小説「転生陰陽師・賀茂一樹 1巻」感想・ネタバレ

小説「転生陰陽師・賀茂一樹 1巻」感想・ネタバレ

読んだ本のタイトル

#転生陰陽師・賀茂一樹~二度と地獄はご免なので、閻魔大王の神気で無双します~
著者:#赤野用介 氏
普段、病院などで働いてる方らしいです。
イラスト:#hakusai(ハクサイ)  氏
pixivを見るに韓国の方?

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あらすじ・内容

とある陰陽師が地獄から返り咲く無双萬屋、開店!

「一生一緒ですよね、主様?」
人違いで地獄に堕ちた賀茂一樹は、怪異跳梁する世界に転生して禊みそぎをすることに。
染み付いた“穢れ”目当てに妖怪が寄ってくるらしいが――式神たちからもやたらと慕われてしまった!?
愛が重めの山姫、誘惑上手な天狗の末裔、愛人志望の絡新婦などなど。
閻魔大王から得た膨大な神気のせいか、集まるのは超強力&癖のある奴らばかり! 
そんな彼らに困惑させられつつも、魂の浄化をしたい一樹にとってはこれ幸い。
上級妖異を次々と討伐し、その名を轟かせていく! 
一方、その異常な力は陰陽師協会からも目をつけられてしまい……? 
曲者揃いの妖怪なかまを従え、魑魅魍魎ちみもうりょうを余裕で調伏! 
とある陰陽師が地獄から返り咲く無双萬屋、開店!

転生陰陽師・賀茂一樹~二度と地獄はご免なので、閻魔大王の神気で無双します~

キャラクター

加茂一樹

人違いで地獄に堕ちて、閻魔大王の導きで穢れを禊するために怪異跋扈する世界に転生し、穢れに惹かれて寄ってくる怪異を祓うはずだったが、、
ただ産まれた家庭は、自身より強い怪異ばかりに挑み高い呪具を買いまくるダメンズな親父のせいでド貧乏。
食事にも事欠くほどの貧乏で、食事が給食のみという状態になった事もしばしば。
妹のために給食のデザートを持ち帰ったり。
道端の草花の蜜は以外と美味しいと知る、、

ダメンズな旦那に愛想を尽かせだ母は妹を連れて家を出て行ってしまい、現在は父と2人暮らし。
一樹は魂の穢れを祓うため、父から陰陽術を習い。

早く独り立ちして生活を安定させたいと思い。
陰陽師の国家資格を得るための試験に挑む。
式神は、山姫の蒼依、牛鬼の牛太郎、八咫烏の青龍、黄龍、朱雀、白虎、玄武の五羽、絡新婦の水仙、鎌鼬の神転、神斬、神治三兄妹が居る。

蒼依

女神イザナミの分霊、山姥の孫の山姫。
山姫は伊邪那美命の分霊であるため美しいのだが、気を供給されないと山姥になってしまう。
彼女の母親は用済みとなった父親を山姥が殺し。
父親を食べて山姫から山姥になれと言われたが事を拒んだせいで山姥に殺されている。
現在は、一樹の式神となり一樹から気を供給されてるので落ち着いており。
一樹と同棲中。

式神は猫又の猫太郎。

ただ、現在住んでいる家は蒼依の物(まだ山姥の物)であり一樹は蒼依の家に居候している形になっている。

あれ?親父と似てね?w

感想

牛鬼と山姥


親父と2人で牛鬼を討伐に行くが、それは山姥の罠だった。

山姥は自身のテリトリーに入って来た牛鬼を邪魔に思っており牛鬼と陰陽師をぶつけて弱った方を襲って倒し。

山姫のままで居る山姥の孫に人の味を覚えさせ、山姥に堕とそうとしたのだが、、

一樹が罠を食い破る。

そして、山姫の蒼依を式神にするのだが、普通の人だと気が足りずに山姫を式神に出来はないのだが。

加茂一樹は違った蒼依の前にB級の牛鬼を式神にし山姫の蒼依も式神にしても気が減らない状況で何気にチート。

見習い陰陽師と式神

陰陽師の国家資格を取るために八咫烏の式神を五羽眷属にするのだが、、

親の八咫烏を討伐して、玉子を5つ確保して陽の気を卵に注いて孵化させて自信を親だとプリンティングしてしまう。

そうして蒼依をママ、一樹をパパとして幼児のように扱ったりするので八咫烏達はヤンチャになってしまった。

そんな八咫烏達をYouTubeみたいな動画サイトに彼等の成長をアップしていたら、、

収益化できるまで人気になってしまった。

陰陽師国家試験

一次試験 呪力測定
二次試験 霊符呪具
三次試験 対戦試合

一次試験はダメンズな父親の推薦で免除され。

一樹の試験本番は二次試験の霊符呪具作成。

そこで一樹は度肝を抜く結果を出してしまう。

そして、二次試験の合格者は558人となる。

そのうち下位458人がFランク。

上位100人がDランク候補となる。

Dランクになるには候補者同士の対戦で相手を倒せばDランク。

負けたり、引き分けたらEランクとなる。

五鬼童家の調査

ただ、二次試験で一樹が破格な結果を出してしまったせいで主催者の五鬼童一家に警戒されてしまう。

もし、賀茂一樹が悪性であったら彼が何処かの県の統括になったら人族を襲うかもしれない。

それを恐れた五鬼童家は、一樹の善性を調べるためトップ3の一樹と五鬼童の双子を対戦させるエキシビジョンを企画する。

そして、一樹vs五鬼童2人の対戦をするのだが、、

式神の八咫烏の五羽がハッチャケてしまい。
アッサリと終わってしまう。

あれ?善悪は?

