どんな本?
物語の概要
『結界師の一輪華5』は、異能と和風の要素を融合させた恋愛ファンタジーである。術者の五つの家が支配する世界で、最強と名高い男が秩序を壊すために反乱を起こす。その中で、主人公・華は不穏な事件に巻き込まれ、次々と明かされる新事実に直面する。
主要キャラクター
• 一瀬 華(いちせ はな):一ノ宮家の分家に生まれた主人公。強力な式神を使役し、術者としての才能を秘めている。
• 一ノ宮 朔(いちのみや さく):一ノ宮家の当主。責任感が強く、華に対して特別な感情を抱いている。
• 槐(えんじゅ):四ッ門家の本家直系の青年。呪いの解呪を得意とし、マッドサイエンティスト的な気質を持つ変わり者。
• 四道 葛(しどう かずら):朔に「華とこの国が危機に陥ったとしたら、どちらを選ぶか?」という問いを投げかける謎めいた人物。
物語の特徴
本作は、異能と和風の世界観を背景に、術者たちの家系や権力闘争、そして主人公たちの恋愛模様が複雑に絡み合う点が魅力である。特に、五つの術者の家が揃うことで、物語は新たな展開を迎え、読者を引き込む要素が満載である。
出版情報
• 著者:クレハ
• イラスト:ボダックス
• 出版社:KADOKAWA
• 発売日:2024年12月24日
• 判型:文庫判
• ページ数:224ページ
• ISBN:9784041155370
読んだ本のタイトル
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あらすじ・内容
大ヒット中の異能×和風恋愛ファンタジー、ついに術者の5つの家が揃う!
五つの術者の家が支配する術者世界の秩序を壊すため、「漆黒」の中でも最強と名高い男が反乱を起こした。
五家に衝撃が走る中、低位の術者が妖魔にとりこまれ、命を落とすという事件が発生する。
妖魔は何者かによって故意に仕掛けられた可能性があると朔(さく)から聞いた華(はな)は、不穏な状況に警戒を強める。
その後も、術者の失踪と強い妖魔の出現が相次ぎ、次第に被害が拡大していく中、華は動物を媒体にした「呪い」が仕掛けられた場所を見つける。
そこに、呪いを得意とする五葉木の本家直系である青年、槐(えんじゅ)が現れる。
呪いの解呪に手を貸してくれた槐だが、マッドサイエンティスト的な気質のかなりの変わり者で!?
その一方で、朔は「華とこの国が危機に陥ったとしたら、どちらを選ぶか?」という意味深な問いを、葛(かずら)から突き付けられて……。
衝撃の新事実が次々と明かされる、要注目の第5巻!
感想
新たな謎とキャラクターの魅力
本作では五家の話の中で「おひい様」と呼ばれる謎の存在が登場した。
この人物が神だかが華の覚醒や朔の父が当主を降りた時期に関わる可能性が示されており、その正体が気になるところであった。
また、葛が槐を四ッ門の当主に推薦した意図や、槐のマッドサイエンティスト的な特性が物語の鍵となってるように思われる。
以上のように、物語の謎がさらに深まったことで、次巻への期待が高まった。
朔の新しい式神ユズリハ
朔が作り出した新しい式神・ユズリハは、大きなシマエナガを模した可愛らしい式神であった。
しかし、この式神が朔と華の関係を邪魔する様子に笑わせてくれる場面があった。
ピコピコハンマーより厄介かもしれないw
お陰で二人の関係が進展するかと思いきや、微妙な距離感が続いているのは少し残念であるが、ユズリハの存在が新たな日常を彩ったことは確かであった。
葛と星蘭の解放の衝撃
騒動を起こした葛と妹の星蘭が釈放された展開には驚きを隠せなかった。
千守当主と「おひい様」がその決定に関与していることが明らかになり、物語は新たな局面を迎えた。
千守当主が「運命は変わらない」と述べた意味深な発言や、葛の反乱の動機が未だに明確に語られない点が謎を深めて行く。
総括
今巻では、物語の謎がさらに深まりつつ、華や朔の周りの環境が微妙に変化した点が印象的であった。
槐という新キャラクターの登場も物語に新鮮さを加え、次巻ではその役割がどう展開されるのか注目したい。
漆黒最強の術者の葛の思惑と華の運命がどのように交錯するのか、葛の言う二者択一はどういった意味なのか?
