どんな本?
『薬屋のひとりごと』は、日向夏 氏による日本のライトノベル作品。
中世の後宮を舞台に、薬学の専門知識で事件の謎を解く少女・猫猫(マオマオ)の物語。
小説家になろうで連載されているほか、ヒーロー文庫からライトノベル版が刊行されている。
また、月刊ビッグガンガンと月刊サンデーGXでコミカライズ版が連載されており、2023年にはテレビアニメ化も決定している。
月刊サンデーGXの方が、中華の雰囲気が強く、文化の小さい部分にも気をつけているように感じている。
読んだ本のタイトル
薬屋のひとりごと 4
(英語: The Apothecary Diaries、中国語: 药屋少女的呢喃)
著者: #日向夏 氏
イラスト: #しのとうこ 氏
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あらすじ・内容
大人気ミステリー早くも第4弾。幽霊、逆子、拉致…怒濤の展開から目が離せない !
壬氏が宦官ではないと知ってしまった猫猫。
後宮内で皇帝以外のまともな男がいるのはご法度、それがばれないようにどきどきする毎日を過ごす。
そんな中、友人の小蘭が後宮を出て行ったあとの就職先を探していることを知る。
猫猫と子翠はそんな小蘭のために伝手を作るために後宮内の大浴場に向かう。
その折、気弱な四夫人里樹妃が幽霊を見たという話を聞いてそれを解決すべく動き出す。
一方、翡翠宮では玉葉妃の腹の子が逆子だとわかる。
ろくな医官もいない後宮でこのまま逆子を産むことは命に関わると、
猫猫は自分の養父である羅門を後宮に入れるよう提案するが新たな問題が浮上する。
後宮内で今まで起きた事件、それらに法則があることに気が付いた猫猫はそれを調べようとして――拉致される。
宮廷で長年黒く濁っていた澱(おり)、それは凝り固まり国を騒がす事態を起こす。
感想
4巻の主な出来事は以下の通り。
• 母親に迎合する子供
子供は母親の感情に合わせて行動し、感情を抑える術を身につける一方、幼少期から化粧を強いられ、操られる窮屈さを感じていた。
• 小蘭の将来の模索
後宮での生活が終わる小蘭は、将来に不安を抱き、猫猫に相談する。猫猫は花街の仕事を提案しつつも、より安全な選択肢を模索した。
• 宦官の増員とその背景
後宮で新しい宦官の増員が噂される。これらの宦官は元奴隷で、異民族から救出された者が多いと判明した。
• 三姉妹との交流
新入りの三姉妹との交流を深めるため、猫猫は湯殿で赤羽を脱毛の仕事に誘い、共に作業を行った。
• 幽霊騒動の真相
里樹妃が見た幽霊の正体は、水路の湯気と母親の形見の銅鏡による錯覚であることが判明し、騒動は解決した。
• 医局での新宦官の噂
猫猫は新しい宦官の人気ぶりや、不正を防ぐための選定基準について知る。壬氏はこの状況に興味を示していた。
• 小蘭の失態と氷菓の解決策
小蘭が氷を落とす失態を補うため、猫猫は壬氏の協力を得て氷菓を作り、問題を解決した。
• 逆子の妊娠と対策
猫猫は玉葉妃の逆子を診断し、自身の養父を後宮に招くことで、妊娠のケアを提案した。
• 羅門の提案と教育改善
羅門は後宮の教育改善を提案し、猫猫は手習所での書き取り練習の実施を手伝うことになった。
• 翠苓との出会いと蘇りの薬
翠苓が「死んだ」とされていた女官であることが判明し、猫猫に蘇りの薬を提案してきた。
• 壬氏と後宮の危機
壬氏は後宮での不正行為と楼蘭妃の行方不明を調査し、不正の証拠として金銭出納帳を確認した。
• 狐の里と新たな体験
猫猫は翠苓に連れられ狐の里に到着し、祭りの準備や異文化の生活を体験した。
• 楼蘭妃の行方と陰謀
楼蘭妃が行方不明となり、侍女が妃として振る舞う問題が発覚。壬氏は解決のため調査を続ける。
• 狐の祭りと信仰の体験
猫猫は子翠と共に狐神を信仰する村の祭りに参加し、火祭りの儀式を通じて村の伝統と団結を体験する。
• 翠苓との対立と田んぼの異常
猫猫は翠苓に蘇りの薬の真実を迫るが進展せず、響迂の助けで田んぼの異常や実験の痕跡を発見する。
• 砦への移送と楼蘭の正体
猫猫は砦に連れて行かれ、楼蘭(子翠)が高貴な身分でありながら普通の娘であることを知る。神美による罰が迫る。
• 壬氏と子一族の謀反への対策
壬氏は羅半から砦の拡張と謀反の可能性を伝えられ、狐軍師の助言を受け、軍事行動を決意する。
• 蛇や毒虫に囲まれる罰と猫猫の強さ
猫猫は蟇盆という罰を受けるが、蛇や毒虫に恐れず、逆に活用して状況に対応する。
• 楼蘭の決断と砦の破壊
楼蘭は母からの虐待に抗い、砦を爆破して人々を救う計画を進めるが、自身の運命に従い孤独に歩む。
• 壬氏の進軍と子昌の討伐
壬氏は砦を攻撃し、楼蘭の家族に決着をつける。楼蘭は壮大な演出で最期を迎える。
• 猫猫と壬氏の感情の深化
猫猫と壬氏は互いの傷や感情を確認し合い、絆を深める。壬氏は猫猫への特別な想いを明確にする。
• 都での新たな生活
玉葉妃の東宮お披露目後、猫猫は薬屋での平穏な日々を送りながら壬氏と再会し、再び親しい関係を築く。
• 玉藻の登場
露店で物々交換をする玉藻が描かれ、後宮での贅沢な生活と彼女の素朴な姿が対比される。
総括
子翠の正体が楼蘭???
あの虫大好きで、猫猫と小蘭と中級、下級妃にマッサージしてた小翠が??
キャラクターが全然違うじゃないか!!
そこまで化けるのかよw
そして猫猫も拉致されて、監禁されてるのに薬草の本を渡したら寝食を忘れて没頭し、子翠に身の回りの世話をされるのが、、
上級妃に何をさせてるんだよww
それを何にも構えないでお互いにフォローし合っているのが良い関係だった。
最後は爆発させて、行方不明になるのが何とも残念だが、最後に玉藻と名乗って船に乗る、、
玉藻で船となると倭国か?
