どんな本?
『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 〜弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた〜』は、転生した主人公アルスが、弱小貴族として生まれながらも「鑑定スキル」を駆使して領地を繁栄させていく物語である。
アルスは戦闘力は持たないものの、他者の能力を見抜く特殊なスキルを武器に、有能な家臣を次々に集める。このスキルにより、人材の潜在能力を最大限に活かし、領地運営や戦略を練り上げ、領地を最強のものにしていく。物語では、時に敵対者との戦いや政略交渉が描かれ、アルスが次々と難局を乗り越えていく姿が見どころである。
特に注目すべきは、個性的な家臣たちとのやりとりであり、彼らとともに成長し、領地を強化していく過程が丁寧に描かれている。また、後半では本格的な戦争が始まり、アルスの知略が試される場面が続く。異世界転生ファンタジーとして、政治や戦略を重視した展開が特徴であり、読み応えがある作品である。
読んだ本のタイトル
転生貴族、鑑定スキルで成り上がる3 ~弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた~
著者:未来人A 氏
イラスト:JIMMY 氏
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あらすじ・内容
ランベルク領を治める弱小貴族ローベント家の若き当主・アルスは転生者だ。
武力も知識も一般的なレベルだが、「鑑定」という特別なスキルを使い、
出自や年齢を問わず有能な人材を集め、重用している。
ランベルク領も所属するカナレ郡は、
ミーシアン総督の跡継ぎ争いで兄・クランを支援し、参戦する。
有能な人材を抱えるアルスは、否応なしに戦乱の中心に位置することになり――!
コミカライズも絶好調の成り上がりファンタジー、功成り名遂げる第3巻
感想
『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 3』は、弱小貴族ローベント家の若き当主アルスが、持ち前の「鑑定スキル」を駆使して戦乱の中で成長していく物語である。
今巻では、アルスが戦に深く関わることになり、傭兵団シャドーや新たな仲間ブラッハムを家臣として迎え入れる。戦場での駆け引きや人材集めが中心となるストーリーで、次々と敵を攻略しながらカナレ郡の強化を図っていく。
アルスは、ベルツド郡を攻略するため、家臣たちとともに様々な戦略を練り上げていく。彼の鑑定スキルはさらに進化し、家臣たちの本心や隠された才能を見抜くことができるようになった。特に戦の場面では、シャーロットの魔法や傭兵団の活躍が目立ち、無血での砦攻略や敵将の討伐など、着実に勝利を積み重ねていった。
また、アルス自身も新たな挑戦に立ち向かい、交渉力を駆使して敵将を寝返らせるなど、戦場だけでなく政治の舞台でもその力量を発揮している。特に、ファムやブラッハムといった個性的なキャラクターが登場し、彼らとのやり取りが物語に緊張感と面白さを加えていた。
本巻では、戦の展開がサクサクと進み、アルスたちが連勝していく様子が描かれているが、二転三転する複雑な展開も期待される。しかし、テンポ良く進む物語は読みやすく、アルスが郡長に昇進するなど、成長を感じさせる結末となっている。
全体的に、鑑定スキルを活かしながら戦略を巡らせ、次々と勝利を収めるアルスの姿は、ファンタジー好きにはたまらない展開である。次巻ではさらに複雑な戦いが待ち受けている予感があり、今後の展開にも期待が高まる一冊である。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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その他フィクション
アニメ
PV
OP
ED
備忘録
プロローグ
アルスは、家臣たちにベルツド侵攻の決意を示し、忠誠心の強いリーツや戦に強いシャーロットらとともに戦への準備を進めた。リーツはアルスの評価を高めるためにも戦功を上げることを誓い、シャーロットも自信を持って臨んだ。一方、ロセルは緊張を隠せず、ミレーユは冷静に状況を分析していた。
