どんな本?
「理想のヒモ生活」とは、渡辺恒彦 氏によるライトノベル。
日本でブラック労働をしていた善治郎は久しぶりの休みの日に異世界に召喚された。
その召喚主は善治郎の好みドストライクの美女だった。
そんな彼女は大国の女王で、善治郎に婿に来て欲しいと言う。
善治郎は躊躇なく「はい」と返事をして地球で婿に行く準備をしていざ異世界へ、、
後宮に引き篭もるヒモ生活を享受出来ると思っだが、、
女王が妊娠したら悪阻が酷く、彼女の代理として政治の表舞台へと行くと、世間が彼を後宮に引きこもる事を許してくれなくなった。
さらに彼の持ち物のビー玉が隣国双王国の付与魔術の媒体として最高品であると判ると、、
さらに善治郎の血統も、、
そんなタイトル詐欺と言いたくなるほど大忙しな善治郎のヒモ生活。
北方大陸から来た姫君を大陸間交易をする絆を得るため、姫君を側室として迎えるため120日もの大航海へ・・
読んだラノベのタイトル
理想のヒモ生活 12
著者:渡辺恒彦 氏 イラスト: 文倉 十 氏
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あらすじ・内容
ドラマCDつき豪華特装版が登場! あの侍女三人組が音声に! ついに北大陸に到着。異国の地で一人、ヒモ男が奮闘する!
木造帆船での長く危険な航海の末、遂に『黄金の木の葉号』は北大陸に到着する。フレア姫の判断で、一行は『教会』の影響が比較的弱いという、ポモージエ港へ停泊することとなった。久しぶりの陸での生活に羽を伸ばしていると、買い物に出かけていた侍女のマルグレーテが、路地裏で孤児の少年に声をかけられる。 なんでも、善治郎たちと同じ宿に泊まっている、ヤン司祭に言伝を頼みたいのだという。 「放っておいたら大変なことになる」という少年の言葉を聞いた善治郎は、 ヤン司祭に事の顛末を伝え、宿で共に話を聞くことになる。 そこで少年が口にしたのは、なんと「『騎士団』がこの国を攻めてくる」という内容だった。
理想のヒモ生活12
感想
プロローグでいきなり「島が見えたぞー!」だもんな。
もう到着かと思ったら出航から40日、遭難せずに以前、黄金の木葉号が接岸した無人島に着いたみたいだ。
その名も山羊島!!
自然破壊上等に、無人島に山羊を放って繁殖させてたらしい。
山羊は順調に増えてたようだ。
緑を食い尽くしたらどうなるんだ?
久しぶりの陸を堪能して、更に43日後に北大陸中部のポモージエ港に寄港した。
南部は教会の勢力が強くて、余程のことが無ければ寄りたくなかったらしい。
南大陸からしたら結構ヤバイ宗教勢力図じゃないか?
反対に言えば、挟まれてる訳か、、
でも、宗教の自由を旗頭にすれば?
いや、弱いな。。
そして、今回の舞台になる街は地理的に北部のフレア姫の母国に1番近い国際港だそうな。。
政治形態は貴族制共和国で宗教の自由を認める珍しい国でもある。
その港の宿に滞在するのだが、、
司祭のヤン、傭兵のヤン、そして侍女兼密偵のマルグレーテが連れて来た浮浪児のヤンの話からキナ臭くなって来た。
宗教的に他宗教を赦さない北方騎士団が攻めて来るそうな。
それだけを聞いたらいつもの事なのだが、国境線ではなく、国境から離れた舞台の港街に攻めて来るとなると話が違って来る。
フレア姫の王族の地位を利用して領主に直接話をして、傭兵のヤンの指揮の下、傭兵をかき集めていたら共和国の王女がししゃり出て来た。
そして、傭兵と騎士団の騎兵の対決は30丁鉄砲の一斉射で騎兵の馬が大混乱。
そのおかげで騎兵を撃退。
それを知った善治郎は、北大陸と南大陸の技術格差に愕然とする。
その対抗手段として、魔道具の大量生産の構想を練るのだが、、
その前にフレア姫の父親に挨拶するという大仕事に頭を痛める。
北大陸が銃を大量生産出来たら、農民がいきなり銃兵になれるわけだからな、、
北大陸は兵士の動員数も桁違いに有利になる。
それに対抗するのはそう簡単な事じゃないぞ、、
更に今回の騎士団の攻めて来た理由も宗教の違いという、他国を侵略する大義名分も凄く緩い。
そして、フレア姫の母国もこの争いに巻き込まれてしまう。
宗教派閥の戦争、、
南大陸からしたら、内輪揉めしてくれてた方が良いけど、、
ドンドンきな臭くなって来たなぁ、、
善治郎が当初想定していたヒモ生活から物凄く遠のいてる。
善治郎!
