小説【鑑定スキル】「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 1」感想・ネタバレ

小説【鑑定スキル】「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 1」感想・ネタバレ

どんな本?

この本に出合ったきっかけは、WEB小説投稿サイト「小説家になろう」で読んだ記憶があり、書籍化されていることを知ったからです。
気になったので、BOOK☆WALKERで購入して読むことにしました。
私はゲーム「信長の野望」が好きなので、能力値についてはすんなり入って来たのですが、人名や地名に馴染みが無かったため、読むのに苦戦しました。
特に地名の「郡」と「州」が国ではないため、馴染めなかったと感じました。

読んだ本のタイトル

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる ~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~
著者:未来人A 氏
イラスト:JIMMY  氏

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あらすじ・内容

優秀な人材を配下にして、この領地の力を強くしよう!

アルス・ローベントは転生者だ。 卓越した身体能力も、圧倒的な魔法の力も持たないアルスだが、 「鑑定」という、人の能力を測るスキルを持っていた! ゆくゆくはローベント家の長男として家を継がねばならないアルスは、 鑑定スキルを使い、有能な人物を出自に関わらず取りたてていく。 「類い稀なる才能を感じたので、私の家臣になってほしい」 アルスが取りたてた有能な人材が活躍し、 大志は燃え上がる――!?

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる ~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~
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感想

主人公アルス・ローベントが転生者で、卓越した身体能力や魔法の力は持っていないが、「鑑定」という人の能力を測るスキルを持っているという設定から始まります。アルスはローベント家の長男として家を継ぐ運命ですが、鑑定スキルを使い、出自に関わらず有能な人材を取り立てていくことを決意します。

物語はアルスが幼少期から有能な人材を見つけ出し、領地の発展を目指して奮闘する姿が描かれます。彼の鑑定スキルによって発見したリーツやシャーロット、ロセルなどの才能豊かな人物が彼の部下として活躍し、領地は最強の領地へと成長していく物語。

しかし、幸せな時期も束の間、アルスの父親が不治の病に倒れてしまいます。その後、内乱が勃発し、アルスは父親の代わりに立ち上がって戦うことになります。彼の鑑定スキルと有能な部下達の力を頼りに、アルスは領地を守り抜くために奮闘します。

好きなシーンは、アルスが鑑定スキルを使って有能な人材を見つける場面です。特に、リーツやシャーロット、ロセルなどの個性豊かなキャラクターが登場するところが魅力的でした。彼らがアルスの部下として実績を残し、リーツが「残酷鬼」、シャーロットが「青い死神」という二つ名で呼ばれているのが楽しいです。

気になった点としては、地名や人名が初めは馴染めなかったところです。物語が進むにつれて慣れましたが、最初は戸惑いを覚えました。市や県で慣れている身としては、郡や州などは馴染みが無いので、規模がよくわからず戸惑いました。

感想としては、アルスや部下の成長と絆が描かれており、彼らの奮闘を読んでいるこちらも応援したくなる作品でした。「お互いに口にして言ってやりなよ」という言葉にも共感しました。

もう1つの気になった点として、アルスが父親の代わりに戦場に立ち向かうシーンがあります。父親が病に侵されているにもかかわらず、アルスが初陣として戦に出ようとする場面で、父親がテストをするシーンは彼の息子への思いが感じられる場面でした。

また、物語の展開が戦争や内乱によって揺れ動く中で、弱小なアルスの領地の未来がどうなるのかと思ったら、終盤で盟主になっているクランが内乱に勝利し、アルスが良い献策をしたら郡長にしてくれると約束したので、最強領地と言ってもある程度の規模になってからそうなるのかなと思いました。

その辺りは続巻を読んで確認いたします。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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漫画版

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備忘録

プロローグ

アルスは、父レイヴンの死をきっかけに、ローベント家の当主としての役割を引き継ぐ決意をした。父レイヴンは農民の出身でありながら、その武勇で下級貴族にまで上り詰めた人物であった。病に苦しんだ末、39歳の若さで亡くなった彼の葬儀が終わった後、アルスは父の部下たちを前にして、自らの新たな立場を宣言した。