一方、ベルツド城では、郡長カンセスがサムク城が想定外の速さで落ちたとの報告を受け、驚愕していた。バサマークから派遣されたトーマスは、敵が密偵を使っている可能性を指摘し、ベルツドの防衛を強化すべきだと進言した。彼は奇襲を得意とし、敵の補給線を断つ作戦で遅延を図る計画を提案した。カンセスは、トーマスの戦略に希望を見出し、他の城の将軍たちに急ぎ書状を送り、戦いに備えた。
ベルツド防衛戦は数で劣るものの、密偵への警戒と戦略を駆使し、準備が進められていった。
一章 ロルト城攻略戦
アルスはサムク城の残存勢力を制圧し、ベルツド侵攻に備えるため情報収集を開始した。まずバルドセン砦の攻略が必要とされ、クラン軍は進軍を進めるが、砦の守備は強固であり、力攻めでは大きな犠牲が予想された。軍議では調略の案が浮上し、アルスが調略役に推薦された。アルスは自信がないながらも、クランやロビンソンとともに交渉を担当することとなった。
交渉相手のリューパは慎重な人物であったが、アルスの説得によって心を動かされた。最終的にリューパはクラン軍に寝返り、バルドセン砦は無血で明け渡された。これにより、クラン軍は大きな犠牲を出さずに砦を攻略し、ベルツド侵攻への足掛かりを確保した。クランはアルスの手柄を称賛し、砦を無事に受け取ることとなった。
アルスは、調略の成功を祝う宴で家臣たちと過ごしながら、今後の戦いへの備えを進めていた。戦況は順調に進んでいたが、ロセルの警告により、今後の戦闘がより厳しくなることを意識していた。そんな中、アルスの鑑定スキルが進化し、家臣たちの個人的な情報や本心をより詳しく知ることができるようになった。リーツ、シャーロット、ロセルは忠誠心や好意を持っていたが、ミレーユはアルスを「面白い子」と思っており、忠誠心は薄いことが判明した。
アルスはこの新しい鑑定能力を慎重に使うべきだと感じ、家臣たちのプライバシーに配慮しながらも、戦略的に活用することを決意した。
アルスたちは、バルドセン砦の攻略に成功した後、次の目標であるスターツ城とロルト城の攻略について軍議を行った。クランは、スターツ城を攻める前に背後に位置するロルト城を無視できないと判断し、二手に分かれて同時に攻めることを提案し、それが承認された。クランはスターツ城を、ルメイルはロルト城を担当することとなり、アルスもロルト城攻めに参加することが決まった。
ルメイルの軍には、野戦のスペシャリストであるメイトロー傭兵団が加わることになり、アルスとルメイルは傭兵団長のクラマントに会いに行った。クラマントは冷静かつ実力者であり、アルスはその武勇を鑑定して信頼に足る人物と判断した。
その後、ファムにロルト城の情報収集を依頼し、準備を整えたアルスたちは、ルメイルの号令に従ってロルト城への進軍を開始した。
アルスたちが進軍しているロルト城では、城主ジャン・テンドリーが家臣たちと軍議を行い、リューパの裏切りに驚愕していた。ジャンは、スターツ城への援軍を送りたいという家臣たちを制止しつつも、策を練っていた。そして、盟友ハンダーからの書状を受け取り、戦いに勝てる見込みが立ったため、出撃を決断した。
一方、アルスたちはロルト城への進軍中にシャドーからの報告を受け、ロルト城の兵が出陣したことを知る。ルメイルは街道に布陣して敵の騎馬隊を待ち伏せる作戦を立て、急いで防柵を設置した。
ところが、ミレーユの受けた新たな報告により、ロルト城の兵がバートン郡からの援軍と合流していることが発覚した。援軍は約五千人と予想され、これにより敵軍の規模が増し、数の上で互角の状況となった。ルメイルはこの予想外の展開に驚き、急遽軍議を開くことになった。
アルスたちの陣営では、敵軍が援軍を得て戦力が互角となり、緊急軍議が開かれた。ルメイルは援軍を要請しつつ撤退する案を検討したが、クラマントやリーツ、ミレーユの意見を取り入れ、戦い続けることを決断した。ロセルの提案により、森に兵を隠して敵を誘い込み、奇襲をかける作戦が立案され、メイトロー傭兵団を使ってその策が実行されることとなった。