強く生きろよ!w
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理想のヒモ生活 シリーズ
小説版
漫画版
その他フィクション
備忘録
プロローグ 山羊島
「島が見えた!」と若い船員ボリスの声が響き渡った。
『黄金の木の葉号』の船員たちは、長い航海の末に待ち望んだ陸地を見つけ、歓喜に包まれた。
船内で善治郎は縄梯子を使って甲板に上がった。長い航海の影響で彼もナタリオら騎士たちも疲れ切っていた。
甲板に上がると、船員たちが手すりを譲り、善治郎は安堵の息を吐いた。
善治郎はルクレツィア(ルーシー)と共に島を眺め、互いの身だしなみを気にする話をした。
彼はハンモックの提案を思いつき、フレア姫に話してみることを考えた。
ルクレツィアも散髪の相談を善治郎に持ちかけたが、彼はイネスに頼むよう勧めた。
フレア姫は船首楼からの確認で、小島が見つかったことを告げた。航海士によると、往路で立ち寄った島の可能性が高いという。
船員たちは上陸の準備を進め、慎重に船を島に近づけた。
副長のマグヌスは船員たちに指示を出し、『黄金の木の葉号』はゆっくりと小島へと進んでいった。
結論として、善治郎たちは無事に小島に上陸した。
見張り台の船員が島を発見したのは午前10時過ぎだったが、上陸できたのは午後4時近くだった。
船員たちは日が落ちる前に寝泊まりする場所や水源を確保するため、忙しく動き回っていた。
善治郎は動き回る船員たちを見ながら、倒木に腰を掛けて休んでいた。
波飛沫を浴びて冷えた体を焚き火で温めながら、善治郎は隣に座るルクレツィアに「大丈夫か?」と声をかけた。
ルクレツィアは怖かったと答え、善治郎は温かいお湯を差し出した。
時間が経ち、フレア姫が善治郎たちの元に近づいてきた。
善治郎が立ち上がろうとするとフレア姫は「そのままで」と制し、陸酔いの影響を心配した。
フレア姫は野営の準備が順調に進んでいると報告し、山羊やハーブを使った補給計画を説明した。
善治郎はフレア姫に一泊二日の一時帰宅を提案し、デジタルカメラを使って『瞬間移動』の準備をした。
翌朝、善治郎は島を簡単に探索し、カメラで撮影した後、カープァ王国に一時帰国した。
フレア姫とルクレツィアは島での生活について話し合い、善治郎が持ち帰る補給物資を楽しみにしていた。
フレア姫は善治郎の一時帰国を「少しずるい」と感じていたが、ルクレツィアは曖昧に笑ってごまかすしかなかった。
その翌日の昼頃、善治郎は無人島に『瞬間移動』で戻ってきた。
背中に大樽を背負い、リュックや小さな袋を両肘にぶら下げ、両手でデジタルカメラを持つ姿は、まるで全員の荷物を持たされた小学生のようであった。
後ろに倒れそうになった善治郎を、侍女イネスが支えた。
善治郎が「酒を持ってきたぞ!」と叫ぶと、船員たちは大歓声を上げた。
その夜、船員たちは焚き火を囲み、善治郎が持ってきた麦酒で酒盛りを始めた。
船員たちは歌を歌い、笑い話や過去の武勇伝を語り合い、宴会を楽しんでいた。
善治郎はルクレツィアに「髪を整えたのだな」と声をかけ、彼女はイネスに切ってもらったと答えた。
善治郎はシャンプーや香油、ヘアピンをルクレツィアに贈り、彼女は喜んで受け取った。
善治郎は髪を切り、ひげを剃ってすっきりとした姿で戻ってきたが、明日からの船旅を憂鬱に感じていた。
ルクレツィアも同様に、再び船に戻ることを思い出して肩を落とした。
善治郎は小舟での移動の恐怖を語り、ルクレツィアを勇気づけた。
宴会は続き、善治郎も船員たちと共に麦酒を飲み、肉を食べて楽しい時間を過ごした。
焚き火に照らされた無人島での宴会は、陽気な雰囲気の中で進んでいった。
第一章 三人のヤン
無人島を出立してから四十三日後、船『黄金の木の葉号』はポモージエ港に入港した。
船は糧食や水、船体の状態も問題なく、フレア船長は南方諸国の港への緊急停泊を避けた。
船内では、上陸の準備が進み、船員たちが忙しく動いていた。
ポモージエ港は国際港として開かれており、『黄金の木の葉号』の停泊には問題がない。
ただし、ポモージエは大貴族の領都であるため、フレア姫と陛下は挨拶を行う必要がある。航海中、善治郎は船酔いはしなかったが、元気はなかった。
フレア姫はポモージエ港がズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国に属しており、国民の信仰の自由が認められていることを教えた。
ポモージエ港は、その規模や設備でカープァ王国の最大の港を上回っており、主流は三本マストの大型船である。
善治郎はその造船技術を賞賛した。
無事にポモージエ港に停泊することができた。
ポモージエ港に入港した善治郎たちは、港近くの高級宿に宿泊している。
善治郎はバスルームを利用後、長い船旅の疲れを癒やすため昼寝をした。
夕食時、フレアは領主館に説明のため留まっており、ルクレツィアは休んでいるため、善治郎は一人で食堂へ向かった。
食堂は非常に豪華で、カープァ王国式のテーブルマナーで食事を楽しんだ。
その後、隻眼の傭兵ヤンから同席を求められた善治郎は、彼と会話を交わす。
ヤンは自身が傭兵隊長であり、ある司祭に雇われていること、彼の任務は情報収集と護衛であることを明かした。
彼らは蒸留酒を飲みながら、善治郎の背後にある情報や彼の正体を探ろうとしたが、善治郎には害のない人間と判断し、何も報告することがないとヤンは結論づけた。
その後、善治郎は花火の匂いを思い出し、ヤンとの会話を振り返りながら部屋へと戻った。
