小説「鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々」感想・ネタバレ

小説「鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々」感想・ネタバレ

どんな本?

「鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々」は、江戸時代の山間集落「葛野」を舞台に、巫女「いつきひめ」の護衛役を務める青年・甚太と、未来を語る不思議な鬼との出会いを描いた和風ファンタジーである。
甚太は、討伐に赴いた森で鬼に出会い、その出会いが彼の運命を大きく変えることになる。

鬼人幻燈抄』は、中西モトオ 氏による日本の小説。
この作品は、江戸時代から平成まで、刀を振るう意味を問い続けながら途方もない時間を旅する鬼人を描いた、和風ファンタジー巨編。

物語は、江戸時代に家出をした甚太と妹の鈴音が元治に助けられ、彼の故郷である葛野の村で新しい生活を送ることから始まる。
甚太は村の『いつきひめ』(葛野で信仰されている土着神に祈りを捧げる巫女)を護衛する巫女守という仕事をしていたが、ある日、村の近くに現れた鬼を討伐しに出かけた際に、その鬼から鬼の能力を受け継ぎ、甚太の体も鬼となってしまう。

その後、甚太は名前を甚夜と変え、鬼となった妹を止めるために、江戸時代、幕末、明治、大正、昭和と様々な時代を鬼討伐をしながら過ごし、力を身に着けていく。

また、この作品は「Arcadia」や「小説家になろう」で連載され、2019年6月から双葉社から単行本、2021年5月からは双葉文庫から文庫版が出版されている。
そして、2024年夏にはテレビアニメが放送予定となっている。

読んだ本のタイトル

鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々
著者:中西モトオ 氏
イラスト:Tamaki  氏

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あらすじ・内容

江戸時代、山間の集落葛野には「いつきひめ」と呼ばれる巫女がいた。よそ者ながら巫女の護衛役を務める青年・甚太は、討伐に赴いた森で、遥か未来を語る不思議な鬼に出会う――江戸から平成へ。刀を振るう意味を問い続けながら途方もない時間を旅する鬼人を描いた、和風ファンタジー巨編の第一巻。 「何度読んでも号泣必至」「人生観が変わった」と絶賛の嵐だったWEB小説シリーズが、待望の書籍化! 全編改稿のうえ、書籍版番外編も収録。 さらに電子版では特別短編の「暗夜」も収録。

序 みなわのひび

江戸を出た少年・甚太と妹の鈴音は、家庭内の問題から逃れ、雨の中で途方に暮れていた。
彼らは元治という男に助けられ、元治の集落で新しい生活を始める。
元治の娘・白雪も彼らを温かく迎え入れ、新しい家族として受け入れる。

鬼と人と

江戸から離れた集落「葛野」は、良質な砂鉄を産するたたら場として知られている。
集落には「いつきひめ」と呼ばれる巫女が常駐し、火の神「マヒルさま」に祈りを捧げている。甚太は巫女守として巫女や集落を守る役割を担い、鬼を討つ「鬼切役」も務めている。

ある日、甚太は森で鬼と対峙する。
鬼は遥か未来のことを語り、甚太に追って来るよう挑発するが、甚太は冷静に戦いを続ける。鬼との戦いの中で、甚太は己の役割と使命を再確認する。

記憶と誓い

甚太は幼少期に義父である元治が鬼との戦いで命を落とす瞬間を目撃している。
その時の元治の言葉が甚太に深い印象を残し、彼の生き方に影響を与えている。
現在、甚太は巫女・白夜と共に集落を守るために尽力している。

悲劇の始まり

ある日、白夜は清正との結婚を決意する。
甚太は彼女の決意を尊重しつつも、複雑な感情を抱く。
そんな中、鬼の脅威が再び集落に迫り、甚太は鬼切役としての責務を全うするために立ち上がる。

鬼との戦い

甚太は再び森に入り、鬼と対峙する。
激しい戦闘の末、甚太は鬼を討ち取ることに成功するが、自身も重傷を負う。
鬼は死ぬ間際に未来の情景を語り、甚太はその言葉を胸に刻む。

