小説「傷モノの花嫁2」修羅場!義母と元婚約者が登場!感想・ネタバレ

小説「傷モノの花嫁2」修羅場!義母と元婚約者が登場!感想・ネタバレ

どんな本?

傷モノの花嫁』は「かくりよの宿飯」シリーズや「浅草鬼嫁日記」シリーズの著者、友麻碧 氏による新作小説で、2023年10月13日に講談社タイガから発売された。
物語は、猩々に攫われ、額に妖印を刻まれた菜々緒が主人公。
彼女は「猿臭い」と蔑まれ、結婚が破談になり皇国の鬼神、紅椿夜行に救われ、夜行との間で恋物語が始まる。

「傷モノの花嫁2」は、和風ファンタジーとラブストーリーを融合させた作品である。
この物語は、妖怪や霊力が存在する異世界を舞台に、人間と妖怪が共存する社会を描いている。主人公である紅椿菜々緒は、「傷モノ」としての過去を持ち、その過去と向き合いながら、紅椿家の一員としての役割を果たすべく奮闘する。

物語には、妖怪退治や陰陽師といった和風の要素が取り入れられており、紅椿家という退魔の名門家系が持つ「五行結界」や「百鬼の式神」といった設定が特徴的である。また、菜々緒と紅椿夜行との愛の物語が軸となり、過去のトラウマや葛藤を乗り越えていく姿が描かれる。彼女たちが織り成す人間ドラマは、時に切なく、時に力強く、読者の心を引きつける。

読んだ本のタイトル

傷モノの花嫁
著者:友麻碧 氏

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あらすじ・内容

「猿臭い」と虐げられる日々から、夜行に救い出された菜々緒。

皇都で夫婦としての生活が始まり、愛されることを少しずつ知り始めた菜々緒の耳に、夜行の元婚約者の噂が飛び込む。

見目麗しく、世間も認める由緒正しき華族の令嬢、斎園寺しのぶ。

しかも、まだ夜行に想いを寄せているらしい。

それに比べて自分は――傷モノは、夜行の妻にふさわしいのか。

思い悩む菜々緒に、暗い影が忍び寄る。

傷モノの花嫁2

感想

菜々緒の従姉妹と白蓮寺の若様と郷の者達はザマァされたけど、産まれて来た従姉妹と若様の娘が不憫過ぎると思っていた。
そんな彼女を藤堂マリアが娘を見護らしく若干救われた感じがした。

その後は、白蓮寺の騒動を乗り越えた菜々緒が夜行を支える姿が描れており、彼女の心の成長と紅椿家での役割が分かって来た。

そんな菜々緒の前に現れる義母の朱鷺子と元婚約者のしのぶは、紅椿家の使命を理解せず、菜々緒の役割を軽視し、自分たちの常識で夜行と菜々緒を見ていた。

朱鷺子は、赤ん坊の頃の夜行が母への愛情を求める行為として、自身の血を求めることに戸惑い、遂には嫌悪して夜行を遠ざけて、たまに会うと罵詈雑言を叩きつけて夜行を傷付けていた。

しのぶは、軽い気持ちで吸血を要求して、その行為に対する拒否感を持ってしまい、夜行の前から去って行った。

しかし後からポッと出て来た(彼女たちから見て)菜々緒は、正妻として夜行を支え役割を果たし、紅椿家の者達に受け入れられることに成功した。
自身は夜行を理解せず拒否して、距離を空けた所に菜々緒が入って来たように感じ面白く思わなかったのかもしれない。

そんな菜々緒に噛み付いて来た彼女たちは、自身の家の地位でしかアイデンティティを持てず、紅椿家の使命を理解しようとしなかったため、その認識の歪みが夜行と菜々緒を傷つけていた。

ただ、夜行と菜々緒を理解している人たちは、大きな使命を持つ2人を擁護するシーンもあり。
特に病院で会って親しくなった香代が、白蓮寺で菜々緒が作っていた料理を褒めるシーンと、夜行の弁当の御相伴になった隊員達が料理を喜んで食べ。
込められてる霊力の強さに驚くシーンは、菜々緒の日々の努力が報われる気もした。

その香代はしのぶの母方の祖母であったらしく、彼女を嗜めたのだが…
それにショックを受けたしのぶは、使用人の武井に渡された霊具で、菜々緒に妖をけしかけたが自身も妖に襲われた事にショックを受け、話から脱落して終わる。

ただ、巻末で義母の朱鷺子が、しのぶの使用人だった武井と裏取引しており。
なかなに怪しい動きをしているのが不穏であった。

次巻の展開はどうなるのか、非常に気になる終わり方をしていて、次の巻の発売が待ち遠しく思っている。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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『結界師の一輪華』はクレハ 氏によって書かれた日本の小説で、契約結婚から始まる異能と和風の要素が組み合わさったファンタジー。

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この作品は、落ちこぼれの術者である18歳の一瀬華(いちせ・はな)が主人公。

彼女は、柱石を護る術者の分家に生まれ、幼い頃から優秀な双子の姉・葉月(はづき)と比べられ、虐げられてきた。

ある日、彼女は突然強大な力に目覚めるが、静かな生活を望んで力を隠し、自らが作り出した式神たちと平和な高校生活を送っていた。

この物語は、日本が遥か昔から5つの柱石により外敵から護られているという設定の中で展開。

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時の皇帝・高峻がある依頼のために烏妃の元を訪れ、この出会いが歴史を覆す禁忌になるとは知らずに進行するという物語。

また、この小説はメディアミックスとして、2022年10月から12月までテレビアニメが放送されていた。

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『花菱夫妻の退魔帖』は、白川紺子 氏による大正九年の東京を舞台にしたファンタジー小説。

物語の主人公は、侯爵令嬢でありながら下町の浅草出身の瀧川鈴子。

彼女の趣味は怪談蒐集で、ある日、花菱男爵家の当主・花菱孝冬と出会う。

孝冬は鈴子の目の前で、十二単の謎の霊を使い、悪霊を退治する特異な能力を持っている。

鈴子は孝冬から求婚され、二人は結ばれることになる。

この物語は、逃れられない過去とさだめを背負った二人の未来が描かれている。

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『わたしの幸せな結婚』は顎木あくみ 氏による日本の小説。

