どんな本?
『魔法科高校の劣等生』は、佐島勤 氏による日本のライトノベル。
略称は「魔法科」。
物語は西暦2097年、3月。
魔法が現実の技術として確立し、魔法師の育成が国策となった時代を舞台にしている。
主人公は、国立魔法大学付属第一高校(通称「魔法科高校」)に通う兄妹、司波達也と司波深雪。
この作品は、原作小説の累計が1,400万部、シリーズ累計が2,500万部を突破し、大人気のスクールマギクスとなっている。
また、2024年には3期目のTVアニメが放送されることが決定している。
さらに、この作品は様々なメディアで展開されており、ライトノベルだけでなく、漫画やアニメでも楽しむことができる。
読んだ本のタイトル
魔法科高校の劣等生 (21)(22) 動乱の序章編(The Irregular at Magic High School)
著者:佐島勤 氏
イラスト:石田可奈 氏
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あらすじ・内容
新入生は十師族直系とその幼馴染み! 『三年生の部』、堂々スタート!
二〇九七年、三月。南米大陸で戦略級魔法『シンクロライナー・フュージョン』が使用された。
魔法科高校の劣等生(21) 動乱の序章編〈上〉
それを契機に、世界に吹き荒れる動乱の嵐が、日本にも押し寄せようとしていた。
翌月。国立魔法大学付属第一高校三年生に進級した達也と深雪の下に、十文字家当主・十文字克人からの招待状が届く。
十師族、師補十八家の若手を集めて、自分たちを敵視する風潮に魔法師としてどう対処すべきかを話し合うための会議に二人を招待する正式な書状。
それが達也を、更なる波乱の日々へと誘う。
変貌する達也を取り巻く状況。二十八家内の溝が動乱を呼ぶ!?
二〇九七年、四月。横浜で行われた、十師族及び師補十八家の後継者たちを集めた会議での達也の振る舞いは、他家との軋轢を生む。
魔法科高校の劣等生(22) 動乱の序章編〈下〉
“全ては深雪を守るため”の達也の判断を支持する真夜。しかし、同時に他家への警鐘を鳴らす――特に、十文字家と十山家への警戒を強めるのだった。
時を同じくして、十師族『三矢家』の少女、三矢詩奈が行方不明に!? 彼女を捜索する矢車侍郎と第一高校のメンバーたち。
その裏には国防陸軍所属の遠山つかさの暗躍の影があった――。
“人間”と魔法師の共存。魔法師に集まる人々の懐疑心が、彼らの状況を一変させ、そして動乱の渦へと巻きこんでいく。
感想
3年生となった達也達。
学校での立場は、生徒会書記長となり生徒会長である深雪より上の立場となり。
裏では魔王と呼ばれている。
十師族内では、四葉家の現当主、真夜が深雪を次期当主と指名し。
達也をその婚約者として魔法師界に発表。
その発表により、達也の国防軍の立場が微妙になるが、ロシアから日本への侵攻の兆しがあり、一条家当主自らロシアの工作船と思われる、船に接近したら。
イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフのトゥマーン・ボンバを発動されてしまい、指揮をとっていた一条家の当主、剛毅がオーバーヒートで昏倒してしまう。
その治療を四葉家の夕歌を派遣して剛毅を治療。
達也が日本の戦略級魔法師たと知らない十師族は、達也に対する態度を決めかねていた。
そんな時、反魔法師達が二十八家の会議に達也を招待して反魔法師の人間主義者達に対抗するため、魔法師をアピールする案が上がる。
それを誰がやるのかとなったら、見た目が麗しい深雪が良いと七草から提案があり。
変な流れになる前に、達也が四葉家として次期当主が危険になるとにべもなく断る。
そして会議は白けた雰囲気で終わってしまい。
達也は七草智一が交流会をしようと言う誘いを後に当主である真夜との会談があるため断り、サッサと帰ってしまう。
徐々に達也は孤立して行く。
学校では、エリカは達也に八つ当たりしたいがため、三矢詩奈のガーディアンとなりたかった少年。矢車侍郎を強くするため、レオと共に鍛える。
そして、国防軍の情報部の十山家が、USNAの工作員と三矢家を巻き込んで達也を嵌めるが、、、反撃を食らって十文字家に助けられて終わり。
おかげで、十文字と達也に確執が出来てしまう。
動乱の序章開始時
深雪が四葉家の中枢に戻り、次期当主として世間に発表された。
達也も現当主の子息で次期当主の婚約者という立場を手に入れた。
それにより彼等兄妹の周りからの影響に変化が現れた。
魔法師界隈
魔術師の家達からは四葉家の次期当主とその婚約者と見られるようになり、魔法師界の世間の目も変わって来た。
そこに十文字主催の二十八家の30歳以下の若手魔法師を集めての「反魔法主義運動対策」の会議に招待され達也が出席する。
会議では七草の長男、智一から、魔法擁護のアピールが足りないという流れになり、魔法協会に広報部門を創り映像を配信する案が出る。
そこで誰が被写体になるかとなり、次期四葉家当主の司波深雪の名前が上がる。
深雪が反魔法主義者のターゲットになる可能性があると達也が判断し、議長である十文字に噛み付いて会議の空気を凍らせて有耶無耶にする。
側から見ると、達也が孤立している状態になってしまうが。
彼を知る者たちが詳細を知ったら七草家の長男が迂闊だったと理解されてる。
国防軍
達也は国防軍の特務准尉だったが、四葉家当主の息子として四葉家に戻った事で国防軍との関係が変わって来た。
国防軍からしたら司波達也は戦略的に先制攻撃を出来る貴重な駒だったが。
情報部には司波達也は絶対的な愛国心が無い事を危険視する者が現れた。
それで情報部はテストと称して達也をUSNAの非合法工作員を外科的に操り人形にしたパペットを使い達也を襲わせ、同時に深雪の通うマナースクール襲撃させ撃退された。
更に三矢家の娘の協力の元、誘拐を演出して要人警護の演習と言って第一高校から三矢家の娘を連れ出し、軽井沢の別荘に軟禁して、千葉エリカ率いる警官隊が突入して三矢家の娘を救出。
それに対して四葉家は報復に出た。
達也にUSNAの工作員を収容している違法収容所を襲撃させて彼等を救出解放し、施設を破壊。
首謀者の十山家の者を抹殺しようとするが、十文字家当主が横槍を入れて止められる。
その時に、十文字家との確執が発生する。
新ソ連
佐渡沖で「トゥマーン・ボンバ」が使用されて一条家当主が負傷。
更に新ソ連軍が宗谷海峡付近に侵攻して来て、ベゾブラゾフが「トゥマーン・ボンバ」を発動。
そこに達也はサード・アイを使って「トゥマーン・ボンバ」を防ごうと解析をしてたら、知らない術式を視る。
それにより、「トゥマーン・ボンバ」の解析を進める事が出来たが、防ぐのが非常に難しい魔法だと認識する。
達也は「トゥマーン・ボンバ」の主要術式を「チェイン・キャスト」と仮称する。
最後までお読み頂きありがとうございます。
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備忘録 上
1
2097年4月1日の朝、達也たちは沖縄から帰宅後、朝食時に南アメリカ大陸旧ボリビア地区で発生した戦略級魔法『シンクロライナー・フュージョン』の使用による大規模な爆発のニュースを目にする。この魔法は、劣勢のブラジル軍が独立派武装ゲリラとの戦闘中に使用したもので、犠牲者は主に武装ゲリラ構成員であると報じられているが、実際の犠牲者数や非戦闘員の被害も懸念されている。
