可した。
エマの抗議とダリア傭兵団団長との再会
要塞ドックでは、エマが補給と整備の遅延に対して怒りを爆発させていた。帝国正規軍の担当者は取り合わず、騎士団の扱いに不満が募っていた。そこにシレーナが姿を現し、かつての因縁を持つエマと対面する。屈強な部下に囲まれたシレーナの登場に、エマは激高して飛びかかったが、抑え込まれてしまった。
力の差と屈辱の再確認
エマはかつてより強くなっていたが、シレーナとネイサンの連携には及ばず、関節技で制圧された。無重力下で締め上げられ、苦痛と共に敗北を味わう。ダグとラリーが制止し、エマも事態の重大さを理解した。シレーナは一連の暴力を軽くいなして去って行き、エマはその場に残された。
敗北の痛みと決意
折られた腕の痛みの中で、エマは己の未熟さを痛感した。機動騎士なしの生身では敵わぬ相手に対して、再会時には勝つという強い意志を胸に刻んだ。シレーナとの因縁は終わっておらず、次の戦いに向けた決意が、エマの中で新たに芽生えていた。
第十一話 略奪
要塞内での騒動とその影響
エマはシレーナへの暴走によって腕を負傷し、医務室でアリスンから叱責を受けた。今回の件により、要塞司令部はエマ個人だけでなく遊撃艦隊全体に対して補給と整備を後回しにする処分を通達していた。エマの行動が遊撃艦隊に不利益をもたらしたとして、周囲からも批判の声が上がった。要塞からの要求により、メレアは偵察任務に派遣されることとなり、エマも自責の念を抱きながら命令に従うこととなった。
メレアでの反応と偵察任務の準備
メレアのクルーたちは、せっかくの休息が偵察任務に変わったことに不満を抱いていたが、エマの事情も理解していたため、直接的な非難は避けられていた。ティムとアリスンの間では責任の所在を巡る言い合いも起きたが、要塞から届いた救援要請が状況を変えた。諸国連合に属する未登録惑星からの通信に対し、帝国の命令ではないにもかかわらず、ティムは様子を見に行くべきと主張し、アリスンの反対を押し切って偵察任務を開始した。
機体整備の問題とヴァローナの支援
出撃準備においては、機動騎士ラクーンの整備が難航していた。モリーは出撃機数の確保に頭を悩ませたが、ヴァローナ小隊のアインが支援を申し出たことで状況が改善された。アインは過去の失礼を詫び、エマに敬意を表した。エマはその言葉を受け入れ、チームとしての結束を深めた。
リックとアーマードネヴァンの整備
一方、整備中のアーマードネヴァンを眺めるリックは、戦うよりも自由を優先する姿勢を崩さず、整備士から皮肉を言われても意に介していなかった。彼にとって出世や責任よりも、機動騎士を操縦することが何より重要であった。
偵察任務と帝国軍の略奪行為
エマたちは目的地に到達し、未登録惑星にて帝国軍が物資を略奪し住民を襲っているという衝撃的な現場を目にした。抗議に対して帝国軍は、非帝国民を相手に合法的な摘発を行っていると主張し、略奪行為を正当化した。その様子をモニター越しに見たエマは強い怒りを覚え、アインは戦争の現実として受け入れるよう諭したが、エマは自らの正義を貫く覚悟を固めた。
エマの独断による出撃
エマはヴァローナチームに帰還を命じ、自らの独断で出撃を決意した。帝国軍による非人道的な行動を見過ごすことは、自らの理想と信念を裏切ることであると悟ったエマは、アタランテで単独出撃を強行し、大気圏へと突入していった。彼女は、正義の騎士としての覚悟を貫くことを選んだのである。
第十二話 義士
救援要請と揺れる決断
総旗艦ヴァールの指揮官クリスティアナは、かつて滅んだ故郷ミスティリアからの救援要請を受けた。生存者の存在に喜びを覚えながらも、軍の指揮官としての責務との間で苦悩した。副官クローディアを含む部下たちは、救助のための軍派遣を進言したが、クリスティアナは私情を排して任務を優先する決断を下した。だが、その場にいた騎士クラウスが一つの提案を持ちかけたことで、状況に新たな動きが加わった。
正義と命令の狭間
