どんな本?
『ダンジョンに閉じ込められて25年。救出されたときには立派な不審者になっていた1』は、現代日本に突如出現したダンジョンに25年間閉じ込められていた主人公が、地上に生還し、変わり果てた世界で新たな生活を始める物語である。
主要キャラクター
• 永野弘(ながのひろし):ダンジョンに25年間閉じ込められていた主人公。生還後、失われた常識や新たな法律に戸惑いながらも、配信の世界で活躍する。
• 人気配信者の少女:ダンジョン内で主人公が偶然助けた人物。彼の地上復帰を手助けし、その後の生活にも関与する。
物語の特徴
本作は、ダンジョン内での長期間のサバイバル生活を経た主人公が、現代社会に適応しながら再びダンジョンに挑む姿を描いている。ダンジョンを取り巻く環境の変化や、配信文化との関わりなど、独自の視点で物語が進行する点が魅力である。
出版情報
• 出版社:HJ文庫
• 発売日:2025年3月1日
• ISBN : 9784798637808
読んだ本のタイトル
ダンジョンに閉じ込められて25年。救出されたときには立派な不審者になっていた1
著者:乾茸なめこ 氏
イラスト:芝 氏
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あらすじ・内容
最強のダンジョン攻略法で不審者が新時代の伝説に!
現代に突如現れたダンジョン。そこに挑んだまま失踪した青年・永野は、人類未踏の深層を25年間も生き延びた。
そうして獰猛なモンスターを喰らい最強の肉体を得た彼が帰還したのは、ダンジョン配信が義務化された未来日本。さっそく災害級のモンスターをも凌駕する彼の蹂躙ぶりが配信され、一躍トップ探索者の仲間入り!
更には、チート級のサバイバル技術で人々を圧倒する料理ショーも披露して、永野は新時代のレジェンドに成り上がる! 爽快感MAXの無双配信で贈る、ダンジョン英雄譚。
主な出来事
一章:不審者の登場とダンジョンの現状
・ダンジョンの深層に適応した男
- 25年間ダンジョン深層で生き延びた男・永野弘が登場。
- 長身・痩せた体・ボロボロのリュック・ふんどし一丁という異様な姿。
- 錆びた手斧と骨付き肉を持ち、過去を振り返ることなく生存していた。
・過去のダンジョン探索
- 永野はかつて日雇いの探索者として活動。
- 仲間の一人が金歯のついた頭蓋骨を拾ったことで異変が発生。
- 遠方から「トレイン」と呼ばれる大量のモンスターが押し寄せる。
- 仲間たちは四散し、永野は深層へ落下する。
・深層での生存生活
- 人工物が減る深層で、昆虫や小動物を食べながら生き延びる。
- 狩猟技術を磨き、巨大なモンスターさえ倒せるようになる。
- しかし、水の確保が難しくなり、上層への帰還を決意。
・地上への帰還とスイとの遭遇
- 水不足の中、魔法の光を発見し、探索者がいることを確信。
- アンデッドに追われる少女・スイを発見。
- 手斧一本でアンデッドを撃破し、スイから水を受け取る。
・現代社会との断絶
- スイのドローンに驚き、探索者全員が所持する義務があることを知る。
- 永野がダンジョンに入ったのは2025年、すでに25年が経過。
- スイは彼の話を疑うが、地上で確認するとして同行を許可。
・ゴブリンとの遭遇とダンジョンの変化
- 道中でゴブリンと遭遇するが、永野を仲間と誤認し襲ってこない。
- スイが「ゴブリンと見分けがつかない」と冗談を言うが、永野は即座に撃破。
- かつてのゴブリンと現在の生態の違いについてスイが説明。
・拠点到達と地上帰還への道
- それでも彼女は地上までの案内を約束。
- 15層の拠点に到達し、施錠可能な個室やシャワーが用意されている。
- 永野は文明社会への復帰を確信するが、スイはまだ警戒を解かない。
拠点での適応と現代社会との再会
・15層の拠点と探索者たち
- 15層は城のような構造を持つ巨大施設。
- 拠点の探索者たちは、異様な風貌の永野を警戒。
・シャワーと文明社会への適応
- 汚れと悪臭を指摘され、シャワーと衣類を提供される。
- 無精髭を剃り、カーキ色の戦闘服を着て、文明人に戻った気がする。
・若返った身体と不思議な現象
- 鏡を見て、自分の姿が20代前半に見えることに驚愕。
- ダンジョンでの食生活や魔法陣の影響を疑うが、確証は得られず。
- そのままスイの元へ戻ると、彼女は誰かわからず驚く。
・警察の介入と任意同行
- 永野の身分を確認するため、武装した警察が拠点に到着。
- 特定地下への無断立ち入りと銃刀法違反の疑いで任意同行を求められる。
- 警察は強制逮捕せず、慎重な対応を取る。
・取調べと地下四五階層の事実
- 5日間の取調べの末、永野の違法行為はないと判明。
- しかし、35階層以上の長期滞在は前例がなく、各国が関心を示す。
