小説「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 2」感想・ネタバレ

小説「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 2」感想・ネタバレ

どんな本?

『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 〜弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた〜』は、転生した主人公アルスが、弱小貴族として生まれながらも「鑑定スキル」を駆使して領地を繁栄させていく物語である。

アルスは戦闘力は持たないものの、他者の能力を見抜く特殊なスキルを武器に、有能な家臣を次々に集める。このスキルにより、人材の潜在能力を最大限に活かし、領地運営や戦略を練り上げ、領地を最強のものにしていく。物語では、時に敵対者との戦いや政略交渉が描かれ、アルスが次々と難局を乗り越えていく姿が見どころである。

特に注目すべきは、個性的な家臣たちとのやりとりであり、彼らとともに成長し、領地を強化していく過程が丁寧に描かれている。また、後半では本格的な戦争が始まり、アルスの知略が試される場面が続く。異世界転生ファンタジーとして、政治や戦略を重視した展開が特徴であり、読み応えがある作品である。

読んだ本のタイトル

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる2 ~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~
著者:未来人A 氏
イラスト:JIMMY  氏

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あらすじ・内容

知略に優れた才女・ミレーユ。
だが、彼女にはちょっとした問題が――!?

弱小貴族・ローベント家の長男アルスは、転生者だ。 武力も知識も持たないアルスだが、上に立つ者として最も重要な人を見る目は、持っていた。 それも、「鑑定」という、秘めた能力をも見通す力として! 出自や年齢にとらわれず有能な人物を取りたてるアルスだが、世情が戦争へと向かう中で、ローベント家の礎である父・レイヴンが亡くなってしまう。 否応なしに跡を継いだアルスは、「鑑定」のスキルと取りたてた家臣たちの力を駆使し――! コミックス1巻 発売 即 大重版! の人気ファンタジー、第2巻!

転生貴族、鑑定スキルで成り上がる2 ~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~

感想

この巻では、主人公アルスが鑑定スキルを駆使して有能な人材を集め、領地を強化していく様子が描かれている。特にミレーユという野心の強い人物を家臣に迎えたが、彼女の態度に反発する家臣たちとの間での緊張があり、その解決として演習が行われた。ミレーユの実力を証明させた後、彼女は家臣としての地位を維持することとなった。

アルスは戦争が迫る中、盟主クランの命令で帝都へ向かい、リシアやクランの息子たちとともに交渉を進める。この交渉シーンでは、アルスの成長が感じられ、リシアとの絆がさらに深まる描写が印象的であった。また、シャドーの団長ファムの暗躍が戦局に影響を与える場面が緊張感を高めている。

全体を通じて、戦争前夜の準備や調略の緻密な計画がこの巻の魅力である。アルスが冷静に判断し、鑑定スキルを活用して戦局を優位に進めていく姿が見事であり、今後の展開に期待を抱かせる内容となっている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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漫画版

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備忘録

プロローグ

州都アルカンテスは、サマフォース帝国が建国される以前からミーシアンの中心として栄えており、人口五十万人を超える大都市であった。アルカンテス城は漆黒の城として知られ、貴重な黒王石で建造され、ミーシアン王国の豊かさを象徴していた。城内の議論の間では、バサマーク・サレマキアとその側近たちが軍議を行っていた。

バサマークは、前総督の次男であり、兄クランと次期総督の座を争っていた。彼は、ペレーナへの策略が破られたことに言及し、戦況について議論を続けた。彼の右腕であるトーマス・グランジオンや知将リーマス・アイバスも加わり、兵力の比較や戦略について話し合われた。バサマークは自軍の人材に自信を持ち、勝利の確信を深めていたが、クランが雇った傭兵団や西側の強兵に対して慎重であった。

さらに、バサマークはトーマスの姉の行方について問いただした。かつて有能な人物であった彼女を家臣に戻したり、城に監禁する案を持ち出したが、彼女の行方は全く掴めず、全員が彼女を見失っていた。バサマークは不安を感じながらも、彼女のことを一時的に忘れることにした。

一章  新たな人材

主人公アルスは日本で突然亡くなり、異世界でアルス・ローベントとして転生し、貴族ローベント家の嫡男として生まれた。彼は鑑定スキルという特殊能力を持ち、乱世を生き抜くため、リーツ、シャーロット、ロセルという優秀な家臣を集め、領地を強化しようとした。手柄を立てて領地を拡大するチャンスを得たアルスは、カナレ郡長になることを心に誓った。