実際に敵軍が接近し、メイトロー傭兵団が伏兵として活躍し、敵の騎馬隊に大打撃を与えた。しかし、敵の将ダン・アレーストが強力な騎兵を率いて突撃し、アルスたちの軍は窮地に立たされた。リーツはダンの討伐を決意し、アルスの命令でダンを討ち取るために出陣した。
アルスはリーツに敵将ダン・アレーストの討伐を命じ、リーツは見事にダンを討ち取った。リーツの活躍により敵軍は混乱し、敵の騎兵隊は壊滅した。メイトロー傭兵団の協力で敵兵を討ち取ることに成功し、アルスたちの軍勢は勝利を収めた。
その後、アルスたちはロルト城を占領し、敵は降伏した。祝勝会が開かれ、リーツの活躍が称賛されたが、ロセルは戦の全体状況に不安を抱き、スターツ城の戦況を調べることを提案した。アルスはファムに情報収集を依頼し、ロルト城でその報告を待つことにした。
二章 スターツ城攻略戦
アルスたちがロルト城を攻め落としている間、クランはスターツ城への侵攻を進めていた。敵軍は士気が低く、クラン軍の優位で進軍は順調に見えたが、スターツ城側のカンセスとトーマスは、魔力水を使った攻撃に警戒し、対策を練っていた。トーマスはクラン軍の魔力水輸送隊を狙い、少数精鋭の部隊を派遣して襲撃を成功させた。
その結果、クラン軍は爆発の魔力水のほとんどを失い、スターツ城を破壊できるほどの力を持たなかった。クランは苦境に立たされ、センプラーから追加の魔力水を輸送するよう指示を出したが、冬が迫っており、ベルツド攻略が遅れることを危惧していた。
翌日、アルスは軍議でシャドーに依頼していたスターツ城の情報収集の結果を報告した。シャドーのベンから得た情報によれば、クラン軍はスターツ城攻略に苦戦しており、爆発の魔力水を多く失ったため、攻城戦が難航しているとのことだった。冬が近づいているため、戦の続行も難しくなる懸念があった。
アルスはルメイルに、援軍を送りつつ奇襲作戦を提案し、奇襲が成功すれば戦況を打開できると考えた。奇襲の計画はスターツ城の弱点である北西の防御が手薄な箇所を攻め、城壁を破壊して城内に侵入するというものだった。ルメイルはこの作戦に賛同し、クラン本隊との連携を図るために書状を送った。
クランもまた、スターツ城の攻略に苦慮しており、アルスからの奇襲作戦の提案に希望を見出していた。彼は自軍の動きで敵の注意を引きつけ、ルメイル軍と合流させた部隊が城を攻めることで、戦況を好転させる可能性を模索した。そして、クランは奇襲作戦に協力するため、後方に控える兵をルメイル軍に合流させることを決断し、急いで書状を送った。
スターツ城での軍議では、カンセス、トーマス、ステファンが、クラン軍の魔力水を失わせる作戦の成功に安堵していた。しかし、トーマスはクランが優秀であるため、今後も油断はできないと警戒し、クランを討ち取る計画を立て始めた。クランを討てば、バサマーク側に有利な状況が訪れると判断し、トーマスは暗殺を決意した。
一方、クランからの書状がロルト城に届き、ルメイルとアルスは奇襲作戦を決行することを決定。クランの本隊と連携するため、進軍を開始した。途中でクランが派遣した兵と合流し、スターツ城への奇襲の準備が整った。
その後、シャドーの報告によれば、敵がトーライ山に大型の触媒機を移動させていることが判明。ミレーユは弟トーマスの作戦を推測し、雨を降らせてクラン軍の機動力と聴覚を奪う奇襲を仕掛ける狙いだと見抜いた。アルスはクランを守るため、シャドーのファムに依頼。ファムはこの依頼に応じ、クランを救うために動き出した。
ファムはその際、アルスに仕官を申し出て、アルスもこれを受け入れ、正式にシャドーを家臣に迎えることとなった。
クランはスターツ城攻略を目前にしていたが、敵がトーライ山に大型触媒機を移動させたことに疑念を抱いていた。その後、突然の大雨が降り、奇襲の可能性が浮上。クラン軍は奇襲を受け、クラン自身も危機に直面するが、シャドーのファムとベンが間一髪で救出した。
ファムは影魔法を使ってクランを戦場から脱出させ、敵の混乱を誘った。クランは無事に本陣へ戻り、ロビンソンの支援で兵をまとめ、士気を高めるために自ら演説を行った。奇襲の失敗を宣言し、クランは今こそがスターツ城攻略の好機であると判断し、全軍に出撃命令を下した。