- 探索者協会に引き渡され、正式な探索者として登録される。
三章:現代社会への適応と再びダンジョンへ
・協会による保護と新たな生活
- 探索者協会により、住居と生活費を支給される。
- 正式な探索者免許を取得し、無職を卒業。
・ダンジョンへの再挑戦
- 2050年の世界で、永野は再びダンジョンへ向かう。
- 最低限の装備で関東ダンジョンの東小金井入り口から潜入。
四章:新たな敵・ワーウルフとの戦争
・都市へのワーウルフの襲撃
- 市街地でワーウルフの一部が陽動作戦を展開。
- 変身能力を駆使し、警察官や探索者に成り代わり襲撃。
- 死者18名・負傷者91名・行方不明者3名という甚大な被害。
・ロボの襲撃と予期せぬ対面
- 配信中、ナガ(永野)の家にロボ(ワーウルフのリーダー)が現れる。
- 格闘戦になるが、ロボの身体能力に圧倒される。
- ロボはリザードマンに変身し、「次はダンジョンで会おう」と告げて去る。
・ダンジョン突入前の準備
- 鬼翔院兄妹・スイ・山里らと共に、ロボ討伐のためダンジョンへ。
- 全員が強化装備を整え、本気の戦闘態勢を取る。
深層の謎と未知の存在
・地下45層での偵察
- 自衛隊が地下45層で偵察中、異様な存在を発見。
- 全裸・筋骨隆々・野生動物のような挙動の男。
・全裸マッチョおじさんの噂
- 自衛隊が発見した男は異常な身体能力を持ち、ジャングルの奥へ跳ねるように逃走。
- ネットでは「ダンジョンの深層に全裸マッチョのおじさんがいる」という噂が広まる。
・ダンジョンの異変と妖精の可能性
- ナガとスイは、深層で未知の妖精種が存在する可能性を考える。
- トウカは「ダンジョンの生態系はまだ解明されていない」と結論付ける。
今後の展開
- 永野はロボとの決着をつけるため、深層へ進撃。
- 深層の未知の存在が、ダンジョンの核心に関わる可能性が示唆される。
- 2050年の世界に適応しながらも、ダンジョンの真相を探る探索が続く。
感想
異質な主人公とダンジョンの世界
物語の主人公・永野は、25年間ダンジョンに閉じ込められていた。
彼の姿は、上半身裸にふんどし一丁、無造作な髪と長く伸びた髭という異様なものだった。
深層に適応した彼は、単独で生き延びるために狩りをしながら日々を過ごしていた。
しかし、ある日、探索者であるスイと出会い、彼の人生は大きく変わる。
現代社会の変化を知りながら、彼は地上への帰還を目指すことになった。
戦いと生存のリアルな描写
本作の特徴は、主人公が単なる「無双」ではなく、泥臭くも現実的な戦いを繰り広げる点である。
永野は深層で生き抜くために培った知恵と技術を駆使し、敵と戦いながら命をつなぎ止めてきた。
戦闘シーンは緊張感に満ち、彼の動きや思考が詳細に描かれている。
特にスイとの初対面は印象的で、彼女の驚愕の反応が、永野の異様さを際立たせていた。
配信文化との融合
現代のダンジョン探索では、配信が義務化されており、視聴者とのやり取りが描かれる点が新鮮である。
配信コメントの存在が、物語にリアリティを与え、読みながら自身も共に視聴者の立場で楽しめる仕組みになっている。
永野の戦いがリアルタイムで配信され、視聴者が彼を「英雄」と称える一方で、「野人」として警戒する者もいる。
この温度差が、彼の立場の複雑さを物語っていた。
ワイルドな主人公の魅力
永野は、獣のような戦い方をする一方で、周囲への配慮を忘れない人物であった。
彼がダンジョンで生き延びるために築いたサバイバル術は、驚きと興奮を与えた。
モンスターを倒して食料を確保し、装備を自作する姿はまさに野生の戦士そのものであった。
単なる「強いキャラクター」ではなく、知恵と経験によって生き抜く姿が描かれているのが本作の魅力である。
今後への期待
物語の終盤、永野は正式な探索者として再びダンジョンへと向かう。
かつて閉じ込められた場所へ、自らの意志で戻るという展開は、彼の信念と生存への執着を示していた。
今後の展開では、彼が新たな強敵とどのように戦い、配信を通じてどのように世界と関わっていくのかが気になるところである。
ダンジョンの深層に隠された謎と、永野の戦いがどのように進んでいくのか、続きが楽しみである。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
一章
不審者の登場とダンジョンの現状
ダンジョンの深層に、一人の男がいた。長身で痩せた体、無造作なボブカット、伸び放題の髭、上半身裸にふんどし一丁という異様な姿である。背にはボロボロのリュック、手には錆びた手斧と骨付き肉。この男こそ、かつて地上にいた永野弘であった。ダンジョンが地球に現れてから長い時が経ち、彼は深層に適応していた。過去を振り返ることなく過ごしていたが、ふとした瞬間に自らの過去を思い出し、深層に至った経緯を振り返ることとなる。