あの玉藻御前か?
なんとも波瀾万丈な、、
そして、猫猫も羅門と交代で花街に戻る、記憶を無くしたクソガキを連れて、、
子供達は誰も亡くなって無いのが良かった。。
最後に猫猫パピー羅漢と猫猫の大叔父、羅門との関係が凄かった。
まさか、貴族達が恐れる狐、羅大尉があそこまで言う事を聞く大叔父、羅門って凄い人じゃ?
猫猫の育ての親だし、、
この辺りから猫猫の親族、羅の一族の話が出て来たんだな。
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備忘録
序 話
母との日々と感情の学び
母が朗らかに笑うとき、子はそれを「笑うところ」と覚えた。母が父に憤るとき、子は一緒に顔をしかめた。母が侍女を折檍するとき、子はただ傍観するようになった。母の視線を感じ、監視されていると知った子は、母の感情に合わせて振る舞うことで母の怒りを避けようとした。
化粧と仮面の自覚
五つの頃には唇に紅を引かれ、十になる前にはおしろいを施されていた。眉を描かれ、眦を染められた姿は仮面のように感じられた。自分の手足には見えない糸が繋がり、それを母が操っているような窮屈さがあった。しかし、その窮屈さを受け入れることで平穏を保てると信じ、人形のようであることに安心を見出していた。
無力感と悟り
母の醜さが止められないことに気付いたとき、子はそれが無駄な努力であると悟った。どんなに仮面を被り、人形のように従順であっても、母が変わることはなかった。その気付きは遅く、子にはなすすべもなく、すべてが無駄であったと結論づけるほかなかった。
一話 湯殿
働き口を探す小蘭の悩み
小蘭は後宮での年季明けを控え、次の働き口を探していた。彼女は猫猫に助言を求めたが、猫猫は花街の緑青館を提案するのを躊躇していた。そこが厳しい労働環境であることを知っていたためである。代わりに猫猫は他の案を模索し、子翠が意外な提案をする。
大浴場での新たな挑戦
子翠の提案で、猫猫たちは後宮の大浴場を訪れた。妃や上級女官たちが集う露天風呂で、按摩を手伝うことにした。初めての経験ながら、猫猫は持ち前の器用さを活かして妃たちに満足を与えた。さらに、糸を使った脱毛技術が侍女たちに好評を得た。これにより、彼女たちは一時的に収入を得る機会を得た。
湯女としての労働と収穫
湯女の仕事は重労働であったが、猫猫たちは次々と訪れる客を丁寧に世話した。その結果、小さな報酬やお礼を受け取ることもあった。特に小蘭は甘いものを貰うことで幸福を感じ、子翠も手際よく仕事をこなしていた。
後宮の噂と妃たちの動向
大浴場では、妃たちの懐妊に関する噂話が飛び交っていた。玉葉妃や梨花妃の話題に加え、新たに楼蘭妃の懐妊も取り沙汰されていた。猫猫はこうした情報を集め、玉葉妃への報告に役立てるつもりでいた。
宦官に関する話題
後宮では宦官に関する話題も上がっていた。新たに入ってきた宦官たちは元奴隷である可能性が高く、彼らの過去には討伐や救出劇が絡んでいると考えられた。小蘭はその中の宦官に興味を示したが、猫猫は壬氏を思い出し、内心複雑な気持ちでいた。
里樹妃の登場
猫猫は浴場に入る里樹妃とその侍女頭を目撃した。普段はあまり姿を見せない彼女が現れたことで、猫猫の関心が引かれた。彼女の登場が今後の展開にどのような影響を及ぼすのか、猫猫の中で考えが巡った。
二話 赤羽
饅頭を囲む三人姉妹との会話
翡翠宮の休憩時間、猫猫は新入りの三姉妹と共に饅頭を食べていた。三人は白羽、黒羽、赤羽という名前で、猫猫はその特徴を頼りにようやく名前を覚えたばかりであった。彼女たちは猫猫に、なぜ翡翠宮に仕えているのか問いかけ、特に白羽は玉葉妃との信頼関係を疑問視していた。猫猫は毒見役としての立場を説明しつつ、湯殿での作業に三女の赤羽を誘い、姉妹の了承を得て共に向かうこととなった。
湯殿での仕事と赤羽の葛藤
湯殿に到着すると、赤羽は浴衣を脱ぐことに恥じらいを見せた。子翠の軽い悪戯で赤羽は仕方なく前掛け姿となり、猫猫たちと共に妃たちの世話に取り掛かった。初めての作業で緊張する赤羽であったが、猫猫の指導で香油を塗り、妃の肌を整える作業に取り組んだ。猫猫は赤羽の恥じらいを気にしつつ、次々と客をこなしていった。
里樹妃との偶然の出会い
作業の合間に猫猫は、湯殿に迷い込んだ里樹妃と侍女頭を見かけた。里樹妃は慣れない様子で、滑りやすい床に足を取られそうになっていた。猫猫は脱毛の技術を試すため妃を誘い、丁寧に処置を施した。処置後、里樹妃は驚きながらも満足そうな様子で、肌が整ったことを喜んでいた。
幽霊の噂と妃たちの不安
里樹妃が大浴場を訪れた理由について、侍女頭は金剛宮の湯殿で幽霊が出ると話した。その噂に妃と侍女頭は恐怖を感じ、大浴場に避難してきたのだという。猫猫は侍女頭の説明を聞きながら、幽霊の正体について興味を抱き、湯殿での仕事の合間に思索を巡らせていた。
三話 踊る幽霊
幽霊騒動の発端
猫猫は赤羽と共に金剛宮を訪れた。里樹妃が幽霊を見たという訴えに基づき、壬氏が調査を命じたのである。里樹妃の証言では、湯殿で人影を見たというが、それがどのようなものであるか詳細は不明であった。
物置と風呂場の調査
調査を進めた猫猫は、物置の湿気が壁を腐敗させ、隙間が生じていることに気づいた。その隙間から漏れる湯気が帳を揺らし、幽霊のように見える原因を生んでいた。また、湯船の底の排水口やその位置関係が、見間違いを起こしやすくしていると推測された。
幽霊の正体