この作品はもともと小説投稿サイト「小説家になろう」で公開されたオンライン小説で、KADOKAWAの富士見L文庫より2019年1月から書籍化された。

書籍版のイラストは月岡月穂 氏が担当。

この小説の物語は、超常的な力を持つ異能者の家系が存在し、長女の美世は異能を持たない家系に生まれてしまう。

美世は幼い時に母を亡くし、異母妹の香耶が生まれたことから居場所を失い、使用人以下の扱いを受けながら成長。

2023年3月時点で、シリーズ累計発行部数は700万部を突破しており、高坂りと 氏によるコミカライズも連載中。

さらに、朗読劇、映画、テレビアニメといったメディアミックス展開も行われている。

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わたしの幸せな結婚 1

その他フィクション

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フィクション あいうえお順

備忘録

第一話  七月の知らせ(漫画 4巻 13話)

極東の島国・大和皇国では、人とあやかしが開国を巡って争ってから約五十年が経過していた。暦は太陰暦から太陽暦に変わり、人々は西洋文化を受け入れながら文明開化を享受していた。華やかな皇都を魑魅魍魎から守護するため、陰陽五家と呼ばれる一族が編み出した「五行結界」が存在していた。

陰陽五家の頂点である紅椿家は、百鬼の式神を従える退魔の名門であった。その紅椿家の朝は早く、夜のお務めに出陣した者たちはまだ寝ていたが、女中や使用人たちは夜明けと共に目を覚まし、仕事を始めていた。紅椿家の紅椿菜々緒は、陰陽五家の花嫁のお務めの一環として「朝餉」の準備を始めた。

陰陽五家において、朝餉は重要な「儀式」であり、食事の質が一日の質を左右するため、最も「陰の霊力」の高い女性が準備をするのが習わしであった。この日は鮎があり、菜々緒は鮎を炭火で焼いて朝餉を用意した。紅椿家の若きご当主である夜行様は、朝餉の時間ギリギリまで寝ていたが、この日は珍しくすぐに起き、鮎の香りを楽しんでいた。夜行様は鮎の塩焼きを美味しそうに食べ、菜々緒に感謝を伝えた。

菜々緒は過去に辛い経験をしていた。彼女は白蓮寺の里で猿面をつけさせられ、言葉を発することを禁じられていた。彼女の額に刻まれた妖印が理由で、里では「傷モノ」と蔑まれ、人々から酷い扱いを受けていた。そんな彼女を救い出したのが紅椿夜行様であった。菜々緒は、今では夜行様と過ごす日々に幸せを感じており、毎朝の朝餉を通じて夜行様を支えていく決意をしていた。

鮎を供したその日の昼、菜々緒と夜行様は西洋喫茶カフェ・カメリアに立ち寄った。ここは夜行様の行きつけの喫茶店であり、菜々緒の通院帰りに立ち寄っていた。菜々緒はこの喫茶店で、西洋のお菓子や料理を初めて知ることが多かった。

その日、菜々緒は緑色の飲み物を見て驚いた。西洋風のグラスに注がれた緑色の液体には泡が浮かび、上にはアイスクリームとさくらんぼが載っていた。見たことのない飲み物に、菜々緒は夜行様に尋ねた。夜行様はそれを「メロンソーダ」と呼び、菜々緒に試してみるよう勧めた。菜々緒は飲んでみたが、炭酸の刺激で驚き、夜行様を見上げた。夜行様は菜々緒の反応を楽しみながらも謝った。

その時、夜行様の背後に見知らぬ若い殿方が現れ、夜行様はその殿方を「幸臣」と呼び、彼を問い詰めた。幸臣は陰陽寮四番隊所属の翠天宮幸臣と名乗り、夜行様の古い仲間であると自己紹介した。彼は菜々緒に対して礼儀正しく接し、陰陽寮での出来事についても言及したが、夜行様にすぐに引き離された。

幸臣は、病院でお世話になっている翠天宮英世先生の息子であると判明した。彼は白蓮寺の里に行っていたと語り、菜々緒はその話に驚いた。夜行様と幸臣は個室に移動し、幸臣は白蓮寺家が陰陽五家から降格されたことについて説明した。

幸臣は、白蓮寺家が転落し、暁美が罪人として追放されたこと、そして次期当主だった麗人が乱心していることを伝えた。菜々緒はその話を聞いて感情を抑えつつ、幸臣に続けて話してもらうよう求めた。幸臣は、白蓮寺の里で見てきたことを正確に記録していたと説明し、暁美の追放から始まる出来事を話し始めた。

六月某日、白蓮寺の里門で白蓮寺暁美は里から追放されることになった。彼女は抵抗しながらも、男たちに引きずられて里の門から放り出された。暁美は里の人々に対し怒りを表し、全ての罪を自分に押し付けて白蓮寺が許しを請うことを非難した。そして、門の内側にいる白蓮寺麗人を指差したが、麗人は菜々緒の名前を呟いており、暁美に興味を示さなかった。

白蓮寺麗人の母である白蓮寺富美子は、暁美に怒りをぶつけつつも、それ以上言葉を続けることができなかった。暁美は助けを求めるように家族を見たが、彼らは視線を逸らし、娘をかばうことを避けた。暁美は、里の人々の憎悪を感じながらも、この里に留まることができないと悟った。

暁美の娘である琴美はその場にいなかったが、白蓮寺家の当主・白蓮寺清人は琴美を大切に育てると告げた。暁美はそれを信じず、琴美が冷遇されると考えた。白蓮寺の隠居・白蓮寺間人は暁美に対し、里を去るよう命じ、門を閉じるよう命じた。暁美は門が閉じる直前に「お前たちも同罪だ」と呪いの言葉を吐き、罪人として里を追放された。

同日、白蓮寺の里の大通りには多くの陰陽寮の人々が駐在しており、その中でも一際目立つ藤堂マリアが部下を引き連れていた。彼女は藤堂家が五家に返り咲いたことを喜びつつ、結界守りのために派遣されていた。白蓮寺の人々にとって、彼女のような強い女性に指示されることは屈辱であった。

