どんな本?
『黄金の経験値 VI 特定災害生物「魔王」暗躍マグナメルム』は、VRMMOの世界を舞台に、主人公たちがゲーム内での冒険を通じて成長し、現実世界にも影響を及ぼす物語である。本作では、主人公のブランがドワーフの国で裏社会のボスとなり、レアやライラと共に新たなクラン「マグナメルム」を結成し、黄金龍の復活・討伐を目指して行動を開始する。
主要キャラクター
• ブラン:ドワーフの国で裏社会のボスとなった主人公。
• レア:プレイヤーズクラン「マグナメルム」の結成を提案する。
• ライラ:ブランやレアと共に行動する仲間。
物語の特徴
本作の特徴は、主人公たちがゲーム内での活動を通じて現実世界にも影響を及ぼす点である。特に、ブランがドワーフの国で裏社会のボスとなる展開や、クラン「マグナメルム」の結成など、他の作品にはないユニークな要素が読者の興味を引く。
出版情報
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2025年2月10日
• 定価:本体1,350円+税
• ISBN:9784040757568
• レーベル:カドカワBOOKS
• 著者:原純
• イラスト:fixro2n
読んだ本のタイトル
黄金の経験値 VI 特定災害生物「魔王」暗躍マグナメルム
著者:原純 氏
イラスト:fixro2 氏
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あらすじ・内容
ブランがなぜかドワーフの国で裏社会のボスに!? 私も負けてられないな!
シェイプ王国に侵攻中のブランが、なぜか国中のマフィアを牛耳った!?
衝撃の報告を受けたレアは、温めていたプレイヤーズクランの結成をブランとライラに持ちかける。
クラン名、マグナメルム。黄金龍の復活・討伐を目標に掲げ行動開始!
まずは――ペアレ王国を三人でぶらり旅だ!
道中はペアレの王子で“実験”したり、アーティファクトが眠る遺跡を制圧したり、片手間に大陸掌握の布石を打つのも忘れない!
災厄三人娘の最凶観光旅行の行方は……?
感想
大陸を揺るがす姉妹の暴走
本作では、レアとライラの支配がさらに広がり、大陸全体の秩序が崩壊しつつある。彼女たちは魔物勢力を組織化し、人類側とのバランスを完全に崩し始めた。特に、ルート村に放たれたトゥルードラゴンの存在は、村人たちの信仰を現実のものへと変えてしまった。これにより、魔物勢力の正当性すら生まれ、人類の立場はますます弱体化していく。誰がこの姉妹をここまで育てたのか、責任を問いたくなるほどの影響力を持ち始めている。
魔物プレイヤーが主役の世界
もはやゲーム内の勢力図は人類対魔物ではなく、魔物プレイヤーが主導する物語へと変わりつつある。魔物側のプレイヤーは統率を強め、組織的な戦略を展開しながら領地を拡大している。ウェインたち人類プレイヤーが試みる抗戦は、もはや敗北の記録のように思えてならない。プレイヤー同士の争いを超え、NPCの権力闘争にすら巻き込まれていく様子は、まるで異世界戦記のようである。
運営の調整が追いつかない異常な展開
システムの変更や新規イベントの投入にもかかわらず、運営の調整がまったく追いついていない印象を受ける。魔物プレイヤーたちの勢力があまりにも強大になりすぎ、人類プレイヤー側は防戦一方となっている。特に、ゴブリンプレイヤーが大天使を討伐したという事実は、人類プレイヤーの立場をさらに悪化させるものだった。バランスを保つどころか、運営の手に負えない状態になっているのではないかと疑問を抱かせる。
空中庭園アウラケルサスという新たな拠点
レアは墜ちた天空城を拠点化し、「空中庭園アウラケルサス」として新たな戦略拠点を築いた。この場所がダンジョンとして解放されることで、さらなる戦闘の舞台となることは間違いない。問題は、これを攻略する人類プレイヤーがどれほど残っているのかという点である。すでに戦況は一方的であり、魔物勢力の圧倒的優位が揺るがない状況である以上、プレイヤーたちがどのような手段で抗うのかが今後の焦点となる。
世界の崩壊が加速する未来
本作を読み進めるほどに、「もう取り返しがつかないレベルで動いているのではないか」と思えてくる。大陸の支配構造が変化し、魔物プレイヤーたちが国家レベルの戦略を練るようになっているのは、異世界ゲームとしては前代未聞である。人類側が挽回する手立ては残されているのか、それとも完全に魔物の世界として確立されてしまうのか。その未来が、ますます気になる展開であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録
プロローグ
大規模防衛戦の発表とプレイヤーの反応
運営が第三回大規模防衛戦のイベント情報を発表すると、プレイヤー間でさまざまな憶測が飛び交った。特に「モンキー・ダイヴ・サスケ」は、運営がイベントの難易度を調整するために、当初の30人制限を撤廃し、人数無制限に変更した可能性を指摘した。「ウェイン」は、前回の災厄戦で30人編成でも苦戦したことを思い出し、今回の難易度に疑念を抱いた。一方、「ギノレガメッシュ」は、どうせ参加するなら前回の仲間を集めて再挑戦しようと提案し、他のプレイヤーもこれに賛同した。
戦闘の開始と戦略の模索
イベントが始まると、プレイヤーたちは戦闘の難易度の高さを実感した。特に、大天使の即死攻撃がガードを貫通し、防御手段がないことが明らかになった。「ヨーイチ」は、攻撃の発動ワードと着弾のタイミングがほぼ同時であるため、回避がほぼ不可能であると分析した。「蔵灰汁」は、戦闘に必要なアイテムの消費量に法則があり、特定の天使のドロップ品が最も価値が高いことを指摘した。これにより、プレイヤーたちは天使狩りを優先し、アイテムを集める作戦を立てた。
大天使討伐と第七災厄の勝利
戦闘が進む中、「丈夫ではがれにくい」は、ヒルス王都南部で第七災厄と大天使の決戦が行われ、第七災厄が勝利したことを報告した。彼の話によれば、天空城が突如として空に現れ、戦闘の末、大天使が黒い光によって貫かれ、消滅したという。「明太リスト」は、この出来事が運営の設定に従ったものであり、過去の大天使を討伐せずとも現在の大天使が消滅する仕組みになっている可能性を指摘した。「ヨーイチ」は、これが運営の意図的なシナリオ展開であると推測した。
新たな脅威と戦略の再構築
大天使討伐後、プレイヤーたちは新たな脅威に直面した。ヒルス王都南部には巨大な岩の塊が突き刺さり、その周囲に昆虫型の魔物が大量発生していた。「森エッティ教授」によれば、これらの魔物は第七災厄が天空城をダンジョン化した結果として生まれた可能性が高い。プレイヤーたちは、新たなダンジョン攻略のための作戦を立て始めた。