翌日、朝食後もフレアは帰ってこなかった。善治郎たちにとっては予期せず自由時間ができたが、善治郎ができることは限られていた。
この地では目立つため、不用意に出歩くわけにもいかないし、瞬間移動でカープァ王国に戻ることもできなかった。
そのため、善治郎は部下たちへの労いを考え、支配人に通貨の両替を依頼した。
支配人はカープァ王国の大判銀貨を個人的に買い取ると提案し、両替は成功。善治郎は部下たちに現地通貨を配り、一時休暇を与えた。
侍女マルグレーテはこの休暇を利用してポモージエの町を散策し、高級店で布地を購入した。
その後、孤児の少年が彼女に声をかけ、司祭との面会を求めた。
少年はヤンと名乗り、同名の司祭に会いたいと切望していた。
その夜、善治郎は宿の一室で騎士、兵士、侍女たちから休暇中の報告を受けた。
報告はほとんどが特筆する事項がない内容だったが、一人の侍女がポモージエの港や街並みを写真に撮ってきた。
善治郎はこれを女王アウラに伝えると告げ、侍女に褒美を約束した。
その後、マルグレーテが昼間の出来事について報告した。
孤児の少年が司祭に会いたいと訴えていたため、マルグレーテはその依頼を受けたが、これが職務から逸脱していた。
善治郎はこれを特例として不問にし、孤児の少年が伝えたいことの重要性を認めた。
少年の言う村について調べたが、周辺にそのような村は存在しないとわかった。
善治郎は少年が遠方から来たと推測し、その行動の真剣さを評価した。
善治郎は翌日、傭兵ヤンにこの件を相談することに決めた。
翌朝、善治郎は食堂で朝食を取りながら、隻眼の傭兵ヤンに会いたいと伝えた。
隻眼の傭兵は、ヤン司祭がポモージエの領主館で歓待を受けており、しばらく戻らないと述べた。善治郎は、孤児の少年がヤン司祭に会いたいという依頼を受けており、これを伝えた。
隻眼の傭兵は、ヤン司祭が救いを求める者の声に耳を貸す人物であることを説明し、善治郎の要望に同意した。
善治郎は隻眼の傭兵に少年について問い合わせたが、傭兵は知らなかった。
最終的に、善治郎はヤン司祭に会った際に少年の言葉を伝えることを決め、隻眼の傭兵はそれに同意した。
二人は友好的に会話を交わし、朝食を終えた。
善治郎が朝食を済ませて小一時間後、ヤン司祭との対面を目論むものの、ヤン司祭は戻らず、女戦士スカジがポモージエ領主館から戻ってきた。
スカジは善治郎を領主館へ非公式に招待したいと述べ、その招待は南大陸の王族としての認識を前提としている。
招待は非公式であるが、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国がカープァ王国を正式に認めていないため、公式の場ではない。
スカジによると、ヤン司祭も領主館に滞在しており、歓迎会での対面が見込まれる。善治郎はこれを機に南大陸の王族として認識される好機と見る。
ルクレツィアもこの会話に加わり、善治郎のフレア姫へのエスコートが必要であるとスカジが説明する。
ルクレツィアはこの状況を受け入れ、善治郎は領主館への準備を進め、人員配置を調整する。
侍女イネスと若い侍女、騎士ナタリオ、兵士を同行させ、他の人員はルクレツィアの護衛として残る。
ルクレツィアの侍女フローラも含め、適切な人員配置が計画される。
ポモージエ領主館に到着した善治郎は、フレア姫に出迎えられる。
フレア姫は、ポモージエ侯が善治郎の立場を考慮し、非公式ながら国交のない国の王族として迎え入れる手はずが整っていると説明する。
夜会での扱いについて話が及び、ポモージエ侯は善治郎を高位の者として紹介することで、善治郎は通常の王族としての態度を保持できるとされる。
その後、ポモージエ侯自身が善治郎との面会に現れ、ウーカシュと名乗る。
ポモージエ侯は善治郎を歓迎し、その地位を尊重する姿勢を示す。会話は夜会とヤン司祭の出席に触れ、善治郎はヤン司祭に興味を持っていることを語る。
ポモージエ侯はヤン司祭がその夜の夜会に出席することを確認し、善治郎はその場でヤン司祭と話をする機会があることを知る。
ポモージエ侯はヤン司祭を説明する際、彼を複雑な人物と評し、一言で言い表すことは難しいと述べる。
予定通り夜会が開かれ、メインゲストとしてフレア姫が紹介され、善治郎はそのエスコート役として紹介される。
ポモージエ侯はフレア姫を王族として、善治郎をさらに高位の貴人として扱うことで、出席者たちは善治郎を王族以上の存在として尊重する。
善治郎は夜会で豊富な料理と食器の種類に感銘を受け、この国の豊かさを感じる。
彼にとって出席者は全員初対面であるが、フレア姫には以前会ったことのある顔見知りもいる。
その夜、ポモージエ侯爵が紹介を申し出て、ヤン司祭を善治郎に紹介する。
ヤン司祭は緑の祭服を着たまま、善治郎に挨拶する。
第二章 訴える者、訴えを聞く者
ヤン司祭は中肉中背より少し細身で、細い目尻が下がり気味の中年男性である。
善治郎にとって、ヤン司祭の見た目や話し方は穏やかで理知的な印象を与えたが、彼には何とも言えない違和感があった。
善治郎はヤン司祭と会話を交わし、彼がカレルの貧民街出身であること、また『教会』について基本的な教えを聞いた。
ヤン司祭は、『教会』の教えについて異なる解釈があることを説明し、自身は状況に応じて使徒派と勇者派の教えを使い分けていると明かした。
また、ヤン司祭は善治郎から孤児ヤンの件を聞かされ、孤児ヤンがかつて説法に訪れた村から来た可能性があると考えた。
孤児ヤンが重要なメッセージを伝えるためにヤン司祭に会いたがっていることを知り、ヤン司祭はその会いに行くことを決意する。
善治郎もその場に同行することになった。
“教会とは?