早く続きを読みたいと強く思わせる一冊であった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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同シリーズ
その他
備忘録
プロローグ
独房への訪問と親友の再会
コツコツと響く足音が階段に響き、男は独房の前に立った。そこには鉄格子越しに、唯一の親友とも言える葛が座っていた。親しげな会話が始まる中、葛は監視の厳しい環境にもかかわらず、状況を楽しんでいるかのように微笑んでいた。槐は独房に施した呪いについて触れ、自身の技術を誇示しつつ、葛の状況を淡々と確認していた。
呪いの師と弟子の回想
二人の会話は、過去の師弟関係に遡る。槐は五葉木家の当主候補だったが、それを辞退し、呪いの研究に没頭していた。彼の教えが葛の才能を開花させ、漆黒最強と呼ばれる存在に押し上げた。しかし葛は、槐の実力を超えたと感じたことは一度もなかった。独房に施された呪いを破れない事実が、その思いをさらに深めていた。
忠告と葛の決意
槐は葛に「もう止めるべきだ」と忠告したが、葛は穏やかな笑みを崩さなかった。五葉木の当主になるという提案を槐に突きつけたが、彼は研究を優先するという理由で断った。葛は五家という体制への不満を露わにし、運命に縛られる五家の人間に嫌悪感を抱いていた。その一方で、槐を親友として何よりも大切に思っていることを告げ、決意を新たにしていた。
友情と未来への意志
葛は「この国よりも槐、あなたの方が大事だ」と明言し、強い覚悟を槐に見せた。その言葉に槐は呆れながらも苦笑するしかなかった。二人の間には独房という隔たりがあるにもかかわらず、深い友情が流れていた。そして葛の決意は、彼自身の運命を切り開く意志を象徴していた。
一章
葛の反乱と五家の衝撃
四道葛は漆黒最強と名高い術者でありながら、突如反乱を起こした。この事件は術者界全体に大きな波紋を広げ、特に彼の属する四ツ門家にとっては衝撃的な出来事であった。四道家は四ツ門家の右腕として信頼されており、裏切りは予想外であった。葛の実力と影響力は他家当主をも黙らせるほどであり、その行動に疑念を抱く者が多かった。
審議会の開始と槐の登場
五家の代表者が集まり、葛の行動を議論する審議会が開かれた。集まった当主たちの中に、五葉木槐も参加していた。彼は呪いの研究に没頭するあまり当主の地位を辞退した変わり者であり、「マッドサイエンティスト」として知られていた。槐は独自の視点で議論に参加しつつも、朔に対し何度も研究協力を求めるなど、その奇行が場の雰囲気を和らげた。
葛の拘束と挑発
厳重な監視のもとで連れてこられた葛は、漆黒最強であるにもかかわらず拘束されており、それでも堂々とした態度を崩さなかった。五家の当主たちの問いかけにも軽妙な口調で応じ、真意を掴ませない。彼の反乱の理由や動機について、当主たちは納得する答えを得られず、葛の態度に困惑するばかりであった。
三年前の出来事と華への言及
葛は自身の反乱の動機を三年前の出来事に関連付けた。彼は朔に対し、伴侶である華の覚醒の時期について問い、三年前の出来事が関係していると示唆した。その発言は朔や他の当主たちに動揺を与え、華の力の覚醒が何らかの重大な秘密に結びついていることをほのめかしていた。
未来への警告と審議会の終結
葛は朔に対し、「いつか国と華のどちらかを選ばなければならない時が来る」と警告した。その言葉は朔を不安に陥れ、審議会の空気をさらに緊迫させた。一方で、槐を当主にすることで自身の反乱を止める可能性を提案するも、それは受け入れられなかった。最終的に審議会は曖昧な結論のまま終了し、葛の真意は明かされないままとなった。