新任陰陽師と動画配信

新任の陰陽師となり。

魂の穢れを浄化するために大きな邪を祓いたい一樹は、広告用に配信していたYouTuboで依頼を募集した結果。

YouTuboで別のチャンネルの配信者がクラウドファンディングで集めた金を使っての依頼を受ける。

依頼内容は、比叡山の鉄鼠の討伐。

YouTuboで生配信をしながらの討伐は、、

まるで怪獣大決戦みたいになってしまった。
勿論、再生回数は爆上がり。

そして、鉄鼠を討伐し現在、比叡山が解放されたか調査中と知らされる。

沙羅からの指名依頼

青森県と秋田県の境にある白神山地で新地開発をしようと妖の領域に入ったせいで、領域侵犯したせいで反撃されてしまった。

対応に当たった青森県担当のB級陰陽師と自衛隊員100名は全滅。

反撃して来てる妖は、絡新婦で執念を持って人の領域を侵略している状態。

このままでは反対側の秋田県にも被害が出てしまう。

秋田県担当のB級陰陽師の春日弥生は、実の弟の五鬼童義一郎を筆頭に春日家と五鬼童の合同で絡新婦討伐を行うが、、

五鬼童沙羅は賀茂一樹に援軍を頼む。

そして絡新婦の討伐に参加した一樹は、此方を偵察していた絡新婦を討伐して式神にし、拘束を強めるために名付けして「.水仙」と名付ける。

そして、絡新婦達の内部情報を報告させ。
一樹の依頼は終わるが、、

その情報を元にして侵攻した五鬼童家と春日家は手痛い反撃を受け依頼者の沙羅から、遺体の回収と供養をお願いされたが、一樹は救出すると宣言して沙羅救出して病院に入院させる。

賀茂一樹陰陽師事務所

手足を欠損した沙羅のために一樹は鎌鼬を式神にして沙羅の手足を治す。

そして、五鬼童家の依頼を完遂した一樹はB級へ昇格して、陰陽師活動を休止して受験へ集中する事にしたが、、

試験は水仙を使って突破して、花咲学園高等学校へ入学する。

そして一樹は賀茂一樹陰陽師事務所を開く。

そこの客室に沙羅が住み込み事務所を手伝う事になる。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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フィクション(novel)あいうえお順

備忘録

第一章  転生陰陽師

プロローグ

男は長い間、無限の苦痛を受け続けた後、誤って地獄に落ちたことが明かされた。
彼が地獄に落ちたのは、山中で女性を助けた際に発生した魂の取り違えが原因である。
本来地獄に落ちるべきではなかった彼は、地獄の最も厳しい層である大焦熱地獄で長期間責め苦を受けてきた。
これは、殺人やその他の重大な罪を犯した者が堕とされる地獄である。

彼が受けた責め苦のため、魂が深く穢れてしまい、極楽浄土には行けなくなった。
そのため、裁定者は彼の魂を浄化するために輪廻転生させることを決定した。
転生後は、妖怪変化が蔓延る世界で生きることになり、その穢れが魔性の存在を強化するため、彼は狙われる存在になる。
また、その魂が妖怪に喰われれば、その罪を共に背負って再び地獄に堕ちるかもしれない。
彼の魂が妖怪に喰われれば、吸収されて一体化する。
そうなれば妖怪が引き起こす災厄の罪を共に背負って、再び地獄に墜ちるかもしれない。
魂の穢れを浄化せよ』と命じられた。
この裁定は一方的で理不尽に感じられ、男は抵抗として気の量を倍増することを求めた。
裁定者はこれに応じ、彼に与えられる気を倍にした。

第一話  牛鬼と山姥

一人の男、賀茂一樹は輪廻転生し、新たな人生を歩んでいる。
父、和則は陰陽師であり、一樹もその道を学んでいるが、まだ資格は取得していない。
一樹の現世は妖怪や魔物が実在し、陰陽師が実際に活動している世界である。
日本の人口は減少し、国土の三分の二が妖怪の領域となっている。
和則はC級の陰陽師であり、中級以上の力を持つが、一樹の力がなければD級に留まるだろう。
一樹の家庭は貧しく、母と妹は既に家を出ている。
一樹は、その困難な状況の中で陰陽術を学び、魂の浄化を目指している。
彼の目的は、自らの魂に染みついた穢れを清めることであり、そのためには多くの邪を祓う必要がある。

一樹は五羽の鳩に陰陽五行の力を込めた。
この力は、世界の法則として理解されており、男女問わず陰陽師は五行のすべてを扱うことができる。
一樹の特異な点は、大焦熱地獄で得た穢れとそれを抑制する強大な陽気を持っていることであり、そのため通常の陰陽師よりも高い呪力を有している。
紙に呪力を込め、五羽の鳩を飛ばし、牛鬼を探し出した。
賀茂家は陰陽師として古い家柄であり、一樹の祖先には平安時代の有名な陰陽師もいる。
一樹は、牛鬼とされる存在を発見し、これを調伏するための準備を進めたが、実際には式神として使役するための陣を作った。
その過程で一樹は、この牛鬼が伝承と異なり悪霊ではなく、かつて人間に助けられた神霊であると感じ取った。
一樹の呪力は非常に高く、強大な牛鬼であっても使役するのに十分だった。

一樹が特定の呪文を唱える中、ツバキの根から巨大な牛鬼の顔が現れ、和則はその巨躯に驚いた。
牛鬼は強大で、一樹の陣によって力を借り、一樹はその姿を封印しようとした。
しかし、そのプロセスで発生した突風が、周囲のツバキの花を散らしてしまった。
その後、一樹は依頼人の老婆に封印成功を報告し、牛鬼がなぜ暴れていたのかを後日調べると約束した。
一樹は、気力を回復させるために数日休む必要があると説明した。
また、一樹は依頼人から二体目の牛鬼がいないかと尋ねられ、追加の問題がないことを確認し、安堵した。

山姥が苦痛に悲鳴を上げる中、一樹が用いた土行と火行の式神が攻撃を仕掛けた。
土行の式神は山姥の攻撃を防ぎ、火行の式神は山姥を焼き苦しませた。
この攻撃に耐え切れない山姥は、和弓を持った一樹によってさらに追撃された。
最終的に山姥は敗北し、一樹は勝利を確信した。
和則はなぜ致命打を与えなかったのかを一樹に尋ねたが、一樹は使用可能な式神符が五枚しかなかったと説明した。
この事情から、和則は一樹に学校から紙をくすねるように提案したが、一樹は拒否した。
一樹と和則は、家族の事情についても話し合ったが、和則の提案は一樹に受け入れられなかった。
この一件で、山姥は逃走し、一樹はさらなる対峙を避けるために山姥を日本から追放するよう警告した。

蒼依は、山姥が60歳くらいまで人間の社会に紛れ込む習慣について説明した。
これにより、彼女たちは人間を喰いながらも社会に潜むことができる。
100歳を超えると、妖怪に襲われたように見せかけて死亡するフリをし、家や子孫の保護から離れる。
このサイクルを通じて、山姥は人間を狙い続ける。

蒼依は、自身が人間の父を持ち、その父が山姥に殺された経緯を一樹に語った。
彼女の母は、山姥の命令で父を食べることを拒否し、その結果殺されたという。
蒼依自身も人肉を食べることに抵抗があるが、生き延びるためには避けられない状況にある。

