小説「神達に拾われた男 16」ギムルへ帰還 感想・ネタバレ

小説「神達に拾われた男 16」ギムルへ帰還 感想・ネタバレ

どんな本?

本書は、異世界転生者の少年・竜馬が新たな師匠の下で呪術の勉強を本格的に始める異世界スローライフファンタジーである。

物語の概要

シュルス大樹海での目的を達成した竜馬は、ギムルの街へ帰還する。ジャミール公爵家への報告や洗濯屋への訪問、エレオノーラへの街案内など、多忙な日々を送る中、公爵家の協力を得て呪術の勉強を開始する。新たな師匠の下で、竜馬の才能がさらに発揮される物語である。 

主要キャラクター
• 竜馬:異世界に転生した少年。多彩な才能を持ち、スライムの研究やクリーニング店の経営など、多方面で活躍している。本作では、呪術の勉強を本格的に始める。
• ジャミール公爵家の面々:竜馬が信頼を寄せる貴族一家。竜馬の活動を支援し、呪術の勉強にも協力する。
• エレオノーラ:竜馬の友人であり、彼の帰還後、街を案内するなど交流を深める。

物語の特徴

本作は、異世界でのスローライフを描きつつ、主人公の成長や新たな挑戦を描く点が魅力である。特に、呪術の勉強を通じて竜馬の才能がさらに開花する様子が描かれており、読者にとって興味深い展開となっている。また、スライムの研究やクリーニング店の経営など、他の異世界作品とは一線を画すユニークな要素も本作の特徴である。

出版情報
• 出版社:HJノベルス
• 発売日:2024年12月19日
• 価格:1,430円(税込)
• ISBN:9784798636986
• 関連メディア展開:コミカライズ、アニメ化

本作は、異世界転生ファンタジーとしての魅力と、主人公の多彩な才能や成長を描くストーリーが融合した作品である。新たな師匠との出会いを経て、竜馬の物語はさらに深みを増していく。

読んだ本のタイトル

神達に拾われた男 16
著者:Roy 氏
イラスト:りりんら 氏

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あらすじ・内容

シュルス大樹海で当初掲げていた全ての目的を無事に達成してみせた異世界転生者の少年・竜馬。
旅の道中で即席タッグを組んだSランク冒険者グレンと別れ、ギムルの街へ帰還した彼は早速ジャミール公爵家の面々に大樹海での成果を報告したり、洗濯屋に顔を出したり、エレオノーラに街を案内したりなど、冒険とはまた違った忙しさを味わっていた。
そんな中、竜馬は公爵家の協力を得て、本格的に呪術の勉強をすることに――!
新たな師匠の下で竜馬の才能がいかんなく発揮される異世界スローライフファンタジー、第十六幕!

神達に拾われた男 16

感想

リョウマの新たな挑戦と環境整備

秘書の就任と研究環境の進化

リョウマの秘書であるエレオノーラが遂に正式に就任した。
彼女の細やかな提案と計画の立案により、リョウマが研究に集中できる環境が整えられた。
これにより、スライム研究が新たな段階へと進む期待が高まった。
エレオノーラの着任が、研究だけでなく日常の支援体制をも強化していた。

スライム研究と生活改善の妙

以前はスライムの進化や活用方法が目を引く内容であった。
しかし最近では、食事や住環境の改善提案、教育や子育てに関する知識の共有など、多岐にわたる要素が描かれるようになった。
その中でも特に、前巻から出るようになった瘴気や呪術といった専門的な内容は、細かい解説を通じて物語に深みを与えていた。

瘴気浄化の挑戦とスライムの可能性

瘴気を浄化するための方法論や道具の使用が詳しく描かれた。
特にスライムの活用方法はユニークで、カーススライムなど新たな進化の可能性が示された。
これらの研究は、環境整備や魔法技術の発展にも寄与する重要なテーマとして描かれている。

リョウマの成長と仲間たちの連携

リョウマが秘書や冒険者の仲間たちと協力して新しい挑戦に取り組む様子は、物語の中核をなす展開であった。
彼の独創的な発想や努力が、周囲の人々を巻き込みつつ形となっていく過程は非常に印象深い。
特にエレオノーラとの信頼関係の構築や、冒険者たちとの連携は見どころの一つである。

締めとして

巻が進むにつれて、リョウマの成長や彼を取り巻く環境の変化が丁寧に描かれるようになった。
スライム研究から逸脱して広がる様々な研究テーマは、一見すると複雑に見えるが、それぞれが物語に必要な要素として結びついている。
特に前巻から出る瘴気については神々も注目しており、これからリョウマがどのように自分の世界を広げていくのか、さらなる展開が楽しみであった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

10章 1話  樹海からの帰還

湖畔の美しさと空間魔法の準備

リョウマとグレンが村を出発し、湖へ到着した。湖の透明な水や輝く湖面、小動物の姿が穏やかな印象を与えていた。リョウマは事前に埋めていたストーンスライムを確認し、空間魔法で転移を開始した。

空間魔法による迅速な移動

空間魔法を用いてリョウマはグレンと共に移動を進めた。短時間で大きな距離を移動し、途中ラプターの群れを回避した。また、魔力の消耗に対しては休憩やポーションを活用する方針を立てていた。