その時、白蓮寺麗人が菜々緒を探して里を出ようとし、白蓮寺の人々がそれを追いかけた。藤堂マリアは麗人の状態を見て、彼が菜々緒に対して強い感情を持っていることを知った。麗人は猿面によって元婚約者への感情が抑えられていたが、その反動で廃人同然になっていた。

白蓮寺の女たちは、麗人や暁美の娘である琴美の世話を任されていたが、彼女に対して良い扱いをするつもりはなかった。琴美は陰陽寮の保護を受ける可能性があった。

六月某日、白蓮寺本家の人々が集まり、藤堂マリアに対する不満を抱いていた。白蓮寺清人は、麗人が正気に戻ることを願っていたが、麗人は突然刃物を持って現れ、父親に斬りかかった。結果として、白蓮寺本家の屋敷の一部が火事で失われた。

白蓮寺家は大火災で混乱の渦中にあった。屋敷は焼失し、当主は息子に斬られ、奥様は心身を病んで床に伏し、ご隠居は足を骨折したという。若君は一時的に座敷牢に収容されていた。白蓮寺家の混乱はしばらく続くと見られた。

菜々緒はこの状況に対し、喜ぶべきか悲しむべきか分からず、因果応報や呪術の反動、人間の恐ろしさに震えた。彼女は琴美の今後を心配していたが、八番隊隊長の藤堂マリアが彼女のことを気にかけていると聞き、安心した。藤堂マリアは琴美をしっかり見守るだろうと夜行様と幸臣様は話した。
(漫画版の琴美の将来の姿(予想)がツボ)

幸臣様は白蓮寺暁美が皇都の中心部には入れないように術がかけられていると説明し、菜々緒は少し安堵した。彼女は白蓮寺家の状況を聞き、幸臣様に感謝した。幸臣様は次の任務に向かうため、部屋を後にした。

その際、幸臣様は紅椿鷹夜殿が婚約するという情報を伝えた。婚約相手は夜行様の元婚約者である斎園寺しのぶ嬢であった。この情報に夜行様は険しい表情を浮かべたが、どこか寂しげな様子も見せた。菜々緒はこの状況に不安を覚えた。

第二話  夏の鳥(漫画 4巻 13話、14話)

夏のある夜、菜々緒は夜行が大怪我をして陰陽寮の隊員に連れられて帰宅したことを知り、驚いた。夜行様は菜々緒に「近寄るな」と告げ、怪我の手当てを受けて眠りについた。夜行様の怪我は数日で治ると聞かされたが、菜々緒は心配でその夜一睡もできなかった。

翌朝、菜々緒は庭で草むしりをして不安を紛らわせていた。そこへ河童たちが現れ、頭のお皿が乾いて死にそうだと騒ぎ始めた。菜々緒は急いで水をかけて河童たちを助けた。その様子を見ていた猫の面をつけた式神が、菜々緒の働きぶりを称賛した。

猫の面の式神は、夜行様が怪我をした原因について、華族を守るためだったと説明した。華族は陰陽界では重要だが、紅椿家は華族の中では位が高くないため、陰陽寮は彼らを守る必要があると語った。菜々緒は夜行様が皇都の人々を守るために命を賭していることを理解し、彼が安心して過ごせるよう邸を整えようと決意した。

その時、菜々緒と猫の面の式神の背後に紅椿鷹夜が現れた。鷹夜は猫の面の式神に罰を与えたと言い、菜々緒を見下して侮辱的な言葉を放った。そこに夜行様が現れ、鷹夜を制止したが、鷹夜は夜行様に対しても侮辱的な発言を続けた。

その後、夜行の母である紅椿朱鷺子が現れ、菜々緒との結婚を認めないと告げた。菜々緒は朱鷺子から見下される視線を受け、世間からはまだ受け入れられていないことを悟った。

日差しの強い庭先での議論は埒が明かず、夜行様の提案で洋館の応接間に移動した。応接間で夜行と菜々緒は隣り合って座り、向かいに鷹夜と朱鷺子が座った。

夜行様は母である朱鷺子に対し、自分たちの結婚を認める必要はないと言い切った。彼は紅椿家の当主であると主張し、父親の許可も得ていると述べたが、朱鷺子は次男である夜行が当主になることを認めなかった

朱鷺子は皇家の血が傷モノの娘によって汚されることを嫌悪し、菜々緒を侮辱し続けた。夜行様はそれに対し、菜々緒との結婚を一切後悔しておらず、彼女と出会えたことを最も幸運なことだと断言した。

鷹夜は菜々緒を側室にすることを提案し、正妻にするならば当主の座を鷹夜に譲るべきだと言った。夜行様はそれを馬鹿げていると一蹴し、朱鷺子が愛息の鷹夜を当主にしたいだけだと批判した。彼は退魔の一門としての紅椿家を守るために、先陣を切って戦場に出られる者が当主であるべきだと述べた。

朱鷺子は、傷モノである菜々緒が正妻になることを拒絶し続けたが、夜行様は彼女を正妻として扱う決意を崩さなかった。朱鷺子は、椿鬼である夜行様を産んだこと自体を恥と感じており、その憎悪を露わにした。

菜々緒は朱鷺子の言葉に反発し、夜行様が皇都の人々を守っていることを誇りに思うべきだと主張した。彼女の言葉に朱鷺子と鷹夜は驚愕し、朱鷺子は激昂して菜々緒に扇子を投げつけた。扇子が菜々緒の口元を傷つけたが、菜々緒は動じず、朱鷺子に対して穢れが移ることを皮肉めいて言い放った。

菜々緒は朱鷺子たちに引き取るよう求め、夜行様の復帰を待ち望む声があることを伝えた。朱鷺子と鷹夜はその場を去り、菜々緒は自分が夜行様のために怒ったことを実感しながら、静かにその場に立っていた。

鷹夜と朱鷺子が客間を去った後、夜行様は菜々緒の怪我を心配した。夜行様は、自分を庇えなかったことを詫びたが、菜々緒は大した怪我ではないと伝えた。夜行様は自分の母である朱鷺子が昔から彼を疎ましく思っていることを話した。菜々緒は、夜行様が命を懸けて戦っているにもかかわらず、彼を認めようとしない朱鷺子に対して悔しさを覚え、涙を流した。