一樹は、蒼依を自分の式神とすることで、彼女が人間を食べることなく生きられるように提案した。
蒼依はその提案に同意し、一樹の式神となることを受け入れた。
これにより、蒼依は人間の生活を続けることができるようになり、山姥化することも避けられる。
一樹は、この契約を結び、蒼依に新たな生の道を提供した。

第二話  見習い陰陽師と式神

一樹は、山姥を撃退した後、式神として結ばれた山姫の蒼依と同居することになった。
これは、蒼依に定期的に気を供給するためであり、彼女が山姥化するリスクを避けるためである。
蒼依の住む家は、かつて山姥が所有していた立派な日本家屋で、一樹との共同生活が始まった。
蒼依は一樹に対して、かつての家族のような安心感を抱いており、料理を通じてその感謝を表している。

一樹は、蒼依を守るため、そして彼女の気が尽きることなく安定して供給されるよう、彼女の家に住むことを決意した。
また、蒼依が山姥の孫でありながらも、人間を喰わずに済むように彼女を式神に変えたことで、彼女は人間社会での生活を続けることが可能となった。
一樹は、蒼依がこれ以上山姥化しないよう、彼女に常に気を供給し続ける責任を感じている。

蒼依の料理のスキルは一樹にとっては新鮮な驚きであり、彼女が山姥の孫であるという事実にもかかわらず、一樹は彼女を家族として受け入れ、共に生活を営むことを選んだ。
これにより、彼らは互いに支え合う関係を築いている。

一樹は蒼依の戦闘能力について尋ねたが、蒼依は自身の力が主様である一樹から気を得てから増したと答え、自らが生成した矛を示した。
この矛は、伝説の天沼矛を思わせるものである。
一樹は、蒼依のこのような目立つ能力は式神としては使いづらいと判断し、彼女を戦闘に出すことはないと考えている。
また、国家試験では自作の霊符も制限されるため、一樹は自らの強い呪力を活かして、下級試験には合格できる自信を持っているが、より上位の評価を目指している。

さらに、一樹は怨念系の式神の使い方を述べたが、それは危険で道義に反するため、彼は使用しない意志を明確にした。
代わりに、一樹は八咫烏などの人を助ける逸話のある神霊や鬼神を式神として使いたいと考えており、それには旅費やその他の費用が必要であることから、蒼依に金銭的な支援を求めている。

一樹は蒼依から金を借り、ネットショッピングを通じて孵卵器を手配した後、八咫烏を使役するために奈良県へ赴いた。
八咫烏は、熊野から吉野川の末流にかけて目撃される三本足のカラスであり、一般的には神武天皇を導いたとされる伝説的な存在である。
現代の八咫烏は、神武天皇を導いた八咫烏の子孫であり、可能性がある。

一樹と蒼依は、ハシブトガラスとの交配を考慮しつつ、弥山に登り、八咫烏の巣を目指した。
途中、彼らは八咫烏が餌として子犬などを捕食している現場を目撃し、これが八咫烏が妖怪の一種とされる理由の一つであることを示した。

最終的に、一樹は牛鬼を呼び出し、八咫烏を追い払うことに成功し、巣から卵を回収した。
彼はこの卵を孵卵器で育て、将来的にはYouTubeを用いて集客として利用する計画を持っている。
この行動は、現代の技術と古来からの伝承を組み合わせた独自の方法で、一樹の陰陽師としてのキャリアを築く上での一歩となる。

一樹は十個の卵を人工孵卵器に移し、陽気と神気の二種類に分けて孵化させることにした。
八咫烏の卵を異なる呪力で育てるため、五行(木火土金水)ごとに性質を変えた。これは、孵化に失敗した場合の全滅を防ぐためである。
一樹は蒼依と共にカラスの世話をする予定で、学校にいる間は父の和則に世話を依頼することにしている。
一樹は中学三年生で、高校進学に向けて勉強を続けており、蒼依も進学のための支援を申し出ている。

一樹の計画は、八咫烏を式神化して長期的に賀茂家の力を高めることにある。
一樹は、八咫烏の寿命が不明であるため、カラスが生きている間は生きたままの式神契約をし、死後は神霊としての契約に切り替える予定である。

二十日間の育成の後、神気を送った卵から五羽の雛が孵化した。
これは一樹にとって予想外の出来事であった。
本来、送る呪力を陽気と神気に分けたため、全ての卵が孵化することは期待していなかった。
さらに、野生でも人工孵化でも、全ての卵が孵化することは稀である。
一樹は、五羽の雛にどのように対応すべきか戸惑いつつ、ヒナ達の世話を始めた。
ヒナ達は餌を強請り、満腹になると口を閉じた。
蒼依も雛達を可愛がり、一部屋を雛達用の部屋にした。
一樹と蒼依は親のように雛達を育てているが、和則に世話を任せる時間もある。
八咫烏の育成は、一樹がYouTubeに動画を投稿するまでに進んだ。
動画は炎上せずに再生回数を増やし、コメントで雛達の名前を尋ねる声もあった。
一樹は五羽の雛に五行から名前を付け、それぞれの雛に応じた気を与えることにした。

第三話  陰陽師国家試験

日本の陰陽師国家試験には三次試験があり、夏に行われる。
一次試験は呪力測定、二次試験は霊符呪術、三次試験は対戦試合が行われる。
一次試験は足切りのための試験であり、一年以上の経験を持つ D級以上の陰陽師の弟子はこの試験を免除される。
一樹も父からの推薦を受けているため免除されており、二次試験のための予定を蒼依に説明していた。

陰陽師国家試験は、中学三年生から受験可能であり、高校進学後に受ける者が多い。
試験は一次試験から始まり、D級からF級までの格付けが行われる。
未成年者は下級陰陽師として独立して活動することが難しく、昇格も困難である。
そのため、受験時期を遅らせるのが一般的であるが、一樹は経済的な事情から中学三年生で受験を選択している。

二次試験の日、一樹は霊符作成の試験に参加し、合格するために守護護符を作成する。
試験は全国民が見守る中、ライブ中継されており、不正行為は厳しく取り締まられる。
一樹は、八咫烏をモチーフにした守護護符を作成し、その間、一樹自身が育てた朱雀のイメージを反映させた。
一樹が作成した護符は、特別な力を放つために、試験での成功が期待される。