クランとの会話後、パーティーに戻り、その後、自室で休んだ。翌朝、クランは貴族たちに戦の準備を命じ、アルスも軍議に参加する可能性を家臣リーツとロセルに伝えた。アルスはロセルの未経験が心配であったが、成長の期待も込め、参加させることを決意した。

その後、トレンプスにシャドーの者が来たという報告を受け、カナレへ急行した。そこでベンからアルカンテス城への潜入が難しかったという報告を受け取ったが、情報を集めて重臣に取り入り、潜入する方針が立てられた。さらにアルスは有能な人材の発掘を依頼し、ベンは引き受けた。

アルスたちがアルカンテスに戻ると、シャドーのリーダーであるファムが人材発掘を引き受け、ベンと共に情報収集を進めた。ファムはケントランという酒場で働き、情報を集めていたが、そこに現れたミレーユという女性が只者ではないと感じ、注意を払うことにした。

ラーツが作った料理をミレーユに運び、彼女はそれを懐かしそうに食べていた。食事を終えたミレーユは酒を飲み、ラーツと軽口を交わした。ミレーユはかつて帝国内を旅して貴族に仕えようとしたが、どの貴族も彼女を雇わなかったと語った。また、彼女は貴族としてアルカンテス城に仕えていた過去があると主張し、ラーツはそれに懐疑的な態度を示したが、ミレーユは自信を持っていた。

ミレーユが無一文であることが明らかになり、ラーツは彼女に働いて返すよう命じた。ミレーユはしばらくケントランで働くことに決まり、ファムと同じ部屋で過ごすことになった。二人は親しくなるために会話を始めたが、ミレーユはファムが男であることを見抜いた。ファムは驚きつつも、性別について真実を明かした。

その後、ミレーユは自身がかつてミーシアン総督に才能を見出され、ペルノーラの領地を与えられたことを語ったが、素行の問題などで追放されたと話した。ファムはミレーユが有能である可能性に気づき、彼女をアルスに推挙することを決めた。

アルスはシャドーに人材集めを依頼し、カナレの町で自らも有能な人材を探していたが、簡単には見つからなかった。そんな中、宿泊していた宿の主人アレックスから、ベンが良い人材を連れてきたという報告を受けた。アルスはすぐにその人物に会うため、リーツと共にトレンプスへ向かった。

そこで彼は、ミレーユ・グランジオンという大柄で強烈な存在感を放つ女性と対面した。ミレーユは非礼な態度であったが、アルスは彼女を鑑定し、その驚異的なステータスを確認した。統率や知略が非常に高く、特に知略の限界値は103と超高水準であった。一方で、彼女の野心は100と極端に高く、アルスはその点に強い不安を抱いた。

ミレーユは元貴族で戦でも活躍していたが、何らかの理由で追放されていた。彼女の弟はバサマークの右腕であるトーマス・グランジオンであり、その点でも彼女は重要な情報を持っている可能性が高かった。リーツは彼女を危険視して反対したが、アルスは彼女の能力を活かすことができると判断し、家臣として迎え入れることに決めた。

アルスがミレーユを家臣として迎え入れて数日が経過したが、家臣たちからミレーユに対する不満が続出していた。リーツやロセルは、ミレーユのやる気のなさや他人の士気を削ぐ発言に苛立ちを募らせ、彼女が家臣にふさわしくないと意見した。ミレーユは指導にあまり積極的ではなく、練兵場での行動にも問題が見られた。

さらに、シャーロットの魔法を使って騒ぎを起こしたことで、他の家臣たちの不満が爆発した。しかし、ミレーユは態度を改めるつもりがないことを明言し、アルスに辞めさせるかどうかを問いかけた。アルスは、ミレーユが戦で活躍することで家臣たちに納得させるという案を提案し、次の模擬戦で結果を出すことを条件に、彼女の継続を判断することに決めた。家臣たちは渋々ながらこの提案に同意した。

ローベント家では定期的に模擬戦を行っていた。模擬戦は実戦を想定し、侵攻隊と防衛隊に分かれて戦う形式であった。侵攻隊の隊長はアルス、防衛隊の隊長はリーツであり、ミレーユはアルスと同じ侵攻隊に所属した。