夜行様は、菜々緒が自分のために涙を流してくれることで報われていると語り、彼女を優しく拭った。その後、夜行様は具合が悪くなり、床に横たわった。彼の高熱を心配する菜々緒の元に、鬼の式神である前鬼が現れた。前鬼は、夜行様が母親である朱鷺子を苦手としていることを呪いのように語った。

菜々緒は、夜行様が吸血を試みた様子を見て、自分の血を提供することを望んでいたが、前鬼は、夜行様が彼女の血を求めすぎて命を危険にさらす可能性があると説明した。前鬼は、椿鬼の本当の怖さを菜々緒に伝えつつ、彼女の気持ちを理解した。

その後、菜々緒は後鬼から、夜行様と朱鷺子、鷹夜の不仲の理由を聞いた。朱鷺子は長男の鷹夜を当主にしたがっていたが、椿鬼が生まれた場合は無条件で次期当主になるという紅椿家のしきたりがあり、これが争いの原因であった。

さらに、後鬼は朱鷺子が皇家の血を引いているため、彼女が自分の要望を押し通そうとする理由があることを説明した。菜々緒は、夜行様が皇家の血を引いていることを理解し、彼の過去についてもっと知りたいと考えた。

その時、紅椿夜一郎が現れ、夜行様の過去について話すと申し出た。夜一郎は朱鷺子が最初は朗らかな姫君だったが、次男の夜行が椿鬼であると分かってからは彼を憎むようになった理由を語った。夜行様は生まれながらにして椿鬼の呪いを背負い、母から疎まれていたことを菜々緒に伝えた。

第三話  夜行、過去の夢を見る。(漫画 4巻 15話)

陰陽五家の頂点である紅椿家は、退魔の名門として数多くの妖怪退治の逸話を持っている。最も有名なのは、家名の由来となった八百年前の「大椿鬼絵巻」というお伽話である。かつて「大椿鬼」という血吸いの悪鬼が皇都を襲い、人々を恐怖に陥れた時代があった。伝説によれば、初代当主の夜市がこの悪鬼を討ち、皇都の人々を救ったとされているが、実際には違っていた。初代当主は「大椿鬼」を討伐できず、その身の内に封じ込めることで人々を救ったのである。これが紅椿家の始まりであり、退魔の名門の物語はめでたしめでたしとは終わらなかった。

その後、紅椿家には「大椿鬼」の呪いが降りかかり、定期的に吸血体質を持つ男児が生まれるようになった。この吸血体質を持つ男児は「椿鬼」と呼ばれ、高い霊力、異常な戦闘能力と治癒能力を有するが、女の血を飲まなければ生きていけない。紅椿家はこの呪われた子を退魔の英雄として利用し、悪鬼悪妖を退治させることで皇都に貢献し、一族の力を強化してきた。しかし、その陰では椿鬼の妻として血を絞り取られる女性たちが多くいたのである。

紅椿夜行は、約二十五年前に「椿鬼」として一族の呪いを背負って生まれた。彼の母親は、吸血体質を持つ夜行を「化け物」と呼んで遠ざけ、拒絶していた。母親は陰陽五家のしきたりや紅椿家の事情に疎く、皇家の娘として何も知らないまま紅椿家に嫁いできたためであった。彼女は自分の胎からこんな化け物を産んでしまったことに怯え、絶望していた。

夜行がどれだけ多くの人々を救い、命を賭して皇國を守っても、母親は彼を産んだことを悔やみ続けた。母親にとって、夜行は自分の幸せな人生を壊した「敵」であり、認められることは一生ないだろう。幼い頃、夜行は母親に拒絶されることが辛かったが、今では慣れてしまった。

椿鬼にとって、母親は血を分け与えてくれる大切な存在であるが、夜行の母親は彼を拒絶し、兄の鷹夜に愛情を注いでいた。夜行が母に撫子の花を贈ろうとした時、母親は「化け物」と罵り、花を払い落として彼を遠ざけた。兄の鷹夜も、夜行を嫌い、母親に依存していた。

紅椿家では、長男の鷹夜が母親の意向で過保護に育てられる一方、父親は椿鬼である夜行を鍛えるために厳しい稽古をさせた。父親の愛情は時に厳しかったが、夜行には妹たちが支えとなった。妹たちは紅椿の女らしく強く育ち、夜行の体質にも理解を示した。

紅椿家の家族は昔から分断されており、溝を埋めることはできなかった。母親は、自分と鷹夜の立場を守るため、夜行が紅椿家の当主にならないよう画策したが、父親は断固として夜行を当主にすると決めていた。最終的に、父親が「紅椿の当主は夜行だ」と宣言し、母親と鷹夜に出て行けと言い放った。母親は最後に「お前なんて、さっさとあやかしに殺されてしまえ」と夜行に叫んだ。

夜行は嫌な夢から目覚めた。汗をかいて気分が悪く、魘されていたようである。菜々緒は泣きそうな顔で夜行の顔を覗き込み、彼の高熱を心配して寝ずに付き添っていた。夜行は自身の回復力を得意げに語ったが、菜々緒は彼の痛みを思い涙を流した。夜行は菜々緒の愛おしさを感じ、彼女に血を吸ってもよいか尋ねた。菜々緒は喜んで了承し、夜行は彼女の首筋から血を吸った。

菜々緒は痛みを我慢し、夜行の吸血を受け入れたが、涙をこぼした。夜行は彼女の涙を拭い、彼女が自分の痛みを思って泣いてくれることに感謝した。菜々緒は、吸血を受けることに幸せを感じると言い、夜行は彼女の愛情を奇跡のように感じた。彼は菜々緒を大事にし、彼女の古傷を癒やしたいと思った。

夜行は、母親の朱鷺子からの拒絶に慣れていたが、菜々緒の愛情に救われていると感じた。彼は菜々緒を抱きしめ、彼女が最も大事な存在であることを伝えた。翌朝、夜行の見舞いに陰陽寮の弐番隊が訪れた。隊長の緑川蓮太郎は、夜行の怪我が長引くと聞いていたが、彼が元気そうで安心した様子であった。