猫猫は物置にあった古い銅鏡を発見した。この鏡は光を当てると壁に像を映し出す「魔鏡」であり、それが幽霊の正体であることが判明した。鏡に映る顔は里樹妃の亡き母に似ており、妃は涙ながらにそれを抱きしめた。
侍女との対立
その後、侍女たちの中で里樹妃を軽んじる態度が明らかになった。ある侍女が鏡を取り上げようとしたが、里樹妃は奪い返した。この様子を見ていた壬氏は、侍女の不敬を非難し、彼女たちの立場をわきまえるよう釘を刺した。
壬氏の決断と収束
壬氏の威圧的な態度により侍女たちは沈黙し、幽霊騒動は終息に向かった。里樹妃は母の形見である銅鏡を大切に抱え、平穏を取り戻した。猫猫は壬氏の冷静な対応を目の当たりにし、その一連の行動に内心で畏怖を抱いていた。
四話 噂の宦官
医局での麻酔薬の研究
医局では猫猫が麻酔薬に適した薬草を調べていた。その横では、子猫の毛毛がやぶ医者の足に絡みつき、小魚を奪っていた。やぶ医者との会話の中で、宦官が後宮に入る際の検査方法について議論が交わされた。触診による確認が行われていることを知った猫猫は、自身の疑念を深めたが、その後話題は新しい宦官の話へと移った。
新入り宦官の話題
やぶ医者は、最近後宮に入った若い宦官たちの話を語った。その中でも特に整った顔立ちの者が注目されていることが判明した。元は奴隷であり、過去に酷い折檻を受けていたことから、身体の左側に麻痺が残る彼の姿は、他の宦官や女官たちの興味を引いていた。
壬氏と高順の会話
執務室での壬氏と高順の会話では、壬氏が猫猫に自身の秘密を伝えるべきか迷っている様子が見られた。高順は、羅漢という人物の存在にも触れつつ、壬氏に早急な決断を求めた。壬氏は自らの立場や過去に関する真実を猫猫に伝えるべきだと理解しつつも、彼女の反応を恐れていた。
新入り宦官たちの様子
翌日、壬氏は新入り宦官たちの仕事ぶりを視察した。風呂焚きや洗濯といった労働をこなす彼らの中で、特に目立つ宦官が一人いた。彼の整った顔立ちや女官への気配りの良さが評判となっていたが、身体には過去の虐待の痕が残っていた。壬氏はその姿に気づきながらも、表面上はねぎらいの言葉をかけるに留めた。
荷車の事故
視察中、荷車の転倒が発生し、貴重な氷が地面に転がった。女官が怯える中、怒る宦官の姿があった。その場面で、壬氏は猫猫と親しい女官の姿を認識し、事態の成り行きを見守ることにした。
五話 氷菓
小蘭の失態と宦官の怒り
小蘭は後宮に売られてきた過去を持ちながらも明るさを失わない娘であった。ある日、浮かれた気分で走った拍子に荷車にぶつかり、貴重な氷を地面に落としてしまった。氷を運んでいた宦官は激怒し、氷の価値を考えると小蘭には罰が避けられない状況であった。
猫猫の提案と氷菓の準備
猫猫は落ちた氷を見つめ、新たな案を思いついた。壬氏の協力を得て調理場を借り、砕けた氷を活用して氷菓を作る計画を立てた。牛乳や果物を使い、塩入りの氷水で冷やしながら作業を進め、小蘭と協力して美しい氷菓を完成させた。
氷菓の完成と宦官の驚き
完成した氷菓は、小蘭の口に合う出来栄えであった。宦官たちもその味に驚き、氷菓を楼蘭妃に届ける準備を整えた。猫猫の迅速な行動により、楼蘭妃の機嫌を損ねる最悪の事態を回避できる見通しが立った。
子翠の登場と賑やかな余韻
そこへ子翠が現れ、氷菓を勝手に味見し始めた。小蘭は慌てて子翠を追いかける一方、猫猫は新たな氷菓の準備を始めた。騒々しい一幕の中、猫猫の機転が後宮の平穏を守る鍵となった一日であった。
六話 逆子
玉葉妃の体調と逆子の可能性
玉葉妃が腹の動きを気にし、鈴麗公主とともに日常を過ごしていた。猫猫は玉葉妃の話に違和感を覚え、触診を申し出た。触診の結果、八割方逆子の可能性があると判断した猫猫は、身体の動かし方や灸で改善を試みる提案をした。
信頼できる医師の提案
逆子が治らない場合のリスクを考えた猫猫は、信頼できる医師として養父である羅門を提案した。過去に後宮を追放された罪人であることが問題視されたが、玉葉妃の信頼を得て、最終的に羅門の招致が決定した。
羅門の後宮入りと準備
羅門は迅速に後宮へ招かれ、やぶ医者の元で臨時に診療を開始した。猫猫は羅門の腕を信頼しつつも、後宮内での地位や周囲の反応に気を配りながら事態の進展を見守った。
翡翠宮での日常と周囲の反応
羅門が後宮に来たことで、猫猫の仲間たちは彼の人物像について関心を示した。桜花や貴園たちは羅門の落ち着いた印象に驚きつつ、猫猫との関係を面白がった。猫猫は彼らの反応に困惑しつつも、日常業務をこなしていた。
七話 巣食う悪意 前編
医局での穏やかな日常
医局では羅門がやぶ医者と親しく交流していた。羅門はやぶ医者から医学とは無関係な話を聞き、のどかな空気が流れていた。猫猫は灸に使うもぐさを作りつつ、紅娘の指示により従来どおりの仕事をこなしていた。羅門はときおり宦官に呼ばれ、どこかへ出かけることがあった。
羅門の後宮での役割
羅門は後宮の妊婦全員を平等に扱い、玉葉妃だけでなく梨花妃にも注意を払っていた。梨花妃の元には年配の侍女たちが仕えており、猫猫は彼女の無事を祈っていた。後宮の現状について、羅門は問題点を整理し、改善策を考えているようだった。
後宮内の教育と羅門の提案
羅門は猫猫に手習所での書き取り練習用に、自身が書いた紙を使う提案をした。猫猫はその案に驚きつつも同意し、手習所の女官たちに協力を依頼する準備を始めた。
老宦官との相談
猫猫は手習所に向かい、老宦官に羅門の提案を伝えた。老宦官は羅門の字を懐かしみながら提案に賛同し、過去にも似たような活動を羅門が行っていたことを語った。その内容が毒おしろいに関する注意書きであったことに猫猫は興味を持ち、確認のため老宦官の部屋を後にした。