一樹は陰陽師国家試験の二次試験で、他の受験生や現役の上級陰陽師をも超える霊符を作る自信を持っている。
彼は一般的に使用される生漉きの和紙や朱墨を使ったことがなく、通常は素材の質が悪いために鳩の式神符を書いているが、試験では八咫烏を描いた。
火行、木行、金行、水行、土行の護符を作り、最後の一枚には裁定者を描いた。
この裁定者に対しては否定的な感情を持っており、彼が送り込んだ非常に貧しい家庭環境に対する恨みも含まれている。

一樹は合計六枚の守護護符を四十分で作成し、残りの時間で裁定者を描いた。
彼の速さと質は受験生の中で突出しており、試験官に確認された際、彼は既に完成していると回答した。
その後、作成した守護護符を箱に入れ、実技試験会場に移動した。
一樹のこの行動は試験官やカメラを通じて国民にも広く見られ、掲示板で話題となった。

陰陽師国家試験について語るスレッドは、中継映像を公式サイトから視聴しながら情報交換や議論を行う場である。
スレッドは荒らしや煽りをスルーし、必要なときのみ専門ブラウザの導入やNG登録が推奨されている。
また、スレッドの進行が早く、試験期間中は活発に討論が行われている。
陰陽師のランクについての情報や、国際的な強さの目安、陰陽師に期待される役割などが議論される。
また、よくある質問として、妖怪の性質や陰陽師になる方法などが語られている。

試験は三回に分けて行われ、受験者は呪力測定、霊符呪術の試験、対戦試合に挑む。
受験者は推薦があれば一次試験の足切りを免除されることがあり、試験の合格者は陰陽師として活動が可能になる。
スレッドでは特に試験の実況が盛んで、受験生の行動や霊符の作成速度、試験の厳しさについて様々な意見が交わされている。
また、特定の受験生の行動が目立ち、その速さや質が話題になっている。

一樹が陰陽師国家試験の実技試験会場で注目を集めた。
通常の時間の三分の一で試験を終え、中央の油圧プレス機で実技試験を行った。
守護護符を使い、鰹節に圧力を加える試験が行われ、一樹は早々に三枚の守護護符を選んで残りを封印した。
試験では守護護符が鰹節を保護し、異常な耐久力を示したため、試験官や観察者は驚愕した。
特に守護護符が五〇トンの圧力に耐えたことで、その性能の高さが証明された。
試験の進行中、一樹の守護護符は、鰹節にかかる圧力を完全に抑え、プレス機を歪ませるほどの力を発揮した。
この結果は一樹にとって極めて有利で、彼の作った守護護符が極めて高い効果を持っていることが明らかになった。

一樹は、三枚目の守護護符に対してぞんざいな扱いをした。
この護符は閻魔大王をイメージしており、その効果が薄ければ一樹はそれで良しとするつもりだった。
しかし、実技試験中にこの護符から閻魔大王の神気が顕現し、プレス機を操る試験官や周囲の人々に強い印象を与えた。
神気はプレス機を壊すほどの力を発揮し、試験会場に衝撃を与えた。

結局、この護符はプレス機に加えられた圧力を完全に無効化し、守護護符の神気は試験官たちに畏怖を感じさせた。
一樹は、異常事態にも動じず、さまざまな効果の守護護符を作る能力があると説明し、試験の終了を告げた。
一樹の試験への参加は、国内外で注目され、試験官たちはその結果に言葉を失った。
一樹は、プレス機を破壊したことについて借金が増えるのではないかと心配したが、その実力と独自性を証明した。

陰陽師国家試験の結果に関する掲示板の議論が繰り広げられている。
一樹が五〇トンの圧力に対して測定不能となるほどの性能を示し、試験の一位となった。
これには他の受験生や試験官も驚きを隠せない状況である。
特に一樹が投稿している動画の中で、八咫烏を育てていることが話題となり、その実力に対する議論が盛んに行われている。

他の受験生の中でも、特に五鬼童家の双子が上位に名を連ねており、一樹と比較されている。

掲示板では、一樹の異常な結果に対してバグや不正ではないかと疑問が投げかけられているが、一樹の血筋が賀茂家であることから、その実力が認められている場面も見受けられる。

また、陰陽師としての資格や能力、活動開始年齢についての規制が話題になっており、より多くの妖怪退治が可能になるような制度の改善が求められている。
一樹のような非常に高い能力を持つ者が、より早く実践に参加できるような環境が必要だとの意見が多く寄せられている。

第四話  五鬼童家の調査

二次試験の結果が発表され、受験者七四八二人中五五八人が合格した。
これは陰陽師協会が目標とする「毎年五〇〇人以上の合格者」を上回る数値である。
上位の一〇〇名は暫定 E級、残りの四五八人は F級陰陽師に認定された。
三次試験は上位一〇〇名のみを対象に実施され、これに合格すると D級陰陽師に昇格する。

五鬼童義一郎が試験の総責任者として、その兄弟である春日弥生と五鬼童義輔と共に今後の試験について話し合っている。
特に賀茂一樹の異常な成績について、彼が人間ではない可能性や悪性の存在である可能性が議論されている。
これは一樹が五鬼童家の子供たちである沙羅と紫苑を上回る成績を収めたことから発生している疑問である。

三次試験では、受験者は直接戦いを行い、一〇分間耐えるか、相打ちで引き分けると E級と認定される。
五〇名以下の合格者のみが D級に昇格する。
この試験の結果、戦いを通じて受験者の人間性や陰陽師としての資格が評価されることになる。

一樹が D級陰陽師として認定されれば、陰陽師国家試験の首席合格者となるが、彼の真の力と資質については依然として不透明な部分が多い。
そのため、試験の運営側は彼の能力とその起源を慎重に見極めようとしている。

二次試験後三日目の八月四日に、一樹は蒼依と共に八咫烏五羽を連れて三次試験の会場である光が丘公園に向かった。
光が丘公園は広さ六〇ヘクタールの都立公園で、特に野外対戦試合に適した広大な芝生広場を持っている。
公園内には一ヘクタールの試合会場が五つ設けられており、それぞれで一〇試合が行われる予定だ。

三次試験は白いテープで区切られた会場の両端から開始され、参加者は各自の守護護符を使って戦う。
試合は一〇分以内に相手の守護護符を二枚破壊することが勝利の条件とされている。
一樹の場合、守護護符の管理と戦略が重要となり、彼の守護護符は試験で作成したものだけが使用可能である。