湿地帯での苦戦と工夫

湿地帯に差し掛かり、小舟を使用して進むが、グレンの体格の影響で舟は窮屈であった。泥沼を避けながら岸沿いを進み、マッドスライムの助けで安全に移動を続けた。

魔獣の回避と樹海の出口

移動中、ショットガンヒポポタマスの群れに遭遇したが、距離を取ることで衝突を避けた。沼地を抜けた後、空間魔法を再び用いて進み、樹海の出口近くに到達した。

拠点での歓迎と賭けの結果

拠点ではリョウマの帰還を予想した賭けが行われており、多くの冒険者が驚きとともに彼を迎えた。ステム爺に宿泊を依頼し、アシュトンやグレンと共に酒場で歓談した。

宴会の盛り上がりとリョウマの勝利

グレンが提供したイモータルスネークをきっかけに宴会が始まり、リョウマも冒険の話で場を盛り上げた。飲み比べではリョウマが最後まで勝ち残り、その耐久力が冒険者たちに一目置かれる結果となった。

宴会後の就寝と冒険者の結束

宴会後、リョウマは酔い潰れたグレンを部屋へ運び、自身も宿で休んだ。彼の行動は冒険者たちの信頼を得るとともに、翌日の新たな挑戦への準備となった。

朝の二日酔いと出発準備

リョウマとグレンは、宴会の翌朝に目を覚まし、ボリュームのある朝食を摂った。グレンは酒が残らない体質であり、リョウマは神の加護によって二日酔いがなかった。そこへ二日酔いのアシュトンが現れ、リョウマたちに「気をつけろ」と声をかけた。別れの挨拶を交わした後、一行は拠点を後にした。

空間魔法による樹海からの脱出

リョウマは空間魔法を駆使して樹海を脱出した。樹海を出ると空気が乾燥し、帰還を実感した。そこで、最寄りの街に向かうリョウマと王都を目指すグレンが別れの言葉を交わした。

グレンの要望と別れ

グレンは走り去る前に保存食の注文をリョウマに伝え、名前を出せば貴族が対応すると叫んだ。その後、グレンは振り返ることなく去っていった。リョウマは、保存食の準備や貴族への相談を考えつつも、グレンがジャミール公爵家について知っている理由に気づき、不思議に思った。

疑問を抱えたリョウマの出発

グレンに公爵家や街の名前を話した覚えがないことに気づいたが、既に彼の姿は遠く消えていた。リョウマは疑問を胸に抱えながら、自身の旅路を再開した。

10章 2話  業務連絡

別れの後の教会訪問と神界への招待

リョウマはグレンと別れた後、最寄りの街の教会を訪れた。礼拝堂で祈りを捧げると、神界に召喚され、クフォやガインを含む五柱の神々と再会した。神々はリョウマの樹海での依頼成功を称賛し、報酬の話を切り出した。

依頼成功の確認と死霊術の説明

メルトリーゼは、依頼の達成と問題の解決を確認した。また、死霊術について議論が交わされ、魂の「内側」への干渉は禁忌である一方で、「外側」への干渉は許容範囲内であることが説明された。神々は過去の悪例に触れつつも、リョウマには死霊術の適切な利用を求めた。

神器「創世神話」の授与

フェルノベリアはリョウマに神器「創世神話」を授与した。この神器は教会と同様の機能を持ち、魔力を用いることで神界と連絡が取れる特殊な本であった。これにより、リョウマは人目を避けつつ神々との連絡や治療が可能となった。

呪いの処置と魔法の学びへの助言

神々はリョウマの呪いの処置を行い、予定していた治療が完了したと告げた。その後、メルトリーゼはリョウマに魔法、特に呪術を学ぶよう助言し、コルミとの交流に魔法を活用できる可能性を示唆した。フェルノベリアもこれに賛同し、リョウマの新たな挑戦を後押しした。

帰還と新たな課題の発見

処置を終えたリョウマは神々に感謝を述べ、帰還した。神々との対話を通じて、新たに学ぶべき課題が増えたことを実感し、その学びに向けて一歩を踏み出す決意を固めた。

10章 3話  安否確認

神器の取得とリムールバードの連絡

リョウマは神界で有益な情報と神器を得た後、数日かけてガナの森に戻った。帰宅後すぐにリムールバードを使い、公爵家に連絡を入れた。ラインハルト夫妻らの訪問を受ける準備を整えながら、思いつきで新たな実験を始めた。

ミミックスライムの実験と騒動

到着した公爵夫妻や護衛たちは、部屋で椅子に座っているリョウマの様子に違和感を覚えた。だが、その正体はリョウマに擬態したミミックスライムであった。実験として感覚共有を試みていたが、ミミックスライムが倒れたことで皆が混乱した。リョウマ本人が現れ事情を説明すると、その高度な擬態能力に驚きつつも納得した。

祖父母の遺産と活用方針の議論

リョウマは祖父母の遺産について、主に研究資料や思い出の品を今後の研究に活用する意向を示した。ラインハルト夫妻らはその選択を支持し、研究資料の価値を理解しつつも、譲渡や販売の必要性がない限り干渉しないと約束した。

コルミ村の現状報告と依頼

リョウマはコルミ村での出来事と、回収した遺産について説明した。その内容の衝撃に皆が動揺したが、特にコルミ村に眠るアンデッドやデストリア男爵の遺品の扱いについて議論が交わされた。遺品は男爵家に届けることが決まり、リョウマは手続きの協力を依頼した。

装備品と呪術の専門家の相談

リョウマは新たな従魔であるキャノンボールライノス用の装具の製作を依頼できる職人の紹介を求めた。さらに、回収した解呪の研究資料を活用するため、呪術師ローゼンベルグ氏に協力を仰ぐことを提案し、賛同を得た。