蓮太郎は最近のあやかしが女性を優先して狙う傾向について話し、人間の女性がいなくなる現象が神隠しと呼ばれることを語った。霊力の高い女性がいなくなることで、後にあやかしを脅かす強い子供も生まれなくなる可能性があるため、あやかしが女性を狙う理由は明確であった。彼らは菜々緒が用意したぼた餅を食べ、その霊力の高さに驚いた。

菜々緒の料理は彼女の努力と真心の賜物であり、非常に美味であった。夜行は菜々緒の才能と努力を誇りに思い、彼女の力が認められることを喜んだ。彼にとって菜々緒は特別な存在であり、彼女の愛情に感謝していた。

紅椿菜々緒は、陰陽寮の方々にお茶と茶菓子を出した後、紅椿邸の式神たちにもぼた餅を振る舞った。彼女は、陰陽寮の人々に出すことになるとは思わず、緊張していたが、みんなが美味しく食べてくれているか心配していた。後鬼さんと猫さんは、菜々緒のぼた餅が絶品であると称賛し、みんなが驚いているだろうと語った。

菜々緒はこのぼた餅が、白蓮寺の里に代々伝わるもので、旦那様の無事を祈って花嫁が儀式の手順を踏んで作るものだと説明した。彼女は、あやかしと戦い、大きな怪我を負うこともある夜行が無事に戻ってくることを願い、ぼた餅を用意していた。

裏  斎園寺しのぶ、夜会にて再会する。(漫画 4巻 15話)

斎園寺しのぶは、大和皇國の名家、斎園寺公爵家の令嬢であった。彼女は紅椿鷹夜と婚約していたが、過去には紅椿夜行と婚約していたことがあった。ある夜会で、しのぶは鷹夜の名前が話題に上る中、かつての婚約者である夜行を思い出していた。彼女は夜行との婚約破棄の理由を考え、「痛かった」とつぶやいたが、周囲にはその意味が理解されなかった。夜会中にあやかしの襲撃が起こり、夜行がしのぶを救った。

夜行がしのぶを助けたことで、しのぶは再び彼に惹かれるようになった。彼女は婚約者の鷹夜が危機に直面した際に自分を守らなかったことを見て、夜行への気持ちを再確認した。そして、しのぶは公爵令嬢としての立場を利用し、夜行との結婚を再び望むようになった。彼女はこの再会が運命であると信じ、夜行との結婚を果たすことを決意した。

第四話  弁当騒動(一)(漫画 4巻 16話)

菜々緒は朝の支度中に、夜行の活躍が新聞の一面を飾っていることを知り、感動した。夜行は前夜の華族の夜会で悪妖を退治し、新聞記事によれば被害者は出なかったという。菜々緒は、夜行が英雄であると改めて感じ、彼のために心を込めて朝食を準備した。しかし、夜行は急な会議のために食事を取れず、菜々緒に弁当を作ってもらうよう依頼した。

菜々緒は朝食用の料理に加えて弁当用の料理も準備し、四段重ねの豪華な弁当を作った。彼女は少し張り切りすぎたと感じたが、後鬼や猫たちから励まされ、夜行が喜んでくれると信じた。前鬼からは、菜々緒の作る料理が夜行の調子を良くしていると聞かされ、彼女の料理が夜行を守っていると知り、陰陽寮に弁当を届けることになった。

紅椿夜行は、朝からの会議で疲れていたが、一息つこうとしているところへ、妻の菜々緒が弁当を届けに来た。菜々緒の料理は陰陽寮の隊員たちにも好評で、彼女の真心が込められた弁当を皆で楽しんでいた。しかし、そこへ斎園寺しのぶが現れ、自分の婚約者である鷹夜を差し置いて夜行に接近した。彼女は高級食材を使った弁当を持参してきたが、菜々緒の料理に対する批判的な発言で場の雰囲気を悪くした。

夜行はしのぶの申し出を断り、菜々緒への愛情を示しながら彼女を庇った。陰陽寮の中庭で、夜行は菜々緒に「自分の妻でいてくれてよかった」と伝え、彼女を安心させるために優しく抱きしめた。夜行は、菜々緒が日々の中で何不自由なく過ごせるように、彼女を守る決意を新たにした。

第五話  弁当騒動(二)(漫画 4巻 16話 5巻 17話?)

菜々緒は陰陽寮本部からの帰り道、元婚約者の斎園寺しのぶから、夜行との吸血にまつわる過去を聞かされて混乱していた。しのぶは菜々緒を側室と見なしていたが、菜々緒はその誤解に困惑した。後鬼の助けを借りてその場を離れた菜々緒は、夜行としのぶの過去を考え続け、不安を抱えたまま陰陽寮付属病院へ向かった。

病院の診察後、菜々緒はレンガの歩道で転んでいた初老の女性・香代を助けた。彼女は、菜々緒が嫁いだ紅椿家に縁のある人物であり、白蓮寺出身の親戚もいた。香代は菜々緒が白蓮寺出身であることを知り、ぼた餅の作り方を教えてほしいと願い出た。菜々緒は香代と再会の約束をし、白蓮寺の伝統料理を伝える機会を楽しみにしていた。

菜々緒は、陰陽寮本部からの帰り道、伯爵家の香代と会ったことを思い返しながら、夜行に迷惑をかけていないかと不安を感じていた。後鬼に安心させられたものの、香代が斎園寺しのぶの祖母であることを知り、再びしのぶのことを考え込んでしまった。

その日の夕方、体調を崩した菜々緒を心配して夜行が見舞った。菜々緒はしのぶから聞いた吸血の過去に心を乱し、夜行に確認したい気持ちと恐れが交錯していた。夜行は過去の出来事を正直に話し、しのぶとは家同士の縁談による婚約だったことを伝えた。しのぶとの吸血が原因で婚約が破棄されたこと、当時の苦悩を語り、菜々緒を安心させようとした。