アルスはかつて、日本で35年間の平凡な人生を送っていたが、ある日突然心臓発作で命を落とした。目が覚めたとき、彼は異世界で赤ん坊として転生していることに気づいた。初めは混乱し、状況を理解できなかったが、やがて自身が輪廻転生を経験していることを悟った。アルスは新たな環境で成長し、生まれ変わった自分の運命を受け入れる決意を固めた。

一章

アルスは転生してから数ヵ月が経ち、言葉を理解できるようになった。彼の名前はアルス・ローベントであり、この世界は地球とは異なる場所である可能性が高いと感じた。家には文明の利器がなく、翼の生えた犬が飼われているなど、地球とは異なる特徴が見られた。

さらに三年が経過し、アルスはサマフォース大陸のサマフォース帝国という国に生まれたことを知った。この世界には魔法が存在し、彼はローベント家という貴族の家に生まれたことを理解した。ローベント家は小さな土地を統治しており、アルスはその跡継ぎであった。また、彼には【鑑定】という特殊な能力があり、人の能力を数値で見ることができることも判明した。

アルスは練兵場で兵士たちを観察し、【鑑定】の力で彼らの適性を確認していた。ミレーという兵士が弓兵としての高い適性を持っていることに気づき、彼に弓を使うよう指示した。最初は嫌がっていたミレーも、的中した矢に驚いて弓兵になることを決意した。周囲の兵士たちはアルスがどうしてミレーの適性を知っていたのか尋ねたが、アルスは「勘」と答えてその能力を隠した。

アルスは家族と朝食を共にした。その際、父であるレイヴン・ローベントはアルスの人材を見抜く勘の良さを称賛し、磨くようにと助言を与えた。アルスは父のアドバイスを受け入れた。数ヵ月が経ち、アルスは四歳になり、サマフォース帝国の状況についてさらに理解を深めた。帝国は腐敗が進み、各地で反乱が頻発しており、乱世に突入する兆しが見えていた。アルスは、自身の生き残りのために、優秀な人材を集めて領地の力を強化することを決意した。

アルスはランベルク村を訪れ、人材を探し始めたが、目立った人物は見つからなかった。しかし、村で見かけたマルカ人の青年リーツ・ミューセスを鑑定すると、彼の能力が非常に高いことを知り驚いた。アルスは彼を部下にしようと考え、リーツに声をかけた。最初、リーツは警戒していたが、アルスが領主の息子であることを知り、食事の誘いに応じてアルスに従うことにした。

アルスはリーツと共に屋敷へ戻る途中、リーツの過去について聞き出した。リーツは傭兵団に所属していたが、戦争で多くの仲間が亡くなり、行くあてもなく放浪していたと語った。アルスはリーツを家臣にするため、屋敷で食事を提供しようとしたが、執事のクランツはリーツがマルカ人であることを理由に反対した。アルスはそれでもリーツを家臣にすることを決意し、父レイヴンにリーツを家臣にするよう説得を試みた。

レイヴンは初めリーツを家臣にすることに反対したが、アルスの熱意に押されて、リーツの能力をテストすることを提案した。テスト内容は、レイヴンとの模擬戦で一太刀でも浴びせることだった。模擬戦が始まり、リーツは全力で戦った。最終的にリーツはレイヴンに一太刀を浴びせることに成功し、勝利を収めた。レイヴンはリーツの才能を認め、彼を雑兵として雇うことを許可した。

アルスの父はアルスの人材を見抜く力を評価しつつ、その才能を正しく扱う力も必要だと助言した。最後に、冗談めかしてアルスが将来の皇帝になる可能性を示唆しつつ、アルスの成長を期待していると伝えた。リーツはその後、兵士たちからも注目を集めることとなった。

アルスはリーツを家臣に迎え入れるにあたり、彼の住まいを決める必要があった。父の提案で、リーツは屋敷の使用人部屋に住むことになり、使用人としての仕事も兼任することとなった。アルスはリーツに屋敷を案内しながら、彼と親しくなりたいと考え、自ら案内役を買って出た。

リーツはこれまでの苦労から、アルスの家臣になれたことが信じられず、何度も感謝の言葉を口にした。アルスはリーツの力に期待していることを伝え、彼の働きを期待していると告げた。リーツはこれからの生涯をかけてアルスへの恩を返すことを誓い、アルスはその誓いを信じ、リーツが将来、何度も苦境から救ってくれるだろうと確信した。