鈴音の決意

葛野では鬼の襲撃に備えて厳戒態勢が敷かれる。
鈴音は兄・甚太の帰りを待ちながら、兄以外の人間には興味を持たず、兄の幸せだけを願っている。
しかし、兄が他の女性と結ばれる未来を想像すると、耐え難い苦しみを感じる。

最後の戦い

鬼の襲撃が集落に迫る中、甚太は鬼と戦う決意を新たにする。
彼は己の役割を全うし、鬼を討つために立ち上がるが、その過程で自身も鬼に変貌してしまう。
最終的に甚太は鬼を倒すことに成功するが、その行為が彼の運命を大きく変えることになる。

結末

甚太は故郷を離れ、未知の未来に向かって一人で歩き出す。
彼は遠く未来に鈴音と再び出会う日を思い描きながら、答えを見つけることを願っている。

感想

この本は、江戸時代の山間集落を舞台にした和風ファンタジー、甚太と鬼との戦いや、巫女としての白夜との関係が描かれている。
物語の中で描かれる人間ドラマや、鬼との対峙が非常に魅力的。
特に、甚太が己の役割を全うしながらも、鬼に変貌してしまう過程が印象的だった。
また、鈴音の兄への強い思いと、それが引き起こす悲劇が衝撃的であり、深い印象を与えてくれた。

鬼滅の刃と似ているストーリー展開だが、、
読めば全く違うと判る、ネットの公開日は此方の方が先でもある。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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その他フィクション

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アニメ

PV

MBSアニメ&ドラマ
双葉社公式コミックチャンネル

備忘録

序  みなわのひび

江戸を出た少年と妹の鈴音は、家庭内の問題から逃れ、雨の中で途方に暮れていた。
そのとき、元治と名乗る男が二人を助けることを申し出た。
この男は自分の集落へと二人を招き、元治の娘、白雪と出会わせた。
白雪は二人を暖かく迎え入れ、新しい家族として受け入れることを約束した。
この出来事は、兄と妹に新たな希望と家族の絆を与えた。

家族になることが決まった後、彼らは元治さんの家で新しい生活を始めた。
彼の奥さん、夜風さんが集落の長であるため、彼らが生活できるように取り計らった。
元治さんは剣の稽古をつけ、彼は剣術で強くなり、鈴音と白雪を守れる男になりたいと考えた。
彼と白雪は元治さんの家で毎朝剣の稽古を行い、その様子は毎日見られる光景となった。
彼は自分が変わらないと感じていたが、元治さんは彼が少しずつ変わっていると励ました。
白雪は母親と会えない寂しさを抱えており、家族が欲しかったため、新しい家族の一員を温かく受け入れた。
彼ら三人は家族としての絆を深め、共に成長していった。

元治さんに剣の稽古をつけてもらっていた幼い頃の記憶を思い出している。
彼は常に負けており、白雪に慰められていた。
稽古後には、起きてきた妹と一緒に外で遊び、三人で楽しく過ごしていた。
彼らは真の家族のように感じていたが、時間が流れて、それは遠い記憶となった。
年月が過ぎて大人になり、かつての無邪気な日々は思い出として残るのみである。
彼は選択した生き方には後悔があるものの、今更変えることはないと自らに言い聞かせている。

鬼と人と

風の薫る夜に、青年甚太は江戸から続く街道の一里塚で佇んでいる。
その時、妙齢の女が近づき、葛野の集落への案内を依頼する。
甚太は女の声を冷たく返す。
しかし、彼女の瞳が赤いことから彼女が鬼であることを見抜き、一刀両断する。
鬼は死亡し、その死骸は消え去る。
甚太は何の感慨もなく再び街道を歩き始める。
背景には、天保十一年(1840年)の大飢饉とその終焉、そして人々の心が荒れた時代が描かれている。