その後、達也たちは春休みにも関わらず学校へ向かい、入学式の打ち合わせを行う。新入生総代の三矢詩奈との打ち合わせは和やかな雰囲気の中で進み、詩奈が持参したパンケーキサンドが評判を呼ぶ。詩奈は大きな音に耐えられないため、特別なヘッドホンを使用しており、達也たちは彼女の事情を理解し、受け入れている。打ち合わせ後、詩奈が作ったパンケーキサンドを皆で楽しむ場面で物語は終わる。手作りお菓子を持参した詩奈は、最初は緊張と不安に満ちていたが、深雪との対面後、楽観的な気持ちに変わっていた。詩奈は四葉家の後継者である深雪に対して恐れを感じていたが、実際に会ってみると、その恐れは杞憂であったことがわかる。詩奈は深雪の美しさと強さに驚きながらも、彼女が普通の人間であることに安堵した。一方で、達也には威圧感を感じたものの、彼らと敵対しなければ問題ないと理解していた。
その後、詩奈は幼馴染みの矢車侍郎と合流し、彼からの心配を受ける。侍郎は詩奈の身を案じており、詩奈はその心遣いに感謝していた。侍郎は詩奈を護衛することを自称しており、詩奈は彼の存在に安心感を感じていた。
詩奈のお菓子で楽しんだ後、達也たちは昼食をとりながら、ブラジル軍が戦略級魔法「シンクロライナー・フュージョン」を使用した事件のニュースを見る。犠牲者数が大幅に増加していることに達也は憂慮していた。その後、入学式の準備作業を進め、深雪は作業終了を宣言する。ほのかの体調を心配する泉美に、深雪は状況を説明し、明日改善しなければお見舞いに行くことを提案する。泉美は喜んでその提案に同意し、気持ちも晴れる。
ブラジル軍が戦略級魔法「シンクロライナー・フュージョン」の使用を公式に認めたことで、魔法を使えない人々の恐怖が一気に顕在化し、反魔法師運動が激化した。日本政府は過去の戦略級魔法使用を公式には認めず、「国防上の機密」として情報開示を拒んできたが、ブラジル軍の公式認定により、戦略級魔法の使用がタブーではないとの姿勢が示された。これにより、魔法師への反感が世界的に高まり、米国では反魔法師団体による暴動が発生し、ドイツでは魔法師排斥派と共存派の学生が激しく衝突した。
新ソ連では、特定の魔法師による破壊工作を疑う動きがあり、魔法師と非魔法師の間の対立が兵士の間にも広がりつつあることが示唆された。このような状況下で、魔法師を持つ国家間の緊張緩和と、魔法師の存在が軍内での不安を引き起こしていることが明らかになり、魔法師と非魔法師の間での理解促進が必要とされた。新ソ連では、日本と大亜連合の軍が共闘する動きを利用して、兵士に実戦の機会を提供し、魔法師と非魔法師の対立を緩和する計画が立てられている。
2097年4月6日、東京では魔法大学の入学式が行われている中、北陸臨海部の佐渡近海では緊張が走っていた。5年前に新ソ連と思われる部隊が上陸し、多くの犠牲者を出した経緯から、再び目撃された不審船に対して地元の義勇兵が集結していた。彼らは、どの国の軍隊であれ、自分たちの土地を踏み荒らさせないという誓いを胸に不審船への対処を決意。一条家当主・剛毅が指揮する義勇兵は、装甲船3隻に分乗し、不審船に接近する作戦を実行に移した。
その中で、剛毅の船は不審船に接近し、白兵戦を挑むことに。しかし、敵船にたどり着いた偵察隊は敵の姿を見つけられず、代わりに可燃性ガスの漏出が検出される。状況が怪しいと判断した剛毅は、部下に退避を指示するが、その直後に海面に魔法式が展開され、爆発が発生する。剛毅の船は損傷しつつも沈没は免れ、剛毅自身も生存していたが、その後の状況は不明で、将輝は父親の安否を心配しながら急いで船に戻るところで終わっている。
この事件は、新ソ連による再侵攻の可能性を示唆し、地元住民の間に不安と緊張をもたらした。義勇兵たちは、かつての敗北を乗り越え、自分たちの土地と家族を守るために再び立ち上がったのである。
明日、4月7日には魔法科高校九校の入学式があり、生徒会長である深雪には様々な仕事が待っている。しかし、夕食後に届いた極秘メールの内容を知った達也は、深雪を早めに休ませようとする計画を変更する。メールには、一条家当主の一条剛毅が敵の罠にかかり重態に陥ったことが記されていた。剛毅は敵対行動が予想される国籍不明船舶を拿捕しようとした際、魔法による強力な爆発に曝され、魔法演算領域が過負荷で麻痺してしまったという。この重大な情報を受け、達也と深雪は、一条家が抱える危機に対処するための支援を検討する。
達也は、自身が深雪の傍を離れる可能性が増えることを認識しつつ、その際は水波に深雪の警護を厳重に頼むと伝える。深雪は達也の決断を受け入れ、彼の指示に従うことを約束するが、フィアンセとしての立場からわずかな不満を示す。一条家の危機は、単なる魔法師の問題ではなく、国防体制にも影響する大事であり、その解決のためには四葉家も無関心でいられない状況であることが強調される。
一条家の当主が敵の計略に倒れたという情報は、二十八家の間で広まっていたが、情報の精度には差があった。父親からこの情報を教えられた真由美は、その後克人から電話を受け、二人はこの件について話し合う。克人が把握している情報は粗く、真由美は一条家当主の症状が魔法の過剰行使が原因ではないかと推測していた。また、事件には大量の酸水素ガスが爆発したことが関連していると考えられ、遠距離魔法による攻撃の可能性が指摘されたが、戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』が使われたという克人の推測は、真由美によって否定された。二人は未知の魔法による攻撃を懸念しつつも、さらなる協議のために明日の夜に会うことを約束する。このやり取りは、十文字家が情報収集面で他家に後れを取っている状況を補うために、個人的なコネクションを活用していることを示している。
2
西暦2097年4月7日、魔法科高校九校の入学式が一斉に行われた。達也、深雪、水波の三人は式の準備のために早朝から登校し、他の生徒会メンバーと共に準備にあたる。入学式は厳粛な雰囲気の中、滞りなく終了した。特に生徒会長の深雪に対する注目が高く、彼女の美貌と隣に控える達也の存在感が来賓や新入生、父兄の緊張を引き立てた。詩奈が答辞を読む場面では、一所懸命な彼女の姿が和やかな雰囲気をもたらし、詩奈への関心も温かいものとなった。入学式後、詩奈は生徒会室で深雪たちと会い、生徒会役員としての正式な要請を受ける。詩奈は生徒会書記としての役割を謹んで受け入れ、先輩たちとの親しみやすい関係を築くことを望む。このやり取りは、新たな役員としての彼女のスタートを告げ、詩奈と生徒会メンバーとの間に新しい絆が生まれる瞬間であった。
入学式関連の行事が終わり、新入生の多くはホームルームを確認し、クラスメイトと親交を深めるか、家族で記念の食事をする。しかし、達也たちは例外で、入学式の後片付けなどに携わった。幹比古が「順風耳」という遠くの音を拾う術の使用を感知し、その発信源が第一小体育館付近であることを特定。彼らはその現場を確認しに向かう。一方、生徒会室では詩奈がお茶会状態で達也たちに挨拶をしたいと残っていた。深雪は、詩奈の幼馴染みである矢車侍郎が生徒会室に知覚系魔法を侵入させようとしていたことを詩奈に伝える。詩奈は侍郎の行動を止める責任があると述べ、彼の愚行に対する寛恕を深雪に懇願する。深雪と泉美は詩奈の願いを受け入れ、今回の件は詩奈に任せることにする。詩奈は、この対応に感謝し、侍郎に対する今後の行動を真剣に考える。
達也たち四人は、第一小体育館の前で一旦立ち止まり、魔法の気配を感じ取っていた。幹比古は、その気配が体育館の裏側の壁際にあると推測し、達也は自分で気配を確かめず、幹比古に頼ることを選んだ。達也は、知覚系魔法を使う者は、見られていることを知覚できるため、リスクを避けるために自分の力を使わないことを選択した。新入生の矢車侍郎は、生徒会室に魔法を向けていたが、達也たちに気づき、逃げようとする。しかし、達也による術式解体によって、彼の高速移動の魔法が解除され、肉体のコントロールを失ってしまった。侍郎は二度目の術式解体により完全に気絶し、達也たちに捕まる。幹比古は、達也の厳しい対応について問い、達也は侍郎が持つ特別な能力に言及するが、具体的には語らなかった。達也は侍郎を保健室に連れて行くことを決め、彼を肩に担いでいった。この一連の出来事で、侍郎の特別な能力と達也の対応が注目される。