閑話  リーツのその後

リーツ・ミューセスがローベント家に仕官してから一週間ほどが経過した。マルカ人である彼はどこへ行っても差別を受けてきたが、ローベント家ではそのような扱いは少なく、衣食住も整っており、彼にとっては天国のような環境であった。リーツはこの恩を一生かけて返すことを心に誓い、ローベント家での仕事に励んでいた。

ある日、アルスは人材を探しに村へ向かう際、リーツを護衛として同行させた。アルスは村人たちを観察しながら、他人の才能を見抜く能力があるとリーツに説明した。アルスはその能力を使い、知略に優れた人物を見つけて声をかけたが、その者は家臣になることを断った。それでもアルスは落胆することなく、次々に人材を探し続けた。リーツはアルスの能力を目の当たりにし、彼が本当に特別な存在であることを感じた。

二章

リーツがアルスの家臣になってから数ヵ月が経過し、彼は戦場での活躍と知略の高さで評価されるようになった。リーツは教育を受けて知識を深め、アルスの教育係としての役割を与えられるまでになった。彼はサマフォース帝国の現状や各地の州の情勢についてアルスに教え、帝国内で起こり得る後継者争いや戦乱についても説明した。アルスは人材発掘を続けながら、リーツと共に町へ赴き、さらに優秀な人材や魔法に長けた者を探すことを決意した。父レイヴンからの依頼で、アルスは魔法の才能がある人材を見つけるため、町へと出発した。

アルスとリーツは町に人材探しに出かけ、そこで魔法の才能を持つ奴隷の少女シャーロットを発見した。アルスはシャーロットの卓越した魔法適性を見抜き、奴隷商人から彼女を購入した。シャーロットはスラム街で育ち、食料を盗もうとして捕まった過去を持つが、魔法の才能があり、アルスに仕えることを了承した。彼らはシャーロットの魔法の才能を試し、彼女の驚異的な能力を確認した後、屋敷へと帰還した。アルスはシャーロットを新たな家臣として迎え入れることを決意した。

アルスは屋敷に戻った後、父にシャーロットを家臣にするよう頼み込んだが、最初は反対された。父は女性を戦場に出すことに反対だったが、アルスとリーツはシャーロットの魔法の才能が並外れていることを強調し、実力を見せる機会を求めた。そこで、父は一度その才能を見せるように求めた。アルスたちは適切な場所を見つけ、シャーロットに魔法を使わせた。シャーロットが放ったファイアバレットは大きな爆発を起こし、見物していた兵士たちや父を驚かせた。父はその実力を認め、シャーロットを魔法兵として迎え入れることを決めた。

閑話  シャーロットのその後

シャーロット・レイスは一週間前にアルスに奴隷として買われ、家臣となった。彼女は新しい生活に満足しており、アルスから自分には魔法の才があると言われたことも事実だと感じていた。アルスに魔法の才能を見抜かれた理由を尋ねると、アルスは人の才を見抜く能力を持っていると説明した。シャーロットはその説明に驚きつつも、魔法以外の才能についても聞いたが、アルスは戦に関する才能しか見つけられなかった。少し失望したものの、彼女は魔法の練習に向かうことにした。

三章

シャーロットがローベント家の魔法兵として仕え始めてから一年が経過し、彼女は戦場での活躍が目覚ましく、ローベント家に欠かせない存在となっていた。武勇と統率の成長が顕著であり、他家からの引き抜きも断っていた。リーツはアルスの教育係を続けており、戦場に出られなくても不満はないと述べていた。最近、アルスには双子の弟クライツと妹レンが生まれ、それぞれ異なる優れた才能を持っていた。クライツは統率力と武勇に優れており、レンは知略と政治力に秀でていた。アルスは彼らの将来とローベント家の行く末について考えを巡らせていたが、特にクライツの野心の高さを警戒していた。