江戸から130里離れた山間部にある集落「葛野」は、良質な砂鉄を産するたたら場として知られており、鉄鍛冶の技術が高く評価されている。
この集落では「いつきひめ」と呼ばれる巫女が常駐し、火の神「マヒルさま」に祈りを捧げている。
甚太は、巫女守として、巫女や集落を守る役割を担っており、この役割には鬼を討つ「鬼切役」も含まれている。
巫女守は鬼を討つ技を持ち、集落では高く評価されているが、甚太自身は製鉄の才がないことから劣等感を感じている。
一方、甚太とともに巫女守の役割を担う清正は、彼に対して辛辣な態度を取り、甚太の技術を揶揄する。
しかし、甚太は巫女守としての誇りを持ちつつも、製鉄や鍛冶に対する憧れから、自身の役割に対して複雑な感情を抱いている。

遠い昔の誓いを覚えている甚太は、美しいと感じたために守りたいと願い、巫女守になった。
甚太の幼馴染であり、巫女となった白夜は、他の幸福を捨て、その気高い決意を守るために自分が刀を振るうと決めた。
鈴音は、見つかることを避けて早めに帰ることを決め、白夜と甚太は二人きりになるように配慮した。
甚太は、鈴音が自分を抑え過ぎることを心配しているが、彼女の幸せを願っている。
社に遊びに来るくらいは認めたいが、掟に背いているため肯定はできない。
会話は和やかだが、人が来たことで、白夜と甚太は巫女と巫女守の態度に戻る。
長が話を続けるために甚太に外へ出るよう命じ、白夜は甚太に社の外で控えるよう冷たく命じる。
白夜の願いを受けて、甚太は巫女守としての義務を果たすと返答する。

歳月が経ち、記憶が薄れる中でも、ある雨の夜のことは甚太にとって忘れられないものである。
葛野の高台下にある自宅で、甚太は鈴音を起こす日課を楽しんでいた。
かつて江戸で裕福な商家に生まれた二人は、母が死亡し、父による鈴音への虐待が原因で家を出た。
その夜、父は鈴音を捨て、二人は家を出て葛野に流れ着いた。
これから十三年前のことである。
現在、二人は葛野で穏やかに暮らしているが、鈴音の容姿はほとんど変わっておらず、七歳頃のままである。
この朝も、甚太はいつも通り鈴音を優しく起こし、二人で朝食をとる。
社に向かう途中、清正と遭遇し、不愉快なやり取りがあったが、清正は意外にも鈴音のために饅頭を渡す。
清正と鈴音が似た境遇にあると語り、甚太にはその気持ちが理解できないままであった。

社殿に到着した甚太は、白夜の前でひざまずき、命令を受ける。
いらずの森で怪しい影が目撃されたとの報告により、彼はその正体を探り討つ任務を命じられる。
この森は、集落の女性たちが山菜や薬草を採る場所として利用されているが、その名の由来はあまり知られていない。
案内役のちとせと共に森へ入る甚太は、昔の思い出にふけることもあった。
不穏な静寂の中、突如現れた巨大な鬼と対峙し、戦闘が始まる。
鬼は予想外の力を持ち、さらにもう一体の鬼が現れる。
二つの鬼は親しげに会話を交わし、人間の甚太を軽んじる様子を見せる。
甚太は彼らの挑発に乗ることなく、冷静に戦いを続けるが、最終的には鬼たちは去っていく。
彼らは何か未来に関わる目的で行動しており、詳細を知りたければ追って来るよう甚太に告げる。

甚太は幼い頃、義父であり剣の師である元治が鬼との戦いで命を落とす瞬間を目撃している。
その時の元治からの言葉は甚太に深い印象を残したが、その意味は今も解らないままである。
いらずの森で鬼の存在を確認した甚太は、社に報告し、集落の権威たちと共に対策を練る。
鬼の脅威に対して甚太は前線で戦いたいと申し出るが、集落を守るために留まるよう説得される。
甚太は、白夜(巫女)が統率をとる集落の会議でのやり取りを静かに見守り、彼女の決定に従う。
最終的には、白夜から重要な話があると言われ、彼女とのさらなる時間を共にすることに同意する。