疑問の解消への動き
羅門の過去の活動に違和感を覚えた猫猫は、その真相を確かめるため行動を開始した。その目的地に向かう姿勢は、いつも以上に真剣であった。
八話 巣食う悪意 後編
診療所での異変
診療所では年配の女官たちが忙しく働き、若い宦官たちが洗濯作業を手伝っていた。猫猫は酒精を持参し、診療所で消毒薬としての使用を提案した。深緑を始めとする女官たちがこれを歓迎する一方、猫猫は診療所の女官たちの背景に不穏なものを感じ取った。
深緑の告白と診療所の過去
深緑は診療所の女官たちがかつて幼少期に後宮に連れてこられ、先帝の被害を受けた過去を明かした。その影響で外の世界に戻ることができず、診療所に留まり続けていることが分かった。猫猫は彼女たちの悪意が後宮の中でどのように巣食い、毒おしろいのような形で影響を及ぼしているかを理解した。
翠苓の登場と緊迫した状況
診療所を訪れた猫猫の前に、かつて死んだはずの翠苓が現れた。翠苓は男装し、診療所内で猫猫に接触。彼女の左腕は震えており、蘇りの薬の後遺症を抱えているようであった。翠苓は猫猫に協力を求めるが、その動機は明かされず、不穏な空気が漂った。
子翠の人質化と翠苓の狙い
翠苓は子翠を人質に取り、猫猫に診療所からの脱出を手伝うよう迫った。猫猫はこの状況に困惑しながらも冷静さを保ち、翠苓の目的を探ろうとした。その中で翠苓は「蘇りの秘薬の作り方を教える」と猫猫を揺さぶり、事態はますます緊迫した。
九話 狐と狸の化かし合い
狸と狐の対峙
宮中には「西の狸」子昌と「東の狐」羅漢という異名を持つ二人がいた。子昌は北方の王家の養子であり、宮中で重要な地位を占めている。一方の羅漢は軍師として知られる名門出身だが、独特な才覚で他を圧倒していた。この二人を前に、馬閃は影武者である覆面の君を守りながら緊張の中に立っていた。
茶席での駆け引き
羅漢の提案で茶を囲むこととなり、中庭の四阿に三人が集まった。羅漢は果実水を勧めながら、突如として最新式の飛発の設計図を取り出した。馬閃は驚きつつも冷静を装い、羅漢の意図を探った。羅漢は飛発の仕組みを解説しながら、その武器が東宮暗殺に使われたことを指摘し、出所を探るよう求めた。
羅漢の棋譜披露
羅漢は次に自らの妻との碁の棋譜を披露し、その試合内容について興奮気味に語った。妻との碁を「刃物のような鋭さ」と評する彼の言葉に、周囲は引き気味であった。子昌はこの話題に困惑しつつも、羅漢からの棋譜や関連物を受け取ることを了承した。
覆面の君の正体とその役割
執務室に戻った馬閃は覆面の君と二人きりになった。覆面を外したその姿は、元上級妃である阿多その人であった。彼女は皇弟の影武者として役割を果たしており、その目的は軍師羅漢への牽制や今後の対策にあった。玉葉妃からの報告で猫猫の不在が確認され、阿多はその対応を見据えて動いていた。
馬閃の苦悩と決意
馬閃は阿多や羅漢の動きに振り回されつつも、自身が父・高順のような苦労人になりつつあることを自覚していた。阿多の軽口や現状への不安が彼の心に影を落としつつも、彼はその立場において果たすべき役割を改めて見つめ直していた。
十話 足跡
猫猫失踪の報告
壬氏のもとに「猫猫が帰ってこない」との報告が届いた。文面から、侍女頭紅娘が動揺している様子が読み取れた。玉葉妃たちに話を聞くと、猫猫は一昨日の昼、医局で灸用のもぐさを準備した後、手習所へ向かったという。それ以降、消息が途絶えた。壬氏は猫猫の行方を追うことを決意した。
医局での聞き取り
医局では羅門と医官が迎えた。羅門は猫猫が去る際、毛毛という子猫がしつこく絡んでいたと語った。その後、羅門は薬棚から木の実を取り出し、それが猫猫が持ち去った可能性を示唆した。壬氏は羅門の提案に従い、猫猫と毛毛の行方を追うことにした。
毛毛の発見と謎の手がかり
毛毛は後宮北側で発見された。木の根元で寝転ぶ毛毛のそばに、羅門が示した木の実と紙切れがあった。羅門が紙を炙ると「祠」という文字が浮かび上がったが、もう一つの文字は焦げて判読できなかった。羅門は木の実が猫猫の意図的な手がかりであると推測した。
翡翠宮での検討
壬氏は翡翠宮に戻り、侍女たちと共に文字を解読した。侍女の一人が「翠」という字を示し、かつて猫猫が一緒にいた「紫翠」という下女の名前を挙げた。その情報を基に、壬氏はその下女の捜索を命じた。
祠と秘密の通路の発見
毛毛が見つかった近くで、古びた祠が発見された。その祠を入り口とする古い水路が、後宮内で通路として使われていたことが判明した。さらに、後宮に登録されていない女官と新入り宦官が姿を消しており、これが事件に関与している可能性が浮上した。
十一話 狐の里
船での移動
猫猫たちは翠苓に連れられ、船で移動していた。船倉に閉じ込められた猫猫と子翠は、素朴な服装をまとい、村娘に見せかけられていた。翠苓は彼女たちを「口減らしに売られた娘たち」と説明し、怪しまれずに航路を進んでいた。猫猫はこの状況に不満を抱きながらも、脱出の手段を模索していた。
隠し通路と脱出経路
診療所から連れ出された猫猫は、後宮の祠を経由して地下水路を通り外部へ運び出された。この水路はかつて避難路として使用されていたものと思われる。翠苓たちは用意していた馬車で猫猫たちを港へ運び、そのまま船で北上した。しかし、移動中の揺れや環境に猫猫は疲労を感じつつも、脱出の機会をうかがっていた。
森での出来事