魔物プレイヤーとの関係と新たな展望
一方で、魔物プレイヤーたちの動向も注目された。彼らは独自の非公式SNSを活用し、組織的な行動を取っていた。「ウェイン」は、前回のイベントでは人間プレイヤーと魔物プレイヤーが対立していたため、今回も同様の展開になる可能性を示唆した。「アマテイン」は、魔物プレイヤーが人間よりも強力なスキルや転生能力を持つ可能性を指摘し、今後のイベントでの戦力差を懸念した。
プレイヤー間の連携と今後の挑戦
最終的に、プレイヤーたちはイベントの進行に応じて戦略を再構築し、次のステップへと進むことを決定した。「カントリーポップ」は、イベント期間中は大天使討伐に専念し、その後に天空城攻略に移行する方針を提案し、多くのプレイヤーが賛同した。一方、「アマテイン」は、ゴブリンプレイヤーたちがすでに大天使を討伐していた可能性を指摘し、彼らの動向が今後のイベントに大きく影響することを示唆した。
この一連の出来事により、プレイヤーたちはイベントの仕組みや新たな敵勢力の存在を理解しつつ、さらなる挑戦へと向かうこととなった。
魔物プレイヤーの戦闘と成長
魔物プレイヤーたちは天使との戦闘を通じて、予想以上に容易に経験値を稼ぐことができた。天使は遠距離攻撃をせず、白兵戦で最後まで戦い続けるため、近接戦闘で対応することが可能であった。その結果、一部のプレイヤーは「ジェネラル」に転生するまでの経験値を獲得することに成功した。戦闘の成果に満足する者がいる一方で、ドロップアイテムの用途については不明であり、一部では「死霊術師」に関連があるのではないかとの憶測が飛び交った。
運営のイベント仕様と魔物プレイヤーの不満
運営が発表したシステムメッセージによると、魔物プレイヤーもイベントに参加可能であった。しかし、指定された街「ヒューゲルカップ」に移動するには、まず通常の街を経由する必要があり、多くの魔物プレイヤーがこの仕様に不満を抱いた。中には「人類プレイヤーが大天使を討伐してくれる」と達観する者もおり、ランキング争いを諦めるプレイヤーもいた。また、魔物プレイヤーの間では、「ブラン」や「ライラ」といったランカーたちの正体について議論が交わされ、彼らがもし魔物プレイヤーならば非公式クランを作り、組織的に活動するべきだという意見も出た。
ゴブリンプレイヤーの大天使討伐と人類プレイヤーの敗北
イベントスレッドで、ゴブリン系の魔物プレイヤーの集団が大天使に挑んだとの情報が流れた。この集団は組織的に行動しており、明らかに統率が取れていたことから、全員がプレイヤーである可能性が高いと考えられた。しかし、一部の魔物プレイヤーは、リーダーが「ジェネラルクラス」以上で使役能力を持っている可能性を指摘し、集団の中にNPCが含まれている可能性を示唆した。
戦闘の結果、しばらくの間誰もリスポーンしていないことから、ゴブリンプレイヤーたちは大天使討伐に成功した可能性が高まった。これにより、人類側のプレイヤーは未だに討伐成功者がいない状況となり、一部の魔物プレイヤーは「人類プレイヤーへの勝利」として歓喜した。さらに、彼らはこの勝利を機に「モンスターズクラン」の設立を計画し、現地に行ける者は設立を進めるべきだという声が上がった。
第一章 あの暗闇の続き
マフィアの抗争と王都の異変
シェイプ王国の王都近くにある小さな酒場で、「ヒデオ」と店主の「トオル」はマフィアの抗争について話していた。長らく平穏だった王都の裏社会が、天使襲撃の終息後から急激に動き始めたのである。ヒデオは自身の修行の一環として、この抗争に関わることを決め、トオルと共にスラム街の酒場へ向かった。
酒場に到着すると、すでに抗争は激化しており、チンピラたちが角材やナイフを手に戦いを繰り広げていた。ヒデオとトオルはその混乱の中に飛び込み、次々と相手を打ち倒した。戦闘の最中、トオルは包丁を巧みに扱い、相手を一撃で無力化していった。そして戦闘が収束した後、ヒデオは異変に気付いた。一部の死体が時間差で消えていたのである。通常、プレイヤーであれば即座にリスポーンし、NPCであれば死体が残るはずだった。消滅のタイミングがずれていることから、彼らがアンデッド、もしくは吸血鬼である可能性が浮上した。
ヒデオはこの異変が単なる抗争ではなく、吸血鬼の暗躍によるものだと推測した。そして、この事態を引き起こしたのは、自分が地下遺跡で遭遇した「第七災厄」と関係があるかもしれないと考えた。彼はこの問題を自らの手で解決する決意を固めた。
吸血鬼による王国支配計画
一方、吸血鬼の側では「ブラン」がシェイプ王国を支配する計画を進めていた。彼の部下である「アザレア」たちは、各都市に間者を送り込み、商業を掌握しようとしていた。彼らは犯罪組織のボスやスラムの住人を『使役』し、経済活動に利用することで、徐々に王国の裏社会を掌握していった。
この計画の一環として、行商吸血鬼たちを各地に派遣し、大店の商会ではなく、スラムや犯罪組織をターゲットにした。そして、貧民やアウトローを吸収し、知能を高めさせ、詐欺を行うことで資金を集めた。ブランはこの方針を採用し、結果としてシェイプ王国の裏社会の大部分を支配下に置くことに成功した。さらに、抗争を演出することでプレイヤーの存在を特定し、吸血鬼の支配を確実なものにしていった。
ヒデオとブランの対決
その頃、ヒデオとトオルは、吸血鬼の支配が及ぶ酒場で抗争を続けていた。しかし、彼らの乱入はすでにブランの耳に入っていた。部下からの報告を受け、ブランは直接現場へ向かうことを決めた。王都に来た目的の一つは修行であり、ここでの戦闘はその一環としてふさわしいと考えたのである。
酒場に到着したブランは、ヒデオと対峙した。ヒデオはブランの姿を見て、「スタニスラフ博士をどこへやった」と詰め寄った。彼は、ブランが吸血鬼であると確信しており、博士が彼女の手に落ちたと見ていた。ブランはヒデオの言葉を受け流しつつも、吸血鬼の存在を否定しなかった。
戦闘が開始されると、トオルは包丁を召喚し、次々と吸血鬼を切り刻んでいった。しかし、それらはすぐに『使役』されて復活し、戦況は一進一退となった。ブランは戦況を見極めつつ、ヒデオと直接対決することを決めた。『変身』を発動し、全身に白と黒の装甲をまとい、圧倒的な防御力を発揮した。ヒデオの攻撃はほとんど通じず、一方的な戦いとなった。
最終的に、ブランはヒデオを『ヘルフレイム』の魔法で焼き尽くし、戦闘を終わらせた。ヒデオは敗北し、その場を撤退することを余儀なくされた。ブランはこの戦いを通じて、自らの新たな戦闘スタイルの可能性を確認し、さらに支配の手を広げる決意を固めた。