白雪の母、夜風が亡くなったとき、彼女はまだ9歳だった。
父であり、巫女守でもある元治は鬼を封じるために命を落とす。こうして白雪は一人となる。
ある夜、白雪と甚太は集落を離れ、戻川を一望できる丘へ行き、川辺を眺めながら話をする。
白雪はいつきひめになると甚太に告げる。
これは彼女の家系が代々担ってきた役割であり、自然の流れであった。
しかし、巫女であった母が鬼に喰われ、その復讐のために父が命を落としたという悲しい過去を知りながら、白雪はなぜいつきひめになるのかと甚太は理解できなかった。
白雪は葛野を守るために自分が礎になることを受け入れていた。
そして、甚太にはこれから会えなくなることを伝えるが、甚太は白雪を守るために強くなり、巫女守になることを誓う。
二人は未来への誓いを共有しながら、その夜を共に過ごす。

甚太が目覚めると、妹の鈴音と思いきや、そこには普段社から出られないはずの白夜がいた。
彼女は通常とは異なる薄桃色の着物を着ており、甚太はその状況に戸惑う。
白夜は「昨日言ったでしょ」と言い、約束通りに来たと説明する。
白夜は社から出歩くことのリスクを理解しながらも、自分を知る人が限られているため、誰にも気づかれないと考えていた。
甚太は彼女が鬼に狙われている危険性を指摘するが、白夜は甚太の傍が最も安全だと反論する。
彼女は長にもこの出来事を了承してもらっており、甚太の反論を封じ込める。
白夜の計画と強引さに甚太は抗えず、彼女の傍に留まることを受け入れる。
その後、彼らは集落で一緒に朝食を取りながら過ごすが、周囲の人々は白夜の正体に気づかず、彼女は甚太と楽しげに振る舞う。
白夜は甚太の腕を取り、親しげに振る舞いながら、甚太が恥ずかしくなるほどに接近する。

葛野の茶屋を訪れた甚太は、店の娘ちとせと再会する。
彼は通常茶屋を利用しないが、白夜と共に訪れたため、ちとせは困惑する。
白夜は大量のお団子を注文するが、甚太は彼女の食べ過ぎを心配し、二本に制限する。
ちとせは、甚太の好物である磯辺餅も用意し、彼が好きだと覚えていたことに甚太は感激する。
白夜は、甚太が特別扱いされることに複雑な気持ちを抱く。
甚太は、ちとせが自分を「巫女守様」としてしか見ていないことを理解し、白夜もかつての親しい関係が変わったことを察する。
二人は、昔とは異なる立場を受け入れながら、かつての親しい関係に対する感傷を抱く。

白夜と甚太は義父母の思い出を語り合った後、特定の目的もなく集落を歩き回り、時折軽い話を交わしていた。
外を歩くこと自体が久しぶりで楽しいようで、白夜ははしゃいでいたが、過去から彼女が特にはしゃぐのは何か言いたくないことがある時だった。
夕暮れ時、二人は戻川を一望できる小高い丘へと向かった。
かつて二人が遠い未来を夢見た場所で、白夜は静かに甚太に清正との結婚を告げた。

葛野の巫女、白夜は「いつきひめ」としての義務に縛られ、清正との結婚を受け入れることにした。
彼女にとって、この結婚は葛野の未来を考えた最適な選択であり、自身も清正を受け入れる程度には想っている。
白夜と甚太は互いに好意を持っていたが、白夜はいつきひめとしての道を選び、甚太もそれを尊重する決意を固める。
二人は互いに好きであることを認めつつも、自分たちの道を選ぶことにした。
白夜は清正との結婚を受け入れ、甚太は巫女守としての役割を全うするために、それぞれの未来へと進む決心を固めた。

甚太は葛野の北に広がるいらずの森に存在する洞穴に潜む二匹の鬼を討つ「鬼切役」を命じられた。
白夜に無感情に命じられ、その役割を淡々と受け入れた甚太は、白夜が結婚予定の清正に彼女の護衛を任せ、鳥居を潜る。
しかし、清正に止められ、彼の激しい感情に対面する。
清正は甚太に対して憤りを見せ、白夜との結婚を承諾するかを詰め寄るが、甚太はすでにすべてを受け入れていると返答する。
清正とのやり取りの後、甚太は自宅に戻り、妹の鈴音に出迎えられる。
彼女との交流を通じて、甚太は彼女の不安を感じつつも、再び鬼切役へと向かうことを告げる。
鈴音は甚太の安全を心配しつつも、彼を信じて待つと約束する。