模擬戦の準備が進む中、ミレーユは作戦を提案した。それは、侵攻隊から一人を防衛隊に寝返らせ、偽情報を流して防衛隊を誘導し、奇襲を仕掛けるというものだった。アルスはその作戦を受け入れ、誰を寝返らせるかを決定し、作戦を実行することにした。

模擬戦では、使える魔法や触媒機の制限があり、音魔法のみが使用可能であった。ミレーユは冷静に状況を分析し、彼女の指示のもと、侵攻隊は奇襲を成功させるための準備を整えた。

リーツ率いる防衛隊は、初期位置のランベルク村周辺で敵の動きを偵察していた。音魔法「トランスミット」を使って偵察兵とのやり取りを行い、アルス率いる侵攻隊が二手に分かれて動き出したという報告を受けた。リーツとロセルは対策を話し合っている最中、侵攻隊のシャマールが「アルス様を裏切った」として情報を提供しに来た。ロセルは疑念を抱いたが、リーツは話を聞くことにした。

シャマールは、ミレーユの作戦を説明しつつ、自分が彼女を嫌っているために本当の作戦を裏切って伝えると話した。ミレーユの本当の作戦は、シャマールが音魔法「ランブル」を使って防衛隊を動揺させ、その隙に侵攻隊が奇襲を仕掛けるというものだった。シャマールはランブルを使わなければ奇襲が失敗し、ミレーユの追放につながると提案した。

リーツはシャマールの話を信じるふりをし、彼の触媒機を預かったが、その番号が違うことに気づいた。ボディチェックを行うと、シャマールが別の触媒機を隠し持っていたことが発覚し、彼の作戦が嘘であったことが明らかになった。リーツは騙されたふりを続け、敵の奇襲を防ぐ作戦を練った。

アルス率いる侵攻隊は、ミレーユの作戦に従ってリーツ達防衛隊に奇襲を仕掛けた。ミレーユは意図的にシャマールにミスをさせ、リーツにこちらの作戦を見破らせたように見せかけ、相手の油断を誘った。リーツ達は油断して進軍し、アルス達はその隙を突いて兵を迅速に動かし、リーツの隊の背後を取った。

奇襲が成功し、リーツの隊は弓矢で大きく削られたが、リーツの指揮で混乱はすぐに収まり、戦闘が始まった。侵攻隊は優勢だったものの、接戦となり最終的にアルス達が勝利を収めた。戦後、アルスはミレーユの作戦が功を奏したことを認め、彼女を家臣として引き続き使うことを全員に宣言した。不満を持つ者もいたが、ミレーユは家臣としての地位を保つことになった。

二章  帝都へ

模擬戦から数日が経過し、アルスはクランから軍議に参加するように呼ばれ、部下たちを連れてセンプラーへ向かった。道中、野盗に襲われることもあったが、シャーロットの魔法で撃退し、無事に到着した。

センプラーに到着した一行は、センプラー城でクランと会った。クランはアルスの家臣たちに興味を示し、特にミレーユの存在に反応した。彼女がかつて貴族であり、敵軍のバサマークと関係があったことを指摘し、密偵の可能性を疑ったが、アルスはミレーユの行動を説明し、密偵である可能性は低いと判断された。

クランはミレーユを軍師として使うことを決定し、軍議が始まるまで一行はセンプラー城で待機することとなった。

軍議が始まる時間となり、アルスは貴族たちが集まる「議論の間」に参加した。アルスは、クランの招待でこの場にいることを説明し、リーツが家臣として参加していることにも一部の貴族たちから非難を受けたが、アルスはリーツの有能さを主張してこれに反論した。

軍議では、クラン側の戦力が11万人であり、敵の戦力がそれを上回ると見積もられていた。いくつかの戦略案が出されたが、ロセルはまずベルツドを攻めるべきだという案を提案した。これにクランや他の貴族たちも賛同し、最初にベルツドを陥落させ、その後アルカンテス城を攻めるという方針が決まった。

また、ミレーユもその戦略を支持しつつ、バサマークの慎重な性格を考慮し、さらに作戦を練る必要があると指摘した。最終的に、クランは皇帝家に仲介を依頼するという案を採用し、彼の長男レングを派遣することに決めた。補佐役としてロビンソンを付けるものの、さらに補佐を加えるため、アルスに適任者を尋ねた。アルスはリシアの存在を提案し、彼女が補佐にふさわしいかを確認することになった。