ダンジョン探索中の異変
かつて、永野は他の探索者たちと共にダンジョンで日雇いの仕事をしていた。仲間の一人が金歯のついた頭蓋骨を発見し、興じていたところ、周囲の空気が急に変わった。永野は警戒し、全員を立ち止まらせる。直後、遠方から草を踏む音が聞こえ、彼らはトレイン――大量のモンスターに追われる現象――に遭遇する。獲物役となっていたラミアを先頭に、無数のスケルトンが押し寄せていた。仲間たちは即座に逃走を開始し、それぞれが生き延びるために散り散りとなった。
深層への転落と生存生活
トレインから逃げ続ける中、永野は気づけばダンジョンの深層に迷い込んでいた。浅い階層では人工物が多く、水や食料の確保が困難だったが、深層では逆に生存競争に勝てば資源は豊富であった。彼は木の洞に身を潜め、昆虫や小動物を食べながら少しずつ狩りの技術を磨いていった。やがて巨大なモンスターさえも狩れるほどに成長し、この環境に適応していく。しかし、飲料水の確保が難しく、上層への帰還を決意することとなる。
地上を目指す決意と危機的状況
上層へ向かう途中、永野は水不足に陥る。樽の水は尽き、木の繊維をしゃぶりながら何とか移動を続けた。そんな中、彼は前方に魔法の光を発見し、人間の探索者がいることを確信する。そこには、スイという少女が大量のアンデッドに追われていた。永野は渇きの限界に達し、迷うことなく戦闘に介入。手斧一本でアンデッドの群れを蹴散らし、圧倒的な戦闘力を見せつけた。スイは彼の姿に驚愕しつつも、水を分け与えた。
現代社会との断絶
水を飲み干した永野は、スイのドローンを見て疑問を抱く。それがすべての探索者に義務付けられていることを知り、時代の変化を痛感する。彼がダンジョンに入ったのは2025年であり、すでに25年が経過していたのだった。スイは彼の話を信じ切れなかったが、外に出れば警察が確認するとして、地上まで案内することを決める。ただし、距離を取るよう厳しく警戒されていた。
ゴブリンとの遭遇と変化したダンジョン
地上を目指す道中、ゴブリンとの遭遇があった。しかし、彼らはなぜか永野を仲間のように認識し、襲ってこなかった。スイは彼がゴブリンと見分けがつかないと冗談めかして言うが、永野は即座にゴブリンを撃破し、かつてこのモンスターがいかに危険だったかを語る。スイは彼の知識に驚きつつも、現在の分類学の変遷について説明する。二人は軽口を叩きながらも、徐々に拠点へと近づいていった。
拠点到達と地上帰還への道
ついに15層に到達。そこには拠点となる施設があり、シャワーや施錠可能な個室が用意されているという。永野は25年ぶりのシャワーを楽しみにしながら、地上帰還を確信する。一方、スイは彼を完全に信用したわけではなく、警戒心を解いてはいなかった。しかし、それでも彼女は地上まで案内することを約束し、二人は先を目指して進んでいった。
一五層の拠点と探索者たち
一五層は巨大な城のような構造をしており、無数の城壁や尖塔が連なっていた。その一角にある拠点は、謁見の間のような広間を改造して作られており、鉄製の門や有刺鉄線などの防御設備が施されていた。内部には用途ごとに仕切られた部屋があり、物資の倉庫や探索者の待機所などが整っていた。スイは安堵のあまりベンチにへたり込み、周囲の探索者たちは、彼女と共に現れた異様な風貌の男――永野弘を怪訝そうに見ていた。
シャワーと文明社会への適応
通りかかった探索者の一人が、永野にシャワーや衣類の場所を案内した。ダンジョン内での生活を経た彼の姿は、汚れにまみれた無精髭の男そのものであり、周囲からも臭いを指摘されるほどであった。提供された服は無地のカーキ色の戦闘服で、全身を覆うと単調な見た目になったが、着衣があるだけで文明人に戻った気がした。シャワー室には簡易な鏡が備え付けられており、久々に自身の姿を確認すると、そこには驚くべき変化があった。
若返った身体と不思議な現象
鏡に映る自分の顔は、二〇代前半ほどにしか見えなかった。本来であれば四八歳のはずが、二五年間のダンジョン生活の影響なのか、まるで時間が逆行したかのような若々しさを保っていた。思い当たる節は数多くあった。モンスターの肉を主食とし、魔法陣に触れたこと、謎の王冠をかぶったこと、神聖なゴブレットの中身を飲んだこと――すべてが関係しているかもしれなかったが、確証はなかった。永野は深く考えることをやめ、衣服を着てスイのもとへ向かった。
驚愕するスイと疑念の払拭