教会は、北大陸の多くの国々において信仰されている宗教組織である。
信仰の対象は「真竜」とされ、古代にこの世界を支配し人間を守護した神聖な存在である。
教会では真竜を「竜」と称し、その崇拝と教義が中心となる。
教会の教えには、真竜が人間の世界を離れる際に残した「牙」と「爪」がある。
これらはそれぞれ「使徒」と「勇者の武具」に変わり、信者たちに与えられた神聖な遺物とされる。
「牙」は知性を持つ人形、「使徒」として人間を導く役割を担い、「爪」は特定の武具となり選ばれた「勇者」に下賜され守護の力を持つとされる。
教会は大きく二つの派閥に分かれており、「使徒派(牙派)」と「勇者派(爪派)」が存在する。
「使徒派」は使徒の言葉を最上の教えとして重んじ、「勇者派」は勇者の行いを最善と定める。
両派は、それぞれの教えが真竜によってもたらされたものとして尊重されるが、その解釈や優先順位において異なる立場を取る。
信者たちは一般的にどちらかの派閥に属しており、教会の建物にもその派閥が明記される。
宗教の教義や儀式においては、両派閥の教えが異なるため、どちらか一方を選ぶ必要がある。
これにより、教会内での議論や対立も生じることがある。
ヤン司祭のように、状況に応じて両派の教えを使い分ける珍しい例も存在するが、これは一般的ではない。
彼はどちらの派閥にも固執せず、教えの本質を伝えることに重点を置く。
この柔軟な姿勢は、教会内でも異端と見なされることがあるが、同時に理解と寛容の精神を示しているとも言える。”
その日、善治郎とヤン司祭はポモージエ侯に翌朝早く出発することを告げ、特に問題なく領主館を後にした。
彼らは馬車で『古の森亭』へ帰還し、善治郎は侍女マルグレーテに孤児の少年ヤンを連れてくるよう指示した。
マルグレーテは孤児ヤンを高級宿にふさわしい身なりにしてから宿へ連れてきた。善治郎の部屋でヤン司祭が合流し、少年との会話が始まることになった。
少年は「騎士団」が攻めてくると訴えたが、ヤン司祭はそれが特別珍しいことではないと述べ、孤児ヤンの努力が無駄に思える状況となった。
しかし、ヤン司祭は少年の行動を尊いものとして評価し、彼を慰めようとした。
その日、善治郎とヤン司祭は特に問題なくポモージエ侯爵館を後にし、馬車で『古の森亭』へ帰還する。
帰還後、善治郎は侍女マルグレーテに指示を出し、孤児ヤンを呼び寄せる。
孤児ヤンは自らが耳にした『騎士団』による攻撃計画を話すが、その情報には驚きと疑問が交じる。
ヤン司祭と傭兵ヤンは、この情報が事実であれば重大な問題であると認識し、具体的な対策を検討する。
ポモージエはかつて『騎士団』によって統治されており、現在も『旧領復活』を主張する勢力が存在する。
このため、孤児ヤンの話には一定の信憑性があり、ヤン司祭と善治郎はこの情報をどう扱うかを真剣に考える。
結果的に、フレア姫が介入することとなり、彼女がポモージエ侯に緊急の面会を申し出ることで決定する。
フレア姫の行動は、即座に実行に移される予定であり、善治郎はこの問題に対して支援を提供することを決める。
ヤン司祭は生まれつき魔力がなく、そのために多くの場面で侮られることが多いと述べる。
隻眼の傭兵ヤンは、魔力の有無が人格とは関係ないと強調する。
ヤン司祭は、魔力がないことを理由に多言語を学ぶことができたというポジティブな側面も持っており、それが彼の精神の強さを示している。
しかし、善治郎とヤン司祭の会話が成立している理由は、彼が『教会』の司祭であり、その恩恵にあずかることができるためであるとヤン司祭は説明する。
フレア姫と護衛の女戦士スカジは、ポモージエ領主館の執事を押しのけて、ポモージエ侯爵との面談を強引に取り付ける。
フレア姫が孤児ヤンから聞いた「大変なこと」の話を侯爵に伝えると、侯爵は衝撃を受け、話の真実性を認める。
ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国が信仰の自由を公式に謳っていることが、フレア姫と善治郎の脱出を助ける。
フレア姫は出航の準備が整い次第、「黄金の木の葉号」で出立すると述べ、ポモージエ侯爵は港の封鎖を検討すると回答する。
侯爵は、フレア姫と別れた後、急を要する状況に対処するため、「古の森亭」にヤン司祭一行を呼ぶよう命じ、緊急事態への対応を始める。
第三章 有翼騎兵
フレア姫がポモージエ領主館に忠告をして『古の森亭』に帰還すると、ヤン司祭一行がポモージエ領主館へ招かれる。
同時に、善治郎は副長のマグヌスにポモージエを早急に発つ可能性が高いことを伝える。
しかし、翌日になっても『黄金の木の葉号』の船員が全員揃わなかったため、フレア姫と善治郎の足止めは船員の不手際によるものである。
その後、善治郎とフレア姫が聞き咎めた騒がしい声は、敵襲ではなく、喜びの声が混じっていることが判明する。
外を見ると、上空で旋回していたのは有翼騎兵団で、彼らは着陸許可を得ていた。
その後、先頭の騎兵が飛び降りるが、これは飛行魔法によるものであった。
フレア姫と善治郎は領主館に人を送り、状況を把握しようとするが、その必要性は既に消えていた。
ポモージエ領主館から使いが訪れ、二人は再び領主館へ足を運ぶことになる。
馬車で急いでポモージエ領主館に戻った善治郎は、予期せぬ状況に遭遇する。
ポモージエ侯爵の紹介でズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の王女アンナ・クラクフと対面する。アンナ王女は大きな声で自己紹介し、善治郎たちにも名前を尋ねる。