軍議が終了した後、アルスたちはランベルクへ帰還した。

アルスはリシアをクランに推薦するため、まずリシアの父ハマンドに手紙を送り、許可を得たうえで彼女の実家を訪問した。ハマンドは、リシアがまだ若く、交渉の補佐役を務めるには経験が足りないと心配していたが、アルスの説得により、リシアの高い政治力を認め、参加を許可する方向に考えを変えた。

リシア自身も、二つの条件を提示した。一つはアルスに同行してもらうこと、もう一つは戦後に結婚することである。アルスは一度は自分の弱さを理由に断ろうとしたが、最終的にはその条件を受け入れ、リシアの交渉補佐役を引き受けることとなった。

リーツの助言により、アルスはこの旅が良い経験になると判断し、リシアと共に交渉の旅に出る決意を固めた。

アルスはリシアと共に帝都に向かう準備を整えた。護衛としてシャーロットを同行させ、リーツはランベルクの屋敷を任された。出発後、道中で盗賊に襲われるも、シャーロットが魔法であっさりと追い払った。馬車が激しく揺れた際、アルスはシャーロットに抱えられ、その様子をリシアが冷静な笑顔で見つめていたため、アルスは内心焦った。

その後、リシアがシャーロットに胸を大きくする方法を耳打ちし、シャーロットは大声で「食べ物をたくさん食べること」と答えた。リシアは焦りつつも、アルスに対する微妙な感情を抱いているように見えたが、旅は無事に続行された。

アルスたちは無事にセンプラーに到着し、リシアは初めて見る海に感動していた。彼らはクランと面会し、アルスも同行することを確認した後、クランの息子たちであるレングとテクナドとも出会った。クランはレングの未熟さに悩みつつも、アルスの能力に期待していた。また、クランはサイツ州との交渉を依頼し、アルスたちはその準備を進めることになった。

一週間の滞在中、アルスはリシアやシャーロットとセンプラーの市場を見て回り、リシアに青い薔薇のブローチをプレゼントした。リシアはその贈り物に感激し、大事にすることを誓った。楽しい時間を過ごし、一週間後に帝都への出港を迎えた。

アルスたちはセンプラー港から、鉄製の大きな船で出港した。この船は「浮金」と呼ばれる特殊な金属を使い、鉄ながらも浮くという異世界ならではの技術で作られていた。船に乗り込んだアルスたちは、船酔いに苦しむ者もいたが、無事に航海を続けた。途中、船長のシャークが厳しい言葉で乗客に注意を促し、レングも興奮しながら出発の準備をしていた。

航海中、ロビンソンは皇帝家との交渉が順調であると話し、パラダイル州との交渉が課題であると説明した。パラダイル州とは過去にミーシアンが魔力石をめぐって戦争を起こし、関係が悪化していたため、交渉は困難が予想された。アルスたちはその情報を共有し、帝都への準備を整えた。そして、数日間の航海の末、無事に帝都へ到着した。

三章  交渉

アルスたちは船で帝都に到着し、レングやロビンソンと共に皇帝家との交渉に臨んだ。帝都は貧民が多く、道も汚れており、皇帝家の財政状況が悪いことが伺えた。迎えの執事デンに案内され、彼らはランバス城に向かった。

途中、門前で「飛行船」の設計図を持つ青年シン・セイマーロが門番と口論していたが、彼は追い返された。アルスはシンに興味を持ち、後日彼を誘うことを決意した。

ランバス城で皇帝シャルルと謁見し、交渉は宰相シャクマが行った。レングはパラダイル州との交渉の仲介を頼んだが、シャクマはクランがミーシアンを統一した後に独立を企てているのではないかと疑った。レングは動揺したものの、ロビンソンが機転を利かせて嘘をつき、忠誠を強調して何とか交渉を進めた。

結果として、皇帝家は仲介を引き受けることとなり、アルスたちは帝都で待機することになった。

アルスたちは皇帝家との交渉を終えた後、ロビンソンが交渉の内容について反省していた。ロビンソンは、皇帝に明確な嘘をついたことが今後の皇帝家との和睦を難しくする可能性があると指摘し、リシアも彼のやり方を認めつつ、より良い対応があったかもしれないと意見を述べた。