エキシビションマッチでは、一樹は五鬼童の双子と戦う予定で、この試合は六ヘクタールの全区域を使って行われる。
一樹は自身の勝利に自信を持ちつつも、八咫烏が予期せぬ方向に飛んでいかないかという不安を抱えていた。
一樹と蒼依は試合を見学しながら、他の受験生の戦い方から学びを得ようとしたが、自身の試験が近づくにつれて、集中を高めていった。

待機所に入ると、紋付き袴姿の青年が一樹を待っていた。
青年は自己紹介として安倍晴明の子孫であると名乗り、自信に満ちた様子で話し始めた。
一樹は青年が安倍晴明の子孫であることに疑問を持ち、質問を投げかけた。
青年は大鷹の式神を示して自己の主張を補強しようとしたが、一樹には説得力が感じられなかった。

試合が始まると、青年はフィールドの端に位置し、試合開始の合図とともに一樹は八咫烏を指揮して行動を開始した。
玄武と黄竜は水と土の技を使い、青年に向かって攻撃を仕掛けた。
この攻撃により青年はフィールド外に転がり出し、意識を失った。
同時に、青年の式神である大鷹は、追いかける八咫烏によって逃げ出した。

試合終了の合図がされ、一樹は三次試験に合格した。
八咫烏とのコミュニケーションと彼の指揮により、試合は一樹の思い通りに進んだ。

エキシビションマッチの待機所で、一樹に対して五鬼童沙羅が手加減を指摘した。
一樹は自分が五鬼童家を手強いと認識していることを認め、力量差を理由に手加減を行ったことを述べた。
沙羅は一樹が二対一の勝負を受けたことについて質問し、一樹はC級推薦を受けるためだと答えた。
会話は生配信されており、一樹は自分の力量がB級以上であるとアピールした。
沙羅は一樹がC級の力量であると仮定し、質問を投げかけた。

試合が始まると、一樹は八咫烏を解き放ち、強化された五行のエネルギーを利用して攻撃した。
沙羅と紫苑は鬼火を使って応戦し、交差して相手を混乱させたが、八咫烏による追撃は避けきれず、圧倒された。
沙羅は最終的に一樹に直接迫り、迎撃の態勢を取ったが、一樹の巨大な牛鬼の式神によって捕まえられた。
紫苑も同時に追われる中で、敗北が確定した。

第五話  新任陰陽師と動画配信

国家試験後、紫苑は一樹に対して不満を抱えながら帰路についた。
紫苑は八咫烏五羽に追い回され、苦い経験をしたが、一樹が試合を不正に行ったわけではなく、五鬼童の提案に基づき正規のルールで戦ったため、一樹を理不尽に責めることはできなかった。
それでも、追い回された怒りは残っていた。
沙羅は一樹を基本的に善人と評価し、陰陽師としての一樹の能力を高く評価して、将来の連携のために連絡先を交換したほうが良いと説明した。
強い妖怪に対処する際に、複数の陰陽師が協力することで安全に倒せるため、直接連絡が取れることが望ましいと考えた。
一方、紫苑は、善人ならば戦いを続けないはずだと主張したが、沙羅は紫苑が降伏しなかったため追い回されたと指摘した。
沙羅は一樹へのメッセージを送りながら、紫苑の不満を適当に放置した。
一樹はその後、八咫烏と共に帰宅した。

日本中の中学校が夏休みを迎えており、その期間は概ね七月の海の日から始まり、地域によって終了時期は異なるが、多くは八月下旬に終わる。
一樹はこの夏休みを活用して、自宅でゆっくりと過ごしながら、YouTuboの生配信でC級陰陽師の資格取得を報告した。
生配信では、試験中の支援に対する感謝の意を表した。
国家試験での活躍により、一樹のチャンネル登録者数は大幅に増加し、四万二千人を超えるまでになった。
これは、一樹が行った派手なパフォーマンスや、試験中の異常な出来事、エキシビションマッチでの注目のパフォーマンスなどが話題となったためだ。
夏休みという時期も、学生たちの関心を引く一因となった。
一樹は現在の増加速度に驚いているが、これを機にさらなる宣伝活動を行う予定である。
また、彼は高校受験が控えており、今後の陰陽師としての活動も計画している。

中学校が夏休み中であるため、一樹は蒼依とともに南にある「鬼猫島」を訪れた。
これは、一樹が蒼依に陰陽師国家試験への付き合いを埋め合わせするための旅行である。
八咫烏達は一樹の父、和則に預けられた。
一樹と蒼依は泊まりがけで鬼猫島へ向かい、埠頭で猫達に囲まれた。
島は五平方キロメートルの面積を持ち、火山噴火で誕生した常緑広葉樹林の島である。
かつては漁業で栄え、野ネズミ被害を猫による駆除で試みたことが猫達の祖先にあたる。
四〇年前から無人島となったが、観光客が訪れるようになり、猫達は観光客から餌をもらって生活している。

中学校が夏休み中であるため、一樹は蒼依とともに「鬼猫島」を訪れた。
これは国家試験への同行を埋め合わせるための旅行で、一樹は蒼依の要望に応えた。
八咫烏達は一樹の父に預けられ、一樹と蒼依は二人だけで島を訪れた。
島には多くの野良猫がおり、観光客から餌をもらって生活している。
蒼依は猫達に餌を配り、一樹は猫又との遭遇から旧鼠の存在を推測した。
一樹は蒼依に猫又との式神契約を提案し、蒼依はこれを受け入れた。
猫又を連れ帰ることにした二人は、本土に戻り、猫尽くしの宿に一晩滞在した。
蒼依は猫又に非常に満足しており、一樹はそれを喜んだ。

一樹は旅行から帰り、自身のYouTuboチャンネルで鬼猫島から連れてきた猫又を紹介した。
本来は「蒼依の式神」として紹介すべきであるが、蒼依は一樹のチャンネルに登場していない。
蒼依が山姫として露見するリスク、一樹のチャンネルが彼女に焦点が移ること、そして彼の陽気を警戒される可能性を避けるためである。
蒼依が登場すれば、確実にチャンネルは伸びるだろうが、その騒ぎは一樹にとっては望ましくない。
そのため、蒼依は撮影者として裏方に徹し、一樹が依頼人と会う際は、彼のマネージャーとして機能する。