アンナ王女は藍色の髪と彫りの深い顔立ちが特徴で、意思の強さが感じられる。
善治郎とフレア姫は自己紹介を行い、アンナ王女は両名を歓迎するが、現在の状況について説明し、少々の不自由を予告する。
彼女の言葉は、善治郎とフレア姫がポモージエに滞在を余儀なくされることを示唆している。
善治郎とフレア姫は、この状況に対し了承の意を示すが、明らかに落胆している。
アンナ王女は客人としての振る舞いを示しながらも、彼らが港を使用するにはポモージエ侯爵の許可が必要であり、特に現在の緊急状況では港の閉鎖もあり得ると説明する。
これにより、善治郎とフレア姫が計画していた迅速な脱出は難しくなる。
ポモージエ領主館に滞在していたヤン司祭一行との再会もあり、彼らもこの事態に巻き込まれている。
ヤン司祭は隣国の王族について詳しくはないが、アンナ王女について基本的な情報を善治郎に提供する。
この一連の出来事を通じて、善治郎はアンナ王女とポモージエ侯爵が直面している緊急事態に深く関与することになる。
アンナ王女はポモージエ領主館に集まった関係者たちに対し、協力を要請する。
彼女は、着席している各人を見回し、国境を守るための支援を求める。
集まっている者たちには、国境を守る義務がないが、アンナ王女はそれを快く受け入れたことに感謝を示す。
彼女は革の衣服を着ており、実用性を重視しているが、王族としての風格を保っている。
アンナ王女は、ポモージエに向けて進む「騎士団」の船が目撃されたと述べる。
この船は重装備で進行が遅いが、数日内に到着するとされており、ポモージエ侯もこれを裏付ける情報を持っている。
アンナ王女は、ポモージエが長年の歴史を持ちながらも、「騎士団」からの奪還要求に直面している現状を強調する。
彼女は、ポモージエの防御が完璧ではなく、特に海からの脅威には脆弱であると指摘する。
防衛体制を隅々まで強化しているわけにはいかず、資金と人手が限られていることを認める。
それにもかかわらず、アンナ王女は「騎士団」の主張に正当性はないと断言し、ポモージエを守る決意を新たにする。
隻眼の傭兵ヤンが上陸地点を予測し、戦略的な提案を行う。
彼は、敵がどのようにしてポモージエに侵攻しようとしているかの分析を行い、その上で実行可能な防衛策を考える。
彼の戦術的な洞察力に対し、アンナ王女は彼を自軍に引き入れようとするが、ヤンは既にヤン司祭との契約があるため、難色を示す。
この会議では、ポモージエ侯爵やフレア姫も関与しており、すべての参加者が危機の深刻さを認識し、できる限りの協力を申し出る。
アンナ王女のリーダーシップのもと、彼らはポモージエを守るために協力することを確認する。
アンナ王女と善治郎の間での会話は、ポモージエの防衛がすでに成功しているという善治郎の指摘から始まる。
彼はアンナ王女がポモージエを守るという名目以外に別の目的を持っていることを追及する。
アンナ王女は、ポモージエの貿易都市としての重要性を認めつつも、自らが現地に来た理由を明かさない。
一方で、彼女は共和国内の王族の地位が重くないことを示唆し、それが理解しがたいと述べる。
善治郎はアンナ王女の出動について疑問を呈し、もっと多くの有翼騎兵が投入されるはずだと主張する。
アンナ王女は有翼騎兵の価値を認めつつも、彼らを簡単に動かすことはないと応じる。
善治郎はさらに追及を重ね、アンナ王女の真の目的について問い詰める。
彼女は最終的に、次の国王になるための実績作りが目的であることを認める。
善治郎はこの事実を踏まえ、アンナ王女が持つ野心を理解し、彼女が王位を目指す過程でどのような計画を持っているのかを探る。
アンナ王女は、実績を積むことで「もし女性でなければ」と言われるような存在になることを目指しており、そのためには王族が現地に赴くことが重要だと語る。
彼女は自身の政治的な野望に対して開かれた態度を取り、善治郎の洞察力に敬意を表する。
アンナ王女が会話の後、快活に退室する。
善治郎とフレア姫は引き続き応接室に残されるが、ポモージエ領主館の使用人たちは突然の出来事に対応に追われており、彼らがすぐに部屋へ案内されないことに善治郎は理解を示す。
善治郎は精神的に疲れているが、フレア姫は彼の状態を気遣う。
アンナ王女は善治郎とフレア姫が戦勝パーティーまで解放されないことを示唆しており、善治郎はそれが個人的に不都合であることを認めつつ、カープァ王国としての外交方針を考慮している。
善治郎はウップサーラ王国との関係を重視しており、その状況でズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国との関係が問題になることは少ないと見ている。
また、フレア姫との間で、善治郎が南大陸の王族として非公式に紹介されることについて話し合い、それが適切であると両者は合意する。
フレア姫はウップサーラ王国の船員を傭兵隊に参加させることに同意し、それが善治郎にとっても戦略的に利益をもたらす可能性があると考えている。
この計画には、フレア姫の指示でウップサーラ王国の船員が小遣い稼ぎの名目で参加することで、実際には善治郎の関与を最小限に抑えつつ、必要な情報を得るための措置である。
善治郎とフレア姫の間の対話は、彼らがどう対応するか、またどのように戦略的に動くかに焦点を当てている。
善治郎は彼らの安全と情報収集のために、最終的には戦勝パーティーへの参加を検討しつつ、その前提として隻眼の傭兵ヤンの戦術が成功することを期待している。
幕間 隻眼の傭兵の戦い
隻眼の傭兵ヤンは、千二百の兵を率いてポモージエの街から北上し、草原で陣を構える。