教育者の派遣依頼

コルミとの交流が実現した際のために、人間社会のルールや常識を教えられる教師の派遣を相談した。コルミの知識や理解力の高さに合わせ、適切な教育者の選定が重要であることを伝えた。リョウマは自身の限界を認めつつ、より良い未来を築くための助力を求めた。

10章 4話  危機一髪

コルミとの対話といじめに関する議論

リョウマはコルミと将来的に学校のような場所を作る可能性について話し合い、その中でいじめの話題に発展した。コルミの質問に対し、いじめの原因や対処について自身の経験と考えを基に答えた。いじめの解決には罰則だけでなく、早期発見や被害者のフォローが重要だと結論付けた。

公爵家との再会とミミックスライムの実験

ガナの森に戻ったリョウマは、ラインハルト夫妻らの到着を迎える前にミミックスライムの擬態能力を使った実験を行った。しかし、その様子に驚いた訪問者たちが混乱する事態となった。事情を説明した後、ミミックスライムの活用法が呪いの影響を受けるリョウマにとって有益であると理解された。

遺産と樹海探索の報告

リョウマは祖父母の遺産の内容とコルミ村での探索について報告した。遺産の中には貴重な研究資料が含まれており、特に解呪に関する資料は高い価値を持つと説明した。公爵家はこれらの資料の活用を支援すると約束した。

新しい村作りと食料問題への対策

ラインハルトは、新しい村の開拓とスライム農法の活用を含めた食料生産計画の推進をリョウマに依頼した。異常気象による作物の不作が懸念されており、近隣領地との連携も視野に入れた対策が必要とされた。リョウマは協力を快諾し、今後の計画に積極的に関与する意向を示した。

グレンの要望と今後の展望

リョウマはグレンからのレトルト食品の大量購入希望についても伝えた。公爵家はこの提案を受け、食品生産施設の建設を急ぐことを決定した。エレオノーラが補佐として派遣されることが決まり、リョウマはその準備を進めることとなった。

密談の終了と宴会の開始

公爵家との話し合いを終えたリョウマは、樹海探索の成果として持ち帰った「お土産」を準備し、宴会の準備を整えた。訪問者たちとともに帰還を祝う宴会が始まり、和やかな雰囲気の中で次の展望を共有した。

10章 5話  帰還祝いと歩み寄り

試食会と宴会の開始

ラインハルトの音頭で宴会が始まり、参加者たちは樹海で仕入れた「放熱樹の樽エール」とイモータルスネークの肉を楽しんだ。エールは爽やかな香りで好評を博し、肉の脂が焼ける香ばしい匂いが広がり、参加者たちの食欲をそそった。

イモータルスネークの肉に関する評価と過去の噂

イモータルスネークの肉は参加者全員に驚きと感動を与えた。過去には「まずい」と評されたこともあったが、これは再生能力を利用した狩猟方法や保存状態が影響していた可能性が指摘された。リョウマはスライムの能力を活用して最高の状態で提供し、その美味しさを実証した。

エレオノーラとの協力と準備

エレオノーラは宴会の中でリョウマの秘書としての役割を果たし、薬味の準備を手伝った。初対面の緊張感はあったものの、リョウマとの仕事に前向きな姿勢を示し、今後の業務内容や必要な準備について確認を行った。

廃棄食品契約の説明と解決策

エレオノーラは廃棄食品の買い取り契約について疑問を呈し、リョウマが過去のトラブルから不利な契約をあえて受け入れた経緯を説明した。リョウマは契約を活用して信頼できる取引先を選定し、現在は元法務官の監修の下で契約内容を見直していることを伝えた。

ラインバッハとセバスの談笑

ラインバッハとセバスも宴会を楽しみ、特にセバスは香辛料や肉料理を満喫した。過去の旅の経験を懐かしむセバスに、リョウマは新しい香辛料を提供し、さらに宴会の盛り上がりを助けた。

宴会の進行と協力体制の確立

リョウマはエレオノーラと協力して追加の肉や香辛料を用意し、宴会が滞りなく進むように気を配った。エレオノーラとの共同作業を通じて、彼女との今後の協力体制が順調に進む可能性を感じ、宴会の場での交流を楽しんだ。

10章 6話  実感

宴会の終わりと別れ

試食会兼宴会が終了し、参加者たちは満足そうな様子で帰路についた。ラインハルトや護衛の者たちはリョウマへの感謝を述べ、公爵家が樹海の食材を調理する様子を見たいとの期待を口にした。リョウマはギムルへ戻る準備を整え、別れを惜しむ静けさの中でリムールバードを解放し、自身も空間魔法を使い街へ向かった。

ギムル到着と洗濯屋での再会

夕方にはギムルに到着し、街の警備隊員と挨拶を交わして洗濯屋を訪れた。店員のジェーンやカルムたちはリョウマの無事な帰還を喜び、温かく迎えた。カルムからの報告では、留守中に些細な問題が発生したものの、大きな被害や問題はなかったとされた。

エレオノーラとの業務引き継ぎ準備

リョウマはエレオノーラの到着に備え、彼女が秘書としての役割を担うこと、カルムがこれまで補佐として行ってきた業務を引き継ぐことを伝えた。カルムは快く承諾し、ユーダムもエレオノーラを補助することを約束した。ユーダムは彼女の過去の評判について語りつつも、現在の変化に期待を寄せた。

樹海の食材と解体場の手配

リョウマは洗濯屋のシェルマに樹海から持ち帰った食材を渡そうとしたが、イモータルスネークの解体場所が問題となった。花屋のポリーヌの提案により、隣の肉屋であるジークの解体場を借りることとなった。ジークは珍しい魔獣の肉に興味を示し、作業を見学することを快諾した。