アルスは、リーツからキーシャ家の兄弟が優秀だという噂を聞き、リーツと共にランベルク村に向かった。キーシャ家の三兄弟のうち、長男ガトスと次男マルクスは武勇に優れており、将来有望な兵士として期待できると判断された。しかし、三男のロセルは怯えた様子で家から飛び出してきた。アルスがロセルのステータスを調べると、彼には非常に高い知略の潜在能力があることが分かった。ロセルの父、グレッグはロセルのことを低く評価していたが、アルスは彼に軍師としての才能があると説得し、翌日から彼を屋敷で教育することにした。

アルスはロセルを屋敷で迎え入れ、教育を始めたが、ロセルは最初、極度に怯え、人見知りをしていた。彼は周囲に不安を感じながらも、アルスの言葉を受け入れ、勉強を始めた。文字の習得も早く、本を次々に読む速さにリーツも驚いていた。ロセルの知略の数値はまだそれほど高くなかったが、知識を積極的に吸収していたため、今後の成長が期待されていた。勉強は順調に進んでいたが、アルスはロセルの性格や他の面でも気になる点があると感じていた。

ロセルが勉強に来た日、彼は父親のグレッグに怒られたために落ち込んでいた。アルスは彼を慰めようとするが、ロセルのネガティブな考え方は簡単には変わらなかった。アルスはロセルの性格を改善するため、彼に新しい罠を考えさせることを提案し、それが父親に認められる機会になると考えた。ロセルは罠を考えることに集中し始め、アルスとリーツは彼の才能を信じて見守ることにした。ロセルが考えた罠がうまくいけば、村全体の食料生産にも貢献できる可能性があると期待された。

数十日が経ち、ロセルは新しい罠の設計図を完成させた。ロセルの設計した罠は、スーという動物を狙ったもので、実験的に小規模な罠を作ったところ、成功した。これに基づいて、村の狩人たちの協力を得て、大規模な罠を作成し、再び成功を収めた。罠の成功により、ロセルは村の狩人たちから称賛を受け、父親のグレッグからも初めて褒められた。これにより、ロセルは自信を取り戻し、笑顔を見せるようになった。

ロセルの罠の発案により、村の狩人たちは効率よくスーを狩ることができるようになり、村の食糧事情が大幅に改善された。スーの干し肉は他地域との物々交換にも使われ、村に新しい食料も流通するようになった。ロセルはその功績を認められ、アルスの父から金貨五枚の褒美を受け取った。しかし、ロセルはスーの乱獲で森からスーがいなくなる可能性を懸念し、自分の行動を反省していた。彼は未来のことを考え、持続可能な狩猟方法を模索し始めた。この出来事を通じて、ロセルのネガティブな性格が必ずしも悪いものではなく、軍師としての才能の一部であることが示された。

閑話  ロセルのその後

ロセル・キーシャは狩人の子供であるが、貴族の子アルスと知り合い、彼の屋敷で頻繁に勉強をしていた。アルスはロセルに才能があると言い、ロセルはその言葉を信じ切れていないものの、勉強が嫌いではなかったため屋敷に通い続けていた。アルスは人の力を見る特別な能力を持ち、周囲から信頼されていた。その力が何を見通せるのか不安に思ったロセルは、アルスに直接尋ねた。アルスは才能や名前、性別を知ることができるが、心の中までは見えないと説明した。さらに、ロセルがこっそり本を持ち帰っていることも察しており、次回からは許可を求めるように言った。アルスが許可を与えてくれたことで、ロセルは安心し、アルスへの信頼と感謝の気持ちを深めた。ロセルはアルスの期待に応えたいと思い、軍師になれるかは分からないが、勉強を続けていくことを決意した。

四章

アルスは九歳となり、ロセルの発案で村の狩りの効率が上がったが、スーを狩り尽くす恐れがあったため、父と相談して捕獲量を制限する規則を作り、問題を解決した。また、ロセルは他の動物を狩るための罠も開発し、村の食糧事情の改善に貢献した。

その一方で、アルスの父は病気がちになり、咳や熱が頻繁に出るようになった。父が戦に出ることに反対するアルスは、代わりに自分が出陣しようと提案したが、父はこれを拒否した。ミーシアン州では後継者争いのため情勢が不安定であり、戦が頻繁に起こっていた。