学祭後の学校修復と生徒たちの特別休暇
黒曜の第一学校は学祭の騒ぎで大きな被害を受け、一時的に休校となっていた。校舎の修復には時間がかかると予想されたが、一ノ宮家と四ツ門家の協力により、早期の再開が見込まれていた。生徒たちはこの休校を特別な休暇として楽しむ一方、事件で負傷した者たちにとっても必要な時間となった。
葛の事件とその秘匿
葛による反乱は、「彼岸の髑髏」の残党が起こしたテロとして表向き処理された。漆黒最強の術者が反乱を起こした事実は隠され、関係者の一部にのみ共有された。葛を捕縛した華も真相を知る一人であり、彼女はこの日の審議会の行方を気にしていた。
華と朔の会話と椿の騒動
華は審議会の結果を気にしつつ朔を待っていた。帰宅した朔に対し審議会の様子を尋ねたが、彼は軽い冗談で話をそらした。式神の椿が場を騒がせる中、朔は華に「子供扱い」しつつも試験について軽く叱責し、華を焦らせた。
三年前の当主交代と千守の謎
朔は母の美桜に三年前の当主交代について尋ねた。美桜は、千守の当主が訪問した後に朔の父が突然当主交代を決意したと語った。千守家は五家の契約を管理する一族であり、その存在が朔の不安を掻き立てた。
華の婚姻契約と千守の影響
朔は華に、婚姻届が五家の本家として迎え入れる契約書でもあると説明した。千守家が管理する契約は簡単に破棄できないものであり、華はこの事実に驚愕した。離婚が困難だと知った華は朔に怒りをぶつけたが、美桜の一喝で場は落ち着きを取り戻した。
望のお見合いと恋愛模様
食事の席で、美桜は望に釣書を渡し、お見合いを勧めた。望は葉月への想いを隠しきれず動揺したが、美桜に指摘されてさらに困惑した。一方、朔と華は望の恋路について小声で議論し、葉月との関係の進展の難しさを認識した。
兄弟のやり取りと朔の軽口
朔は華との軽口を交わしながら、望の恋愛事情を気にしていたが、華から「押し倒す」発言で切り返された。最終的に華がピコピコハンマーで朔を叩きつつも、その場の騒ぎは次第に収束していった。
二章
嵐の呪いの受け入れ
食事を終えた華が部屋に戻ると、嵐が呪いを受け入れた状態で待っていた。彼は動物たちを守るためにやむを得ず呪いを自らに閉じ込めたが、禍々しい気配をまとっていた。華は嵐の優しさを理解しつつも、呪いの除去が急務であると判断した。
朔の叱責と華の対応
華が嵐の呪いを取り除く際、朔が過去の呪いへの対応について問いただした。華は解呪の経験があることを認めつつも、その場を軽く流し、迅速に呪いを除去した。華の慣れた動作に朔は呆れながらも、これ以上の追及を避け、彼女の行動を黙認する態度を取った。
呪いの現状と朔の調査決定
嵐は最近、呪いの生成現場を頻繁に目撃していることを明かした。朔はこの異常事態を重く受け止め、一ノ宮当主として呪いの調査を進めることを決断した。華も嵐の優しさを認めつつ、彼が呪いを拾わないよう雅と行動を共にするよう提案した。
雅との協力と嵐の理解
華の提案により、雅が嵐と共に行動することが決まった。雅の浄化の力によって、嵐がたたり神になる事態を未然に防ぐ対策が講じられた。嵐も不満を抱きながらも、この措置を受け入れ、状況は一時的に落ち着きを見せた。
葉月からの電話と祝いの計画
その晩、華に葉月から電話がかかってきた。華と葉月の兄・柳の体調を気遣う声があり、彼の怪我が順調に回復していることが伝えられた。その後、柳が正式に一瀬家を継いだ祝いを開きたいとの提案があり、華は即座に参加を承諾した。また、葉月は朔をも招待する考えを述べ、華は渋々了承した。
朔を探しに屋敷を巡る
葉月の話を朔に伝えるため、華は広大な屋敷を探し回った。嵐の案内で進むと、途中で泣き声が聞こえ、椿が号泣している場面に遭遇した。葵はその泣き声を聞き、すぐに椿の「相手」にされることを察して逃げ出そうとしたが、雅とあずはの協力によって捕まった。