街の人々との交流とお土産の配布

花屋ではポリーヌやその子供たち、奥様たちと果物の試食を行い、樹海の珍しい味覚を楽しんでもらった。リョウマはその後も解体したイモータルスネークの肉や果物を持って街を巡り、様々な人々にお土産を配った。樹海での冒険と街での交流、それぞれの良さを改めて実感した一日であった。

10章 7話  エレオノーラの到着

エレオノーラの到着

3日後の朝、エレオノーラから着任の通知が届き、リョウマは彼女に会うため洗濯屋を訪れた。応接室では彼女、カルム、ユーダム、セバスが議論をしており、穏やかな雰囲気が漂っていた。エレオノーラから急ぎの報告として、ゴミ処理場の技術が盗用された可能性があるとの情報が伝えられた。彼女の早期着任は、公爵家の迅速な対応として判断されたものであった。

技術盗用疑惑と貴族間の問題

リョウマは情報の真偽を確認し、状況に応じた対策を講じる必要性を理解した。一方、技術盗用に関与していると疑われる貴族については、昨年末の事件を契機に処罰された貴族たちが新たな問題を引き起こしている状況が明らかになった。特に後継者としての教育を受けていない者が当主となった場合、領地運営において混乱を招く事例が多いと説明された。

公爵家の迅速な行動

セバスによると、公爵家前当主ラインバッハが直々に疑惑の貴族の領地を訪れて調査を進めているとのことだった。その行動は貴族間での示威行動としても効果を発揮しており、リョウマにとっても公爵家の支援が心強いものであると実感された。

エレオノーラとの街の視察

エレオノーラは即座に仕事を始める意欲を見せたが、リョウマの提案により、まずは街の案内と関係者との顔合わせを行うことになった。彼女の荷物は必要最低限に絞られており、その整理を終えた後、二人は街の新しい住宅街を訪れた。

元スラム街の改善に対する敬意

エレオノーラは、元スラム街が住宅地として再整備されたことに深い感銘を受けていた。その理由として、彼女の実家が経済的に逼迫しており、領民の多くが貧困に喘いでいた過去を持つことが語られた。彼女は幼少期から「貧困層を救うことは貴族の責務」と教えられて育ったため、街の改善が持つ意義を理解し、敬服の念を抱いていた。

今後の連携と信頼の醸成

エレオノーラは貴族としての背景を持ちながらも、スラム街の住民に対する偏見を持たないと明言した。リョウマは彼女の真摯な姿勢に感心しつつ、今後もフォローし合いながら連携していく決意を新たにした。その後、二人は予定していた物件に到着し、新たな仕事の第一歩を踏み出した。

10章 8話  挨拶回り(前編)

エレオノーラの新居と近隣住民との出会い

新居の案内と建物の特徴

リョウマはエレオノーラを、彼女の新しい住居兼事務所となる建物へ案内した。この建物は、リョウマがスラム街を区画整理して作り上げたもので、ジョージアン様式を模した落ち着いた外観を持っていた。エレオノーラはその雰囲気を気に入り、建物の構造について説明を聞きながら感心していた。隣接する建物も含め、少し大きめの造りである理由がリョウマから語られた。

若手冒険者との挨拶

新居の前で説明していると、右隣から若手冒険者たちが現れた。彼らはリョウマを「兄貴」と慕い、彼の紹介でエレオノーラにも挨拶をした。エレオノーラは、元不良冒険者だった彼らに戸惑いつつも、丁寧に対応していた。

ガルシアとの出会い

冒険者たちの挨拶が終わったところで、ガルシア・サンチェスが登場した。元法務官である彼は、法律に関する知識を地域の人々に教え、特に若い冒険者たちに基本的な法知識を叩き込んでいる人物であった。彼の大声と情熱的な性格に、エレオノーラは少し驚きながらも礼儀正しく挨拶を交わした。

シュトイアーとの出会い

その後、左隣の家からはミュラー・シュトイアーが姿を見せた。元徴税官の彼は、不正を見抜く能力に優れ、真面目な働きぶりで知られていた。足が不自由で短い挨拶だけに留めたが、エレオノーラを歓迎する姿勢を示していた。リョウマは彼の性格や背景について補足し、今後の仕事で頼れる存在であることを説明した。

新居の内部案内と最初の業務

建物の内部はゆったりした5LDKで、1階は事務所として、2階は生活スペースとして設計されていた。エレオノーラは建物の整った環境に満足し、来客用の応接室と待機室の整備を最初の仕事として任された。また、彼女の元夫との生活環境の違いを述べながら、新たな環境での仕事に意欲を見せた。

今後の街の案内と準備

家の案内が終わると、リョウマはエレオノーラに街を案内することを提案した。彼女の仕事に関係する場所を優先的に見せる計画が立てられ、特に飲食店などの関連施設を紹介しながら、彼女が日々の生活を円滑に始められるよう準備を進めることとなった。

10章 9話  挨拶回り(後編)

エレオノーラの街案内と新たな出会い

街の中心部での説明

リョウマはエレオノーラを連れて街の中心部へ向かった。この地域は高い建物が多く、大通りを目印にすれば迷わずたどり着ける場所であった。リョウマは、自分が経営する施設が街の北東部に集中していることを説明し、道の分かりやすさを強調した。また、ギルドや知り合いを紹介する計画も立てた。