ファムとベンがクランの命を救った後、クランは即座にスターツ城への進軍を開始した。アルスはその報告を受け、ルメイルに伝え、アルスたちも奇襲を仕掛けるべく準備を整えた。彼らはスターツ城北西の城壁を攻撃し、シャーロットの魔法で防御魔法を破壊し、城内への侵入に成功した。
リーツは、城内の重要な魔法施設の情報を得るため、敵兵を探し出し、一騎打ちを申し込んできた敵の少年ブラッハム・ジョーと対峙した。ブラッハムは単純だが非常に強力な敵であったが、リーツは冷静に対応し勝利した。ブラッハムは敗北を認め、リーツに魔法施設の情報を提供した。
リーツが敵兵から魔法施設の情報を聞き出していた頃、ミレーユも同様に敵隊長を捕らえて情報を得ることに成功した。クラマントは塔を占拠し、爆発魔法を使って正門や城壁を破壊しようと計画し、無事に塔の制圧を完了させた。アルスたちは援軍として塔に向かい、メイトロー傭兵団と共に敵兵を撃退した。
その後、シャーロットの魔法で城壁を破壊し、本隊は城内への侵入に成功。クラン本隊の進軍により、敵兵は市街を放棄し、撤退を開始した。最終的に、アルスたちはスターツ城を完全に制圧し、ベルツド郡長やトーマスは逃亡したが、城主ステファンは捕らえられた。こうして、スターツ城を手中に収めることに成功した。
三章 勝利
クランがスターツ城を落とした後、戦の勝利を全員に告げ、城の防御力を強化するよう指示を出した。アルスはクランに呼ばれ、戦での功績を称えられるとともに、捕虜の中から人材を鑑定する任務を依頼された。捕虜の中にいたブラッハムという若い戦士は、優れた武勇と統率力を持ちながらも知略が極端に低く、クランへの仕官を拒否していた。
アルスはブラッハムにリーツと再戦することを提案し、負けた場合はアルスに仕えるよう条件を出した。ブラッハムはこれを承諾し、リーツとの決闘が行われた。リーツはブラッハムの突きを見事にかわし、勝利を収めた。結果、ブラッハムはアルスに仕官することを決め、リーツがその教育を任されることとなった。
ベルツド城での軍議では、スターツ城を失ったことが致命的であり、軍勢も大きく失ったため、重臣たちは暗い表情をしていた。家臣たちは郡長カンセスに降伏を提案し、無駄な死を避けるべきだと説得したが、カンセスは抵抗を示した。しかし、トーマスが起死回生の策を提案し、それに賭けることとなった。
一方、アルスたちはスターツ城に留まり、冬が過ぎるまで城で休息をとっていた。城内では雪が降り積もり、シャーロットと他の者たちは雪遊びを楽しんでいた。そんな中、アルスはファムに呼び出され、彼の仲間であるシャドーのメンバーを紹介された。密偵として有能な者たちであり、アルスは彼らを家臣として受け入れることを決めた。
冬が過ぎ、雪が解け始めた頃、アルスたちはベルツド城攻略に向けて出陣の準備を進めていた。軍議では、城を包囲することで落とす作戦が決定された。クランはこの戦いに出陣せず、スターツ城から指示を出し、シャドーに護衛を依頼した。
ある日、ベルツド郡長カンセスの使者がスターツ城に訪れ、休戦を提案した。しかし、使者は「秘密兵器」を持っていると主張し、場は一時騒然となった。ロビンソンやミレーユは、この主張をハッタリと判断し、クランもその考えを支持した。後日、密偵の報告により、兵器は偽りであり、敵の目的は時間稼ぎと防衛罠の準備であることが判明した。
クランはこの情報をもとに出撃を決定したが、アルスとミレーユはトーマスがそんなミスをするのか疑問を感じ、ロセルも不安を抱いていた。そして、ロセルは突然、敵の真の作戦に気づいたと告げた。
トーマスは兵士たちと共に森に潜み、敵を罠にかけるための奇襲作戦を準備していた。敵にわざと情報を流し、罠を阻止しに来ることを期待していた。しかし、アルスの仲間であるロセルがトーマスの作戦に気づき、敵が奇襲を仕掛ける可能性が高いことをクランに報告した。クランはそれを受け、火攻めを決断。森を炎で焼き尽くし、トーマスを含む兵士たちを捕らえた。
捕虜となったトーマスは、クランに仕えるよう説得されたが、彼は主君バサマークへの忠誠を貫き、断固拒否した。最終的にトーマスは牢に入れられ、ベルツド城を包囲するための出陣準備が進められた。