椿の「浮気騒動」
椿の話によると、朔が新しい式神を作っていることが「浮気」だと感じ、激しく泣きじゃくっていた。華は最初、椿の言葉を誤解し、朔が他の女性と関係を持っていると勘違いしたが、真相が判明し、自身の早とちりに顔を赤らめた。
華の確認と結界の謎
椿の頼みで、華は朔がいる部屋に入ることとなった。部屋には椿だけを排除するための特定結界が張られており、華はその高難度な結界に感心した。朔が新しい式神を作る理由を確かめるため、華は部屋の中へと足を踏み入れた。
式神作成の部屋と華の思い出
華は、式神を作成するための特別な部屋について、以前朔から聞いていた。普通、十歳の誕生日に術者の最初の式神を作るのが慣例であり、その日は大々的な儀式が行われる。しかし華は、覚醒後に独自の方法で式神を作成していた。通常なら力を消耗する五芒星の陣を描く際も、その注意書きを無視し、力業で葵と雅を作り上げた。その大胆さとずぼらさは、朔が聞けば呆れるどころか感心するほどであった。
朔の新しい式神の作成
華が部屋を訪れると、朔が五芒星の中心で集中し、式神を作成していた。その陣は十歳の時に用いるものよりも複雑で、術者の理想に近い式神を作るためのものであった。朔の放つ荒れ狂う力の波に華は息を吞んだ。作成が終わり、朔の手に現れたのは真っ白でふわふわした鳥であった。その愛らしい姿に、華は感嘆した。
新しい式神「ユズリハ」と朔の意図
朔は新たな式神を「ユズリハ」と名付け、偵察や情報収集のために作成したと説明した。その姿が華の予想と異なる理由について、椿が以前「かわいい」と言っていたシマエナガを参考にしたと語った。椿への配慮が込められたその選択に華は納得し、ユズリハが椿に受け入れられることを期待した。
椿の反応と葵の苦労
外で待つ椿は新しい式神を「浮気」と受け取って激しく泣いていたが、朔がユズリハを見せると、一転してその愛らしさに夢中になった。これにより椿の怒りは鎮まり、葵はようやく解放された。朔の狙い通り、椿はユズリハを可愛がることを約束し、事態は無事に収束した。
葵の被害と雅の言い分
葵は椿に振り回され、心身ともに疲れ切っていたが、雅の策略に巻き込まれたと気づいて怒りを露わにした。雅は葵を「ダーリン」と呼ばれる宿命だと諭し、事態を締めくくった。葵だけが大きな被害を受けた形で、今回の出来事は終息した。
三章
一瀬家への訪問と変化
華は葉月から兄・柳の一瀬当主就任祝いに招待され、朔と共に一瀬家を訪れた。家の雰囲気は大きく変わり、特に使用人の顔ぶれが一新されていた。両親に近しい者たちはおらず、華を親身に支えてくれた紗江が笑顔で迎えてくれた。その徹底した変化に、華は柳の意志の強さを感じた。
変わり果てた母屋の内装
母屋に入ると、内装が大幅に改装され、明るく華やかな洋風の雰囲気に変わっていた。葉月の意図で重苦しい雰囲気を払拭するための工夫がなされており、華もその変化を称賛した。過去の暗い記憶が塗り替えられたかのような印象を受け、二人の絆がさらに深まった。
華の世話を焼く紗江の存在
紗江との再会に華は感激し、紗江が自分に与えた影響の大きさを朔に伝えた。朔はその話を聞いて軽くからかうものの、華の感謝の気持ちは揺るがなかった。紗江の存在が華にとっていかに大切であるかが改めて浮き彫りとなった。
祝宴と予想外の出来事
祝宴が始まり、大量の料理が振る舞われた。華と葉月は穏やかに語らいながら食事を楽しんでいたが、柳に緊急の連絡が入り、金の術者が妖魔に襲われたとの知らせが届いた。事態の深刻さを察した朔と柳はすぐさま対応に向かい、二人を見送った華と葉月は、その後も平静を装って会話を続けた。