冒険者ギルドでの出会い

冒険者ギルドを訪れると、受付嬢のメイリーンがリョウマを出迎えた。エレオノーラを紹介し、彼女が秘書としての役割を果たすことを説明した。メイリーンはエレオノーラに協力を約束し、ギルドマスターとも面会を勧めた。その最中、1人の男がリョウマたちに絡み始めた。

酔っ払いの冒険者との騒動

男はエレオノーラの存在を侮辱し、リョウマに対して怒りを露わにした。彼は以前、リョウマの経営する洗濯屋で出入り禁止となった酔っ払いの冒険者であった。挑発に対し、リョウマは冷静に対応し、男の攻撃を軽々とかわした後、一撃で倒した。倒れた男を回復魔法で治療したところ、ギルドマスターのウォーガンが現れ、騒動の処理を引き継いだ。

エレオノーラの過去と実力

騒動の後、リョウマはエレオノーラの戦闘準備に感謝を述べた。彼女は過去に領軍の部隊を率いた経験があり、魔法の実力にも自信があった。また、学生時代には「轟雷の魔女」と呼ばれるほど雷魔法を得意とし、学園を首席で卒業していたという。リョウマはその実績に驚き、今後魔法についても教えを請うことを考えた。

ユーダムとの関係と過去の反省

エレオノーラはユーダムを学園時代に知っていたが、当時は勉学に依存しすぎた自分を反省していた。彼女は学業以外に価値を見出せず、他者を軽蔑することも多かったと語った。しかし、今ではその態度を改めており、ユーダムとの関係構築にも前向きな姿勢を見せた。リョウマはその姿勢に安心し、今後も彼女との距離を徐々に縮めていくことを決意した。

10章 10話  続報と実験場視察

技術盗用疑惑の真相と新たな実験場

技術盗用疑惑の解消

セバスは、技術盗用疑惑に関する詳細な報告を行った。新しい領主がゴミの集積場を設営した理由は、既存の処理場が魔獣の被害を受けていたためであった。領主はその危機を乗り越えるため、街中に集積場を移し、防衛力を集中させる策を取ったという。技術盗用の事実はなかったが、近隣貴族との関係が悪化し、問題が複雑化していた。

新領主の苦境と対策

新領主は19歳の若者であり、知識や経験の不足が露呈していた。周囲の貴族たちは彼の苦境に付け込み、利己的な要求を突きつけていた。公爵家のラインバッハが介入し、問題の領地を公爵家の監視下に置いたことで、リョウマに関係する問題は解決を見た。これによりリョウマは自身の研究や学習に専念するよう勧められた。

瘴気浄化実験場の準備

セバスは瘴気の浄化実験場に関する資料と許可証をリョウマに手渡した。この土地はガナの森近くに位置し、瘴気の影響で一部が荒れ果てた山であった。リョウマは呪術を教える予定のローゼンベルグとともに実験を進める計画を立てた。

実験場への同行者と計画

エレオノーラは事務作業を引き継ぎながらも、リョウマの行動に慣れるため今回の視察に同行した。また、ユーダムやローゼンベルグ、セバス、さらに冒険者のミーヤ、シリア、ミゼリア、ウェルアンナ、ジェフらも参加した。彼らは実験場周辺の調査を担当し、リョウマを支援する体制を整えた。

視察開始と新たな展望

リョウマたちは10人の大所帯で実験場の視察に向かった。荒れた山肌を目にしながら、各々が役割を果たし、瘴気浄化と呪術の研究に向けて準備を進めた。この新たな環境での活動が、リョウマにとって新たな挑戦となることを確信していた。

10章 11話  呪術師業界の苦悩

スライムでの山登りと呪術師の業界事情

スライムでの山登り体験

実験場に向かう道中、リョウマたちはスライムを使った移動を試みた。先導役のヒュージブッシュスライムが草木を切り開き道を作り、エンペラースカベンジャースライムがその後を整備しながら進んだ。冒険者や貴族たちはスライム独特の滑らかな乗り心地に戸惑いながらも次第に慣れていった。ローゼンベルグはスライムの実用性に感心し、その活用方法を熱心に学び取ろうとした。

呪術師の仕事と課題

移動中、ローゼンベルグは呪術師の業務内容を語った。瘴地の管理や解呪といった仕事には体力が求められ、さらに人手不足が深刻であると明かした。一方、能力や得意分野に応じて役割が分担されるため、全ての呪術師が過酷な労働を強いられるわけではないとも説明した。リョウマは瘴地管理に興味を示し、将来的に呪術師として貢献したい意向を述べた。

呪術の学び方と教育機関

呪術師を目指す道として、弟子入りか教育機関での学習があるとローゼンベルグは説明した。弟子入りはかつての主流であったが、閉鎖的で技術の伝承が難しくなる問題があったため、現在では教育機関が主流である。カーシェル公爵家が運営する教育機関は、志望者を広く受け入れ、呪術師の育成と支援を行っている。ローゼンベルグ自身もその一環として育成に尽力しているという。

呪術師業界の未来への取り組み

呪術師業界では人材不足解消と呪い対策の強化が急務とされていた。ローゼンベルグは、呪術師が少ない現状を打破するため、現役呪術師の保護や新たな人材育成の必要性を力説した。その熱意はリョウマにも伝わり、業界全体が一丸となって未来に向かう姿勢を垣間見ることができた。

次なる課題への思索

山を登る間、リョウマは呪術師という職業への興味と、自身の前世の職場経験からくる不安とがせめぎ合う思いを抱えていた。現場の過酷さを知りながらも、業界が改善に向かう熱意を感じたことで、少しずつ前向きに考える兆しを見せていた。