ベンチで休んでいたスイは、整った姿で戻ってきた永野を見て、一瞬誰かわからず戸惑った。彼がダンジョンで暮らしていた四八歳の男であることを信じられず、驚愕の声を上げた。永野は、自身の年齢を証明するために財布を取り出し、免許証やクレジットカードなどの古い身分証明書を見せた。さらに、銀歯の存在を指摘し、現代ではもはや見かけない治療跡が、自分の過去を証明していると説明した。これにより、配信を視聴していた者たちも次第に彼の言葉を信じ始めた。
警察の介入と任意同行
そのやり取りの最中、拠点の入り口が騒がしくなり、武装した警察のダンジョン特殊部隊が現れた。彼らは永野を特定地下への無断立ち入り、および銃刀法違反の疑いで任意同行を求めた。しかし、状況を把握した警察は、彼の話が事実である可能性を考慮し、強制的な逮捕はせず、慎重に対応することを選んだ。永野は素直に武器を手放し、警察の護送を受けることとなった。
取調べと地下四五階層の事実
警察署での取調べは五日間にも及んだ。身元確認の結果、彼の話は法的にも問題なく、違法行為は何もなかった。しかし、問題となったのは、彼が地下四五階層で生活していたという事実であった。地球上のどのダンジョンでも、三五階層を超えると拠点の建築が困難となり、それ以降は「冒険領域」と呼ばれ、補給の限界が訪れるため、誰も長期的に滞在したことがなかった。警察はこの事実に注目し、各国が欲しがる知識を彼が持っていると判断した。
協会による保護と新たな生活
警察は永野を無職無資格のまま釈放することが危険だと考え、特定地下探索者協会に連絡を取った。その結果、彼は協会に採用され、生活基盤を整えられることとなった。住居は協会名義で借りたマンション、生活費はダンジョンでの生存記録の売却で補われた。また、特定地下探索者免許の取得を求められ、彼は試験を受けることとなった。
免許取得と新たな挑戦
試験はリモート形式で行われ、ほぼ運だけで受験した結果、奇跡的に合格を果たした。法定研修は免除されたものの、今後は定期的な研修が義務付けられた。無職を卒業し、正式な探索者となった永野は、再びダンジョンへ向かうことを決意した。
ダンジョンへの再挑戦
二〇五〇年の世界で、彼が選んだ最初の行動は、再びダンジョンに潜ることだった。関東ダンジョン多摩エリア東小金井入り口で受付を済ませると、彼は上下カーキの戦闘服に百円ショップのキッチンナイフだけを持ち、堂々とダンジョンの階段を降りていった。
二章
地下一層の探索と戦闘の準備
探索者は久しぶりに地下一層へと足を踏み入れた。浅層ではコボルトやドワーフといった妖精種のモンスターが出現するが、スライムとの遭遇率は低い。人間は腰より低い敵と戦うのを苦手としており、ダンジョンの浅層ほど戦いやすいのは不思議な構造であった。探索者はダンジョンの不自然な難易度設計に疑問を抱きつつ、配信視聴者に向けて話しかける。ビーコン情報を確認し、ホログラムマップを頼りにさらに下層へ進んでいった。
ドワーフとの遭遇と装備の回収
地下三層では松明の明かりに照らされた小柄な影が現れる。壁を叩く音から、それがドワーフであることを確認。ドワーフは基本的に敵対しないが、持っているバールを目当てに強引に奪う。驚いて抵抗するドワーフを蹴り飛ばし、さらに下層へと進んだ。
コボルトとの戦闘と戦術
地下四層ではコボルトの群れが現れる。六匹の集団は木の盾を密着させ、ファランクスのような隊列を形成。探索者は壁を蹴って飛び越え、コボルトの混乱を誘うと、一気に殲滅。浅層のモンスターとの戦闘は難なく終えた。
スライムとの遭遇と生態系の管理
戦闘後、ダンジョンの壁からスライムが出現。スライムはダンジョンの掃除屋であり、死体を分解する役割を担っていた。探索者は必要最低限の数だけを倒し、残りは生態系維持のため放置する判断を下す。
フレッシュゴーレムとの戦闘
地下十層では悪臭が漂い、ずるずると這う音が響く。現れたのは巨大なフレッシュゴーレム。探索者はその構造を分析し、核を探すが、腐敗した肉の塊の中からは簡単に見つからない。仕方なく肉片を剥がしながら戦い、ゴーレムの動きを封じる。ゴーレムが変形し、攻撃特化の「タルタルゴーレム」となるが、触手を切断し、核を見極めた探索者がバールを突き刺して撃破した。
若い探索者との遭遇と助言
地下二十層で戦闘音を聞き、向かった先には巨大スケルトンと戦う少年少女の集団がいた。特に金髪の少年は無鉄砲な戦い方をしており、探索者は彼の未熟さを指摘。戦闘後、少女たちは礼を述べるが、少年たちは態度を改めようとしない。探索者は戦闘の厳しさを理解させるため、彼らに直接戦わせることを提案する。
少年たちの実力と厳しい現実
少年たちは探索者の助けを借りながらチャンピオン級のスケルトンと戦うが、有効打を与えられず、実力不足を痛感する。探索者は彼らに適正階層で鍛え直すよう助言し、少年たちは渋々撤退を決意した。
竜種ラプトルとの死闘