ある日、父からアルスには許嫁がいることを知らされる。許嫁はカナレ郡のトルベキスタ領主プレイド家の娘であり、これは父とその領主ハマンドの間で決められた約束だった。アルスは驚きつつも、貴族の婚姻関係の重要性を理解し、その手紙を読むためにリーツのもとへ向かった。

アルスは、リーツやロセル、シャーロットと共に勉強を続けていた。リーツは戦場での経験から大人びており、ロセルも知略が高く成長していた。シャーロットは体つきが女性らしくなり、子供好きな一面を見せていた。ある日、アルスは父から許嫁の存在を告げられ、その子からの手紙を受け取った。手紙には、許嫁であるリシア・プレイドがもうすぐ訪れることが書かれており、正確な日付が不明だったため、アルスは父に確認した。父は酒の席での約束を忘れており、リシアの訪問が翌日であることが判明した。アルスは急遽リーツにおもてなしの準備を命じ、対応に追われることとなった。

アルスは許嫁であるリシアの訪問を迎えるため、一日でおもてなしの準備をすることになり、屋敷全体で急ピッチで作業を進めた。リシアは花が好きだと手紙に書かれていたため、庭に咲くミラミスの花を用意し、屋敷内外の清掃も行った。リシアは優雅な態度で挨拶し、アルスとともに屋敷へと入った。

その後、アルスとリシアは村へ出かけることになったが、村の広場で仕入れ業者と家具職人たちの間でトラブルが起きていた。リシアは両者の損害を軽減する方法を提案し、アルスはその案に基づいて両者を仲裁した。アルスはリシアの知恵と交渉能力に感心しながらも、彼女の本心が見えないことに不安を感じていた。

アルスとリシアは村のデートを終え、屋敷に戻る途中で、アルスはリシアに本音を聞き出そうと試みたが、彼女の真意を完全に知ることはできなかった。リシアの野心の高さを鑑みて、アルスは慎重に接することを決意しつつ、屋敷へと戻った。

アルスは屋敷に戻り、夕食後の余興を楽しんだ。余興は準備が行き届いており、リシアも満足した様子であったため、成功と言えるものであった。翌朝にリシアが帰ることが決まっており、特に問題なく一日を終えられると考えていた。

しかし、アルスが寝室に戻りベッドの布団をめくると、リシアがそこに潜んでいた。驚いたアルスに対し、リシアは意地悪そうな笑みを浮かべ、驚かせたかっただけだと告げた。さらにリシアはアルスに、本音で話せる相手が好きだと言ったことを受けて、もっと親しくなるために来たのだと説明した。

アルスは彼女の意図を理解し、リシアの本音を聞く機会だと考えた。リシアは、自分が相手の感情を察する特技があり、アルスの疑念を感じ取っていたことを明かした。アルスは彼女に自分の力についても説明し、リシアが持つ野心と政治の才について率直に話した。リシアは、自分が野心的であることを認めつつ、アルスの力を評価し、婚姻を望むようになったと告白した。

アルスはリシアの実利的な性格を理解しつつも、将来の結婚についてはまだ迷いが残っていたが、彼女の本音を知れたことには満足した。その後、リシアは部屋を去り、アルスは彼女の一面を知ることができた安堵感の中で眠りについた。

リシアはアルスの部屋を出た後、自然と笑みを浮かべていた。彼女はアルスに婚姻したいと言われたことが嬉しかったが、アルスがまだ自分を好きではないことを理解していた。そのため、彼を好きにさせると決意していた。リシアは最初の布団に潜り込んだ行動については失敗だったと感じていたが、それでもアルスの反応を見ることで、自分の立ち位置を確認できたことに満足していた。

翌日、リシアは笑顔でトルベキスタへ帰っていった。その後、彼女から頻繁に手紙が届くようになり、アルスはその手紙に返事をしていた。手紙の内容は主に近況報告や愚痴であり、アルスは返事に苦労しながらもすべてに返答していた。リシアが頻繁に手紙を送る理由は不明であり、彼女が何を考えているのかアルスにはわからなかった。