別艦メレアでは、騎士エマが独断で帝国軍の略奪行為に立ち向かったことが問題視された。監督官アリスンは、全軍の統制を崩さぬために彼女の行動を止めようとしたが、司令ティムは旧軍時代の矜持を思い出し、逆にアリスンを拘束してエマの援護を命じた。かつての髪型リーゼントに整えたティムは、仲間の意志を貫く覚悟を決め、メレアの突撃を宣言した。
モーヘイブとの戦闘と正規軍の腐敗
エマは惑星に降下し、帝国軍の正規部隊であるモーヘイブ部隊と交戦した。敵の練度の低さと略奪に対する無関心に怒りを覚えつつも、敵の行動から正規軍の腐敗ぶりを知る。戦闘中、部下のアインが率いるヴァローナチームが加勢し、エマとともに敵を次々に撃破していった。
赤いワイルダーとの死闘
エマは赤い機体のワイルダーを駆る女性騎士と交戦した。相手は戦場の混沌を好み、強者として弱者を虐げることを当然とする思考の持ち主であった。エマはアタランテのリミッターを解除し過負荷状態へと移行。圧倒的な速さと戦闘技術でワイルダー部隊を次々に撃破し、最後には赤いワイルダーの手足を破壊して戦闘不能に追い込んだ。
戦場に迫る新たな敵
勝利の余韻も束の間、アインは新たな敵勢力の接近に気付き警告を発した。降下してきたのは、名のある傭兵集団ダリア傭兵団であり、エマたちにとっては新たな脅威であった。かつての因縁を持つ団長シレーナの姿を確認したエマは怒りに燃え、操縦桿を握って迎撃に向かった。
ゴールドラクーンとの再戦
エマが挑む相手は、奪われた機動騎士ゴールドラクーンを操るシレーナであった。禍々しい武装と重装備を備えた敵に対し、過負荷状態を解いたばかりのアタランテで立ち向かうエマの戦いは、過酷な空中戦の幕開けであった。両者の再戦は、この戦場に新たな波乱をもたらした。
第十三話 屈辱
夢想の騎士と執念の攻防
戦場での劣勢
エマは負傷した右腕でアタランテを操縦し、ゴールドラクーンを駆るシレーナとの戦いに挑んでいた。右腕の痛みに耐えながら操縦を続けるが、アタランテの右半身の動きが鈍く、シレーナはその弱点を突いて攻撃を仕掛けた。機体の反応過敏性と繊細な操縦が求められる状況下で、エマは苦戦を強いられた。
機動騎士同士の死闘
シレーナはアタランテの右腕を破壊し、エマを追い詰めていく。攻撃は執拗で、過去の恨みを晴らすかのようであった。だが、エマは左足で反撃を試み、ゴールドラクーンの股関節に蹴りを放ってダメージを与えた。その一撃で左足も破損しながらも、彼女は戦意を失わずにいた。
劣勢を覆す執念
シレーナはエマのしぶとさに苛立ち、精神的に追い詰められていた。成長し続けるエマの姿に脅威を感じた彼女は、ここで止めなければ自らが追い越されると直感していた。アタランテの性能やバックアップ体制に劣ることを認めながらも、戦い続ける中で徐々に押されていく。
決定的な勝利の瞬間
エマは機体性能の差を武器に、ゴールドラクーンの腹部――コックピット下部に拳銃のブレードを突き立て、銃撃によって内部を破壊した。致命傷を負ったゴールドラクーンは飛行バランスを崩し、エマの勝利が目前に迫った。しかしその時、統一軍のグラディエーターが上空から現れ、アタランテに向けて威嚇射撃を行った。
突如現れる統一軍の介入
ネイサンはエマに降伏を求め、部下たちの命を盾に戦闘中止を迫った。ヴァローナチームがすでに包囲されていることが判明し、エマはシレーナへの引き金を引くことを断念した。隊長の言葉に心を動かされながらも、最終的に武器を捨てて降伏を選んだ。
シレーナの屈辱と帝国の動き
シレーナは敗北寸前で命を拾い、しかしそのことに激しい屈辱を覚えていた。彼女はアタランテを自らの手で倒したかったという思いを抱きながら、悔しさに涙を流した。その間、帝国正規軍はエマたちを捕縛しようとし、正規軍の横暴さが露わになった。
エマの拘束と逆転の契機
エマは武装兵士により地に伏せられ、帝国の陪臣騎士として見下されながら捕縛された。夢を諦めかけていたエマの前に、ティムが現れ、自らが命令を出したとして共に捕らえられることを申し出た。だが女性騎士は嘲笑し、二人を拘束するよう命じた。
ヴァールの到来と形勢逆転