いらずの森で、甚太は鬼を討つために奮闘している。
洞穴の中で鬼と対峙し、一匹の鬼が既に葛野に向かっていることを知る。
彼は鬼と激しい戦いを繰り広げ、予測していた状況の中で冷静に対応している。
鬼の強大な腕力と戦う中で、甚太は自身の武術と剣技を駆使し、鬼の皮膚を切り裂いて戦っている。
鬼からの反撃も激しく、甚太は技を磨きながらも鬼の攻撃に対抗している。
鬼との戦いでは、甚太が攻撃を避け、反撃するシーンが何度も描かれており、最終的には鬼の致命傷を与えることに成功する。
甚太の剣技が鬼を討ち、彼はその戦いに勝利している。

甚太は、勝利したものの、深刻な傷を負っている。
鬼も死にかけており、甚太は意外にも鬼の死を惜しんでいる。
鬼は死ぬ間際、甚太に遠い未来の情景を語る。
その中には、未来で鬼神と呼ばれる王が降臨するというものが含まれている。
鬼の話には真摯さが感じられ、甚太はその言葉を信じるに足ると感じている。
しかし、甚太の傷は重く、死に瀕している。
最後の瞬間、甚太は命が尽きる中で、刀を振る理由を再び問われ、混乱と共に意識を失っている。

葛野では鬼の襲撃に備えて厳戒態勢が敷かれていた。
男達は武器を持ち警備に当たり、女子供は家に籠もっていた。
鈴音も家で兄の帰りを待っており、兄以外の人間には興味がなかった。特に、兄が他の女性と結ばれることに強い嫌悪感を持っていた。
ある雨の夜、父に捨てられた際、兄だけが鈴音を助けた。
その時から、鈴音は兄が全てであり、兄が幸せであれば自分の願いはどうでもよくなっていた。
しかし、兄と白夜が結ばれる未来を想像すると、耐え難い苦しみを感じていた。
家に帰った兄を迎えようとした瞬間、一匹の鬼が現れた。

玄関先に鬼が現れ、鈴音をじろじろと観察する。
鬼女は鈴音が将来美しい女性になることを示唆し、自身の「遠見」の能力が正確であると述べる。
鈴音はこの馴れ馴れしい態度に警戒しながらも、鬼女の話に耳を傾ける。
鬼女は鈴音と同じく鬼であることを示唆し、しかし鈴音は人であることを願い続ける。
鬼女は鈴音が兄のために人であり続けたいという願いを称賛し、鈴音がその願いを強く持っていることを知る。

鬼女は鈴音に協力を求め、そのための説得として自らの「遠見」を用いて白夜の不実な行動を見せる。
鈴音はこの情報にショックを受け、混乱するが、鬼女は白夜の行動が真実であることを強調する。
結局、鈴音は兄のために鬼女と協力する決断をし、兄との関係を守るために行動を起こす。
鬼女は鈴音との関係について考え、人と鬼の和解を願う。

白夜は社の本殿で一人立ち尽くしている。
夜が深まる中、彼女は甚太の無事を案じ、不安にかられていた。
そのとき、清正が現れ、彼との婚姻について話を持ちかける。
清正は彼女に近づき、強引に体を求める。
白夜はこれを拒むが、清正は彼らの婚姻が集落の決定であることを強調し、彼女を脅す。
白夜は内心で自分の選択を責め立てながらも、彼との婚姻を受け入れざるを得ない現実に直面している。

そのとき、鬼が侵入し、白夜と清正は突然の危機に直面する。
鬼は彼らの前で挑発的な態度をとり、二人の関係を嘲笑う。
事態はさらに悪化し、白夜は自分の選んだ道を再確認しながらも、清正との未来を悲痛に受け入れる。
最終的には、鬼によって彼らの運命が暗転することが示唆されている。