妖魔と華の過去
葉月が妖魔との遭遇について心配する中、華は自身が過去に頻繁に妖魔に襲われていたことを明かした。妖魔を引き寄せるほど強力な力を持つ華は、一ノ宮に嫁いでから特別仕様の車に守られていることを語り、葉月はその事実に驚いた。さらに、力を持つ子供には特別な呪具が与えられる仕組みについても触れた。二人の会話から、術者社会における特殊な事情が浮かび上がった。
術者を狙った妖魔事件の発端
華が一瀬家から帰宅した翌日、朔は沈んだ表情で帰宅した。朔によれば、術者が妖魔に襲われた事件は単なる偶発的なものではなく、何者かが故意に妖魔をけしかけた可能性があるとのことであった。華は術者を狙う犯人の存在に驚き、次の事件発生を危惧した。妖魔は柳によって討伐されたが、術者を失ったことで協会内の緊張は高まっていた。
消えゆく術者と強化された妖魔
その後、術者が忽然と姿を消す事件が相次いだ。消息を絶った術者の近くでは、強化された妖魔が確認されることが多く、討伐に成功する場合もあれば、妖魔を逃す失態もあった。次第に一色や二色の術者だけでなく、戦闘経験の豊富な三色の術者も被害に遭うようになり、事態はさらに深刻化した。
朔の苛立ちと決意
次々と舞い込む悪い報告に、朔は当主としての責任を痛感し、苛立ちを隠せなかった。夜中に三色の術者の被害報告を受け、枕に八つ当たりする朔の姿に、華は冷静に状況を見守った。犯人への怒りを募らせる朔に対し、華は軽口を叩きつつも、事態の収束を心の中で祈った。
四章
学校再開と事件の秘匿
学校が再開されたが、術者を襲う事件の情報は秘匿されていた。騒動を避けるため、生徒たちには「学祭の影響で警備が強化された」とだけ伝えられていた。華は嵐を伴い登校し、学校内では雪笹が警戒心を強めながら見回っていた。雪笹の存在により生徒たちは安堵していたが、その緊張感は周囲に恐怖をもたらしていた。
華と雪笹の対話
緊張した空気に耐えかねた華が雪笹に声をかけると、彼は警戒を少し緩めた。華は、漆黒としての責務を背負う雪笹の状況を理解しつつも、過剰な威圧感を和らげるよう促した。雪笹も自身の態度を反省し、態勢を整えた。
協会への勧誘と華の返答
雪笹は華に協会入りを勧めたが、華は即座に拒否した。術者として働く条件の厳しさや、朔に利用される可能性を理由に挙げ、現状では協会に属するつもりがないことを明言した。一方で、術者としての素質を持つ自分を自覚しており、その力を周囲を守るために使う意思は示していた。
華の意図と雪笹の洞察
雪笹は華の言動から、彼女が術者の道を完全に否定しているわけではないと感じ取った。華が多くを語らず教室へ戻る姿を見送る雪笹の表情には、彼女の未来についての思案がうかがえた。
帰り道での不安な出来事
華は事件の影響で朔の指示により車で帰宅していた。護衛のついた車内で、望が葉月の送り迎えを買って出た話題が上がり、華はその健気な行動に複雑な心境を抱いていた。望が成長しつつある姿は評価しつつも、葉月に守られる彼の姿を想像して苦笑した。
車の事故と廃墟の異様な気配
突如として車が激しく揺れ、郵便ポストへの衝突によって停車した。華や運転手には怪我がなかったが、護衛達が駆けつけてくる中、華は近くの廃墟から発せられる嫌な気配に気づいた。護衛達には気配を感じ取れなかったが、華は雅や嵐と共に廃墟内の調査を決意した。
嵐の行動と謎の人影
嵐が先走り廃墟に突入したものの、華を待って足を止めていた。華達が廃墟内に入り調査を進めると、奥に進む人影を発見した。それは葛の妹・四道星蘭であったが、追跡は失敗した。星蘭の意図は分からないまま、華は気配の原因を探ることを優先した。
護衛との交渉と調査の継続