突如として総旗艦ヴァールが姿を現し、搭載された機動騎士が帝国軍を制圧していった。クラウスが第三皇子クレオの名の下に命令を出し、帝国軍を拘束対象とした。騎士たちは狼狽え、処分の決定に従うしかなかった。
救出と再起の兆し
ヴァールから降下した小型艇から、クローディア准将がエマの前に現れた。彼女は敬礼を試みたエマに苦笑し、これから惑星住人との会談に同行するよう命じた。エマは予想外の救出劇に戸惑いながらも、新たな局面を迎えることとなった。
第十四話 後始末
鮮血鬼チェンシーの襲撃
少将の執務と襲撃前の静寂
少将はサイラスの帰還を待ちながら、秘書官と共に執務室で書類仕事をこなしていた。形式的な決裁に不満を漏らしつつも、紅茶を楽しみながら業務を続けていた。しかし、外で異変が起きたことで事態は一変する。扉が無断で開かれ、武装した陸戦隊が突入してきた。彼らは帝国軍の装備を使用していたため、少将は反乱軍と誤認したが、秘書官はバンフィールド家の部隊と即座に見抜いた。女性騎士が前に出て、クレオ殿下の命令により少将らを拘束する旨を告げたことで、少将と秘書官は敗北を悟り、無抵抗のまま連行された。
女性騎士による拘束と少将の絶望
女性騎士はバンフィールド家の遊撃艦隊を冷遇していた件を挙げ、少将に対して冷ややかな態度を見せた。少将は実力者である彼女に無駄な抵抗をすれば殺されると判断し、抵抗を諦めた。エセル大佐と呼ばれる彼女の命令で、少将もまた執務室から連れ出された。少将は失敗の原因を理解できぬまま、己の運命に沈んでいった。
サイラス隊の脱走と内部の動揺
一方、サイラス率いる機動騎士部隊は捕縛される直前に強引な脱走を図っていた。彼らは軍事裁判を避け、生き延びるために小型艇の奪取を試みていた。サイラスは軍事裁判が温室育ちの人間たちによって行われ、戦場の論理が通じないことを理解していたため、逃走を正当な選択と捉えていた。部下がカルヴァン派の後ろ盾を期待するも、サイラスはそれを否定し、現在の派閥抗争下では見捨てられると断じた。
奇襲者チェンシーの登場
逃亡計画を進めるサイラスたちの前に、一人の黒髪ツインテールの女性が現れた。彼女は血塗れの赤い衣装を身にまとい、双剣を手にしていた。サイラスの部下たちは次々と斬り伏せられ、騎士としての本能を持つサイラスはこの女性が尋常ではない存在であると即座に理解した。彼女はチェンシー・セラ・トウレイ――“鮮血鬼”の異名を持つ、戦いを好む凶暴な騎士であった。
圧倒的暴力と恐怖の結末
チェンシーは捕縛命令を受けていたが、抵抗の有無に関わらず殺害を許可されていた。サイラスは降伏を申し出たが、それを拒まれた。部下たちは恐怖と混乱の中で次々と殺され、サイラスも絶望的な状況に追い込まれた。彼は命乞いと改心を訴えたが、チェンシーの手によって容赦なく斬首された。チェンシーは満足げに笑い、クラウスへの報告を楽しげに語りながら立ち去った。
第十五話 姫騎士
崩壊した都市での葛藤と覚悟
クローディアに連れられたエマは、瓦礫と煙が立ち込める廃墟の都市に赴いた。避難民の様子に心を痛めながらも、クローディアは彼女に現実と向き合わせた。エマの行動が事態を悪化させた可能性を指摘しつつも、騎士としての成長を認めていた。エマは自らの正義と行動に疑問を抱きながらも、クローディアから人としての敬意を受けた。
惑星放棄命令と住民たちの抵抗
バンフィールド家の騎士たちは、過酷な環境の惑星からの退去を住民に強要した。住民たちは苦労して開拓した土地を離れることに強く反発したが、帝国側は不法滞在とみなし一切譲らなかった。エマはこの冷酷な対応に抗議しようとしたが、クローディアに現実の厳しさを諭され、帝国の非情な方針に無力感を覚えた。
メレアでの再出発とクルーの変化
ティム司令がリーゼント姿で復帰すると、クルーたちにからかわれながらも士気を高めた。かつての反骨精神を思い出させたのはエマの行動であった。ティムは、再び前線で戦う覚悟を取り戻し、避難民の移送任務に全力を尽くすよう指示した。
クリスティアナと同郷の再会