10章 12話  瘴気浄化の基礎講習

山小屋の掃除と作業の準備

山小屋の到着と清掃作業

リョウマたちはスライムに乗って移動し、山頂付近の山小屋に到着した。この山小屋は以前、呪術師が土地管理の際に利用していた場所で、瘴気の影響がないため今後の活動拠点として使用する予定であった。ただし、長年手入れが行き届いておらず、リョウマはクリーナースライムやスティッキースライムを駆使して徹底的な清掃を開始した。

冒険者チームの周辺調査

清掃中、リョウマは冒険者チームに周囲の安全確認を依頼した。アンデッドや大型獣の有無、地形の状況を確認するよう指示し、光属性の魔力を武器に付与して戦闘への備えも整えた。冒険者たちは分担して調査を行い、周囲に特に危険はないことを確認して戻った。

昼食の準備と資料の確認

調査が進む間、セバスたちが昼食の準備を進め、リョウマとローゼンベルグは呪術関連の資料を確認した。資料には瘴気が発生している西南西の中腹の地形や、過去に存在した集落の歴史が記載されていた。その集落はかつて商人相手に通行料を徴収していたが、新たな道の開通によって商業的な価値を失い、最終的に焼き払われたという経緯があった。

瘴気の調査と魔法道具の説明

ローゼンベルグは瘴気調査用の杖を使用し、瘴気の濃度や範囲を測定する方法を説明した。杖の天秤が瘴気の濃い方向に傾く仕組みで、安全基準として30度を安全圏、60度を危険域として判断することが推奨された。また、瘴気を伴う土壌や水源の危険性と、それぞれの浄化難易度についても詳細に解説された。

冒険者たちの報告と瘴気の影響範囲

冒険者たちの調査結果により、山の東側は比較的安全で生物も多い一方、西南西の瘴地周辺は活気がなく静寂に包まれていることが分かった。ローゼンベルグは、この違いが瘴気による土砂の流出に起因していると指摘し、瘴気が山全体に広がっていないことを確認した。

瘴気の性質と影響の理解

瘴気は土、水、空気に異なる影響を与える性質を持ち、それらが互いに作用し合うことで環境が変化することが説明された。冒険者たちはその話に関心を寄せ、瘴気浄化作業に向けた理解を深めていった。その後、昼食の準備が整い、リョウマたちは和やかな雰囲気の中で食事を共にした。

10章 13話  瘴気浄化の実践訓練

山小屋の改修と調査開始

山小屋の手狭さと改修案

昼食後、リョウマたちはスライムの力で清掃された山小屋に滞在していた。しかし、部屋数が少なく、大人数で泊まるには手狭であった。ローゼンベルグは過去の用途ではこれで十分と説明したが、リョウマはスライムと魔法を使い、新しい部屋を増築する案を提案した。その効率的な建築技術に周囲は驚嘆しつつも納得した。

冒険者チームの勤勉な調査

冒険者たちは東側の安全な区域から調査を開始した。彼らの勤勉さにリョウマも感心し、ローゼンベルグからは呪術師として人間関係を大切にするよう助言があった。その後、リョウマとローゼンベルグは魔法道具を使い、瘴気の調査を進めるため集落跡地へ向かった。

瘴気発生源への到達

集落跡地への道は資料以上に険しかった。60度近い急斜面や狭い足場が続き、スライムの使用が困難であったため、リョウマは空間魔法や新しい道の開拓を検討した。進む中で瘴気を感知し、ローゼンベルグの指導のもと、防護魔法を施して調査を続けた。瘴気の濃度は28度で、安全圏内ではあったが、将来的に管理が必要な状態であった。

瘴気の性質と浄化方法

ローゼンベルグは瘴気の浄化作業を実演し、瘴気を地中から吸い上げて魔石に閉じ込める技術を披露した。浄化には高濃度の瘴気が物体を劣化させる危険が伴うため、道具の使い捨てが必要と説明した。リョウマも実践に挑み、瘴気を引き出す操作に成功したことで、浄化の基礎を学び取った。

後片付けと祓魔師との連携

使用済みの杖は特別な箱で保管し、再利用できる魔石は回収するなど、道具の後片付けの重要性が強調された。また、呪術師と祓魔師がそれぞれの得意分野で連携している実情が解説され、浄化作業が両者の協力で成り立っていることが示された。

次の学びへの準備

この日の調査で瘴気の発生源が集落跡地と土砂崩れの台地であることを確認した。瘴気の広がりを防ぐための呪術や、今後の浄化作業への準備も進められた。リョウマはさらに学びを深める意欲を抱き、この調子で次の段階へと進む決意を固めた。

10章 14話  エレオノーラの提案

夜の宿舎とエレオノーラの提案

宿舎での偶然の対話


リョウマが夜風を感じようと宿舎を出ると、エレオノーラが玄関前で足跡を残して立ち尽くしていた。彼女はその場で、本日の活動をまとめた膨大な書類を持参していた。リョウマが驚いたのは、その内容の充実さと短時間での完成度であった。彼女は昼間の作業中に情報を整理していたと説明し、自分の作業を特別とは思っていない様子であった。

魔法書の学習と能力の考察

リョウマとエレオノーラは、リョウマの魔法習得能力について話を進めた。エレオノーラはリョウマが魔法ギルドの難解な魔法書を独力で理解していたこと、また練習で見せた魔力操作能力の高さを指摘し、彼の学習能力の高さを評価した。リョウマはスライムの視界を活用した訓練方法も共有し、エレオノーラはその利便性に感嘆した。