菜々緒は、自分が夜行にとっての花嫁であることを再確認し、彼の優しさに触れて心を落ち着かせた。自分の存在意義を見出すためにも、夜行の血を受け入れる役目を果たしたいと強く感じていた。しかし、しのぶが持っている背景や過去の婚約者であった事実が、菜々緒の心に影を落としていた。彼女は、自分を選んでくれた夜行の愛情を信じつつも、過去の出来事に揺れる自分を恥じていた。

第六話  菜々緒、義兄と話をする。

数日後、菜々緒は夜行が重要な任務に当たっているため、紅椿邸に戻ることがあっても忙しさからすぐに陰陽寮本部へ戻ってしまうため、共に過ごす時間が少なかった。皇都では令嬢を狙ったあやかし騒動が続いており、菜々緒自身も外出を控えるように言われていた。

この日、菜々緒は猫の要望で朝からぼた餅を作り、紅椿家の菜園で夏野菜の収穫を手伝っていた。菜園には西洋野菜も多く育っており、菜々緒は初めて見るトマトに興味を持ち、後鬼に勧められて試食した。後鬼はトマトの酸味と霊力豊富な食材としての価値を説明し、菜々緒は夜行との食事でチキンライスの味を学んだことを思い出した。

作業中、鷹夜が現れ、菜々緒に新聞を見せた。新聞には「令嬢と英雄結婚間近か」との見出しで、夜行としのぶが並ぶ写真が掲載されていた。鷹夜は、元婚約者と夜行が結婚するという記事を見せつけるように話した。菜々緒は突然の知らせに戸惑いを覚えた。

数日後、菜々緒は鷹夜に冷茶と茶菓子を出し、鷹夜はそのぼた餅を評価した。鷹夜は、夜行がしのぶの護衛をしていることを話し、しのぶが大きな影響力を持つことを伝えた。彼女が夜行の正妻になろうとしている可能性を示唆し、菜々緒にそのことをどう思うか問いかけた。菜々緒は、夜行が自分を捨てることはないと信じていると答えた。

鷹夜は、菜々緒の驚異的な霊力に気づき、彼女に新しい霊具「籠目玉」を渡した。籠目玉は霊力を持たない人間でも使用できる霊具であり、あやかしから身を守るためのものであった。菜々緒は籠目玉を高く評価し、鷹夜の研究を称賛した。

鷹夜は、自分が紅椿家の当主になることができない理由や、陰陽寮での役割について語った。彼は、菜々緒が紅椿家の花嫁にふさわしいと認め、朱鷺子に菜々緒を認めさせようとすることを約束したが、その難しさを述べた。最後に、鷹夜はしのぶが夜行の正妻の座を狙っていると警告し、菜々緒に注意を促した。

菜々緒は鷹夜と話した後、彼が朱鷺子のいない場では常識的であることに気づいた。後鬼は、鷹夜が朱鷺子の影響下で育ちながらも陰陽学の研究で才能を発揮していると説明した。鷹夜の研究が役立っていることを菜々緒が見抜いたことに対して、後鬼は菜々緒を褒めた。

鷹夜は朱鷺子の強い影響下にあり、家族のバランスを取るために彼女を支えていると後鬼は述べた。菜々緒は鷹夜の研究を純粋に評価し、それが鷹夜に認められる要因となったと考えた。後鬼は、鷹夜の最後の言葉が余計だったと指摘した。

夜行が戻らない夜、菜々緒は紅椿家の複雑な家族関係を考えながら、香代のためにぼた餅の作り方を記していた。彼女は夜行が無事に戻ることを願いながら、同じ月を見上げているかもしれないと考えた。

裏  斎園寺しのぶ、公爵令嬢のお気に召すまま

皇都の人々は、しのぶと夜行が婚約するという噂をしていた。しのぶは夜行との婚約を新聞が取り上げることを喜んでおり、これが現実になると信じていた。しかし、実際には紅椿家の夜一郎がしのぶとの縁談を拒んでおり、夜行は白蓮寺家の娘、菜々緒を正妻に迎えていることを知った。

しのぶは、菜々緒が傷だらけの娘で夜行に相応しくないと感じており、彼女がいなくなれば自分が正妻になれると考えていた。従者の武井は、菜々緒を異国へ売り払う計画を提案し、笛を使って実行する方法を教えた。しのぶは迷いながらも、菜々緒を排除するために笛を使うことを考え始めた。

裏  武井、真夜中の廃神社にて。

武井という男は、表向きは斎園寺家の使用人であったが、裏では殺し屋や売人として活動していた。彼は夜中に高貴な身分の婦人を連れ、寂れた神社に向かった。婦人はしのぶの暴走を放置することに決めたが、武井がしのぶを煽っていることを理解していた。

神社で武井は婦人に「蠱毒」という禁術を用いた壺を見せた。壺には低級のあやかしが閉じ込められ、共食いさせることで力をつけさせていた。武井はこのあやかしを使い、金になりそうな娘を攫わせていた。婦人は紅椿夜行を殺せるあやかしがいるかを問い詰めたが、武井はしのぶの動きを見てからと応じた。

その婦人は朱鷺子であり、紅椿夜行の母であった。彼女は自分の望みを叶えるために息子を殺そうとしていた。武井は、蝶よ花よと育てられた令嬢たちの歪んだ願望を利用し、朱鷺子やしのぶを操ることを考えていた。

第七話  ご武運を

夜行様が任務に出ていたため、屋敷に戻れない日が続いていた。早朝、廊下を歩いていると、台所の隣の休憩室から女中たちの声が聞こえてきた。彼女たちは新聞に載った夜行様としのぶの婚約記事について話していた。菜々緒がその場に現れると、女中たちは気まずそうにしながらも新聞を見せた。

新聞には、夜行様としのぶの写真とともに婚約の祝福が報じられていた。菜々緒は新聞をじっと見つめ、皆の気遣いに感謝しながら「私は大丈夫です」と微笑んだ。写真の中の夜行様は疲れているように見え、菜々緒は彼の体調を心配した。

そんな中、後鬼が菜々緒に提案した。「今日は金曜日ですから、病院のついでに陰陽寮に夜行様へお弁当を届けましょう」と。菜々緒は後鬼の提案を受け入れ、夜行様に会いに行くことを決めた。彼女は誕生日に贈られた洋服を着て、髪を整え、馬車で陰陽寮に向かう準備をした。久しぶりに会える夜行様を思い、胸が高鳴った。