そして、リシアとの文通が続く中、特に大きな出来事もないまま一年半が過ぎ、ある日、アルスの父が病で倒れた。

五章

アルスが十一歳の時、父レイヴンが突然倒れた。数ヵ月前から病気が治ったと思っていたため、家族は驚いた。医者はレイヴンが「グライ病」という治療法がない病にかかっていると診断し、安静にしていることを勧めたが、その直後にミーシアン総督の暗殺が発覚し、情勢が不安定になった。

レイヴンの代わりにアルスがカナレ城に赴き、郡長のルメイルから兄クランに味方するとの指示を受けた。アルスは父に情報を隠しつつ、戦の準備を進める決意を固めた。

帰り際、リシアの父ハマンドからリシアの機嫌が悪い理由を尋ねられたアルスは、返事を忘れていた手紙のことを思い出し、急いで屋敷に戻って返事を書くことにした。

アルスが屋敷に戻ると、リシアから返事がないことを心配する手紙が届いていた。彼は父レイヴンが倒れたり、総督が暗殺されたりと忙しかったため返事を忘れていたことを謝罪する手紙を出した。その後、アルスはロセルとリーツとともに軍備の強化と情報収集について話し合い、模擬戦や兵士を派遣して情報を集めることを決定した。

しかし、アルスの模擬戦の成果は芳しくなく、実際の戦場で指揮を執る自信を持てなかった。そんな中、サイツ州の軍勢がカナレ郡に侵攻してくるとの報告があり、急遽出陣することとなった。アルスは初陣に緊張しながらも準備を進めたが、父レイヴンが戦場に出る決意を固め、アルスに指揮を任せることを拒否した。レイヴンは病に倒れたものの、戦場で活躍し、サイツ州の軍勢を退けることに成功した。

その後、レイヴンの病状が悪化し、ついに医者からもう治らないと宣告された。アルスは必死に医者を探したが、どこでも同じ診断を受けた。最終的に、レイヴンはアルスにランベルク領を託す言葉を残し、安らかに息を引き取った。アルスは父の死を受け入れ、ローベント家を継ぐ決意を新たにした。

アルスは家臣たちの前で、父レイヴンの後を継ぎ、ローベント家の当主になることを宣言した。弱小のローベント家がこの厳しい時代を生き抜くためには強くなる必要があると考え、アルスは父の築いたものを守るために家を強化する決意を固めた。その数日後、ミーシアン総督の息子であるクラン・サレマキアが挙兵したという情報が入り、アルスの当主としての闘争の日々が始まった。

六章

アルスは父の死後、クランの挙兵の報告を受け取った。クランの檄文は弟バサマークを非難する内容で、アルカンテスを支配しているバサマークに対抗するための挙兵であった。クランは九郡の調略に成功し、ローファイル州のメイトロー傭兵団とも契約していた。アルスはカナレ城での軍議に参加し、ペレーナ郡の調略について意見を求められ、傭兵団シャドーを雇う提案をした。その後、シャドーの団長であるファムと接触し、依頼を受けることができた。ファムは情報収集に長けた団長で、一週間で任務を完了できると約束した。アルスは依頼が順調に進むことを願いながら、屋敷に帰った。

アルスは約束の二週間後に再びトレンプスを訪れ、ファムからペレーナ郡の情報を受け取った。ファムが提供した書状には、ペレーナ郡がバサマーク側に付く理由として、バサマークからの恩があったこと、そしてペレーナ郡長と他の郡長たちの署名と印が含まれていた。この中には、バサマーク側に付いたとされるマサ郡の署名と印もあった。

リーツは、この書状がバサマークの策略である可能性が高いと指摘し、偽造された署名と印があるかもしれないと述べた。アルスたちはカナレ城に急ぎ、郡長ルメイルに書状を見せた。ルメイルの家臣メナスが署名と印を精査し、マサ郡の署名と印が偽物であることを確認した。これにより、バサマークの策略が明らかになり、アルスたちはルメイルの信頼を得て、次の行動に向けて準備を整えた。

アルスは数週間後、ペレーナ郡の調略が成功したとの報告を受けてカナレ城へ向かった。ルメイルはペレーナ郡がクラン側についたことを喜び、アルスに金貨三百枚を褒美として与えた。そのうち五十枚はルメイルから、残りの二百五十枚はクランからのものであった。さらに、クランがアルスに会いたがっているという話も伝えられた。