目指すは『騎士団』との遭遇だが、その傭兵たちは粒が揃っており、騎兵隊に対する奇襲を考える。
しかし、森の中では適切な指揮が取れないため、草原での直接対決を選ぶ。
隊は陣地を軽く整備し、『騎士団』の接近を待つ。
戦闘が始まると、『騎士団』は突撃を試みるも、予期せぬ傭兵隊の存在に一時停止する。
この時、ヤンは『笛』隊と呼ばれる部隊を使用し、大きな爆音と煙で『騎士団』の馬を驚かせ、その隙に反撃を試みる。
これにより『騎士団』は混乱し、傭兵隊は反撃のチャンスを得る。
『笛』隊の攻撃後、傭兵隊は全力で反撃を開始し、『騎士団』はその統率を乱される。
最終的に、傭兵隊は『騎士団』を撃退し、勝利を収める。
この戦いでは、ヤンの戦術と部隊の迅速な行動が功を奏する。
第四章 勝利を待つ時間
数日前、アンナ王女が去った後のポモージエ領主館で、善治郎はフレア姫に「火薬」について尋ねた。
フレア姫は火薬が北大陸で一定の認識があることを認め、過去に戦場での使用例があるが、魔法による簡単な破壊のために失敗に終わったと述べた。
善治郎は、戦場での火薬使用の危険性を考慮し、ヤン傭兵隊に関する情報が奇襲作戦に関連しているかもしれないと考えた。
フレア姫は、火薬が戦術として用いられている可能性について、ヤン隊長の身から火薬の匂いがすることから推測した。
また、善治郎が提案したヤン傭兵隊への人材派遣については、戦場での観察が重要であるとし、予想外の展開に備えるべきだと強調した。
フレア姫はそのリスクを承知の上で行動を決定し、善治郎もそれに同意した。
アンナ王女がポモージエ領主館の一室で有翼騎兵と会話をしていた。
彼女はカープァ王国がウップサーラ王国と接近していることを知り、彼らが大陸間貿易に積極的になっていることに驚いていた。
ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の王女として、南大陸の情報に詳しいアンナは、カープァ王国が情報収集を進めていたと考察する。
彼女は、ウップサーラ王国が技術力に優れ、カープァ王国との貿易が成功する可能性が高いと見ているが、それが将来的には自国の脅威になることを懸念している。
この情報はアンナ王女にとって、国政における海上権益を強化し、海軍を増強する口実として役立つかもしれない。
また、彼女はウップサーラ王国とカープァ王国の間で形成される新たな貿易関係が、自国の貿易価格に影響を与えることも予想している。
アンナは、ポモージエ侯爵の支持を得ることで王位に近づき、海軍を王家の直属とする計画を持っていることが示されている。
隻眼の傭兵ヤンが率いる傭兵部隊がポモージエを出て数日後、ポモージエの街は不穏な静けさに覆われた。
港の船の出入りは制限され、街の門では日常の倍の兵士が配置され、通行の際の検査も厳しくなった。
ポモージエ侯爵は公式には「国家指名手配犯が潜んでいる可能性がある」と発表したが、市民の間では疑問が広がっていた。
特に、城門の上に投石器や大型クロスボウの矢が運び込まれる様子が目撃され、街全体が何か大きな事態に備えていることが明らかになった。
その一方で、この事件の発端となった孤児の少年ヤンはポモージエ領主館に客人として留め置かれていた。
孤児で田舎出身の彼にとっては異世界のような贅沢な環境だが、居心地は悪かった。
屋敷の使用人たちには表面的には丁重に扱われつつも、内心では疎まれていることを感じ取り、孤独を感じていた。
そんな中、ヤンは唯一自分を疎ましく思わないヤン司祭の元に頻繁に訪れていた。
「司祭様、俺いつまでここにいればいいんだろう?」と孤児ヤンが尋ねる場面があった。
ヤン司祭は「ヤン隊長の結果が出るまでは難しいでしょうね」と答え、また、将来的にどのように生きていくべきか、技術や知識を身につけることの重要性を説く。
孤児ヤンは技術と知識が取り上げられることのない貴重なものであることを理解し、自身も何か技術や知識を身につけたいと考えるようになる。
隻眼の傭兵ヤンが率いる傭兵隊の帰還により、『騎士団』の撃退という吉報がもたらされた。
ポモージエ侯爵とアンナ王女は、彼らを英雄として迎え入れ、公然と街を一周させて見せた。完全武装で汚れた姿の傭兵たちが、市民の興味を引きつつ領主館に向かった。
領主館の前庭でアンナ王女は演説を行い、『騎士団』がポモージエに奇襲攻撃を企んでいたこと、勇気ある少年の証言により事前に察知し、傭兵隊による撃退に成功したことを発表した。
彼らの活躍により街が守られたと讃えられ、市民からは歓声が上がった。
その場面を善治郎とフレア姫が領主館から見ており、演説技術の高さについて言及した。
この一件は、アンナ王女の演説技術と善治郎の洞察力を示す場となった。
隻眼の傭兵ヤンが率いる攻撃部隊は、任務を終えて解散し、『黄金の木の葉号』の戦闘員も任務を終えた。
ポモージエ領主館のゲストルームで、善治郎とフレア姫の前で戦闘の詳細を報告した。
戦闘員たちは、戦果は挙げられなかったものの、実際の戦闘には直接関与していなかった。
報酬の支払いは善治郎が行い、フレア姫は木札を買い取る提案をした。
彼らは戦闘中に目撃した、爆音と白煙を放つ武器についても報告し、それが勝因の一つであったことを確認した。
この武器の効果は、『騎士団』の馬を混乱させ、効果的だったが、具体的な構造や詳細は不明だった。
戦闘員たちは報酬を受け取り、その後の行動についても警告を受けた。
善治郎とフレア姫は、武器の可能性とその戦術的な価値についても議論し、今後の影響を検討した。
第五章 戦勝パーティー