侍郎が意識を取り戻すと、最初に目に入ったのは幼馴染みの詩奈の顔だった。詩奈は侍郎が目を覚ましたことに安堵の涙を見せるが、彼女の中にはまだ不安が残っていた。侍郎が無事であることを詩奈に伝えると、詩奈は生徒会室での盗聴を試みた侍郎の行動を問い詰め、彼に頬を叩く。詩奈は、侍郎の行為が詩奈を頼りなく見せるものだとし、なぜそんなことをしたのかを詰問する。侍郎は自己の行動を反省し、詩奈の護衛役を降ろされたことへの理解を示しつつ、彼女の安全を確保するための自己満足に過ぎない行動をとっていたことを認める。詩奈は達也との約束で侍郎の行動に対する責任を負うことになったと告げる。侍郎が詩奈からの拒絶を恐れていたが、詩奈は彼の行動を責任を持って受け入れる決意を示す。詩奈の強い言葉に、侍郎は自分の行動を改めることを約束する。最終的に、詩奈は侍郎にこれ以上無駄な行動をしないよう促し、二人は一連の出来事を経て仲直りする。
3
西暦2097年4月7日、魔法科高校入学式の夜、達也は独立魔装大隊本部を訪れ、非常に緊急度の高い話を聞くことになった。北海道に出動することが告げられ、状況によっては全旅団の出撃もあり得るという。風間からの話には、達也への直接的な支援依頼が含まれていたが、これはマテリアル・バーストやサード・アイを使った超遠隔魔法に限らないという。達也は、独立魔装大隊の一員として命令があれば出動すると返答し、立ち去った。その後、風間と副官の藤林は、達也への説明が不足していることについて話し合った。藤林は達也に対し不信感を持たせることなく、真意を伝えるべきではないかと提案したが、風間はそれが達也に国防軍全体への悪印象を持たせることになると反論した。軍と十師族の適切な距離を保つ必要性、特に達也のような戦略級魔法師の利用に対する慎重な態度が強調された。風間は、達也との親密さが軍の判断を歪める可能性があると考え、達也との距離を置くことが今回の方針であることを明確にした。
達也が独立魔装大隊本部を訪れている頃、克人は七草智一と密談を行っていた。この密談は都心の高級料亭で行われ、魔法師に対する敵対的な風潮にどう対処すべきかが議論の主題だった。智一は、反魔法主義に能動的に対処する必要があると主張し、箱根テロ事件を上回る危機が起こりうると危惧していた。彼は魔法師の知恵を集め、意思を結集して対応すべきと提案し、そのために若い世代、特に次の当主に決まっている人々を中心に集めることを提案した。克人はこの提案に賛同し、参加を申し出たが、年齢による参加資格の線引きについて議論が交わされた。最終的には三十歳以下を基準にすることで合意し、克人もこの取り組みに微力ながら協力することを約束した。
入学式の翌日、第一高校では多くの新入生が戸惑いながらも概ね平静を保っていた。達也が所属する魔法工学科には、去年の恒星炉実験の影響で例年以上に多くの新入生が興味を示していた。この日の授業では、錫の真球を造る実験が行われ、達也はその高度な技術を披露した。授業後、達也はジェニファー教師から今年の全国高校生魔法学論文コンペティションのテーマ選定について話をされ、恒星炉以外のトピックを選ぶようにとの指示を受けた。ジェニファー教師の息子も魔工科に進級したことが話題に上がり、魔工科クラスの増設の可能性が示唆された。また、今年の新入生のレベルが例年より高いこと、それが恒星炉実験の影響であることが語られた。
ジェニファーとの短い会話の後、達也が生徒会室に入ると、ピクシーだけがいた。彼が作業を開始すると、ピクシーは自動でコーヒーを淹れ、達也に提供する。その後、二年生の泉美と水波が入室し、深雪とほのかもすぐに到着する。水波はお茶を淹れ、生徒会室は賑わいを見せる。詩奈はまだ到着していなかった。詩奈が生徒会室に遅れたのは、授業が長引いたためではなく、新入生としての活動とクラスメイトとの交流が原因であった。詩奈は、入学式の翌日に設定された専門課程の見学日に、クラスメイトに囲まれて親しみやすい性格と美少女としての魅力で注目を集めた。クラスメイトたちは、詩奈との交流を深めたいと望み、彼女を取り囲んでしまったため、詩奈は生徒会室への移動が遅れた。詩奈は人恋しい性格であり、クラスメイトに囲まれることに心地よさを感じていたが、同時に生徒会活動への遅刻を気にしていた。彼女を救い出したのは、幼馴染みの侍郎であった。彼は大声で詩奈を呼び出し、彼女が生徒会室に急ぐきっかけを作った。詩奈はクラスメイトに謝罪し、侍郎と共に生徒会室へ急いだ。侍郎は、詩奈の護衛役としてのアイデンティティを失っていることに葛藤しており、今後の行動について考えを巡らせていた。
一高の屋上が空中庭園として整備され、様々な草花が植えられている。この日、侍郎は屋上で眠る上級生の女子生徒に遭遇する。彼女は美しい顔立ちをしており、侍郎はその姿に見入ってしまう。彼は彼女を起こそうかと考えるが、誤解を避けるために躊躇する。季節は四月であり、暖かいが、夕方になれば急に冷え込む可能性があり、屋上で眠り続けると風邪を引くかもしれないと心配する。
侍郎が屋上で眠る上級生、千葉エリカに遭遇し、彼女を起こそうとしたが、誤解を恐れて躊躇する。エリカが目覚め、侍郎の行動を誤解しないと安心させる。彼女は侍郎の技術を見抜き、自分を護る技ではなく、他人を護る技術であることを指摘する。侍郎は強くなりたい理由を「あいつを護りたいから」と語り、エリカはその願いを受け入れる。彼女は侍郎に指導を申し出る。
エリカと侍郎は第二小体育館である「闘技場」を訪れ、剣術部部長の相津郁夫に話を持ちかける。エリカは侍郎を新入部員として剣術部に勧誘しようとするが、侍郎は家の仕事が忙しいことを理由に躊躇する。相津部長は侍郎の入部を温かく迎える姿勢を見せつつ、剣術部副部長の斎藤弥生が積極的に侍郎を勧誘する。エリカは侍郎に稽古をつけると言いつつ、斎藤との勝負を後回しにして場を去る。侍郎は剣術部への仮入部を決め、相津部長から指導を受けることになる。
エリカは一高で非常に注目されている美少女であり、彼女の動向は特に男子生徒から関心を集めている。エリカが新入生の侍郎に特別な関心を持ったという噂が広まり、司波家の夜の食卓でも話題に上がる。達也と深雪はエリカが侍郎に何か特殊な才能を感じ取ったのではないかと推測し、エリカの直感的な行動に興味を示す。その一方で、侍郎は詩奈に対して、エリカとの関係について誤解を解こうと苦労するが、詩奈の疑念は容易には晴れない。侍郎は自分がエリカに稽古を求めたのは彼女の腕前を認めたからであり、ナンパの意図はないと説明するが、詩奈は侍郎の説明に半信半疑の様子を見せる。
達也は三年生になっても、可能な限り八雲の寺に通い続けている。高校入学時は全敗だったが、現在では勝率が五割に達している。しかし、達也は自分が八雲に並んだとは思っておらず、特に情報収集や潜入工作、対人戦闘などの分野で八雲に及ばないと自覚している。二人の関係は鍛錬の相手として互いに益をもたらすレベルに達している。ある日、八雲は達也に十文字家からの招待状の出席者について尋ね、達也は一人で出席するつもりであると答える。八雲は何かを感じ取っているようだが、具体的な危険はないと述べつつも、達也に警戒を促す。一方、四葉真夜は比較的遅めの朝を過ごしており、達也からのビデオメールを受け取る。メールは達也が十文字家の会議に出席することについての許可を求めるもので、真夜は息子として達也に大きな自由を与えているつもりであると述べ、許可を与える。同時に、今後はこの程度のことで許可を求める必要はないと伝えるように葉山に指示する。