紅椿夜行は、斎園寺しのぶの護衛を命じられ、彼女の護衛任務を遂行していた。しのぶは公爵令嬢でありながら、あやかしに襲撃された経験があっても危機感がなく、自由奔放に振る舞っていた。しのぶは夜行に、自分たちの婚約が新聞で取り上げられたと嬉しそうに話したが、夜行は「自分には妻がいる」と言い切った。しのぶは側室を受け入れると言ったが、夜行はその提案を拒否し、新聞記事も訂正させるつもりだと告げた。

しのぶが夜行に抱きつき、血を捧げると言い出したところに、菜々緒が現れた。彼女は夜行の様子を心配して弁当を持って来たが、しのぶはその弁当を邪魔だと言い放った。夜行はしのぶに冷たく言い放ち、菜々緒の弁当を受け取った。菜々緒は夜行を信じていると伝え、涙を浮かべながらも彼を励ました。

夜行は菜々緒を抱きしめ、彼女の血を欲しいと告げ、二人は隣の部屋に移動した。しのぶは不満げに立ち尽くしていた。

第八話  伯爵夫人のお茶会

紅椿夜行は菜々緒を執務室の隣の書斎兼仮眠室に連れて行き、彼女に心配をかけたことを謝罪した。夜行は、しのぶと一緒にいる時間が長かったため、菜々緒に不安を抱かせてしまったと感じていた。菜々緒はしのぶに嫉妬していることを告白し、夜行に吸血の夢を見たことを打ち明けた。

夜行は菜々緒に対し、彼女以外の女性から吸血したいとは思っていないと伝えた。実際、しのぶに吸血を求められたが、彼女の血を欲しがることはなかったという。夜行は菜々緒の首筋から吸血し、その後彼女に籠目玉の使い方を確認した。

夜行は、菜々緒の安全を第一に考え、彼女に籠目玉を肌身離さず持つように指示した。菜々緒の健康を守るために通院を続けるようにと告げ、籠目玉に何かあった時は必ず助けに行くと約束した。

夜行は菜々緒を休ませるように指示し、任務に戻る前に菜々緒の手に口付けをして彼女を安心させた。菜々緒は夜行の無事を祈りながら、彼の帰りを待つことにした。

菜々緒は目覚めると、夜行の上着が掛けられているのに気づいた。後鬼は彼女が目を覚ますのを待っていた。後鬼は菜々緒に、夜行が彼女に会えて嬉しそうにしていたことを伝え、弁当を大事に持って行ったと話した。菜々緒は夜行のために来たことが報われたと感じた。

後鬼に髪を整えてもらい、二人は陰陽寮の付属病院に向かった。そこでは綾小路香代と待ち合わせており、彼女は足の怪我から快復しつつあった。菜々緒は香代にぼた餅を持参し、香代はそれを喜んで受け取った。菜々緒はぼた餅の作り方を記した雑記帳を香代に手渡し、香代はそれを感謝した。

香代の孫、綾小路真澄も現れ、菜々緒のぼた餅を試食した。香代は真澄について話し、彼が霊力が高いことを説明した。菜々緒は自分の体験をもとに真澄の健康を心配し、彼に優しく注意を促した。

診療の時間が近づくと、菜々緒は香代と真澄に別れを告げた。香代は紅椿家に迷惑をかけていることを謝罪し、菜々緒を自宅に招待したいと伝えた。菜々緒は診察に向かうために病院を去った。

裏  斎園寺しのぶ、現実を知る。

斎園寺しのぶは、以前紅椿夜行との婚約を破棄したが、夜行が英雄として名声を高める姿を見て、再び彼との結婚を望んでいた。お茶会でしのぶは夜行との婚約が進んでいると周囲に話したが、綾小路伯爵夫人の綾小路香代と孫の真澄は、しのぶに対し夜行との結婚を諦めるように警告した。

香代はしのぶが紅椿家にふさわしくないことを指摘し、菜々緒が夜行の正妻として既に適任であると語った。しのぶが菜々緒を嘲笑した際、香代は厳しい態度でしのぶを叱責し、彼女の自己中心的な性格を非難した。しのぶは周囲からの失笑を浴び、香代の説得により、自分が紅椿家の花嫁には適さないことを認識せざるを得なくなった。

裏  夜行、戦いに備える。

紅椿夜行と緑川蓮太郎は、斎園寺しのぶの夜会参加に備えた警備の準備をしていた。夜行はしのぶとの婚約記事に不満を抱きつつ、妻の菜々緒のことを考えていた。そこへ、綾小路真澄がしのぶの行動を謝罪し、彼女が菜々緒の過去を広めたことを伝えた。しのぶが姿を消したことで、夜行と蓮太郎は警戒を強めた。

しのぶは隠し通路を使って伯爵邸から脱出し、その隙にあやかしたちが屋敷を襲撃した。夜行と蓮太郎は、あやかしがしのぶの脱走を狙っていたことを察し、事態の収拾に動き出した。

第九話  たとえ私が見初められなくても

菜々緒は、毎週金曜日に通院をし、その後病院の近くで買い物をしていた。ある日、橋の上で斎園寺しのぶを見つけた。しのぶは裸足で、髪も乱れており、様子がおかしかった。菜々緒は後鬼と共にしのぶに近づき、声をかけた。しのぶは菜々緒に対して敵意をむき出しにし、彼女が夜行との結婚を妨げていると責め立てた。

しのぶは突然笛を吹き、あやかしを呼び寄せた。あやかしたちは菜々緒としのぶを狙い、周囲は混乱に陥った。しのぶはあやかしに捕まりそうになり、助けを求めた。菜々緒は鷹夜からもらった籠目玉を使って小結界を展開し、しのぶを守った。

後鬼は結界内で自由に動き、あやかしを倒したが、しのぶは再び笛を吹き、あやかしを呼び寄せた。菜々緒は笛を取り上げようとし、しのぶと揉み合いになった。しのぶは夜行が自分を守らないことに腹を立て、彼を責めたが、菜々緒は夜行がすべての人々を守るために戦っていることを理解し、しのぶを叱った。