地下二十五層のボス部屋で、突如として竜種のラプトルが出現。素早い動きと強靭な脚力を駆使し、探索者たちを圧倒する。探索者はチームに的確な指示を出しながら攻め続け、スイがラプトルの尾を切断し、隙を作る。探索者は渾身の一撃を脇に叩き込み、ついにラプトルを討伐した。
戦利品の回収と食事
探索者たちはラプトルの解体を開始。肉や皮、火炎袋などを回収し、研究価値のある器官を協会に提供することを決める。竜種の肉をケバブのように焼き、実食。意外にも美味であり、全員が満足した表情を浮かべた。
今後の探索計画
戦闘と休息を経て、探索者たちは次の階層へ進むことを決定。深層の未踏破区域へ向かうにあたり、探索者は仲間と共に慎重に準備を整えた。
三章
地下二六層の風景と警戒
地下二五層までとは異なり、地下二六層には昼夜の区別があり、広がる青空と風にそよぐ草原が特徴的であった。探索者たちは開けた土地を進みながら、先行するパーティーと合流することを決めた。斥候役のヒルネとともに先行し、罠を仕掛ける準備を進めた。草を束ねて足掛け罠を作り、ワーウルフやコボルトの四足歩行の習性を利用して敵の進行を遅らせる計画であった。
罠の設置とワーウルフの警戒
罠の設置を進める中で、ナガはヒルネに斥候として必要な技能を説きながら、実際の作業を行わせた。その間、周囲の異様な静けさに気付き、先行するパーティーが何らかの影響を受けている可能性を考慮した。ヒルネを使者として送り、情報収集を命じたが、戻ってきたヒルネの姿が複数存在していた。ワーウルフの変身能力によって混乱が生じ、疑心暗鬼の状況が生まれた。
ワーウルフの正体判別
ナガたちは変身したワーウルフを見破るため、知識や思考能力を問う質問を行ったが、ヒルネ本人の知識レベルが低かったため、判別に難航した。スイの機転によって単純な計算問題を出し、誤った答えを出した個体を偽物と判断。ワーウルフを迅速に処理したが、彼らの正体についてさらなる疑問が浮かび上がった。調査の結果、従来ワーウルフと認識されていた存在は、実際には別のモンスター「ライカンスロープ」に変身していたワーウルフであり、地下二六層の生態系に新たな謎が生じた。
集落での状況とワーウルフの行動
集落に到着すると、すでに探索者たちは疑心暗鬼に陥り、人狼ゲームのような状態にあった。ナガたちは協力を申し出て、山里率いるパーティーと共にワーウルフの正体を暴く作業を開始した。ワーウルフは同族の死体を食べない性質を利用し、ナガはワーウルフの肉を調理して食べさせることで、正体を見破る作戦を実行。成功裏にワーウルフを排除したものの、状況はさらに悪化していった。
謎の狼と戦闘の勃発
異常な静けさが続く中、突如として強力な狼の遠吠えが響き渡り、大量のコボルトとライカンスロープが襲来した。ナガたちは草罠を利用しながら撤退戦を展開したが、その最中にトウカが強力な敵の一撃を受けて吹き飛ばされた。襲撃者の正体は、他のワーウルフとは異なる知性を持つ存在であった。ナガは圧倒的な力の差を感じながらも、ツヴァイハンダーを構えて対峙した。
人語を話すワーウルフとの戦い
そのワーウルフは「世界樹の仔」と名乗り、地下の劣悪な環境からの脱出を目指していた。彼は強大な力を持ち、人間に変身することで戦闘能力をさらに引き上げた。ナガとの一騎打ちは熾烈を極めたが、ヒルネの奇襲によって隙が生じ、ナガがツヴァイハンダーでとどめを刺した。しかし、ワーウルフは逃亡し、遠吠えとともにコボルトやライカンスロープの群れも撤退していった。
戦闘の代償と新たな変化
戦闘後、ナガは自身の体に異変を感じた。傷口を覆うように細い根のようなものが絡みつき、回復していたのである。これはワーウルフが言っていた「世界樹の苗」の影響であり、ナガ自身が知らぬ間にその力を取り込んでいた可能性があった。仲間たちはナガの変化に不安を覚えながらも、今は生還を優先し、地上への帰還を決めた。
探索者たちは、地下二六層の生態系の変化と、ワーウルフの脅威が地上にも及ぶ可能性を認識しつつ、新たな戦いに備えることとなった。
地下二三層からの突破と疲労
探索者たちは、地下二三層から二四層へと大人数で突入し、数の暴力を活かして強行突破を果たした。連戦により疲弊しきった彼らは、キャンプの準備を終えるとすぐにテントに潜り込み、深い眠りについた。焚火の火が弾ける音だけが、静かな夜の空間に響いていた。
ナガの警戒とスイの対話
ナガは焚火を見つめながら、ダンジョンの異常性について思索を巡らせていた。世界樹の苗、モンスターの強化、そしてダンジョンの構造自体が持つ不自然さ。これらの要素が絡み合い、彼の中で一つの疑念が生まれていた。スイが隣に座ると、ナガは「しばらくダンジョンに潜るな」と忠告した。彼は、ダンジョンが単なる冒険の場ではなくなりつつあると感じていた。もはやそこは、正当な理由を持つ人間が立ち入るべき場所ではなく、暴力でしか生きられない者たちの領域になりつつあった。