その後、ロビンソンはパラダイル州の情報を待つ間に、アルスに皇帝や宰相シャクマの能力について質問し、アルスの鑑定能力を高く評価した。アルスは、パラダイル州との交渉が始まる前に帝都で人材探しを行い、シャーロットとリシアも同行した。

帝都を歩き回った後、アルスは飛行船を作ると言っていたシン・セイマーロと再会し、彼の才能を認めて勧誘した。シンはミーシアンに同行することを決意し、飛行船の建造を目指すこととなった。

アルスは、シンを勧誘した後も人材探しを続けたが成果は得られなかった。その後、ロビンソンからパラダイル州に派遣した密偵が戻り、彼らは交渉内容を決めるための会議を開いた。パラダイル州はシューツ州との関係悪化や食料不足、魔力石の産出減少など多くの問題を抱えており、ミーシアンとの協力にメリットがある状況であったが、総督の外交能力の低さとミーシアンへの不信感が交渉の障害となる可能性があった。

リシアは、信用が交渉の鍵であると指摘し、皇帝家の仲介を通じて信頼を築くことが重要だと提案した。ロビンソンは、パラダイル総督家の重臣と皇帝家の接触を計画し、その後、皇帝家がストーレッド家と接触して交渉の準備を進めた。

数日後、パラダイル総督マクファが帝都に到着し、交渉に向けたパーティーが開かれた。アルスは総督の家臣バンバに注目し、彼と会話する中でバンバが変人であることを確認したが、交渉で重要な役割を果たす可能性があることに気付いた。

アルスは、翌日の交渉に参加し、リシアと共に見守っていた。レングがパラダイル総督家への要求と見返りを提示し、交渉は順調に進んでいたが、バンバがレングに対して皇帝への忠誠心を疑問視する質問を投げかけ、交渉が一時難航した。レングは動揺していたが、アルスが機転を利かせてバンバに反論し、交渉をうまく切り抜けた。その後、書状に署名が行われ、交渉は無事に成立し、パラダイル州がバサマークを攻めることが確定した。

交渉後、アルスはロビンソンから感謝を受け、次の任務としてサイツ州との交渉が予定されていたが、情勢の変化によりアルスはミーシアンに戻ることとなった。アルスはシンを連れてミーシアンへ戻り、その後、クランとの面会で次の戦略を確認し、初めての戦に参加する準備を進めた。

戦の勝利を決意したアルスは、リシアとの約束を守るため、戦に挑む覚悟を固め、カナレへと戻った。

閑話  主のいないローベント家

アルスが帝都へ向かい、彼の帰りを待つロセルは、ミレーユから様々な知識を学んでいた。ロセルはミレーユを「師匠」と呼び、彼女に弟子入りを希望したが、ミレーユは乗り気ではなかった。しかし、ロセルの無邪気な様子に弱いミレーユは、渋々弟子入りを認めることになった。

一方、アルスの名を聞くだけで取り乱すリーツは、アルスが無事かどうか心配でたまらなかった。リーツが屋敷を飛び出そうとしたところ、ロセルが説得してなんとか落ち着かせた。リーツはアルスへの忠誠心から、彼を守りたいと強く思っていたため、彼の不在に対する不安が募っていた。

その後、リーツは仕事に戻り、ミレーユは勉強を切り上げて酒を飲もうとしたが、リーツに兵士の訓練を手伝うよう頼まれた。ミレーユは面倒くさがって逃げようとしたが、結局リーツに捕まり、訓練を手伝う羽目になった。

アルスの双子の弟クライツと妹レンは、アルスが帝都へ向かった後、屋敷で暇を持て余していた。クライツは外で遊ぼうとリーツに稽古をつけてもらうことを提案するが、出不精のレンは気乗りしなかった。二人は屋敷内を走り回り、食堂で酒を飲んでいるミレーユと出会う。ミレーユは粗野で子供に怖がられていたが、ロセルの仲介で二人は彼女と話すことになった。

ミレーユは自身の戦の経験を語り始め、当初はクライツも興味津々で聞いていた。しかし、次第に過酷な戦の話に移り、特に敵を罠にかけた話や拷問の話が出ると、クライツは恐怖を感じ始め、ついには震えて食堂を飛び出した。ミレーユは子供に不向きな話をしたことに気づき、反省した。