船旅を終えた一行は、森の中を進んでいた。歩く中で猫猫は翠苓が蛇を怖がっていることに気づき、蛇を投げつけて試した。翠苓は冷静さを失い、恐怖で動揺したが、子翠が彼女を支え事態を収めた。この行動から猫猫は、子翠と翠苓が以前からの知り合いであることを確信した。
隠れ里の到着
一行は森を抜け、隠れ里に到着した。里は温泉地として機能しており、周囲には防壁や堀が設けられていた。里内は祭りの準備が進められており、住人たちが忙しく動いていた。猫猫は翠苓の指示に従い、里の中心部にある宿に案内された。
里での新たな出会い
里では、猫猫は生意気な少年・響迂と出会った。彼は翠苓や子翠を慕う様子を見せつつ、祭りの準備に参加していた。糞餓鬼と感じた少年が、次第に素直な一面を見せ始めたことに猫猫は興味を抱いた。
狐の面と祭りの準備
猫猫たちは祭りの飾りを手にし、白い狐の面に好きなように色を塗るよう勧められた。子翠が少年をからかいながらも面倒を見る中、猫猫は祭りの風景を見つめつつ、狐の面に顔を描き始めた。
十二話 鬼灯
玉葉妃の出産準備
後宮内では、玉葉妃が産気づき、出産準備が進められていた。壬氏は高順らとともに翡翠宮を訪れ、侍女や医官から妃の容態を確認した。妃は逆子の懸念があったが、現在は落ち着いていると報告を受けた。猫猫が行方不明のまま十日が経過しており、壬氏の心には焦燥が募っていた。
消えた宦官の調査
壬氏は、後宮から消えた宦官「天」に関する調査を進めていた。天は異民族出身とされ、他の宦官たちとは馴染まず、情報も乏しい存在だった。彼が北側の廟を訪れていたという目撃情報を得た壬氏は、その場所を調べることにした。
墓参りの女官との遭遇
北側の廟では、先帝時代の女官たちの墓を訪れる女官に遭遇した。彼女が残した鬼灯の枝や酒の匂いに違和感を覚えた壬氏は、問い詰めるが、女官は壬氏の追及に耐えきれず毒を飲んだ。女官の行動から、彼女が先帝時代の被害者であると推測された。
楼蘭妃の失踪
壬氏は柘榴宮を訪れ、楼蘭妃の所在を確認しようとしたが、彼女に化けた侍女を発見した。壬氏は侍女を問い詰めるが、本物の楼蘭妃はすでに後宮を抜け出した後であった。楼蘭妃の行動が計画的であった可能性を考え、壬氏はさらなる調査を決意した。
羅半の訪問
羅漢の養子である羅半が壬氏を訪れ、後宮における金銭の不正流用の可能性を示す資料を提供した。羅半は金属や穀物の値上がりを指摘し、その背後に隠された意図を明らかにする協力を提案した。壬氏は彼の情報に基づき、さらなる調査を進めることを決めた。
壬氏の決意
壬氏は猫猫と楼蘭妃の行方、さらに後宮内外で進行する謀略の全貌を解明するため、迅速な行動を取ることを決意した。彼の心には焦りがあったが、理性を保ちながら事態に対処する必要性を自覚していた。
十三話 祭り
狐神の祭りの装い
猫猫は紅白の襦裙と狐の面をつけ、提灯を携え、村の社に向かう行列に加わった。男性たちは青い服、子どもたちは尻尾に見立てた稲穂をつけており、村の信仰する狐神の象徴がそこにあった。道中、子翠の緑色に染められた眦の面が目を引いた。
祭りの由来と村の歴史
祭りの由来は、他民族がこの地に逃れて定住した歴史に由来していた。村人たちは、狐神を先祖として祀り、その豊穣を願う伝統を続けていた。狐神の象徴である白い狐は、他民族が村に同化する過程を象徴していた。
社での奉納と願い
社に着くと、人々は面を奉納し、願いを天に届けると信じていた。猫猫は自らの面に特に願い事を書くことはせず、祭りの形式的な儀式に参加した。奉納された面は櫓で燃やされ、その煙が天へと昇るとされていた。
祭りの象徴・櫓の火
櫓に火が放たれると、一気に炎が広がり、狐神への願いが煙となって空に昇っていった。中には燃え尽きず水面に落ちる面もあり、それらは「恵みの糧」となると語られた。響迂は燃え尽きる面を見つめながら、自らの願いが叶うことを期待していた。
子翠の思索
子翠は炎を見つめ、「叶わぬ願いは土に還る」と呟いた。その言葉に深い意味が込められていたが、猫猫にはその本意がまだ理解できなかった。祭りの静寂とともに、村の神秘が深まる夜であった。
十四話 取引現場
宿での再会と問いかけ
宿に戻ると、翠苓が待っていた。卓子の上に本を並べ、静かに読んでいた。猫猫が蘇りの薬について問いかけると、翠苓はその副作用や調合について答えた。猫猫はさらなる情報を求めて詰め寄ったが、翠苓は慎重な態度を崩さなかった。
薬と簪の会話
朝、猫猫は卓子の上に置かれた薬草図鑑を読み漁りながら、子翠に髪を結ってもらった。簪の話題になると、子翠はその簪が高価な品であることを指摘したが、猫猫は慎重に扱うべきだと感じていた。
田んぼの謎と倉庫の調査
猫猫は里の田んぼを眺め、一部の稲だけが異常に育ちが遅いことに気付いた。その原因を調べるため、響迂の助けを借りて倉庫に潜入した。中には鼠を使った実験の痕跡と、飛発の部品が見つかった。猫猫はその関連性に疑念を抱いた。
予期せぬ遭遇
倉庫内で物音が聞こえ、猫猫と響迂は隠れたが、そこに現れたのは神美という女だった。神美の存在に響迂は震え上がり、猫猫も緊張を隠せなかった。神美は冷ややかな態度で二人を見下ろし、翠苓に管理不足を叱責した。
神美の提案と猫猫の困惑
神美は、猫猫たちを連れて行くことを提案した。彼女の微笑みには圧倒的な威圧感があり、猫猫はその場の空気に飲まれた。神美の指示により、猫猫たちの運命は新たな局面を迎えた。
十五話 砦
砦への到着と神美の支配
猫猫は温泉郷を出た後、半日の馬車の旅で砦のような場所に連れてこられた。翠苓の浮かない顔色と腫れた頬から、神美との間にあった出来事がうかがえた。猫猫はその場で、神美が子翠を楼蘭と呼んだことで、彼女が楼蘭妃であることを確信した。