十文字家当主からの書状が九島家に届いたのは、達也がそれを手にした翌日の正午前であった。九島光宣は学校を休んでおり、自宅で過ごしていた。彼は入学式に関わる多忙な日々に疲労を溜め込んで体調を崩してしまった。光宣は、十師族に相応しい魔法力を持ちながら、体が弱いためその力を発揮できないことに自責の念を感じていた。九島家が十師族の地位を失ってしまったことも、彼の自虐に拍車をかけていた。光宣は自分が九島家の後継者として活躍できていたら、十師族から転落することはなかったのではないかと考えてしまう。彼は身体の治療法を探してくれている藤林響子に感謝しているが、進展はない。光宣が一言も発言しない内に、十文字家当主が提案した会議には光宣の兄が出席することで話が纏まった。光宣は自分が九島家の行く末に関わる重要な話し合いに加わることができず、陽の当たらぬ場所でひっそりと朽ちていくしかないのかと絶望していた。一方、一条家当主の一条剛毅は原因不明の衰弱状態に陥って自宅で療養しており、治療には手探りの部分が多いが、津久葉夕歌の治療により状態は着実に改善している。剛毅の息子、将輝は十文字家からの書状を受け取り、二十八家から三十歳以下の魔法師を集めて反魔法主義にどう対処していくかを話し合う会議に出席することを決める。剛毅は将輝の決断にお墨付きを与え、将輝は出席の返事をどのように書けば良いかを剛毅に尋ねる場面で終わる。
四月九日の夜、大学から帰宅した克人は、客が待っていると家人から伝えられた。待っていたのは師補十八家・十山家の十山つかさであり、実際には軍で遠山つかさと名乗り、情報部の超法規的任務に従事している人物だった。つかさは克人からの招待に対し、十山家の事情を理由に欠席を申し出た。その事情とは、十山家が国防軍と深く結びついており、国家機能を守るための魔法師としての役割を担っていることだった。つかさは他にも欠席する家がないかを克人に問い、七夕家などが欠席することを知り、十山家も同じ理由で欠席すると述べた。その後、つかさは四葉家の次期当主である司波深雪とその婚約者である司波達也についての情報を克人に求めた。克人は達也を「信義に厳しい男」と評し、つかさはその性格を探るような質問を続けた。結局、つかさは四葉家と国防軍や政府要人との関係について克人の見解を探ったが、克人は達也が愛国心を持ちつつも、絶対的な忠誠心は持っていないと述べた。二人の会話は、四葉家と十山家の間での直接的な対立はないが、個々の立場による緊張感を感じさせる内容であった。
4
USNAロズウェル郊外で、リーナは一週間に及んだミッションから基地に帰投した。任務は旧メキシコの暴動鎮圧に向かい、包囲されたウィズガードを救出することだったが、リーナたちは武力行使を事実上禁止されながらも、スターズの名声と参謀本部の権威を用いて暴動を終息させ、ウィズガードを安全に帰還させた。基地に戻ると、リーナは基地内の慌ただしさに気づき、シルヴィアに情報部から惑星級を中心に潜入任務が命じられたことを聞く。この任務は日本での「グレート・ボム」の戦略級魔法師確保作戦の再開であった。リーナはこの任務の危険性を懸念し、シルヴィアに無理をしないよう忠告するとともに、必要ならば自分の名前を使って命令を拒否することを許可した。
四月十二日、国立魔法大学付属第一高校で新入部員勧誘週間が行われている中、達也と深雪は校則違反の取り締まりに加わっていた。二人は今年、四葉家の次期後継者と現当主の息子という肩書きで、その権威により校内は比較的平和を保っていた。夕食後、四葉本家からの電話が達也に届く。電話の内容は、日曜日の会議と、北海道の状況に関するものであった。達也は、会議が長引いた場合に退席することを提案し、真夜からは日曜日に四葉本家で待ち合わせることと、おそらく達也に任務が与えられることが伝えられた。その任務は、新ソ連軍が「トゥマーン・ボンバ」を使用する可能性に関連しており、真夜は達也にその魔法の分析を依頼した。翌日、達也は学校から緊急に呼び出され、真田少佐と会い、北海道での出動が急遽必要になったことを知らされる。達也は霞ヶ浦の一〇一旅団司令部ビルで、宗谷海峡で新ソ連軍の侵攻艦艇を足止めする任務に従事した。達也はサード・アイという特殊なCADを使用して敵の魔法を無効化し、侵攻艦艇の航行を阻害することに成功する。その過程で、新ソ連軍が使用しようとした「トゥマーン・ボンバ」の魔法式の複製と増殖機能を発見し、その対処に苦慮しつつも、最終的には敵艦艇を航行不能にすることで侵攻を食い止めた。
ウラジオストクにある新ソビエト科学アカデミー極東本部の一角で、新ソ連の公認戦略級魔法師イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフが魔法演算補助スーパーコンピュータからゆっくりと現れた。彼は自分の魔法を無効化した魔法師の存在について考えていた。今回の日本侵攻は本気の作戦ではなく、あくまで下級軍人のガス抜きのための演習のようなものであり、逆侵攻の余裕はないと計算されていた。しかし、その計算に狂いがあったのは、自分の魔法を無効化した未知の魔法師の存在である。ベゾブラゾフは、その魔法師が大亜連合艦隊を殲滅した戦略級魔法師かもしれないと推測していた。
5
四月十四日、日曜日に克人が招集した二十八家の若手会議が開かれたが、達也はいつも通り八雲の寺で修行に励んだ。昨日、戦略級魔法師と推定される魔法師との対決で遭遇したトゥマーン・ボンバに類する魔法を無効化できなかったことが達也の心に懸案事項を残した。達也はこの魔法にどう対抗すればよいかという問題に頭を悩ませ、普段は気付くはずの周囲の音にも気づかないほど集中していた。この魔法は自動複製しながら展開するため、完全な無効化が困難であることを認識し、対抗策を模索していた。水波が不意に脱衣所に入ってきた際も、達也はそのことで頭がいっぱいだった。水波は達也の裸を見てしまい、深い罪悪感に苛まれるが、達也は忙しい一日を控え、水波に罰を与える時間がないとして彼女を許した。
朝早くからの思わぬ出来事にも関わらず、達也は気分転換に魔法協会関東支部へ向かった。そこで、良く知る三姉妹と偶然会い、彼女たちが今日の会議で受付や案内を手伝っていることを知る。この会議は七草家が提案し、七草家の一員である真由美たちが手伝っていると明かされた。達也は会議室へ向かい、知人たちと再会し、会議の開始を待った。会議は、ますます勢いを増す反魔法主義運動にどう対処すべきかを話し合うもので、克人が議題を提示した。一条将輝は、この会議の性質と参加資格について質問し、七草智一が答え、反魔法主義者によるテロの標的になった事件の対策について話し合うことが決定された。九島蒼司は、十師族が箱根テロ事件の捜索に加わっていたことについて疑問を呈し、これに対する説明が求められた。
横浜ベイヒルズタワーで、光宣が美少年として注目を集めるが、真由美たちと合流して会場へ向かう。その後、会議が開始され、克人は箱根テロ事件の顛末について説明し、首謀者が死亡したが死体は回収できなかったと述べる。九島蒼司の追及に対し、克人は米軍の介入によりテロリストが撃沈されたことを明かす。智一は、反魔法主義者に対する対策として、魔法師に同情的な社会の声が上がらない現状を指摘し、それが魔法師の消極的な対応によるものかもしれないと提案する。この会議は、若い世代が自由に意見を交換する場であり、具体的な決定を下すものではないが、意見交換は無駄にはならないと克人は説明する。達也はこの会議の展開に警戒感を覚える。
真由美が光宣を魔法協会のティールームへ連れていく。光宣の家族からは、四葉家との親交を深めるようにという意図があるが、光宣はそれに対して消極的である。その後、会議は具体的な対策に移り、七草智一は大衆に対する積極的なアピールの必要性を主張する。話題は、容姿と実力を兼ね備えた魔法師のメディアへの露出に移り、深雪が象徴として相応しいという意見が出る。しかし達也は、この会議で何が決まろうと四葉家は従う必要はないと述べ、社会貢献のアピールについて慎重な立場を示す。達也の発言には反論も支持もなく、会議室の雰囲気は凍りつく。