甚太は意識が混濁しており、自分が自分でなくなるような感覚に陥っていた。
誰かが甚太に刀を振る理由を問い、甚太は守りたいものがあるからだと答える。
しかし、誰かはただ甚太を憐れむのみで、何かを告げることなく消え去った。
その後、甚太は意識が白い闇に溶け、冷たい地面の感覚で目を覚ます。
奇妙な夢を見たような感覚で、暗闇に包まれた洞穴にいた。
鬼の死骸はなく、甚太は自分の命が繋がったことを知る。

急いで葛野へ向かう甚太は、速度に驚くほど自分の体調が良好であることに気付く。
しかし、社に着いたときには、多くの死体が転がり、無残な光景に直面する。
そこで甚太は鈴音が鬼に襲われた可能性を知り、急ぎ社殿に向かう。

社殿に入ると、甚太は白夜が鬼女に襲われそうになっているのを目撃する。
甚太は鬼女を斬ろうとするが、鬼女は甚太の攻撃を簡単に避ける。
激しい戦いの末、鬼女は甚太の攻撃を防ぎながらも、甚太の怒りを買い、最終的には甚太が鬼に変貌してしまう。
甚太は鬼女を倒すことに成功するが、その行為が鬼としての堕落を意味していたことに気付く。

雨の夜、自分を捨てた父と、手を繋いでくれた兄がいた。
鈴音にとって、兄の甚太だけが大切な存在であった。
しかし、兄も最終的には鈴音を捨ててしまった。
白夜が死んだ後、鈴音の残された憎悪は、裏切った全てに向けられた。
鈴音は人も国も、この世に存在する全てを滅ぼそうと誓う。
最後に兄の姿を瞳に焼き付けながら、いつか再び会うことを誓う。
去り際には、「ただにいちゃんに笑って欲しかっただけ」という想いを呟いたが、それは誰にも届かなかった。

鈴音が去った後、遠見の鬼女は力を抜き、甚太が八つ当たりする中で崩れ落ちた。
鬼女は自分が果たすべき役割を終えたことを宣言し、勝ち誇るように笑った。
白夜が死に、甚太が鬼となり、鈴音との争いが始まる。
鬼女は、発展する文明に対して鬼がついていけないと述べ、自分たちが昔話の中の存在になると予見した。
しかし、甚太には未来を守るために行動したことを告げ、その意志を強調した。
最終的に鬼女は満足感とともに消え去り、甚太は過去の行動に対する後悔と白夜への思いを新たにし、彼女の死を悼みながら涙を流した。

朝の穏やかな時間に、甚太と白雪が日常の挨拶を交わす。
甚太は白雪が去る夢を見たことを語り、それが自分にとって最も恐ろしい夢だと述べる。
二人は互いの温もりを感じながら、現実と夢の幸せについて語り合う。
甚太は常に白雪に触れたかったと語り、白雪も甚太との時間を幸せだと感じているが、彼女は甚太が常に自分の道を歩むことを知っている。
二人はお互いの存在を感じながらも、現実の困難を乗り越えることを確信している。
最終的に甚太は、夢の中で幸せな未来があったかもしれないと考えながら、現実に対峙する決意を新たにし、再び眠りにつく。

不意に目覚めた甚太は、社での一夜を振り返る。
腹の傷は治りかけており、自分が鬼になってしまったことを感じつつ、周囲には白夜の亡骸が残っていた。
夢の中で幸せな家庭生活を送る自分を見たが、夢と現実のギャップに苦しむ。
彼は自身の生き方を優先する性格を自覚し、現実を受け入れる。
去り際に鈴音の言葉を思い出し、自分が何もかも失ってしまったことに直面する。
それでも、現世を滅ぼすという鈴音の言葉に対し、何か行動を起こす必要があると決意し、社を後にする。
甚太は故郷を離れ、未知の未来に向かって一人で歩き出す。