エピローグ
冬が明け、アルスたちはベルツドを落とすために出陣した。指揮を執ったルメイルは、徹底的な包囲網を敷き、数日後、ベルツドは降伏した。クランは郡長カンセスを降ろし、牢に閉じ込めるが、命は奪わず、態度次第で新たな領地を与えることを約束した。ベルツドの降伏後、クランはルメイルをベルツド郡長に任命し、アルスにはカナレ郡長の地位を与えることを決定した。ルメイルはカナレに愛着を持っていたが、最終的にベルツド郡長を引き受け、アルスにカナレを託した。
番外編 傭兵リーツ・ミューセス
サマフォース帝国の小さな町、レッドルートで奴隷として生まれたリーツ・ミューセスは、貧しい環境で過酷な生活を送っていた。両親を早くに亡くし、妹も失った彼は、11歳で奴隷市場に売られた。そこで傭兵団「フラッド」のリーダー、バロック・グレイドに銀貨一枚で買われ、戦士として育てられることになった。リーツは一か月で戦場に出られるよう訓練され、戦えなければ捨て駒にされる運命を悟り、必死に食事を取りながら未来に備えた。
リーツは傭兵団フラッドに加わり、団員たちから特に関心を持たれず、自分がすぐに死ぬと思われていることを感じていた。しかし、リーツは生き延びるため、剣の訓練に励み、観察力と運動神経の優れた彼は急速に上達していった。バロックもその成長を認め、ペンタンにさらに剣術を教えるよう命じた。ペンタンの指導でリーツはさらに腕を磨き、戦場での活躍が期待されるようになった。
数週間後、傭兵団は野盗退治の仕事に参加することが決まった。リーツも装備を整え、初陣に臨むことになったが、報酬から装備代が引かれるため、しばらくは報酬を受け取れないことに少し落胆した。それでも、リーツは初めての実戦に挑む準備を整え、緊張感を抱きながらその日を迎えた。
リーツは初陣の日、傭兵団フラッドの一員として野盗討伐に参加した。指揮官オードバルの無策な突撃にも関わらず、敵の不意をついたことで戦況は有利に進んだ。リーツは初めての戦場で緊張しつつも、持ち前の身体能力と剣術の才能を発揮し、次々と敵を倒していった。彼は初陣にもかかわらず、驚異的な速度で戦場に慣れ、戦果を上げた。
戦いの後、報酬を巡ってオードバルとバロックの間に対立があったものの、最終的に報酬は手に入り、傭兵団はその夜、酒場で盛大に祝った。リーツは団員たちから称賛され、マルカ人でありながらその実力を認められることとなった。これまでの奴隷としての扱いとは全く異なる歓迎を受け、リーツは戸惑いながらも、その日の疲れから一人静かに眠りについた。
リーツは傭兵団フラッドに所属して一年が経過し、数々の戦いを経験して成長していたが、彼の心には疑問が生じていた。戦争が増え、一般人が貧しくなる一方で、傭兵団は報酬を得て豊かになっていく現実に、リーツは納得できない気持ちを抱えていた。
ある日、リーツは町で傭兵団の団員が貧しい娘に無理矢理迫っている場面に遭遇した。彼は団員たちを止めようとし、団員たちと対立することになった。傭兵団の規則では団員同士の争いは禁じられていたが、リーツは剣を抜き、娘を助けるために立ち向かった。団員たちはリーツの実力に恐れを抱き、最終的に娘を解放して立ち去った。
しかし、助けた娘はリーツに感謝せず、彼に侮蔑の目を向けて立ち去った。リーツは、自分がマルカ人であることから差別されている現実を痛感し、心に深い傷を負った。
リーツは傭兵団フラッドでの生活を続けていたが、ある日団員たちの悪事を止めようとしたことで、団長バロックに呼び出された。リーツは団員たちの行為を止めた理由を正当化しようとしたが、バロックは傭兵団では正義の味方になる必要はないと冷たく告げた。リーツはマルカ人という出自ゆえに、どこにも受け入れられず、傭兵団以外に生きる道がないことを痛感した。
その後、バロックはリーツに団員たちへ謝罪するよう命じ、リーツはしぶしぶ従った。バロックはリーツがこの事件で屈するだろうと確信していたが、リーツは悪事を見逃すようになり、次第に他の団員たちの行動に目をつぶるようになった。