殺し合いの現実とスイの決意
スイはナガの言葉を受け、「一緒に戦っていいか」と問いかけた。彼女はナガが前線に立ち、仲間を庇いながら戦う姿勢に疑問を抱いていた。自身の戦いがナガの助けになるのであれば、彼女はこれからも共に戦いたいと強く主張した。ナガは突き放すべきか迷ったが、結局はスイの意思を受け入れた。彼女の決意が、単なる冒険心ではなく、ナガ自身を支えたいという強い意志から来ていることを感じ取ったからである。
トウカの意図と戦いの変化
翌日、トウカとともに隊列の最後尾を歩きながら、ナガは昨夜の話題が配信で騒がれていることを知った。トウカは戦闘から外されていたが、自身の負傷を顧みず、今後の戦い方を見直す必要があると語った。彼女は魔法による回復だけでは不十分であることを悟り、強化外骨格の導入を決めていた。ナガは彼女の冷静な判断と、決して折れない意志に驚きを覚えた。
ヒルネの合流と地上への帰還
ヒルネもまた、ダンジョン探索を続ける意志を示した。彼女は単なる憧れではなく、戦いの厳しさを理解した上で、探索者としての道を選んでいた。ナガは呆れながらも、その意思を尊重し、地上への帰還を決めた。隊は一路、地上への階段を目指し、井の頭公園のダンジョン出口へと到達した。
群衆の歓声とナガの苛立ち
ゲートをくぐった瞬間、大歓声が響き渡った。配信を見ていた人々が、ナガたちの帰還を祝うために集まっていたのである。しかし、ナガはその騒がしさに苛立ち、大声で怒鳴りつけた。フラッシュや大きな音に敏感になっていた彼は、群衆の熱狂を素直に受け入れることができなかった。彼の態度により、群衆は静まり返り、彼らの前に道が開かれた。
支部長との再会と休息の準備
受付で報告を行う中、支部長が姿を現した。彼女はナガたちの無事を確認しながらも、明らかに鼻を押さえながら話していた。ナガの体臭が原因らしく、彼女は「まずは入浴と休息を」と強調した。ナガは半ば呆れながらも、今回の戦いの疲労を癒すため、しばしの休息を受け入れることにした。
四章
検査入院と支部長との対面
二日間の検査入院を経た結果、得られた結論は「何もわからない」というものであった。ただし、血圧が高いことだけは判明した。病室に軟禁され、味気ない病院食を食べながら報告書を書かされる日々が続いたが、ようやく解放され、支部長と対面した。しかし、今回は以前のように彼女が嘔吐することもなく、事務的な会話で終わった。
配信の開始と現代社会への適応
スイたちは多忙であり、次の探索まで時間が空くこととなった。そんな中、支部長から「現代の社会性を身につけるために配信を始めてはどうか」と提案される。特に異論もなかったため、ナガは自宅でドローンを起動し、配信を開始した。コメント欄には視聴者たちが集まり、ダンジョンでの経験や世界樹の苗に関する質問が飛び交った。
世界樹の苗の正体と寄生の影響
配信中、視聴者から「世界樹の苗とは何か?」という質問が寄せられた。ナガは病院で受けた精密検査の結果をもとに説明したが、正確な答えは未だ不明であった。ただし、苗は神経に寄生し、単純に切除することが困難な存在であることが判明している。さらに、苗はアドレナリンに似た物質を分泌しており、ナガの怒りっぽさの原因になっている可能性があると述べた。しかし、視聴者たちは「もともと短気なのでは?」と否定的な反応を示した。
ダンジョン帰還時の怒りと認識の違い
配信中には「ダンジョンから出た際に怒鳴ったのはなぜか?」という質問も寄せられた。ナガは、長期間の戦闘と緊張状態から解放された直後に、大歓声やフラッシュを浴びたことが原因だと説明した。しかし、視聴者の中には「言い方が悪かった」と指摘する者もおり、意見が分かれた。ナガは「自分に配慮しない人間には配慮しない」と一蹴しつつも、自身の態度について多少の反省を感じていた。
ワーウルフとの戦争と探索者への依頼
話題はワーウルフとの戦争の可能性に及んだ。探索者協会は、地上侵攻を阻止するため、ワーウルフのリーダーである「ロボ」の首に懸賞金をかけることを決定した。協会は、金に釣られた探索者たちが情報を集めることを期待しており、これが自衛隊の防衛計画の一環であることをナガは推測した。
ロボの襲撃と予期せぬ対面
配信が進む中、ナガの自宅のインターホンが鳴った。不審に思いながらドアを開けると、そこには自分と同じ顔をした男が立っていた。ロボである。突如として室内に押し込まれたナガは、格闘戦に持ち込むも、相手の身体能力の高さに圧倒された。さらに、ロボはリザードマンへと変身し、その圧倒的な膂力を見せつけた。
絶体絶命の状況と辛うじての生還