紹介された猫又は、茶トラのオスで「猫太郎」と名付けられた。
この名前は蒼依によるもので、一樹はこの命名に干渉していない。
視聴者からは名前に対して否定的なコメントが多く、一樹は蒼依の選んだ名前を擁護した。
一樹は猫太郎の名前に関する議論を受け、牛鬼に名前を付けることを考慮し、「うしたろう」と命名した。

一樹に対し、クラウドファンディングで鉄鼠の怨霊を間引きする依頼を出したのはYouTuborの青年・カボエネである。
彼は一樹を運転して比叡山へ向かう間、社会貢献の効果として、この活動が評価されると説明した。
カボエネにとっては、採算が合うか微妙であるが、動画配信者としての評価を高めることができる。
大口スポンサーも複数いて、クラウドファンディングにより金額が集まった。
一樹はこれを通じて、有望な陰陽師との人脈を得る機会となった。

カボエネは配信の準備を整え、生配信で鉄鼠の怨霊を倒す様子を視聴者に公開した。
一樹が祈祷の結果、八咫烏を使用して比叡山で鉄鼠の怨霊を挑発し、集める戦略を展開した。
このプロセスは、地元の安全を高めるためのものである。
一樹の操作で、鉄鼠の怨霊が怒りを露わにし、追跡してくる様子が配信された。

一樹は最終的に、強力な術を使って鉄鼠の怨霊を抑え込み、比叡山を清浄な状態に戻すことに成功した。
この過程で、牛鬼も活躍し、鉄鼠の怨霊を物理的に叩き落として戦った。
この活動は地元住民にとって大きな助けとなり、一樹の社会への貢献が認められた。

延暦寺を揶揄された鉄鼠は、牛鬼の左足に噛み付き、激怒を露わにした。
牛鬼は鉄鼠の腹を蹴り飛ばし、背中を棍棒で殴りつけた。
この間、八咫烏は再生機で挑発を続け、鉄鼠は怨念を集めて回復しながら戦いを続けた。
牛鬼も傷ついたが、一樹の気で回復し、攻撃を続けた。この戦闘は、カボエネのチャンネルで生配信され、過去最高の視聴者数を記録した。
一樹は鉄鼠の怨念を削りつつ、八咫烏を戦闘に参加させ、鉄鼠を完全に浄化する計画を進めた。
鉄鼠は逃げることもできず、最終的には消滅した。
この動画は数日で数百万回再生され、比叡山は解放された可能性が高い。

第六話  沙羅からの指名依頼

青森県の妖怪対策部長が、県内のB級陰陽師の殉職を報告し、状況の深刻さを訴えた。
しかし、秋田県の統括陰陽師春日弥生は、この事態が青森県に原因があると指摘し、批判した。
春日は、上級陰陽師の貴重さを強調し、青森県に対して過度な負担を掛けないよう要求した。

日本陰陽師協会は全国の各都道府県に上級陰陽師を配置する目標を持ち、各都道府県は魅力的な条件を提供して陰陽師を誘致している。
しかし、青森県の場合、他県からC級陰陽師をB級に昇格させて引き受けさせたが、その陰陽師は白神山地で殉職した。

白神山地の開発による環境変化が妖怪との衝突を引き起こし、絡新婦と呼ばれる妖怪の攻撃により多くの犠牲者が出た。
春日は青森県に対して、妖怪の調伏に二倍の通常報酬を要求し、自衛隊の動員も要求した。
青森県はこれを受け入れ、春日家を含む複数の陰陽師が白神山地での対応にあたることとなった。

この事件は、地域間の協力と対策の重要性、そして人間と自然、妖怪との共存の難しさを示している。

沙羅が自身の取り分から一樹に依頼を出し、千万円の報酬でC級陰陽師の一樹を招聘した。
一樹は、沙羅から式神を用いた索敵や戦闘支援の任務を受けた。
一樹は九羽の鳩の式神を用い、三羽一組のチームで様々な役割を担う計画を立て、さらに沙羅に高耐久の護符を提供した。
一樹はC級の能力内で任務をこなすための計画を説明し、実際に沙羅と義輔の前で作戦の詳細を話し合った。
また、自衛隊の協力のもとで三チームに分かれた陰陽師と自衛隊が探索を行う予定であることが明らかにされた。

絡新婦は人間を模倣できる能力を持つが、一樹によって式神とされた後も記憶を保持している。
使役者である一樹の強大な気を感じ取ったため、敵意を示さず様子を見ている。
一樹は絡新婦の知能を警戒し、名前を「水仙」として束縛を強化した。
水仙は、清らかさと毒を併せ持つ花であり、一樹はこれを利用して式神としての縛りを強めた。
最初の命令として、一樹は水仙に対し、元の仲間に対して倒されていない振りをするよう命じた。
水仙は命令に従いつつ、一樹の毒が効かなかった理由を尋ねたが、一樹はその問いには直接答えず、水仙が清らかな存在であることを念じた。

一樹がコテージに戻ると、蒼依が不安そうに接した。
一樹との関係が破綻すれば、蒼依は人間を喰うしかなく、その結果、山姥と化す恐れがある。
しかし、一樹はそうなることはないと信じている。
彼は蒼依に「一生手放さない」と約束しており、その言葉を破ることはない。
言霊の効力が激減するため、陰陽師としての力を損なうからである。
一樹は、蒼依に多大な恩を感じており、その恩を忘れることはないと自覚している。

蒼依の不安を察知した水仙が介入し、一樹の妻かと問われた蒼依は動揺し、その場で答えることができなかった。
水仙が一樹の愛人であると自己紹介すると、蒼依はさらに困惑し、一樹に真偽を確認した。
一樹は即座に否定し、水仙が戦いで式神にした絡新婦であると説明し、蒼依の了解を得て契約解除も検討すると返答した。

水仙は蒼依に対して敬意を示し、彼女の指示を待った。
絡新婦である水仙が式神化された後も、彼女の知能は高く、蒼依との力の差を理解していた。
蒼依が B級中位の力を持ち、水仙が B級下位であるため、上下関係はすぐに確立された。

一樹は、自分と蒼依の関係を守りつつ、水仙を使ってさらなる監視と情報収集を進める計画である。
水仙は、自身のテリトリー内での監視任務を一樹に説明し、一樹はこれを信用した。水仙は一樹の問いかけに正直に答え、彼の陰陽師としての呪力と術によって完全に制御されている。