時が経ち、傭兵団は成長を遂げたものの、バロックは名声が足りず大きな戦場に呼ばれない現状に焦りを感じていた。そんな中、ついに大きな仕事が舞い込み、フラッドは辺境のウプスナ郡での反乱討伐に参加することとなった。リーツはバロックや団員たちの興奮に反して、何か不安を感じながらも任務に向かうこととなった。
傭兵団フラッドはバズル砦に入って防衛戦に参加した。敵軍はルダッソ家が率いる反乱軍で、彼らは士気が高く、砦を激しく攻めてきた。しかし、フラッドの団員たちは奮闘し、特に団長のバロックが鬼神のような戦いぶりを見せた。リーツもまた、多くの敵を斬り倒し、戦況はフラッド側に有利に進んだ。
敵軍が撤退を始めたとき、バロックは追撃を提案し、テレンス郡長はそれを許可した。リーツはリスクが高いと感じたが、団員たちは興奮し、追撃に出た。しかし、敵は逃げているふりをしており、フラッドは伏兵に待ち伏せされ、魔法兵からの攻撃を受けた。フラッドの兵たちは次々と炎に焼かれ、バロックも負傷したが、リーツはバロックを背負って戦場から脱出した。
追撃が裏目に出た結果、多くの団員が命を落とし、フラッドは壊滅的な被害を受けた。
リーツはバロックを背負いながら、衰弱した彼を助けるため砦を目指したが、途中でバロックは息絶えた。リーツは傭兵団フラッドのわずかな生存者とともに砦に戻ったが、フラッドは解散となった。バロックの死と多くの団員の喪失により、傭兵団の再起は不可能だったのである。
リーツは他の傭兵団に入ることなく、マルカ人としての差別を受けながらミーシアン中を旅した。どこにも居場所が見つからず、食料さえも割高で買わざるを得ない状況に陥った。やがて彼はカナレ郡のランベルクにたどり着き、同じように差別を受ける日々を送った。
その時、妙に大人びた子供がリーツに「私の家臣になってほしい」と声をかけたことで、リーツの運命が大きく動き出すこととなった。
登場人物
- アルス・ローベント
日本から異世界に転生したアルスは、ローベント家の嫡男として【鑑定】スキルを駆使し、戦局を有利に進めるべく家臣たちを導いた。クラン軍の一員として戦いに参加し、時には調略によって無血での勝利を収めるなど、知略と勇気を兼ね備えた人物であった。 - リーツ・ミューセス
元傭兵であり、アルスの忠実な家臣であった。リーツは剣術に優れ、数々の戦場で活躍し、特に敵将ダン・アレーストを討ち取るなど、戦果を挙げた。彼は過去に厳しい環境で育ち、マルカ人という出自から差別を受けながらも、強い信念でアルスを支え続けた。 - シャーロット・レイス
魔法の才能を持つアルスの家臣であり、数々の戦いでその力を発揮していた。特に砦や城壁の破壊など、攻城戦において大きな戦力となった。彼女はアルスに深い信頼を寄せ、魔法の実力を磨き続けた。 - ロセル・キーシャ
知略に優れたアルスの軍師であった。彼の冷静な分析と判断は、戦場でのアルスの勝利に大きく貢献した。ロセルはミレーユの指導を受けつつも、アルスに忠誠を誓い、常に戦況を見守り続けた。 - ミレーユ・グランジオン
元貴族であり、知略や統率力に優れた女性であったが、野心的であり忠誠心が薄い一面もあった。アルスの家臣として迎え入れられたが、その複雑な性格ゆえに周囲と衝突することも多かった。弟のトーマス・グランジオンと対立しつつ、アルスの戦略に協力していた。 - クラン・サレマキア
ミーシアン総督の長男で、アルスを頼りにしながら戦局を進めた。クランはスターツ城の攻略やベルツド城の包囲戦など、重要な戦局を指揮し、戦後はアルスにカナレ郡長の地位を与えた。 - トーマス・グランジオン
バサマークの側近であり、奇襲や戦略に長けた軍人であった。彼はベルツド防衛戦に参加し、クラン軍との戦いで幾度も策を講じたが、最終的には捕虜となった。 - ブラッハム・ジョー
若くして優れた武勇を持つ戦士であり、リーツとの一騎打ちで敗北した後、アルスに仕えることを決意した。彼は知略に欠けていたが、その武勇を評価され、アルスの家臣となった。 - ルメイル
アルスの上官であり、ロルト城やスターツ城攻略においてアルスと共に戦った。戦局において冷静な判断を下し、アルスに大きな信頼を寄せていた。
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