格納庫でラリーが出会った美しい女性騎士は、ミスティリア出身のクリスティアナであった。彼女は住人たちを陰から見守っていたが、ラリーの悪戯によって彼らと再会することとなる。住民たちは涙ながらに彼女の無事を喜び、クリスティアナも彼らを守ると誓った。過去の苦しみと後悔を抱えながらも、彼女は償いの機会を得ていた。
エマへの評価と意外な昇進
メレアに戻ったエマは、監督官のアリスンに平手打ちされ叱責された。しかし、クリスティアナとクローディアが現れ、エマの行動を肯定した。アリスンは視野の狭さを指摘され、エマの判断が全体的には正しかったと評価された。そしてエマはその場で少佐に昇進することとなり、驚きと戸惑いを見せた。アリスンは苛立ちを露わにするが、エマは以前よりも強くなっていた。
姫騎士の誓いと希望
クリスティアナは、かつて守れなかった故郷の民と再び出会い、自責の念を抱きながらも、新たな誓いを立てた。かつて「姫騎士」と呼ばれた彼女は、自らの過去を受け入れ、再び人々を導く決意を固めた。生き残った人々の希望となるべく、彼女の目は前を向いていた。
特別編 アリスンの自慢話
護送任務と騎士たちの会話
バンフィールド家の艦艇は護衛艦に守られながら、本星ハイドラを目指して航行していた。艦内には、滅びたミスティリアの生存者を運ぶメレアの姿もあった。ブリッジでは緊張が緩み、ティムが髪型を整えながらエマ・ロッドマンの出世を話題にしていた。アリスンは不機嫌な様子で応じつつ、エマの急速な昇進や、彼女が配備された背景について懐疑を抱いていた。
エマの評価と配属の不自然さ
エマはかつてDランク騎士として左遷される身だったが、その後は実験機アタランテの受領と成功によって評価を覆した。さらに、上層部との繋がりを強め、順調に階級を上げた経緯が語られた。しかし、アリスンはエマが同時に複数の有力騎士――クリスティアナ中将とマリー中将――から支持を受けていることに違和感を抱いていた。彼女らは対立関係にあるため、双方から好かれるエマの立場には裏があると疑念を示した。
エマとアリスンの確執
ティムがエマの人望や過去の任務での好印象に触れると、アリスンは嫉妬交じりに反論した。エマが自分の立場や実力を正当に理解していないことが我慢ならず、アリスンの苛立ちは募った。ティムは、エマがアリスンを羨ましがっていたという情報を挙げ、アリスンの満足げな表情を引き出した。
アリスンの自慢話と周囲の反応
別の場面では、アリスンがエマたちの食事中に現れ、伯爵の副官候補に挙がっていたという自慢話を始めた。その主張は、優秀な人材として帝国軍から認められたという内容であり、誇らしげに語られた。周囲は困惑しつつも、エマは動揺を隠せず、羨望と苛立ちを混ぜた反応を示した。
エマの憤りとアリスンの優越感
アリスンは副官選出に選ばれなかったことを淡々と認めつつも、それでもエマよりは上の存在だと強調した。これに対しエマは怒りを露わにし、階級では自分の方が上だと主張した。アリスンは中央所属の自分こそが正統だと返し、二人の口論は白熱した。
周囲の冷静な観察と茶化し
口論をよそに、ダグとラリーはティムの外見の変化に驚きつつ、老いの現実を語り合った。二人はエマとアリスンの激しいやり取りに呆れ、キャラ崩壊気味な会話に苦笑していた。
加熱する口論と結末
最終的に、エマとアリスンの応酬は激化し、互いの立場や経歴を貶し合う泥仕合へと発展した。規律を盾にしたエマと、中央の誇りを掲げるアリスンの衝突は収まらず、周囲の騎士たちは言葉もなく見守るしかなかった。
同シリーズ
あたしは星間国家の英雄騎士!




本編
俺は星間国家の悪徳領主! シリーズ












同著者作品
乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です シリーズ













セブンスシリーズ










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