詩奈は、兄が出席している横浜ベイヒルズタワーの会議室の情勢を知らずに、自主トレのため魔法師開発第三研究所(第三研)を訪れていた。第三研では、マルチキャスト技能の向上に関する研究が活発に行われており、多くの軍人魔法師が出入りしている。詩奈は、ここでの訓練により戦闘力が高いにも関わらず、聴覚に障害を持つために戦闘魔法師としては活動していない。詩奈は、国防陸軍情報部所属の遠山つかさ曹長と出会い、彼女から情報部の仕事を手伝うよう依頼される。その仕事は要人救出の訓練の人質役であった。一方、USNA国家科学局に所属するエドワード・クラークは、エシェロンⅢという通信傍受システムの設計者であり、彼は情報を自由にアクセスできるシステムを構築していた。クラークは、日本の会議室でのディスカッションの内容をリアルタイムで盗聴しており、達也が他の出席者と決裂する様子を見て、それを自国の利益につなげる機会と考えていた。
備忘録 下
1
2097年4月14日に横浜の日本魔法協会関東支部で開催された十師族及び師補十八家の若手を集めた会議は、予定通り正午前に終わったが、実りはなかった。閉会後、達也は七草智一からお食事に誘われるが、既に別の予定があるため断る。その後、達也は魔法協会の職員から屋上へのVTOL(垂直離着陸機)の到着を知らされ、そこで花菱兵庫と名乗る青年に出迎えられる。達也、深雪、水波は、花菱兵庫が操縦するVTOLに乗り、小淵沢駅近くのヘリポートへ移動し、地下80メートルのフロアから本村へ直通する地下道を通って本家に向かう。
千葉家の本家道場は、日曜日に社会人の門下生で賑わう場所である。エリカが休日に稽古に出ることで、道場には前向きな雰囲気が生まれる。エリカと共に来た二人の少年、侍郎とレオは稽古を通じてその雰囲気を高めていた。侍郎はレオの攻撃を受けても立ち上がり、エリカやレオとのやり取りの中で、自分の念動力を有効な武器として再認識する。侍郎は自分の力、特に念動力を大切な戦闘資源として信じるようエリカから励まされる。道場では、修練の中で相互に支え合い、技術だけでなく心の成長も促されている様子が描かれている。
横浜の魔法協会関東支部から約一時間で四葉本家に到着した達也は、葉山に案内され、本家の食堂で真夜や他の四葉家関係者と合流する。真夜からの歓迎を受け、達也は沖縄本島や久米島での出来事を報告する。この際、オーストラリア軍の工作員の移送先についても触れられる。巳焼島の施設についての議論があり、新たな実験施設の建設計画が明かされる。達也は自身が開発した「ゲートキーパー」という魔法について説明し、その技術を四葉家内で共有することになる。また、四葉家の立場として深雪を利用しようとする動きには非協力的な態度を取ることが確認される。十文字家や十山家など他の魔法家族に対する警戒も話し合われ、四葉家の独立性と自己防衛能力が強調される。達也の報告と議論を通じて、四葉家の現在と未来についての方針が再確認される。
侍郎はエリカとの稽古を終え、疲労困憊しながらも感謝の意を表す。エリカの指導は侍郎の技術向上を目的としており、彼女は侍郎を真剣に強くしようとしていた。レオは侍郎との稽古の後、シャワーを浴びるためにシャワールームへ向かい、そこで筋肉を鏡で確認していたが、エリカに見つかってしまう。エリカはシャワー後のカジュアルな格好であり、レオは彼女の姿に驚く。エリカはレオの髪を乾かすように勧めるが、レオは慌ててその場を後にする。エリカはその後、自分の部屋へと戻る。
達也による報告会では、『トゥマーン・ボンバ』と思われる攻性魔法についての話題が取り上げられた。達也は、その魔法に対して術者の存在を知覚できなかったことを認め、新ソ連が超遠隔照準補助システムを実用化している可能性が高いと推測された。このシステムは、一人の魔法師の演算能力を超える魔法の発動を可能にする大型コンピュータを含む複合システムであると考えられる。達也は、このシステムが魔法師の負担を軽減するために、起動式を自動化している可能性があると指摘した。また、ソーサリー・ブースターの存在も言及されたが、その製法は失われていないとされる。対策として、トゥマーン・ボンバを防ぐ方法が議論され、深雪は凍火で阻止可能であると提案した。勝成は密度操作による無害化、文弥は極散による発動阻止が可能だと提案したが、達也はタイミングを合わせることの困難さを指摘した。雨の日を狙うなど、攻撃の予測は可能だが、チェイン・キャストの高速展開に対処するのは難しいと結論づけた。最終的には、障壁魔法で防御するのが良いという意見が出された。
レオは自宅に戻り、ヴィジホンを通じて幹比古に相談を持ちかけた。彼はエリカの最近の行動について意見を聞きたいと思っていた。通話中に美月とその友人が現れ、一時的な混乱があったが、レオは元の話題に戻り、エリカが道場での指導やシャワールームでの軽装について自然すぎる態度を取っていることに対する違和感を表明した。彼はエリカが何かを無理しているのではないかと推測し、特に寿和の復讐に関連しているのではないかと考えた。幹比古は、エリカが達也に対して復讐を考えているというレオの推測に驚いたが、最終的にはエリカから目を離さないようにという結論に至った。二人はエリカの行動に注意を払うことに同意し、レオはエリカに使われる未来を諦め気味に受け入れた。
七草家に招かれた光宣は、昼食と晩餐に加え、帰りのヘリの手配までされ、七草家の厚遇を受ける。しかし、光宣が気にしていた七草家の当主、弘一はすでに外出しており、彼との挨拶は叶わなかった。光宣は七草家の姉妹とリラックスして過ごし、普段抱える重圧から少し解放された気持ちを味わう。夕食時、二高生が人間主義者に襲われた事件について話題が及ぶ。襲撃犯は薬物による心神喪失状態と診断され、不起訴になったことが明かされる。これに対し、香澄と泉美は憤慨し、魔法師と一般人間との間で法が平等に適用されない現状に疑問を呈する。光宣も同感を示し、人間と魔法師の共存に対する絶望を内心で呟くが、その絶望は七草姉妹には伝わらなかった。
達也たちは東京の調布にあるビル屋上に戻り、達也と深雪を含む六人が小型VTOLから降りた。彼らを迎えたのは兵庫であり、彼は達也たちにこのビルが四葉家の東京本部として建てられ、四葉の関係者が入居することを告げる。さらに、達也たちもこのビルに転居することが琴鳴によって告げられた。このビルは高度な警備装置や、外からの侵入を阻止する設計が施されている。達也と深雪は転居のことを話し合い、達也は四葉家の関係者が将来的に害意に曝されるリスクに備えていると推測する。彼は国防軍との対立の可能性を認めつつも、全面的な武力衝突には至らせないと深雪を安心させた。
2
二十八家の一つ、三矢家は、十山つかさという国防陸軍の女性下士官を迎えた。十山つかさは、軍の名簿には『遠山つかさ』と登録されており、十山家の力を利用するために身元を隠している。三矢家は兵器ブローカーとしての裏の顔も持ち、国防軍にとって有益な情報を仕入れる一方で、外国の武装勢力へ兵器を供給している。三矢家と国防軍は密接な関係にあり、三矢家は国防軍の意向を斟酌しなければならない立場にある。つかさは三矢家より序列が下の十山家の魔法師でありながら、三矢家は彼女を疎かに扱うことができず、彼女の要求を聞き入れる必要がある。つかさは司波達也の非協調的な態度を懸念し、国防軍として彼をテストする必要があると主張する。最終的に、つかさは三矢家の詩奈を国防軍の演習に参加させることを求め、三矢家はこれを快く受け入れざるを得なくなる。
部活を終えたレオは、カフェテリアでサンドイッチを購入し、一年生の侍郎と相席することになる。エリカと美月も途中で加わり、一行は達也についての話題に及ぶ。侍郎は達也の性格や気性について知りたいと思っていたが、自分が何を知りたいのかを具体的には言えない状況だった。エリカは達也が何を優先すべきか迷わない人であり、最優先は深雪であると述べる。レオと幹比古も、エリカの意見に反論しようとするが、言い方はともかく、その内容には同意している様子を見せる。侍郎は達也の行動を理解し、納得していた。