クライツは恐怖を克服するために練兵場へ向かい、剣の素振りを始めた。彼は「強くなって兄を助ける」という決意を新たにし、懸命に訓練を続けた。レンはそんなクライツの姿を見守りつつ、自分が彼を正しい道へ導かなければならないと心に誓った。

四章  開戦

アルスが屋敷に戻ると、リーツが慌てて迎えに来た。アルスはクランからの書状を持ってカナレに向かう必要があるため、すぐに再出発の準備をすることを伝えた。屋敷ではシャーロットやシンとも再会し、特にシンは飛行船の設計にしか関心を示さなかった。アルスはお土産を全員に渡し、夜には豪華な食事をとった後、翌日にはカナレへと出発した。

カナレ城ではルメイルと面会し、クランからの出陣命令の書状を届けた。ルメイルはサイツ州の騒乱を察知しており、現在の状況を説明しつつ、カナレの兵を集結させてセンプラーへ向かうことを指示した。アルスは急ぎランベルクに戻り、兵を率いて再びカナレに戻る準備を整えた。

カナレにはすでに多くの兵が集結しており、最終的に約五千人の兵が集まった。ルメイルはベルツド占拠の計画を発表し、兵たちは士気を高めて出陣した。

アルスたちは数日間の行軍の末、四月十八日にセンプラーへ到着し、すでに六万人の兵が集結していた。さらに一万人が来る予定だったが、進軍予定日には間に合わない見込みであった。全軍で十万人の兵力が用意され、アルスは緊張感を覚えつつも、家臣たちの前で冷静さを保つ覚悟を決めた。

四月二十日、パラダイル州がアルカンテスへの侵攻を開始し、クラン率いる軍勢もアルファーダ郡へ進軍を開始した。バサマーク側でも危機感が高まり、彼の家臣たちは戦略を議論したが、状況は不利であり、対策が難航した。結局、トーマスがベルツドの防衛に派遣された。

一方、アルスたちクラン軍はアルファーダ郡に侵攻したが、大きな抵抗もなく降伏を受け入れ、郡を無傷で手に入れた。その後、ベルツド攻略に向けた軍議が行われ、サムク郡の攻略が次の目標となった。敵側が時間稼ぎを狙っているとの分析があり、罠系魔法の使用が予想された。罠解除の準備を整えた上で、慎重に進軍することが決定された。

アルスたちはサムク郡に侵攻し、魔法罠を解除しながら進軍した。途中でいくつかの拠点を落とし、ワクマクロ砦を攻略する準備が整えられた。クランの命令でルメイルが先鋒となり、アルスたちも出撃準備をした。砦には魔法に対する防御が弱いとされ、シャーロットの魔法が主力となる作戦が決定された。

実際の戦闘では、シャーロットの爆発魔法で砦の防壁を破壊し、敵兵を撃破。防壁が崩れたことと大規模な炎魔法の攻撃で、敵はパニックに陥り、早々に降伏した。戦後、アルスは砦内の凄惨な光景に直面し、戦の残酷さを実感する。彼は同胞である敵兵の死体を弔うことを提案し、ルメイルの指示で火葬が行われた。

その後、ファムがアルスとの面会を求めて現れ、彼はその理由を探るため急いでファムのもとへ向かった。

アルスはファムと再会し、シャドーの力を城の攻略に活用できるか相談した。ファムは潜入や破壊工作が得意だと述べたが、依頼料が高額であるため、アルスはクランに話すことを決めた。その後、ファムは軍に同行し、彼女はアルスのメイドとして振る舞うことになった。

ワクマクロ砦の攻略後、クランが到着し、兵の犠牲を最小限に抑えたことを称賛した。特にシャーロットの魔法による防壁破壊が戦功を挙げた。捕虜たちは鑑定され、忠誠を誓わない者や能力の低い者は処刑されることが決まり、アルスは処刑の様子を見守った。彼は戦場の残酷さに向き合い、捕虜たちの死を哀れに思いながらも、彼らの再生を祈った。

アルスはクランと共に軍議を開き、サムク城の攻略に際して密偵傭兵ファムの力を借りる提案をした。クランはこれを承諾し、金貨二百五十枚を支払うことで、ファムは城門の開門や魔法罠の解除、魔力水庫の破壊などの工作を行うことになった。ファムは城内に潜入し、計画を実行した。