集落の出口へと向かう途中、甚太は茶屋の前でちとせに呼び止められる。
彼女は白夜の訃報を受け、動揺していた。
甚太は、もはや何も守れなかった自分に呼び名の資格はないと告げる。
集落の人々は、守るべきものを守れなかった甚太を侮蔑している様子だった。
彼は、集落に災厄をもたらし、故郷から逃げるように離れる決意を固める。

清正との遭遇では、彼が甚太を憎んでいたこと、そして同時に白夜を深く愛していたことが語られる。
甚太は清正との共感を見出し、かつては友と呼べたかもしれないと考えながらも、その可能性を断念する。
清正からの懇願を背に江戸への道を進む甚太は、鈴音に対する複雑な感情と共に、長い旅路に出る。
彼は遠く未来に鈴音と再び出会う日を思い描きながら、答えを見つけることを願っている。
その時、彼は鬼としての憎しみを抱えつつも、人間としての感情を捨てきれずにいた。

余談  あふひはるけし

昔、ある村に住むお姫様とその護衛である幼馴染の青年がいた。
村長の息子と青年の妹もお姫様に特別な感情を持っており、複雑な関係があった。
ある日、村が鬼に襲われ、青年はお姫様を守るために鬼を討伐するが、その間に村長の息子がお姫様との結婚を強制する。
青年の妹はお姫様を責め、鬼の影響で赤い鬼に変身し、お姫様を殺害してしまう。
これを見た青年は妹を許せず、青い鬼に変身し、赤鬼となった妹と対峙する。
妹は青年に憎まれることを悲しみ、この世を滅ぼすと誓い姿を消す。
青年はすべてを失い、人間ではいられなくなり旅に出る。
彼の行方は不明だが、江戸で人を助ける剣鬼の逸話が残されており、青鬼の隣には常にお姫様の魂が寄り添っているとされる。
これは兵庫県葛野市に伝わる姫と青鬼の物語である。

短編  妬心の現身

集落の北側に広がるいらずの森が冬の訪れを告げ、甚太と白夜は寒さを感じながら社殿にいた。
二人は日常的に寒さを感じているが、特に火の神「マヒルさま」を祀る社殿は寒風が入り込むことがない。
白夜は巫女として、甚太はその護衛であり、鬼の対処を請け負っている。
天保十年の冬には集落が鬼に襲われるという事件があった。
この時、集落の長が甚太の剣の腕を称えつつ、集落を守るためにもう一人の巫女守として息子の清正を追加する提案をする。
白夜はこの提案を受け入れるが、心の中では重い感情を抱えていた。
甚太と白夜は彼女が巫女としての役割を全うし、甚太が巫女守として彼女の安全を確保するという決意を新たにした。

社で鬼切役を受けた甚太は一度自宅に戻り、妹の鈴音に迎えられる。
彼は再び出発することを告げ、妹は心配しながらも兄を見送る。
甚太は巫女守として白夜の護衛を務めており、その役割に誇りを持っているが、新たに巫女守に就任した清正については妹に言及しない選択をする。
彼は戻川に怪異を探しに行くが、怪異との遭遇はなく、再び社に戻る。
そこで清正と対面し、彼の挑発的な態度に対処しながら、巫女守としての責任を果たそうと努力する。
白夜は甚太の努力を評価し、急がずに慎重に行動するよう助言する。
甚太は再び戻川で調査を行い、清正は社での護衛を担当することになる。

清正は剣術を嗜んでいるものの、甚太と比較すると腕前は大きく劣る。 そのため、彼は鬼切役を受けることなく、甚太が集落外へ赴く際に白夜の護衛のみを務める。
これに対して巫女守と呼ぶにふさわしいか疑問を持つ者もいるが、彼は集落の長の息子であるため、公然と批判されることはない。
白夜は狙われやすい立場にあり、彼女を守る者が増えることは歓迎されるべき事態である。
しかし、甚太の心の奥では、この新たな巫女守が本当に正しいのか、という疑念が囁かれている。
甚太は猿の怪異と戦い、その最中に自身の心の隙を突かれたが、それでもなお、彼は巫女守としての自分の役割を果たすことに集中し続ける。
最終的には、この一幕が巫女守としての日常の一部として終わる。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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