帰宅途中の個型電車の中で、侍郎はエリカたちからカフェテリアで聞いた達也の態度に関する話を詩奈に伝えた。詩奈は、達也の態度に理解を示し、「仕方ない」と感想を述べる。侍郎は、十師族としての貢献について考えるが、詩奈は、達也が婚約者を晒し者にしたくなかったという観点から、達也の行動を肯定する。詩奈は、十師族だからといって、メディアに利用されることに反対し、達也の行動を支持する。侍郎は、詩奈の意見に納得し、詩奈の見解がもっともだと感じるに至る。
3
十師族の次期当主クラスを集めた会議の二日後の朝、早朝鍛錬を終えた達也に、八雲が軍の情報部が動き出したと告げる。八雲の警告は、達也たちを直接狙ったものではないが、将来的に影響が及ぶ可能性があるというものだった。達也は、八雲の忠告を受け、介入を控えることを決める。八雲は達也に今後の対策を立てるために、事の内容を伝えることを決意し、二人は本堂の奥の間へと向かう。
事件は幕張新都心で起こり、USNAの魔法工学機器メーカー「マクシミリアン・デバイス」の日本工場が深夜に襲撃された。工場はUSNA軍の秘密拠点として建設され、敷地内の一部で稼働していた。襲撃により工場はジャミングによって通信が遮断され、『スターズ』の惑星級魔法師シルヴィア・マーキュリー准尉が状況把握に奮闘する。襲撃者は近接対人戦闘に優れ、高性能のサプレッサーや消音魔法を併用しており、スターズ部隊の抵抗は全て防御された。国防陸軍情報部首都方面防諜部隊所属の遠山つかさ曹長が登場し、スターズ部隊に投降を求める。全ての銃弾は麻痺弾であり、負傷者に致命傷はなかった。つかさは、敵対行動を取らなければ部隊を近日中に本国へ返すことを約束し、ゲイリー中尉は武装解除に応じた。
幕張新都心の潜入拠点が襲撃された事件は、その三時間後にスターズ本部で知られることとなった。リーナ、別名シリウス少佐は、このニュースを聞き、直ちに司令官室へ向かった。そこで彼女は、ウォーカー大佐とバランス大佐に遭遇し、襲撃された部隊の救出任務を志願するが、バランス大佐によってその提案は拒否された。バランス大佐は、リーナが日本で高位の忍術使い「プリースト・八雲」との関係を利用して救出することを検討するも、スターズが参謀本部直属の軍人であるため、国外派遣は不可能だと説明する。最終的にはリーナは軍の秩序に従い、救出を他の方法で行うことに同意する。この時、リーナの心には達也との過去の会話が浮かび、彼女が軍人を辞めることを考えるきっかけとなる。
4
魔法大学のカフェテリアでの一幕から、重要な密談までが描かれている。克人と七草真由美は、日曜日の会議とその後の問題について話し合う。この会議では、魔法師としての社会貢献をアピールするアイデアが提案されたが、達也の反対により決裂し、達也は他の十師族から孤立してしまう。克人はこの問題の解決を模索し、再度の会議開催を提案される。提案は摩利から来ており、具体的な対策を出し合うためのものである。真由美、摩利、克人の三人で達也を説得する計画が立てられ、さらに達也の婚約者も説得に加わることが決定される。この話は、十文字家が顔を潰されたという認識と、達也が孤立することの危険性に対処しようとする試みを描いている。
5
魔法科高校の学生である深雪は、魔法師としての教育のみならず、淑女教育として様々な習い事にも励んでいる。これには和洋のマナー講座、ダンス、生け花、茶の湯が含まれており、深雪はこれらをほぼマスターしている。彼女は週に一度、上流階級の子女向けの総合スクールに通っているが、スケジュールは誘拐を避けるため固定されていない。この措置は魔法師でない他の生徒の安全も考慮してのことである。スクールが男子禁制であるため、達也は深雪の護衛を水波に任せている。達也は深雪のレッスンが終わるまでの時間を喫茶店で過ごしているが、最近は身の回りの不穏な動きを避けるために、喫茶店を利用することにも慎重になっている。達也は再び自分を襲う米軍の魔法師の気配を感じ取っており、事前に八雲からの情報がなければ困惑していたかもしれないと感じている。
遠山つかさは現場指揮官としての作戦を順調に進行させていた。彼女がこの作戦を立案し、階級は曹長であるにも関わらず実質的な権限を持っている。つかさは国防軍と十山家の間の密約により、情報部の部長に強い影響力を持つ。彼女は一年前に達也が襲われた時の状況を意図的に再現し、達也にその時の焼き直しと誤認させようとしていた。この作戦では、前回とは異なり千葉修次の代わりにアンジー・シリウスという強力な存在がいないが、つかさは達也に期待している。彼女は冷静に事態の進展を待っていた。
達也は自分を取り囲む敵の情報を情報次元イデアを通じて閲覧していた。敵は『スターダスト』と同様だが、情報体にはノイズが混じっており、外部からの情報体が撃ち込まれた痕跡があった。達也は敵が死体ではなく、大脳を壊して意思を奪い、行動を制御するためのコマンドを埋め込んでいると推測した。八雲から教えられた情報には、東京近郊に潜入したUSNA軍の工作部隊を国防軍情報部が襲撃し、捕らえた米軍兵士を使って達也と深雪にちょっかいを出そうと計画していることが含まれていた。達也は、無関係の市民を巻き込むことなく、相手の計画を狂わせようとしていた。敵の正体が国防軍情報部か、それとも八雲が噓を伝えたのかを見極めることが、達也にとって重要であった。
情報部の作戦により、達也が米軍兵士に襲われる状況が発生していた。襲い掛かる兵士たちは、古式魔法『傀儡法』によって自由意思を奪われ、つかさの駒と化していた。達也は、多勢に無勢の状況でありながらも、反射的に遠距離からの攻撃を行わず、近接戦闘を選んだ。達也がパペットの背後に回り込んで気絶させる場面があり、想子センサーは達也の魔法行使を検知しなかった。一方、情報部は、達也を足止めし、主要な目的を別に持っていたが、達也の戦闘能力を高く評価し直すことになった。達也が圧倒的に不利な状況の中で、兵士たちを次々と地に這わせていく様子が描かれている。
深雪が通うマナースクールで非常事態が発生し、生徒と講師はセーフルームに避難した。スクールの安全神話は崩壊し、護衛の女性たちが犯罪組織に対抗していたが、深雪はセーフルームに避難することを選んだ。途中、敵の電撃攻撃を水波が防ぎ、深雪はその適切な対応を褒めた。深雪たちはセーフルームに安全に到着し、達也の到着を待つことにした。セーフルーム内で、深雪はキャスト・ジャミングを無効化する新魔法「術式凍結」を使用し、二人の侵入者を一瞬で無力化した。この魔法は達也が深雪のために創ったもので、キャスト・ジャミングに対する強力な対抗手段となった。深雪と水波は、セーフルームで残りの侵入者を警備に任せ、達也の到着を待つことに決めた。
達也がマナースクールに到着したのは、深雪がセーフルームに避難してから約五分後、襲撃から十分弱が経過した時であった。達也はスクールが襲撃されたという情報を受けて来たわけではなく、彼が深雪の安全を最優先事項としているために現場に向かった。スクール内では既に戦闘は行われておらず、達也は深雪が無事であることを感じ取っていた。彼は深雪の居場所をエレメンタル・サイトで、侵入者の居場所を気配を読む技術で特定した。達也は動揺することなく、踏み荒らされた場所へと進んでいった。
スクールの監視カメラをハッキングし、映像を見ているつかさは、自分に気合いを入れる。彼女は、生命維持に必要な基本的な行動すらおろそかにしてしまうほどの、希薄な自我同一性を持つ。これは、十山家が力を得た代償である。スクールには、米軍のスターダストを改造したパペットと彼女の私的な部下が送り込まれている。指揮官の少尉は、上官からの「遠山曹長の要望には最大限便宜を図れ」との言葉を思い出し、つかさが席を外すことを許可した。少尉は、つかさが邪魔者扱いされたことを幸いとして、彼女を追い出す決断をした。