一方、サムク城の郡長フレードルは、クラン軍の進軍に備えていたが、ファムの工作によって魔力水庫が爆破され、城の防御が大きく損なわれた。さらに城門も開かれ、敵の突入を許すことになり、フレードルは緊急事態に直面した。

サムク城の攻略戦において、アルスは密偵傭兵ファムの協力により、城の門を開け、魔法罠を解除し、魔力水庫を破壊する工作を成功させた。クラン軍はこの工作のおかげでサムク城を短時間で陥落させ、サムク郡長フレードルを捕らえた。フレードルはクランに忠誠を誓うふりをしていたが、実際には城に仕掛けられた罠でクランを暗殺しようと企んでいた。しかし、ファムによって罠が解除されていたため、その計画は失敗した。

その後、アルスはフレードル以外の家臣たちを鑑定し、忠誠を誓う者を登用し、従わない者は処刑することとなった。クラン軍はサムク城で兵を休ませ、次の戦略を練ることになった。

アルスたちがサムク城を落とした後、次なる目標はベルツド城となった。ミレーユは、彼女の弟トーマスがバサマーク側の指揮官としてベルツドに派遣されたことを知り、注意を促した。トーマスは奇襲が得意であり、急ぎ過ぎる攻撃は危険だと彼女は警告した。軍議では、ロセルとクランが早急に進攻すべきとの意見を示したが、ミレーユの慎重な進軍を提案する発言により、情報収集を優先しつつ進軍速度を維持することが決定された。

ミレーユは、敵将の調略や偽情報の流布などの策を提案し、まずはスターツ城に関する情報を集めるべきだとした。クランとアルスはこの戦略に賛同し、ベルツド侵攻に向けて準備を整えることになった。この戦いに勝てば、クランはバサマークに大きく優位に立ち、アルスの目的であるカナレ郡の獲得に近づくため、彼は決意を新たにした。

登場人物

  • アルス・ローベント
    アルスは、日本での人生を終えた後、異世界に転生し、ローベント家の嫡男として新たな人生を歩み始めた。彼は【鑑定】という特殊な能力を持ち、この力を使って有能な人材を集め、領地を強化していった。彼の知略と人材管理能力が物語の中心となり、カナレ郡長になることを目指して奮闘した。家臣たちと共に戦乱に巻き込まれながらも、成長し続けた。
  • バサマーク・サレマキア
    バサマークは、ミーシアン総督の次男で、兄クランと次期総督の座を争っていた。冷酷で野心的な彼は、戦略家として自信を持ちながらも、クランとの戦いに苦しんでいた。彼の右腕であるトーマス・グランジオンや知将リーマス・アイバスと共に軍議を重ね、勝利を目指していた。
  • クラン・サレマキア
    クランは、ミーシアン総督の長男であり、バサマークと次期総督の座を巡って対立していた。彼はアルスの才能に目をつけ、軍議への参加を求めた。アルスにカナレ郡の郡長としての未来を託し、戦略の中心に置いていた。
  • リーツ・ミューセス
    リーツは、かつて傭兵として戦った経験を持ち、アルスの最初の家臣として仕えることとなった。彼は忠誠心が強く、アルスを守るために奮闘した。特に戦場での活躍が目覚ましく、指揮官としても頼りになる存在であった。
  • シャーロット・レイス
    シャーロットは、魔法の才能を持ち、アルスにその力を見抜かれた少女であった。彼女はアルスの家臣として仕え、数々の戦いで魔法の力を発揮した。特に、砦や敵軍を魔法で撃破する役割を担い、重要な戦力となっていた。
  • ロセル・キーシャ
    ロセルは、アルスの家臣として知略に優れ、軍師として成長していった。彼はアルスに対して忠誠を誓い、彼の戦略に従いながらも、自らも多くの作戦を考案し、アルスの成功に貢献していた。
  • ミレーユ・グランジオン
    ミレーユは、かつて貴族として仕えていたが、追放された過去を持つ女性である。彼女は知略や統率力に長けており、アルスに家臣として迎えられた。しかし、その野心の高さから、周囲に不安を与える存在でもあった。彼女の弟は、バサマークの右腕であるトーマス・グランジオンであり、彼女の持つ情報は戦局に影響を与える可能性があった。
  • トーマス・グランジオン
    トーマスは、バサマークの右腕として軍を指揮していた。彼の妹であるミレーユがアルスの家臣として仕えることになり、トーマスは戦局において重要な役割を担う人物であった。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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