護衛達が華を連れ出そうとするも、華は自身と式神達の力を根拠に調査の継続を主張した。説得の末、一部の護衛を伴って調査を再開することとなった。嵐を先頭に進む中、二階から動物の声が聞こえると嵐が告げた。華はその声の正体を確かめるべく、慎重に階段を上がっていった。
廃墟内で強まる不気味な気配
階段を上るごとに強くなる不気味な気配を感じつつ、華たちは警戒して進んでいった。途中で嵐が我慢できずに走り出し、あずはと雅が追いかけた。華は慎重に行動しつつも、嵐の行動を理解し、ゆっくりと奥へ進んだ。
動物を巻き込む呪いの陣
到着した部屋では、陣に動物が閉じ込められ、生命力を吸い取られる状況だった。嵐は陣を壊そうと焦るが、雅に止められる。華が護衛達に解呪を求めるも、全員が自信を欠いていたため、華自身が力技で陣を破壊し、呪いの発動を阻止した。
護衛の混乱と動物の救助
華の行動に護衛達は驚愕したが、雅の浄化によってその場の負の力は解消された。華は動物達の救助を護衛に命じ、雅と共に周囲を調査した。嵐の報告により、この廃墟に妖魔や弱った人の気配があることが判明する。
朔との緊迫したやり取り
護衛からの報告を受けた朔から連絡が入り、華の解呪行動について厳しく叱責された。華は動物を放置できなかったと反論し、さらに妖魔の存在を伝えた。朔は危険性を指摘しつつも、最終的には華の判断に任せることを認めた。
次なる行動への決意
朔からの支持を得た華は、嵐と護衛を伴って妖魔と弱った人の救助に向かう決意を固めた。電話を繫げたまま慎重に行動するよう指示を受けた華は、状況を見極めながら廃墟内のさらなる調査を進めた。
廃墟内の調査と不気味な気配
華は朔と電話を繫げたまま、護衛二人とともに廃墟内を調査していた。妖魔や呪いの気配は感じるものの、どこか特定できず、嵐も苦戦していた。華は「嵐が持ち込む呪いと似た嫌な感じ」と呟いたが、朔から「お前がおかしいと気づけ」と返される。護衛たちは、華と朔の軽口に不安と驚きを覚えつつ、冷静を装って後に続いた。
倒れていた術者と天井の妖魔
進むうちに微かな呻き声を聞きつけ、嵐が部屋に飛び込んだ。中には行方不明だった術者が倒れており、護衛たちは驚きつつ救助を開始した。その直後、天井に妖魔が張り付いているのを発見。妖魔の体には術者が取り込まれかけており、華は護衛に退避を命じ、式神たちとともに臨戦態勢に入った。
妖魔との戦闘と救出劇
妖魔は執拗に華を狙い、結界や攻撃を破壊しながら迫った。嵐が飲み込まれそうになるも、葵の大剣がそれを阻止。華は、取り込まれた人を傷つけずに妖魔を倒す方法に苦慮する中、突然現れた男性が術を使い妖魔を封じ込めた。彼は取り込まれた術者を助け出し、妖魔を一瞬で滅した。
槐との出会いと警戒
その男性は五葉木槐と名乗り、五家の一員であると明かした。華は彼の能力に驚くも、嵐を「解剖させてほしい」と申し出る槐に激怒し、式神たちとともに強い警戒心を示した。槐は妖魔と術者に関する興味を語り、さらに葛との関係について言及したことで、華の警戒心は一層高まった。
朔との信頼を問う槐の挑発
朔が到着すると、槐は「朔が華を騙している可能性」をほのめかし挑発した。華は一瞬動揺するも、朔との信頼関係を再確認し、「朔が演技してでも自分を求めるならむしろ自慢」と笑顔で答えた。その姿に槐は笑みを浮かべ、「葛が気に入るわけだ」と言い残し、場の空気をさらに掻き乱した。
朔の告白と緊迫の中断
華は廃墟での一件を終え、疲れ果てた様子でソファーに横たわった。隣に座った朔は真剣な表情で「俺は本気でお前に惚れている」と告げた。華はその言葉を信じていると笑顔で答えたが、朔がさらに距離を縮めると、部屋の空気は一気に危うくなった。しかし、窓を突き破って現れたユズリハがその場を一変させ、緊張感を霧散させた。朔は苛立ちつつユズリハが持ってきた手紙を読み、何か問題が発生した様子だったが、詳細は華に伝えなかった。