楼蘭妃の正体と過去
楼蘭妃は以前、後宮の授業で猫猫が出会った妃の一人であった。普段は無邪気で普通の娘に見えるが、猫猫は彼女の言動や立場から高貴な生まれであると推測していた。さらに、神美が楼蘭妃の名前を奪い、自らの娘の幼名として利用した経緯が明らかになった。
神美の支配と猫猫の危機
倉庫での侵入を咎められた猫猫に、神美は鞭打ちの罰を提案した。楼蘭妃が機転を利かせて薬師として猫猫を提案し、罰を免れたものの、猫猫は砦に連れて行かれることとなった。そこで猫猫は、戦の準備を示唆する証拠と砦の存在意義に疑念を抱いた。
砦の生活と猫猫の考察
砦の部屋に幽閉された猫猫は、大量の書籍や薬棚を調べつつ、自身の置かれた状況を考えた。砦が戦の拠点である可能性や、飛発の存在がその裏付けになることを推測した。さらに、猫猫はここにいる子どもたちの運命についても複雑な思いを抱いた。
響迂との再会と心の葛藤
廊下から響迂の声が聞こえ、彼もまたこの砦に連れてこられたことが判明した。子どもたちをも巻き込むこの状況に、猫猫は彼らの未来に暗い影を感じながらも、自分にできることを模索し続けた。
十六話 羅半
羅半の報告と砦の謀反
羅半は壬氏の執務室を訪れ、子の一族が放棄された砦を密かに拡張し、謀反を企てている可能性を報告した。彼が地図で示した場所は、不自然な物流と金の動きから推測されたものだった。壬氏は報告の重さを受け止めつつ、事態の収拾を図る必要性を感じていた。
羅漢の来訪と批判
そこに現れたのは片眼鏡をかけた軍師、羅漢であった。彼は壬氏に辛辣な言葉を投げかけ、猫猫の失踪についても責任を追及した。羅漢の苛立ちは壬氏の立場や行動への不満によるものであり、その激しい口調に執務室の空気はさらに緊張感を増した。
羅門の登場と場の収拾
緊張が高まる中、姿勢の悪い老人、羅門が現れた。彼は穏やかな口調で羅漢をたしなめ、壬氏への攻撃的な態度を改めるよう促した。羅門の存在は場を和らげ、羅漢は最終的に壬氏に対し正式な礼を尽くして本題を切り出した。
軍の動員要請と反逆の証拠
羅漢は壬氏に対し、逆賊と断定した子昌を討つため、禁軍を動かしてほしいと要請した。羅半が提出した資料には、新型の飛発の生産や反逆行為の証拠が明確に記されていた。羅漢は「膿を早めに出し切るべき」と強調し、反乱の根絶を訴えた。
壬氏への決断の促し
羅漢の要請は単なる軍の動員だけではなかった。それは壬氏、すなわち華瑞月に対し、仮初の宦官としての立場を捨て、本来の姿を明らかにし決断を下すよう促すものだった。瑞月は覚悟を決めるべき時が来たことを痛感し、その場で次の行動を模索した。
十七話 蟇盆
神美の部屋での対話と異様な空気
猫猫は日に一度だけ見張りに連れられ、神美の部屋を訪れていた。そこは異国の贅沢品が並ぶ豪奢な空間であり、淫靡な香りが漂っていた。神美は侍女たちに囲まれ優雅に過ごしていたが、その背後には楼蘭が控え、髪を梳かれていた。猫猫が薬の進捗を報告すると、神美は無関心な態度で部屋から退出させた。
響迂との会話と母親への思い
部屋を出た猫猫は響迂に声をかけられた。響迂は母親について尋ねたが、猫猫は部屋の雰囲気を思い出し、詳細を伝えられなかった。響迂は母親が忙しいと自分を納得させつつも、少し寂しげな様子であった。
日常の実験と異臭の正体
猫猫は薬師としての仕事に没頭していた。前任の薬師が残した資料や鼠を使った実験に取り組んでいたが、砦内には腐敗臭や不穏な気配が漂っていた。特に階下からは異様な臭いがすることに気づき、爆発などの危険性を危惧していた。
響迂の失敗と神美の介入
響迂は猫猫を逃がそうと計画したが、見張りに捕まり正座させられた。翠苓は事態を穏便に収めようと努力したが、その場に神美が現れた。響迂を叱責する神美は、過剰な折檻を仄めかし、場の空気を一層緊迫させた。
翠苓の忠誠と神美の苛烈な態度
翠苓は響迂や猫猫をかばおうとしたが、神美に暴力を振るわれた。血を流しながらも毅然と立つ翠苓の姿に猫猫は彼女の責任感を感じたが、神美の非道さに怒りを抑えきれず、小さな声で侮辱的な言葉を漏らしてしまった。それを聞き逃さなかった神美は、猫猫を処罰するため蟇盆へ送るよう命じた。
蟇盆の恐怖と猫猫の覚悟
猫猫は地下にある蟇盆に連れて行かれた。そこは古代の処刑場であり、毒蛇や毒虫が箱の中から放たれる場所だった。しかし、猫猫は恐怖を感じつつも、それらの生き物に奇妙な親しみを覚えた。そして、簪や笄を手にしながら、対処を模索していた。
十八話 飛発
毒と拷問部屋での猫猫の行動
猫猫は拷問部屋に閉じ込められていたが、持ち物を活用して状況を切り抜けていた。毒蛇や毒虫を処理し、安全な蛇を食材として調理した。見張りが訪れ、翠苓や響迂が彼女を助けようとした事情を語ったが、拷問部屋での猫猫の様子に驚愕していた。
地下での発見と火薬の製造
見張りの助言を受け、猫猫は地下へ向かった。そこで彼女は硫黄や家畜の糞を使って火薬を製造している現場を発見した。劣悪な環境の中で作業をする者たちの姿を目にし、その危険性を察知したが、彼女の興味は火薬の素材と工程に向けられていた。
楼蘭との再会と爆発
地下で楼蘭と再会した猫猫は、彼女が火薬に灯を投げ込み、砦を爆破しようとしていることを知った。楼蘭は猫猫を助けようとした響迂や他の子どもたちへの配慮を見せながらも、砦を破壊する決意を語った。爆発音が響く中、猫猫は楼蘭とともに脱出を図った。
楼蘭の告白と母との確執