実験場の管理体制に関する提案

エレオノーラは、実験場周辺の整備について提案を持ちかけた。彼女は、公爵家の技師としての体裁を保つため、道や主要設備の整備を他人が見てわかる形で行う必要性を主張した。また、公爵家から実験場が実質的に贈与されているという現状を指摘し、管理が不十分だと外部からの評価や批判を招く恐れを説明した。リョウマはこれに同意し、冒険者たちと協力して環境整備に着手することを決意した。

翌日の準備とエレオノーラの成長

リョウマはエレオノーラの提案を受け入れ、翌朝冒険者たちに麓への道作りを依頼することを決めた。また、彼女が貴族としての視点から指摘した点を高く評価し、今後も提案を歓迎する姿勢を示した。エレオノーラは自らの細かい性格を自嘲気味に語ったが、リョウマはその細やかさが重要であると感謝を伝えた。

静かな夜の終わり

一連の対話の後、エレオノーラは書類をリョウマに託し、一礼して宿舎へ戻った。リョウマは彼女の成長と意欲を感じ取り、彼女の報告書をしっかり確認する決意を固めた。静かな夜風の中、彼はエレオノーラとの信頼関係をさらに深めるための第一歩を踏み出していた。

10章 15話  瘴気浄化の応用編

瘴気浄化と呪術の実践

朝食での話し合い

リョウマは朝食の席で、住環境整備に関するエレオノーラの提案を皆に共有した。ローゼンベルグは呪術の進行が順調であり、作業への時間割きが問題ないと評価した。冒険者チームも賛成したが、リョウマの過負荷を心配する声があった。これに対しリョウマは、瘴気濃度の計測が一段落し、浄化作業も計画的に進められると説明した。結果として全員が計画に同意し、具体的な作業内容について議論が進んだ。

我流による瘴気浄化の実演

朝食後、リョウマはローゼンベルグの要請で、自身が編み出した瘴気浄化の方法を実演した。墓地の瘴気を供養のイメージで浄化しながら、煙が瘴気を吸い取り拡散する仕組みを再確認した。この方法は、独自の応用力を活かしたものであり、ローゼンベルグもその効果を高く評価した。特に、短期間で術を発展させた点に驚きを隠せない様子であった。

呪術の基礎と応用

浄化作業が成功した後、ローゼンベルグは呪術の基礎である「呪い」の性質と正しい使い方を教えた。具体例として、かつて誤った呪いが引き起こした悲劇を挙げ、対象と目的を明確にすることの重要性を強調した。呪術の応用例としては、瘴気を漏らさない呪いの印の使用が挙げられた。リョウマは自身が過去に習得した「病魔の呪い」を再現し、その成果を示した。

実践練習と初成功

リョウマは瘴気の漏出を防ぐ呪いを初めて実践した。森での孤立感をイメージに活かし、呪いを石にかけることで、周囲の瘴気を遠ざけることに成功した。ローゼンベルグもその効果に驚き、「順調すぎて教えることがない」と評価を述べた。こうしてリョウマは、呪術師としての素質と能力を改めて証明した。

10章 16話  禁忌の呪術と効率化

呪術の適性と学習

呪術の吸収力と適性の再確認


リョウマは呪術に対する適性を再確認した。ローゼンベルグは、リョウマの呪術の吸収力が非常に高いことに驚き、過去にどこかで学んだ経験がないか尋ねた。リョウマは、レミリー・クレミスから基礎を教わった程度だと答えた。また、前世の知識や読書体験が呪術のイメージ形成に役立ったのではないかと自己分析を行った。

禁忌の呪術とその背景

リョウマは日本の伝承に基づく呪術「蠱毒」や「犬神」について話したが、それらは現代では禁忌とされているとローゼンベルグが説明した。これらの呪術は、生贄や虐待を伴うことで強力な効果を発揮したが、事故の多発や倫理的問題から禁止された。また、自身の苦痛を「苦行」として修練する呪術師もいるが、これは推奨される方法ではないと強調された。

瞑想と内省による修行

一般的な呪術の修行方法として、瞑想や内省が基本であると説明された。負の感情を理解し制御することで、呪術の力を正しく扱えるようになる。リョウマはこれを聞き、過去の経験が既に呪術の訓練と似ている部分があったと述べた。

大量の呪物と浄化作業

セバスが用意した大量の呪物を前に、リョウマは浄化作業に取り組んだ。呪物の浄化は「カーストランスファー」で行い、順調に進行した。リョウマは効率向上のため、ダークスライムを活用できないかと考え、呪いの魔力を吸収する実験を試みた。

カーススライムの進化

ダークスライムは呪いの魔力を吸収することで新たな進化を遂げ、「カーススライム」となった。このスライムは呪術関連のスキルと耐性を獲得し、リョウマの新たな研究対象となった。外見に変化はなかったが、能力面での進化が確認された。

結論と新たな可能性

リョウマはカーススライムの観察に没頭し、その可能性に期待を寄せた。一方、ローゼンベルグたちは、彼の熱中ぶりに温かい目線を向けていた。こうして、リョウマの呪術における適性とスライムの新たな進化が示された。

10章 17話  山林整備計画素案

ミアズマスライムの可能性

カーススライムとミアズマスライムの情報交換


昼食時、リョウマは新たに進化したカーススライムについて仲間たちに共有した。同時に、ローゼンベルグから教えられたミアズマスライムの存在についても話した。瘴気を撒き散らす危険性から駆除が推奨されるものの、瘴気を食べる性質があれば浄化や保存に役立つ可能性があると説明された。