善治郎たちはアンナ王女の勧めに従い、戦勝パーティーに出席することとなった。
このパーティーは隻眼の傭兵ヤンが勝利を報告した五日後の夜にポモージエ領主館で開催された。
王族主催のため、規模は非常に大きく、遠方からの貴族も多数参加していた。
このパーティーは、ポモージエの戦勝を祝う目的で、有翼騎兵が天馬を駆って近隣貴族に招待状を配っていた。
ポモージエ領主館は非常に大きいが、すべての貴族を宿泊させるほどではなかったため、重要でない貴族は市内の宿泊施設を利用した。
善治郎とヤン司祭の一行も、他の貴族のために宿泊先を変更し、領主館に移った。
パーティーには、ルクレツィアも参加し、ポモージエ侯爵の叔父がエスコートを務めることとなった。
善治郎はフレア姫をエスコートする予定で、ルクレツィアは侯爵の叔父と共に入退場するものの、その他の時間は自由に過ごせることになっていた。
この配置は、ルクレツィアにとっても良いチャンスであるとされた。
その日の夜、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国にとっての宿敵『騎士団』に対する勝利を祝う戦勝パーティーが開催された。規模は小さいが、急な準備であったため、それなりの努力が認められる。主役はアンナ王女と隻眼の傭兵ヤンで、後者は元貴族として貴族の正装を着こなし、適切な言葉遣いで対応している。アンナ王女は深紅のドレス姿であり、その色はズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の王族の正装色らしい。善治郎も赤を基調にした衣装を着用しているが、カープァ王国の民族衣装であるため共和国王家と間違われることはない。
会場では赤い衣装をまとった人々が多く見られるが、南大陸の慣習では王家の象徴色を他の者が着用することは避けられる。フレア姫もウップサーラ王国では同様の慣習があると語る。会話から、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国だけがその慣習を持たない特別な国であることが示唆される。
会話を聞いた近くの赤い正装の若夫婦が、自らの身分を説明する。彼らは「紅衣貴族」と呼ばれる古参の貴族であり、紅の装束を公式の場でまとう特権を持っていると語る。
この夫婦はエウゲニウシュとテレサで、エウゲニウシュは有翼騎兵団に所属しており、二人は天馬に乗ってパーティーに急いで参加したという。
エウゲニウシュは貴重な経験を積んでおり、外交的な役割も担っている。
彼は善治郎にその経験について話すことを申し出る。
善治郎とフレア姫がエウゲニウシュ卿夫妻と別れ、ルクレツィアの元へ向かった。
ルクレツィアは初老の男にエスコートされ、生まれながらの貴族のように堂々と振る舞っていた。
ルクレツィアがエスコート役のドルヌイ侯爵から高価なガラス鏡を贈られていたことが判明し、その事実に驚く善治郎と、それを喜ぶルクレツィアの様子が描かれる。
ドルヌイ侯爵は、自身が孫娘がいないことから、ルクレツィアのエスコートを楽しんでいると表現する。
会話の中で、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国の豊かさや多様な貿易が話題に上がる。
ドルヌイ侯爵は、その国の多様な貿易関係が豊かさの根源であると誇りを持って語り、南大陸との貿易も含め、国の寛容な姿勢が経済の繁栄に貢献していると述べる。
さらに、対話を重視する国の政策に敬意を表する善治郎の言葉で、寛容と対話が重要視されている国の姿が描かれる。
ドルヌイ侯爵は、ポズーナン王国の建国神話について説明する。
ポズーナン王国の民はかつて白の帝国の支配を受けており、その支配は非常に過酷だったとされる。
白の帝国には何度も反乱が起こされたが、全て鎮圧されてしまった。
ポズーナン王国が独立を果たしたのは、白の帝国が真竜に滅ぼされた後のことである。
この話には、善治郎は違和感を覚える。
建国神話が敗北を繰り返す内容であることが不自然だと感じたためである。
さらに、白の帝国が物質に頼らない超魔法文明だったという説が話される。
そのため、遺跡などが一切残っていないとされる。
この説明にも善治郎は疑問を抱くが、ドルヌイ侯爵はその理由を述べ、魔法の効果時間が大幅に延ばされていたと説明する。
この神話の話を聞いた善治郎は、『白の帝国』とシャロワ・ジルベール双王国の関連性を疑う。
特に、付与魔法に関する共通点に着目し、ルクレツィアとの関連性についても考慮する。
その後、ルクレツィアが悪酔いしているのを見た善治郎は、彼女をエスコートして休ませる。二人は南大陸に戻るまで話せない事情があることを示唆し、その神秘的な話題にワクワクする。
善治郎とルクレツィアが壁際の椅子に座って休んでいる際、アンナ王女が演説を開始した。
彼女は、『騎士団』によるポモージエへの侵略を撃退したことを祝い、ヤン隊長の活躍を称賛した。
しかし、彼女は『騎士団』の脅威が未だに存在すること、さらに次なる侵略の兆しを捉えたことを明らかにした。
アンナ王女は、ズウォタ・ヴォルノシチ貴族制共和国だけでなく、近隣諸国にも協力を呼びかけると発言し、戦場がタンネンヴァルトであることを示唆した。
この演説が終わると、フレア姫が善治郎たちのところに来た。
彼女は、自身がアンナ王女に盛大に見送られて帰国することが、『騎士団』からどのように解釈されるかを懸念していた。
フレア姫は、自国が戦争に巻き込まれる可能性を示唆し、これがアンナ王女の戦略の一環であることを理解した。