逃走中、楼蘭は母・神美との関係や自分の過去を語った。神美の非道な行い、姉である翠苓への嫉妬といじめ、そして自身が堕胎剤を用いて母となることを拒んできた理由を明かした。楼蘭の言葉から、彼女が母親に対する深い憎悪と複雑な感情を抱えていることが浮かび上がった。
別れの約束と楼蘭の決意
楼蘭は砦のさらなる破壊を意図して行動を続け、猫猫に別れを告げた。猫猫は彼女を引き止めることができなかったが、自身の簪を渡し、「いつか返してほしい」と願掛けをした。楼蘭はその願いを受け入れ、笑顔で砦を後にした。最期に砦が揺れる轟音を聞きながら、猫猫はただ上を向いて立ち尽くしていた。
十九話 行軍
苦境における壬氏と羅漢の対立
壬氏は羅漢と馬車内で向き合い、緊迫した雰囲気に包まれていた。羅漢は壬氏に対する不満を露わにしつつも、羅半の冷静な助言により、なんとか感情を抑えていた。羅漢は壬氏が皇族であることを承知しており、慎重に行動していたが、内心では苛立ちが募っている様子であった。
砦の状況と作戦会議
羅漢と壬氏たちは砦の攻略作戦を練り直していた。砦は高地にあり、火薬の材料となる硫黄や硝石を豊富に産出できる土地柄であることが明らかになった。羅半の提案により、砦の火薬庫を狙う経済的かつ迅速な奇襲作戦が決定された。壬氏はこの作戦の成功が猫猫の救出に直結すると理解し、決断を下した。
子昌の苦悩と砦の内部状況
一方、砦の主である子昌は、爆発音に驚き外の状況を確認していた。砦内部では、妻である神美が女たちと享楽にふけり、その影響で家庭は崩壊状態であった。娘である楼蘭はそんな母に対し毅然とした態度で接し、虐待を受けていた姉の翠苓を救出した。
楼蘭の決意と父への訴え
楼蘭は父・子昌に対し、「最後まで責任を持つべき」と訴えた。彼女は自ら砦の東側を爆破し、敵に対抗する手段を作り出した。楼蘭の行動は母・神美への反抗であり、同時に父への最後の訴えでもあった。
砦の崩壊と子昌の決断
砦の武器庫が爆発し、雪崩が発生して施設の一部が埋没した。楼蘭は父に対し、「勝てない相手には潔く降るべき」と諭し、母への責任を引き受けると宣言した。その言葉に、子昌は自らの無力さを痛感しつつも、最後の決断を迫られる状況となった。
二十話 奇襲作戦
奇襲と砦の制圧
李白率いる軍勢は夜間に砦へ奇襲を仕掛け、雪崩を利用して敵陣の混乱を誘った。砦内では、子昌の私兵たちが侵入者への対応に手間取り、次々と制圧されていった。李白は部下たちと共に迅速に捕縛を進め、状況を掌握した。
壬氏の登場と指揮
突入する中、李白は紫紺の鎧を纏い柳葉刀を手にした壬氏の姿を確認した。かつて宦官として宮廷に仕えていた壬氏は、自身の正体を明らかにするかのように堂々と指揮を執り、進軍を率いた。壬氏の存在感は場を圧倒し、敵兵の士気を削ぎ落とした。
砦内での救出
壬氏と共に砦の奥へ進む中、李白は地下での爆発の影響を確認しつつ、瓦礫や煙による混乱の中で捜索を続けた。壬氏は砦内に捕らえられた漢太尉の娘・猫猫を探し出すことを最優先とし、その意志を揺るがすことはなかった。
猫猫の発見と状況
猫猫は地下室で待機しており、壬氏の登場に驚きながらも冷静に状況を報告した。彼女はすでに砦の惨状を目の当たりにしており、毒を飲まされ命を失った子どもたちを目の前にしつつも、冷静さを保っていた。壬氏は彼女を無事保護し、次の行動を計画した。
李白の人道的決断
李白は亡くなった子どもたちをそのまま放置することに心を痛め、墓地近くに埋葬することを提案した。自身の行動が罪に問われる可能性を考えつつも、子どもたちの遺体を丁寧に包み、部下と共にその場を立ち去る準備を整えた。
猫猫と李白の交流
猫猫は李白の不器用ながらも人情味あふれる行動に呆れつつも感謝を示した。李白は軽口を叩きながらも、猫猫を安心させようと努め、その場の緊張感を和らげた。最後には、互いの信頼関係が少し深まった様子を見せた。
二十一話 事の始まり
襲撃の開始と緊張の展開
広間に進入した壬氏たちは、隠れていた敵が飛発を用意していることを確認した。扉の陰から飛発の銃弾を避け、迅速に制圧へと移行した。広間にいたのは子昌の一族の者たちで、彼らは最後の抵抗を試みたものの、ほとんど効果を発揮することはなかった。
捕縛された者たちの恐怖と混乱
捕らえられた一族の者たちは、国の資金横領や反逆行為について追及され、恐怖のあまり言い逃れを繰り返した。馬閃の追及によって、一人が自らの罪を認めたが、他の者たちは口を閉ざしたままだった。壬氏は、その場に漂う恐怖と無力感を受け止めつつも、任務を遂行した。
子昌の登場と最期
子昌は飛発を手にして姿を現し、広間で最後の抵抗を試みた。発砲による混乱の中、彼の一族の者も巻き込まれる形で負傷した。最終的に、子昌は部下たちによって倒され、その最期は劇的でありながらも哀れなものだった。
楼蘭の隠し通路と計画
壬氏は楼蘭が通る隠し通路を発見し、彼女に銃口を突き付けられながら従った。通路の先には隠し部屋があり、そこには楼蘭の母である神美と姉の翠苓が待っていた。楼蘭は壬氏を母に引き合わせることで、何かしらの計画を進めていた。
神美の対面と緊張
神美は壬氏に対し敵意をむき出しにし、娘たちの間で緊張が高まった。楼蘭は母の計画を補佐する立場にありつつも、冷静に物語を語り始めた。場の緊張感を高めつつも、壬氏を取り巻く状況はますます不穏になっていった。
楼蘭の語る過去の物語
楼蘭は、先帝の時代に起きた出来事を語り始めた。先帝は母親である女帝に操られ、政務を行っていたという。女帝は息子のために北方の一族から娘を妃として後宮に送るよう命じた。楼蘭の母である神美は、その一族の娘として選ばれたが、この話に対して神美は動揺し、娘の言葉を否定した。