王国掌握と最終戦略
ブランの計画は順調に進行していた。シェイプ王国の裏社会は完全に彼の手中にあり、次の目標は国そのものを支配することであった。彼は経済を握ることの重要性を理解し、税の支払いを金貨に依存させるよう誘導した。そして、国中の作物が彼の商会以外では手に入らないような状況を作り出し、最終的に国政を掌握する計画を立てた。
この策略は、単なる暴力や吸血鬼の力による支配とは異なり、経済と物流を利用した巧妙な戦略であった。王侯貴族たちは食糧のためにブランの配下と取引せざるを得なくなり、結果として国の実権を彼が握ることになる。
こうして、シェイプ王国は表向きは独立を維持しながらも、実質的には吸血鬼の支配下に置かれることとなった。
第二章 マグナメルム
ペアレ王国での動向と新たな旅路
キーファの街では、宿屋にはレアが、傭兵組合の周辺にはライラがそれぞれ監視の目を埋め込んだ。すでに街での目的を果たしたため、二人は次の目的地であるラティフォリアへ向かうことにした。馬車の速度はリニア並みであり、その仕組みに興味を持ったレアたちは乗合馬車を選択した。
馬車の待合室で待機していると、マーガレットたちが現れ、同じ馬車に乗ることになった。彼女たちはレアに妙に懐いており、旅の同行を申し出たが、レアは断った。しかし、マーガレットは諦める様子を見せず、馬車内でもレアの近くに座り続けた。
馬車はラティフォリアに到着し、一部の乗客はここで降車した。しかしマーガレットたちはレアたちの行動を探り続け、彼女たちの目的地を探ろうとした。レアは王都へ向かうと告げ、マーガレットたちもそれに合わせる形で同行することを決めた。
王都への到着とマーガレットの申し出
王都に到着すると、そこは山岳部に築かれた要塞都市であり、王城は岩山そのものを利用して建造されていた。街には城壁がなく、有事の際には住民が王城に避難する構造になっていた。
マーガレットたちは王都に着くと、レアたちに「何か手伝えることはないか」と申し出た。ただの案内ではなく、彼女は「悪いことの手伝いをしたい」とまで言った。この異様な申し出にライラは興味を示し、マーガレットたちの能力や情報収集能力について探りを入れた。
マーガレットたちは、プレイヤー特有の「保管庫」を活用し、密かに物資を運搬したり、他のプレイヤーの会話を盗み聞くことが可能であることを明かした。レアとライラは彼女たちの申し出を面白がり、利用価値があると判断したため、協力関係を結ぶことにした。
王城への潜入と書庫の探索
マーガレットたちはレアたちの指示で王城への潜入を試みた。すでに内部には協力者が存在し、門番の一人が案内役を務めた。彼の案内で王城の書庫に侵入すると、そこには歴代の書物が保管されていた。
しかし、書庫の管理人は読み書きのできない老人であり、情報を漏らされる心配がないようにするための措置だった。ジャネットたちはこの管理人の協力を得て、書庫内の全ての書物を「保管庫」に収納し、迅速に王城を離脱した。
マグナメルムへの報告と闇堕ちの決意
王都から戻ったジャネットたちは、収集した書物をレア(マグナメルム)に渡した。マーガレットは完全にレアへの忠誠を誓い、プレイヤーたちを裏切る道を選んだ。彼女の仲間たちもまた、同じ道を選ぶことになった。
その後、レアはマーガレットたちの戦闘能力を強化するため、人体改造を施した。彼女たちは新たな能力を手にし、人間(獣人)を超えた存在へと変貌した。その変化にマーガレットたちは驚きつつも、さらなる力を求め、レアのもとで活動を続けることを決めた。
第九災厄への布石と新たな戦い
ジャネットたちは、改造された新たな力に戸惑いつつも、レアの目的が「第九災厄の誕生」であることを知った。すでに第七災厄はヒルス王国を滅ぼし、第八災厄が誕生したことも判明している。レアはこの計画の最終段階として、さらなる災厄を生み出すつもりであった。
ジャネットは、この壮大な計画に関与できることに興奮しつつも、レアとライラが単なる強敵ではなく、世界を動かす存在であることを改めて実感した。闇堕ちした彼女たちの最終目標は、プレイヤー勢力と人類側を欺きつつ、ワールドボス同士の戦争を引き起こすことであった。
王都での書庫探索を終えたジャネットたちは、再びキーファの街へと戻り、次なる計画を進めるための準備を整えた。
第三章 墜ちた天空城
第三回大規模イベントの終了
第三回公式大規模イベント「大規模防衛戦」は、多くのプレイヤーの参加により成功裏に終了した。運営は参加者に感謝を述べ、現在ポイントランキングおよび討伐数の集計を進めている。メンテナンス後に賞品の発送と共に結果が発表される予定である。
メンテナンスの実施と仕様変更
イベント終了後、システムメンテナンスが実施された。これに伴い、いくつかの仕様変更が行われた。まず、落下ダメージの計算方法が変更され、物理耐性による軽減が廃止された。今後は落下時の重量や高さに基づいた固定ダメージが適用される。
さらに、新たな転移装置が導入された。これまでは傭兵組合の敷地内にのみ設置されていたが、今後は一定規模以上の集落の中心部に出現する仕様となる。設置条件は、NPCが一定範囲内に一定期間以上存在することであり、条件を満たさなくなった場合、装置は消滅する仕組みとなっている。
課金アイテムの追加と制限
メンテナンス後、新たな課金アイテムが追加された。これには、キャラクターやアイテムの情報を鑑定できるアイテム、キャラクターを眷属化できるアイテムなどが含まれる。ただし、一部のキャラクターには効果が適用されない場合がある。また、眷属化アイテムはプレイヤーに使用する場合、その許可が必要であり、対象を屈服させる条件も求められる。
これらの課金アイテムは、商取引法に基づき、一ヶ月あたりの購入数が制限されている。さらに、購入したアイテムは譲渡不能であり、インベントリから直接使用する形式となる。
墜ちた天空城の転移サービス追加
イベントの結果、かつて大天使が支配していた領域がレアの勢力下に入った。運営はこの地域を転移サービスの対象に加えることを決定し、レアに対し了承を求めた。拒否した場合、支配権放棄の代わりに補償を検討する旨も通知された。メンテナンス終了後、即座に転移サービスの対象リストに追加され、一週間以内の返答を求められた。
プレイヤーの反応と議論