ナガは狭い室内を利用してロープとドローンを駆使し、ロボを外へ放り出す策を講じた。しかし、ロボの戦闘技術は高く、ナガの攻撃は通じなかった。最終的に、ナガは壁の電線を引き抜いて応戦しようとしたが、それが通信用ケーブルであったことが発覚する。ロボはそれを見抜き、戦闘を中断。ナガに対し、「次はダンジョンで会おう」と告げて立ち去った。
警察と探索者の到着
ロボの襲撃後、警察と探索者がナガのもとに駆けつけた。田辺巡査部長をはじめ、鬼翔院柚子と隼人も同行していた。柚子はナガの戦いぶりを酷評し、「ロボは自分たちが倒す」と宣言した。これに対し、ナガは怒りを露わにしたが、冷静に考えれば彼らの同行は戦力増強に繋がる。結果的に、ナガは彼らの協力を受け入れることにした。
ロボ討伐の準備と探索計画
ナガはロボの行動を分析し、彼が深層で戦力を強化しようとしていると推測した。そのため、深層に向かい、ロボの動向を探ることを決定する。スイや鬼翔院兄妹も同行することになり、戦力は大幅に増強された。ナガは「人類は早さで意表を突かれた。だからこそ、同じ速さで殴り返す」と意気込んだ。
こうして、ナガたちはロボとの決着をつけるため、再びダンジョンへ向かうこととなった。
ワーウルフの襲撃と都市の混乱
準備を進める中、スマートウォッチに緊急警報が次々と届いた。街に潜伏していたワーウルフの一部が陽動として動き、大きな被害をもたらしていた。例えば、リザードマンに変身して商業施設で暴れ、駆け付けた警察官を殺害。その後、警察官に変身して探索者を拳銃で射殺し、鳩に化けて逃走するという巧妙な手口である。現在判明しているだけで、死者十八名、負傷者九十一名、行方不明者三名という甚大な被害が出ていた。
被害者の中には、ワーウルフに入れ替わられた可能性がある者も含まれており、完全隔離の施設で取り調べを受ける事態となっていた。敵がどこに潜伏しているかもわからず、戦力の整わない一般人では対抗不可能な状況となっている。まさに最悪のゲリラ戦が街で始まったのだ。
配信中の視聴者の動揺とナガの決意
戦いの傷跡が生々しく残る部屋で、ナガはツヴァイハンダーを磨いていた。ドローンの配信は無言のまま流していたが、視聴者は次第に増えていた。そんな中、視聴者の一人が「親が帰ってこない、助けてほしい」とコメントを投稿した。ナガは「助けには行けないが、親の無事を祈る。万一のことがあれば仇は取る」と返した。この言葉が引き金となり、視聴者たちは焦りと不安を露わにし始めた。
「探索者なのに地上を守らないのか」「ロボを倒す前に市民を守るべきでは?」といった批判的なコメントが溢れる一方で、「ナガが行かないなら誰がロボを討つんだ」「自分の家族を自分で守れ」といった意見も見られた。ナガは彼らの不安を理解しつつも、探索者の役割を全うする覚悟を固めていた。
立ち上がり、磨き上げたツヴァイハンダーを振るう。刃はリビングの狭い空間を正確に通過し、何の障害物にも当たらず静かに戻った。体の動きは冴え渡り、過去最高の感覚を得た。ナガは配信に向かって宣言した。「不安だろうが、耐えろ。本当の地獄を止めてくる」と。
ダンジョン突入前の集合
集合時間の十七時、ダンジョン入り口のゲート前に到着すると、すでにメンバーが揃っていた。それだけでなく、関係ないはずの者まで集まっていた。山里は「お前は人狼ゲームが得意だろ?」と軽口を叩いたが、ナガは「ワーウルフが混ざっている可能性がある」と警戒を示した。
スイは装備を大幅に変更していた。金属製の胸甲はライトグリーンの鱗状の素材へと変わり、首元には魔法言語が刻まれたチョーカーが追加されていた。武器も細剣から長杖へと変更され、攻撃範囲と魔法の威力を強化している。ヒルネは体中にナイフを装備しており、ワスプナイフと呼ばれる高圧ガスで内部から破壊する凶悪な武器を携えていた。
トウカは一際異質な装備をしていた。重機のようなパワードスーツを身にまとい、腰には巨大なユニットが装着されていた。腕にはパイルバンカーが取り付けられており、その表面にはびっしりと魔法言語が刻まれている。「まるでSF映画の兵士のようだ」とナガは呆れた。
ナガ自身の装備も強化されていた。ツヴァイハンダーは入念に手入れされ、切れ味が向上。戦闘服にはプロテクターが仕込まれ、腰にはククリナイフを装備した。今回は本気で戦うつもりであった。山里たちも完全武装しており、彼らは戦いに同行する意思を示していた。
鬼翔院兄妹と支部長の言葉
鬼翔院の兄妹にも声をかけたが、柚子は相変わらず冷淡な態度だった。一方、隼人は「ナガの戦いを生で見るのが楽しみだ」と好意的だった。ナガは隼人と固く握手を交わし、共闘を確認した。
支部長は神妙な面持ちで言った。「あなたがロボを討つ必要はない」。ナガがダンジョンで得た情報は、人類にとって非常に価値のあるものであり、すでに十分な貢献をしているというのが彼女の考えであった。だが、ナガはこの言葉を聞き流した。「俺を侮るな。借りは返すもんだろ」とだけ言い残し、支部長に背を向けた。