スライムの進化計画

リョウマはミアズマスライムの入手に関して、自然界での探索や進化実験の可能性を模索した。瘴気を好むスライムを見つけた上で進化させる計画を立てたが、安全対策が整うまで実験は慎重に進めることにした。

山の調査と水の確保

安全な土地と水源の確認


冒険者チームは山の調査を行い、危険な魔獣がいないことを確認した。さらに、山で見つけた小川や水を蓄えるカレッパシの木の群生地を報告し、井戸を掘る可能性についても提案した。これにより、山の利用における水の確保の見通しが立った。

山火事対策と管理計画

ユーダムは山火事防止のため、下草刈りや間伐の必要性を指摘した。リョウマは防火帯の設置や、カレッパシの木を利用した防火林の植林を提案した。スライムやゴブリンを活用した山の整備計画が具体化した。

山林整備とゴブリン部隊の活用

ゴブリンとスライムによる作業分担


リョウマはゴブリン部隊やスライムを活用し、山の整備を進める計画を立てた。枝打ちはゴブリンに任せ、道の整備はスライムを用いて効率化する方針を示した。また、ゴブリンが酒造に熱心であることに触れ、山林整備が良い運動にもなると述べた。

鍛錬と山林整備の連携

リョウマは自身の身体能力向上を目的とし、鍛錬を兼ねて山林整備に取り組むことを決意した。仲間たちも協力を申し出たことで、山の整備作業に一体感が生まれた。

午後の予定と今後の準備

山の視察と午後の計画


午後にはユーダムの案内で山を視察することが決定した。リョウマはローゼンベルグに遺失魔法に関する資料を渡し、翌日の相談に備えることを伝えた。

共同作業への期待と目標

リョウマは仲間たちとの話し合いを楽しみながら、山林整備や呪術の研究を含む今後の目標達成に向けて意気込んでいた。共同作業を通じて進めることへの期待感をにじませつつ、計画をさらに練り上げていく方針を確認した。

特別書き下ろし 1・エレオノーラの長い夜

孤独な夜と新しい職場での決意

短い睡眠と夜の過ごし方


エレオノーラは与えられた宿舎で目を覚まし、自身の短い睡眠時間に思いを馳せていた。一般的な人々と異なり、彼女は一日わずか3時間の睡眠で活動できる体質であり、これが原因で夜の時間を持て余していた。持ち込んだ本を何度も読み返したものの、夜中にすることがなく退屈と憂鬱に苛まれていた。

新たな環境での恩恵

エレオノーラは現在の環境に感謝しつつ、自身がジャミール公爵家に拾われた経緯を振り返った。過去の家庭問題や厳しい状況にもかかわらず、彼女はタケバヤシの秘書として働く機会を得た。彼女にとって、この職場環境は働き甲斐があり、特に彼の迅速な行動力に感銘を受けていた。

タケバヤシの行動の緩急

タケバヤシは提案を素早く受け入れ、驚異的な速度で物事を進める一方で、準備の段階では慎重さを忘れない人物であった。彼の魔法の習得速度や土木作業の進行は、彼女の期待を大きく超えるものであり、秘書としてのエレオノーラは、その動きに合わせるべく努力していた。

明日への準備と決意

眠れない時間を活用し、エレオノーラは明日以降の計画を練り直すことを決意した。彼女はタケバヤシの進行速度に対応するため、準備を念入りに進め、次に必要なことを予測した。この環境で自身の力を存分に発揮し、感謝の意を仕事で示すことが彼女の目標であった。

特別書き下ろし 2・神々の休憩所

神々の休憩と竜馬への想い

魔王の欠片捜索の現状


神界の一角に疲れた表情の三柱の神々、ガイン、クフォ、メルトリーゼが集まった。彼らは魔王の欠片の捜索に尽力していたが、欠片の隠蔽能力や周囲への影響を考慮し、発見や処理には極度の労力と慎重さが求められていた。欠片の排除作業が進むたびに新たな欠片が見つかるため、終わりの見えない作業に苛立ちと疲労を感じていた。

竜馬への依頼案

話題は竜馬・タケバヤシに移り、彼が魔王の欠片の回収に貢献した実績を基に、再び彼に協力を依頼する案が浮上した。神器を用いて安全を確保すれば、欠片の効率的な回収が可能になるとの意見が出た。しかし、彼を巻き込むことへのためらいもあり、話は一時保留となった。

竜馬の近況と能力評価

竜馬が呪術の学習を始め、瘴気浄化に取り組んでいる様子を神々が把握した。彼の呪術適性は高く、地球での不運な経験がその才能を磨いていた。指導者であるローゼンベルグからの助言を受け、慎重に実践を重ねており、さらなる成長が期待されていた。

竜馬の支えとなる人々

エレオノーラをはじめとする周囲の仲間たちが竜馬を支えている状況が共有された。情報処理に優れた彼女や他の協力者たちの存在により、竜馬の活動は円滑に進められていた。これにより、彼の環境は整備されつつあり、神々も安堵の表情を浮かべた。

懸念と決意

メルトリーゼは竜馬が頻繁に面倒事に巻き込まれる運命について懸念を示した。魔王の欠片や過去の不運な出来事を思い返し、現在の平穏が大きな災厄の前触れではないかと危惧した。これに対し、神々は竜馬を見守り続けることが最善と結論づけた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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