イベント終了後、プレイヤー間では討伐数や報酬についての話題が交わされた。一部では、魔物プレイヤーが本当に独力でクリアしたのか疑問視する声もあった。また、新たな転移装置の仕様については、ダンジョンにも適用される可能性が指摘された。これにより、一部のダンジョンではボスエリアが転移地点となる可能性があり、不便になる懸念が示された。
課金アイテムに関しては、鑑定アイテムの利便性が評価される一方、眷属化システムの導入に対する疑問や懸念も挙がった。特に、プレイヤーキャラクターにも使用可能である点が議論の的となり、ゲームの公平性への影響が指摘された。
落下ダメージの仕様変更についても意見が分かれた。高所からの落下によるダメージが物理耐性で軽減できなくなったことで、戦略の幅が狭まるのではないかという懸念が示された。しかし、この調整によって空を飛ぶ敵に対して新たな戦術が可能になるという見方もあり、評価は分かれた。
こうした変更の多くは魔物プレイヤーのバランス調整のためと見られているが、結果的に人類側にも有利な影響をもたらしており、プレイヤー間での意見は対立していた。
新規課金アイテムの試用
メンテナンス明け、ウェインは新規追加された課金アイテムを購入し、早速試すことにした。アイテムには「看破のモノクル」「目利きのルーペ」「使役の首輪」が含まれ、それぞれキャラクターやアイテムの鑑定、眷属化が可能とされていた。ウェインは仲間と共にこれらのアイテムをどこで試すか相談した。
プレイヤー間の鑑定実験
「看破のモノクル」を使って仲間のひとりがウェインを鑑定しようとしたが、システムメッセージにより失敗したことが判明した。プレイヤー間で無言の鑑定はトラブルの原因になりかねないため、注意喚起が必要と認識された。また、他のプレイヤーが聖女に対して鑑定を試みたが情報を得られず、一部の重要NPCには効果がないことが明らかになった。
NPCとプレイヤーの識別手段
鑑定アイテムの仕様を考察した結果、ウェインはNPCとプレイヤーの識別に利用できる可能性を示唆した。過去にNPCのふりをしていたレアとの経験から、今後も同様の状況に対処する手段となるかもしれないと考えた。また、大天使討伐イベントにレアも参加していた可能性が高く、彼女が一般プレイヤーであるとの認識を強めた。
課金アイテムの効果検証
「目利きのルーペ」を使った鑑定では、天使の落としたアイテム「清らかな心臓」の詳細が判明したが、用途は不明のままだった。死霊術師との関係が示唆されていたが、該当NPCの実在は確認されていない。一方、「使役の首輪」に関しては、ゲーム内での野生モンスターのテイムが必要であり、ダンジョン内のモンスターには基本的に使用できない可能性が浮上した。
「墜ちた天空城」への挑戦
ウェインたちは、新規ダンジョンである「墜ちた天空城」へ向かった。現地では大型昆虫型の敵が出現し、討伐に当たったが、ダンジョン攻略には飛行能力を持つモンスターのテイムが有効であると考えられた。しかし、試した結果、周囲のモンスターはすでにテイムされており、課金アイテムによるテイムは不可能だった。
新たな強敵の襲来
天空城周辺で探索を続けるうちに、突如としてヒト型の蟲が現れ、さらにドラゴンのような巨大な蟲たちが上空から急襲した。タンク職が挑発を試みたものの、急降下による攻撃を阻止することはできず、多くのプレイヤーが即死した。さらに、ヒト型の蟲は範囲回復魔法を使用し、ドラゴン型の敵を回復させることで戦闘を長期化させた。
撤退と今後の対策
このままでは全滅する可能性が高かったため、ウェインは撤退を決断し、生存者にセーフティエリアへの待機を指示した。新たな敵は大天使級の難易度であると推測され、攻略には準備が必要と判断された。ダンジョンの情報を得るため、「看破のモノクル」を試みたが、強すぎる相手には効果がないことが判明し、重要な情報を得ることはできなかった。
「墜ちた天空城」の支配者レア
一方、天空城を支配下に置いたレアは、プレイヤーたちの侵入を撃退したという報告を受けていた。彼女はこのダンジョンを自らの領地として管理し、探索を進めていた。現在、内部の構造は完全に把握できていないものの、厳重な警備体制を敷き、侵入者を排除する方針を取っていた。
領地拡大と支配戦略
レアは次の目標としてキーファの街を支配下に置くべく行動を開始した。彼女は仲間と共に城に潜入し、領主と兵士を「使役」することで支配を確立した。同様に、他の街でも貴族や領主を眷属化し、影響力を拡大していった。ヴォラティルの街でも同様の手法を用い、統治体制を整えた。
転移サービスと落下ダメージの仕様変更
メンテナンス後、新たな転移サービスが導入され、一定の条件を満たした集落に転移装置が設置される仕様となった。また、落下ダメージの計算方法が変更され、物理耐性による軽減が廃止された。この仕様変更により、レアが過去に用いた「ウルル・インパクト」の戦術が使用困難となり、戦略の見直しが迫られた。
マグナメルムの勢力拡大
レアたちはポータルの支配を進め、すでに複数の拠点を確保していた。ポートリーのケルコス支配が成功すれば、シェイプ王国を除くすべてのポータルを支配下に置くことが可能となる。次なる戦略を立てるため、レアは仲間との会談を予定し、シェイプの現状について確認することを決めた。
第四章 マフィンとお茶会
魔物プレイヤーの拠点形成
バンブは、魔物プレイヤーたちの拠点として、ガスラークが用意した地下空間を確認した。ゴルフクラブ坑道の下層に位置するこの拠点は、一般プレイヤーのダンジョン出入り口とは山を挟んだ反対側に設置されていた。これにより、他人のダンジョンを経由せずに独自の出入りが可能となり、周囲の森を利用して食料や水の確保も行われていた。さらに、拠点の防御を強化するため、プレイヤーたちが柵や塀を建設し、少しずつ村のような形へと発展させていた。
魔物プレイヤーの組織化
バンブは、魔物プレイヤーによるクランを組織することとなった。当初、彼はプレイヤーたちを信用していなかったが、大天使討伐のイベントを通じて連帯感が芽生えたことで、最終的にクランのマスターとして名乗りを上げた。このクランは、元々レアの提案によって設立が決まり、ガスラークが補佐として付けられた。拠点の準備も彼が担当し、レアは最大限のサポートを約束した。
戦闘経験の蓄積と課題
大天使討伐では、バンブやガスラークが優先的に狙われることでタンク不在の問題を回避できた。ヒーラーの不足はレアの用意したホブゴブリンプリーストが補い、回避型のバンブ自身もスキルの予備動作を把握することで致命傷を避けることができた。討伐数の目標は高かったが、バンブたちはぎりぎりで達成し、多くの経験を得たことで大天使との戦力差を縮めていった。
装備品の課題と生産の試み