亜蔓による廃墟事件の報告
後日、廃墟での事件について報告に訪れたのは瑠璃色の術者である亜蔓だった。彼は疲労の色を濃くしながら説明を始めたが、同時にオンラインで参加していた槐が、妖魔についての研究心を語り始めた。槐の弾丸トークは次第に不穏な方向へ向かい、「犬神を取り込んだ場合の妖魔の力」に関心を示し、華の怒りを買った。
槐の不謹慎な発言と華の反発
槐は犬神を実験材料にしたいと公然と語り、亜蔓が止めようとするも、槐は全く意に介さなかった。華は怒りを露わにし、朔に「槐を呪え」と訴えたが、朔は五葉木という立場を理由に拒否した。それでも華は、「槐を嵐の前に近づけさせない」と強い決意を見せた。槐の態度は終始軽薄だったが、華の反応から二人が絶対に相容れない存在であることが明らかだった。
五章
華の上機嫌な朝とアフタヌーンティーの計画
華は、雪笹からもらった高級カフェのチケットを手に、上機嫌でホテルへ向かっていた。長らく事件が続き外出を控えていたが、朔との交渉の末、ようやく外出許可を得た。到着後、華は二条院桔梗とその護衛である桐矢と合流し、意気揚々とカフェへと入った。桔梗は華に親しげに接する一方で、彼女の親友である鈴にライバル心を燃やしていた。
四ツ門牡丹との再会と桔梗との対立
華が招待したゲストは四ツ門牡丹であった。牡丹の登場に桔梗は露骨に不満を表し、激しい言葉の応酬が始まった。華は二人をなだめつつ、三段重ねのアフタヌーンティーを楽しんだ。牡丹が話を切り出すと、相談内容は葛の現状についてであった。しかし、朔や二条院当主からも情報は知らされておらず、詳細は分からなかった。
星蘭の状況と牡丹の心配
牡丹は、葛の妹である星蘭が自身の側近から外されたことを語った。理由は、葛の事件に関連して家の責任を取る形となったためであった。星蘭は現在、学校で孤立し、心を閉ざした様子が見られると牡丹は心配していた。華は星蘭に対する牡丹の強い思いを感じつつも、具体的な状況については判断を保留した。
牡丹と桔梗の再度の衝突
牡丹が星蘭への心配を口にする中、桔梗が「思い込みではないか」と指摘し、再び二人の間に火花が散った。華は呆れながらも、そのやり取りを見守り、二人がなぜここまで仲が悪いのか、改めて不思議に思った。
妖魔事件への疑問と二条院の対応
華たちは、術者が妖魔に食われるという最近の事件について議論した。牡丹の第四学校も第一学校同様に警戒を呼びかけているが、桔梗と桐矢は呪具で自衛していると語った。桔梗は得意げに強力な呪具を披露し、牡丹と再び舌戦を繰り広げた。華は槐の研究や噂について牡丹に尋ね、彼が葛に呪いの知識を教えたという事実や、その異常な性格を改めて確認した。
星蘭の謎の行動と妖魔との関係
アフタヌーンティー後、一行は恋愛成就の神社を訪れた。その帰り、護衛たちが妖魔と戦っている現場に遭遇する。華たちは妖魔を倒すためにそれぞれ力を尽くすが、そこへ星蘭が現れた。星蘭は妖魔に近づき、その頭を撫でて従わせた。この異常な行動に牡丹は驚愕し、星蘭が妖魔を操る理由を問い詰めるが、星蘭は兄である葛への協力を明かした上で、華以外の全員を妖魔の糧とする意図を示した。
華の反撃と星蘭の動揺
星蘭の指示により妖魔が牡丹に襲いかかるが、華が結界を展開し、妖魔を封じ込めた。雅が神楽鈴を鳴らし、妖魔を完全に浄化したことで、護衛は無事救出された。星蘭は華の圧倒的な力に驚愕しつつも、悔しさをにじませる表情を浮かべてその場を後にした。
朔と柳の対峙:亜蔓の正体