達也は、深雪が隠れている部屋がセーフルームであることを知らないが、推測していた。彼はセーフルームへと向かい、途中で敵との遭遇はなかった。スクールを襲撃した者たちはセーフルームの扉をこじ開けようとしていたが、達也は侵入者に気づかれることなく接近し、徹甲想子弾を使用して彼らを無力化した。達也は、想子を操作することで人体を神経の反応速度以上で動かす技術を使い、敵を一掃した。彼は、国防軍の意図が不明であり、可能な限り手の内を明かさずに対処した。侵入者は全て無力化され、達也はセーフルームの扉を開けるのを待った。達也は、敵が銃を持っていなかったことに疑問を感じており、自分が苦戦しないように配慮されているかのような中途半端さを感じていた。
達也によって全てのパペットが倒されたことを、つかさは指揮所とは別の部屋で確認した。セーフルームに逃げ込んだ深雪とその護衛の状況は、監視カメラがないためつかさには分からない。しかし、外部の侵入者が排除されたため、彼らがセーフルームから出てくると考えられる。つかさは魔法的なリンクを確認し、接続状態は良好であったが、彼女は人の精神に直接干渉する魔法を使う者ではなく、仮想構築物、特に魔法障壁を生成する領域魔法を得意とする十山家の魔法師である。彼女には相手の位置を魔法的に特定することしかできない。物理的な情報が必要な場合は、無線機器を使用する。つかさは特化型CADの照準補助システムを使用しているが、情報次元を直接観測する能力は持っておらず、人間の認識能力には限界があると考えている。彼女は現在の任務に必要な支援を提供するために、ハッキングした監視カメラの映像に集中している。
達也が古風な装飾のドアノブを持つ扉をスライドさせて開けると、水波が丁寧にお辞儀をし、深雪が歩み寄ってくる。深雪は感謝の意を表し、達也も安堵の言葉を返す。そこへ、綱島と津永が登場し、感謝の言葉を述べる。しかし、津永が深雪に襲いかかろうとした瞬間、達也は彼女を突き飛ばし、綱島は人質を取るが、達也はそれを無視して津永に魔法を放つ。綱島が人質を脅かすが、達也は綱島に魔法障壁を破壊し、心臓震盪を引き起こして彼女を無力化する。最後に、達也は女魔法師の心臓を再起動させる電撃を放つ。
つかさは、魔法の精度を高めるために片目を閉じていた。彼女は自分の部屋で、相手が女性であっても容赦なく魔法を使うことについて独り言を呟く。彼女は自分の魔法障壁が簡単に破壊されたことに自信を失いかけていたが、四葉の魔法師の能力を認め、障壁を壊した魔法の正体について疑問を抱く。つかさは、四葉の魔法師が待機状態の魔法を無力化できなかったことに言及し、達也が人間を超えた存在であると仮定しながらも、そういった存在にはこの国に居場所がないと述べる。彼女は達也に対して、もし人外の存在であれば消えてなくなるべきだと穏やかに呟く。
達也は倒れた女魔法師の側で、魔法の痕跡を調べていた。その障壁魔法は彼女が発動したものではなく、遠隔魔法の可能性が考えられる。しかし、女魔法師には魔法的な識別信号を発する刻印がなく、達也は映像情報を使って情報次元の座標を割り出したのではないかと推測する。彼のエレメンタル・サイトをもってしても、障壁を展開した魔法師の痕跡を見つけることは難しい。深雪が達也に心配そうに声をかけるが、彼は深雪を安心させ、水波に警察への連絡と深雪の護衛を命じる。達也は負傷者を探しに行くと言い、深雪は彼に気をつけるよう言って礼をする。
6
四月二十日の土曜日、放課後の一高生徒会室では、生徒会長の深雪と書記長は不在で、役員は少数体制で活動していた。深雪は達也と共に、二日前から真由美との会合のため生徒会を休むと告げており、部屋には泉美、詩奈、そして部外者である風紀委員の香澄のみがいた。彼女たちは子供の頃からの付き合いであり、生徒会室ではリラックスした雰囲気の中、泉美が真面目に活動報告の処理を行っていた。話題は深雪と達也、真由美の会合に及び、その理由や場所について興味深い会話が交わされた。後に、ほのかと雫が登場し、生徒会室に新たな動きがあった。最終的に、詩奈が応接室の来客対応のために席を外すことになり、平和な一幕が閉じられた。第一高校の裏にある広大な演習林で、矢車侍郎が山岳部の協力のもと、エリカの課した条件で逃走訓練を行っていた。侍郎は延べ五キロを走り、追手から逃れなければならず、おもちゃのナイフに触れられたらやり直しというルールであった。侍郎は当初楽観していたが、実際には追手が持つナイフを躱し続けることが容易ではなかった。特に、レオの追跡は困難で、侍郎は自分の技量を過信していたことを認識する。結局、侍郎は力尽き、演習林の空き地で倒れてしまう。そこへ風紀委員長の幹比古が訪れ、侍郎に対して手加減なしの稽古を行うことになる。侍郎は幹比古に完全に圧倒され、躊躇いなく続けることを選択するが、立ち回りに苦戦し続ける。
生徒会室での仕事が一段落した泉美と香澄は、詩奈がまだ戻っていないことに気をかけていた。ピクシーに問いかけるも、プライバシーに関わる情報は答えられないという返答があった。雫も詩奈の帰宅を知り、彼女の荷物が残されていることから不審に思う。香澄は詩奈の居場所を確認するために山岳部にいる矢車侍郎を訪ねることに決め、生徒会室を出ていった。
香澄は侍郎に詩奈の失踪について問い合わせるが、侍郎も詩奈がいなくなったことに驚く。侍郎は直ちに父親に連絡し、詩奈の行方について尋ねる。父親からは三矢家からの指示はなく、詩奈の兄が学校に問い合わせるとのこと。侍郎には待機するよう告げられる。エリカとレオは詩奈の失踪の原因を推測し、状況を整理しようと生徒会室へ行くことを提案する。ピクシーが緊急事態であれば情報を提供する可能性があると考え、一同は生徒会室へ向かうことにする。
ほのかがピクシーに詩奈に会いに来た人物について尋ねるが、ピクシーは達也の承認がなければ情報を提供できないと答える。しかし、雫の論理的な説得により、ピクシーは情報を開示することを決定し、面会人が三矢家の使者と名乗ったことを明かす。映像を通じて、面会人が軍人であることが示され、三矢家がその事実を知らないことから、詩奈の安全に対する懸念が高まる。エリカとレオは詩奈の安全を確認することを最優先に考え、侍郎には父親からの連絡を待つよう指示する。一同は、詩奈の行方について深雪に情報を提供することにし、ほのかがメールを送ることになった。
ほのかからのメールを受け取った深雪は、美容室にいる最中だった。達也にメールを読んでもらうと、詩奈が軍人と思われる男女に連れ去られた可能性があることが明らかになる。しかし、達也はこの状況が暴力的な誘拐ではないと推測し、一高の警備システムを考慮して、学校に戻る必要はないと判断する。詩奈が三矢家の直系であり、警察が動きやすい状況であること、そしてエリカがこの件に積極的に関わっていることを説明する。達也は、彼らに任せておいても問題ないと深雪を安心させるが、深雪は友人たちが達也にどう思うかが気になっていた。
詩奈は軽井沢にある古い洋館に連れてこられた。洋館は外見に反して内部は豪奢で、詩奈には贅沢な部屋が用意されていた。つかさから、家族への連絡は控えるよう言われ、詩奈はそれを承諾する。携帯情報端末で電波状況を確認するが、アンテナは立っていなかった。詩奈は家族が自分の行動を理解していると思い込み、行方不明になっていることに気づいていない。彼女は制服からラフなルームウェアに着替え、贅沢なベッドを楽しむ。
達也からのメールを読んだほのかとエリカは落胆する。達也は詩奈の件を警察に任せるべきだと提案している。香澄は家族の捜索網を使うべきだと主張するが、泉美はそれに反対し、冷静な対応を求める。香澄は深雪に直接文句を言うために出かけ、泉美も彼女を追いかける。残されたメンバーは、どう行動するか検討する。エリカは警察関係者の伝手を使うことを提案し、公権力の私的濫用を心配する声もあるが、彼女はそれを有効利用するつもりである。