魔物プレイヤーたちは装備品の入手に苦戦していた。店で購入できないため、バンブは装備品の生産に取り組むことを決意した。ガスラークからはレアに頼むよう助言され、結果としてレアから高位素材を提供されることになった。しかし、バンブの作成した装備品が『鑑定不可能』と表示されることが問題視された。プレイヤーにとって、詳細が不明な装備は扱いづらく、信頼性に欠けるため、これを逆手に取って市場に流通させる方針が検討された。
クランの運営方針と対外戦略
バンブはレアと情報を共有する立場であったため、クランの運営方針についても彼女の意向を最大限反映させることにした。魔物プレイヤーの勢力は人類側に比べると組織力が低く、装備の確保も困難であった。しかし、レアの支援を受けることで、これらの課題に対応しつつ、人類側のバランスを崩す戦略を進めることが可能となった。
情報収集と支配領域の拡大
レアはすでに複数のポータルを支配し、大陸の情勢をコントロールできる状況を作り出していた。ブランもまた、シェイプ王国の裏社会を掌握し、経済的な支配を進めていた。これにより、税の現金化を促進し、食料供給のバランスを操作することで、最終的に市場の破壊と国家の衰退を狙う計画を進行していた。
善意のプレイヤーへの対策
食料供給のコントロールを行う上で、問題となるのは慈善活動を行うプレイヤーの存在であった。ライラはこれに対処するため、意図的に毒入りの食料を配布し、人々の不信感を煽る方法を提案した。こうすることで、善意による救済活動の信用を失墜させ、市場の操作をより確実なものとする狙いがあった。
課金アイテムの影響と対策
プレイヤー向けの課金アイテムによって、新たな脅威が生じていた。『使役の首輪』は物理的に相手を屈服させることで『使役』を可能にするアイテムであり、これにより貴族の子供を拉致して領地を乗っ取るといった行動が可能となった。レアたちは、この危険性を考慮し、重要な都市の支配を急いだ。また、『鑑定』アイテムの登場により、プレイヤーとNPCの識別が容易になり、それを利用した監視や諜報活動の可能性が懸念された。
黄金龍復活計画とクラン結成
レアは、黄金龍と六人の王に関する情報を元に、新たな目標を設定した。この計画を遂行するため、ブランの真祖化が重要となり、その他のキーキャラクターの確保も進められることとなった。そのための手段として、プレイヤーズクラン『マグナメルム』の正式な結成が決定された。これは、単なる組織ではなく、大陸の勢力図を塗り替えるための基盤となるものであった。
今後の展開と移動手段の課題
現在の最大の課題は、大陸外への移動手段の確保であった。天空城の利用は現実的ではなく、別の方法を模索する必要があった。そのため、まずは大陸内で可能な限りの準備を整え、黄金龍復活のためのキーキャラクターを揃えることが優先されることとなった。
第五章 マニアックで濃厚なプレイ
キーファの街への移動と使役の話
レアはライラとブランを連れ、キーファの街へ向かっていた。三人とも飛行能力を持っていたが、移動中に「使役」について説明するため、ライラのガルグイユに乗ることにした。飛行しながらの説明はブランにとって難しく、彼女が話を聞きながら飛ぶと進行方向が定まらなかったためである。ブランはプレイヤーの使役に関する知識を持っており、ジャネットたちについても話を聞いた。プレイヤーが「使役」をするメリットはほとんどなく、代わりに強化アイテムを利用していたという情報を共有しながら移動した。
キーファの街への到着と宿での会話
ドラゴンでの移動は目立つため、高高度で停止し、空挺降下する形で街に到着した。飛行能力があるため問題なく降下し、宿の裏口から入ると、モニカが待っていた。彼女は図書館の蔵書を確認しており、王族が「幻獣人」という種族であることを突き止めていたが、獣人が幻獣人へ至る方法についての記録は見つかっていなかった。レアは、情報が意図的に隠されている可能性を考慮しつつ、期待せずに調査を続けるよう指示した。
マーガレットたちとの再会と鑑定の試み
ジャネットたちが宿にいることを確認し、レアたちはマーガレットの部屋を訪れた。マーガレットはレアたちを迎え、他の三人もすぐに集まった。その場でエリザベスが「鑑定」アイテムを使用し、レア、ライラ、ブランの情報を覗こうとしたが、三人とも抵抗に成功した。その行為はすぐにジャネットたちに咎められ、エリザベスは謝罪した。レアはその場でエリザベスを「鑑定」し返し、プレイヤーは鑑定されたことをすぐに察知するという仕様を確認した。これにより、ジャネットたちに対し、NPCにも同様の能力があることを印象づけた。
プレイヤーの「使役」アイテムとブランの正体
ジャネットは、目利きのルーペや使役の首輪について説明した。しかし、詳細が曖昧で理解しにくい部分があった。レアは「使役」の概念が貴族の騎士支配にも使われていることを指摘し、それを応用する形でジャネットたちにペットを用意する計画を立てた。その過程で、ブランの正体について話題になったが、ジャネットたちは彼女に特別な関心を示さなかったため、深く説明することなく終わった。
野盗との遭遇と撃退
徒歩での移動を開始し、街道沿いで野盗の集団と遭遇した。野盗たちは通行料を要求したが、ブランが「ブラストクリムゾン」を放ち、一瞬で敵の半数を焼き尽くした。残りの野盗は逃げようとしたが、「グレイシャルコフィン」により氷漬けとなった。その中にプレイヤーが紛れ込んでいたことが確認された。レアたちはプレイヤーが消滅する様子を観察し、これがプレイヤーである証拠だと判断した。その後、野盗の拠点を探すことも考えたが、特に急ぐ必要はないと判断し、探索は見送ることにした。
馬車での移動と経済の考察
徒歩移動の不便さを実感したレアたちは、次の街で馬車をチャーターすることに決めた。王都へ向かう馬車に乗り、その快適さを体感した。馬車は御者のスキル「運転」によって振動が抑えられ、速度も向上していた。ライラは馬車事業の独占性について言及し、保険制度の導入によって市場の活性化を図る可能性について考察した。しかし、現状では交易を支配する方が利益が大きいという結論に至った。
王都での警戒と観光の断念
王都に到着すると、通常よりも警備が厳重になっていることに気づいた。これは書庫の盗難事件の影響だと推測された。王城には入れそうになかったため、王都観光を諦め、次の目的地へ向かうことにした。王都発の馬車は少なく、交渉の末に高額の支払いでパストまでの直通馬車を確保した。
ルート村への移動と計画