亜蔓は妖魔が倒されたことを確認し、早々にその場を離れようとしたが、朔と柳に行く手を阻まれた。朔は亜蔓が妖魔を強化するために術者を犠牲にした事件の首謀者であると断じ、彼を問い詰めた。亜蔓は必死に弁解し、自分の行動は国や術者を守るための正当な研究だと主張したが、朔はそれを一蹴した。さらに、亜蔓の隠された研究室が槐によって容易に見つけられたことを聞かされ、彼は動揺した。
葛への盲信と朔の怒り
亜蔓は葛の支持を受けて行動していたことを明かし、葛が五家を不要と判断した理由を崇拝的に語った。しかし、朔は亜蔓の考え方を激しく否定し、小さな犠牲を前提とした行動と、自らの理想との違いを主張した。朔は命を懸けて全てを守り抜く覚悟を持っており、亜蔓の無責任な行動を許すつもりはなかった。
槐の追及と星蘭の関与
槐は冷静な口調ながら星蘭を巻き込んだ理由を亜蔓に問いただした。亜蔓は計画に星蘭が自ら協力を申し出たと弁明したが、その精神状態は明らかに正常ではなかった。槐の視線には強い殺意が宿っており、亜蔓をさらに追い詰めた。
亜蔓の最後の抵抗と朔の決着
亜蔓は突如として強化された妖魔を召喚し、最後の抵抗を試みたが、朔が冷静に一言「滅せよ」と命じると、妖魔は即座に霧散した。圧倒的な力を見せつけた朔に亜蔓は完全に敗北し、力なく地面に崩れ落ちた。その後、柳が亜蔓を拘束し、連行した。朔は槐の表情を一瞥しつつ、次なる動きを見据えていた。
六章
華の成長と術の習得
華は星蘭が強化した妖魔を難なく倒し、桔梗からその力について質問を受けた。華は特訓の成果であると述べたが、それはこれまでの怠惰を反省し、守るべき人々のために力を磨いた結果であった。独学と試行錯誤を重ね、妖魔を浄化する新たな術を習得した華は、精密な力の制御をもって妖魔を倒す術者へと成長していた。
星蘭の捕縛と槐の説得
護衛たちに追い詰められた星蘭の前に朔と槐が現れた。槐は星蘭に行動を止めるよう促したが、星蘭は兄である葛と槐のために行動していると主張した。その言葉には五家に対する深い憎しみと槐への特別な感情が込められていた。槐は星蘭に呪具をつけて捕縛し、彼女は自分の目的が果たされたことに満足しながら護衛に連れ去られた。
葛と星蘭の解放
その後、華は葛と星蘭がどのような処分を受けるのか気にしていたが、朔から二人が術者協会の隔離室に拘束されていると聞かされた。しかし、数日後に二人が突然解放されるという異例の事態が起こった。朔は協会や他の当主たちに抗議するも、異議は通らず、解放を決定したのは千守の当主であると知らされた。
千守当主との対話
朔は千守の当主に直談判し、葛と星蘭の解放理由を問いただしたが、「運命は変わらない」という不可解な答えを受け取った。千守当主は朔に、国と愛する者のどちらを選ぶかを問うが、朔は即答できなかった。朔の中に葛との会話で芽生えた疑問が再び蘇った。
葛の解放と槐との対峙
協会の地下で葛は槐により呪具を外され解放された。千守当主からは「余計なことをするな」と警告されたが、葛は五家や国に対する憎しみを吐露し、槐に対しても「犠牲を覚悟した五家の在り方を否定する」と語った。葛は自らの意志を示すように漆黒のペンダントを捨て去り、その場を去った。
朔と華の対話
朔は葛と星蘭の件で不満を抱えながらも、華にその心情を話す。国と華のどちらを選ぶかという問いに迷いを見せる朔に対し、華は自らを犠牲にする覚悟を語る一方で、朔にすべてを守る方法を見つけてほしいと笑顔で伝えた。その言葉に朔は覚悟を新たにし、華を守ることを誓った。
ユズリハの乱入と日常の安堵
朔と華の静かなひとときに、式神ユズリハが乱入し、部屋の雰囲気は一転した。朔は怒りを見せながらも、どこか日常の安堵を取り戻すように笑顔を浮かべた。華と朔はまた新たな日常へと戻りつつあった。
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