水仙からの情報を受け、A級陰陽師の義一郎は討伐隊を再編成し、大魔の娘である二体の母蜘蛛を最優先目標と定めた。
これらの母蜘蛛が強力な子供を生み出し、人間社会に潜り込んで被害を拡大させるため、根絶やしにすることが急務である。
義一郎は連絡を取り合う二体の母蜘蛛に逃げ場を与えないため、同時攻撃を計画した。
一班は義一郎自身が率い、二班は五鬼童家と春日家から成る。
また、無線の傍受の可能性があるため、携帯電話を代替手段として使用することとなった。

一方、C級陰陽師の一樹は、依頼人の沙羅から依頼達成の報告を受け、索敵と戦闘支援の任務を完璧に達成した。
一樹は母蜘蛛二体と子蜘蛛七体のうち、子蜘蛛一体を撃破し、その功績により契約額の二〇億円のうち一〇〇〇万円が支払われた。
この活躍は全体の一割に達するとされ、沙羅は一樹の働きに満足し、再度の依頼を期待する旨を伝えた。

一樹は泥だらけになりながらも、水仙の糸に引き摺られた際に守護護符と万病熱病平癒の力によって生き残り、自衛隊の殉職者を減らすことに貢献した。
これにより、水仙を倒した一樹の活躍は明らかに一〇〇〇万円以上の価値があったと認識され、彼の陰陽師事務所の開業への資金にも繋がった。
沙羅のおかげで高校進学費用や開業資金を得られた一樹は、沙羅に感謝の意を示し、再度の依頼があれば優遇することを約束した。

一樹のスマートフォンに沙羅からの着信があった際、彼は至急の依頼を受けた。
沙羅は東の母蜘蛛によって大きく傷つけられ、動けなくなっている状態で、毒にも侵されていた。彼女は一樹に緊急で助けを求めた。
一樹は自分の式神の力ではA級妖怪に対抗できる自信がないにもかかわらず、沙羅を助け出し、可能なら遺体の一部でも回収して供養することを約束した。
依頼料は五鬼童一族から支払われる予定だった。

一樹は沙羅の病院搬送を準備し、自衛隊員と青森県警に協力を依頼した。
彼は式神符を準備し、鳩の形に変わる式神を使用して、病院への先行を指示した。
さらに、大鳩に乗って自らも救出に向かうことを決めた。
これにより、一樹は沙羅を救出し、妖怪との対決に備えた。

紫苑はブナの原生林を飛び回りながら、銀髪の絡新婦と戦っていた。
紫苑は金剛杖で攻撃し、絡新婦はその攻撃を回避しながら反撃していた。絡新婦は紫苑に毒を塗布した糸を当て、彼女の身体に毒を注入した。
紫苑は麻痺しつつも、なおも絡新婦との戦いを続けた。絡新婦は紫苑と互角に渡り合う力を持つ C級上位の存在である。
同時に、他の五鬼童や春日家のメンバーも絡新婦の母蜘蛛と戦っており、場所は絡新婦の巣の中であり、敵は毒を持っていたため戦闘は襲撃側にとって不利であった。

紫苑の苦戦の最中、一樹の鳩の式神が絡新婦を攻撃し、炎で焼き払った。
絡新婦は焼け落ちながらも抵抗し続けたが、最終的には力尽きた。一樹はさらに鳩の式神と他の攻撃で母蜘蛛にも大打撃を与え、五鬼童や春日との戦闘を支援した。

戦闘が終わると、一樹は紫苑に急いで駆け寄り、彼女の身体から毒を抜くため地蔵菩薩の修法を用いた。
その後、水仙が一樹と紫苑を大鳩に乗せ、病院へ搬送した。
この間、水仙は自分が一樹に付いたことを母に告げ、彼女に再び現れないように告げた。

第七話  賀茂一樹陰陽師事務所

絡新婦の巣を襲撃して三日後、大学附属病院に運ばれた沙羅は、一命を取り留めたが、右手の肘から先と左足の膝から先を失った。
A級下位の妖毒により右手と左足が侵食され、一樹が到着して解毒するまでに切断が避けられなかった。
沙羅はそれでも生き延びることができたことを幸運だと感じていた。
沙羅は一樹が設立予定の陰陽師事務所で事務員として働くことを望んでおり、一樹は沙羅の忠誠心を高く評価していた。
沙羅は自身の体の一部を失ったことを現実的に受け止めつつ、一樹の提案に応じて共に働くことを受け入れた。
この提案には、沙羅が五鬼童家にとって足手纏いにならないように、そして彼女自身が必要とされる場所で新たな人生を歩むための配慮が含まれていた。

仕事の完遂として沙羅を治すために一樹が選んだ妖怪は鎌鼬だった。
鎌鼬は日本や中国に現れ、特に岐阜県に出る鎌鼬は三柱の神であるとされ、一柱目は転ばせ、二柱目は斬り、三柱目は傷を治癒する能力を持つ。
一樹はこの治癒能力を持つ鎌鼬を使役しようと岐阜県の鎌鼬が現れる場所へ行き、インターネットの情報をもとに鎌鼬を探し、見つけた鎌鼬を使役するための仕掛けを施した。
鎌鼬が現れた際、一樹はわざと転んで攻撃を受け、三柱目の治癒鎌鼬を捕まえた。
その後、一樹は鎌鼬を自分の式神として使役し、神気を使って彼らの能力を高めた。

また、一樹は自身の身体を使って、鎌鼬の治癒能力を確認する実験を行い、成功した。
一樹の肉を食べた水仙は力が増すことが確認され、一樹は水仙に対して、彼をA級に至らせる約束をした。
この約束は、水仙が一樹を守り切ることが条件とされた。
この過程を通じて、一樹は自らの力を試しつつ、新たな式神の能力を最大限に活用する計画を進めた。

一樹は沙羅の入院する病院を訪れ、その場には義一郎と沙羅の両親も同席していた。
一樹は沙羅の治療のために鎌鼬を使役し、その能力を自らの小指を切断し再生する実験で示した。
治療に必要なのは大量の特別な気であり、一樹は沙羅に直接気を送るため、人工呼吸のような行為を行うと説明した。
治療に際して、一樹は完全な治療の確信を持っており、義輔にはその場から目を背けるよう要求した。
義輔が不承不承承諾し、一樹は治療を行うための準備を進めた。