その後、アンナ王女が善治郎に礼を尋ね、善治郎は妻に送るガラス鏡を要求した。
アンナ王女はこの要求に対して、隣国の工房を紹介することを提案し、自国のガラス鏡を一枚贈ることを約束した。
これにより、善治郎はビー玉の生産を進めるためのガラス製造技術を得ることを望んでいた。
最終的に、善治郎とアンナ王女は互いに異なる目的を持って協力関係を維持することに同意し、互いに利益を見込んでその場を終えた。
エピローグ 出航
二日後、『黄金の木の葉号』がアンナ王女に大々的に見送られ出航しようとしていた。
善治郎とフレア姫、およびその護衛であるスカジとナタリオは桟橋上に残り、ポモージエ侯爵と三人のヤンが対面していた。
その間、アンナ王女は他の有翼騎兵と共に上空を飛行している様子が見え、彼女たちは赤、白、黄の布をなびかせて目立つ存在であった。
出航の際、アンナ王女は飛行魔法を使用して着地し、善治郎とフレア姫に感謝の言葉を述べた。
ポモージエ侯爵も感謝を表し、彼らの行動がポモージエを救ったと称賛した。
その礼として、ポモージエ侯爵は貴重な蒸留酒を船に積んでいた。
ヤン司祭も前に出て、善治郎にガラス鏡を製造している工房への紹介状を提供した。
この工房は教会からも需要があるステンドグラスを生産しており、ヤン司祭の紹介は大きな意味を持つかもしれない。
善治郎はこれを受け取り、感謝の意を表した。
『黄金の木の葉号』がポモージエ港を出航し、北大陸の航路を順調に進んでいた。
船員たちはマグヌス副長の厳しい監視の下、全力を尽くして航海に励んでいる。
一方、善治郎はウップサーラ王国への到着を前に緊張しており、フレア姫との婚姻の許可を得るために、彼女の父であるグスタフ五世に会うことを憂慮していた。
フレア姫は父が自分の価値観を理解していないことを認めつつも、国の未来のためには婚姻が受け入れられると励ましている。
善治郎は国益を考え、提案が受け入れられることを期待していた。
付録 主と侍女の間接交流
ドロレスはカープァ王国の後宮で侍女として働いている。
彼女の主である善治郎は優しく、彼女は後宮での勤務に満足していた。
しかし、善治郎とともに『黄金の木の葉号』で北大陸に渡ることになり、船上生活の厳しさに戸惑う。
船旅の苦労を経て、無事ポモージエ港に到着した彼女たちは、『古の森亭』という宿で一夜を過ごし、善治郎は侍女たちに一時金を渡す。
その後、ドロレスはポモージエの街へ繰り出し、ある店で美しいレースに魅了される。
店員から編み方を学ぶことを提案され、ドロレスは興味を持ちつつも、できるか自信がない。
しかし、護衛の兵士の励ましにより、彼女は編み方を学ぶことに決めた。
ドロレスは、北大陸のポモージエである店で後宮侍女全員に贈るレース、レース編み用のかぎ針と糸、縫い付け用の端切れと簡単な編み方を学んだレースを購入した。
店で編み方を学んだ後、彼女は飾り蝋燭を扱う店とハーブティーを扱っている店を訪れ、有意義な時間を過ごす。特に、北大陸特有の竜蝋という蝋燭を購入し、その希少価値と特性に興味を持った。
また、ハーブティーの店では、白い磁器のティーセットとメイプルシロップを購入したが、高価なハーブティーは購入せず、代わりに美味しいと感じたソーセージを購入しようと思った。
買い物を終えた後、荷物を持って『古の森亭』に戻り、軽食を取りながら、若い兵士と楽しい時間を過ごした。
ドロレスは、ポモージエの街と港を一望できる場所に行きたいと若い兵士に頼み、案内を受けた。
街の東側にある高台に上がると、そこは自然公園として整備された広場だった。
広場からは、ポモージエの港が一望でき、その規模と繁栄ぶりに若い兵士は自国の港と比べてしまう。
兵士はポモージエの優れた点を認めつつも、故郷への誇りを持ち続けていた。
そこで、ドロレスは若い兵士に周囲を気を配りつつ見張るよう頼み、自らは携帯音楽プレーヤーを使って周囲の景色を撮影した。
特に港全体、造船場、ポモージエの街、城壁といった重要な景観を撮影し、老夫婦や遊ぶ子供たちの姿も一枚ずつ撮った。
これらの写真は、任務の一環として撮影されたもので、ドロレスはこの機器の扱いに慣れていた。
撮影を終えた後、若い兵士はドロレスに尊敬の念を示し、彼女の技術と任務遂行能力を称賛した。
ドロレスは照れくさく感じつつも感謝の意を表し、二人は宿へ戻ることにした。
ドロレスは善治郎から個人的な褒美を約束されたことにより、その行動が報われたと感じている。
善治郎一行が宿泊する『古の森亭』のロイヤルスイートには使用人用の部屋も隣接しており、ドロレスと彼女の上司であるイネスはそこにいた。
イネスはドロレスの成果をアマンダ侍女長に伝えることを約束するが、ドロレスはさらに強調するよう求める。
フレア姫やルクレツィアが善治郎の側室入りするかもしれないという噂がある中で、ドロレスは後宮での自身の地位を守りたいと考えている。
イネスとドロレスは、ポモージエの豊かさについて話し合い、この地が将来的に交易の相手になる可能性があることを話す。
イネスは、善治郎が将来再びポモージエを訪れる際には「瞬間移動」を使って直接アクセスする可能性を示唆し、大陸間航行の必要がなくなるかもしれないと説明する。
これにより、ドロレスが考えていた苦労は実際には起こり得ないと明らかになる。
イネスはドロレスの提案に応じて、フェーとレテを推薦することを約束する。
ドロレスは自身の幸運を感じつつも、他にもっと幸運な人がいることを認めざるを得なくなる。
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