ナガがダンジョンの階段に足を踏み入れると、スイ、ヒルネ、トウカが続いた。その後に鬼翔院兄妹、山里たちがぞろぞろと続いた。目標はただ一つ。狼の王、ロボの首。ナガたちはダンジョンへと進撃を開始した。
幕間『深層の妖精伝説』
地下四五層の偵察と異常な遭遇
地下四五層は、巨大なシダのような木々が生い茂り、強い日差しを遮る鬱蒼とした環境であった。気温と湿度は高く、土の匂いが濃厚に漂っている。上空では鳥の不気味な鳴き声が響き、樹上性のモンスターが動き回るたびに、針のような葉が降り注いでいた。
この地で自衛隊の偵察部隊が活動していた。彼らは地下三〇層に建設された前哨基地の拡張計画の一環として、危険な深層を探索する任務についていた。迷彩の戦闘服に緑色のドーランを塗り、アサルトライフルとグレネードランチャーを携帯している。長時間の偵察行動は過酷であり、彼らは互いに不満を漏らしながらも慎重に行動していた。
ダンジョンの各層が世界中のダンジョンと繋がっている可能性がある以上、国際的な軍事的脅威への警戒は必要不可欠であった。特に陸路を通じた敵国の侵攻が懸念されており、日本政府は防衛拠点の設営を進めていた。また、ダンジョンの希少資源や魔法文化の獲得、そして国際的な軍事力誇示のためにも、軍隊の駐留が求められていた。
そのような状況下で、隊員たちは遠方から異音を感知した。音の正体を探るため、片方が双眼鏡で前方を確認し、もう片方が背後を警戒した。暗い樹冠の下、黒い影が通り過ぎるのを捉えた。おそらく飛竜が飛んでいたのだろう。しかし、次の瞬間、彼らの視界に異様な存在が現れた。
それは全裸の男だった。鍛え抜かれた肉体には無数の傷痕が刻まれ、髪と髭はぼさぼさに伸びていた。彼は野生動物のような挙動を見せ、猫背のまま首を回して周囲を警戒し、地面の土を掬い取って舐めたかと思うと、苦々しげに吐き出した。その異様な姿に、隊員たちは言葉を失った。
全裸の男の逃走と撤退決定
隊員たちは互いに情報を確認し、邦人の可能性を考えて接触を試みることにした。ライフルの安全装置を解除しつつ、慎重に男へと接近する。しかし、男はこちらの存在に気づいた瞬間、ウサギのように跳ねるような動きでジャングルの奥へと逃げ去った。驚異的な身体能力であった。
男の逃走を受け、隊員たちは追跡を試みるが、その直後に巨大なモンスターの接近を示す音が響いた。大木をへし折るほどの強大な存在――おそらく竜が接近している気配があった。「撤退」と即断し、速やかに離脱を開始する。謎の男の正体については上層部の判断を仰ぐしかない状況であった。
この報告はすぐに市ヶ谷の司令部へと伝えられた。上層部では、目撃された存在についての様々な憶測が飛び交った。海外勢力の脱落者か、未知のモンスターか、それとも妖精種の変異体か――結論は出ず、混乱を深めるばかりだった。加えて、ドローンの映像は不鮮明であり、人間と断定するには情報が不足していた。動きの異常性からも、単なる遭難者ではない可能性が高かった。
こうした断片的な情報が外部に漏れ、インターネットを通じて一つの奇妙な噂が形成された。
「ダンジョンの深層には、全裸マッチョのおじさんが住み着いている」
この噂は世間に広まり、ネットミームとして定着することになった。
探索中に広がる奇妙な噂
一方、地下二一層ではナガとスイたちが探索を続けていた。ナガはスケルトンを相手にツヴァイハンダーを振るい、その骨を粉砕していた。重量武器を使えばスケルトンの処理は容易であり、彼は戦利品として金の指輪を回収した。これに対しスイは「スケルトンは元々人間だったのか」と疑問を呈したが、ナガは「人間に似た妖精種はいるが、純粋な人間は見たことがない」と応じた。
するとヒルネが「ダンジョン全裸マッチョおじさん」の噂について語り出した。曰く、「全裸で這い回り、土を食べ、空を飛び、時速二〇〇キロで走る謎の男がダンジョンにいる」というものである。あまりにも荒唐無稽な話に、ナガは「そんな存在いるわけがない」と笑い飛ばしたが、スイはなぜか溜息をついた。
さらにナガは「実は以前、ダンジョンの奥で妙なものを見たことがある」と語った。遠目でハッキリとは見えなかったが、人間のような姿をした存在がいたという。しかし、肌は緑色で、顔の半分ほどを占める巨大な目が飛び出していたのだ。まさに異形の存在であった。
トウカはこの話を聞き、「少なくとも、ダンジョンの奥には未知の妖精種がいることは確かだ」と結論づけた。ダンジョンには未だに多くの謎が眠っており、その全貌は解明されていない。
ヒルネはそれを「ダンジョンの妖精さん」と呼び、穏やかに笑った。
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