その後、アルスたちは再びトレンプスを訪れ、シャドーの団長ファムにアルカンテスでの情報収集を依頼した。契約は戦が終わるまでの期間で、一月あたり金貨五枚という条件であった。アルスはファムの部下ベンと顔合わせを行い、今後の情報収集と報告の流れを確認した。

アルスはルメイルから褒美を受け取った後、十二月三十日から一月一日にかけてペレーナ城で行われるパーティーに招待された。パーティーでは、クランがバサマークの策略を見破ったことを称賛し、アルスとルメイルを前に出して賛美した。

パーティーの最中、クランから個別に呼び出されたアルスは、クランの信頼する家臣ロビンソンと共に、秘密の場所へと案内された。そこでクランは、アルスの人材鑑定の能力について確認し、その能力で軍師を推挙するよう依頼した。さらに、クランはアルスに軍議への参加を求め、優秀な人材を連れてくるよう提案した。

アルスは最初ためらったが、クランが戦いで勝利した際には、アルスをカナレ郡長に昇格させるという約束を受け、最終的にこの提案を受け入れることにした。

登場人物

アルス・ローベント アルスは転生者であり、ローベント家の若き当主である。日本で平凡な35年間を送った後、異世界に転生し、貴族としての新たな人生を歩み始めた。彼の持つ【鑑定】スキルは、人の能力を数値化して見抜くものであり、この力を活かして有能な家臣を集めて領地を強化していく。特にリーツやシャーロットなど、彼の家臣たちは物語の中で重要な役割を果たし、アルスの信頼できるパートナーとなっている。後に彼はカナレ郡の郡長に昇進し、大きな戦乱を乗り越えていく。

レイヴン・ローベント アルスの父であり、ローベント家の前当主であった。もともとは農民の出身であったが、その武勇によって下級貴族に昇進した人物である。彼は病に倒れ、39歳という若さで亡くなった。彼の死をきっかけにアルスは当主としての責任を引き継ぐこととなり、ローベント家の存続をかけて奮闘するようになる。

リーツ・ミューセス リーツは元傭兵で、マルカ人という理由で差別を受けてきたが、アルスにその才能を見抜かれ、ローベント家に仕官する。彼の武勇と知略は際立っており、アルスの側近として数々の戦場で活躍する。特に、物語後半ではアルスの軍にとって欠かせない存在となり、その忠誠心と実力が評価されていく。

シャーロット・レイス シャーロットはスラム街で生まれ育ち、食料を盗んで奴隷となった少女である。しかし、アルスに魔法の才能を見抜かれ、奴隷から解放されて家臣となる。彼女は強力な魔法使いであり、物語の中で多くの敵を討ち破る力を発揮する。戦乱の中で、彼女の魔法はアルス軍にとって大きな武器となる。

ロセル・キーシャ ロセルは村の狩人の家に生まれたが、その知略の才能をアルスに見抜かれ、軍師としての訓練を受けるようになる。最初は怯えがちで自信がなかったが、アルスやリーツの助けを借りながら成長し、最終的にはアルスの軍を支える優秀な軍師となる。彼の発案した戦術が、いくつもの戦いでアルス軍を勝利に導く。

リシア・プレイド リシアはトルベキスタ領主プレイド家の娘であり、アルスの許嫁である。知略に優れ、冷静な判断力を持つ彼女は、物語の中でアルスと結婚し、彼の領地経営を支えるパートナーとなる。彼女の野心的な一面もあり、アルスに対して強い愛情を抱きつつも、領地拡大を狙う側面もある。

クラン・サレマキア クランはミーシアン総督の息子であり、物語の中で後継者争いに巻き込まれる。アルスの才能を高く評価し、彼をカナレ郡の郡長に昇進させる。彼はアルスと協力して戦乱を収めるための戦略を練り、物語の終盤では大きな役割を果たす。

ルメイル ルメイルはカナレ郡の郡長で、アルスにとって重要な支援者である。彼はアルスを信頼し、彼を次期郡長として推薦する。また、アルスの成長を見守りつつ、彼が戦乱を乗り越えて領地を拡大していく過程をサポートする存在となっている。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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