パストに到着すると、ルート村までの馬車を探したが、ドラゴンの伝承を理由に断られてしまった。徒歩での移動を決め、途中にある魔物の領域の探索も計画に加えた。ジャネットたちのように、プレイヤーに「モンスターを強化するNPC」と認識させることで、さらなる影響を及ぼすことを狙っていた。
第六章 遺跡ダンジョン
街道を進む探索者たち
街道を歩く三人は、盗賊の姿を見かけなかった。村に用がある者しか訪れないため、襲う価値が低いのではと推測する。しかし、ドラゴンの存在が盗賊を遠ざけている可能性もあると話し合った。魔物の領域が近いため、盗賊が拠点を築くのが難しいことも一因かもしれない。三人は魔物の領域まで走ることにした。
鬱蒼とした森と遺跡の発見
街道沿いの看板に従って進むと、鬱蒼とした森にたどり着く。そこには苔むした石柱や古びた石畳があり、遺跡のように見えた。ダンジョン登録されていないため、プレイヤーの姿は見当たらない。アクセスが悪く攻略の拠点に適さないため、ほとんど知られていない場所のようだった。三人は冒険を開始することに決める。
風虎との遭遇と戦闘
森を進むと、大型の猫のような魔物が現れた。ライラの『魔眼』がそれを捉え、虎の一種である「風虎」と判明する。風虎はレアに飛びかかったが、ローブが汚れるのを避けるために回避し、糸を用いたスキルで瞬時に斬り裂いた。ブランが剥ぎ取ることを考えたが、結局そのまま処理することになった。さらに進むとライラが『邪眼』を発動し、複数の状態異常をかけることで風虎を一瞬で倒した。遺跡の森には、この風虎が主要な魔物として生息しているようだった。
ペアレ王国の陰謀
かつて大陸には保管庫持ちの異邦人が大量に現れた時期があったが、すぐに消え去った。ペアレ王はこれを新時代の幕開けと捉え、新たな力を求めて探索を開始。プロスペレ遺跡に精霊王の遺産があると知り、第二王子シルヴェストルを派遣した。彼は幻獣人のスキルで魔物を『使役』し、風虎を大量に従えて遺跡の周囲を支配していた。
しかし、ある日、森に放った風虎の一部が何者かに倒される事件が発生。王城の書庫が盗まれた報せも入り、シルヴェストルは侵入者を捕らえるよう命じた。その直後、正体不明の女の声とともに意識を失い、目覚めると遺跡の壁が破壊されていた。遺跡の扉は開かれなかったが、何者かが強引に侵入し、重要なアーティファクトが奪われた可能性が高いと悟る。
遺跡内部の探索と転生の祭壇
レアたちは遺跡内部に侵入し、階段を降りて進んだ。やがて魔法照明が自動点灯し、壁が突然光り出す。これはゴーレムの防衛システムであり、壁そのものが動き出し、三人を押し潰そうとする。レアはミスリルゴーレムを召喚し、次々と敵を殲滅した。
さらに奥へ進むと、神秘的な光を放つ祭壇を発見。ライラが調べると、これは転生用のアーティファクトであり、特定のアイテムを供物とすることで転生が可能になることが判明した。ペアレ王族が幻獣人に転生したのも、これを利用した可能性があると考えられる。
王子の処遇と遺跡の支配計画
遺跡を探索した後、王子の遺体が三時間経ってもリスポーンしないことを確認し、清らかな心臓を使って蘇生。王子は遺跡の崩壊を目の当たりにし、呆然とする。レアたちは王子がリスポーンしないことから、彼の領域支配権が不明であると推測する。
その後、遺跡の防衛システムを利用し、ゴーレムを『使役』することで遺跡を管理することを決定。外の森は王子に任せ、遺跡内部はレアたちが監視する形を取ることにした。ゴーレム製造ラインの管理が難しいため、現状はそのままとするが、必要ならば祭壇へ直接アクセスできる抜け道を作る計画も立てた。
ルート村への道
翌日、遺跡の地下道を通り抜け、街道へと戻る。王子の軍勢は壁ゴーレムの攻撃を受けながら遺跡の突破を試みているようだった。道中、パストの街道に盗賊がいない理由が王子の掃討作戦によるものだと気づく。しかし、ペアレ王国の治安維持が他国に悪影響を及ぼしている可能性もあると指摘される。
やがてルート村が見えてきた。城壁のない小さな村だったが、近くにドラゴンがいるとされる山があるため、安全が保たれているのかもしれない。ペアレ王国の村の治安状況について考えながら、三人は村へと足を踏み入れた。
第七章 邪王の毒
枕蓮の嗜好とルート村での生活
枕蓮はケモ耳を愛でることを好み、ペアレ王国を選択した。初期スポーン地点は風が吹き荒ぶ草原であり、そこから山を臨むことができた。彼は山のふもとにルート村を見つけ、それを拠点とした。村は長閑でありながらも、ペアレ王国の辺境として危険視されていた。しかし実際には、魔物の脅威は見られなかった。村に城壁や騎士が存在しないため、税は軽減される一方で、国からの金銭的な援助も受けていた。その代わり、村人たちは自衛を余儀なくされていた。
村の隣にはダンジョンとされる山が存在し、魔物の領域とされていた。しかし枕蓮は、山の魔物が村へ降りてくる場面を目撃したことがなかった。伝承ではドラゴンが山を支配し、魔物たちを統率しているとされるが、誰もその姿を確認していなかった。
スローライフと農業の発展
枕蓮は村に定住し、他のプレイヤーたちと共に農業や狩猟を楽しんでいた。特に稲作に力を入れ、最初は苦戦しつつも、今では村一番のコメ農家と呼べるほどの腕前となった。ゲームの仕様上、作物の生育サイクルは短く、一年に複数回の収穫が可能であった。昼夜の寒暖差が稲作に適していることも影響し、豊作が続いた。
枕蓮たちはコメを収穫し、それを村の住民と物々交換することで食料を確保した。さらに、スパカ食堂を自ら建設し、料理を提供する場として活用していた。ペアレ王国の辺境には土地の所有権という概念が存在せず、建築も自由であったため、基礎的なスキルのみで家を建てた。農業や調理に関しても、スキルを最小限に抑え、能力値とリアルスキルで補っていた。
新たな訪問者と村人の反応
ある日、村にローブ姿の三人組が現れた。彼らはプレイヤーではなく、NPCである可能性が高かった。特に黒いローブの女性はオッドアイであり、ゲーム内のキャラクターメイキングでは選択できない特徴を持っていた。彼女たちはパストという街から来たと語り、村にドラゴンがいるという噂を聞いて訪れたと説明した。
枕蓮たちとの会話の中で、彼女たちは「妹の病を治すためにドラゴンの肝を求めている」と述べた。しかし、この発言が村人たちの逆鱗に触れた。村人たちは鍬や鎌を持ち出し、彼女たちを取り囲んだ。どうやら、村人たちにとってドラゴンは信仰対象であり、その存在を害そうとする者を許せないようであった。
枕蓮たちは村人たちをなだめようとしたが、村人の怒りは収まらなかった。しかし、ローブの女性たちは冷静であり、黒ローブのライラが邪眼の力を行使すると、村人たちは次々と力を失い、地面に崩れ落ちた。彼女は「竜神の意思を確認せずに騒ぐから罰が当たったのではないか」と挑発した。プレイヤーたちは警戒を強めたものの、村人たちは完全に無力化されていた。