赤坂の料亭で、達也、深雪、水波、克人、真由美、摩利が集まり、会議を開始しようとしたところ、七草香澄と泉美が乱入する。香澄は詩奈が連れ去られたことについて達也に詰め寄り、達也は詩奈が未成年であるため、保護者の依頼があれば警察は保護できると説明する。香澄と泉美は詩奈の家族と話すべきだと達也からアドバイスを受け、真由美と共に香澄を連れ去る。達也と深雪は、具体的な話ができないまま密談を終える。
エリカとレオは千葉道場におり、幹比古が美月を送り届けた後合流する。街路カメラの記録を調査し、詩奈を乗せた車が軽井沢に向かったことが判明する。侍郎は三矢家から詩奈の行方について大騒ぎする必要はないとの返答を受けていたが、エリカは直ちに軽井沢に乗り込むことを禁じ、二つの理由を提示する。一つ目は準備が整っていないこと、二つ目は警察との根回しを済ませていないことである。侍郎は家族と相談するようにと言われ、自分の立場を再認識する。
その頃、詩奈は洋館の湯船でリラックスしていたが、侍郎への心配や学校を無断で離れた罪悪感を感じていた。この演習が軍事機密であるため通信が禁じられていることに疑問は感じつつも、つかさの頼みを断ることができなかった。詩奈は湯船から立ち上がり、いつ救出隊が来るか分からない状況に備えて急いで準備を始めた。彼女は洋館に配置された魔法師たちが攻撃的な波動を放っていることや、救出隊の襲撃を警戒していることに気づいていた。
達也たちが家に戻ると、四葉本家の真夜からヴィジホンのコールがあり、彼女から米軍工作員に関する情報と救出依頼が来た。国防軍情報部が米軍工作員を洗脳し、達也と深雪を襲わせた事件の背後にある事実が明らかになる。スターズのメンバーも捕まっているため、真夜は達也に工作員全員の救出を依頼する。達也はこの依頼を受け入れ、四葉家及び深雪の利益になる行動を取ることに決めた。
詩奈が誘拐された翌日の早朝、千葉家の道場にレオ、幹比古、侍郎が集まり、エリカと共に軽井沢の洋館に向かう。侍郎は家族から好きに行動して良いと許可されており、彼らはパトカーで軽井沢駅まで移動し、現地の警察と合流する。到着後、七草の双子姉妹も現れ、全員で詩奈の救出に向けた打ち合わせを始める。エリカの提案で、同士討ちを避けるために計画のすり合わせをすることになる。この常識的な対応はレオと幹比古にとってはエリカらしくない慎重さであり、達也のやり方に似ていると感じるが、彼らは打ち合わせに加わる。
詩奈が誘拐された翌日の早朝、意識が覚醒すると外は既に明るくなっていた。彼女は自分が誘拐された「重要人物」役であることを思い出し、準備を始める。その頃、警察の特殊魔法急襲部隊(SMAT)は洋館に突入しようとしていた。SMATは警察内の戦闘魔法師を集めた組織で、ほぼ全員が千葉道場の出身者だ。洋館を襲うのは、情報部による演習であり、詩奈を餌に使っていたが、四葉家や七草家の介入を計算していた。演習は要人奪還を目的としており、詩奈がその要人役であった。奪還側は詩奈を所定の場所まで送り届けることが目標だったが、事故により条件が変更され、奪還側が詩奈の部屋に到達した時点で演習は終了となる。エリカ、レオ、幹比古らはSMATと共に洋館に突入し、国防軍と戦う。最終的には、香澄と泉美の魔法によって国防軍が無力化され、エリカたちは詩奈を見つけ出す。侍郎は詩奈を救出しに来たことを説明するが、詩奈は自分が国防軍の演習に協力していただけだと返答する。最終的に、演習とは詩奈の誘拐を模したシナリオであり、エリカたちが演習を邪魔したという誤解が解ける。詩奈はエリカたちに感謝し、心配をかけたことを謝罪する。エリカは詩奈が国防軍情報部の演習に協力していたことに気づき、漠然とした不安を感じるが、その理由ははっきりしないまま終わる。
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克人は十師族としての仕事がない珍しい日曜日を過ごしていた。彼は音楽を楽しむことが唯一の趣味であり、アナログレコードを聴きながら過ごしている。その日、彼の父親である前当主の十文字和樹が、十山家当主の十山信夫が訪ねてきたと告げる。一方、達也は房総半島の先端近くの施設に米軍の工作員を救助しに行く任務に就いていた。彼は四葉家からの指令を受けて行動しており、その準備として特別に設計された「フリードスーツ」と「ウイングレス」という名前の電動バイクを使用する。この任務は彼一人で行うものであり、彼の戦闘スタイルに適している。達也はこの新しい装備を使い、施設に収容されている工作員を救出する計画を進める。
遠山つかさは、捕虜の米軍魔法師を利用するためではなく、単に軽井沢の洋館から逃れるために房総半島の秘密収容所に移動した。彼女にとって、洗脳が通用しない虜囚は価値がなく、彼らは最終的に処分される運命にあった。日本軍が化学的洗脳措置を使用していたことが外部に漏れることを避けるため、彼女は捕虜を解放することを避け、処刑を具申することにした。しかし、その時警報が鳴り、侵入者の報告を受ける。侵入者は一人だが強力な魔法師であり、つかさは迎撃に出ることにした。一方、達也は秘密収容所に入り、捕らえられている工作員の場所を特定した後、『分解』で空調システムを破壊して進行。警備員との戦闘では、慣れ親しんだ『トライデント』を用いて対抗し、彼らを無力化した。達也は途中、十文字家のファランクスに似たが異なる魔法障壁に遭遇し、第十研で開発された魔法と推測。これが十山家の関与を示唆し、達也は施設の奥へと進み、敵の魔法障壁を冷静に評価しながら、目的地に到達した。
遠山つかさは、自身が発動した個人用魔法障壁が通用しないことにショックを受ける。十山家の魔法は、要人の逃亡支援や兵士に強力な防壁を提供するために開発されたもので、味方に大きなプレゼンスを持っていた。しかし、司波達也の攻撃に対しては無力であった。達也は米軍の工作員を救出し、薬物で麻痺していた彼らを回復させて脱出を助ける。その後、収容所のデータを消去するために戻り、つかさと対峙する。つかさの魔法障壁を破壊しようとする達也に対し、克人が介入。克人はつかさを守るために、達也に攻撃を中止させる。達也は克人の要求を受け入れ、現場から去る。
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違法収容所襲撃から一週間後、遠山つかさが十文字克人の自宅を訪れ、先日の事で感謝の意を表す。克人は十文字家の義務として介入したと説明し、つかさの謝礼は不要であると伝える。つかさは達也との戦いで深刻な負荷を受けたが、すでに回復していた。二人の会話は、達也の介入に関する情報を含み、つかさは克人に感謝の意を再度表す。一方で、深雪はリーナから国際電話を受け、達也が行った救出行動に感謝される。リーナは達也に直接感謝を伝えたいが、立場上難しいことを理解している。深雪はリーナの感謝の言葉を達也に伝えることを約束する。二人は将来再会を願いながら電話を終える。
アニメ
PV
OP
ASCA 『Howling』(TVアニメ「魔法科高校の劣等生 来訪者編」OPテーマ)八木海莉「Ripe Aster」(アニメ「魔法科高校の劣等生 追憶編」主題歌)ED
佐藤ミキ 「名もない花」「魔法科高校の劣等生」ED同シリーズ
魔法科高校の劣等生
続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー
新魔法科高校の劣等生 キグナスの乙女たち
魔法科高校の劣等生 夜の帳に闇は閃く
漫画版
四葉継承編
師族会議編
エスケープ編
その他フィクション
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