奴隷交易と後宮拡張の背景
楼蘭は、後宮が拡大された背景には奴隷交易があったと語った。表向きには後宮の拡張は公共事業の一環とされていたが、実際には奴隷として売られるはずだった人々を一時的に保護するための施設でもあった。楼蘭は、父である子昌がこの計画の中心にいたと示唆したが、神美はこれを信じられず動揺を隠せなかった。
子昌と神美の過去
楼蘭は、子昌が女帝の信頼を得るために後宮事業を進めていたことを語った。さらに、神美が子昌に嫁ぐことになった経緯についても明らかにした。神美は当初、子昌を信用できないと感じていたが、結果として一族の当主として子昌がその地位を手にすることとなった。楼蘭の言葉は神美の心をかき乱し、家族間の不信感を浮き彫りにした。
翠苓の秘密と過去の記憶
楼蘭は姉である翠苓の秘密についても言及した。翠苓は実は先帝の孫であり、父である子昌が密かに匿っていた存在だった。翠苓はその出自を知りつつも、名ばかりの妾の子として扱われていた。楼蘭はこの事実を暴露しながら、母親の神美に対する憤りをあらわにした。
楼蘭と神美の対立
楼蘭は、神美が一族を衰退させた張本人であると批判した。賄賂や横領を行う一族の者たちを黙認してきた神美の責任を追及し、母娘の対立が激化した。神美は楼蘭に飛発を向けて攻撃を試みるが、暴発によって自ら傷つく結果となった。
楼蘭の最期の舞台
楼蘭は、傷を負いながらも笑みを浮かべ、雪の中で舞うように屋上へと向かった。砦の屋上から身を投げた彼女の最後の姿は、あたかも劇場のクライマックスのようであった。壬氏はその壮絶な最期を見届け、彼女が演じきった役割の重さに圧倒された。
壬氏の悔恨と猫猫の無事
壬氏は砦からの帰還後、猫猫の無事を確認した。彼女は傷だらけで眠っており、周囲には亡くなった子どもたちが横たわっていた。壬氏は猫猫の傷を見て自らの関与を悔いながらも、彼女の強さに安堵した。楼蘭の一連の行動とその結末は、壬氏に多くの思索を与える出来事となった。
二十二話 狐につままれた
目覚めと壬氏の傷
猫猫が目を覚ますと、目の前には壬氏がいた。彼はさらしを巻いた顔をしており、その下には深い傷が隠されていた。猫猫はその傷を見て、雑な処置に不満を覚えた。壬氏は前線に出て傷を負ったことを語り、猫猫はその無謀さを叱責した。
楼蘭との関係の話題
壬氏は楼蘭との関係について猫猫に尋ねた。猫猫は楼蘭が複雑な人物であったことを認めたが、彼女との関係が友情であったのか曖昧な答えをした。壬氏は楼蘭の死を悔やみ、彼女の意図を理解できないまま終わったことを残念に思っていた。
子どもたちの安置場所でのやり取り
壬氏は疲労からその場で横になり、猫猫と子どもたちが安置されている場所で一緒に休もうとした。猫猫はこの場所が「忌むべき場所」であると主張し、壬氏を諭そうとしたが、彼は聞き入れなかった。猫猫自身もここにいる理由を問われるが、答えを濁した。
猫猫の痣と壬氏の反応
壬氏は猫猫の首に残る痣に気づき、その原因を問いただした。猫猫は冷静に女性に叩かれた痕だと説明したが、壬氏は怒りを抑えられない様子だった。猫猫は壬氏の執拗な心配に辟易しながらも、彼の誠実さを感じ取った。
蘇る子どもたち
子どもたちの安置場所から音がしたことで猫猫が確認すると、一人の子どもがかすかな息をしていた。猫猫はその子どもを救おうと必死に動き、蘇生の方法を試みた。楼蘭が事前に与えた手がかりと知識を思い出しながら、猫猫は次々と蘇生を試みた。
壬氏の手助けと次の約束
壬氏は猫猫の指示で湯と温かいものを用意し、子どもたちの蘇生を手伝った。彼はこの状況を「狐に化かされた」と苦笑しつつ、猫猫に耳元で「続きはまた後で」とささやき去っていった。猫猫はその言葉に気を留める余裕もなく、子どもたちの世話に集中した。
終 話
帝の后と東宮のお披露目
都は現帝が后を迎え、東宮をお披露目することで盛り上がっていた。その后の名は玉葉であり、東宮は彼女の御子である。このめでたい知らせの一方で、猫猫は薬屋に戻り日常へと復帰していた。
趙迂の蘇生と新しい生活
蘇生された子どもたちの中でも、趙迂は記憶喪失と軽い麻痺を抱えながらも花街で新たな生活を送っていた。他の子どもたちは元上級妃阿多のもとで育てられることになったが、趙迂だけは猫猫の元に残された。彼の適応力と明るさが花街の人々に溶け込んでいた。
阿多と翠苓の新たな道
男装した阿多は以前より生き生きとした姿を見せ、翠苓も監視付きながら命を許され新しい環境へ移っていた。阿多が子どもたちを引き取る決断をした背景には、彼女の慈悲と責任感があった。
小蘭からの手紙
猫猫の元に赤羽が訪れ、小蘭からの手紙を届けた。そこには、寂しさと再会への願いが書かれており、猫猫は心に温かさと寂しさを同時に感じた。一方で楼蘭の死体が見つからないことを猫猫は内心望んでいた。
壬氏との再会と約束の行方
覆面を外した壬氏が猫猫の元を訪れた。彼は任務を終え、猫猫と再会を果たしたものの、楼蘭に渡した簪の行方について聞き落胆していた。それでも、壬氏は猫猫との対話や時間を楽しむ様子を見せた。
猫猫の日常と露店の娘
猫猫は薬作りに励む中、都での様々な出来事に無関心でいようとしていた。一方、遠い港町では簪を持つ娘が商人と交渉し、玉の蝉を手に入れた。彼女の名前は玉藻であり、彼女の行動には未来への希望が込められていた。
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