村の秘密とドラゴンの実態
ライラたちは村を後にし、山へ向かった。彼女たちは、この村が辺境とされている理由について考察し、ある結論に至った。村人たちは、辺境の村として国からの援助を受け続けるために「山は魔物の領域である」と偽り、その根拠としてドラゴンの伝承を利用していたのではないかという推測である。
実際、山を進んでも魔物の痕跡は見つからず、大型生物が生息している形跡もなかった。もしドラゴンが実在するならば、その痕跡が何らかの形で残っているはずである。しかし、それすら存在しない以上、ドラゴンの伝承は村人たちが作り上げた虚構である可能性が高かった。
ライラはこの状況を利用し、新たな計画を思いついた。「村人たちはドラゴンを信仰しているのだから、本当にドラゴンを用意してあげよう。そして、この山を本物の魔物の領域にしてやれば、村の隠蔽工作を維持しつつ、国からの罰を回避できるではないか」と微笑んだ。果たして、彼女の計画がどのように展開するのかは、今後の行動に委ねられていた。
第八章 盗賊紳士と変態紳士
野盗団の壊滅と謎のローブたち
クロードとジェームズは、かつて野盗のアジトとして使っていたコテージで目を覚ました。彼らの仲間であった盗賊たちは、謎のローブ姿の三人組によって瞬く間に殲滅されていた。赤いローブが強力な魔法を放ち、ほぼ一撃で壊滅させたのだ。クロードたちはリスポーンできたが、仲間のNPCたちは蘇ることはなかった。彼らは、あのローブたちがプレイヤーなのか、それとも特殊なNPCなのかを議論した。手ぶらで歩いていたこと、圧倒的な戦闘力、そしてまるで人類に敵意を持っているかのような冷酷さから、単なるプレイヤーではなく、何か別の存在である可能性を示唆した。
盗賊稼業の転換と新たな獲物
二人は野盗団の壊滅により、盗賊稼業の継続が難しくなったことを悟った。盗賊仲間が蓄えていた戦利品を回収し、新たな生き方を模索した結果、プレイヤーを狙うPKへと転身することを決めた。彼らはキーファの街へ向かい、そこにいる適度な強さの獣人傭兵パーティーを標的にした。しかし、彼女たちはすでにクロードたちの存在に気づいており、不意打ちは通じなかった。戦闘が始まると、彼女たちは人間の武器を使うことなく、自らの腕を刃へと変化させて戦った。クロードとジェームズは一方的に蹂躙され、再びアジトへとリスポーンした。
ペアレ王国の異変と謎の三人組の影
クロードたちは、二度の惨敗を経てペアレ王国の環境があまりにも危険であることを悟り、より安全な国へ移動することを決めた。オーラル王国が最も安全そうだと判断し、そちらへ向かうことにした。その一方で、ペアレのルート村では大きな事件が発生していた。もともと伝承としてのみ語られていたドラゴンが突如現れ、村を襲撃したのだ。事件の直前には、黒・白・赤のローブを纏った三人組のNPCが村を訪れており、村人たちをデバフ効果のある能力で無力化した後、山へと向かっていた。この事実がSNSで報告され、プレイヤーたちの間で彼らが単なるNPCではなく、何らかの黒幕的存在である可能性が議論された。
謎の羅針盤と隠された目的
ヒューゲルカップの傭兵組合にクエスト報告を行ったヨーイチとサスケは、報酬として金貨と水晶の羅針盤を受け取った。この羅針盤は特定の方角を指し続ける特殊なアイテムであり、通常の鑑定アイテムでは解析ができなかった。その製作者が聖女級のNPCである可能性が考えられたが、詳細は不明のままだった。ヨーイチたちは、まずクランの結成と拠点設営のためにリフレの街へ向かうことを決め、そこで方角の変化を観察することで、羅針盤が指し示す目的地を特定する方針を立てた。
プレイヤー社会の動揺と新たな動き
プレイヤーの間では、公式イベントのランキングが公開され、多くの上位入賞者が匿名希望となっていたことが話題となった。さらに、ゲーム世界において蘇生アイテムの存在が確認され、これが戦闘における新たな戦略の鍵となる可能性が浮上した。一方で、怪しいローブの三人組に関する目撃情報が複数のスレッドで報告され、彼らが単にNPCであるとは考えにくいことが広まりつつあった。彼らの目的は未だ不明だが、ペアレ王国を中心に各地で影響を及ぼしていることは明白であった。
第九章 空中庭園アウラケルサス
トゥルードラゴンの誕生
ルート村に解き放たれたのは、マグナメルムによって生み出された新たなドラゴンであった。ベースとなったのは三〇体の真竜人であり、その力は極めて高い。アンフィスバエナが二体の真竜人を素材として二つの首を持つようになった例を考えると、新しいドラゴンに三〇本の首が生えていてもおかしくなかったが、そうはならなかった。すべての個体が同じランクに揃えられていたため、通常の素材として処理されたのであろう。
このドラゴンの種族名は「トゥルードラゴン」。その強靭な筋肉は暗褐色の鱗に覆われ、攻撃力・防御力ともに極めて高い。スキルには『飛翔』『天駆』などのドラゴン系特有のものに加え、属性耐性を貫通する『プライマルブレス』を備えていた。これは物理でも魔法でもなく、あらゆる耐性を無視する特殊なブレスである。
ライラの希望で、このトゥルードラゴンは彼女の眷属として用意された。リザードマン三〇体を『使役』し、それらを転生・融合させて誕生させたのだ。レアはその対価としてミスリルなどの素材を受け取り、十分満足していた。
ルート村での初仕事
誕生したトゥルードラゴンの最初の仕事は、ルート村への「自己紹介」だった。村の住人たちは、この地にドラゴンが現れることを長年待ち望んでいたはずだ。だが、その結果として村の人口は半減した。しかし、戦いたいプレイヤーがすぐに集まるため、人口はすぐに戻ると見込まれていた。
また、山にはライラの眷属であるスキンクが放たれた。これにより、山は魔物の領域として確立された。ペアレスキンクの繁殖も成功し、山の環境に適応しつつあることが確認された。この変異は、ペアレで転生させた影響によるものかもしれない。
プレイヤーに『鑑定』された際の不要な詮索を防ぐため、スキンクの名前も巧妙に変更された。これにより、プレイヤーたちは彼らが自然発生した存在だと認識するようになった。
ウェルス王国への圧力
ウェルス王国では、天使による襲撃が終息し、防衛隊は各地から撤収していた。これを好機と見たMPCは、王都近郊の都市グロースムントを襲撃し、制圧することに成功した。プレイヤーたちは統率された行動をとり、騎士団の防衛を打ち破った。