しのぶは夜行を愛しておらず、ただ自分の欲望を満たそうとしていることが明らかであった。菜々緒はしのぶが夜行の花嫁にふさわしくないと断言した。

菜々緒は、しのぶに突き飛ばされて籠目玉の結界から追い出され、猩猩という巨大な猿の姿をしたあやかしに襲われた。恐怖で体が動かず、絶望的な状況に陥ったが、そこへ夜行が現れ、猩猩を一瞬で倒した。夜行の指揮の下、紅椿家の式神たちは悪妖たちと戦い、陰陽寮の隊員たちも加勢した。

戦いが落ち着いた後、夜行はしのぶに対し、笛を使ってあやかしを呼び寄せたことを問いただした。しのぶは従者の武井のせいにしようとしたが、夜行の冷淡な視線に恐れを抱いた。夜行は、菜々緒を傷つけたことを決して許さないとしのぶに宣言し、彼女を厳しく非難した。しのぶは、夜行の強い否定に恐れおののき、その場に崩れ落ちた。最終的に、しのぶは綾小路真澄と陰陽寮の隊員たちに連行され、夜行は菜々緒を守り続けることを誓った。

第十話  凜然と咲く野花

菜々緒は悪夢にうなされて目を覚ました。夜行様が心配そうに傍に付き添い、水を飲ませてくれた。彼女はあやかしの襲撃の後、高熱で二日間うなされていたことを知る。しのぶの従者、武井が意図的に猩猩を差し向け、菜々緒を襲わせようとしていたことが明らかになった。夜行様は、自分がもっと彼女の側にいるべきだったと悔やみ、謝罪した。

菜々緒は自身がかつて攫われた猩猩ではなかったと知り、妖印が消えていないことに動揺した。彼女は過去の恐怖を思い出し、心の中で夜行様に助けを求めてしまった自分を責めた。恐怖は体に染みついていて、どうしても消えない。夜行様は菜々緒を強く抱きしめ、彼女が無事で自分の妻になったことが何よりも嬉しいと告げた。

菜々緒は自分が夜行様の花嫁にふさわしくないのではと悩んだが、夜行様は彼女を引き止め、彼女を愛していると伝えた。夜行様は菜々緒の心の傷を理解し、彼女に対する深い愛情を表現した。菜々緒は夜行様の言葉に涙を流し、彼の腕の中で弱さをさらけ出した。夜行様は彼女の弱さを受け入れ、震えと涙が止まるまで寄り添ってくれた。

菜々緒は湯浴みを終えた後、後鬼に手伝ってもらいながら心身を落ち着かせた。後鬼は菜々緒が危険な目に遭ったことを謝罪し、自分を不甲斐なく思っていたが、菜々緒は後鬼が自分としのぶを守ろうとしてくれたことを感謝していた。後鬼は式神が五行結界内で多くの制約を受けることや、武井が術を熟知していたことを説明した。

その後、夜行が菜々緒のために邪払柚子の雑炊を用意して待っていた。夜行が作った雑炊は、妖気に当てられたときに体調を整える効果があるとされている。菜々緒はその香りに食欲をそそられ、夜行の愛情を感じ取った。涙を流しながらも、夜行の優しさが心に染み渡り、次第に心身が癒やされていくのを感じた。

菜々緒は、過去の傷があっても、愛情と温もりがあればその傷が癒やされることを実感した。夜行自身も傷を抱えているため、傷の癒やし方を知っていると菜々緒は再確認したのだった。

菜々緒は朝、元気になった姿を見せて夜行を驚かせた。彼女は夜行の献身的な看病のおかげで回復したと感謝を伝え、過去の恐怖を乗り越えて夜行を支えたいと決意を新たにした。

朝食後、夜行は斎園寺しのぶの事件について菜々緒に説明した。しのぶは陰陽寮の尋問で、殺し屋として雇われた武井と公爵家の繫がりを自白した。武井は公爵の命令で暗殺を行い、さらにあやかしを使って皇都の娘を攫っていた。陰陽寮は武井を拘束しようとしたが、すでに逃亡していた。武井は人身売買を行い、菜々緒も標的にしていたことが判明した。

夜行は、菜々緒を傷つけたことを後悔し、彼女を安心して暮らせる居場所を作ると約束した。彼は菜々緒に陰陽寮で護身の術を学ぶことを提案し、菜々緒はそれを受け入れた。彼女は夜行を守るために強くなりたいと願い、共に生きる決意を新たにした。

夜行は菜々緒を宝物として大切に思っており、彼女が自信を持って生きることを願っていた。菜々緒も夜行を大切に思い、彼に愛情を伝えた。彼女は夜行の側にいたいと願い、彼を支える覚悟を持っていた。二人はお互いを大切に思い合い、共に歩んでいくことを誓った。

裏  武井、欲しいものがある。

人間にとって長らく五行結界の外のあやかしが敵であったため、一介の呪術師が結界内であやかしを使って人間を襲わせていることが盲点であった。武井は朱鷺子と墓地で密会し、紅椿夜行を殺すための化け物を依頼されたが、結局失敗に終わった。武井は、菜々緒を攫って五行結界の外におびき出し、大妖怪と戦わせるつもりであったが、夜行の迅速な行動によって阻止された。

武井は朱鷺子の指示に従いながら、菜々緒を狙い続けることを考えていた。彼は菜々緒に刻まれた妖印について、天狗が関与している可能性を指摘し、その背後にある秘密を探ろうとしていた。朱鷺子は夜行を憎んでおり、彼を殺すための強力な化け物を用意するよう求めたが、武井にとってそれは優先度の低い依頼であった。

武井は朱鷺子を利用して手に入れたいものがある一方で、紅椿夜行への敵対を避けようとしていた。朱鷺子の夜行への殺意は、いずれ彼に届くか、あるいは自らの破滅を招くかのどちらかであると考えつつ、武井は自分の目的のために次の手を考えていた。

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こも

いつクビになるかビクビクと怯えている会社員(営業)。 自身が無能だと自覚しおり、最近の不安定な情勢でウツ状態になりました。

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