一樹は夏に大金を稼いだ後、陰陽師としての活動を休止し、中学三年生の二学期に受験準備に専念した。
一樹は式神の水仙を使役して学力テストに挑み、全教科の平均が九九点以上という高得点を記録した。
一樹が再テストでも同等の成績を収めたことで、不正の疑いは晴れた。
水仙の学力は自然淘汰により高まっていたと一樹は考え、式神を使っての学力は自身の力とみなされるため、試験で水仙に問題を解かせることを決断した。
一樹は花咲高校の受験に臨み、水仙が提供する解答を用いて試験に挑んだ。
花咲高校は、高い教育環境と花咲大学への内部進学の可能性を提供する名門校である。
一樹は水仙に問題を解かせ、成績を揃えることで同じクラスになることを目指した。

二月中旬、一樹と蒼依は花咲高校に合格し、一樹は陰陽師の活動再開と事務所立ち上げを報告した。
蒼依の家の一階を事務所として使うことになり、そこで沙羅も合格したことを伝え、事務所での手伝いを申し出た。
沙羅は一樹による改装を承諾し、蒼依も一樹に一階を自由に変えてほしいと伝えた。
沙羅は高校入学後も事務所での手伝いを約束し、蒼依の家の一階の客室に住み込みを希望したが、蒼依はこれを承諾せず、五鬼童家全体で報酬を支払うことを提案した。
沙羅は個人の依頼であったため、住み込みを希望し続け、最終的に蒼依は事務所で働くことで恩を返すことを許可した。
賀茂一樹陰陽師事務所は沙羅を含む従業員と共に活動を開始した。

番外編  借屍還魂

三ヶ月前に絡新婦の妖怪を調伏した一樹は、B級陰陽師に昇格した。
陰陽師協会や地域社会から祝電を受け取り、昇格を実感した。
B級陰陽師は不足しており、都道府県の統括者としての責任を担う者が多い。
B級に昇格すると、隣接する都道府県との協力関係が強化され、緊急時の相互支援が容易になる。
このため、一樹は重要な資源とされ、多くの祝電が送られた。
しかし、一樹は多くの連絡に迷惑を感じており、緊急でない限りスマホへの連絡を控えるよう求めた。
その後、一樹の妹から助けを求めるメールが届き、一樹はこれに応じた。
一樹の家庭は複雑で、両親が離婚した後、一樹は父親と共に生活し、妹の綾華は母親と共に暮らしたが、綾華は一樹に深く懐いていた。
一樹は、妹が必要とする支援を秘密裏に続けている。

綾華は現在、母親の実家がある京都市に住んでいる。
一樹との関係は良好でない母親とは別に、綾華との関係は親密である。
一樹は綾華と会うために京都を訪れ、鴨川沿いで再会した。綾華は普段と変わらず兄に甘える態度を示し、何か困っていることがあると伝えた。
一樹は経済的に安定しており、綾華が抱える問題に対処する準備ができていると述べた。
その後、綾華は陽鞠というクラスメイトの霊が自分に憑いていたが、最近消えたことを一樹に話した。
一樹はそれを成仏と考えたが、綾華は否定し、陽鞠が他のクラスメイトの体に入ったと説明した。
この事態に一樹は深刻な反応を示し、関連する問題について詳しく知りたがった。

B級陰陽師である一樹は、友人である伏原綾華の兄として、霊体の問題で苦しむ南原家と北川家の間に立つ。
陽鞠という少女が死後に霊体となり、事故で死亡した北川楓の身体に乗り移った事件の解決に臨む。
南原家は乗り移った娘が戻ってきたことに感謝し、北川家は肉体が生き返ったと安堵するが、魂が他人のものであることに複雑な感情を持っている。
一樹は双方の家族の間で話し合いを進め、乗り移りが起こった経緯と、それがどちらの家族の責任でもないことを説明する。
また、陽鞠が楓の身体でどう生きるかについて、双方の家族が理解を示し、彼女の意志を尊重することを決める。

番外編  相川家の食材調達

一樹が蒼依から報告を受けたのは7月に入った頃で、八咫烏の一羽が帰って来なかったことについてである。
八咫烏は、一樹の式神として育てられ、飛ぶことも狩りもできるようになっていた。
しかし、一羽が夜を過ごして帰らない事態に蒼依は心配をしていた。
一樹は八咫烏の安全を確信しており、彼らが危険にあると感じれば気付くと信じていた。

その後、一樹と蒼依は八咫烏を探しに行くことになる。
彼らが山に住む妖怪の領域を進んでいる中、蒼依はイノシシを見つけ、八咫烏が狩りをしているのを発見した。
彼らが狩りを行う様子を見て、一樹は八咫烏が一晩中戻らなかった理由を理解する。
狩りが終わった後、蒼依はイノシシを持ち帰ることを決め、一樹と八咫烏達もそれに従った。

この出来事を通じて、一樹は八咫烏の成長を感じつつも、今後の教育方針について考えを巡らせていた。

賀茂の系譜

一樹が受験の予定を父親の和則に告げた際、和則は一樹が一位で合格することを疑っていなかった。
一樹には賀茂家を継ぐ陰陽師としての強力な呪力と技術があり、他の受験生を凌駕すると考えられていた。
和則自身は現在C級陰陽師であり、B級陰陽師を輩出する陰陽大家としての資格はないが、一樹が20歳までにB級陰陽師になることはほぼ確実であると信じている。

和則は店で一樹の成功を待ちながら羽を伸ばし、賀茂家の復権を期待していた。
一樹がB級陰陽師になれば、地方行政の方針に影響を与えるほどの発言力を持つ統括陰陽師となる可能性があり、それによって賀茂家の名声を高めることができると考えられている。

和則が帰宅した際、テレビでは陰陽師国家試験の結果が取り上げられていた。
一樹が過去最高記録を更新し、A級常連の五鬼童家の双子姉妹との対戦で勝利を収めたことが大きく報じられていた。
特に注目されたのは、B級の牛鬼を使役し、空中戦を制したことである。
和則は新聞を手に取りながら、テレビの報道を見ていた。

番組では、引退した元C級陰陽師である大崎がゲストとして招かれ、一樹の勝利についてコメントしていた。
大崎は一樹の高い呪力と技術を認めつつも、現在の賀茂家が陰陽大家ではなく、実力が高くないとされていることに言及し、和則はこれに怒りを表した。
大崎はさらに、陰陽大家でないと高呪力者を招きにくく、次代の呪力が落ちていくと説明した。

和則はテレビに対して不満を漏らしながらも、自家の再興を確信していた。
一樹がC級に認定された後、家族の一員としての自負と共に、新しい筆を使って霊符を作り始めた。
これは和則が賀茂家の誇りを維持し、次代に引き継ぐための準備という意味合いが強い。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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