その後、王都防衛のために第二王子フェルディナンが近衛騎士団を率いて出撃。彼らの強さは魔物プレイヤーたちを圧倒するものであり、バンブは即座に撤退を決断した。これにより、王国へのプレッシャーをかけるという目的は達成された。
聖女アマーリエ──実際にはレアが操る存在──は、戦況を静観しつつ、王族の動向を探った。第二王子は聖教会の影響力を警戒しつつも、聖女に対して個人的な関心を持っているようだった。彼がどのような目的で聖女に接近しているのか、今後の監視が必要とされた。
天空城の再利用計画
墜落した天空城の瓦礫の中から、「壊れたマトリクス・ファルサ」という謎の装置が発見された。これを修復すれば使用可能となるようだったが、詳細は不明であった。レアはこれを研究させるため、レミーの研究室の分室を天空城跡地に設置することにした。
さらに、天空城の浮遊島を動かすため、ウルルの強化を進めた。ウルルに経験値を与え、体を大きくすることで、浮遊島の傾きを修正しようとしたのである。浮遊島がまっすぐに立てば、そこに新たな拠点を作り、プレイヤーたちを引き寄せる仕掛けを施すことが可能になると考えられた。
ユーベルの進化
イベントの経験値を活用し、レアは眷属ユーベルの強化を決意した。ライラのトゥルードラゴンを見て、対抗意識が芽生えたのである。ユーベルには賢者の石グレートを使用し、『ウロボロス』へと転生させた。
その結果、ユーベルの体はさらに巨大化し、三対の翼を持つようになった。色も灰褐色に変化し、まるで神話の存在のような姿となった。《特定災害生物「死を告げる竜」が誕生しました》というシステムメッセージが表示され、その強さが格別であることを示していた。
レアはさらにユーベルを強化しようと考え、石化能力を持つ種族の特性を組み込めないか模索した。しかし、大陸内に石化能力を持つ魔物の情報は見当たらなかったため、強化の方向性を見直すことになった。
今後の展望
ウェルス王都襲撃は失敗に終わったが、王国に対する圧力は十分にかけることができた。第二王子フェルディナンの動向を探ることが新たな課題となり、聖教会内部での監視が強化された。
一方、天空城跡地は新たな拠点としての整備が進められ、魔物プレイヤーたちの活動も本格化しつつあった。レアは各地の状況を確認しながら、次なる一手を考えていた。
エピローグ
ヴィネアの魔法訓練
ヴィネアはレアの指示のもと、『ダーク・インプロージョン』の魔法を試していた。ターゲットの岩は魔法によって跡形もなく消え去った。この訓練は、天空城の跡地に建設された城塞の庭で行われていた。撤去された瓦礫を処分する目的も兼ね、新たに習得した魔法の試し撃ちを行っていた。
天空城跡地の再建とダンジョン化計画
天空城は完全な復旧には至らなかったものの、工兵や職人たちの手によって城塞が築かれていた。かつてマトリクス・ファルサが設置されていた床は地下に存在し、そこを地下一階とする形で強固な天井が作られた。その上に新たな地上階を設置し、城塞はそれとはわずかにずらした位置に建てられた。今後、プレイヤー向けのダンジョンとして運用する際、重要施設の真上で騒がれるのを避けるための措置である。
ヴィネアの性格とレアの懸念
ヴィネアは極めて自信に満ちており、それを適切な自己評価と主張していた。彼女の態度はレアの過去の失敗を凝縮したかのようなものであり、このままではプレイヤーやNPCに敗北する可能性もあると危惧されていた。そこでレアは、ヴィネアには眷属を持たせないことを決定した。彼女は単体で十分に強力であり、配下を必要としないとの判断である。しかし、この決定に対しヴィネアは即座に納得し、自らの完璧さを誇示するばかりであった。
大悪魔としての即死魔法の検証
ヴィネアが転生した際、『暗黒魔法』ツリーに自動追加された魔法『致死』の検証は未実施であった。この魔法はINTで攻撃判定を行い、相手もINTで抵抗する仕組みである。レアはこの魔法をまだ習得しておらず、発動条件も不明のままだった。天空城にはレアの眷属しかいないため、抵抗判定を行うには適切な対象が存在しなかった。そのため、実験の必要性も薄れ、後回しとなっていた。
ヴィネアの戦闘スタイルと問題点
ヴィネアはINTとMNDに特化した遠距離狙撃型のビルドであった。そのため、戦闘が始まれば即座に遠距離から攻撃を加え、一撃で敵を倒すことが前提となっていた。しかし、それに耐えうる強敵と戦う場合、彼女自身が持ちこたえられないという問題もあった。また、悪魔の特性として隠密系のスキルにも優れていたため、慎重なビルドを施していればより安定した戦闘スタイルになっていた可能性があった。
サリーの誕生と役割
天空城にはもう一人の観察者、大天使サリーがいた。サリーはホムンクルスから転生し、天使となった後、さらに能力を高めて大天使へと至った存在である。彼女の転生は経験値の消費に比例して体格が変化する仕組みとなっており、結果として未就学児程度の姿になっていた。サリーには『神聖魔法』と『錬金』スキルが付与されており、今後は【墜ちた天空城】のボスとして配置される予定であった。
新たなダンジョンとしての計画
天空城の再建が進む中、レアはこの場所を【空中庭園アウラケルサス】と名付けた。サリーを表向きの主とし、大天使が住まう神聖な庭園としての設定を持たせた。第七災厄によって滅んだはずの大天使が再び現れたという設定は話題性があり、プレイヤーの興味を引くのに適していた。天使や大天使の性別が以前と異なっている点は不明なままであったが、それがかえって「別の大天使」である印象を強める効果を持っていた。
宣伝とプレイヤー誘致の課題
天空城が水平になったことで話題にはなったものの、プレイヤーの興味を維持するためにはさらなる宣伝が必要であった。既にSNSでは一部のプレイヤーによる報告が広まっていたが、単なる侵入難易度の上昇と見られていた。エルダーロックゴーレムの存在もまた、余計な中ボスの追加と捉えられかねなかった。ダンジョンの正式な開放とプレイヤー誘致のためには、より直接的な宣伝が求められた。
ライラとの相談の決意
この問題を解決するため、レアはライラに相談することを決めた。しかし、ヴィネアをライラに会わせることには抵抗があった。ヴィネアには天空城から決して出ないよう言い聞かせ、レアはヒューゲルカップ城へ向かうこととなった。
同シリーズ
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その他フィクション
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